説明

水質検査装置

【課題】ポンプの小型化を図り、装置全体の小型化・軽量化を図り、かつ、流水経路および流水流速の制御の容易化・簡便化を向上する水質検査装置を提供する。
【解決手段】検水を一端から給水し他端から排出するように構成した流水経路と、流水経路中に太陽虫を保持する検出槽と、検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知する検知手段と、を設けた水質検査装置において、検出槽に検水を流入させる流水経路の少なくとも一部を軟質性チューブで構成するとともに、軟質性チューブを押圧変形させるチューブ圧迫手段と、チューブ圧迫手段を制御する圧迫制御手段と、検出槽に検水を流入させる流水経路の温度を制御する温度制御手段とが設けられ、チューブ圧迫手段が間歇的に軟質性チューブを圧迫し、軟質性チューブ内の検水を間歇的に送出することにより、検出槽に所定の平均流速以下で所定水温の検水を流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトで持ち運びができ、簡便かつ高感度に毒性物質を定量的に評価できる水質検査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水質検査や水質モニタリングのために生物活性度を指標として水中の毒性物質を評価するものとして、太陽虫の生物活性度を指標とすることにより環境中の毒性物質を検出する水質検査装置が既に知られている(特許文献1)。
太陽虫の生物活性度を指標とする水質検査装置は、検査対象となる水(以下、検水と称する。)を一端から給水し他端から排出する流水経路を設け、この流水経路中に太陽虫を保持する検出槽を設け、その検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知するものである。
【0003】
ここで、太陽虫とは、肉質鞭毛虫門有軸仮足虫上綱太陽虫綱に属する生物の総称である。太陽虫は単細胞生物であり、群体を形成する種も存在する。太陽虫の細胞は、球形または球形に近い形であり、多数の軸足を放射状に出し、その軸足の先端が針状となっている。太陽虫の細胞は、たまに軸足を動かす以外は殆ど動きがない。太陽虫は、浮遊生活をすることはあまりなく、水草の間や水底の泥の上などで底生生活をする。
【0004】
このような太陽虫の生物活性度を指標とする水質検査装置は、太陽虫に対しての給餌およびpH調整が不要であるため、従来の水質検査装置で大量に消費されていた緩衝液が少量で済むためコスト削減が図れる。また、給餌および緩衝液供給に要する設備が不要であり、水質検査装置のシンプル化、小型化、低コスト化、並びにメンテナンス性向上を図ることができる。さらに、太陽虫の生物活性度にもとづいて毒性物質の存在を検知するため、微生物が消費する溶存酸素量を生物活性度の指標とする場合に比べ、安全性と確実性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−215885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような太陽虫の生物活性度を指標とする水質検査装置では、流水経路を介して検水を検出槽に送り込む際、太陽虫の安定化のために送り込む流速を太陽虫との接触面において所定流速および所定流量を低く抑える必要がある。
しかしながら、従来の水質検査装置では、このような微量の検水を送り込むために用いる小型ポンプとして適当なものが見当たらない状況である。
また、従来の水質検査装置では、ポンプ設備のサイズや重量の問題から、簡易に運搬できる小型で携帯式のものが見当たらない。
【0007】
上記状況に鑑みて、本発明は、ポンプの小型化を図り、装置全体の小型化・軽量化を図り、かつ、流水経路および流水流速の制御の容易化・簡便化を向上する水質検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の水質検査装置は、検水を一端から給水し他端から排出するように構成した流水経路と、流水経路中に太陽虫を保持する検出槽と、検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知する検知手段と、を設けた水質検査装置において、下記1)〜3)を備える。
1)検出槽に検水を流入させる流水経路の少なくとも一部を軟質性チューブで構成するとともに、軟質性チューブを押圧変形させるチューブ圧迫手段
2)チューブ圧迫手段を制御する圧迫制御手段
3)検出槽に検水を流入させる流水経路の温度を制御する温度制御手段
上記1)〜3)を具備することにより、チューブ圧迫手段が間歇的に軟質性チューブを圧迫し、該軟質性チューブ内の検水を間歇的に送出することにより、検出槽に所定の平均流速以下で所定水温の検水を流入させ得るものである。
【0009】
本発明の水質検査装置は、検水を一端から給水し他端から排出するように構成した流水経路と、流水経路中に太陽虫を保持する検出槽と、検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知する検知手段から構成される水質検査装置において、従来とは異なり、上記1)の軟質性チューブを押圧変形させるチューブ圧迫手段を備えることにより、太陽虫による水質検査装置の小型化、軽量化、低コスト化を図る。チューブ圧迫手段を用いることにより、汽水制御ならびに流水経路制御の容易化・簡便化を図ることができる。
ここで、平均流速とは、ある程度長い一定時間に流れる流量を、チューブの断面積で割り算して算出する値である。なお、単にチューブといった場合は、水質検査装置の流水経路に用いられるチューブを意味する。
また、検出槽に流入する検水の平均流速の制御が容易となる。これらについては後述の実施例で詳細に説明する。
【0010】
ここで、検出槽に検水を流入する側の流水経路が少なくとも2経路設けられ、それぞれの経路に、上記の第1逆止弁、第2逆止弁、軟質性チューブ、チューブ圧迫手段、および圧迫制御手段が設けられることが好ましい。かかる構成にすることにより、押圧変形する軟質性チューブから送り出される検水に脈流を生じさせることなく検出槽に検水を流入させることができる。
【0011】
また、上記3)のチューブ圧迫手段は、熱収縮性金属糸がアクチュエータとして機能して軟質性チューブを圧迫するものであることが好ましい。ソレノイドのような電磁駆動源やギヤやカムなどの機械的部分が少なく、構成部品全体のサイズが小さく、かつ、静かに作動できる利点がある。
【0012】
また、上記3)のチューブ圧迫手段は、具体的には、軟質性チューブを押圧変形させる圧接部材と、該圧接部材と接合する熱収縮性金属糸と、から成り、圧接部材が軟質性チューブの長手方向に略直交して配設され、温度制御手段により熱収縮性金属糸が伸縮を繰り返し、圧接部材を可動させるものである。
圧接部材は、例えばプラスティック材から成る棒状部材である。熱収縮性金属糸が圧接部材と接合するとは、圧接部材の一端がヒンジ機構を介して固定部材に取り付けられ、熱収縮性金属糸が圧接部材の他端に取り付けられる場合や、軟質性チューブを挟んで圧接部材の両側に熱収縮性金属糸が取り付けられる場合がある。圧接部材が可動することにより、軟質性チューブが圧迫変形する。
【0013】
また、検出槽に検水を流入する直前の流水経路中に、検水を流水経路端から吸引し得る吸引具と接合する吸引具接合部が更に設けられたことが好ましい。
検水の取り込み開始時は、まだ流水経路内に検水が充填していない。このため、軟質性チューブが圧迫変形しても、チューブ内の空気が圧縮されるだけで、検水を送り込むのに時間がかかる。そこで、検水を流水経路端から吸引し得る吸引具と接合する吸引具接合部を設けて、検出槽の流入口まで検水を引き込むことにした。ここで、吸引具とは例えば注射器のようなものである。
【0014】
また、検出槽に検水を流入する側の流水経路中に、検水中の空気抜き部および雑菌フィルタ部が更に設けられたことが好ましい。
空気抜き部は、チューブ自体に空気が溜まってくる場合に、それをチューブ外に逃がすものである。雑菌フィルタ部は検水中のバクテリアなどの雑菌をトラップするものである。
【0015】
また、外部インタフェース部が更に設けられ、検出槽内の太陽虫の生物活性度あるいは検水中への汚染物質の混入の有無のデータを、外部の電子機器端末が取り出しできることが好ましい。ここで、外部インタフェースとは、例えばUSB(Universal Serial Bus)のように標準規格化あるいは業界標準規格化されたものであり、ノート型パソコンなどの携帯式電子機器と接続されて、測定データの読み取りや装置内部の設定パラメータの変更などをユーザが行うために利用するものである。
【0016】
また、無線通信インタフェース部が更に設けられ、検出槽内の太陽虫の生物活性度あるいは検水中への汚染物質の混入の有無のデータを、遠隔地の電子機器端末が取り出しできることが好ましい。
かかる構成にすることにより、様々な個所に設置された水質検査装置を集中してモニタリングできる。電子機器端末とは例えばパソコンや携帯電話などである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水質検査装置によれば、ポンプの小型化を図り、装置全体の小型化・軽量化を図り、かつ、流水経路および流水流速の制御の容易化・簡便化を向上できるといった効果を有する。微量な流量となるため、タンクの小型化が図れ、装置全体の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】水質検査装置の概略ブロック図
【図2】水質検査装置の構成図
【図3】太陽虫検出部の説明図
【図4】チューブポンプ機構の構造図
【図5】チューブポンプ機構の説明図(1)
【図6】チューブポンプ機構の説明図(2)
【図7】チューブポンプ機構の特性グラフ
【図8】水質検査装置の信号系統図
【図9】水質検査装置の外観イメージ図
【図10】モニタリング設定画面
【図11】ログ表示画面
【図12】太陽虫検出画面
【図13】水質検査装置による測定結果の一例
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0020】
図1は、実施例1の水質検査装置の概略ブロック図を示している。水質検査装置は、携帯式の箱型ケース(図1の点線部分で囲まれた部分)内に、太陽虫検出部1とペルチェコントローラ2と撹拌・空気抜き部3とチューブポンプ機構6とを備える。チュープポンプ機構6は、ケース外部から検水と、ケース外部に取り付ける塩水タンク9から塩水とをケース内部に取り入れ、ケース内の流水経路(31,33,35,40)を経由してケース外部に廃液として排出するものである。チュープポンプ機構6から出た検水と塩水は、混合経路5を経由することにより所定比率で混じり合う。所定比率は混じり合う流水経路の管径あるいは流水経路の流水量で調整する。
検水と塩水を所定比率で混ぜる理由は、下水や土壌滲出水など検水のイオン強度や浸透圧がある程度高い場合においても、太陽虫による汚染物質の検知を可能とするためである。
【0021】
ペルチェコントローラ2は、流水経路の温度を所定温度に保持するものである。また後述するが、ペルチェコントローラ2はチューブポンプ機構の駆動源としても機能する。撹拌・空気抜き部3は、流水経路を流れる水温ならびに水質が均一となるように撹拌すると共に、流水経路内に溜まる空気を抜き取るものである。
【0022】
太陽虫検出部1は、太陽虫を保持する検出槽と、検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知するためのカメラから構成される。検出槽は流入口と排出口を持つ光透過性の平らな底面をもつシャーレ状容器であり、容器の底部には太陽虫が底面との接触により付着している。
【0023】
カメラは光透過性の平らな底面を撮像する。ケース内は暗視野であるため、カメラ撮像時にはLED(発光ダイオード)で照明光を当てる。照明光は可視光線や赤外線を用いる。太陽虫の底面の付着数の測定は、カメラで撮像したディジタル画像をケース内部あるいはケース外部のコンピュータにより画像解析を行って、画像中に白く光る太陽虫の数を測定することにより行われる。
【0024】
図2に水質検査装置の構成図を示す。図2を参照して、チュープポンプ機構6の概略構成について説明する。チュープポンプ機構6は、ケース外部から導入する塩水と検水を太陽虫検出部1の検出槽に導くものである。
【0025】
チュープポンプ機構6の内部は、塩水導入用チューブポンプと検水導入用チューブポンプの2つが並列に設けられている。検水導入用チューブポンプは、検水を流入する側の流水経路10aに第1逆止弁11aと第2逆止弁11bが設けられ、第1逆止弁11aと第2逆止弁11bとの間の流水経路10が軟質性チューブで構成されている。また、チューブ圧迫手段として棒13が、軟質性チューブ10に直交して設けられ、この棒13が上下に可動することにより軟質性チューブ10を押圧変形させて、検水を第2逆止弁11bから流水経路10bへ送り出す。
【0026】
同様に、塩水導入用チューブポンプは、塩水を流入する側の流水経路20aに第1逆止弁21aと第2逆止弁21bが設けられ、第1逆止弁21aと第2逆止弁21bとの間の流水経路20が軟質性チューブで構成されている。また、チューブ圧迫手段として棒23が、軟質性チューブ20に直交して設けられ、この棒23が上下に可動することにより軟質性チューブ20を押圧変形させて、検水を第2逆止弁21bから流水経路20bへ送り出す。
【0027】
チュープポンプ機構6から出た検水と塩水は、混合経路5を経由することにより混じり合い、流水経路31を通る。その後、ペルチェコントローラ2で温度調整される加熱冷却ブロック8の内部32を通過し、流水経路33を通り、撹拌・空気抜き部3へ送られる。なお、撹拌・空気抜き部3において、空気をトラップするためには上部から流水経路を接続する必要があるが、図2においては簡略化して記載している。
また、混合経路5において検水と塩水が混じり合う比率は、上述の如く、流水経路の管径あるいは流水経路の流水量で調整する。
【0028】
図2において、チューブクリップ4は流水経路(34,35)を流れる検水を止める機能と共に、注射器などを差し込んで検水をよび込む機能を有するものである。
太陽虫検出部1の検出槽は、流入口38と排出口39を持つ光透過性の平らな底面をもつシャーレ状容器であり、容器の底部には太陽虫が底面との接触により付着している。カメラは光透過性の窓1aから平らな底面を撮像する。
太陽虫検出部1の検出槽の排出口39から出た液は、廃液として水質検査装置に設けられた接続口(45a)から外部に排出される。
【0029】
図3は太陽虫検出部の説明図である。上述したように、流入口38と排出口39を持つ光透過性の平らな底面をもつシャーレ状容器の底部に太陽虫が付着している。カメラ7が光透過性の平らな底面を撮像する。ケース内は暗視野であるため、カメラ撮像時にはLED(8a,8b)で照明光を当てる。カメラで撮像したディジタル画像をケース内部あるいはケース外部のコンピュータ(図示せず)により画像解析を行い、画像中に白く光る太陽虫の数を測定する。
【0030】
次に、チューブポンプ機構6について、図4〜7を参照して詳細に説明する。図4にチューブポンプの構造図を示す。図5はチューブポンプの一部構成要素の構成斜視図である。また図6は軟質性チューブ10の断面方向から見たチューブポンプの構成図である。以下では、検水導入用チューブポンプを例に挙げて説明するが、塩水導入用チューブポンプも同様の構造である。
図4に示すように、チューブポンプは、検水を流入する側の流水経路10aに第1逆止弁11aと第2逆止弁11bが設けられ、第1逆止弁11aと第2逆止弁11bとの間の流水経路10が軟質性チューブで構成されるものである。第1逆止弁11aと第2逆止弁11bは略三角の台座62に固定されている。軟質性チューブ10は、外径7mm、内径5mmのシリコンチューブであり、軟質性チューブの長手方向と直交する台座61の上に載置されている。
【0031】
図5に示すように、チューブ圧迫手段として棒13が、軟質性チューブ10に直交して設けられ、棒13の一端13bが図4中の台座62とヒンジ機構13cによって接合されており、ヒンジ機構13cを中心にして回動できるようになっている。棒13の他端に取り付けられた滑車51には、熱収縮性金属糸(50a,50e)が巻きつけられている。この熱収縮性金属糸が縮むことにより、滑車51が軟質性チューブに近づく方向に移動する。これにより、棒13が軟質性チューブ10を押し付けることになり、台座61と棒13に挟まれた部分の軟質性チューブ10が押圧変形する。軟質性チューブ10が押圧変形すると、内部の検水は第2逆止弁11bから流水経路10bへと送り出されることになる。
図5と図6に示すように、熱収縮性金属糸(50a,50e)は、更に滑車(52,53)により方向を変えられ(50b、50f)、台座62の下部の加熱冷却ブロック60の内部50cを通過し、端部50dが固定されている。
【0032】
図7はチューブポンプ機構の特性グラフを示している。図7の横軸は時間(秒)であり、縦軸は流量をチューブに流れる気泡の移動距離として間接的に捉えており、そのため単位は(mm)で表記している。図7のグラフに示すように、チューブポンプは間歇的に急流を発生させ、軟質性チューブ内の検水を流水経路へと送り出す。間歇的に駆動するタイミングで最大瞬間流速が現れ、グラフ中に示している。また、平均流速もグラフ中に示している。共に、チューブに流れる気泡の移動距離を時間で割り算して算出している。
ポンプは間歇的に駆動を繰り返しているが、ここでは駆動の間隔(駆動開始〜次の駆動開始までの間隔)は5.1秒に設定している。この間隔は最短で1.1秒まで短縮が可能である。短縮すればトータルの流量も増加することになる。
図7の場合、軟質性チューブである内径5mmのシリコンチューブを5.1秒間隔で押圧変形させており、平均速度は毎分0.2ミリリットル、瞬間流速は毎分3.47ミリリットルとなっている。平均速度や瞬間流速は、ポンプの駆動間隔時間の設定により可変である。
実際の使用条件では、駆動のパワーを落としており、具体的には4.8秒かけてゆっくり通電し、駆動間隔時間を9.8秒に設定している。この条件下では、瞬間流速は毎分0.4ミリリットル、平均速度は毎分0.12ミリリットルとなる。
このように、チュープポンプ機構によれば、駆動間隔時間の設定を変更することにより、送り出す流速を自由に変更することができる。すなわち、容器の底部に付着している太陽虫の付着数を変えて、検査の感度を高めることができるのである。
【0033】
図8は水質検査装置の信号系統図を示す。水質検査装置は、スイッチ75をONされると外部から交流電圧100Vを取り込み、これをAC/DCコンバータ(76,77)により所定の直流電圧に変換し、ペルチェコントローラ2とCPUボード70に電源供給する。ペルチェコントローラ2は加熱冷却ブロック8と熱収縮性金属糸50の温度調整を行うものである。ペルチェコントローラ2の制御状態は、CPUボード70を介して表示部71で制御状態をモニタリングできる。またペルチェコントローラ2の操作はSW部72から行い、CPUボード70を介して操作信号がペルチェコントローラ2に送られる。
CPUボード70は、太陽虫検出部のカメラ7と接続され、カメラ7が撮像したディジタル画像を取り込む。またCPUボード70は、カメラ7に撮像開始信号を送る。
またCPUボード70はスピーカー73と接続されている。スピーカー73は、装置自体の故障や水質検査異常を外部に告知させるためのものである。
【0034】
この他、図8に示すように、CPUボード70は必要に応じて液晶パネル81やタッチ操作パネル82と接続でき、よりユーザフレンドリーな表示や操作をユーザに提供できる。またCPUボード70は通信I/Fボード83と接続でき、有線もしくは無線にて遠隔の電子機器とデータ通信できる。電子機器は、コンピュータや携帯電話などネットワーク通信機能を搭載の機器である。
【0035】
図9に水質検査装置の外観イメージ図を示す。水質検査装置の大部分は箱型ケースに内蔵されている。ノート型パソコン85と無線通信によってデータ交換する。また、箱型ケースの横には、塩水タンク9がホルダー(84a,84b)によって取り付けられている。箱型ケースは持ち運びが容易なように、上部に把手81が設けられている。前面には番(83a,83b)があり、上半分が開くことができる。上半分を開いて、太陽虫検出部のシャーレ状容器を簡便に交換できるようにしている。また箱型ケースの内部は暗視野であり、カメラで撮影時にはケース内部のLEDを用いて照明を当てる。このLEDの位置調節用の操作ボタン(82a,82b)がケース上部に設けられている。ケース前面にはペルチェコントローラ2の操作パネルが設けられ、操作パネルには表示窓71と操作ボタン72が設けられている。
【0036】
ノート型パソコンの画面により、水質検査装置の太陽虫のモニタリング設定や、太陽虫の個数の測定結果の確認が行える。図10はモニタリング設定画面の一例を示している。また図11はログ表示画面の一例を示している。また図12は太陽虫検出画面の一例を示している。
光透過性の平らな底面をもつシャーレ状容器の底部に付着する太陽虫を、カメラで撮像すると、図12のような画像が得られる。図12において、白い点が太陽虫を示している。図10のモニタリング設定画面を用いて、太陽虫の明るさ、太陽虫の大きさを設定するが、ここで太陽虫の明るさと大きさとは、この白い点の明るさと画像上の大きさである。また図10のモニタリング設定画面を用いて、塊になった太陽虫の検出精度と異常とみなす個数、画像積算数を設定する。
【0037】
図13は水質検査装置による測定結果の一例を示している。使用した太陽虫は、太陽虫網に属するハリタイヨウチュウ属の太陽虫である。図13の測定結果は、検水中に微量の水銀化合物(無機水銀)を加えた場合のものである。水質検査装置で検出される太陽虫の個数、すなわち、細胞数を時間に対してプロットしたものである。図13中に示したデータAは、2×10−6モルのHgCl(0.08mg/リットル)のデータであり、処理後20分で顕著な細胞数の低下が観測された。またデータBは、2×10−7モルのHgCl(0.008mg/リットル)のデータであり、処理後60分で80%程度に細胞数が低下した。この濃度は、ほぼ下水道の環境基準値(0.005mg/リットル)に匹敵するものである。このように、毒物の濃度に依存して、環境基準値近傍の水銀濃度で短時間に反応が見られることがわかる。
なお、データCは、2×10−8モルのHgCl(0.0008mg/リットル)のデータであるが、controlと顕著な差異は観測できなかった。
図13のグラフにおいて、水銀化合物を投入した直後に、データAとデータBの細胞数が100〜120(%)に上昇しているが、これは太陽虫が水銀化合物に反応して容器の底部から離脱し多く流れてきたことにより、細胞数が一時的に見かけ上増加したことによるものである。
【0038】
(その他の実施例)
(1)上述の実施例1では、チューブポンプ機構6を構成する圧迫棒13の上下移動を実現するため、圧迫棒13の一端をヒンジ機構により回動自在とし、他端を熱収縮性金属糸により可動させることにしたが、この他、サーボモーター等により力を発生させて軟質性チューブ10を圧迫することも可能である。但し、サーボモーターを用いる場合、水質検査装置が大型になり、また消費電力も大きくなる。更に、滑らかな動きを実現するのが容易でない。
【0039】
(2)上述の実施例1では、軟質性チューブにシリコンチューブを用いたが、薬剤耐性、圧迫に対する強度、柔軟さ等が適しているからである。但し、シリコンチューブに限定されず、同等もしくはそれ以上の薬剤耐性、圧迫に対する強度、柔軟さを有する樹脂あるいはその他の材質で構成されるものでも構わない。
【0040】
(3)上述の実施例1では、軟質性チューブ10を圧迫するチューブ圧迫手段として、軟質性チューブ10の間を第1逆止弁と第2逆止弁で挟み込み、軟質性チューブを押圧変形させる圧迫棒13を備える構成としたが、逆止弁のかわりに、軟質性チューブを押圧変形させる圧迫棒13を3台直列にしても同じ機能を実現できる。
すなわち、逆止弁の位置に設ける圧迫棒で軟質性チューブ10を完全に圧迫し、水流を間歇的に停止させることで、逆止弁と同じ働きをさせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、浄水場、排水処理施設等における水質検査に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 太陽虫検出部
2 ペルチェコントローラ
3 撹拌・空気抜き部
6 チューブポンプ機構
7 カメラ
8 加熱冷却ブロック
9 塩水タンク
10 軟質性チューブ
11a,21a 第1逆止弁
11b,21b 第1逆止弁
13,23 圧迫棒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検水を一端から給水し他端から排出するように構成した流水経路と、
前記流水経路中に太陽虫を保持する検出槽と、
前記検出槽における太陽虫の生物活性度を指標として検水中への汚染物質の混入を検知する検知手段と、を設けた水質検査装置において、
前記検出槽に検水を流入させる流水経路の少なくとも一部を軟質性チューブで構成するとともに、
前記軟質性チューブを押圧変形させるチューブ圧迫手段と、
前記チューブ圧迫手段を制御する圧迫制御手段と、
前記検出槽に検水を流入させる流水経路の温度を制御する温度制御手段と、を備え、
前記チューブ圧迫手段が間歇的に前記軟質性チューブを圧迫し、該軟質性チューブ内の検水を間歇的に送出することにより、前記検出槽に所定の平均流速以下で所定水温の検水を流入させ得ることを特徴とする水質検査装置。
【請求項2】
前記軟質性チューブの前記チューブ圧迫手段が設けられた前後に第1逆止弁と第2逆止弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の水質検査装置。
【請求項3】
前記検出槽に検水を流入する側の流水経路が少なくとも2経路設けられ、
それぞれの経路に、前記の第1逆止弁、第2逆止弁、軟質性チューブ、チューブ圧迫手段、および圧迫制御手段が設けられ、
脈流を生じさせることなく前記検出槽に検水を流入させ得ることを特徴とする請求項2に記載の水質検査装置。
【請求項4】
前記チューブ圧迫手段は、熱収縮性金属糸がアクチュエータとして機能して前記軟質性チューブを圧迫するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水質検査装置。
【請求項5】
前記チューブ圧迫手段は、前記軟質性チューブを押圧変形させる圧接部材と、該圧接部材と接合する前記熱収縮性金属糸と、から成り、
前記圧接部材が前記軟質性チューブの長手方向に略直交して配設され、
前記温度制御手段により前記熱収縮性金属糸が伸縮を繰り返し、前記圧接部材を可動させるものであることを特徴とする請求項4に記載の水質検査装置。
【請求項6】
前記検出槽に検水を流入する直前の流水経路中に、検水を流水経路端から吸引し得る吸引具と接合する吸引具接合部が更に設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水質検査装置。
【請求項7】
前記検出槽に検水を流入する側の流水経路中に、検水中の空気抜き部および雑菌フィルタ部が更に設けられたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水質検査装置。
【請求項8】
外部インタフェース部が更に設けられ、前記検出槽内の太陽虫の生物活性度あるいは検水中への汚染物質の混入の有無のデータを、外部の電子機器端末が取り出しできることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水質検査装置。
【請求項9】
無線通信インタフェース部が更に設けられ、前記検出槽内の太陽虫の生物活性度あるいは検水中への汚染物質の混入の有無のデータを、遠隔地の電子機器端末が取り出しできることを特徴とする請求項8に記載の水質検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−202770(P2012−202770A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66400(P2011−66400)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(501363095)株式会社サニコン (1)