説明

水石鹸吐出器具

【課題】使用者の誤認若しくは悪戯などによって水石鹸吐出口が手で閉塞されることがあっても水石鹸の噴出が生じない、安全で快適な水石鹸吐出器具を提供する。
【解決手段】水石鹸吐出器具1は、人体の接近を検知するセンサ8と、センサ8からの検知信号に基づいて作動する水石鹸ポンプによって水石鹸タンク内から供給される水石鹸をムース状石鹸MSにして先端開口部6cから吐出する吐出経路6とを備えている。そして、吐出経路6を、ムース状石鹸MSの流路となる送液管と、複数の貫通部を介して大気中と連通する隙間を設けて送液管が内挿された外挿管とからなる二重管構造とし、外挿管6a内に配置された送液管の先端開口部を、外挿管6aの先端開口部6cよりも上流側に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体検知手段により自動的に水石鹸を吐出させる機能を有する水石鹸吐出装置を構成する水石鹸吐水器具に関する。
【背景技術】
【0002】
カウンタ付きの洗面器などにおいては、湯水を供給する給水栓のほかに、使用者が一定の動作を行うと水石鹸が吐出される水石鹸吐水装置が併設されたものがある。このような水石鹸吐出装置には様々な方式のものがあるが、従来は、吐出口近傍に設けられた所定の部材を手で押したり、引いたりすると、吐出口から水石鹸が吐出されるという、手動式のものが主流であった。ところが、近年は、使用者が吐出口付近に手を近づけただけで、ムース状になった水石鹸が自動的に吐出される機能を有するもの(例えば、特許文献1参照。)が主流になりつつある。
【0003】
特許文献1に記載された水石鹸供給手段付き吐水装置(以下、「吐水装置」という。)の場合、使用者が水石鹸を使用するために水石鹸吐出口近傍に手を近づけるとセンサがそれを感知して、制御部を介して空気供給手段を作動させると同時に水石鹸供給手段の作動により、ムース状になった水石鹸が自動的に吐出口から吐出されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−25447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の吐水装置は、使用者が吐出口に手を近づけるだけでムース状の水石鹸が吐出されるので、使い方は簡単で、非常に便利である。しかしながら、使用者がこの吐水装置が自動式であることに気付かず、従来の手動式の水石鹸吐出装置であると勘違いして使用することがある。この場合、使用者は吐出口に手を近づけるだけでよいことに気付かず、吐出口に手を当てたり、吐出口を押したりすることが多い。このため、吐出口が使用者の手で塞がれた状態となっているにもかかわらず、手の接近を検知したセンサからの信号によりポンプが作動してしまうことがある。
【0006】
このような状況下でポンプが作動した場合、使用者の手で吐出口が完全に閉塞されていれば水石鹸が吐出されることはないのであるが、吐出口と手との間に隙間があると、その隙間から水石鹸が噴き出すことがある。吐出口より狭い隙間から噴き出した水石鹸は、思いがけない方向に勢い良く飛散することがあるため、飛散した水石鹸が、使用者や付近に居る人の顔や衣服などに付着して不快感を与えることがある。
【0007】
一方、自動式の水石鹸供給器具は子供の興味を引き付けがちであるため、子供が悪戯で吐出口を塞いだ結果、水石鹸の飛散が発生することもある。また、大人による悪質な悪戯によって水石鹸吐出口が塞がれ、前述した水石鹸の飛散が発生することもある。また、このような悪戯は、特に、公共施設に配備される自動式の水石鹸供給器具において発生しやすいという問題がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、使用者の誤認若しくは悪戯などによって水石鹸吐出口が手で閉塞されることがあっても水石鹸の不測な飛散が生じない、安全で快適な水石鹸吐出器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水石鹸吐出器具は、人体の接近を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段からの検知信号に基づいて作動するポンプによって供給される水石鹸を先端開口部から吐出する吐出経路とを備えた水石鹸吐出器具において、前記吐出経路を、前記水石鹸の流路となる送液管と、大気中と連通する隙間を設けて前記送液管が内挿された外挿管とからなる二重管構造とし、前記送液管の先端開口部を前記外挿管の先端開口部より上流側に配置したことを特徴とする。
【0010】
このような構成とすれば、水石鹸吐出口となる外挿管の先端開口部が手で閉塞された状態で送液管の先端開口部から水石鹸が吐出された場合、この水石鹸は送液管の先端開口部から外挿管内へ流出し、大気中と連通する隙間内を逆流する。このため、吐出経路を構成する外挿管内の圧力が大気圧より高まることがなくなり、外挿管の先端開口部と手との隙間から水石鹸が噴出することもなくなる。
【0011】
ここで、前記外挿管の外周に、前記送液管との間に設けられた隙間と大気とを繋ぐ貫通部を設ければ、この貫通部が、水石鹸吐出口となる外挿管の先端開口部が手で閉塞された状態で供給された水石鹸が外挿管と送液管との隙間を逆流するとき、空気抜き流路あるいは水石鹸の排出経路として機能する。このため、水石鹸の噴出をより確実に防止することができる。
【0012】
また、前記貫通部を、前記外挿管の下面領域を含む位置に設ければ、水石鹸吐出口となる外挿管の先端開口部が手で閉塞されたときに、外挿管と送液管との隙間を逆流しながら重力に従って外挿管の下面領域に集まる水石鹸を速やかに下方へ排出することができるようになる。従って、人体への飛散防止効果をさらに高めることができる。
【0013】
また、前記外挿管の一部に屈折部を設ければ、吐出経路を構成する外挿管を隙間無く手で握ることが極めて困難となるため、吐出経路の先端開口部だけでなく、外挿管に設けられた貫通部までを含めて完全に閉塞しようとする悪質な悪戯を回避することができる。
【0014】
さらに、前記外挿管を硬質な素材で形成すると共に、前記送液管を弾性変形可能な軟質素材で形成すれば、送液管は弾性的な屈曲性を具備することとなるため、屈折部を有する外挿管に送液管を内挿して二重管構造を形成する際の組み立て作業性が大幅に向上する。
【0015】
一方、前記水石鹸吐出器具を、カウンタなどの支持体に固定され人体検出手段が設けられた本体部と、前記本体部から略水平方向に突出する前記吐出経路とで構成し、前記外挿管の先端開口部を前記本体部の人体検知手段の検知領域外に配置することが望ましい。このような構成とすれば、誤認若しくは悪戯により、外挿管の先端開口部が手で塞がれる事態が生じたときに、その手を本体部に設けられた人体検知手段が検知するのを回避することができるようになる。このため、外挿管の先端開口部が手で塞がれた状態で水石鹸供給用のポンプが作動するトラブルを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、使用者の誤認若しくは悪戯などによって水石鹸吐出口が閉塞されることがあっても水石鹸の飛散が生じない、安全で快適な水石鹸吐出器具を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である水石鹸吐出器具を示す斜視図、図2は図1に示す水石鹸吐出器具を用いた水石鹸吐出装置の全体構成を示すブロック図、図3は図1に示す水石鹸吐出器具を上部カバーを外した状態で示す正面側の斜視図、図4は図3に示す水石鹸吐出器具の背面側の斜視図、図5は図4に示す水石鹸吐出器具の一部省略底面図、図6は図5におけるA−A線断面図、図7は図6の一部拡大図、図8は図7におけるB−B線断面図、図9は図7における矢線C方向から見た図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の水石鹸吐出器具1は、洗面所などのカウンタ2に配置された洗面器3の近傍に給水栓4などとともに併設して使用される。水石鹸吐出器具1(以下「吐出器具1」と記す。)は、倒立コップ形状をした本体カバー5aによって覆われた本体部5(図3参照)と、本体部5から本体カバー5aの取付孔5b(図3参照)を貫通して洗面器3内に向かって突出して設けられた吐出経路6とを備え、本体部5の正面の取付孔5bの下方にはセンサ窓7が設けられ、物体の接近を検知するセンサ8がセンサ窓7の内側に配置されている。
【0019】
吐出器具1は鉄道の駅、ホテルなどの公共施設のトイレに設置されることが多いが、その場合、図2に示すように、複数の吐出器具1をカウンタ2に並列配置するとともにカウンタ2の下方領域に水石鹸タンク9や制御部10などを配置することによって水石鹸吐出装置11が形成されている。吐出器具1の本体部5には、水石鹸タンク9内と連通する水石鹸チューブ12と、エアポンプ13から延設されたエアチューブ14とが接続され、エアポンプ13およびセンサ8と制御部10との間は電線15が配線されている。この水石鹸吐出装置11は、電源コード27を介して制御部10へ供給される商用電源(AC100V)によって稼働する。
【0020】
水石鹸タンク9内には液体状の水石鹸Sが貯留され、水石鹸Sの満水を検知するためのフロートスイッチ16が水石鹸タンク9の周壁部9aに設けられ、水石鹸Sの残量を検知するためのフロートスイッチ17が水石鹸タンク9の底部9bに設けられている。これらのフロートスイッチ16,17は電線18,19を介して制御部10と接続されている。水石鹸タンク9の上部は蓋体9cで閉塞され、蓋体9cの上部に、それぞれの吐出器具1と対応する複数の水石鹸ポンプ20が配置されている。これらの水石鹸ポンプ20はそれぞれ電線21を介して制御部10と接続されている。また、蓋体9cの直上付近の水石鹸チューブ12には、水石鹸タンク9内への水石鹸Sの逆流を防止するための逆止弁12aが設けられている。
【0021】
一方、水石鹸タンク9内へ水石鹸を補給するための補給ユニット22がカウンタ2付近に設けられ、補給ユニット22と水石鹸タンク9との間には、水石鹸を水石鹸タンク9内へ補給する際の送液経路となる補給ホース23と、水石鹸を補給する際に水石鹸タンク9内のエアを逃がすためのエア抜きホース24とが配管されている。補給ユニット22は電線25を介して制御部10に接続されている。
【0022】
水石鹸タンク9内の水石鹸Sが規定残量より減るとフロートスイッチ17がそれを検知して制御部10へ信号を送り、補給ユニット22に設けられたLED26が比較的遅い間隔(例えば、2Hz)で点滅する。補給ユニット22からの水石鹸補給により水石鹸タンク9内の水石鹸Sが規定容量より増えるとフロートスイッチ16がそれを検知して制御部10へ信号を送り、補給ユニット22のLED26が連続点灯する。
【0023】
次に、図3〜図9を参照して、吐出器具1の内部構造について説明する。図3,図4に示すように、本体カバー5aを取り外すと本体部5が現れる。本体部5の下方には、カウンタ2(図1参照)などへの固定手段として、フランジ28aを有する略円筒形状の雄ねじ部28と、この雄ねじ部28に螺合された雌ねじ部材29とが設けられている。雌ねじ部材29を取り外した状態とした雄ねじ部28を、カウンタ2に開設された固定孔(図示せず)に対して垂直上方から挿通し、カウンタ2の下面から突出した雄ねじ部28に雌ねじ部材29を螺着させることによって、カウンタ2をフランジ28aと雌ねじ部材29の上面に設けられたパッキン29aとで挟み込んで本体部5を固定する。雄ねじ部28内には水石鹸チューブ12およびエアチューブ14などが配管されている。
【0024】
フランジ28aの上方には各部品の取付部30が形成され、この取付部30に、センサ8、吐出経路6の基端部を固定するための固定部材31、水石鹸とエアとの混合が行われる混合室継手32などが取り付けられ、フランジ28aからセンサ8の側方を通って起立配管された水石鹸チューブ12およびエアチューブ14の上端部12b,14bがそれぞれ混合室継手32に接続されている。
【0025】
図6に示すように、固定部材31の内部には、混合室継手32と連通した気液流路33が形成され、この気液流路33の下流部と、吐出経路6の基端部との間にムースメッシュ34が配置されている。水石鹸チューブ12から供給された水石鹸と、エアチューブ14から供給されたエアとが混合室継手32内で混合され、気液流路33を経由して吐出経路6方向へ送給され、最終的にこのムースメッシュ34を通過することによってよりきめの細かなムース状に変化し、吐出経路6の先端開口部6cからムース状石鹸MSとなって吐出される(図1参照。)。なお、本実施形態の説明において「上流」、「下流」という語句は、ムース状石鹸MSが吐出される際の流動方向を基準にしている。
【0026】
吐出経路6は、図6に示すように、金属管で形成された硬質な外挿管6aと、外挿管6a内に隙間Pを設けて内挿された合成ゴムや合成樹脂製の外挿管6aと比べて軟質な送液管6bとからなる二重管構造をなし、送液管6bの先端部6dを外挿管6aの先端開口部6cより上流側に配置している。送液管6bの全長は外挿管6aのそれより短く、送液管6bの先端部6dおよび基端部6eにはそれぞれ、軸方向の貫通孔38h,39hを有するフランジ部材38,39が取り付けられている。そして、これらのフランジ部材38,39の外周部が外挿管6aの内周面に当接することにより、少なくとも送液管6bの先端部6dおよび基端部6eが、外挿管6aの内部において略同軸上に位置するように保持されている。
【0027】
図8に示すように、上流側に位置するフランジ部材39は、その最外周部分を外挿管6aの内周面に隙間無く接触させて配置することにより、外挿管6aの基端部6fの内部と隙間Pとを区画している。また、図9に示すように、下流側のフランジ部材38は、その外周部分に放射状の4つの突起部38aを90度間隔で形成し、これらの突起部38aの外周部分を外挿管6aの内周面に当接させることにより、送液管6bを保持している。これにより、外挿管6aの内周面とフランジ部材38との間には4つの隙間P1が形成されている。なお、突起部38aは2つ(180度間隔)や3つ(120度間隔)であってもよく、外挿管6aの内面とフランジ部材38との間に隙間Pが形成されるように設ければよい。
【0028】
一方、図6に示すように、外挿管6aの基端部6fは、上部カバー5aの取付孔5bを貫通して、本体部5の固定部材31に水平に差し込まれ、基端部6fの下面から斜め上流側に向かって設けられたビス孔36にビス35を挿入して、その先端部を固定部材31に螺着することによって本体部5に固定されている。図6,図7に示すように、外挿管6aは本体部5から水平方向に突出した水平部6hと、この水平部6hの下流側から屈折部6gを経由して斜め下方に延設された傾斜部6iとで構成されている。
【0029】
外挿管6a内に内挿された送液管6bは、外挿管6aの形状に沿って配置されており、屈折部6g内ではその形状に沿って湾曲状態を保っている。また、図5〜図7に示すように、外挿管6aの下面領域を含む位置に、外挿管6aの軸方向に沿って、スリット形状をした複数の貫通部37a,37b,37cが設けられている。なお、軟質材から成る送液管6bは弾性的な屈曲性を有するため、屈折部6gを有する外挿管6aに送液管6bを内挿して二重管構造を形成する際の組み立て作業性は良好である。
【0030】
次に、図1,図2,図10〜図12を参照して、水石鹸吐出装置11の使い方について説明する。図10〜図12は図1に示す水石鹸吐出器具の使用状態の一例を示す斜視図である。図1に示すように、使用者が洗面器3に向かって手Hを差し出し、吐出経路6の先端開口部6cに掌H1を近づけると、本体部5(図3参照)の正面下部に配置されたセンサ8がそれを検知し、制御部10を介して水石鹸ポンプ20およびエアポンプ13が作動する。これにより、貯留されている水石鹸Sが水石鹸チューブ12を経由して吐出器具1の本体部5の混合室継手32内へ圧送されるとともに、エアポンプ13からエアチューブ14を経由して混合室継手32内へエアが供給される。
【0031】
混合室継手32内へ送り込まれた水石鹸と空気は、ここで混合状態となった後、図6に示す気液流路33からムースメッシュ34を通過する際にムース状石鹸MSとなり、吐出経路6を構成する外挿管6aの基端部6f内へ送り込まれる。その後、ムース状石鹸MSは、フランジ部材39の貫通孔39hから送液管6b内へ流入し、そのまま送液管6b内を通過し、フランジ部材38の貫通孔38hから外挿管6aの傾斜部6iおよび先端開口部6cを経て、図1に示すように、洗面器3内にある使用者の手Hに向かってムース状石鹸MSが吐出される。
【0032】
図1に示すように、使用者が手Hを差し出していれば、予め設定された時間(例えば、0.2秒〜20秒の範囲内で調整可能)だけエアポンプ13および水石鹸ポンプ20が作動した後、自動停止するので、約3ml程度の水石鹸が吐出される。なお、ムース状石鹸MSの吐出途中で、手Hを引っ込めるなどしてセンサ8の検知領域から手Hが離れると、エアポンプ13および水石鹸ポンプ20が停止して、ムース状石鹸MSの吐出は自動停止される。
【0033】
一方、図10に示すように、悪意を持った使用者が悪戯などの目的により、吐出器具1の吐出経路6を構成する外挿管6aの先端開口部6c(図1参照)を手Hで塞ぐことがある。ところが、吐出器具1の場合、センサ8は赤外線反射型のセンサであり、その赤外線の投光・受光方向が斜め下方を指向しており、かつ、外挿管6aの先端開口部6cはセンサ8よりも高い場所に位置していることにより、外挿管6aの先端開口部6cをセンサ8の検知領域Gの範囲外にとすることができ、先端開口部6cを塞ぐ位置に手Hがあってもセンサ8はそれを検知することがない。従って、図10に示す状況が発生しても、エアポンプ13および水石鹸ポンプ20は作動せず、ムース状石鹸MS(図1参照)が吐出することもないので、悪戯による被害を回避することができる。
【0034】
また、図11に示すように、吐出器具1が手動式であると勘違いした使用者がセンサ8の検知領域内から伸ばした自分の手Hの掌H1を外挿管6aの先端開口部6c(図1参照)に押し付けたり、悪戯目的の使用者が自分の手Hをセンサ8の検知領域内に置きながら掌H1を先端開口部6c(図1参照)に押し付けたりして、先端開口部6cを閉塞することがある。この場合、手Hがセンサ8の検知領域にあるため、エアポンプ13および水石鹸ポンプ20が作動して、ムース状石鹸MSが送液管6bの先端部6dのフランジ部材38から吐出される。ところが、図7に示すように、フランジ部材38の先端開口部38aは外挿管6aの先端開口部6cよりも上流側に配置されているため、先端開口部38aから吐出したムース状石鹸MSは、先端開口部6cを閉塞している掌Hに跳ね返され傾斜部6i内を逆流し、外挿管6aの内周面とフランジ部材38との間の隙間P1(図9参照)を通過して、隙間P内へ流れ込む。
【0035】
隙間P内へ流れ込んだムース状石鹸MSは、そのまま逆流しようとするが、図7に示すように、外挿管6aの下面領域には貫通部37a,37b,37cが開設されているため、ムース状石鹸MSは貫通部37a,37b,37cのいずれかより、矢線M方向へ排出され、使用者の掌H1または洗面器3内へ流出される。この場合、外挿管6aには大気中に連通する貫通部37a,37b,37cがあるため、先端開口部6cが閉塞された状態でムース状石鹸MSが供給されたとしても、外挿管6a内の圧力が高まることはなく、掌H1と先端開口部6cとの間に隙間からムース状石鹸MSが噴出して顔や衣服などに付着することがない。
【0036】
さらに、図12に示すように、悪戯目的の使用者が自分の手Hをセンサ8の検知領域内に置きながら掌H1を先端開口部6c(図1参照)に押し付けて閉塞するとともに、掌H1で外挿管6aを掴んで貫通部37a,37b,37cまでも閉塞しようとすることがある。このような状況においても、手Hがセンサ8の検知領域にあるため、エアポンプ13および水石鹸ポンプ20が作動してムース状石鹸MSが送液管6bの先端部6dのフランジ部材38から吐出される。
【0037】
ところが、外挿管6aは屈折部6gを介して略へ字状に曲がっているため、貫通部37a,37b,37cを閉塞する目的で外挿管6aを掌H1で掴んだ場合、屈折部6gの内側領域において、掌H1と外挿管6aとの間に隙間が生じる。従って、屈折部6g付近にある貫通部37a,37bを完全に閉塞することはほぼ不可能であり、貫通部37a,37b,37cのいずれかがムース状石鹸MSの流出口として機能するため、掌Hと外挿管6aの隙間からムース状石鹸MSが噴出することがなく、悪戯の被害を回避することができる。
【0038】
以上のことより、使用者の誤認若しくは悪戯などによって水石鹸吐出口である先端開口部6cが閉塞されることがあっても水石鹸の飛散が生じることがなくなるため、水石鹸吐出器具1は安全で快適なものとなる。なお、本実施形態の水石鹸吐出器具1は、水石鹸Sとエアとを混合して形成したムース状石鹸MSを吐出するものであるが、本発明はこれに限定するものではないので、水石鹸のみを吐出する機能を有する水石鹸吐出器具においても広く使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、駅,劇場,ホテル,学校等の不特定多数の人間が利用する公共施設の洗面所に配置して利用することができ、好適には人体検知に基づいて吐水・止水を行う自動水栓と組み合わされて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態である水石鹸吐出器具を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水石鹸吐出器具を用いた水石鹸吐出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す水石鹸吐出器具を上部カバーを外した状態で示す正面側の斜視図である。
【図4】図3に示す水石鹸吐出器具の背面側の斜視図である。
【図5】図4に示す水石鹸吐出器具の一部省略底面図である。
【図6】図5におけるA−A線断面図である。
【図7】図6の一部拡大図である。
【図8】図7におけるB−B線断面図である。
【図9】図7における矢線C方向から見た図である。
【図10】図1に示す水石鹸吐出器具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図11】図1に示す水石鹸吐出器具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図12】図1に示す水石鹸吐出器具の使用状態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 水石鹸吐出器具
2 カウンタ
3 洗面器
4 給水栓
5 本体部
5a 本体カバー
5b 取付孔
6 吐出経路
6a 外挿管
6b 送液管
6c,38a 先端開口部
6d 先端部
6e,6f 基端部
6g 屈折部
6h 水平部
6i 傾斜部
7 センサ窓
8 センサ
9 水石鹸タンク
9a 周壁部
9b 底部
9c 蓋体
10 制御部
11 水石鹸吐出装置
12 水石鹸チューブ
12b,14b 上端部
12a 逆止弁
13 エアポンプ
14 エアチューブ
15,18,19,21,25 電線
16,17 フロートスイッチ
20 水石鹸ポンプ
22 補給ユニット
23 補給ホース
24 エア抜きホース
26 LED
27 電源コード
28 雄ねじ部
28a フランジ
29 雌ねじ部材
29a パッキン
30 取付部
31 固定部材
32 混合室継手
33 気液流路
34 ムースメッシュ
35 ビス
36 ビス孔
37a,37b,37c 貫通部
38,39 フランジ部材
38a 突起部
38h,39h 貫通孔
G 検知領域
H 手
H1 掌
M 矢線
MS ムース状石鹸
S 水石鹸
P,P1 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の接近を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段からの検知信号に基づいて作動するポンプによって供給される水石鹸を先端開口部から吐出する吐出経路とを備えた水石鹸吐出器具において、前記吐出経路を、前記水石鹸の流路となる送液管と、大気中と連通する隙間を設けて前記送液管が内挿された外挿管とからなる二重管構造とし、前記送液管の先端開口部を前記外挿管の先端開口部より上流側に配置したことを特徴とする水石鹸吐出器具。
【請求項2】
前記外挿管の外周には、前記送液管との間に設けられた隙間と大気とを繋ぐ貫通部を設けたことを特徴とする請求項1記載の水石鹸吐出器具。
【請求項3】
前記貫通部を、前記外挿管の下面領域を含む位置に設けたことを特徴とする請求項2記載の水石鹸吐出器具。
【請求項4】
前記外挿管の一部に屈折部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水石鹸吐出器具。
【請求項5】
前記外挿管を硬質な素材で形成すると共に、前記送液管を弾性変形可能な軟質素材で形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水石鹸吐出器具。
【請求項6】
前記水石鹸吐出器具を、カウンタなどの支持体に固定され人体検出手段が設けられた本体部と、前記本体部から略水平方向に突出する前記吐出経路とで構成し、前記外挿管の先端開口部を前記本体部の人体検知手段の検知領域外に配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水石鹸吐出器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−271404(P2006−271404A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90147(P2005−90147)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)