説明

水素化スズの製造方法及び製造装置

【課題】 安全かつ効率よく製造するとともに、簡易な構成によって、簡便な処理と優れた操作性を有する水素化スズの製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】 スズ化合物と水素化合物との反応により生成した反応部1からの水素化スズを精製処理しつつ捕集し、捕集された水素化スズを所定容器4に充填する水素化スズの製造方法において、前記反応を形成する温度以下かつ水素化スズの沸点(−50℃)以上の温度でトラップした後、水素化スズの融点(−150℃)以下の温度で捕集することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化スズの製造方法及び製造装置に関するもので、例えば、半導体導電膜形成用原料ガス供給装置や紫外発光装置プラズマ用ガス供給装置等に用いる水素化スズの製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素化スズは、一時期アモルファスシリコンを用いた積層型太陽電池あるいは透明電導膜の原料として注目されたことがあった。一方、水素化スズは、不安定な物質で、これを常温で容器に充填して保存した場合、充填した水素化スズが非常に短期間で分解してしまうことから、水素化スズを耐圧容器に貯蔵あるいはこれを運搬することができず、使用する際には、製造しながら貯留せずに使用するか、あるいは容器に充填後、―30℃程度に冷却しておいた場合であっても短時日の間に消費しなければならず、極めて取扱いが困難であった。そこで、こうした課題を含め、水素化スズの製造方法から利用方法など多面的な研究開発が行われ、その製造方法や安定化方法についてのいくつかの提案があった(例えば特許文献1または2参照)。
【0003】
具体的には、水素化スズの製造方法として、塩化第2スズ(SnCL)と水素化リチウムアルミニウム(LiALH)を原料とし、図6に示すような、水素化スズの製造に使用する反応装置を用いた方法を挙げることができる。冷媒101aによって冷却される還流冷却器101bを有する500mLのセパラブルフラスコには、攪拌機101c、温度計101dが取り付けられている。このフラスコ101の上部には、SnCLのエーテルスラリーをフラスコ内に滴下するロート102が取付けられ、このロート102には攪拌機102aが設けられている。上記フラスコ101の下部は冷媒浴103に浸漬されフラスコ内部を−60〜−40℃に保持するようになっている。また、フラスコ101より放出されるガス流路104には−110℃に保持された第1トラップ105、液体窒素で冷却された第2トラップ106が順次設けられ真空系107に接続されている。上記ガス流路104には圧力計104aが取付けられる。また上記フラスコ101には系内にHe108を導入する導入管が設けられている(特許文献1参照)。
【0004】
また、水素化スズを容器に充填して−30℃程度に保持しておいた場合、容器の表面の状態、材料、あるいは光照射の強弱等により若干の差はあるものの、いずれの場合においても充填した水素化スズのほとんどが数日で分解してしまうことから、水素化スズの安定化方法として、水素化スズを容器に充填し、容器内の温度を−150℃ないし−70℃に保持することが提案されている。具体的には、ガラスやアルミニウム合金あるいはステンレス鋼(SUS316やSUS304)について実験し、下表1(水素化スズの80%分解に要する日数)および下表2(−78℃における20日後の分解率)のような結果が示されている(特許文献2参照)。
【表1】

【表2】

【0005】
【特許文献1】特開昭60−161306号公報
【特許文献2】特開昭60−42203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水素化スズは、極めて反応性の高い毒性・可燃性の液化ガスであり、低温を維持する必要のある従来の製造プロセスでは、ガラス設備などを必要とし、安全上に問題があり、少量規模でしか製造できないという課題があることから実用化が困難であった。また、太陽電池あるいは透明電導膜等の用途についても、他の優れた技術の進展によって、現状未だ実用化がされない状況にある。さらに、こうした状況に関連して、実用可能な具体的な水素化スズの製造方法や製造装置に関する情報は非常に乏しく、その資料はほとんど見当たらない。一方、昨今例えば、半導体導電膜形成用原料ガス供給装置や紫外発光装置プラズマ用ガス供給装置等において、水素化スズの有用性が見出され、こうした用途への需要が増大し、その処理の簡便性や操作性の改善が要請されている。
【0007】
本発明の目的は、例えば、半導体導電膜形成用原料ガス供給装置や紫外発光装置プラズマ用ガス供給装置等に用いる水素化スズを、安全かつ効率よく製造するとともに、簡易な構成によって、簡便な処理と優れた操作性を有する水素化スズの製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す水素化スズの製造方法及び製造装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、スズ化合物と水素化合物との反応により生成した反応部からの水素化スズを捕集し、精製処理した後に、所定容器に充填する水素化スズの製造方法において、前記反応を形成する温度以下かつ水素化スズの沸点(−50℃)以上の温度でトラップした後、水素化スズの融点(−150℃)以下の温度で捕集することを特徴とする。
【0010】
水素化スズは、極めて反応性の高い毒性・可燃性がある反面、その特性が十分に把握できていない状況において、安定的にかつ操作性よく製造する方法が要請されている。つまり、本発明の水素化スズの製造プロセスにおいては、不純物の除去と反応性生物である水素化スズの効率のよい捕集が必要となる。不純物の除去については、後述する生成反応において、反応を形成する温度以下かつ水素化スズの沸点以上の温度、つまり約−50℃程度でのトラップによって、効率よく不純物を除去することができることが判った。また、水素化スズの捕集については、液化のプロセスを経ずに一気に固化させることによって、非常に捕集効率を上げることが可能であることが判った。本発明は、こうした基本的な処理手段からなる簡易な構成において、その製造プロセスを創意することによって、優れた操作性を有し、安全かつ非常に生産効率の高い水素化スズの製造方法を提供することが可能となった。
【0011】
本発明は、上記水素化スズの製造方法であって、少なくとも前記反応部から前記所定容器までの流路および該所定容器内部を樹脂コーティングするとともに、該流路の温度を水冷温度(10℃)以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に保持することを特徴とする。
【0012】
水素化スズは、極めて反応性が高く、既述の文献においても−70〜−150℃に維持することが必要であるとされている(特許文献2:請求の範囲の記載参照)。本発明者の検証においても、後述するように同様の結果が得られたが、その一方新たな知見を得ることができた。つまり、水素化スズの分解に起因するファクタとして、温度、圧力、表面の3つがあり、できるだけ高い温度・圧力条件で分解を抑制するためには、表面での分解反応を抑えるための皮膜を形成する必要がある。また、通常使用される配管あるいは容器の素材(例えばステンレス鋼などの接ガス材料をいう)では、その表面反応によって容易に分解され(ここでは「一次反応」という)、その分解生成されたスズの存在によって、さらにその分解反応が加速する(ここでは「二次反応」という)との知見を得た。従って、分解反応を低減するには、こうした一次反応を抑制することが非常に重要であり、検証過程において、接ガス材料の表面、つまり反応部から所定容器までの流路および該所定容器内部を樹脂コーティングすることによって大幅に分解反応を低減することが可能となった。さらに、こうした機能は低温ほど高く、温度制御が容易な10〜−50℃の温度での温度範囲に保持することによって、簡易な構成によって、簡便な処理と優れた操作性を有する水素化スズの製造方法を提供することが可能となった。
【0013】
本発明は、上記水素化スズの製造方法であって、前記所定容器への水素化スズの充填操作において、予め前記所定容器までの流路を減圧状態とし、捕集された水素化スズの温度を徐々に上昇させ、水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度まで上げて蒸気圧を上昇させ、水素化スズの融点以下の温度に保持された前記所定容器の内部圧力との圧力差によって水素化スズを移送し充填することを特徴とする。
【0014】
凍結捕集された水素化スズの移送には、加熱して溶液状態とした後にキャリアガスに同伴させる方法やキャリアガスの液面加圧により押し出す方法も可能であるが、いずれもキャリアガス中への混入あるいは流路壁面や間隙部への付着などによって水素化スズの損失を生じるおそれがある。本発明は、減圧条件下で、凍結された水素化スズを徐々に加熱して蒸散させると同時に、所定容器を融点以下の温度に保持し、両者の蒸気圧の差を移送の推進力とすることによって、徐々に拡大する蒸気圧の差に応じた水素化スズの移送を可能とし、水素化スズの残留成分がほとんどなく流路壁面や間隙部への付着などを最小とすることが可能となった。これによって、安全かつ非常に生産効率の高い水素化スズの製造方法を提供することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記水素化スズの製造方法であって、前記所定容器を水素化スズの融点以下の温度領域で制御された貯蔵設備に保管し、充填された水素化スズを固体化して保存することを特徴とする。
【0016】
上記のように、水素化スズは、その温度条件によって非常に大きな影響を受ける性質があるとともに、1バッチの製造工程から大量の水素化スズを供給することが難しいことから、所定容器に充填された状態で所定の期間保管できることが好ましくい。本発明は、そうした要請に対応する方法を提案するもので、液体ガスとして保管するのではなく、固体化した状態で保存することによって、長期の安定性を確保し、確実な供給ができる水素化スズの製造方法を提供することが可能となった。
【0017】
本発明は、スズ化合物と水素化合物とを混合・反応させて水素化スズを生成させる反応部、生成した水素化スズを精製する精製部、精製された水素化スズを捕集する捕集部、捕集された水素化スズを移送し充填する所定容器からなる水素化スズの製造装置において、少なくとも前記反応部から所定容器までの流路および該所定容器内部が樹脂コーティングされるとともに、該流路が水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に制御され、前記精製部が前記反応槽の制御温度以下かつ水素化スズの沸点以上の温度範囲に制御され、前記捕集部が水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度から水素化スズの融点以下の温度までの温度範囲で制御されることを特徴とする。
【0018】
水素化スズの製造装置においては、不純物の除去と反応性生物である水素化スズの効率のよい捕集が必要となるとともに、捕集した水素化スズの安定した移送あるいは保存が必要となる。本発明は、水素化スズの極めて反応性の高い特性を検証した結果、これらの要請を充足する条件として、移送流路および所定容器内部を樹脂コーティングし、移送流路や精製部および捕集部を適正な温度範囲に制御し、液化させずに固体化して捕集することによって、簡易な構成によって、優れた操作性を有し、安全かつ非常に生産効率の高い水素化スズの製造装置を提供することが可能となった。
【0019】
本発明は、上記水素化スズの製造装置であって、前記捕集部が、直列に接続された複数の捕集槽から構成され、下流の捕集槽の導入路先端部が、上流の捕集槽の導入路先端部よりも各捕集槽の内底部に近接することを特徴とする。
【0020】
こうした構成を有することによって、最適な捕集部を形成したもので、複数の捕集槽を直列に配置し徐々に捕集することによって、閉塞状態を回避し効率よく捕集することを図った。また、捕集槽内部での導入路先端部の位置が重要であり、例えば先端部を捕集槽の内底面に近接させることによって、槽内壁面部への水素化スズの固体化が効率よくかつ均等に行われるようにし、上流の広い空間での捕集、下流の壁面近傍での捕集を図った。さらに、こうした構成においては、下流の捕集槽ほどその純度が高く、捕集効率が高くなることから、水素化スズの移送時において、下流の捕集槽から水素化スズが優先して供出され、より効率よく水素化スズを製造することができる。
【0021】
本発明は、上記水素化スズの製造装置であって、前記捕集部の導入路先端部を円錐状とし、かつ該円錐状の開口部分が、所定の傾斜角を有する切断面を形成することを特徴とする。
【0022】
捕集部をこうした構成とすることによって、円錐形の拡散機能による部分的な固体化の発生を防止し、傾斜切断面による凝縮物の流路に対する流通障害の排除を図り、導入路先端部での閉塞防止効果を確保することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、スズ化合物と水素化合物とを混合・反応させて水素化スズを生成させる反応部、生成した水素化スズを精製する精製部、精製された水素化スズを捕集する捕集部、捕集された水素化スズを充填する所定容器から構成され、少なくとも反応部から所定容器までの流路および該所定容器内部が樹脂コーティングされるとともに、該流路が水冷温度(10℃)以下水素化スズの沸点(−50℃)以上の温度範囲に制御され、精製部が反応槽の制御温度以下かつ水素化スズの沸点以上の温度範囲に制御され、捕集部が水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度から水素化スズの融点(−150℃)以下の温度までの温度範囲で制御される水素化スズの製造装置を基本とする。
【0024】
<本発明に係る水素化スズの製造装置の基本構成例>
図1は、本発明に係る水素化スズの製造装置(以下「本装置」という)を例示する概略図である。本装置は、水素化スズを生成させる反応槽1(反応部に相当する)、生成した水素化スズから水分などの不純物を除去するトラップ2(精製部に相当する)、精製された水素化スズを捕集する捕集槽3(捕集部に相当し、本装置では2つのする捕集槽3a,3bから構成される)、捕集された水素化スズを充填する充填容器4(所定容器に相当する)から構成される。各構成要素の容量や供給される反応液あるいはキャリアガスなどの流量は要求される仕様によって任意に選択される。
【0025】
反応槽1にはスズ化合物が溜められ、水素化合物供給部5から液送ポンプLによって供給された水素化合物と反応し水素化スズを生成させる。水素化合物供給部5の供出部には開閉弁V1が配設され、反応槽1、トラップ2、捕集槽3a,3bの各導入部および供出部には、それぞれ開閉弁V2〜V9が配設され、充填容器4の導入部には開閉弁V10が配設されている。さらに、捕集槽3a,3bの各供出部および充填容器4の導入部には、圧力計P1〜P3が設けられて、充填容器4への水素化スズの導入に供される。また、捕集槽3bから充填容器4への流路にはバイパス流路が設けられ、開閉弁V11および水素化スズ除害筒6を介して吸引ポンプEに吸引されて排気される。キャリアガスは、充填容器4への水素化スズ導入時に必要に応じて使用され、開閉弁V12を介して捕集槽3a,3bに供給される。ここで、本装置を構成する配管、開閉弁V1〜V12、圧力計P1〜P3、反応槽1、トラップ2、捕集槽3a,3b、充填容器4、水素化スズ除害筒6は、全て耐圧性・耐低温性に優れたステンレス鋼で構成することが好ましい。また、こうした水素化スズの製造・供給機能および流通系の温度は、制御部7によって制御管理される。
【0026】
水素化スズの生成反応としては、以下の反応等が知られ、いずれも本装置を適用することが可能である。
(i)スズ化合物をSnCLとし水素化合物をLiALHとする既述のような反応(下式1および2:反応温度−60〜−40℃)
LiALH+3HO+HCL→AL(OH)+LiCL+4H (式1)
SnCL+4H→SnH+4HCL (式2)
(ii)スズ化合物を水素化合物塩化第2スズSnCLとし水素化合物をテトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH)とする反応(下式3および4:反応温度約−30℃)
NaBH+3HO+HCL→HBO+NaCL+4H (式3)
SnCL+4H→SnH+4HCL (式4)
【0027】
水素化スズの生成には、図1に示すように、反応槽1に溜められたスズ化合物を、水素化合物供給部5から供給された水素化合物と反応槽1内部で混合・反応させる構成が好ましい。反応槽1に溜められた多量のスズ化合物中に供給された水素化合物がこれと順次反応することによって、安定的に水素化スズを発生させることができる。ただし、供給量や混合機能を安定的に行うことができる構成であれば、反応槽1に両化合物を同時に供給する構成、あるいは水素化物中にスズ化合物を供給する構成も可能である。
【0028】
生成した水素化スズは、トラップ2によって水分などの不純物を除去することが好ましい。トラップ2の形状や構造は、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すようなコールドトラップなどを挙げることができる。また、多孔質体などが流路にあれば水素化スズが付着・成長する可能性があることから、所定の容量を有し、導入路の先端部を内部、さらには底部近傍にまで挿入し、内部空間を均等に通過し不純物の凝縮あるいは壁面への吸着ができる構造が好ましい。トラップ2の制御温度については後述する。
【0029】
本装置の特徴の1つは、捕集部3が直列に接続された複数の捕集槽3a,3b・・から構成される点にある。また、各捕集槽3aと3bの導入路先端部の位置や構造あるいは後述するように捕集温度を本装置特有の構成とすることによって、水素化スズを効率よく捕集することが可能となり、排気系へ排出される水素化スズの量を大きく低減することが可能となる。
【0030】
つまり、水素化スズの生産効率は、生成した水素化スズの捕集効率に依存するところが大きい。また、捕集操作および水素化スズの移送操作の検証過程において、一旦固体化した水素化スズに対して新たな水素化スズの付着が生じやすいとの知見を得た。つまり、1つの捕集槽によって一気に固体化を図ろうとすると、十分な捕集ができずに水素化スズの損失が生じると同時に、導入管あるいは供出部のように流路が狭い部分において固体化された水素化スズの成長が大きくやがて閉塞状態となる可能性があることが判った。本装置はこうした知見を基に、最適な捕集部を構成したもので、複数の捕集槽3a,3bを直列に配置し徐々に捕集するとともに、捕集槽3a,3b内部での導入路31a,31bの先端部32a,32bの位置を相違させることによって捕集機能に差を設け、流路の閉塞を招くことなく効率の高い水素化スズの捕集を図った。
【0031】
具体的には、図2(A)に示すように、上流の捕集槽3aの導入路31aの先端部32aよりも、下流の捕集槽3bの導入路31bの先端部32bが、その内底部33bに近接することを特徴とする。上流の捕集槽3aでは広い空間34aでの捕集を図り、下流の捕集槽3bでは壁面35b近傍での捕集を図ることによって、水素化スズを徐々に捕集することによって、閉塞状態を回避し効率よく捕集することができる。
【0032】
また、図2(B)に示すように、捕集槽3a,3bの導入路31a,31bの先端部32a,32bを円錐状とし、かつ該円錐状の開口部分36a,36bが、所定の傾斜角αを有する切断面36a,36bを形成することを特徴とする。上記のように、一旦固体化した水素化スズに対して新たな水素化スズの付着が生じやすく、特に流路が狭い部分においては閉塞状態となる可能性があるとの知見を得た。例えば捕集槽3a,3bの導入管31a,31bを細管とした場合には、そこでの固体化された水素化スズの成長が大きくやがて閉塞状態となる可能性がある。本装置は、こうした課題の対策として、上記の構造を有する先端部32a,32bにおける円錐形の拡散機能による部分的な固体化の発生を防止し、切断面36a,36bによる凝縮物の流路に対する流通障害の排除を図ることによって、導入路先端部32a,32bでの閉塞防止効果を確保することを可能とした。
【0033】
捕集された水素化スズを充填する充填容器4は、常設であって外部から供給用ガスを定期的に充填されるものや容器ごと搬送される圧力容器など特に制限はない。ただし、後述するように、所定期間保管する必要がある場合には、その安定性を確保するために、水素化スズの融点以下の温度領域で制御された貯蔵設備に保管し、充填された水素化スズを固体化して保存することが好ましい。
【0034】
本装置は、少なくとも反応槽1から充填容器4までの流路および充填容器4の内部を樹脂コーティングすることを特徴とする。つまり、水素化スズの分解に起因するファクタとして、温度、圧力、表面の3つがあり、できるだけ高い温度・圧力条件で分解を抑制するためには、表面での分解反応を抑えるための皮膜を形成する必要がある。例えば、耐圧性・耐低温性に優れたステンレス鋼などを用いた場合、水素化スズとの間において、以下の反応が進行すると解される。
(i)一次反応として
その接ガス材料の表面反応によって容易に分解され、金属スズが生成される。
(ii)二次反応として
その分解生成されたスズの存在によって、さらにその分解反応が加速する。
従って、接ガス材料の表面に樹脂コーティングすることによって、一次反応を制限することによって大幅に分解反応を低減することができる。
【0035】
さらに、本装置は、上記流路の温度を水冷温度(10℃)以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に保持することを特徴とする。つまり、上記の分解反応の低減機能は低温ほど高い一方、一般に−70以下での低温維持は、高度で高価な制御機能を必要とする。従って、流路の温度は、水素化スズの分解を抑制することができ、かつ制御可能なできる限り高い温度が好ましく、検証の結果、接ガス面を樹脂コーティングすることで、10℃においても水素化スズの分解を抑制することができた。本装置は、温度制御が容易で、かつ水素化スズが凝縮・露結しない温度範囲である10〜−50℃に保持することによって、簡易な構成で上記分解反応を抑制することができる。
【0036】
また、水素化スズ除害筒6は、外部への水素化スズの排出を防止するために、必要な構成要素である。本装置においては、除害剤として、粒状やペレット状あるいはハニカム形状等に形成された担体に金属酸化物を担持した試剤、あるいはこうした担体にスズ単体を担持した試剤を用いることが好ましい。既述のように、一旦水素化スズが分解してスズが発生すると、あるいは予めスズが存在すると、水素化スズはこれによって相乗的に分解反応を生じることが、検証過程において判明した。従って、こうした反応を除害剤に適用することによって、非常に優れた水素化スズの除害効果をもたらすことができる。
【0037】
なお、吸引ポンプEとしては、所定の減圧度を確保できるものであれば特に限定されるものではなく、ガスエゼクタや真空ポンプを用いることも可能である。また、本装置は、図1に例示する構成要素以外に、本装置の構成・機能を形成するために必要な制御手段や流量調整弁や流量計等が設けられる。さらに、実機においては、冬季などにおける流路の温度低下に伴う供給用ガスの凝縮を防止するために、配管温度や環境温度などを測定する温度センサや配管加熱用のヒータ、供給流量を調整するための絞りや流量調整部などが設けられる(いずれも図示せず)。これらは、全て耐圧性・耐低温性に優れたステンレス鋼で構成することが好ましく、上記同様樹脂コーティングすることが好ましい。
【0038】
〔水素化スズの安定性に対する接ガス材料と処理温度の検証〕
(a)実験条件
実験用チューブとして、内径4.35mm、外径6.35mm(1/4インチ)、長さ300mmのSUS316L−EP(電解研磨)および樹脂コーティング材(母材はSUS316L−EP)としてフッ素樹脂(PFA)を用いた。水素化スズを何種類かの温度で封止し、封止直後の水素化スズ圧力に対して80%分解するまでの時間(日数)を試験し、評価した
【0039】
(b)実験結果
結果を下表3に示す。PFAコーティングしたチューブとSUS316L−EPチューブの封止期間で表す。PFAコーティングチューブでは、−10℃〜−70℃の温度範囲では、30日以上の間水素化スズの分解を80%以内に収めることができた。また、10℃においても10日間分解を80%以内に抑えることができた。一方、SUS316L−EPチューブでは、−70℃で30日以上の間水素化スズの分解を抑制できたが、温度の上昇とともに分解は促進し、10℃では1日も分解を抑えることはできなかった。このように、樹脂コーティングの顕著な効果を確証することができた。特に、0℃近傍での抑制効果は、流路の温度を容易に制御することができ、さらに水分等の不純物を除去する処理温度の選択幅を広くすることが可能となるという従前にない技術的効果を得ることができた。
【表3】

【0040】
<本装置を用いた水素化スズの製造方法>
本装置を用いた水素化スズの製造方法は、(1)スズ化合物と水素化合物との反応により水素化スズを生成するプロセス、(2)生成した水素化スズを精製するプロセス、(3)精製された水素化スズを捕集するプロセス、(4)捕集した水素化スズを充填容器に充填するプロセス、さらには(5)水素化スズが充填された充填容器を保管するプロセスから構成される。最初にプロセス(1)〜(3)を実施し、次にプロセス(4)および(5)が実施される。以下、各プロセスについて、前者を図3に基づき、後者を図4に基づいて概括的に説明する。
【0041】
(1)水素化スズ生成プロセス
スズ化合物と水素化合物との反応により水素化スズを生成するプロセスは、図3に例示するように、冷媒槽内に全体を浸漬した反応槽1内部に溜められたスズ化合物を、水素化合物供給部5から供給された水素化合物と混合・反応させる。スズ化合物としてSnClを用い、水素化合物としてNaBHを用いた場合、上記式3および4に従い、水素化スズSnHが生成する。具体的には、予め反応槽1内にSnClとHClの混合水溶液(SnCL0.5mol/L、HCL5mol/L)を1/3程度満たしておき、反応槽1内を−30℃に冷却する。この状態で、開閉弁V1,2を開、液送ポンプLをONすることによって、水素化合物供給部5に溜められたNaBH水溶液(0.5mol/L)を、液送ポンプLから反応槽1に一定速度で注入していく。
【0042】
ここで、反応槽1の温度は、上記のように反応化合物によって異なるが、水素化スズの発生量の安定化を図るために、反応速度を適切に維持するための温度として−30℃とし、例えば±1℃あるいは±0.5℃程度の温度制御を行うことが好ましい。同様にNaBH水溶液の注入量についても、一定の反応を確保できる量とするとともに、その変動を例えば±1%など所定の範囲となるように液送ポンプLを制御することが好ましい。このとき、予め開閉弁V3〜9およびV11を開とし、吸引ポンプEおよび水素化スズ除害筒6をONすることが好ましい。減圧条件とすることによって、水分等の蒸気圧を下げ、発生した水素化スズ中の不純物の量を減量することができるとともに、水素化スズ除害筒6によって、系外への水素化スズの排出を防止することができる。
【0043】
(2)水素化スズ精製プロセス
生成した水素化スズを精製するプロセスは、図3に例示するように、反応槽1内で発生した水素化スズを、冷媒槽内に浸漬したトラップ2に導入して、共存する不純物を凝縮させて除去する。不純物としては、反応化合物および反応生成物あるいは反応副生成物などが含まれるが、主として水分およびこれに溶解する成分が挙げられる。このとき、トラップ2は、上記反応温度(−30℃)以下かつ水素化スズの沸点(−50℃)以上の温度でトラップすることが好ましい。つまり、検証の結果、生成された水素化スズを直ちに低温で捕集すると、反応熱による蒸散等に伴い水分を主成分とする不純物が混入するおそれがあること、下流の捕集槽3a,3b内においてこうした不純物が氷結し捕集槽への導入路の閉塞が生じるおそれがあるとの知見を得た。また、生成反応を形成する温度以下かつ水素化スズの沸点以上の温度、つまり約−50℃程度でのトラップによって、効率よく不純物を除去することができることが判った。具体的には、トラップ2を−50℃に冷却し、開閉弁V3〜9およびV11を開とし、吸引ポンプEおよび水素化スズ除害筒6をONすることによって、発生した水素化スズをトラップ2に導入することができる。
【0044】
(3)水素化スズ捕集プロセス
精製された水素化スズを捕集するプロセスは、図3に例示するように、トラップ2内において不純物が除去された水素化スズを、冷媒槽内に浸漬した捕集槽3a,3bによって捕集する。本プロセスにおける捕集温度は、水素化スズの融点(−150℃)以下とすることを特徴とする。つまり、検証過程において、水素化スズを上記文献等に記載のような液化プロセスを経由して捕集すると捕集槽での水素化スズの捕集効率が悪くなるとの知見を得た。液化のプロセスを経ずに一気に固化させることによって、非常に捕集効率を上げることが可能であることが判った。また、既述の図2(A),(B)に示すように、(i)複数の捕集槽3a,3bを直列に配設すること、(ii)下流の捕集槽3bの導入路31bの先端部32bを、上流のそれよりも内底部33bに近接すること、(iii)先端部32a,32bを円錐状とし、かつ該円錐状の開口部分が、所定の傾斜角を有する切断面36a,36bを形成することによって、より効率よく捕集することができる。
【0045】
具体的には、上記プロセス(2)同様、開閉弁V3〜9およびV11を開とし、吸引ポンプEおよび水素化スズ除害筒6をONすることによって、−150℃以下に冷却された2つの捕集器3aおよび3bの内部において固体として捕集される。このとき、捕集槽3a,3bの温度は、冷媒として入手が容易な液体窒素(沸点−196℃)の使用が可能な−190℃に冷却されることによって、安定した温度を維持することができる。原料(NaBH水溶液)がなくなった時点で、液送ポンプLを停止し、捕集操作を完了する。
【0046】
以上、プロセス(1)〜(3)からなる1次処理を所定時間継続あるいはバッチ的に行うことによって、捕集槽3a,3bに所定量の精製された水素化スズを捕集することができる。1次処理終了後、一旦開閉弁V9を閉とし、所定の安定時間を設けることが好ましい。次に、捕集された水素化スズを充填容器に移送する2次処理を行う。
【0047】
(4)水素化スズ充填プロセス
捕集した水素化スズを充填容器に充填するプロセスは、図4に例示するように、予め充填容器4までの流路を減圧状態とし、捕集された水素化スズの温度を徐々に上昇させ、水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度まで上げて蒸気圧を上昇させ、水素化スズの融点以下の温度に保持された充填容器4の内部圧力との圧力差によって水素化スズを移送し充填する。具体的には、
(4−1)冷媒槽に浸漬された充填容器4に対して、開閉弁V10,V11を開とし、吸引ポンプEおよび水素化スズ除害筒6をONすることによって、充填容器4内部の減圧真空パージを行う。このときの減圧度は圧力計P2あるいはP3によってモニタすることができる。充填容器4の温度は、上記プロセス(3)における捕集槽3a,3bの温度と同様、約−190℃程度に保持することが好ましい。
(4−2)冷媒槽に浸漬された捕集槽3a,3bに対して、その温度を水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に上昇させ(例えば0℃)、所定時間ほぼ一定の温度および圧力となる状態を維持する。このときの蒸気圧は、圧力計P1によってモニタすることができる。つまり、水素化スズの高い蒸気圧を確保するためには、捕集槽3a,3bの温度が高いことが好ましいが、水冷温度(10℃)を超えると、樹脂コーティングされた捕集槽3a,3bであっても水素化スズの分解反応が生じるおそれがあるためである。上記のように分解反応による微量のスズの発生が相乗的に分解反応を誘発することになることから、その可能性を断つことが必要となる。
(4−3)このとき、少なくとも捕集槽3a,3bから充填容器4までの流路の温度を水冷温度(10℃)以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に保持することが好ましい。さらには、反応槽1からの流路をも同条件とすることが好ましい。既述のように、流路内面を樹脂コーティングした条件であっても、10℃を超える場合には水素化スズの分解反応が生じる可能性があり、こうした可能性を断つためである。
【0048】
次に、
(4−4)開閉弁V9を開とし、水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度での捕集槽3a,3b内部の蒸気圧(0℃では、約0.6MPa)と、水素化スズの融点以下の温度に保持された充填容器4の内部圧力(−190℃では、約−0.1MPa)との圧力差によって水素化スズを移送し充填する。つまり、キャリアガス等による強制的な移送は、水素化スズの損失等を生じるおそれがあり、減圧条件下で、凍結された水素化スズを徐々に加熱して蒸散させると同時に、所定容器を融点以下の温度に保持し、捕集槽3a,3bと充填容器4の内部蒸気圧の差を移送の推進力とすることによって水素化スズの移送を可能とし、水素化スズの残留成分がほとんどなく流路壁面や間隙部への付着などを最小とすることができる。
(4−5)捕集槽3a,3b内部の蒸気圧が充填容器4の内部圧力とほぼ一致すれば、圧力差による移送が完了する。
(4−6)ただし、捕集槽3a,3b内容積が大きい場合には残圧分に相当する水素化スズの残量が無視できないことがある。このとき、一旦開閉弁V11を閉とし、開閉弁V12を開としてキャリアガスHeを捕集槽3a,3b内部に供給し、充填容器4へ水素化スズを同伴することによって、捕集槽3a,3b内部の水素化スズはほぼ全て充填容器4へ移送される。キャリアガスHeの供給圧力は、約0.1MPa以上で高いほど残留分は少なくなり、通常約0.1〜1MPa程度とする。
(4−7)開閉弁V9を閉とし、開閉弁V10,11を開とすることによって、充填容器4内の安定化を図る。上記(4−5)の処理を行った場合には、充填容器4内に供給されたキャリアガスの排除を行うことができる。
以上の操作によって、水素化スズの充填プロセスが完了する。
【0049】
(5)充填容器保管プロセス
水素化スズが充填された充填容器4を保管するプロセスは、開閉弁V1〜V12全てを閉とし、吸引ポンプEおよび水素化スズ除害筒6をOFFにするとともに、開閉弁V10に接続する配管から充填容器4が取外され、図5((A):平面図、(B):正面図)に例示するような複数の充填容器4a,4b・・を収納することができる貯蔵設備8に、収納され保管される。このとき、本プロセスでは、充填された水素化スズを固体化して保存することを特徴とする。つまり、水素化スズを液体ガスとして保管するのではなく、固体化した状態で保存することによって、充填容器4に充填された状態で、分解されずに長期の安定性を確保し、確実な供給が可能となった。具体的な温度管理は、貯蔵設備8に設けられた液体窒素導入口8aから、常に充填容器4a,4b・・が貯留槽8bに浸漬された状態を維持するように所定量の液体窒素が連続的あるいは断続的に供給されることによってほぼ−190℃に維持される。貯留槽8bの周囲は断熱層8cを形成するとともに、露結を防止すべく気化した窒素によってパージできる構成とすることが好ましい。
【0050】
(6)パージ操作方法
容器交換等における配管部の取り外しあるいは取り付け操作においては、各構成要素および流路をパージすることが好ましい。また、長期間未使用後の使用再開においても同様である。特に水素化スズは外気と触れることによって、分解や反応する可能性があり、流路の汚染防止を図るためである。ここで、パージガスとしては、キャリアガス(He等)を用いることが可能であるが、別途開閉弁V12から窒素ガスなどの不活性ガスよってパージ処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る水素化スズの製造装置の基本構成例を示す概略図
【図2】本発明に係る水素化スズ捕集部の構成例を示す説明図
【図3】本発明に係る水素化スズの製造プロセスの1次処理の構成例を示す概略図
【図4】本発明に係る水素化スズの製造プロセスの2次処理の構成例を示す概略図
【図5】本発明に係る充填容器を保管する貯蔵設備を例示する概略図
【図6】従来技術に係る水素化スズの製造に使用する反応装置を例示する概略図
【符号の説明】
【0052】
1 反応槽(反応部)
2 トラップ(精製部)
3,3a,3b・・ 捕集槽(捕集部)
31a,31b 導入路
32a,32b 先端部
33a,33b 内底部
34a,34b 空間
35a,35b 壁面
36a,36b 切断面
4,4a,4b,4c・・ 充填容器(所定容器)
5 水素化合物供給部
6 水素化スズ除害筒
7 制御部
8 貯蔵設備
8a 液体窒素導入口
8b 貯留槽
8c 断熱層
α 傾斜角
E 吸引ポンプ
L 液送ポンプ
P1〜P3 圧力計
V1〜V12 開閉弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ化合物と水素化合物との反応により生成した反応部からの水素化スズを精製処理しつつ捕集し、捕集された水素化スズを所定容器に充填する水素化スズの製造方法において、
前記反応を形成する温度以下かつ水素化スズの沸点(−50℃)以上の温度でトラップした後、水素化スズの融点(−150℃)以下の温度で捕集することを特徴とする水素化スズの製造方法。
【請求項2】
少なくとも前記反応部から前記所定容器までの流路および該所定容器内部を樹脂コーティングするとともに、該流路の温度を水冷温度(10℃)以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に保持することを特徴とする請求項1記載の水素化スズの製造方法。
【請求項3】
前記所定容器への水素化スズの充填操作において、予め前記所定容器までの流路を減圧状態とし、捕集された水素化スズの温度を徐々に上昇させ、水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度まで上げて蒸気圧を上昇させ、水素化スズの融点以下の温度に保持された前記所定容器の内部圧力との圧力差によって水素化スズを移送し充填することを特徴とする請求項1または2記載の水素化スズの製造方法。
【請求項4】
前記所定容器を水素化スズの融点以下の温度領域で制御された貯蔵設備に保管し、充填された水素化スズを固体化して保存することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素化スズの製造方法。
【請求項5】
スズ化合物と水素化合物とを混合・反応させて水素化スズを生成させる反応部、生成した水素化スズを精製する精製部、精製された水素化スズを捕集する捕集部、捕集された水素化スズを移送し充填する所定容器からなる水素化スズの製造装置において、
少なくとも前記反応部から所定容器までの流路および該所定容器内部が樹脂コーティングされるとともに、該流路が水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度範囲に制御され、前記精製部が前記反応槽の制御温度以下かつ水素化スズの沸点以上の温度範囲に制御され、前記捕集部が水冷温度以下水素化スズの沸点以上の温度から水素化スズの融点以下の温度までの温度範囲で制御されることを特徴とする水素化スズの製造装置。
【請求項6】
前記捕集部が、直列に接続された複数の捕集槽から構成され、下流の捕集槽の導入路先端部が、上流の捕集槽の導入路先端部よりも各捕集槽の内底部に近接することを特徴とする請求項5記載の水素化スズの製造装置。
【請求項7】
前記捕集部の導入路先端部を円錐状とし、かつ該円錐状の開口部分が、所定の傾斜角を有する切断面を形成することを特徴とする請求項5または6記載の水素化スズの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−256126(P2009−256126A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105969(P2008−105969)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)