氷粒の検出システムおよび方法
【課題】氷粒の蓄積を検出し、十分な期間、十分に凝縮して存在する氷粒を検出する必要が、本技術の現状では存在する。
【解決手段】氷粒の蓄積を検出するためのシステムおよび方法が本明細書で開示される。例示の一実施形態では、加熱された導管の内部容積内のパラメータが測定される、氷を検出するための方法が述べられる。この方法は、加熱された導管の内部容積内で測定されたパラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップも含む。
【解決手段】氷粒の蓄積を検出するためのシステムおよび方法が本明細書で開示される。例示の一実施形態では、加熱された導管の内部容積内のパラメータが測定される、氷を検出するための方法が述べられる。この方法は、加熱された導管の内部容積内で測定されたパラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップも含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年9月25日出願の米国特許仮出願第60/826,827号明細書に基づき優先権を主張するものであり、その全体の開示は、参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、一般に氷の検出に関し、より詳しくは、航空機が飛行中であるとき、氷粒の蓄積を検出し測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
航空輸送体の設計者にとって重要である大気条件には、液体水含有量(LWC:liquid water content)および氷水含有量(IWC:ice water content)が含まれる。LWCは、しばらくの間、航空機の表面上の過冷却液体水の凍結のために有害な氷の源の中心であったが、近年、大気の氷含有量および起こり得る有害な氷粒の蓄積に注目が集まっている。これらの粒子は、個別の氷の結晶、雪片などの結晶の凝集体晶、または過冷却水滴と衝突して、雪あられや雹など、より密集した球状の粒子を形成した結晶の形態をとっていることがある。氷粒のサイズは、ミクロンからセンチメーターまで、著しく変化することがある。昔は、氷粒は、一般に、航空機の外殻に危害を加えるとは見なされなかった。というのは、それらは、通常、航空機の表面に当たって跳ね返り蓄積しないからである。とはいえ、氷粒は、航空機に関連した問題を引き起こすことがある。たとえば、氷粒が航空機のエンジン、ダクトまたは空洞中に取りこまれたとき、氷粒は、互いに結合して、有害になり得る妨害物を形成することがある。また、蓄積した氷粒は、溶けて、次いで航空機のシステムの下流部分内で再凍結し、さらにエンジンおよび/またはエアデータの計装に問題を引き起こすことがある。これらの起こり得る問題を見極める助けにするために、FAAは、他の活動の中で氷粒吸い込みに起因するエンジン事象を調査する防除氷協調作業グループ(Ice Protection Harmonization Working Group)を設置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
氷粒の蓄積を検出し、十分な期間、十分に凝縮して存在する氷粒を検出する必要が、本技術の現状では存在する。というのは、実質的な氷の凝縮が、航空輸送体上に有害な影響を及ぼす恐れがあるからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、本開示では、氷粒を検出するためのシステムおよび方法が説明される。一実施形態では、とりわけ、航空輸送体上で使用される氷粒を検出するためのシステムが述べられる。このシステムは、縦軸が実質的に空気流と平行である導管を含む。導管は、その前方部に入口およびその後方部に出口を含む。システムは、氷粒の蓄積によって少なくとも部分的に導管の出口がふさがれたときを検出するように構成されたセンサも含む。また、センサは、さらに、氷粒の蓄積が検出されたとき、表示信号を供給するように構成される。システムは、また、センサと通信する処理装置と、氷粒を溶かすことができる温度まで導管を加熱するように構成されたヒータと、を含む。入口の横断面面積が、出口の横断面面積より大きく、したがって、導管の出口で空気流中の氷粒を蓄積させることができる。
【0006】
いくつかの実施形態のうちの1つでは、氷検出装置中で使用される導管が、本明細書で開示される。この一実施形態での導管は、その中を空気が流れることができるチャネルを有した中空管を含む。導管は、中空管の第1の端部に配置された入口も含む。入口は、空気がチャネルに流入することが可能なように構成され、第1の横断面面積を有する。また、導管には、中空管の第2の端部に配置された出口が含まれる。出口は、空気がチャネルから流出することが可能なように構成され、第2の横断面面積を有する。第1の横断面面積は、空気流中の氷粒の濃度が閾値レベルを超えたとき、チャネル内に障害物が形成されるように、第2の横断面面積より大きい。
【0007】
本出願は、氷粒を検出するための方法の実施形態も含む。一実施形態では、航空媒体の近傍で氷を検出する方法が開示される。この方法は、選択されたパワーレベルで導管を加熱するステップと、導管の内部容積内のパラメータを測定するステップと、を含む。方法は、導管の内部容積内で測定されたパラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップも含む。
【0008】
本明細書に、氷蓄積を測定するためのソフトウェアプログラム(1つまたは複数)の実施形態も開示される。一実施形態では、プログラムは、コンピュータ可読媒体上に格納され、導管の内部のパラメータの測定値を受け取るように構成されたロジックを含む。導管は、第1の横断面面積を有した入口および第2の横断面面積を有した出口を含む。第1の横断面面積は、第2の横断面面積より大きい。プログラムは、氷粒によって導管の出口がふさがれたときを検出するために、導管の内部のパラメータを処理するように構成されたロジックも含む。
【0009】
本開示の他の特徴、利点および実施は、本明細書に明らかには開示されていないが、以下の詳細な説明および添付図面を検討したとき、当業者に明らかになる。本開示のそのような暗示された実施を本明細書に含むように意図される。
【0010】
以下の図中の構成要素は、必ずしも一定の尺度で描かれていない。その代わりに、本開示の一般的な原理をはっきりと示すことに重点が置かれている。対応する構成要素を指定する参照文字は、一貫性および明快さのために図のすべてにわたって必要な場合繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による氷検出装置の斜位像を示す図である。
【図2】氷検出システムの第1の実施形態の概略図である。
【図3】氷検出システムの第2の実施形態の概略図である。
【図4A】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図4B】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図4C】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図5】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第1の実施形態の図である。
【図6】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第2の実施形態の図である。
【図7】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第3の実施形態の図である。
【図8】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第4の実施形態の図である。
【図9】一実施形態による氷粒を検出するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
航空機が飛行中のとき、氷粒は、航空機の様々な構成要素およびシステム上で、またはそれらの中で積み重なる、または凝集することがある。氷のこのような堆積または形成は望ましくなく、空気流を妨げる、または制限し、構成要素およびシステムの動作を妨げることがある。氷が蓄積しようとするこの傾向を利用して、本開示では、氷粒の蓄積が航空機の構成要素およびシステムの動作に悪影響を及ぼすことがあるレベルに到達したとき、警報または表示を提供するためのシステムおよび方法が述べられる。氷のレベルが過度であるという警報に応答して、障害を減少させる、または回避さえするために、続いて是正処置を取ることができる。警報または表示を航空機の乗員に提供して、乗員に処置を取るように促すことができ、あるいは警報または表示を除氷装置などの外部装置に供給することができ、外部装置は、警報に応答して自動的に処置を取るように構成することができる。
【0013】
図1に、氷検出装置10の例示の一実施形態を示す。氷検出装置10は、第1の収束導管12、第2の収束導管14、支柱16、ベース18、筺体20、およびコネクタ22を含む。氷検出装置10は、航空機が飛行中のときに空気流中の氷粒を検出するために、航空機(表示せず)上に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第1の収束導管12および第2の収束導管14は、サイズおよび形状が実質的に等しい。また、第1および第2の収束導管12および14は、互いに近くに配置し、または同様の空気流のパターンに直面する位置に配置することができる。さらに、第1および第2の収束導管12および14は、実質的に同じ方向に、あるいは空気流に対して少なくとも同様の方向に方向付けることができる。図に示すように、第1および第2の収束導管12および14は、ベース18の上のほぼ同じ高さに配置される。しかし、2つの収束導管12および14は、航空機について同様の空気流パターンに直面するのに適した、すべての相対的な位置を取ることができることに留意すべきである。適切な寸法によって設計され適切な方向で取り付けられたとき、収束導管12および14は、計画的に意図的に氷粒を蓄積させることができる。また、空気力によって、収束導管12および14の内側壁に接触して蓄積した状態に維持することができる。
【0014】
ベース18は、その周辺のまわりに穴を含み、その穴によって航空機の外殻に氷検出装置10を取り付けることを可能にすることができる。この場合、氷検出装置10は、ナット、ボルト、リベットなどを使用して航空機に取り付けることができ、あるいは他の実施形態では、任意の他の適切な取り付け部品を使用して航空機に取り付けることができる。ベース18は、航空機に対して固定位置に氷検出装置10を保持するように働く。氷検出装置10は、航空機の胴体、翼、尾部、エンジンインレットまたは他の部分に取り付けることができる。氷検出装置10の取り付け位置は、空気力学、温度特性、振動特性、および外部装置によって得られる追加のエアデータ計測値の有効性に基づくことができる。
【0015】
筺体20は、以下により詳しく述べるように、複数の電子部品を収納することができ、それらは、測定可能なパラメータを検出し信号を処理し、そしてフィードバック法によって構成要素を制御するように構成することができる。他の実施形態では、これらの電子部品は、筺体20の外部でベース18の上の氷検出装置10の構造の一部分中に配置する、あるいは航空機の内部の遠隔位置に配置することができる。コネクタ22は、検出信号、警報信号、警告信号などを他の装置、たとえば除氷装置に電気的に伝達するために(有線、または無線の送信のいずれかによって)、任意の適切な適合構造、ピン、端子などを含む。
【0016】
図2は、氷検出システム24の第1の実施形態を示す図である。氷検出システム24は、導管26、検知要素28、変換器30、信号処理システム32、および加熱要素34を含む。導管26は、任意の適切なサイズおよび形状を有する支柱36によって航空機(図示せず)上に支持される。支柱36は、航空機が飛行中のとき、導管26の縦軸が航空機に対する空気流と実質的に一直線になるように、安定した姿勢で導管26を保持する。航空機の様々な部分のまわりでの空気流特性に依存して、導管26は、空気が導管26の内部を流れるように、任意の適切な方向に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、導管26の縦軸は、航空機が進んでいる方向に実質的に位置合わせされる、すなわち、導管26が航空機の表面の一部分の近くに配置されたとき、そこでは、その一部分の上の空気流が、航空機の飛行方向と実質的に一致する。支柱36は、電気的に、または他の手段によって加熱して、飛行中氷結させずにそれを動作させることができる。
【0017】
導管26は、空気が導管に流入する前方部38、および空気が導管から流出する後方部40を含む。前方部38の横断面面積は、後方部40の横断面面積より大きく、したがって、ある意味で、導管26は、その中を流れる空気をじょうご状に通す。導管26は、頂部が切断された円錐として図2に示してあるが、本発明は、それによって限定されるものではない。空気が一定濃度の氷粒を含む時、氷粒は、導管26の後方部40中で蓄積させられ、障害物または妨害物を生成することができる。これが起きた時、導管26の内側壁に沿ったポイントで静的空気圧の上昇が生じ、以後これを「壁圧」という。また、導管26の内部内の他のパラメータは、同様に変化することがある。検知要素28は、氷粒の障害物または妨害物から生じる導管26の内部のパラメータの変化を検知する。
【0018】
検知要素28は、検知された、または測定されたパラメータを変換器30に供給し、それは、検知されたパラメータを対応する電気信号に変換する。いくつかの実施形態では、検知要素28および変換器30は、組み合わせて特定のパラメータを検知するための単一の検出装置を形成することができる。変換器30は、ノイズおよび/または電磁干渉を抑制するフィルタ回路を含むことができる。変換器30は、アナログデジタル変換器などの他の電気回路を含むこともできる。検知されたパラメータを電気信号に変換した後、変換器30は、この信号を信号処理システム32に供給する。
【0019】
信号処理システム32は、たとえばマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、メモリ構成要素などを含むことができる。メモリ構成要素は、内部に固定記憶媒体および/またはリムーバブル記憶媒体を含むことができる。メモリ構成要素内の記憶装置は、揮発性および/または不揮発性のメモリを含むこともでき、空気流中の氷粒の濃度を測定する、または検出するためのロジックを含むソフトウェアプログラムをリードオンリーメモリ(ROM)中に格納することができる。信号処理システム32のマイクロプロセッサは、氷の濃度を測定するために関連した機能を果たすソフトウェアを実行することができる。加熱要素34の温度を上昇させ、または低下させ、次いで導管26の温度を上昇させ、または低下させるように加熱要素34へのパワーの印加を調節するロジックを含むことができる。導管26の内部の測定されたパラメータを処理し、時間経過によるパラメータの変化を格納するロジックも含むことができる。遠隔にある表示スクリーンを制御する、または航空機のアビオニクスにパラメータまたは状況を指示するために、外部装置と通信するロジックも含むことができる。氷の蓄積が航空機の構成要素およびシステムの動作を乱すのに十分なほど深刻であると信号処理システム32が検出したとき、信号処理システム32は、是正処置を取ることができるように進んだ警報を生成する。
【0020】
信号処理システム32は、たとえば外部装置によって収集された他のパラメータまたは外気の特性を受け取るように構成することができる。これらの他のパラメータは、たとえば全温度、総圧、静圧、対気速度、高度、湿度などを含むことができる。これらのパラメータは、一定の氷粒濃度レベルになると氷障害物を蓄積させることができることを保証するために加熱パワーを調節することができるように、対流熱除去の変動および導管26への大気温度の影響を計算するために使用することができる。
【0021】
信号処理システム32は、その内部回路にパワーを供給するための低電力電源装置および加熱要素34にパワーを供給するための高電力電源装置を含むこともできる。たとえば、加熱要素34に供給されるパワーは、最大約300ワット程度とすることができる。信号処理システム32は、蓄積した氷が溶ける速度を制御するようにパワー量を調節することができる。
【0022】
一般に、加熱パワーは、空気温度が上昇する、および/または検知要素28の上の空気流量が減少すると、減少させることになる。パワー量の調節は、信号処理システム32のメモリ中に格納されたアルゴリズムまたはルックアップテーブルによって規定することができる。アルゴリズムまたはルックアップテーブルは、温度、圧力、空気流量などの様々なエアデータ情報が知られた複数の条件で加熱要素28を較正することによって、規定することができる。たとえば、その較正は風洞中で実施することができる。
【0023】
図2では、加熱要素34が導管26のわずかな部分だけを覆っているように示されているが、加熱要素34は、部分的に、または完全に導管を覆うように設計することができることを理解すべきである。また、加熱要素34は、導管26の外部に配置する、導管26の壁材料内に埋め込む、あるいは導管26の内側表面に隣接して配置することができる。加熱要素34は、過冷却液体水が凍結しないように防止する温度まで加熱される。それより高い温度まで加熱されたとき、加熱要素34は、氷粒が導管26内で蓄積し得る速度を減速させる。氷蓄積は、通常、加熱要素34が氷を溶かすことができる速度より大きい速度で氷粒が導管26に入る限り、持続される。
【0024】
最も厳しい温度条件での過冷却液体水の凍結を防止するために、加熱要素34は、おそらくは40℃ほど高い温度差で過冷却液体水を加熱する必要がある。一定の温度差である質量の氷を加熱するために必要なエネルギーは、同じ温度差でそれと同じ質量の過冷却液体水を加熱するために必要なエネルギーより大きい。たとえば、氷の溶解熱は、最初の温度から、最初の温度より40℃高い温度よりわずかに高い最後の温度まで、同じ質量の過冷却水を温めるために要求されることになるものより約2倍大きい。さらに、通常有害と見なされる大気の氷質量含有率は、水質量含有率より数倍上回る。参考までに、空気の1立方メーター当たり1から2グラムの水は、通常液体水含有率が高いと見なされ、一方、1立方メーター当たり5から8グラムの氷粒は、通常氷含有率が高いと見なされる。これは、過冷却液体水環境中で導管26を氷結させずに動作させる状態に維持するエネルギー量に比べて、氷障害物を溶かすことは、はるかに多いエネルギーを要することになることを示す。導管26の表面を制御下で加熱することによって、LWC状態中で氷結しないように導管を維持し、IWC濃度が一定の閾値より低いとき氷結しないように導管を維持することができる。しかし、設計されたように、導管26は、閾値を超えた氷粒の一定の濃度に直面したとき、詰まることができる。航空機は、しばしば、実質的にLWCだけに感受性がある氷検出器を装備している。これらの検出器の1つからの着氷速度情報は、別の方法で可能になるより低い検出閾値まで氷晶検出器の範囲を拡張することを望んだ場合、非常に高いLWC状態と比較的低いIWC状態を区別するために使用することができる。
【0025】
図3は、氷検出システム42の第2の実施形態の概略図である。この実施形態では、氷検出システム42は、2つの導管44および46、2つのそれぞれの検知要素48および50、変換器52、信号処理システム54、および2つのそれぞれの加熱要素56および58を含む。導管44、46は、支柱60および62によってそれぞれ支持され、それらは、航空機に接続される。いくつかの実施形態では、導管44、46は、1個の支柱によって支持され、図1に示す実施形態と同様である。氷検出システム42の構成要素は、図2に関して述べた対応する構成要素と機能が同様である。しかし、その中で氷蓄積を検出することができる1つの導管の代わりに、図3の氷検出システム42は、2つの導管44、46を含む。また、加熱要素56、58は、異なる温度まで加熱することができる。この点において、導管44、46内に堆積した氷の補充速度および溶解速度は、温度差に基づき、すべての他の要因が同じであるとしても、一方の導管と他方の導管で異なる。
【0026】
氷検出システム42は、導管44、46の互いに対するパラメータの過渡的変化を検出することができる。たとえば、両方の導管がふさがれておらず、空気が導管中を自由に流れることができるとき、導管44の内部の壁圧は、導管46の壁圧とほぼ等しい。より低い温度まで加熱された導管が、空気流を制限する氷障害物を形成したとき、この導管の内部の圧力は、上昇する。詰まった導管とそうでない導管の圧力差は、第1の遷移として検出することができる。後の時点で、一方の導管中の障害物が溶かされて除去されるような他の遷移が起きることがある。最初詰まっていなかった導管が障害物を形成して両方の導管がふさがれることになったことによって、さらに他の遷移が示されることがある。後者の2つの場合、導管の内部の間の圧力差は、ほぼゼロに戻ることになる。信号処理システム54は、2つの導管の圧力履歴を追跡することによって、または他のエアデータ情報を考慮することによって、どの事象が起きたかを決定するロジックを利用することができる。
【0027】
信号処理システム54は、必要に応じて、容易に測定することができる蓄積と溶解のサイクルを生成するように、各加熱要素56、58の温度を調節する、または維持することができる。異なる温度において各導管44、46のこれらのサイクルを比較することによって、信号処理システム54は、航空機の他の構成要素またはシステムの動作を乱すほどに十分に深刻な氷濃度を検出することができる。信号処理システム54は、各導管44、46がふさがれている期間を測定するために、または一方の導管が詰まった時から他方の導管が詰まった時までの時間差を測定するために、クロックまたはタイミング装置も含む。
【0028】
一例では、導管44は、第1の温度まで加熱され、導管46は、第1の温度より高い第2の温度まで加熱される。第2の温度は、いくつかの実施形態では、導管46がめったに、または決して詰まることがないほど十分高くすることができる。あるいは、第2の温度は、氷蓄積が導管46中で起きる可能性があるものの、導管44が詰まるより後で詰まるように、調節することができる。
【0029】
本開示の信号処理システム32、54は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせで実現することができる。ソフトウェアで、またはファームウェアで実施されたとき、信号処理システム32、54の氷検出ソフトウェアプログラムは、メモリ中に格納し処理装置によって実行することができる。ハードウェアで実施されたとき、氷検出ソフトウェアプログラムは、たとえばディスクリートロジック回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など、またはそれらのすべての組み合わせを使用して実現することができる。
【0030】
本明細書に述べるように、実行可能な論理的インストラクションを含むプログラムまたはソフトウェアコードは、すべての適切な処理装置によって実行するために、すべての適切なコンピュータ可読媒体中に実装することができる。コンピュータ可読媒体は、適度な期間プログラムまたはソフトウェアコードを格納することができる任意の物理媒体を含むことができる。
【0031】
図4A〜4Cに、他の可能な実施形態の中から、異なる構造的な特徴を有した導管の3つの実施形態を示す。図2および3の実施形態に関して述べた導管は、これらの図に示したような構造を有することができ、あるいは氷粒の蓄積を促進する傾向があり得るすべての他の適切な構造を含むことができる。図4A〜4Cの導管は、十分な強度、耐久性、および航空機において直面する温度変動に適切であることができる任意の材料または材料の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、図4A〜4Cの導管は、導管の後方部で渦流(eddy currents)の影響を減少させるために、導管の出口に追加の円筒形拡張部(図示せず)を含むことができる。
【0032】
導管への前方入口の横断面面積は、Afによって定義することができ、導管からの後方出口の横断面面積は、Aaによって定義することができる。たとえば、比Af:Aaは、約2:1から約20:1の範囲とすることができるが、導管は、比Af:Aaがこの範囲外になるように形成することができる。また、導管は、すべての適切な長さLおよびすべての適切なL:Af比を有することができる。導管の前方部および後方部における開口部の横断面形状だけでなく、導管の収束壁の横断面形状も、円形、楕円形、四角形またはすべての他の適切な形状とすることができる。前方部および後方部における導管のリムまたはエッジは、導管の縦軸に対して垂直である平面で形成することができる。しかし、他の実施形態では、エッジは、非平面状とすることができ、または平面状であるが、導管の縦軸に対して垂直でないようにすることができる。
【0033】
図4Aは、第1の実施形態の導管64である。この実施形態では、導管64は、前方部66および後方部68を含む。導管64は、前方および後方に開口部を有した内部70を有する。導管64の壁72は、前方部66から後方部68に向けて一定角度で収束する。この点で、導管64は、頂部が切断された円錐または錐台の形を取ることができる。
【0034】
図4Bに、第2の実施形態の導管74を示す。この実施形態では、導管74は、前方部76および後方部78を含む。導管74は、前方および後方に開口部を有した内部80を有する。導管74の壁82は、前方部76から後方部78に向けて非線形に収束して、導管74はホーン状に形作られる。
【0035】
図4Cに、第3の実施形態の導管84を示す。この実施形態では、導管84は、前方部86および後方部88を含む。導管84は、前方および後方に開口部を有した内部90を有する。導管84の壁92は、前方部86から後方部88に向けて非線形に収束して、導管84は図示のように形作られ、それは、底のないボウルまたはつぼの形状になぞらえることができる。
【0036】
図5に、導管と一体に形成された検知要素94の第1の実施形態を示す。検知要素94は、たとえば、図2および3の実施形態中に組み込むことができる。この実施形態では、検知要素94は、図2および3に示す導管26、44または46などの導管の壁部96を含む。壁部96は、たとえば図4A〜4Cに規定されたような任意の形状を取ることができ、導管の内部98および外部100を画定する。検知要素94は、チャネル104を有した管102も含み、それは、導管内の開口部またはタップ106において導管の内部98に向けて開口する。管102は、任意の適切な取り付け構造または機構を使用して、導管に沿った任意の所望の位置で壁部96に接続することができる。この実施形態では、導管の内部98および管102のチャネル104内の壁圧は、変換器30、52と流体が連通状態になることができ、それによって内部98の壁圧の検出を可能にする。
【0037】
いくつかの実施形態では、図2に示す変換器30は、タップ106(図5)を介して導管26の内部内の壁圧と、基準圧と、を検知する差圧センサとすることができる。基準圧は、導管が、その中を流れる空気流を制限するその後方部で、氷が形成されていないときに予想される圧力を示す。変換器30は、この点で、圧力差がある場合にはそれを検知し信号処理システム32に差圧信号を印加する。
【0038】
さらにタップ106を有した検知要素94は、図3に示す検知要素48および50として使用することができる。この点で、変換器52は、導管44および46の内部から壁圧を検知する差圧センサとすることができる。この実施形態では、基準導管と見なすことができる導管46の加熱要素58は、氷の蓄積が最小になるような程度まで導管46を加熱する。したがって、検知要素50は、詰まっていない導管について標準圧を検知する。導管44が氷の堆積でふさがれたとき、この導管44の内部の圧力が上昇する。次いで、変換器52が検知した差圧を測定することができる。
【0039】
図6は、検知要素108の第2の実施形態の図であり、それは、図2および3に示す検知要素28、48および/または50の代わりに使用することができる。検知要素108は、その外部100からその内部98を隔離する導管の壁部96を含む。検知要素108は、導管の内部98にさらされるように壁部96内に配置された圧力センサ110も含む。圧力センサ110は、任意の適切なサイズ、構造、または導管の内部98中の壁圧を測定するための本技術分野で知られた圧力検知用の構成要素を含むことができる。
【0040】
図7は、第3の実施形態による検知要素112の図であり、検知要素112は、図2および3に示す検知要素28、48および/または50の代わりに使用することができる。検知要素112は、その外部100からその内部98を隔離する導管の壁部96を含む。検知要素112は、導管の内部98にさらされるように壁部96内に配置された温度センサ114も含む。温度センサ114は、任意の適切なサイズ、構造、または導管の内部98中の温度を測定するための本技術分野で知られた温度検知用の構成要素を含むことができる。
【0041】
図8は、第4の実施形態による検知要素116を示す図である。図2および3に示す検知要素28、48および/または50は、検知要素116に置き換えることができる。この実施形態では、検知要素116は、その外部100からその内部98を隔離する導管の反対側壁部96を含む。検知要素116は、導管の内部98を横切る光ビームを放射することができるように配置された、本技術分野で知られた光源118も含む。光ビームに応答するのは、光源118からの光ビームを検出することができる、本技術分野で知られた光受容デバイス120である。氷質量が光ビームをさえぎるような程度まで、氷が導管中に凝集したとき、光受容デバイス120は、光ビームを受け取ることができず、氷による妨害状態を示す信号を送ることができる。氷が、その程度まで蓄積していないとき、または氷がその後溶解されて妨害状態がなくなったとき、光受容デバイス120は、光ビームを再び検出して、障害がもう存在しないと判定することができる。
【0042】
図9は、本発明の実施形態による氷粒を検出するためのプロセスを示すフローチャートである。フローチャートは、ブロック122に示す導管を加熱するステップを含む。ブロック124で、導管に供給される加熱パワーを必要なら調節して、たとえばIWCの閾値より低く蓄積した氷を溶かす。パワーは、様々な空気特性を補償するために、あるいは氷蓄積状態をより明らかに規定するように導管の感度を調節するために、調節することもできる。この調節または「チューニング」によって、一定の状態になるまで、または、たとえばIWCの一定の閾値が大気中に検出されるまで、氷が蓄積しないようになる。
【0043】
ブロック126で、パラメータは、導管の内部容積内で測定することができる。これらのパラメータは、たとえば、圧力、温度、光の妨害、または氷蓄積状態を表すことができる他の様々なパラメータを含むことができる。判定ブロック128で、測定されたパラメータが選択された範囲内であるかどうかを決定することができる。選択範囲は、導管がふさがれていない、または氷が実質的に蓄積していなくてその中を空気が自由に流れることができる状態を示すことができる。ブロック128で、パラメータが選択範囲内にあると決定されたとき、プロセスフローは、ブロック130に向かい、そこで導管がふさがれていないと表示される。ブロック132で、タイマが前の動作で実際に起動されていた場合、このタイマが停止される。ブロック134で、タイマの起動からタイマの停止までの時間の長さが測定される。次いで、プロセスフローは、ブロック124に戻り、上記の閾値の氷が存在することを意味し得る、パラメータが選択範囲から出るまで、パラメータの測定を繰り返す。
【0044】
ブロック128で、パラメータが選択範囲内にないと判定されると、プロセスフローは、ブロック136に向かう。ブロック136で、氷粒の蓄積が導管内に存在すると表示される。ブロック138で、タイマが実際に停止されていた場合、タイマが起動され、そのタイマの起動によって、導管がふさがれていた期間の開始時をマークする。次いで、ブロック138から、プロセスは、ブロック124へ戻ることができる。フローチャートは、氷検出動作を繰り返すために、このようにしてループを継続するように構成することができ、あるいは、所望であれば中止することもできる。さらに、全水分含有量(TWC:total water content)は、着氷状態検出器から決定されたLWCに本明細書で決定されたIWCを加算することによって、見積もることができる。
【0045】
本明細書で述べたステップ、プロセスまたは動作は、ソフトウェアまたはファームウェアで実現することができるすべてのモジュールまたはコードシーケンスを表すことができると理解すべきである。この点に関し、これらのモジュールおよびコードシーケンスは、物理的構成要素の中に、具体的な論理的なステップ、プロセスまたは動作を実行するためのコマンドまたはインストラクションを含むことができる。当業者には理解されるように、本明細書に述べたステップ、プロセスおよび/または動作の1つまたは複数は、実質的に同時に実行することができ、または明確に述べられた順序とは異なる順序で実行することができることをさらに理解すべきである。
【0046】
本明細書に述べた実施形態は、単に例示の実施形態を表すものであり、本開示を任意の具体的な例に必ずしも限定する意図はない。それどころか、当業者が理解されるように、様々な修正をこれらの実施形態に行うことができる。すべてのそのような修正は、本開示の精神および範囲に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されると意図される。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年9月25日出願の米国特許仮出願第60/826,827号明細書に基づき優先権を主張するものであり、その全体の開示は、参照によって本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、一般に氷の検出に関し、より詳しくは、航空機が飛行中であるとき、氷粒の蓄積を検出し測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
航空輸送体の設計者にとって重要である大気条件には、液体水含有量(LWC:liquid water content)および氷水含有量(IWC:ice water content)が含まれる。LWCは、しばらくの間、航空機の表面上の過冷却液体水の凍結のために有害な氷の源の中心であったが、近年、大気の氷含有量および起こり得る有害な氷粒の蓄積に注目が集まっている。これらの粒子は、個別の氷の結晶、雪片などの結晶の凝集体晶、または過冷却水滴と衝突して、雪あられや雹など、より密集した球状の粒子を形成した結晶の形態をとっていることがある。氷粒のサイズは、ミクロンからセンチメーターまで、著しく変化することがある。昔は、氷粒は、一般に、航空機の外殻に危害を加えるとは見なされなかった。というのは、それらは、通常、航空機の表面に当たって跳ね返り蓄積しないからである。とはいえ、氷粒は、航空機に関連した問題を引き起こすことがある。たとえば、氷粒が航空機のエンジン、ダクトまたは空洞中に取りこまれたとき、氷粒は、互いに結合して、有害になり得る妨害物を形成することがある。また、蓄積した氷粒は、溶けて、次いで航空機のシステムの下流部分内で再凍結し、さらにエンジンおよび/またはエアデータの計装に問題を引き起こすことがある。これらの起こり得る問題を見極める助けにするために、FAAは、他の活動の中で氷粒吸い込みに起因するエンジン事象を調査する防除氷協調作業グループ(Ice Protection Harmonization Working Group)を設置している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
氷粒の蓄積を検出し、十分な期間、十分に凝縮して存在する氷粒を検出する必要が、本技術の現状では存在する。というのは、実質的な氷の凝縮が、航空輸送体上に有害な影響を及ぼす恐れがあるからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般に、本開示では、氷粒を検出するためのシステムおよび方法が説明される。一実施形態では、とりわけ、航空輸送体上で使用される氷粒を検出するためのシステムが述べられる。このシステムは、縦軸が実質的に空気流と平行である導管を含む。導管は、その前方部に入口およびその後方部に出口を含む。システムは、氷粒の蓄積によって少なくとも部分的に導管の出口がふさがれたときを検出するように構成されたセンサも含む。また、センサは、さらに、氷粒の蓄積が検出されたとき、表示信号を供給するように構成される。システムは、また、センサと通信する処理装置と、氷粒を溶かすことができる温度まで導管を加熱するように構成されたヒータと、を含む。入口の横断面面積が、出口の横断面面積より大きく、したがって、導管の出口で空気流中の氷粒を蓄積させることができる。
【0006】
いくつかの実施形態のうちの1つでは、氷検出装置中で使用される導管が、本明細書で開示される。この一実施形態での導管は、その中を空気が流れることができるチャネルを有した中空管を含む。導管は、中空管の第1の端部に配置された入口も含む。入口は、空気がチャネルに流入することが可能なように構成され、第1の横断面面積を有する。また、導管には、中空管の第2の端部に配置された出口が含まれる。出口は、空気がチャネルから流出することが可能なように構成され、第2の横断面面積を有する。第1の横断面面積は、空気流中の氷粒の濃度が閾値レベルを超えたとき、チャネル内に障害物が形成されるように、第2の横断面面積より大きい。
【0007】
本出願は、氷粒を検出するための方法の実施形態も含む。一実施形態では、航空媒体の近傍で氷を検出する方法が開示される。この方法は、選択されたパワーレベルで導管を加熱するステップと、導管の内部容積内のパラメータを測定するステップと、を含む。方法は、導管の内部容積内で測定されたパラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップも含む。
【0008】
本明細書に、氷蓄積を測定するためのソフトウェアプログラム(1つまたは複数)の実施形態も開示される。一実施形態では、プログラムは、コンピュータ可読媒体上に格納され、導管の内部のパラメータの測定値を受け取るように構成されたロジックを含む。導管は、第1の横断面面積を有した入口および第2の横断面面積を有した出口を含む。第1の横断面面積は、第2の横断面面積より大きい。プログラムは、氷粒によって導管の出口がふさがれたときを検出するために、導管の内部のパラメータを処理するように構成されたロジックも含む。
【0009】
本開示の他の特徴、利点および実施は、本明細書に明らかには開示されていないが、以下の詳細な説明および添付図面を検討したとき、当業者に明らかになる。本開示のそのような暗示された実施を本明細書に含むように意図される。
【0010】
以下の図中の構成要素は、必ずしも一定の尺度で描かれていない。その代わりに、本開示の一般的な原理をはっきりと示すことに重点が置かれている。対応する構成要素を指定する参照文字は、一貫性および明快さのために図のすべてにわたって必要な場合繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による氷検出装置の斜位像を示す図である。
【図2】氷検出システムの第1の実施形態の概略図である。
【図3】氷検出システムの第2の実施形態の概略図である。
【図4A】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図4B】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図4C】図2および3に示す導管のうちの1つなどの導管の例示の一実施形態を示す図である。
【図5】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第1の実施形態の図である。
【図6】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第2の実施形態の図である。
【図7】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第3の実施形態の図である。
【図8】図2および3に示す検知要素のうちの1つなどの検知要素の第4の実施形態の図である。
【図9】一実施形態による氷粒を検出するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
航空機が飛行中のとき、氷粒は、航空機の様々な構成要素およびシステム上で、またはそれらの中で積み重なる、または凝集することがある。氷のこのような堆積または形成は望ましくなく、空気流を妨げる、または制限し、構成要素およびシステムの動作を妨げることがある。氷が蓄積しようとするこの傾向を利用して、本開示では、氷粒の蓄積が航空機の構成要素およびシステムの動作に悪影響を及ぼすことがあるレベルに到達したとき、警報または表示を提供するためのシステムおよび方法が述べられる。氷のレベルが過度であるという警報に応答して、障害を減少させる、または回避さえするために、続いて是正処置を取ることができる。警報または表示を航空機の乗員に提供して、乗員に処置を取るように促すことができ、あるいは警報または表示を除氷装置などの外部装置に供給することができ、外部装置は、警報に応答して自動的に処置を取るように構成することができる。
【0013】
図1に、氷検出装置10の例示の一実施形態を示す。氷検出装置10は、第1の収束導管12、第2の収束導管14、支柱16、ベース18、筺体20、およびコネクタ22を含む。氷検出装置10は、航空機が飛行中のときに空気流中の氷粒を検出するために、航空機(表示せず)上に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第1の収束導管12および第2の収束導管14は、サイズおよび形状が実質的に等しい。また、第1および第2の収束導管12および14は、互いに近くに配置し、または同様の空気流のパターンに直面する位置に配置することができる。さらに、第1および第2の収束導管12および14は、実質的に同じ方向に、あるいは空気流に対して少なくとも同様の方向に方向付けることができる。図に示すように、第1および第2の収束導管12および14は、ベース18の上のほぼ同じ高さに配置される。しかし、2つの収束導管12および14は、航空機について同様の空気流パターンに直面するのに適した、すべての相対的な位置を取ることができることに留意すべきである。適切な寸法によって設計され適切な方向で取り付けられたとき、収束導管12および14は、計画的に意図的に氷粒を蓄積させることができる。また、空気力によって、収束導管12および14の内側壁に接触して蓄積した状態に維持することができる。
【0014】
ベース18は、その周辺のまわりに穴を含み、その穴によって航空機の外殻に氷検出装置10を取り付けることを可能にすることができる。この場合、氷検出装置10は、ナット、ボルト、リベットなどを使用して航空機に取り付けることができ、あるいは他の実施形態では、任意の他の適切な取り付け部品を使用して航空機に取り付けることができる。ベース18は、航空機に対して固定位置に氷検出装置10を保持するように働く。氷検出装置10は、航空機の胴体、翼、尾部、エンジンインレットまたは他の部分に取り付けることができる。氷検出装置10の取り付け位置は、空気力学、温度特性、振動特性、および外部装置によって得られる追加のエアデータ計測値の有効性に基づくことができる。
【0015】
筺体20は、以下により詳しく述べるように、複数の電子部品を収納することができ、それらは、測定可能なパラメータを検出し信号を処理し、そしてフィードバック法によって構成要素を制御するように構成することができる。他の実施形態では、これらの電子部品は、筺体20の外部でベース18の上の氷検出装置10の構造の一部分中に配置する、あるいは航空機の内部の遠隔位置に配置することができる。コネクタ22は、検出信号、警報信号、警告信号などを他の装置、たとえば除氷装置に電気的に伝達するために(有線、または無線の送信のいずれかによって)、任意の適切な適合構造、ピン、端子などを含む。
【0016】
図2は、氷検出システム24の第1の実施形態を示す図である。氷検出システム24は、導管26、検知要素28、変換器30、信号処理システム32、および加熱要素34を含む。導管26は、任意の適切なサイズおよび形状を有する支柱36によって航空機(図示せず)上に支持される。支柱36は、航空機が飛行中のとき、導管26の縦軸が航空機に対する空気流と実質的に一直線になるように、安定した姿勢で導管26を保持する。航空機の様々な部分のまわりでの空気流特性に依存して、導管26は、空気が導管26の内部を流れるように、任意の適切な方向に位置合わせすることができる。いくつかの実施形態では、導管26の縦軸は、航空機が進んでいる方向に実質的に位置合わせされる、すなわち、導管26が航空機の表面の一部分の近くに配置されたとき、そこでは、その一部分の上の空気流が、航空機の飛行方向と実質的に一致する。支柱36は、電気的に、または他の手段によって加熱して、飛行中氷結させずにそれを動作させることができる。
【0017】
導管26は、空気が導管に流入する前方部38、および空気が導管から流出する後方部40を含む。前方部38の横断面面積は、後方部40の横断面面積より大きく、したがって、ある意味で、導管26は、その中を流れる空気をじょうご状に通す。導管26は、頂部が切断された円錐として図2に示してあるが、本発明は、それによって限定されるものではない。空気が一定濃度の氷粒を含む時、氷粒は、導管26の後方部40中で蓄積させられ、障害物または妨害物を生成することができる。これが起きた時、導管26の内側壁に沿ったポイントで静的空気圧の上昇が生じ、以後これを「壁圧」という。また、導管26の内部内の他のパラメータは、同様に変化することがある。検知要素28は、氷粒の障害物または妨害物から生じる導管26の内部のパラメータの変化を検知する。
【0018】
検知要素28は、検知された、または測定されたパラメータを変換器30に供給し、それは、検知されたパラメータを対応する電気信号に変換する。いくつかの実施形態では、検知要素28および変換器30は、組み合わせて特定のパラメータを検知するための単一の検出装置を形成することができる。変換器30は、ノイズおよび/または電磁干渉を抑制するフィルタ回路を含むことができる。変換器30は、アナログデジタル変換器などの他の電気回路を含むこともできる。検知されたパラメータを電気信号に変換した後、変換器30は、この信号を信号処理システム32に供給する。
【0019】
信号処理システム32は、たとえばマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、メモリ構成要素などを含むことができる。メモリ構成要素は、内部に固定記憶媒体および/またはリムーバブル記憶媒体を含むことができる。メモリ構成要素内の記憶装置は、揮発性および/または不揮発性のメモリを含むこともでき、空気流中の氷粒の濃度を測定する、または検出するためのロジックを含むソフトウェアプログラムをリードオンリーメモリ(ROM)中に格納することができる。信号処理システム32のマイクロプロセッサは、氷の濃度を測定するために関連した機能を果たすソフトウェアを実行することができる。加熱要素34の温度を上昇させ、または低下させ、次いで導管26の温度を上昇させ、または低下させるように加熱要素34へのパワーの印加を調節するロジックを含むことができる。導管26の内部の測定されたパラメータを処理し、時間経過によるパラメータの変化を格納するロジックも含むことができる。遠隔にある表示スクリーンを制御する、または航空機のアビオニクスにパラメータまたは状況を指示するために、外部装置と通信するロジックも含むことができる。氷の蓄積が航空機の構成要素およびシステムの動作を乱すのに十分なほど深刻であると信号処理システム32が検出したとき、信号処理システム32は、是正処置を取ることができるように進んだ警報を生成する。
【0020】
信号処理システム32は、たとえば外部装置によって収集された他のパラメータまたは外気の特性を受け取るように構成することができる。これらの他のパラメータは、たとえば全温度、総圧、静圧、対気速度、高度、湿度などを含むことができる。これらのパラメータは、一定の氷粒濃度レベルになると氷障害物を蓄積させることができることを保証するために加熱パワーを調節することができるように、対流熱除去の変動および導管26への大気温度の影響を計算するために使用することができる。
【0021】
信号処理システム32は、その内部回路にパワーを供給するための低電力電源装置および加熱要素34にパワーを供給するための高電力電源装置を含むこともできる。たとえば、加熱要素34に供給されるパワーは、最大約300ワット程度とすることができる。信号処理システム32は、蓄積した氷が溶ける速度を制御するようにパワー量を調節することができる。
【0022】
一般に、加熱パワーは、空気温度が上昇する、および/または検知要素28の上の空気流量が減少すると、減少させることになる。パワー量の調節は、信号処理システム32のメモリ中に格納されたアルゴリズムまたはルックアップテーブルによって規定することができる。アルゴリズムまたはルックアップテーブルは、温度、圧力、空気流量などの様々なエアデータ情報が知られた複数の条件で加熱要素28を較正することによって、規定することができる。たとえば、その較正は風洞中で実施することができる。
【0023】
図2では、加熱要素34が導管26のわずかな部分だけを覆っているように示されているが、加熱要素34は、部分的に、または完全に導管を覆うように設計することができることを理解すべきである。また、加熱要素34は、導管26の外部に配置する、導管26の壁材料内に埋め込む、あるいは導管26の内側表面に隣接して配置することができる。加熱要素34は、過冷却液体水が凍結しないように防止する温度まで加熱される。それより高い温度まで加熱されたとき、加熱要素34は、氷粒が導管26内で蓄積し得る速度を減速させる。氷蓄積は、通常、加熱要素34が氷を溶かすことができる速度より大きい速度で氷粒が導管26に入る限り、持続される。
【0024】
最も厳しい温度条件での過冷却液体水の凍結を防止するために、加熱要素34は、おそらくは40℃ほど高い温度差で過冷却液体水を加熱する必要がある。一定の温度差である質量の氷を加熱するために必要なエネルギーは、同じ温度差でそれと同じ質量の過冷却液体水を加熱するために必要なエネルギーより大きい。たとえば、氷の溶解熱は、最初の温度から、最初の温度より40℃高い温度よりわずかに高い最後の温度まで、同じ質量の過冷却水を温めるために要求されることになるものより約2倍大きい。さらに、通常有害と見なされる大気の氷質量含有率は、水質量含有率より数倍上回る。参考までに、空気の1立方メーター当たり1から2グラムの水は、通常液体水含有率が高いと見なされ、一方、1立方メーター当たり5から8グラムの氷粒は、通常氷含有率が高いと見なされる。これは、過冷却液体水環境中で導管26を氷結させずに動作させる状態に維持するエネルギー量に比べて、氷障害物を溶かすことは、はるかに多いエネルギーを要することになることを示す。導管26の表面を制御下で加熱することによって、LWC状態中で氷結しないように導管を維持し、IWC濃度が一定の閾値より低いとき氷結しないように導管を維持することができる。しかし、設計されたように、導管26は、閾値を超えた氷粒の一定の濃度に直面したとき、詰まることができる。航空機は、しばしば、実質的にLWCだけに感受性がある氷検出器を装備している。これらの検出器の1つからの着氷速度情報は、別の方法で可能になるより低い検出閾値まで氷晶検出器の範囲を拡張することを望んだ場合、非常に高いLWC状態と比較的低いIWC状態を区別するために使用することができる。
【0025】
図3は、氷検出システム42の第2の実施形態の概略図である。この実施形態では、氷検出システム42は、2つの導管44および46、2つのそれぞれの検知要素48および50、変換器52、信号処理システム54、および2つのそれぞれの加熱要素56および58を含む。導管44、46は、支柱60および62によってそれぞれ支持され、それらは、航空機に接続される。いくつかの実施形態では、導管44、46は、1個の支柱によって支持され、図1に示す実施形態と同様である。氷検出システム42の構成要素は、図2に関して述べた対応する構成要素と機能が同様である。しかし、その中で氷蓄積を検出することができる1つの導管の代わりに、図3の氷検出システム42は、2つの導管44、46を含む。また、加熱要素56、58は、異なる温度まで加熱することができる。この点において、導管44、46内に堆積した氷の補充速度および溶解速度は、温度差に基づき、すべての他の要因が同じであるとしても、一方の導管と他方の導管で異なる。
【0026】
氷検出システム42は、導管44、46の互いに対するパラメータの過渡的変化を検出することができる。たとえば、両方の導管がふさがれておらず、空気が導管中を自由に流れることができるとき、導管44の内部の壁圧は、導管46の壁圧とほぼ等しい。より低い温度まで加熱された導管が、空気流を制限する氷障害物を形成したとき、この導管の内部の圧力は、上昇する。詰まった導管とそうでない導管の圧力差は、第1の遷移として検出することができる。後の時点で、一方の導管中の障害物が溶かされて除去されるような他の遷移が起きることがある。最初詰まっていなかった導管が障害物を形成して両方の導管がふさがれることになったことによって、さらに他の遷移が示されることがある。後者の2つの場合、導管の内部の間の圧力差は、ほぼゼロに戻ることになる。信号処理システム54は、2つの導管の圧力履歴を追跡することによって、または他のエアデータ情報を考慮することによって、どの事象が起きたかを決定するロジックを利用することができる。
【0027】
信号処理システム54は、必要に応じて、容易に測定することができる蓄積と溶解のサイクルを生成するように、各加熱要素56、58の温度を調節する、または維持することができる。異なる温度において各導管44、46のこれらのサイクルを比較することによって、信号処理システム54は、航空機の他の構成要素またはシステムの動作を乱すほどに十分に深刻な氷濃度を検出することができる。信号処理システム54は、各導管44、46がふさがれている期間を測定するために、または一方の導管が詰まった時から他方の導管が詰まった時までの時間差を測定するために、クロックまたはタイミング装置も含む。
【0028】
一例では、導管44は、第1の温度まで加熱され、導管46は、第1の温度より高い第2の温度まで加熱される。第2の温度は、いくつかの実施形態では、導管46がめったに、または決して詰まることがないほど十分高くすることができる。あるいは、第2の温度は、氷蓄積が導管46中で起きる可能性があるものの、導管44が詰まるより後で詰まるように、調節することができる。
【0029】
本開示の信号処理システム32、54は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組み合わせで実現することができる。ソフトウェアで、またはファームウェアで実施されたとき、信号処理システム32、54の氷検出ソフトウェアプログラムは、メモリ中に格納し処理装置によって実行することができる。ハードウェアで実施されたとき、氷検出ソフトウェアプログラムは、たとえばディスクリートロジック回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など、またはそれらのすべての組み合わせを使用して実現することができる。
【0030】
本明細書に述べるように、実行可能な論理的インストラクションを含むプログラムまたはソフトウェアコードは、すべての適切な処理装置によって実行するために、すべての適切なコンピュータ可読媒体中に実装することができる。コンピュータ可読媒体は、適度な期間プログラムまたはソフトウェアコードを格納することができる任意の物理媒体を含むことができる。
【0031】
図4A〜4Cに、他の可能な実施形態の中から、異なる構造的な特徴を有した導管の3つの実施形態を示す。図2および3の実施形態に関して述べた導管は、これらの図に示したような構造を有することができ、あるいは氷粒の蓄積を促進する傾向があり得るすべての他の適切な構造を含むことができる。図4A〜4Cの導管は、十分な強度、耐久性、および航空機において直面する温度変動に適切であることができる任意の材料または材料の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態では、図4A〜4Cの導管は、導管の後方部で渦流(eddy currents)の影響を減少させるために、導管の出口に追加の円筒形拡張部(図示せず)を含むことができる。
【0032】
導管への前方入口の横断面面積は、Afによって定義することができ、導管からの後方出口の横断面面積は、Aaによって定義することができる。たとえば、比Af:Aaは、約2:1から約20:1の範囲とすることができるが、導管は、比Af:Aaがこの範囲外になるように形成することができる。また、導管は、すべての適切な長さLおよびすべての適切なL:Af比を有することができる。導管の前方部および後方部における開口部の横断面形状だけでなく、導管の収束壁の横断面形状も、円形、楕円形、四角形またはすべての他の適切な形状とすることができる。前方部および後方部における導管のリムまたはエッジは、導管の縦軸に対して垂直である平面で形成することができる。しかし、他の実施形態では、エッジは、非平面状とすることができ、または平面状であるが、導管の縦軸に対して垂直でないようにすることができる。
【0033】
図4Aは、第1の実施形態の導管64である。この実施形態では、導管64は、前方部66および後方部68を含む。導管64は、前方および後方に開口部を有した内部70を有する。導管64の壁72は、前方部66から後方部68に向けて一定角度で収束する。この点で、導管64は、頂部が切断された円錐または錐台の形を取ることができる。
【0034】
図4Bに、第2の実施形態の導管74を示す。この実施形態では、導管74は、前方部76および後方部78を含む。導管74は、前方および後方に開口部を有した内部80を有する。導管74の壁82は、前方部76から後方部78に向けて非線形に収束して、導管74はホーン状に形作られる。
【0035】
図4Cに、第3の実施形態の導管84を示す。この実施形態では、導管84は、前方部86および後方部88を含む。導管84は、前方および後方に開口部を有した内部90を有する。導管84の壁92は、前方部86から後方部88に向けて非線形に収束して、導管84は図示のように形作られ、それは、底のないボウルまたはつぼの形状になぞらえることができる。
【0036】
図5に、導管と一体に形成された検知要素94の第1の実施形態を示す。検知要素94は、たとえば、図2および3の実施形態中に組み込むことができる。この実施形態では、検知要素94は、図2および3に示す導管26、44または46などの導管の壁部96を含む。壁部96は、たとえば図4A〜4Cに規定されたような任意の形状を取ることができ、導管の内部98および外部100を画定する。検知要素94は、チャネル104を有した管102も含み、それは、導管内の開口部またはタップ106において導管の内部98に向けて開口する。管102は、任意の適切な取り付け構造または機構を使用して、導管に沿った任意の所望の位置で壁部96に接続することができる。この実施形態では、導管の内部98および管102のチャネル104内の壁圧は、変換器30、52と流体が連通状態になることができ、それによって内部98の壁圧の検出を可能にする。
【0037】
いくつかの実施形態では、図2に示す変換器30は、タップ106(図5)を介して導管26の内部内の壁圧と、基準圧と、を検知する差圧センサとすることができる。基準圧は、導管が、その中を流れる空気流を制限するその後方部で、氷が形成されていないときに予想される圧力を示す。変換器30は、この点で、圧力差がある場合にはそれを検知し信号処理システム32に差圧信号を印加する。
【0038】
さらにタップ106を有した検知要素94は、図3に示す検知要素48および50として使用することができる。この点で、変換器52は、導管44および46の内部から壁圧を検知する差圧センサとすることができる。この実施形態では、基準導管と見なすことができる導管46の加熱要素58は、氷の蓄積が最小になるような程度まで導管46を加熱する。したがって、検知要素50は、詰まっていない導管について標準圧を検知する。導管44が氷の堆積でふさがれたとき、この導管44の内部の圧力が上昇する。次いで、変換器52が検知した差圧を測定することができる。
【0039】
図6は、検知要素108の第2の実施形態の図であり、それは、図2および3に示す検知要素28、48および/または50の代わりに使用することができる。検知要素108は、その外部100からその内部98を隔離する導管の壁部96を含む。検知要素108は、導管の内部98にさらされるように壁部96内に配置された圧力センサ110も含む。圧力センサ110は、任意の適切なサイズ、構造、または導管の内部98中の壁圧を測定するための本技術分野で知られた圧力検知用の構成要素を含むことができる。
【0040】
図7は、第3の実施形態による検知要素112の図であり、検知要素112は、図2および3に示す検知要素28、48および/または50の代わりに使用することができる。検知要素112は、その外部100からその内部98を隔離する導管の壁部96を含む。検知要素112は、導管の内部98にさらされるように壁部96内に配置された温度センサ114も含む。温度センサ114は、任意の適切なサイズ、構造、または導管の内部98中の温度を測定するための本技術分野で知られた温度検知用の構成要素を含むことができる。
【0041】
図8は、第4の実施形態による検知要素116を示す図である。図2および3に示す検知要素28、48および/または50は、検知要素116に置き換えることができる。この実施形態では、検知要素116は、その外部100からその内部98を隔離する導管の反対側壁部96を含む。検知要素116は、導管の内部98を横切る光ビームを放射することができるように配置された、本技術分野で知られた光源118も含む。光ビームに応答するのは、光源118からの光ビームを検出することができる、本技術分野で知られた光受容デバイス120である。氷質量が光ビームをさえぎるような程度まで、氷が導管中に凝集したとき、光受容デバイス120は、光ビームを受け取ることができず、氷による妨害状態を示す信号を送ることができる。氷が、その程度まで蓄積していないとき、または氷がその後溶解されて妨害状態がなくなったとき、光受容デバイス120は、光ビームを再び検出して、障害がもう存在しないと判定することができる。
【0042】
図9は、本発明の実施形態による氷粒を検出するためのプロセスを示すフローチャートである。フローチャートは、ブロック122に示す導管を加熱するステップを含む。ブロック124で、導管に供給される加熱パワーを必要なら調節して、たとえばIWCの閾値より低く蓄積した氷を溶かす。パワーは、様々な空気特性を補償するために、あるいは氷蓄積状態をより明らかに規定するように導管の感度を調節するために、調節することもできる。この調節または「チューニング」によって、一定の状態になるまで、または、たとえばIWCの一定の閾値が大気中に検出されるまで、氷が蓄積しないようになる。
【0043】
ブロック126で、パラメータは、導管の内部容積内で測定することができる。これらのパラメータは、たとえば、圧力、温度、光の妨害、または氷蓄積状態を表すことができる他の様々なパラメータを含むことができる。判定ブロック128で、測定されたパラメータが選択された範囲内であるかどうかを決定することができる。選択範囲は、導管がふさがれていない、または氷が実質的に蓄積していなくてその中を空気が自由に流れることができる状態を示すことができる。ブロック128で、パラメータが選択範囲内にあると決定されたとき、プロセスフローは、ブロック130に向かい、そこで導管がふさがれていないと表示される。ブロック132で、タイマが前の動作で実際に起動されていた場合、このタイマが停止される。ブロック134で、タイマの起動からタイマの停止までの時間の長さが測定される。次いで、プロセスフローは、ブロック124に戻り、上記の閾値の氷が存在することを意味し得る、パラメータが選択範囲から出るまで、パラメータの測定を繰り返す。
【0044】
ブロック128で、パラメータが選択範囲内にないと判定されると、プロセスフローは、ブロック136に向かう。ブロック136で、氷粒の蓄積が導管内に存在すると表示される。ブロック138で、タイマが実際に停止されていた場合、タイマが起動され、そのタイマの起動によって、導管がふさがれていた期間の開始時をマークする。次いで、ブロック138から、プロセスは、ブロック124へ戻ることができる。フローチャートは、氷検出動作を繰り返すために、このようにしてループを継続するように構成することができ、あるいは、所望であれば中止することもできる。さらに、全水分含有量(TWC:total water content)は、着氷状態検出器から決定されたLWCに本明細書で決定されたIWCを加算することによって、見積もることができる。
【0045】
本明細書で述べたステップ、プロセスまたは動作は、ソフトウェアまたはファームウェアで実現することができるすべてのモジュールまたはコードシーケンスを表すことができると理解すべきである。この点に関し、これらのモジュールおよびコードシーケンスは、物理的構成要素の中に、具体的な論理的なステップ、プロセスまたは動作を実行するためのコマンドまたはインストラクションを含むことができる。当業者には理解されるように、本明細書に述べたステップ、プロセスおよび/または動作の1つまたは複数は、実質的に同時に実行することができ、または明確に述べられた順序とは異なる順序で実行することができることをさらに理解すべきである。
【0046】
本明細書に述べた実施形態は、単に例示の実施形態を表すものであり、本開示を任意の具体的な例に必ずしも限定する意図はない。それどころか、当業者が理解されるように、様々な修正をこれらの実施形態に行うことができる。すべてのそのような修正は、本開示の精神および範囲に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されると意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空輸送体上で使用するための氷粒検出システムであって、
氷粒を含む空気流と実質的に平行な縦軸を有し、その前方部に入口およびその後方部に出口を含む導管と、
氷粒の堆積によって少なくとも部分的に前記導管の前記出口がふさがれたときを検出するように構成され、さらに、氷粒の堆積が検出されたとき、表示信号を供給するように構成されたセンサと、
前記センサと通信する処理装置と、
前記導管を加熱するに十分な加熱出力を提供するヒータと、を含み、
前記入口の横断面面積が、前記出口の横断面面積より大きく、したがって空気流中の氷粒を前記導管の前記出口で堆積させることができ、
前記処理装置は、さらに、前記ヒータの加熱出力を調節するように構成され、
液体水が導管において凍結するのを実質的に防ぐが、前記導管に蓄積された閾値レベルの氷粒を実質的に溶かさないことを特徴とする氷粒検出システム。
【請求項2】
前記センサは、検知要素を備え、前記検知要素は、前記導管の内部内の圧力を検知するために、前記導管の壁中に圧力タップを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサは、変換器を備え、前記変換器は、基準圧に対して、前記導管の内部の圧力を検知するように構成された差圧センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記導管は、第1の導管であり、
前記基準圧を供給するように構成された圧力タップを含む第2の導管をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヒータは、前記第1の導管を第1の温度まで加熱するように構成された第1のヒータであり、
前記システムは、前記第2の導管を第2の温度まで加熱するように構成された第2のヒータをさらに含み、
前記第1および第2の温度は、閾値レベルと関連付けられ、それによって、氷粒の濃度が前記閾値レベルより大きいと、前記第1の導管に障害物を蓄積させることになり、前記氷粒の濃度が前記閾値レベルより小さいと、前記氷粒が溶かされて、前記第2の導管が実質的に氷結しない状態に保たれることになることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサは、前記導管の壁内に支持された、前記導管の内部の圧力を検知するように構成された圧力センサを含み、
前記処理装置は、さらに、前記導管中の氷粒の蓄積を表す前記導管の内部の圧力の上昇を検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサは、前記導管の内部の温度を測定するために、前記導管の壁内に支持された温度センサを含み、
前記処理装置は、さらに、氷粒の蓄積が前記導管中に形成されたときの、前記導管の内部の温度の変化を検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは、光源および光受容デバイスを含み、
前記光源は、前記光受容デバイスに向けて前記導管の内部の一部分を通して光ビームを放射するように構成され、
前記光受容デバイスは、前記氷粒の蓄積によって前記光ビームが阻まれたときを検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理装置は、前記ヒータの加熱出力レベルを調整するように構成され、その結果、前記導管は、前記空気流における氷粒の濃度が前記閾値以下であるとき、氷結しない状態に保たれ、かつ前記空気流における氷粒の濃度が前記閾値を上回るときは、氷粒の蓄積で詰まることを許容されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
航空輸送体の近傍で氷を検出する方法であって、
選択されたパワーレベルで導管を加熱するステップと、
氷粒を含む空気流が導管に入ることを許容するステップと、
前記導管の内部容積内のパラメータを測定するステップと、
前記導管の前記内部容積内で測定された前記パラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップと、
前記ヒータの加熱出力レベルは、液体水が導管内で氷結するのを実質的に阻止するように調整され、かつ導管内に蓄積する閾値レベルの氷粒を溶かすのを実質的に避けるために十分な低さであることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記氷粒の蓄積の開始を検出してから、前記氷粒の蓄積がその後に消滅したことを検出するまでの時間の長さを測定するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
総圧、静圧、全温度および静温度の少なくとも1つを含む、前記導管の外部の空気の状態を測定するステップと、
前記導管の外部の空気の測定された状態に基づき、前記導管の加熱を調節するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記パラメータは、圧力、温度および光ビーム妨害からなるパラメータの群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記導管は、収束導管であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ上で前記プログラムが実行されるとき、請求項10から13のいずれかに係る方法の実施のために、コンピュータ可読媒体上に格納されるプログラムコードを有するプログラム。
【請求項16】
コンピュータ可読媒体上に格納されるプログラムであって、
導管の内部のパラメータの測定値を受け取るように構成されたロジックであって、前記導管は、第1の横断面面積を有した入口および第2の横断面面積を有した出口を含み、前記第1の横断面面積は、前記第2の横断面面積より大きい、ロジックと、
氷粒によって前記導管の前記出口がふさがれたときを検出するために、前記導管の前記内部の前記パラメータを処理するように構成されたロジックと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
前記導管を加熱するようになされたヒータの加熱出力を制御するように構成されたロジックをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記導管の前記出口に氷粒障害物が存在することを表す信号を生成するように構成されたロジックをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項1】
航空輸送体上で使用するための氷粒検出システムであって、
氷粒を含む空気流と実質的に平行な縦軸を有し、その前方部に入口およびその後方部に出口を含む導管と、
氷粒の堆積によって少なくとも部分的に前記導管の前記出口がふさがれたときを検出するように構成され、さらに、氷粒の堆積が検出されたとき、表示信号を供給するように構成されたセンサと、
前記センサと通信する処理装置と、
前記導管を加熱するに十分な加熱出力を提供するヒータと、を含み、
前記入口の横断面面積が、前記出口の横断面面積より大きく、したがって空気流中の氷粒を前記導管の前記出口で堆積させることができ、
前記処理装置は、さらに、前記ヒータの加熱出力を調節するように構成され、
液体水が導管において凍結するのを実質的に防ぐが、前記導管に蓄積された閾値レベルの氷粒を実質的に溶かさないことを特徴とする氷粒検出システム。
【請求項2】
前記センサは、検知要素を備え、前記検知要素は、前記導管の内部内の圧力を検知するために、前記導管の壁中に圧力タップを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサは、変換器を備え、前記変換器は、基準圧に対して、前記導管の内部の圧力を検知するように構成された差圧センサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記導管は、第1の導管であり、
前記基準圧を供給するように構成された圧力タップを含む第2の導管をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヒータは、前記第1の導管を第1の温度まで加熱するように構成された第1のヒータであり、
前記システムは、前記第2の導管を第2の温度まで加熱するように構成された第2のヒータをさらに含み、
前記第1および第2の温度は、閾値レベルと関連付けられ、それによって、氷粒の濃度が前記閾値レベルより大きいと、前記第1の導管に障害物を蓄積させることになり、前記氷粒の濃度が前記閾値レベルより小さいと、前記氷粒が溶かされて、前記第2の導管が実質的に氷結しない状態に保たれることになることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサは、前記導管の壁内に支持された、前記導管の内部の圧力を検知するように構成された圧力センサを含み、
前記処理装置は、さらに、前記導管中の氷粒の蓄積を表す前記導管の内部の圧力の上昇を検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサは、前記導管の内部の温度を測定するために、前記導管の壁内に支持された温度センサを含み、
前記処理装置は、さらに、氷粒の蓄積が前記導管中に形成されたときの、前記導管の内部の温度の変化を検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは、光源および光受容デバイスを含み、
前記光源は、前記光受容デバイスに向けて前記導管の内部の一部分を通して光ビームを放射するように構成され、
前記光受容デバイスは、前記氷粒の蓄積によって前記光ビームが阻まれたときを検出するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記処理装置は、前記ヒータの加熱出力レベルを調整するように構成され、その結果、前記導管は、前記空気流における氷粒の濃度が前記閾値以下であるとき、氷結しない状態に保たれ、かつ前記空気流における氷粒の濃度が前記閾値を上回るときは、氷粒の蓄積で詰まることを許容されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
航空輸送体の近傍で氷を検出する方法であって、
選択されたパワーレベルで導管を加熱するステップと、
氷粒を含む空気流が導管に入ることを許容するステップと、
前記導管の内部容積内のパラメータを測定するステップと、
前記導管の前記内部容積内で測定された前記パラメータに基づき、氷粒の蓄積が存在することを検出するステップと、
前記ヒータの加熱出力レベルは、液体水が導管内で氷結するのを実質的に阻止するように調整され、かつ導管内に蓄積する閾値レベルの氷粒を溶かすのを実質的に避けるために十分な低さであることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記氷粒の蓄積の開始を検出してから、前記氷粒の蓄積がその後に消滅したことを検出するまでの時間の長さを測定するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
総圧、静圧、全温度および静温度の少なくとも1つを含む、前記導管の外部の空気の状態を測定するステップと、
前記導管の外部の空気の測定された状態に基づき、前記導管の加熱を調節するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記パラメータは、圧力、温度および光ビーム妨害からなるパラメータの群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記導管は、収束導管であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ上で前記プログラムが実行されるとき、請求項10から13のいずれかに係る方法の実施のために、コンピュータ可読媒体上に格納されるプログラムコードを有するプログラム。
【請求項16】
コンピュータ可読媒体上に格納されるプログラムであって、
導管の内部のパラメータの測定値を受け取るように構成されたロジックであって、前記導管は、第1の横断面面積を有した入口および第2の横断面面積を有した出口を含み、前記第1の横断面面積は、前記第2の横断面面積より大きい、ロジックと、
氷粒によって前記導管の前記出口がふさがれたときを検出するために、前記導管の前記内部の前記パラメータを処理するように構成されたロジックと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
前記導管を加熱するようになされたヒータの加熱出力を制御するように構成されたロジックをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記導管の前記出口に氷粒障害物が存在することを表す信号を生成するように構成されたロジックをさらに含むことを特徴とする請求項16に記載のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−91495(P2013−91495A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−29396(P2013−29396)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2009−530547(P2009−530547)の分割
【原出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【出願人】(506283927)ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2009−530547(P2009−530547)の分割
【原出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【出願人】(506283927)ローズマウント・エアロスペース・インコーポレーテッド (26)
【氏名又は名称原語表記】ROSEMOUNT AEROSPACE INC.
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