説明

水硬性無機質材料用配合剤

【発明の詳細な説明】
〔技術分野〕
本発明は、主成分として水性エマルジョンを含有する水硬性無機質材料用配合例に関する。
〔従来技術〕
従来より、セメントペースト、モルタル、石こう、コンクリート、グラウト等の水硬性無機質組成物に対して、その接着力、防水性、耐薬品性、曲げ強度、引張強度等の機械的強度、あるいは耐摩耗性等の向上を意図とし、更にはこれらの成形品の外観を向上させて付加価値を高めるために各種の配合剤を添加する提案は多くなされている。
例えば、特開昭60−103061号、特開昭60−251160号、特開昭60−173054号、特開昭57−67061号、特開昭57−77059号、特開昭59−102480号、特開昭58−49653号には、モルタルやセメント等の水硬性無機質組成物に対して、スチレン・塩化ビニル・エチレン三次元重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン等の高分子エマルジョン及びスチレン−ブタジエン系及びスチレン−ブタジエン−メチルメタクリレート等の合成ゴムラテックスの組合せ、複合ポリマーエマルジョン等の各種高分子化合物剤を添加することが開示されている。
これらの従来方法においては、前記した水硬性無機質組成物の諸物性や外観の向上が一応図れるものの、未だこれらの諸性等を十分に満足させるものではなかった。
〔目的〕
本発明の目的は分散安定性が長期間に亘り優れるとともに、前記従来の配合剤と異なり、水硬性無機質材料との混和性(含浸性)に優れ、しかも水硬性無機質材料硬化体の美観を高めることができ、かつ、耐水性、耐溶剤性、機械的性質等の諸性能をも一段と向上することができる水硬性無機質材料用配合剤を提供することにある。
〔構成〕
本発明によれば、平均粒子径が100nm以下で、架橋構造を有すとともに重量分率法で算出される値により高いガラス転移温度を有し、ゼータ電位が−30nv以下であって、分散安定性が長時間に亘り優れる水性エマルジョンを必須成分とすることを特徴とする水硬性無機質材料用配合剤が提供される。
本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンは、第1に、その平均粒子径が100nm以下、好ましくは80nm以下であることを特徴とする。
水性エマルジョンは、本質的に粒子の充填融着によって皮膜が形成されるので、その平均粒子径が小さいことが必要とされるが、本発明においては、前記したようにその平均粒子径を100nm以下、好ましくは80nm以下に限定したことから、水硬性無機質材料への浸漬性が良好であり、熱融着、皮膜及び無機質硬化体の透明性、平滑性、光沢性等の諸性能を大巾に向上することが可能となる。又、微粒子であるので、水硬性無機質材料と本発明の水性エマルジョンの配合別との密着が良好が、水性エマルジョンのブリードアウトがない。
その平均粒子径が100nmを越えると、皮膜が形成される際の融着性(緻密性)が劣り、皮膜及び無機質硬化体の光沢性、透明性及び平滑性が欠ける場合があり、あるいは水性エマルジョンの水硬性無機材料と浸透性を劣り、更には水性エマルジョンのブリードアウトがあるので、本発明の所期の目的を達成することができない。
また、本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンの第2の特徴は、その粒子内および/又は粒子間に架橋構造を有することである。
即ち、本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンは、その粒子内及び/又は粒子間が、例えば原料不飽和単量体の官能基同士、またはこれらと乳化剤を有する官能基とがイオン結合、水素結合、縮合反応あるいは集合反応等によって架橋化されているため、透明性、粘着性、耐水性、耐溶剤性及び機械的強度に優れる皮膜を形成することができる。
更に、本発明の水硬性無機質材料溶配合剤の必須成分である水性エマルジョンの第3の特徴は、重量分率法で算出される値よりも高いガラス転移温度を有することである。
ガラス転移温度(Tg)は、ポリマーを加熱した場合にガラス状のかたい状態からゴム状に変わる現象を起こる温度であり、ポリマーの構造因子である成分のガラス転移温度が既知であれば、ポリマーのガラス転移温度は重量分率法によって次式から求めることができる。


WA;A成分の重量分率WB;B成分の重量分率TgA;A成分のガラス転移温度TgBB;B成分のガラス転移温度 このガラス転移温度は種々の構造因子によって影響をされ、一般に架橋構造を有するポリマーの場合にはそのガラス転移温度は高くなり、またポリマー可塑剤を添加するとガラス転移温度が低下することが知られている。
一方、水性エマルジョンについては、粒子の充填融着により皮膜が形成される最低の温度として最低造膜温度が知られており、この最低造膜温度とガラス転移温度とは比較的な関係にあることが知られている。
本発明の水性エマルジョンは、前記したように重量分率法で算出される値より高いガラス転移温度を示す皮膜形成能を有するもので、緻密な架橋構造であるので、透明性、粘着性、平滑性、耐水性及び耐溶剤性に優れた、更には、硬く、引張り強度、モジョラス強度等の機械的強度の良好な皮膜を形成することができることから、水硬性無機質材料の硬化体の透明性、平滑性、耐水性、耐薬品性及び耐摩耗性等の機械的強度を向上することができる。
本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンの第4の特徴は、ゼータ電位として、−30mV以下、好ましくは−50mV以下の値を有することである。
一般に、水性エマルジョンのような分散型のコロイド粒子は、粒子と溶液の界面の粒子を包む系で界面動電位(ゼータ電位)を有していて、この電荷によりコロイド粒子が反発し、安定な系が保たれており、このゼータ電位が負側に帯電している場合、より低いことが必要とされるが、本発明のポリマーラテックスは前記したようにそのゼータ電位が−30mV以下、好ましくは−50mV以下の値を有するから、分散系におけるコロイド粒子は極めて高い安定性を示す。
また、本発明の水硬性無機質材料用配合例の必須性である水性エマルジョンの第5の特徴は、長期間に亘りその分散安定性に優れていることである。
即ち、本発明に係る水性エマルジョンは平均粒子径が100nm以下のものであるが、このものは、45℃、1週間の強制加熱分散安定性試験に供した場合においても、平均粒子径の変化は実質的なく、変化があった場合でも、通常は平均粒子径が150nm以下の粒子分布の1山分布の粒度分布を示し、また変化率が大きい場合においても、平均粒子径が150nm未満の1山目の粒度分布のものが97%以上であり、粒子の凝集による2山目は300nm以上の粒度分布を有するのが3%以下である2山分布を示し、その平均粒子径の粒度分度が極めて小さいものである。
更に、本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンは、25℃、6ケ月間の長期分散安定性試験を供した場合においても、後記実施例及び比較例から明らかなように、その平均粒子径の変化率が極めて小さい。
従って、本発明に係る水性エマルジョンは、経時によっても粒子同士の合一や凝集が実質的になく、粗大粒子を生成することがないため、経時変化に伴う粒子系の変化、透過率の低下、粘度変化更には外観上の変化等がないことから、長時間に亘り優れた分散安定性を示すものであり、膜を形成した場合、粗大粒子の生成に起因する機械的強度低下をきたさない。
本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンが、上記のように優れた分散安定性を呈する理由は必ずしも明らかではないが、その平均粒子径が100nm以下であることから、粒子間のブラウン運動が比較的活発であり、また系内に残存する重合性もしくは反応性乳化剤によって生じるとされる重合反応や架橋反応等の望ましくない副反応が、本発明において、スルホネート型乳化剤と反応性乳化剤が規則的に配列よく存在すること、更には、後記図面から明らかなように、乳化重合の過程で、原料として使用する不飽和単量体を除いた低分子(低沸点)化合物および(もしくは)粒子同士の合一や凝集を保進すると考えられる低沸点化合物の副生が少ないことから、重合反応や架橋反応等の副反応が抑制されること等の理由により、各粒子が十分に保護されるために、粒子同士の合一や凝集が阻止され、粗大粒子の形成を助長しない点が基本的な要因と推定される。
また、本発明においては、前記水性エマルジョンの分散安定性を向上されるために、例えば、P−ヒドロキシジフェニルアミン、N,N′−ジフェニルジアミン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン等の従来公知の重合禁止剤や重合停止剤を添加することもできる。
また、本発明の水硬性無機質材料用配合剤の必須成分である水性エマルジョンの平均分子量は、一般に数十万以上、多くは数千万〜数億程度のものであり、また架橋化度の高いものにあっては、数千万〜10億程度更にこれより高い分子量を示す場合もある。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明で水硬性無機質材料用配合剤として用いる水性エマルジョンは、不飽和単量体を後記する特定乳化剤の存在下で乳化重合することによって得ることができる。
この不飽和単量体としては、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル類

(式中、R1およびR2は水素またはメチル基、R3は炭素数1〜18のアルキル基)
の他、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどの低級脂肪酸ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン類、塩化ビニル、臭化ビニルなどビニル類、塩化ビニリデン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどアルキルビニルエーテル類、臭化ビニリデンなどのビニリデン類、ブタジエン、クロロプレン、イソプレンなどのジエン類及びビニルピリジン等が例示されるが、(メタ)アクリル酸エステル類、低級脂肪酸ビニルエステル類、ニトリル類及びスチレン類の使用が好ましい。
また、本発明においては、上記不飽和単量体と共重合体させる不飽和単量体として、生成する水性エマルジョンの粒子内および(もしくは)粒子間の架橋構造を更に強固するために及び造膜時に架橋を促進させるために反応性官能基を有する不飽和単量体が好ましく用いられるが、反応性官能基を有しない不飽和単量体であっても、乳化重合系において、活性水素を有する化合物に転換し得る不飽和単量体の使用も可能である。
このような反応性官能基を有す不飽和単量体としては、例えば、下記一般式(II)〜(VII)で示される化合物が挙げられる。これらの単量体は単独または二種以上併用して用いることができ、更に必要により他の共重合可能な不飽和単量体も併用することが可能である。














(式中、R1,R2,R4,R5,R6,R7,R8,R9,B,D,E,t1,t2及びt3は次の通りである。
R1,R2,;水素原子またはメチル基R4;炭素数2〜4のアルキレン基R5;直接結合、炭素数1〜3のアルキレン基、フェニレン基または置換フェニレン基R6;酸素原子または−NH−R7;水素、炭素数1〜5のアルキロール基R8;水素、炭素数1〜5のアルキロール基または炭素数1〜5のアルキル基R9;炭素数1〜4のアルキレン基A;メチレン基またはカルボニル基B;−CH2O−またはカルボキシル基D;水素原子、炭素数1〜3アルキル基、カルボキシル基、

または−CONHCONH2E;水素原子、炭素数1〜3のアルキル基または−CH2COOHt1;0〜20の実数t2;0または1の整数t3;0〜10の整数)
一般式(II),(III),(IV),(V),(VI),(VII)および(VIII)の具体的化合物の例としては、次下に示されるものを挙げることができる。
一般式(II)の例グリシジルアクリレートグリシジルメタクリレートグリシジルクロトネートグリシジルアルリエーテル一般式(III)の例ヒドロキシエチルアクリレートヒドロキシエチルメタクリレートヒドロキシエチルクロトネートヒドロキシプロピルアクリレートヒドロキシプロピルメタクリレートヒドロキシプロピルクロトネートヒドロキシブチルアクリレートヒドロキシブチルメタクリレートポリオキシエチレモノアクリレートポリオキシエチレンモノメタクリレートポリオキシエチレンモノクロトネートポリオキシプロピレンモノアクリレートポリオキシプロピレンモノメタクリレートポリオキシプロピレンモノクロトネートポリオキシブチレンモノアクリレートポリオキシブチレンモノクロトネートヒドロキシエチルアルリエーテルヒドロキシプロピルアリルエーテルヒドロキシブチルアルリエーテルポリオキシエチレアリルエーテルポリオキシプロピレンアリルエーテルポリオキシブチレンアルリエーテル一般式(IV)の例アリルアミンアクリルアミンメタアクリルアミンアミノスチレンα−メチルアミノスチレン一般式(V)の例アクリルアミドメタアクリルアミドアミノプロピルメタクリルアミドモノメチルアクリルアミドモノエチルアクリルアミドジエチロールアミノプロピルアクリルアミド一般式(VI)の例アクリル酸メタクリル酸クロトン酸イタコン酸マレイン酸及びその炭素数1〜5のアルキル基のモノエシテルまたは無水物フマル酸及びその炭素数1〜5のアルキル基のモノエシテルまたは無水物マレイン酸アラニドフマル酸アラニドN−カルバモイルマレイン酸アミドN−カルバモイルフマル酸アミド一般式(VII)の例メチルアリルチオールメチルメルカプトスチレン一般式(VIII)の例N−メチロールアクリル酸アミドN−メチロールメタクリル酸アミドN−メチロールクロトン酸アミドN−(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸アミドN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸アミドN−(2−ヒドロキシプロピル)アクリル酸アミドN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリル酸アミド 上記不飽和単量体と反応性官能基を有する不飽和単量体の使用割合は、99/1〜60/40(重量)であり、好ましくは99/1〜90/10(重量)である。この使用割合が99/1より大きいと、生成する水性エマルジョンの粒子体および粒子間の架橋化が小さくなり、60/40より小さいと乳化共重合体に欠け多量の凝集物を生じたりあるいは造膜性が劣ったり形成する皮膜にヒビ割れやスジ目を生じたりする場合がある。
本発明においては、上記不飽和単量体を乳化重合する際に乳化剤として、下記一般式(IX)(X)、(XI)、(XII)、(XIII)及び(XIV)で示される反応性乳化剤の少なくとも1種、一般式(XV)で示されるスルホネート型乳化剤及び一般式(XVI)で示されるポリオキシアルキレンエチレン性不飽和カルボン酸ポリエステル類(以下、ポリ(メタ)アクロイル画乳化剤と略称する)の少くとも三成分からなるアニオン系乳化剤を用いることが必要である。
















(式中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、a1、a2、a3、a4、M、m及びGは次の通りである。
R10;炭素数2〜4のアルキレン基R11;置換基を有してもよい炭化水素基、フェニル基、アミノ基またはカルボン酸基R12,R16;水素またはメチル基R13;置換基を有してもよい炭化水素基R14,R15;水素または炭素数1〜20のアルキル基で、直鎖状でも分枝鎖状でよく、好ましくはR14またはR15にいずれか一つが水素で他方が炭素数6〜18のものa1,a2,a3,a4;平均付加モル数を示しa1,a2,a3;0〜50の実数a4;1〜50の実数で好ましい分子中のアルキレンオキシドの付加モル数は8以上M;1価または2価の陽イオンm;Mのイオン価







又は−O−CnH2n−g2(R18)g2−O−R16,R17;水素又は炭素数1〜2アルキル基R18;水素又は■R10O■a5H又は

g1;0〜5整数g2;0〜10の整数n;1〜10の整数a5;1〜50の実数

でありy;1〜5の実数R19,R20;水素または炭素数1〜20のアルキル基Y′;炭素数3〜8のアルキレン基、酸素またはカルボニル基)
また、これらの乳化剤は、平均粒子径が超微粒子で粒子内および(もしくは)粒子間に緻密な架橋構造を有し、計算式より求めらる値より高いガラス転移温度を示す皮膜を形成し、更にはゼータ電位が−30mV以下で長期間に亘り粒子同士の合一、凝集が抑制される分散安定性にも優れる超微粒子既架橋水性エマルジョを得るためには、上記不飽和単量体の乳化重合に使用する乳化剤として(a)上記一般式(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)及び(XIV)で示される反応性乳化剤の少くとも1種と、(b)一般式(XV)で示されるスルホネート型乳化剤及び(c)上記一般式(XVI)で示されるポリ(メタ)アクロイル型乳化剤の少くとも三成分を必須成分とし、(a)/(c)=9/1〜1/9重量比、好ましく4/1〜1/4重量比、(b)/(a)+(c)=7/3〜1/9重量比、好ましくは3/2〜1/4重量基で使用される。
この(a)/(c)の使用割合が9/1より大きいと、生成する水性エマルジョンの架橋性および(もしくは分散置安定性が悪くなる場合があり、1/9より小さいと乳化重合時に多量の凝集物を生じたり、生成する水性エマルジョンの平均粒子径が大きくなる場合がある。
また、(b)/(a)+(c)の使用割合が7/3より大きいと、生成する水性エマルジョンの粒子内および/もしくは粒子間の架橋度が小さくなり、形成する皮膜が透明性、耐水性及び耐溶剤性に劣り、1/9より小さいと不飽和単量体のミクロ乳化あるいは可溶化に欠け、生成する水性エマルジョンの平均粒子径が大きくなったり、乳化重合の経過と共に粒子同士が合一、凝集して白濁したり、更には透明もしくは半透明の超微粒子の水性エマルジョンが生成しても、ゼータ電位が負に小さく、長期間に亘り静置保存すると粒子同時の合一、凝集が容易におこり、粗大粒子を生成し、著しく白濁したり、更には水性エマルジョンが層分離を生じたり、もしくは粘度が顕著に増大する。
これら乳化剤は、上記割合で使用することにより、超微粒子で、架橋構造を有し、重量分率法で算出される値より高いガラス転移温度を示し、ゼータ電位が負に高く帯電し、更には長期間に亘り粒子同士の合一、凝集が抑制される分散安定性に優れる水性エマルジョンを生成することができる。
また、これらの乳化剤の使用量は、乳化重合対象不飽和単量体に対して0.1〜15重量%程度が適当であり、好ましくは0.5〜10重量%である。
又、公知のアニオン性、ノニオン性およびカチオン性界面活性剤を必要に応じて添加してもよく、その具体例としは、高級アルコール、高級アルコール酸化アルキレン付加体、アルキルフェノール酸化アルキレン付加体およびスチレン化フェノール酸化アルキレン付加体のサルフエート型、α−オレフィン等のオレフィンスルホネート型、長鎖アルキルアミン酸化アルキレン付加体及びジ長鎖アルキルアミン酸化アルキレン付加体の各々の第4アンモニウム塩型、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホン酸モノアミドのナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネート、漂白セラミックス樹脂、4−ヒドロキシ−4,5−ジカルボンペンタデカン酸もしくは4,5−ジカルボキシ−ペンタデカノロイドの有機及び無機塩等が例示される。
特に、水硬性無機室材料(セメント、石膏等)と本発明の水性エマルジョン等の配合品に凝集物(ダマ)を生成する場合には、上記のポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)ジアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテル、ポリオキシプロピレンエチレングリコール等のノニオン界面活性剤を上記(a)、(b)及び(c)の乳化剤組成物に配合するとダマの抑制に効果的である。
そして、本発明の水硬性無機質材料用配合剤である水性エマルジョンを得るに当っては、上記不飽和単量体および上記乳化剤の存在下で従来公知の乳化重合方法をそのまま使用することができる。たとえば不飽和単量体の0.1〜5重量%に相当する重合開始剤の存在下に、不飽和単量体の重合体が10〜60重量%の濃度で水に乳化分散させ、乳化重合を遂行させればよい。
重合開始剤としては通常の乳化重合に用いられる水溶性単独開始剤や水溶性レドックス開示剤が用いられ、このようなものとしては、例えば、過酸化水素単独または過酸化水素と酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸などのカルボン酸との組合せや、過酸化水素と、シュウ酸、スルフィン酸およびこれらの塩類又はオキシアルデヒド類、水溶性鉄塩などとの組合せの他、過硫酸塩、過炭素塩、過硼酸塩類などの過酸化物及び2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)とその塩、2,2′アゾビス(N,N′−ジメチレン−イゾブチルアミジン)とその塩、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)とその塩等の水溶性アゾ径開始剤が使用可能である。
特に、水溶性アゾ系の上記開始剤を使用すると、本発明の水硬性無機質材料溶配合剤である水性エマルジョンの調製が容易である。
また、水溶性のノニオン性高分子物質、アニオン性高分子物質、更には必要に応じてカチオン性高分子物質等を併用することができる。更に、従来の方法で通常使用する可塑剤、pH調製剤も必要に応じて併用することができる。
ノニオン性高分子物質としては、ポリビニルアルコール、デキストリン、ヒドロキシエチルデンプンのようなデンプン誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のようなセルロール誘導体が挙げらる。
アニオン性高分子物質としては、アニオン化ヒドロキシエチルセルロース、アニオン化デンプン、アニオン化グアーガム、アニオン化キトサン、カルボキシメチルセルロース、アニオン化ポリビニルアルコール等の重合体が挙げられる。
また、必要に応じて併用するカチオン性高分子物質としては、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン化デンプン、カチオン化グアーガム、カチオン化キトサンおよび、カチオン性(メタ)アクリル酸アミド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド等の重合体が挙げられる。
これら、ノニオン性高分子物質、アニオン性高分子物質及び必要に応じて併用するカチオン性高分子物質は適宜に一種または、二種以上を使用することができるが、その添加量は乳化重合対象単量体に対して0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%使用するのが適当である。
また、可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステル等が使用できる。更にpH調製剤としては炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の塩を0.01〜3重量%の範囲で併用しうる。
本発明に係る前記配合剤を用いて水硬性無機質材料を得るには、セメントペースト、モルタル、石膏、コンクリート、グラウト等の水硬性無機質組成物に前記特定の水性エマルジョンを添加し、必要に応じ各種補助添加成分を混合し、ついで公知の手段によって硬化させればよい。
本発明で用いられる補助添加成分としては、着色顔料および早強剤、分散剤、防水剤、消泡剤、連結防止剤、防腐剤、導電(帯電防止)剤ならびに強化剤などが挙げられる。
この場合、着色顔料としては、たとえばチタン白、オキサイドイエロー、チタンイエロー、ベンガラ、アイアンブラック、群青、クロムグリーン、紫ベンガラなどが挙げられる。
また、早強剤としては塩化カルシウムなどが、分散剤としては、リグニンスルホン酸塩系、オキシカルボン酸塩系などが、防水剤としてはステアリン酸カルシウムなどが、消泡剤としてはトリブチルホスヘイト及びポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン(ジ)アルキルフェニルエーテルなどが、凍結防止剤としては含窒素硫黄系化合物が、導電(帯電防止)剤としては、鉄粉、銅粉などの金沿粉あるいはカーボブラックなどが、強化剤としては炭素繊維、グラスフィバー、合成樹脂ファイバーなどが使用できる。
〔効果〕
本発明の水硬性無機質材料用配合剤は、平均粒子径が100nm以下で、架橋構造を有し、重量分率法で算出される値よりも高いガラス転移温度を有し、分散安定数が長期間に亘って優れつ水性エマルジョンを必須成分としたことから、従来の水硬性無機質材料用配合剤と異なり、水硬性無機質材料の硬化体の美観を高めることができ、耐水性、耐溶剤性、更には曲げ強度、圧縮強度、耐摩耗性等の機械的強度等の諸性能を一段と向上することができるので、その実用的価値が極めて高いものである。
従って、本発明の水硬性無機質材料用配合剤を用いたポリマーセメントモルタル(コンクリート)および石膏等の水硬性無機質材料組成物は、建築異物の外装(補修)材、タイル張り接着剤、倉庫、通路、家畜飼育場、ガソリンスタンド等の床材、ALC鉄筋防食工場床等の防食ライニング、貯水タンク、プール、サイロ、テニスコート下地等の防水剤、船舶デッキ、橋梁デッキ等のデッキカバーリング材、耐酸ヒューム管、GRC製品等の特殊コンクリート成形品、バスターミナル、トンネル内の半剛性路、コンクリート躯体の吹き付け保護塗装材、導色性塗装材、電磁波シールド材、超強度成形品、重防食塗材、モルタル浮き補修、斜張橋ワイヤー等のグラウト材、化粧瓶、瓦、インターロッキング等の化粧成形品の塗材としては優れたものである。
〔実 施 例〕
次に、本発明に更に詳細に説明するために、以下に実施例を示す。
実施例1 温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に第1表に示す乳化剤8重量部と水150重量部を仕込んで溶解し、系内を窒素ガスで置換した。別にアクリル酸エチル90重量部、メタクリル酸メチル60重量部、N−メチロールアクリル酸アミド4.5重量部及び水1.5重量部からなる不飽和単量体混合物156重量部に調製し、このうち15重量部を前記反応容器に加え、40℃で30分間乳化を行った。次いで60℃に昇温したのち、重合開始剤2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)塩酸塩を9.0×10-3mole/水相lになるように48.5重量部の水に溶解し、前記反応容器に添加し、直ちに残部の不飽和単量体を30分間わたって反応容器内に連続的に滴下し、60℃で重合を行った。不飽和単量体の滴下終了後、60℃で60分間熟成した。
〔水性エマルジョンの評価〕
このようにして得られた水性エマルジョンの平均粒子径、架橋性、ゼータ電位、造膜性、ガラス転移温度及び皮膜特性は以下の方法で測定した。
平均粒子径:コールターサブミクロン粒子アナライザー(米国、コールター・エレクトロニクス社性、Coulter Model N4型)により平均粒子径を測定した。
架橋性:固形分が40重量%になるように調製した水性エマルジョン30gを12cm×14cmのガラス板の均一になるように流延し、25℃にて風乾した。このようにして得られた皮膜を2cm×4cmに切断し、20℃のベンゼンを満したシャーレの中に48時間浸漬し、皮膜の膨潤度、溶解性を基準にして下の通り評価した。
○;ベンゼンに浸漬前の皮膜面積(2cm×4cm)と同等かもしくはわずかに膨潤している程度である。
△;膨潤度が大きく、皮膜形状が損なわれているもの。
×;皮膜がベンゼンに溶解し均一な液状になったもの。
ゼータ電位;レーザー回転プリズム方式コロイド粒子ゼータ電位測定装置(米国、PEN KEN INC製LASER ZEETM Model 500型)によりゼータ電位を測定した。
造膜性;25℃で風乾して皮膜を形成させ、形成した皮膜の状態を視覚にて評価した。
○;平滑で均一な皮膜を形成する。
△;網目状すじのある皮膜を形成する。
×;皮膜を形成しない。
ガラス転移温度(Tg)
セイコー電子工業(株)製熱分折測定装置(SSC 5000 DSC 200)を用い、Tgを測定した。尚、計算値のTgは重量分率法(前出)により算出した。
〔皮膜特性の評価〕
固形分を20重量%に調製した上記水性エマルジョン30重量部を、12cm×14cmのガラス板に均一に流延し、25℃で風乾し、皮膜を形成され、皮膜時性を評価した。皮膜特性は以下の基準により評価した。
透明性:JIS K 6714に準じ、積分式光線透過率測定装置により皮膜の曇り価を測定した。
耐水性:皮膜を2cm×4cmの寸法大に切断し、20℃の水に満したシャーレの中に浸漬して、皮膜の白価するまでの時間を視覚した判定した。
○;10日以上△;2日以上、10日未満×;2日未満粘着性;皮膜表面を指触し、ベタ付き感を次の基準にて評価した。
○;べた付き感なし△;ややべた付く×;べた付く伸びと強度;JIS K−6781に準じ、ダンベルを作成し、引張り破断時の強度、伸び率及び50%、100%及び200%モジュラス強度を測定した。
〔水硬性無機質材料の調製と性能評価〕
JIS A6204(1982年)に準じ、日本セメント(株)製アサノセメント475Kg/m3、細骨材(比重:2.64、粗砕率:2.42)950Kg/m3、20重量%の添加量の水性エマルジョン及びフロー値が140±5になるように水を添加してなるモルタル組成物を25℃で材令28日後以下の基準で外観、曲げ強度、圧縮強度、耐摩耗性、耐水性、耐海水性、耐溶剤性及び耐酸性を評価した。
外観:JIS A1108に準じて整形した硬価化体の表面を以下の基準で視覚判定した。
○;硬化体表面に光沢があり、平滑である。
△;硬化体表面の光沢がやや劣る。
×;硬化体表面の平滑性が欠ける。
曲げ強度:JIS A1106に準じて測定した。
圧縮強度:JIS A1108に準じて測定した。
耐摩耗性:上記モルタル組成物を用い、50mmφ×50mmの円筒状になるように硬化体を調製し、材令28日後、この硬化体を10メッシュのフルイの上にのせ、ロータップ式振とう法((株)平工製作所製)で2分間振とうを行い、次式により耐摩耗性を評価した。


A;振とう前の重量(g)
B;振とう後の重量(g)
耐水性、耐海水性、耐溶剤性:材令28日後の圧縮強度の測定に用いた同等の供試体を脱イオン水、海水、ベンゼンに28日間浸漬し、以下の基準で評価した。
○;浸漬前の供試体と同等にモルタル表面に光沢がある。
△;モルタル表面に光沢がない×;モルタル表面が白化している。
耐酸性;材令28日後の圧縮強度の測定に用いた同等の供試体を1重量%の塩酸水溶液に28日間浸漬し、以下の基準で評価した。
○;浸漬前の供試体に比べ、供試体の表面がやや白化しているが、形状の変化は全くない。
△;供試体表面の白化があり、形状の表面がやや浸食されている。
×;供試体表面の白化が著しく浸食が顕著で形状が損傷している。
このようにして得られた水性エマルジョンの性状とモルタル組成物の性能を表−1及び表−2に示す。試料No.1、2、3及び4は本発明の実施例であり、強度(圧縮強度、曲げ強度)及び耐水性が著しく良好であることが判る。尚、試料No.5、6及びA〜Dは比較例である。






実施例2 表−3に示す割合で(a)ステアリル2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロピルサクシネートスルホン酸ナトリウム、(b)分岐鎖状の炭素数10〜14のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム/キシレンスルホン酸ナトリウム=98/2重量比、(c)ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンP,P′−イソプロピリデンジフェニルエーテルジアクリル酸エステル(PO■=2、EO■=18)を乳化剤とし、アクリル酸エチル90重量部、メタクリル酸メチル60重量部、N−メチロールアクリル酸アミド4.5重量部及び水1.5重量部からなる不飽和単量体混合物156重量部を用い、実施例1と同様に乳化重合を行って水性エマルジョンを調製した。
このようにして得られた水性エマルジョンの性状及び25℃で風乾し、形勢する皮膜の特性及び水硬性無機質材料用配合剤としての性能を実施例1と同様に測定し評価した。結果を表−3及び表−4に示す。
試料No8,9,12及び13は本発明の実施例であり、試料No7,10,11及び14は比較例である。








実施例4 表−5に示す次の乳化剤E−1及びE−2、および



以下に示す不飽和単量体混合物M−1及びM2を調整し、



実施例1に準じて乳化重合を行い、水性エマルジョンを調製した。得られた水性エマルジョンの性状及び30℃で風乾し形成する皮膜の特性及び水硬性無機質材料成形体としての性能を実施例1に準じて測定し、評価した。結果を表−5と表−6に示す。試料No.15及び16は本発明の実施例である。




実施例4 実施例1,2及び3の試料No.1,3,8,12及び15の乳化剤組成物の75重量%(6.0重量部)とポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(EO■=14)2.0重量部を乳化剤組成(8.0重量部)として用い、試料No.に対応する実施例1,2及び3に準じて水性エマルジョンを調製した。
更に、これら水性エマルジョンを用いて、次に示すポリマーセメントモルタルを調製し、型枠が外された鉄筋コンクリート性の建築構造物の外壁仕上げ用ポリマーセメントモルタルとして、吹き付け仕上げ剤(フロー値230のものを使用)あるいは左管仕上げ剤(フロー値180のものを使用)の評価を行った。


結果を表−7及び8に示す。試料No.17〜21は本発明の実施例である。
また、試料No.17〜21(表−8)より本発明の水硬性無機質材料用配合剤はポリマーセメントモルタル用の配合剤としても最適であることが判る。




なお、ポリマーセメントモルタルの性能評価は次の方法で測定評価した。
*1:ダマ量

*2:厚塗り性 鉄筋コンクリート製建築構造物の外壁として、ポリマーセメントモルタルを吹き付けあるいは左管仕上げする際に、ポリマーセメントモルタルにダレを生じない時の厚さを測定した。
*3:ポリマーのブリードアウト 調整直後のポリマーセメントモルタルを1■のビーカーに500g採り、10分間静置したのち、ポリマーセメントモルタルの上層部にポリマーのブリードの有無を視覚にて判定した。
*4:美観 ポリマーセメントモルタルの吹き付けあるいは左管仕上げた外壁を材令28日後、視覚にて判定した。
*5:耐水性 調製直後のポリマーセメントモルタル250gを(株)井内盛栄堂社製150mlデスポーサブレカップ(PP)に、空気が混入しないように均一に充填する。
次いで、2日間静置後、型枠を切り取り、更に26日間室温にて静置(材令)したのち、この硬化体を25℃の水道水で満した500mlのビーカーの中に浸漬し、硬化体表面が白化したり膨潤したりするまでの時間を測定した。
*6:耐摩耗性 50mmφ×50mmの円筒状になるようにポリマーセメントモルタルの硬化体を調製し、材令28日後、このポリマーセメントモルタル硬化体を10メッシュのふるいの上にのせ、ロータップ式振とう法((株)平工製作所製)で2分間振とうを行い、次式により耐摩耗性の評価を行った。


A;振とう前の重量(g)
B;振とう後の重量(g)
実施例5 焼石膏とシラスより得られる微細中空ガラス球とを表−9に示す割合に従って配合し、均一に混合して石膏ボード材料を得た。次に、この石膏ボード材料が完全にスラリー化し得る最少量の水をとり、この水中に化学式

で示される化合物(撥水剤)と、実施例1の試料No.1の水性エマルジョンとを表−9に示す割合に従って添加し、均一に混合した。そして、この混合物に前記石膏ボード材料を添加して均一に混合した後、150mm×180mm×9mmのボードに成形し、80℃で恒量になるまで脱水乾燥した。こうして得られたものをテストボードとし、曲げ強度、圧縮強度及び耐水性(吸水率)を測定して表−9に示す結果を得た。
また、比較のため焼石膏とシラスより得られる微細中空ガラス球との割合配合、あるいは前記撥水剤や前記水性エマルジョンの配合量を変えてテストボードを作成し、同様に吸水率と曲げ強度と耐水性、吸水率、外観を測定した。
なお、吸水率の測定は、テストボードを30℃の水中に浸漬して吸水させ、24時間後の吸水量から、下記の式に従って吸水率を求めた。


また、曲げ強度及び圧縮強度の測定は、JIS K−7203及びJIS K−6911に準じておこなった。
このようにして得られた石膏ボードの性能を表−8に示す。試料No.26〜33は本発明の実施例であり、試料No.34〜38は比較例である。


実施例6 前記試料No.1〜16の水性エマルジョンの分散安定性を以下の要領で評価した。その結果を表−10に示す。なお、分散安定性試験は以下によった。
〔分散安定性〕
固形分濃度を40重量%に調整した水性エマルジョン150gを220mlのガラスびんに入れ密閉したのち、25℃の恒温室に6ケ月及び45℃の恒温室に1週間各々静置した後、外観、透過率、粘度及び平均粒子径を測定し、水性エマルジョンの分散安定性を評価した。尚、外観、透過率、粘度及び平均粒子径は次の方法で測定した。
外観:25℃で視覚判定により、次の基準で評価した。
○;透明もしくは半透明液体△;白濁液体×;白濁ペーストもしくは白濁で二層に分離透過率;分光光度計(日本分光工業株式会社製デジタルダブルビーム分光光度計UVIDEC−320)を用い、波光800nmの光照射下での吸光度を求め、光透過率(%)を算出した。
粘度:ブルックフィールド型粘度計(株式会社東京計器社製B型粘度計)を用い、25℃の粘度を測定した。
平均粒子径;コールターサブミクロン粒子アナライザー(米国、コールタール・エレクトロニクス社製、Coulter,Model N4型)により平均粒子径で測定した。
又、45℃の恒温室に1週間静置した強性加熱分散安定性試験に供した試料1〜4、8,9,12,13及び15〜16の水性エマルジョンを実施例1に準じて皮膜を形成し、実施例1に準じ皮膜特性及び水硬性無機質材料用配合剤としての性能を測定した。透明性、耐水性、粘着剤、耐溶剤性(架橋性)、機械的強度及び水硬性無機質材料用配合剤としての評価はいずれも実施例1,2及び3の結果とほぼ同様の良好な結果が得られた。
静置安定性試験前後の粘度分布の変化をグラフにして示すと第1図(A)及び第1図(B)の通りである。尚、表−1の試料No5は、45℃、1週間静置試験後、超大粒子が多く、分散性不良につき測定不可であったため、試料No1及び試料No5のいずれも25℃、6ケ月静置後の粒度分布の変化を図示し、比較した。
また、実施例1(試料No.1)及び実施例1(試料No.5)の水性エマルジョンを25℃、6ケ月静置後、水性エマルジョン中の低沸点成分の変化を次の条件によりガスクロマトグラフを用いて分析した。
結果を第2図(A)及び第2図(B)に示す。


ガスクロマトグラフ(島津製作所製GC−6AM型 検出器FID)
カラム:Porapak Type Q 50cm(Waters Associates Inc.,製)
キャリアーガス:N2 20ml/分昇温条件:Initial 160℃Final 230℃昇温速度 5℃/分Hold Time 10分FID感度:104

【図面の簡単な説明】
第1図(A)及び第1図(B)は、各々本発明品(試料No.1)及び比較品(試料No.5)の水性エマルジョンの25℃、6ヶ月間静置後の粘度分布の変化を表わすグラフである。
第2図(A)及び第2図(B)は各々本発明品(試料No.1)並びに比較品(試料No.5)の水性エマルジョンを25℃、6ヶ月静置した後の水性エマルジョン中の低沸点成分の変化を表わすグラフである。
第2図(A)及び第2図(B)のピークは次の通りである。
■は溶媒のメタノールのピーク、
■は原料モノマーのアクリル酸エチルおよびメタクリル酸メチルのピーク、
■は乳化剤のポリオキシエチレン−P,P′−イソプロピリデンジフェニルエーテル(EO■=20)のジメタクリル酸エステル由来のピーク、
■、■、■、■及び■は原料に由来しない低沸点成分によるピークである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】平均粒子径が100nm以下で、架橋構造を有するととも重量分率法で算出される値より高いガラス転移温度を有し、ゼータ電位が−30mV以下であって、分散安定性が長期間に亘り優れる水性エマルジョンを必須成分とすることを特徴とする水硬性無機質材料用配合剤。

【第1図(A)】
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【第1図(B)】
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【第2図(A)】
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【第2図(B)】
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【特許番号】第2568420号
【登録日】平成8年(1996)10月3日
【発行日】平成9年(1997)1月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−323275
【出願日】昭和62年(1987)12月21日
【公開番号】特開平1−164747
【公開日】平成1年(1989)6月28日
【出願人】(999999999)ライオン株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭63−260846(JP,A)