説明

水草回収装置

【課題】水草の刈り取りと刈り取った水草の輸送を一つの装置で行う。
【解決手段】水草を輸送するポンプ部10の主軸12を、前記主軸12外周に取り付けた羽根車15を収容するケーシング16の吸込口18から突出するように延長し、その主軸12の下端部に主軸延長部20を主軸12と同軸状態に固定する。主軸延長部20は、軸方向の2箇所にそれぞれ複数の水草カッタ24、25を放射状に固定したものである。ポンプ部10の主軸12を回転させると、水草カッタ24、25が回転して水草を刈り取るとともに羽根車15が回転して吸引力が発生する。その吸引力により刈り取った水草を水とともにポンプ部10で直接吸い込むので、水草の刈り取りと刈り取った水草の輸送を一つの装置で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、河川、湖沼などに生える水草を刈り取り、刈り取った水草を輸送する水草回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川、湖沼などに生える水草の刈り取りおよび回収は、人力または水草カッタを備えた水草刈り取り機を設けた専用船により行われている。この専用船は、水草刈り取り機に接続された輸送ホースに遠心ポンプが接続されたものであり、水草刈り取り機を河川等に沈めてその水草カッタで水草を刈り取り、遠心ポンプの吸引力で刈り取った水草を輸送ホース内に引き込んで船上に回収し、岸壁まで輸送していた。
【0003】
しかし、人力により刈り取りを行う場合、長い時間と多大な労力が必要となる。また、上記専用船により刈り取りを行う場合、船上に積んだ刈り取った水草をクレーンや油圧ショベルなどの重機で陸揚げしなければならず、さらに、専用船による水草の輸送は、その積載量が限られる上に移動速度が遅いので輸送時間が長くなっていた。
【0004】
これらの問題を解決するために、油圧ショベルのショベルに代えて水草カッタを有する水草刈り取り機を取り付け、この水草刈り取り機に設けた水草吸込み口に接続した輸送ホースを、トラックに積んだ遠心ポンプに空気遠心分離機を介して連結した水草回収装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−311806号公報(図1)
【0005】
この水草回収装置を用いた水草の刈り取りおよび輸送は、河岸に移動した油圧ショベルのアームを下げて水草刈り取り機を河川に投入し、水草カッタを駆動させて水草を刈り取りながら遠心ポンプの吸引力で刈り取った水草を輸送ホース内に引き込む。刈り取った水草を空気遠心分離機によって輸送空気から分離し、分離した水草を河岸に駐車したトラックに回収して、そのトラックで輸送することにより行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の水草回収装置は、水草を刈り取る水草刈り取り機と、刈り取った水草を目的場所に輸送する遠心ポンプとが別体であるため、それぞれの装置の移動や設置に時間と手間がかかっていた。
【0007】
また、水草刈り取り機を取り付けた油圧ショベルのアームは、上下方向の駆動範囲が限られているため、河川などの水面付近の水草(浮き草)や、比較的水深の浅い場所に生える水草しか刈り取り、回収ができず、水深の深い場所の水草の刈り取り、回収は難しいものであった。
【0008】
そこで、この発明は、水草の刈り取りと刈り取った水草の輸送を一つの装置で行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、水草を輸送するポンプ部の主軸を、前記主軸外周に取り付けた羽根車を収容するケーシングの吸込口から突出するように延長し、前記主軸の延長部に水草カッタを固定する構成を採用したのである。
【0010】
この構成により、ポンプ部の主軸を回転させると、水草カッタが回転して水草を刈り取るとともに、羽根車が回転して吸引力が発生する。その吸引力により刈り取った水草を水とともにポンプ部で直接吸い込むことができるので、水草の刈り取りとその刈り取った水草の輸送を一つの装置で行うことができる。
【0011】
上記構成において、上記水草カッタを上記主軸から放射状に複数設けたものとすると、主軸の回転に伴いそれぞれの水草カッタで水草を効率良く刈り取ることができる。
【0012】
また、上記水草カッタを上記主軸の軸方向の複数箇所に設けたものとすると、一の箇所に設けた水草カッタで刈り取った水草を他の箇所に設けた水草カッタによりさらに切断するので、水草をより短く刈り取ることが可能となり、刈り取った水草によるケーシング内の詰まりを抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明は、ポンプ部の主軸を回転させることにより、水草の刈り取りと刈り取った水草の輸送とを同時に行うことができるため、水草の刈り取りと輸送とが一つの装置で可能となり、水草回収装置の移動、設置が容易になり、作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の実施形態を図1から図3に示す。この実施形態の水草回収装置は、図1、図2に示すように、縦方向の主軸12が回転可能に支持されたポンプ部10と、そのポンプ部10の下方に連結した主軸延長部20とから構成される。
【0015】
上記ポンプ部10は、縦方向に配置した主軸12を回転させるモータ(図示省略)を備えたモータ部13の下部に、主軸12を回転可能に支持するメカニカルシール(図示省略)を組込んだメカニカルシール部14を介して、前記主軸12に固定した羽根車15を収容したケーシング16を連結したものである。
【0016】
上記モータ部13の上部にはアイボルト19が複数固定され、この水草回収装置を吊り上げて移動させることができる。モータの主軸12は、メカニカルシール部14のメカニカルシールにより縦方向に回転自在に支持されるとともに液密に軸封されており、その下部に羽根車15が固定されている。
【0017】
この羽根車15を収容するケーシング16は、図2に示すように、周壁が断面半円弧状となる円筒状に形成され、その周壁の接線方向外向きに吐出口17が、底部には円形に開口した吸込口18がそれぞれ設けられる。吐出口17には屈曲した輸送管29が連結され、この輸送管29に連結した輸送ホース(図示省略)へ刈り取った水草を水とともに送り出す。
【0018】
上記ケーシング16の吸込口18から突き出して下方に延びる主軸12の下端部に、上記主軸延長部20が締結具21を介して主軸12の軸線と同軸状態に固定される。
【0019】
この主軸延長部20は、図3に示すように、上端部にナット23が固定された円筒体22と、そのナット23および円筒体22の下端部の周縁部から放射状に取り付けられた複数の板状の上部水草カッタ24および下部水草カッタ25とを有する(図3(b)参照)。この円筒体22の筒軸が主軸12の軸線上に位置するように、円筒体22のナット23が上記締結具21により固定される(図2参照)。
【0020】
この円筒体22の上端部に固定したナット23には3枚の上部水草カッタ24が等角度で配置され(図3(a)参照)、また、円筒体22の下端部には4枚の下部水草カッタ25が等角度で配置されている(図3(c)参照)。円筒体22の上下部の各水草カッタ24、25は、一方の側縁の全長に渡って切り刃24a、25aを備えている。これにより、主軸12を回転させることにより、円筒体22が回転してその切り刃24a、25aで水草を刈り取ることができる。
【0021】
このように、円筒体22の上下部の水草カッタ24、25は、それぞれ複数枚設けられているので、主軸12の回転に伴い水草カッタ24、25のそれぞれで水草を効率良く刈り取ることができる。
【0022】
また、円筒体22(主軸延長部20)の軸方向の2箇所に水草カッタが設けられているため、各下部水草カッタ25で刈り取った水草が、ポンプ部10により吸い込まれる水とともに各上部水草カッタ24でさらに切断されるので、水草をより短く刈り取ることが可能となり、刈り取った水草によるケーシング16内の詰まりを抑えることができる。
【0023】
また、各下部水草カッタ25は、各上部水草カッタ24よりも長く形成されており、より広範囲の水草を刈り取ることができ、この上下部の水草カッタ24、25の間には、図3(a)に示す円筒状のガイド部26が円筒体22の外側に同軸状態に固定されている。このガイド部26は、刈り取った水草を水とともにその内部に引き込み、各上部水草カッタ24によりさらに切断されるように水草を案内する。
【0024】
上記主軸延長部20には、図2に示すように、これを覆うように上下カッタカバー27、28が設けられ、この上カッタカバー27は、上記ケーシング16の下端部と接続しその吸込口18よりも大径の円筒体と、この円筒体の下端部に接続し下方に向かって外向きに広がる断面角型の筒体とを組み合わせたものである。
【0025】
この上カッタカバー27の筒体の下端部に、下カッタカバー28が接続される。この下カッタカバー28は下方に向かって外向きに広がる断面角型の筒体に形成され、上カッタカバー27と下カッタカバー28とが筒状に一体となっている。この上下カッタカバー27、28で河川等の水草の生えた地面(水底)を覆うことで、この上下カッタカバー27、28内の水草を効果的に集めて水草カッタ24、25で刈り取ることができる。
【0026】
このようにして、水草回収装置は構成され、この水草回収装置をウインチに接続したワイヤーロープに固定し、クレーンの先端から吊り下げる。吊り下げた水草回収装置のモータを駆動させて主軸12を回転させると、羽根車15の回転による吸引力が発生するとともに、主軸延長部20の上下部の各水草カッタ24、25が主軸12とともに回転した状態となる。
【0027】
この状態で、水草回収装置を水草の生えている河川等の水面に降ろすと、カッタカバー27、28内の水草を上下部の水草カッタ24、25が刈り取り、ポンプ部10の羽根車15の回転による吸引力で刈り取られた水草が水とともにケーシング16の吸込口18から吸い込まれる。このとき、ウインチでワイヤーロープを巻き取ったり、延ばしたりと、そのワイヤーロープの長さを調節することにより、水草回収装置の上下位置を変えることができるので、河川等の水面付近から水深の深い場所に生える水草を刈り取ることができる。
【0028】
ケーシング16の吸込口18から吸い込まれた水草は水とともに吐出口17から吐き出され、上記輸送管29を介して目的地まで延びる輸送ホース(図示省略)により目的地へ輸送される。
【0029】
このように、この発明の水草回収装置は、ポンプ部10の主軸12の下端部に主軸延長部20を固定したものであるので、水草の刈り取りと輸送を一つの装置で行うことができ、この水草回収装置の移動、設置が容易となる。このため、従来の水草回収装置のように、刈り取り機とポンプとをそれぞれ移動、設置する必要がなくなり作業性が向上する。また、この水草回収装置は、水草カッタ24、25により刈り取った水草を水とともに直接ポンプ部10の吸込口18から吸い込み、輸送ホースにより目的地まで輸送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)この発明に係る水草回収装置の実施形態の外観正面図
【図2】同上のカッタ部を示す一部拡大断面図
【図3】(a)同上の主軸延長部の上面図、(b)同上の主軸延長部の正面図、(c)同上の主軸延長部の下面図
【符号の説明】
【0031】
10 ポンプ部
12 主軸
13 モータ部
14 メカニカルシール部
15 羽根車
16 ケーシング
17 吐出口
18 吸込口
19 アイボルト
20 主軸延長部
21 締結具
22 円筒体
23 ナット
24 上部水草カッタ
24a 切り刃
25 下部水草カッタ
25a 切り刃
26 ガイド部
27 上カッタカバー
28 下カッタカバー
29 輸送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水草を輸送するポンプ部の主軸を、前記主軸外周に取り付けた羽根車を収容するケーシングの吸込口から突出するように延長し、前記主軸の延長部に水草カッタを固定した水草回収装置。
【請求項2】
上記水草カッタを上記主軸から放射状に複数設けた請求項1に記載の水草回収装置。
【請求項3】
上記水草カッタを上記主軸の軸方向の複数箇所に設けた請求項1または2に記載の水草回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−178335(P2008−178335A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13728(P2007−13728)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(506059861)クリモトメック株式会社 (34)
【Fターム(参考)】