説明

水田における除草方法

【課題】水田の水を濁らせるとともに水田中に有機質の緩効性肥料を供給することができる水田における除草方法を提供すること。
【解決手段】水稲の種もみを所定の酵母を加えた水溶液中に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付け、その後水田中に所定量の米ぬかを投入する。米ぬか投入後準備期間が経過すると苗の間を水田の表土とともに耕起する。耕起によって濁った水は以後は酵母の働きによって澄むことなく懸濁状態が保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水田に生えてくる雑草を除草剤を使わずに防除できる水田における除草方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田における水稲栽培でも問題の1つは水田内に雑草が生えることである。そのため、農作業において頻繁に除草作業をしなければならない。しかしながら、実際に水田に入って行う除草作業は面倒であり機械化が進んだ近代農業では重労働といってもよい。そのため、近年では薬剤を投入して除草をすることが多く行われている。そのような薬剤の一例を特許文献1として示す。
【特許文献1】特開平6−256114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、むやみな除草剤の投与は作業者への薬害や土壌や河川等に対する環境汚染の発生等の新たな問題が生じる。更に、作物へも農薬が残留するおそれがある。しかも、近年では消費者が無農薬あるいは減農薬栽培や有機栽培等の安全な食品を望むという傾向にある。そのため、除草剤を使用せずに水田の雑草を防除できる手段が求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、水田の水を濁らせるとともに水田中に有機質の緩効性肥料を供給することができる水田における除草方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、水稲の種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量の酵母と酵母栄養源を投入し、同酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることをその要旨とする。
また請求項2の発明では、水稲の種もみを所定の酵母を加えた水溶液中に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量の酵母栄養源を投入し、前記酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることをその要旨とする。
また請求項3の発明では、請求項2の発明の構成に加え、前記発芽した種もみを育苗する際には育苗用の水には酵母を加えないことをその要旨とする。
また請求項4の発明では、水稲の種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを所定の酵母を加えた育苗床で育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量酵母栄養源を投入し、同酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることをその要旨とする。
また請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか発明の構成に加え、前記酵母栄養源を投与後に水田を耕起することをその要旨とする。
また請求項6の発明では、請求項1〜5のいずれか発明の構成に加え、前記水田の耕起は前記苗を植えてから所定期間経過後に行うことをその要旨とする。
【0005】
本発明では第1の手段として、通常の農作業工程、つまり種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育成した苗を湛水状態の水田に植え付けた後にその水田の水中に所定量の酵母栄養源と酵母を投入する。
その際に酵母が自身の生理作用、具体的には酵母が栄養源としたり自身の体を構成するために酵母栄養源の成分を取り込み、酵素分解によって生成される生成物を主として米ぬか由来の懸濁物質として水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることとなる。懸濁物質としては酵母自体の存在も貢献する。一旦懸濁し始めると、酵母自身も水中に溶出する物質による水の比重のアップや自身が放出する二酸化炭素、あるいは水の対流等の種々の要素によって水中に拡散するため継続的に広く水中での分解が進行することとなり懸濁状態が維持される。そして、太陽光線が水田下層に十分到達しないため雑草が光合成をすることができず雑草の発育を阻害することができる。また、分解された酵母栄養源がそのまま緩効性肥料となるので稲の生育上にも好ましい。酵母栄養源及び酵母の投入時期は特に問わないが田植えをした後であることが好ましい。酵母栄養源及び酵母の投入方法は特に問わない。
また、単に酵母栄養源及び酵母を投入するだけではなく投入後に水田を耕起することが好ましい。水田を耕起する際には酵母栄養源及び酵母を投入してから所定期間経過後に行うことがより好ましい。ある程度を時間を置くことによって沈殿した酵母栄養源が酵母の分解作用を受けるためである。また、耕起するための手段は特に問わない。例えば人力による場合や耕耘機や回転除草機等の使用が挙げられる。
【0006】
本発明では第2の手段として、まず水稲の種もみを所定の酵母を加えた水溶液中に浸漬して発芽を促す。この工程で酵母がもみの内部に侵入することとなる。ここに発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗する際にはそのための設備(いわゆる苗代)に酵母を投入する必要は必ずしもない。
そして、育苗した苗を湛水状態の水田に植え付け、その水田の水中に所定量の米ぬかを投入する。育苗した苗の根の周囲及び根の内部の表皮近くには種もみの際に侵入した酵母が生育しており、この酵母が自身の生理現象、具体的には酵母が栄養源としたり自身の体を構成するために酵母栄養源の成分を取り込み酵素分解によって生成される生成物を主として酵母栄養源由来の懸濁物質として水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることとなる。懸濁物質としては酵母自体の存在も貢献する。一旦懸濁し始めると、酵母自身も水中に溶出する物質による水の比重のアップや自身が放出する二酸化炭素、あるいは水の対流等の種々の要素によって水中に拡散するため継続的に広く水中での分解が進行することとなり懸濁状態が維持される。そして、太陽光線が水田下層に十分到達しないため雑草が光合成をすることができず雑草の発育を阻害することができる。また、分解された酵母栄養源がそのまま緩効性肥料となるので稲の生育上にも好ましい。酵母栄養源の投入時期は特に問わないが田植えをした後であることが好ましい。酵母栄養源の投入方法は特に問わない。
また、酵母栄養源を投入した後に水田を耕起することが好ましい。これは酵母栄養源は投入するだけでは自重で沈殿するだけであるので耕起することで土壌中の苗の根の周囲に存在する酵母を水中に分散させ酵母栄養源と積極的に接触させることを目的としている。水田を耕起する際には苗を植えてから所定期間経過後に行うことがより好ましい。ある程度を時間を置くことによって沈殿した酵母栄養源が酵母の分解作用を(例え耕起していなくとも)受けるためである。また、耕起するための手段は特に問わない。例えば人力による場合や耕耘機や回転除草機等の使用が挙げられる。
【0007】
本発明では第3の手段として、通常の農作業工程、つまり種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを所定の酵母を加えた育苗床で育苗した苗を湛水状態の水田に植え付けた後にその水田の水中に所定量の酵母栄養源を投入する。
育苗した苗の根の周囲及び根の内部の表皮近くには育苗の際に侵入した酵母が生育しており、この酵母が自身の生理現象、具体的には酵母が栄養源としたり自身の体を構成するために酵母栄養源の成分を取り込み酵素分解によって生成される生成物を主として酵母栄養源由来の懸濁物質として水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることとなる。懸濁物質としては酵母自体の存在も貢献する。一旦懸濁し始めると、酵母自身も水中に溶出する物質による水の比重のアップや自身が放出する二酸化炭素、あるいは水の対流等の種々の要素によって水中に拡散するため継続的に広く水中での分解が進行することとなり懸濁状態が維持される。そして、太陽光線が水田下層に十分到達しないため雑草が光合成をすることができず雑草の発育を阻害することができる。また、分解された酵母栄養源がそのまま緩効性肥料となるので稲の生育上にも好ましい。酵母栄養源の投入時期は特に問わないが田植えをした後であることが好ましい。酵母栄養源の投入方法は特に問わない。
また、酵母栄養源を投入した後に水田を耕起することが好ましい。これは酵母栄養源は投入するだけでは自重で沈殿するだけであるので耕起することで土壌中の苗の根の周囲に存在する酵母を水中に分散させ酵母栄養源と積極的に接触させることを目的としている。水田を耕起する際には苗を植えてから所定期間経過後に行うことがより好ましい。ある程度を時間を置くことによって沈殿した酵母栄養源が酵母の分解作用を(例え耕起していなくとも)受けるためである。また、耕起するための手段は特に問わない。例えば人力による場合や耕耘機や回転除草機等の使用が挙げられる。
【0008】
本発明では「酵母を投入する」とは人為による能動的な投与を意味し、水中に天然に存在する酵母を意味するものではない。
出願人は比較のため酵母を水田の水に投入しない、あるいは種もみに侵入させることなく(つまり従来の農法)酵母栄養源として米ぬかのみを投入し、その後水田を耕起したが耕起により米ぬかは一次的に水中に拡散して水を濁らせたが一定時間後に再度沈殿し、水田の水の濁りはなくなった。一方、上記発明では米ぬかの一部は再度沈殿するものの水田の水の濁りは維持された。
【0009】
ここに、上記各発明において酵母とはサッカロミセス属(Saccharomyces)に含まれるものであればよく、特に清酒やパンに使用されるサッカロミセス・セレビシエ(S・cerevisia)やサッカロミセス・サケ(S・sake)が好ましい。周知のように酵母は同じ種であっても菌株ごとに異なる性質を有するため、使用菌株や使用酵母の菌体数、温度条件、栄養条件等によって懸濁状態は一様ではない。また、
酵母栄養源としては安価に大量に入手できるのであれば特に限定はされないが、具体的には有機質の米ぬか、大豆かす(おから)、菜種かす等が挙げられる。特に米ぬかが好ましい。これら酵母栄養源は酵母にとって単に栄養源となるだけではなく酵母の増殖における窒素源(たんぱく源)ともなりうる。
酵母栄養源は水のなかで沈む性質、つまり沈降性であることが好ましい。浮遊性の栄養源であると流出してしまうからである。また、これら沈降性酵母栄養源とともに投入される酵母も酵母栄養源を分解するため沈降性であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記各請求項の発明では、湛水した水田の水が酵母と酵母栄養源によって懸濁されるため、水田下層域に達する太陽光線をカットすることができ、稲作に邪魔な雑草を除草剤を使用することなく発生させないようにすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の水田における除草方法について説明する。
(実施例1)
まず、実施例1を説明する。
1.発芽工程
本実施例1では加温槽に所定量の水と水稲の種もみを投入する。そして、発芽のための適性温度として12〜13℃に設定し、日陰で10〜15日間静置する。
種もみの状態を目視及び触診し、発芽あるいは播種可能な程度に発芽分化が進んだことを確認すると播種前に温度を一旦高温(本実施例1では32℃)に設定し、所定時間(本実施例1では18〜20時間)静置する。
尚、発芽工程における浸漬時間や温度等は種々の条件(稲の種類、栽培する土地の季候等)により適宜変更可能である
【0012】
2.育苗工程
上記発芽工程における最終工程で加温した種もみを育苗用の苗床に播種する。この苗床への播種〜育苗の具体的な方法は公知であるため詳しい説明は省略する。
3.植苗(田植え)工程
湛水された水田に定法に従って苗を植えていく。植苗(田植え)の具体的な方法は公知であるため詳しい説明は省略する。
4.米ぬか・酵母投入工程
植苗後、直ちに米ぬか及び清酒酵母を投入する。米ぬか及び清酒酵母はいずれも沈降性なので水底に沈殿する。米ぬか及び酵母の投入量は一定ではないが例えば本実施例1では投入する米ぬかは10アール辺り150kgの量を使用するものとする。また、本実施例1の酵母は1ml中の菌体数が1〜3億個程度の液状の試料を3L使用するものとする。本実施例1では投入直前に10倍程度の水で希釈し、撒布器によって撒布するようにする。
【0013】
5.耕起工程
米ぬか及び清酒酵母を投入した後、所定期間(数日〜一週間程度)を耕起までの準備期間としてこの期間経過後に水田の表土とともに回転除草機によって耕起して攪拌する。これによって米ぬかと酵母とがよく攪拌されるとともに酵母により分解された生成物が水中に拡散する。一旦、濁った水は以後は酵母の働きによって澄むことなく懸濁状態が保たれる。必要に応じて栄養源としての米ぬかを補給投入し、投入後準備期間経過後に水田の表土とともに回転除草機によって耕起して攪拌する。
尚、耕起工程における準備期間は種々の条件(稲の種類、栽培する土地の季候等)により適宜変更可能である
【0014】
6。結果
上記工程に従った水田では水が濁り、水田の表土(水底)に達する太陽光線が遮蔽され通常の水田で発生するノビエ等の雑草の生育が見られなかった。
このように構成することによって実施例1は次のような効果が奏される。
(1)通常の農作業の通りに田植えをした後で米ぬかと酵母を水田に投入するだけで、水田の水を濁らせることができるので、簡単に雑草の生育の防除ができる。
(2)回転除草機によって水田の水を攪拌するため、米ぬかと酵母がしっかりと混ざり合いかつ接触するので米ぬかが分解されやすくなる。
(4)米ぬかと酵母を投入後直ちに耕起するのではなく準備期間をおいてから耕起するので耕起前に既にある程度の米ぬかの分解が進行するとともに、酵母も米ぬかを栄養源や窒素源として繁殖しているため、速やかに水が濁ることとなる。
【0015】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。
1.発芽工程
本実施例2では加温槽に所定量の水と酵母を投入し、攪拌したところに水稲の種もみを投入するようにする。水、酵母種もみの量は一定ではないが、例えば本実施例2では水60Lに対して1Lの割合で清酒酵母を投入し水稲の種もみを20kg使用するものとする。本実施例2の酵母は1ml中の菌体数が1〜3億個程度の液状の試料を使用するものとする。
そして、発芽のための適性温度として12〜13℃に設定し、日陰で所定時間(24〜40時間程度)静置する。次いで、一旦加温槽内の水をすべて抜き、再度水を投入する。そして、発芽のための適性温度として12〜13℃に設定し、日陰で10〜15日間静置する。
種もみの状態を目視及び触診し、発芽あるいは播種可能な程度に発芽分化が進んだことを確認すると播種前に温度を一旦高温(本実施例2では32℃)に設定し、所定時間(本実施例2では18〜20時間)静置する。
尚、発芽工程における浸漬時間や温度等は種々の条件(稲の種類、栽培する土地の季候等)により適宜変更可能である。
【0016】
2.育苗工程
上記発芽工程における最終工程で加温した種もみを育苗用の苗床に播種する。この苗床への播種〜育苗の具体的な方法は公知であるため詳しい説明は省略する。
3.植苗(田植え)工程
湛水された水田に定法に従って苗を植えていく。植苗(田植え)の具体的な方法は公知であるため詳しい説明は省略する。
4.米ぬか投入工程
本実施例2では耕起よりも所定期間(数日〜一週間程度)前に米ぬかを投入する。これは米ぬかが水底に完全に沈殿するのを待つためである。米ぬかの投入量は一定ではないが例えば本実施例2では投入する米ぬかは10アール辺り150kgの量を使用するものとする。
5.耕起工程
植苗から所定期間(一週間〜10日程度)を耕起までの準備期間としてこの期間が経過後に苗の間を水田の表土とともに耕起する。これによって米ぬかと苗の根の周囲に繁殖した酵母とがよく攪拌されるとともに酵母により分解された生成物が水中に拡散する。一旦、濁った水は以後は酵母の働きによって澄むことなく懸濁状態が保たれる。必要に応じて栄養源としての米ぬかを補給投入し、投入後準備期間経過後に水田の表土とともに回転除草機によって耕起して攪拌する。
尚、耕起工程における準備期間は種々の条件(稲の種類、栽培する土地の季候等)により適宜変更可能である。また、実施例2でも追加的に酵母を米ぬか投入工程あるいは耕起工程で投入することは自由である。
【0017】
6.結果
上記工程に従った水田では水が濁り、水田の表土(水底)に達する太陽光線が遮蔽され通常の水田で発生するノビエ等の雑草の生育が見られなかった。
このように構成することによって実施例2は次のような効果が奏される。
(1)種もみの段階で内部に酵母を侵入させているため、必ずしもその後に酵母を水田に投入しなくともよく、なおかつ酵母を水田に投入する場合よりも酵母の使用量を減らすことが可能である。
(2)酵母は育苗の段階で苗の根及び根の周囲に繁殖している。これを耕起工程で米ぬかとよく攪拌されるため米ぬかと酵母がしっかりと混ざり合いかつ接触するので米ぬかが分解されやすくなる。
(3)種もみの段階で内部に酵母を侵入させているため酵母が稲の根と一種の共生関係となることから稲の生長促進にも好適である。
(4)米ぬかを投入後直ちに耕起するのではなく準備期間をおいてから耕起するので耕起前に既にある程度の米ぬかの分解が進行するとともに、酵母も米ぬかを栄養源や窒素源として繁殖しているため、速やかに水が濁ることとなる。
【0018】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。
1.発芽工程
本実施例3の発芽工程は実施例1の発芽工程と同様に行った。そのため同工程の詳しい説明は省略する。
2.育苗工程
上記発芽工程における最終工程で加温した種もみを育苗床としての苗床に播種する。本実施例3では2cmほどの厚さの苗床の土壌に上記発芽工程を経た種もみを播種し湛水する。そして発芽を確認した段階で酵母を投入する。投入方法は上記と同様水60Lに対して1Lの割合で清酒酵母を投入したものを適宜散水した。その後、定法に従って育苗を継続する。以下3.植苗(田植え)工程〜5.耕起工程については上記実施例2に準じる。 6.結果
上記工程に従った水田では水が濁り、水田の表土(水底)に達する太陽光線が遮蔽され通常の水田で発生するノビエ等の雑草の生育が見られなかった。
このように構成することによって実施例3は次のような効果が奏される。
(1)苗の段階で内部に酵母を侵入させているため、必ずしもその後に酵母を水田に投入しなくともよく、なおかつ酵母を水田に投入する場合よりも酵母の使用量を減らすことが可能である。
(2)酵母は育苗の段階で苗の根及び根の周囲に繁殖している。これを耕起工程で米ぬかとよく攪拌されるため米ぬかと酵母がしっかりと混ざり合いかつ接触するので米ぬかが分解されやすくなる。
(3)苗の段階で内部に酵母を侵入させているため酵母が稲の根と一種の共生関係となることから稲の生長促進にも好適である。
(4)米ぬかを投入後直ちに耕起するのではなく準備期間をおいてから耕起するので耕起前に既にある程度の米ぬかの分解が進行するとともに、酵母も米ぬかを栄養源や窒素源として繁殖しているため、速やかに水が濁ることとなる。
【0019】
(実施例4)
実施例4は実施例3のバリエーションである。上記実施例3では種もみを播種後に発芽を確認してから酵母を投入したが、これを発芽を確認する前に投入するものである。その他は実施例3に準じる。
(実施例5)
実施例5は実施例3の更なるバリエーションである。上記実施例3では種もみの発芽を確認しての酵母の投入であったが、育苗がある程度進んだ段階で酵母を投入するようにしても構わない。その場合には植苗(田植え)工程で実施例1のように併せて酵母を追加するようにしても構わない。
(実施例6)
実施例6は実施例3の更なるバリエーションである。上記実施例3では酵母を苗床の水に散水するようにしていたが、これを苗床の土壌中に当初から鋤き込んでおくようにするものである。この場合には種もみを苗床に播種した後に必ずしも酵母を投入する必要はないが、追加的に投入することは構わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水稲の種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量の酵母と酵母栄養源を投入し、同酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることを特徴とする水田における除草方法。
【請求項2】
水稲の種もみを所定の酵母を加えた水溶液中に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量の酵母栄養源を投入し、前記酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることを特徴とする水田における除草方法。
【請求項3】
前記発芽した種もみを育苗する際には育苗用の水には酵母を加えないことを特徴とする請求項2に記載の水田における除草方法。
【請求項4】
水稲の種もみを水に浸漬して発芽を促し、発芽あるいは発芽分化した同種もみを所定の酵母を加えた育苗床で育苗して得た苗を湛水状態の水田に植え付けるとともに、同水田の水中に所定量酵母栄養源を投入し、同酵母の生理作用によって同酵母栄養源を分解させることで同酵母栄養源由来の懸濁物質を水中に拡散させ水田下層域に達する太陽光線をカットすることを特徴とする水田における除草方法。
【請求項5】
前記酵母栄養源を投与後に水田を耕起することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水田における除草方法。
【請求項6】
前記水田の耕起は前記苗を植えてから所定期間経過後に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水田における除草方法。

【公開番号】特開2008−130(P2008−130A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56576(P2007−56576)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(506180774)
【Fターム(参考)】