説明

水質測定装置

【課題】電極ホルダ式の場合のようにホルダの内部に導管を設けることが困難な場合でも適用可能で、髪の毛などの異物を除去することができ、検出部の汚れをつき難くした水質測定装置を提供する。
【解決手段】筒状に形成され水中に浸漬される部分に水質の検出部2が設けられた検出器ホルダ5と、この検出器ホルダの外周部に一体的に設置され所定時に上記検出部を洗浄するための洗浄流体を通流させる洗浄流体通路6と、この洗浄流体通路に接続され上記洗浄流体を上記検出部に向けて噴射するように設けられた流体噴射部8を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水などにおいて検出部に洗浄機能を備えた水質測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水質測定装置としては、例えばプローブボディの内側のセンターライン上に空気を通す導管を備えた濁度計や、PH計、ORP(酸化還元電位)計、DO(溶存酸素)計、MLSS(汚泥濃度)計などの電極ホルダ式のものなどがある。下水の水質を測定する場合、水中に浸漬した検出部に異物が付着するため、定期的に汚れや異物を除去する必要がある。従来の技術として、プローブボディの端部にセンサ部を備えた水質測定装置において、前記プローブボディ内の端部近傍に、前記センサ部に対して洗浄用流体を噴射するための洗浄機構を設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−206106号公報(第3頁、図1〜3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の技術においては、洗浄機構がプローブボディに内蔵されているため、プローブボディの外周に突起した部分がなくなり、その形状がシンプルになり、毛髪やひも状のゴミや汚泥などの異物がプローブボディ、特に、センサ部近傍に付着することが防止されるという効果が得られるものの、電極ホルダ式のようにプローブボディ内が導管構造になっていないものではプローブボディの内側から洗浄することができないという問題点があった。特に測定対象が下水の場合、異物の大半は髪の毛であり、その髪の毛がこびりついた場合には、その都度検出器をリフタ、もしくはそれに準ずるもので持ち上げて、手や布などで取り除いていた。また、検出器は無洗浄式のフロートボール形もあるが、時間が経つにつれ電極が汚れてしまうことがあった
【0005】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであり、電極ホルダ式の場合のようにホルダの内部に導管を設けることが困難な場合でも適用可能で、髪の毛などの異物を除去することができ、検出部の汚れをつき難くした水質測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る水質測定装置は、筒状に形成され水中に浸漬される部分に水質の検出部が設けられた検出器ホルダと、この検出器ホルダの外周部に一体的に設置され所定時に上記検出部を洗浄するための洗浄流体を通流させる洗浄流体通路と、この洗浄流体通路に接続され上記洗浄流体を上記検出部に向けて噴射するように設けられた流体噴射部を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、検出器ホルダの外周部に洗浄流体通路を一体的に設け、この洗浄流体通路に接続された流体噴射部を検出部に向けて噴射するようにしたので、ホルダの内部に導管を設けることが困難な場合でも簡素に構成でき、検出部を容易に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は横断面図、(c)は(b)に示された支持部材近傍の拡大断面図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る水質測定装置の使用状態を概念的に示す図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は横断面図。
【図4】本発明の実施の形態3に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は図4(a)のIVb−IVb線における矢視断面相当図。
【図5】本発明の実施の形態4に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は図5(a)の下面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は横断面図、(c)は(b)に示された支持部材近傍の拡大断面図である。図2は図1の水質測定装置の使用状態を概念的に示す図である。図において、水質測定装置1は、電極からなる検出部2と、検出部2を保持する電極ホルダ3と、検出部2に電力を供給し、あるいは検出された信号を伝送するための信号ケーブル4と、検出部2、電極ホルダ3、及び信号ケーブル4を支持し水密に包囲する円筒状の検出器ホルダ5と、この検出器ホルダ5の外周部を包囲するように配設され検出器ホルダ5との間に検出部2を洗浄するための洗浄流体を矢印Aの方向に通流させる洗浄流体通路6を形成する外筒7と、外筒7の下端部に設置された流体噴射部8を備えている。
【0010】
図1(b)、図1(c)に示すように、上記外筒7は検出器ホルダ5に対してボルト9a、ワッシャ9b、ナット9cからなる支持部材9を、軸方向の適宜の箇所における周囲4か所に90°の均等角度で放射方向に設置することで固定されている。なお、この例では支持部材9の4個を1セットとしているが個数は特に限定されるものではなく、所要強度に応じて適宜増減できる。また、支持部材9による固定箇所は検出器ホルダ5の長さに応じて、軸方向に2箇所(2セット)以上設けられる。図1(a)では支持部材9の設置部分が表れていない。また、支持部材9の固定個所に水密構造が要求される場合は、例えばゴムブッシングやゴムパッキンなどのシール手段を支持部材9の挿通部分などに適宜に用いて対応すればよい。
【0011】
上記流体噴射部8は、図1(a)に示すように、検出器ホルダ5の下端部よりも下側において検出部2の周囲を囲む如く形成され、噴射口8aが検出部2のまわりを同軸に囲むように形成された周囲360度の円形に形成されている。そして、外周部B側から内周部側の噴射口8aの位置に向けて流路断面積が狭くなるように角部Cが鋭角に形成され、1点鎖線の矢印Aに示すように、洗浄流体通路6に送給された洗浄流体が噴射口8aから斜め上方に向けて噴射するように構成されている。なお、角部Cは滑らかな曲線状としてもよい。また、洗浄流体としては水などの液体が好ましく用いられるが、空気などの気体を用いることもできる。
【0012】
上記のように構成された水質測定装置1は、図2に示すように例えば下水処理施設の水路脇に立設されたスタンション10に水平方向に固定された支持金具11に対して、外筒7の上部を図示省略している固定手段によって固定し、下端部の検出部2が下水12中に没するように設置される。なお、洗浄流体は、外筒7の上部に設けられた導入口7aに接続された管路13から矢印Dで示すように送給される。管路13には電磁弁14が介装されており、電磁弁14は図示していない制御室からの信号により自動的に、または手動で開閉される。スタンション10には検出器2の信号を変換する変換器15が設置されている。
【0013】
次に動作について説明する。水質測定装置1の検出部2を洗浄する場合、電磁弁14を開放して図示していない水の貯留タンクから洗浄水を送給する。洗浄水は導入口7aを経て洗浄流体通路6に流入して検出器ホルダ5の下部に至り、噴射口8aから検出部2の表面に向けて勢いよく噴射される。検出部2の表面、あるいは噴射口8aやその近傍に髪の毛などの異物が付着していた場合、噴射された洗浄水によって容易に除去され清浄化される。噴射された洗浄後の水は連続的に送給される洗浄水によって、図1(a)の中心部から下方向に周囲の下水を巻き込みながら乱流となって順次外方に押し流される。
【0014】
なお、かかる洗浄動作はプログラムによってスケジューリングされた間隔で自動的に行うことができるほか、テンポラリーに実行するようにも構成できる。また、洗浄水に代えて圧縮空気などの気体を用いる場合も電磁弁14の操作によって同様に実施できる。気体を用いる場合、噴射口8aの例えば断面積を小さくすることで流速を高め、周囲の下水を細かい泡が含まれる噴流状にして検出部2の表面を洗浄するようにしても良い。
【0015】
上記のように、実施の形態1においては、検出器ホルダ5の外周部に外筒7を設けることで洗浄流体を通流させる洗浄流体通路6を検出器ホルダ5と一体的に設置し、この洗浄流体通路6に接続された流体噴射部8から洗浄流体を検出部2に向けて噴射するようにしたので、検出器ホルダ5の内部に導管を設けることが困難な場合でも簡素に構成でき、検出部2を容易に洗浄することができる。
【0016】
また、円筒状の検出器ホルダ5における下端部の中心部に検出部2が設けられ、流体噴射部8は検出器ホルダ5の下端部よりも下側において検出部2の周囲を囲む如く形成され、斜め上方に向けて洗浄流体を噴射する簡素な構成なので、検出器ホルダ5としては既存のものを用いることができ、製造も容易で安価に提供できる。また、髪の毛などが引っ掛かり易い凹凸が少ない形状に構成できるので、検出部2への異物の係着を抑制できる。このため一度洗浄した後は長期間使用することができる。
【0017】
また、流体噴射部8は、噴射口8aが検出部2のまわりを同軸に囲むように形成された周囲360度の円形に形成され、外周部から内周部側の噴射口8aに向けて流路断面積が狭くなるように形成したので、構成が簡単で少ない部品数で製造できる。
【0018】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は横断面図である。なお、各図を通じて同一符号は同一または相当部分を示すものとする。図において、外筒7は実施の形態1のものに比べて、検出器ホルダ5の外周部に対向する周囲360°の内、図3(b)に示すように図の上下2面を検出器ホルダ5の外周面方向に押し潰した如く形成され、検出器ホルダ5の外周面との間に形成される洗浄流体通路が狭く形成され、図の左右に洗浄流体通路6A、6Bとして分割されている。これに対応して、外筒7の上部に設けられる図示されていない導入口7aは各洗浄流体通路6A、6Bに均等に送られるように図の左右2箇所に設けられ、噴射口は左右の噴射口8aA、8aBに分かれて形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0019】
上記のように構成された実施の形態2においては、検知部2に対して対向された左右の噴射口8aA、8aBから洗浄流体が同時に噴射される。噴射された洗浄流体は検知部2を洗浄した後、噴射方向に対して直交する図3(b)の矢印E、Fで示す方向に逃げるように流体噴射部8から流出する。このため、実施の形態1よりも検知部2の汚れを効果的に洗浄することができる。
【0020】
なお、電磁弁14を2個用意して、左右の噴射口8aA、8aBに対応して個別に設け、噴射口8aAのみから噴射させるモード、噴射口8aBのみから噴射させるモード、及び噴射口8aA、8aBから同時に噴射させるモードを設定し、それら3つのモードをサイクリックに繰り返すことで、髪の毛のような異物の除去効果を更に高めるようにすることもできる。また、洗浄動作を自動化することもできるので、メンテナンスの手間が省力化できる。また、噴射口を対向された左右の2箇所としたが、これに限定されるものではなく、検出部2のまわりの互いに離間された3箇所以上の方向から中心部に位置する検出部2に向けて洗浄流体を噴射するように構成しても良い。
【0021】
実施の形態3.
図4は、本発明の実施の形態3に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は図4(a)のIVb−IVb線における矢視断面相当図である。なお、図4(b)において、支持部材9は図示省略している。図において、噴射口8aには、洗浄流体を検知部2に向けてシャワー状に噴射させるための多数の穴が設けられたシャワーノズル8bが設けられている。なお、シャワーノズル8bの面は軸方向(図の上下方向)に示されているが、検出部2の方向に直交するように図の上部側を径方向外側に傾斜させても良い。その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0022】
上記のように構成された実施の形態3においては、検知部2に対して洗浄流体がシャワーノズル8bから多数の線状に噴射されるので、実施の形態1よりも電極などの検知部2の汚れを効果的に洗浄することができるという更なる効果が得られる。
【0023】
実施の形態4.
図5は本発明の実施の形態4に係る水質測定装置の要部を模式的に示す図であり、(a)は側面断面図、(b)は図5(a)の下面図である。なお、図5(b)において、支持部材9は図示省略している。図において、流体噴射部8を構成する中心側の円筒状の周囲部材8cには、パイプ状に形成された噴射口としての一対の噴射ノズル8dが図の左右に対向するように設置されている。噴射ノズル8dは図5(b)に示すように、検出器ホルダ5の下側から検出部2の方向に上向きに傾斜されている。なお、噴射ノズル8dは出口方向に向けて先細りとなるように形成しても良い。その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0024】
上記のように構成された実施の形態4においては、検知部2に対して洗浄流体が一対の対向されたパイプ状の噴射ノズル8dから破線矢印Aのように勢いよく噴射され、流速を高めることができるので、実施の形態1よりも検知部2の汚れを効果的に洗浄することができる。
【0025】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。例えば、洗浄流体通路6(6A、6B)を、検出器ホルダ5の外周面と外筒7によって構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えばパイプなどを検出器ホルダ5の外周面に固定するようにしても良い。また、流体噴射部8の形状や構造についても適宜変形や変更ができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 水質測定装置、 2 検出部、 3 電極ホルダ、 4 信号ケーブル、 5 検出器ホルダ、 6、6A、6B 洗浄流体通路、 7 外筒、 7a 導入口、 8 流体噴射部、 8a、8aA、8aB 噴射口、 8b シャワーノズル、 8c 周囲部材、 8d 噴射ノズル、 9 支持部材、 10 スタンション、 11 支持金具、 12 下水、 13 管路、 14 電磁弁、 15 変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され水中に浸漬される部分に水質の検出部が設けられた検出器ホルダと、この検出器ホルダの外周部に一体的に設置され所定時に上記検出部を洗浄するための洗浄流体を通流させる洗浄流体通路と、この洗浄流体通路に接続され上記洗浄流体を上記検出部に向けて噴射するように設けられた流体噴射部を備えた水質測定装置。
【請求項2】
円筒状の上記検出器ホルダにおける下端部の中心部に上記検出部が設けられ、上記流体噴射部は上記検出器ホルダの下端部よりも下側において上記検出部の周囲を囲む如く形成され、斜め上方に向けて上記洗浄流体を噴射することを特徴とする請求項1記載の水質測定装置。
【請求項3】
上記流体噴射部は、噴射口が上記検出部のまわりを同軸に囲むように形成された周囲360度の円形に形成され、上記外周部から内周部側の上記噴射口に向けて流路断面積が狭くなるように形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水質測定装置。
【請求項4】
上記流体噴射部は、上記検出部のまわりの互いに離間された複数の方向から中心部に位置する上記検出部に向けて上記洗浄流体を噴射するように噴射口が複数形成され、上記外周部から内周部側の上記噴射口に向けて流路断面積が狭くなるように形成されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の水質測定装置。
【請求項5】
上記噴射口は上記洗浄流体をシャワー状に噴射させるための多数の穴が設けられたシャワーノズルを備えていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の水質測定装置。
【請求項6】
上記噴射口はパイプ状に形成されたものであることを特徴とする請求項4記載の水質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104830(P2013−104830A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250208(P2011−250208)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)