氷蓄熱装置
【目的】 上下に対向配置された伝熱管を備えた氷蓄熱槽に対し、冷熱回収中のサーマルウェークの影響を軽減する。
【構成】 氷蓄熱槽15内に複数本の伝熱管17a,17b,17c …を格子状に配列する。鉛直方向で対向する伝熱管17a,17b,17c の間に、下側の伝熱管17c,17b 周囲の氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管17b,17a 周囲に達することを阻止する水平仕切板27,27 を設け、各伝熱管17a,17b,17c 周囲の融解部分がつながって上側の伝熱管17b,17c での冷熱回収効率が低下してしまうことを防ぐ。
【構成】 氷蓄熱槽15内に複数本の伝熱管17a,17b,17c …を格子状に配列する。鉛直方向で対向する伝熱管17a,17b,17c の間に、下側の伝熱管17c,17b 周囲の氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管17b,17a 周囲に達することを阻止する水平仕切板27,27 を設け、各伝熱管17a,17b,17c 周囲の融解部分がつながって上側の伝熱管17b,17c での冷熱回収効率が低下してしまうことを防ぐ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、氷蓄熱槽内の氷を伝熱管により融解して冷熱を回収する氷蓄熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、この種の氷蓄熱装置は、空調システムその他工業用、農業用の冷却システム等への利用を目的として開発されており、氷蓄熱槽に氷を蓄え、氷の冷熱を利用して空気調和や冷却を行うものである。前記氷蓄熱装置として、例えば図11に示すように、氷蓄熱槽(a) と、該氷蓄熱槽(a) 内に配設された複数本の(図中では9本)の伝熱管(b),(b),…とを備え、伝熱管(b),(b),…で氷蓄熱槽(a) 内の水を冷却して製氷を行う一方、製氷後に氷(c) で伝熱管(b),(b),…内の流体を冷却して冷熱を回収するようにしたものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記氷蓄熱装置の場合、冷熱回収時において、氷蓄熱槽(a) 内の氷(c) は、当初各管(b),(b),…の周囲から均等に融解される。しかし、氷(c) の融解が進むと、伝熱管(b),(b),…で加温された融解水が上昇するため、図12に示すように、伝熱管(b) の上方の氷(c) が側方よりも融け易くなる。そして、伝熱管(b) の上方と側方とで融解の程度に差があるため、伝熱管(b) 側方から冷熱を回収しにくいという問題が生じる。
【0004】特に、図11に示すように、複数本の伝熱管(b),(b),…が上下に同一鉛直面上に配列されている場合、伝熱管(b) 上方への融解の程度が大きいことから、融解開始後の早い段階で上下3本の伝熱管(b),(b),(b) の回りに形成された融解部分(d) (図12)がつながる。そして、いったん上下の融解部分(d) がつながると、図13に示すように、融解水が上下3本の伝熱管(b),(b),(b) (図中では上下2本のみ示す)の回りを次々と上昇していく対流が生じるため、上方への融解速度と側方への融解速度との差が顕著になる。このため、氷蓄熱槽(a) 内には、図11に示すように、上下3本の伝熱管(b),(b),(b) の回りに上下に細長い融解空間(e),(e),(e) が形成されると共に、伝熱管(b) 側方に氷の残留部分(f),(f),…ができる。また、下方の伝熱管(b),(b),…で加温された水が上方の伝熱管(b),(b),…を通過する(サーマルウェーク)ため、上方の伝熱管(b),(b),…ほど融解水との間の伝熱量が減少するという問題も生じる。
【0005】本発明はかかる点に鑑みてなされたものであって、伝熱管側方からの冷熱の回収を容易にすると共にサーマルウェークの影響を軽減することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、鉛直方向に対向配置する伝熱管同士の間を仕切板により仕切って下側の伝熱管周辺で生じた融解水が上側の伝熱管に達しないようにした。具体的に請求項1記載の発明は、氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内にそれぞれ水平方向へ延びるように設けられ、内部を流通する流体と前記氷との熱交換により冷熱を回収する複数本の伝熱管(17a),(17b),(17c) とを備えた氷蓄熱装置を前提としている。そして、鉛直方向に対向配置された伝熱管(17a),(17b),(17c) の間に、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することを阻止する水平仕切板(27)を設けた構成としている。
【0007】請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の氷蓄熱装置において、水平方向に対向配置された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間に、各伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲に達することを阻止する鉛直仕切板(33)を設けた構成としている。
【0008】請求項3記載の発明は、前記請求項1または2記載の氷蓄熱装置において、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が水平方向に並列して成る管列を上下複数段設け、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士を上下に対向させた構成としている。
【0009】請求項4記載の発明は、前記請求項1または2記載の氷蓄熱装置において、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列を上下複数段設け、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士を上下に対向するように配置させた構成としている。
【0010】請求項5記載の発明は、前記請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置において、仕切板(27)の側縁部と氷蓄熱槽(15)の内面との間にスリット状の開口(29)を形成した構成としている。
【0011】請求項6記載の発明は、前記請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置において、仕切板(27)の側縁部に、該仕切板(27)によって仕切られた氷蓄熱槽(15)の内部空間(C),(D),(E) 同士を連通させる連通孔(31),(31),…を形成した構成としている。
【0012】
【作用】上記の構成により、各請求項に係る発明では、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲で氷が融解されて生じる融解水が上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することが水平仕切板(27)によって阻止されるので、上下の伝熱管(17a),(17b),(17c) の回りに形成された融解部分の領域がつながることが回避され、従来のように、融解水が上下の伝熱管(17c),(17b),(17a) の回りを次々と上昇していく対流の発生が回避でき、下側の伝熱管(17c),(17b) で加温された水が上側の伝熱管(17b),(17a) を通過する所謂サーマルウェークによる冷熱回収量の減少が回避できる。特に、請求項3に係る発明では、各管列の対応する伝熱管同士が上下に対向するように配置されており、この伝熱管同士の間隔寸法が狭くなって融解部分同士が繋り易いといった課題を有していたが、これを確実に回避できる。また、請求項4に係る発明においては、横方向の配管間隔が大きくなり、伝熱管側方の氷が残留する課題を有していたが、仕切板(27)の存在により氷の融解方向を横方向に向わせることができるので、効率良く氷の融解が行える。
【0013】請求項2記載の発明では、左右方向の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士の融解部分がつながることも回避でき、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための流体の循環量の制御を容易に行うことができる。
【0014】請求項5及び6記載の発明では、製氷運転時において各空間(C),(D),(E) 内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分が上側の空間に吸収されることになるので、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避できる。
【0015】
【実施例】
(第1実施例)以下、本発明の第1実施例を図面に基づき説明する。図1は本例に係る氷蓄熱装置(A) を備えた冷房専用の蓄熱式空気調和装置(B) を示す。前記蓄熱式空気調和装置(B) は、前記氷蓄熱装置(A) 以外に、圧縮機(1) と、凝縮器として機能する室外熱交換器(3) と、冷媒の減圧または流量調節を行う開度調節可能な第1電子膨脹弁(5) および第2電子膨脹弁(7) と、蒸発器として機能する室内熱交換器(9) とを備えている。これらの機器(1) 〜(9) は冷媒配管(11)で順次接続されており、これにより、冷媒が流通する主冷媒回路(13)が構成されている。
【0016】前記氷蓄熱装置(A) は冷熱を蓄熱する氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内に水平に配設された伝熱管(17)とを備えている。該伝熱管(17)の一端は第1分岐路(19a) を介して主冷媒回路(13)の液管(21)における第1電子膨脹弁(5) の上流側に、他端は第2分岐路(19b) を介して前記第1電子膨脹弁(5) の下流側にそれぞれ接続され、伝熱管(17)と液管(21)との間で冷媒が流通可能となっている。前記第1分岐路(19a) には流路を開閉する第1開閉弁(23a) が介設されている。また、第1分岐路(19a) における第1開閉弁(23a) と伝熱管(17)との間からは第3分岐路(19c) が分岐し、該第3分岐路(19c) は主冷媒回路(13)のガス管(25)に接続され、伝熱管(17)とガス管(25)との間で冷媒が流通可能となっている。前記第3分岐路(19c) には流路を開閉する第2開閉弁(23b) が介設されている。
【0017】前記氷蓄熱槽(15)内に配設されている伝熱管(17)は図1では1本としているが、実際は、図2に示すように、いわゆる格子状に9本配設されている。この9本の伝熱管(17a),(17b),(17c),…は、図3に示すように、同一水平面上に位置するもの同士はU字状に折曲げられたU字管部を介して互いに連続した1本の管で形成されている。つまり、氷蓄熱槽(15)の内部には上下3本の配管が配設されていることになる。
【0018】そして、本例の特徴としては、上下に配設された各伝熱管(17a),(17b),(17c)の間に仕切板(27),(27) が配設されていることにある。この仕切板(27)は、図2及び図3に示すように、氷蓄熱槽(15)の内部空間を上下3空間(C),(D),(E) に仕切るものであって、左右に並設された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士は同じ空間(C),(D),(E) 内に位置している一方、上下に位置された伝熱管(17a),(17b),(17c) 同士は仕切板(27),(27) によって仕切られた異なる空間(C),(D),(E) に位置している。即ち、1空間に1本の配管のみが配設された構成となっている。
【0019】次に、上述の如く構成された氷蓄熱装置(A) の運転動作を図1に基づいて説明する。冷熱回収を行わない通常冷房運転の場合、第1開閉弁(23a) および第2開閉弁(23b) を閉じ、第1電子膨脹弁(5) で流量調節した状態で運転を行い、圧縮機(1) で圧縮した冷媒を室外熱交換器(3) で凝縮し、第2電子膨脹弁(7) で減圧し、室内熱交換器(9) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す。
【0020】前記氷蓄熱槽(15)において製氷を行う氷蓄熱運転の場合、第1開閉弁(23a) を閉じ、第2開閉弁(23b) を開き、且つ第2電子膨脹弁(7) を全閉にした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(3) を経た冷媒を第1電子膨脹弁(5)で減圧し、第2分岐路(19b) を介して伝熱管(17)に流通させ、伝熱管(17)で蒸発させて氷蓄熱槽(15)の水を冷却して製氷を行い、第3分岐路(19c) およびガス管(25)を経て圧縮機(1) に戻す(実線の矢視で示す流れ)。
【0021】冷熱を回収して冷房運転を行う蓄熱冷房運転の場合、第1開閉弁(23a) を開け、第2開閉弁(23b) を閉じ、且つ第1電子膨脹弁(5) で流量調節をした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(3) を経た冷媒の一部または全部を第1分岐路(19a) を介して伝熱管(17)に流通させ、伝熱管(17)で過冷却し、第2分岐路(19b) を介して液管(21)に戻し、第2電子膨脹弁(7) で減圧し、室内熱交換器(9) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す(破線の矢視で示す流れ)。
【0022】次に、前記蓄熱冷房運転時の氷の融解状態について最下部(3段目)の伝熱管(17c) を例に挙げて説明する。運転開始後、伝熱管(17c) の周囲の氷が融解されていくと、図4に示すように、加温された融解水が上昇するため、この融解部分において対流が発生し、伝熱管(17c) の上方の氷が側方よりも融解が促進する。そして、この氷の融解による融解水の領域(F) が仕切板(27)に達すると、図4に矢印で示すように、融解水の対流は、この仕切板(27)の下面で反転され、この仕切板(27)と伝熱管(17c) の周囲との間で行われる。つまり、伝熱管(17c) の周囲で氷が融解されて生じる融解水が上側の伝熱管(17b) の配設部周辺に流れるようなことがなくなる。このような状態が2段目の伝熱管(17b) においても同様に生じており、この伝熱管(17b) の周囲で氷が融解されて生じる融解水も最上部(1段目)の伝熱管(17a) の配設部周辺に流れるようなことはない。
【0023】このため、上下3本の伝熱管(17a),(17b),(17c) の回りに形成された融解部分の領域(F) がつながることが回避され、従来のように、この各融解部分の領域(F),(F) 同士がつながって、融解水が上下3本の伝熱管(17c),(17b),(17a) の回りを次々と上昇していく対流が生じることがない。従って、下方の伝熱管(17c),(17b) で加温された水が上方の伝熱管(17b),(17a) を通過する所謂サーマルウェークによって、上方の伝熱管ほど融解水との間の伝熱量が減少するといった状況が生じなくなり、また、氷の融解方向を仕切板(27)に沿って側方に向わせることができるので、各伝熱管(17a),(17b),(17c) において均等且つ効率良く冷熱の取出しが行え、氷蓄熱槽(15)から回収できる冷熱量を増加させることができる。
【0024】(変形例)次に、上述した第1実施例の変形例について説明する。本例は仕切板(27)の変形例であって、その他の構成は、上述した第1実施例と同様であるので、ここでは仕切板(27)についてのみ説明する。
【0025】先ず、第1の変形例について説明する。図5R>5に示すように、本例の仕切板(27)は、その左右両側部が氷蓄熱槽(15)の内面に所定寸法の間隔を有するように、その幅寸法が氷蓄熱槽の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている。これにより、仕切板(27)と氷蓄熱槽(15)の内面との間にはスリット状の開口(29)が形成されており、仕切板(27)によって仕切られていた空間(C),(D),(E) 同士は、この開口(29)によって、互いに連通されている。
【0026】このような構成により、製氷運転時において各空間(C),(D),(E) 内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分が上側の空間に吸収されることになるので、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避できる。
【0027】次に、第2の変形例について説明する。この変形例は、上述したような仕切板(27)と氷蓄熱槽(15)の内面との間に形成したスリット状の開口(29)に代えて、仕切板(27)の左右両側部に沿って間欠的に連通孔(31),(31),…を形成した構成としている。
【0028】このような構成により、本例にあっても、水が氷化する際の体積膨張分を、連通孔(31),(31),…を通過させて上側の空間に吸収させることができ、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)の変形や破損が回避できる。
【0029】(第2実施例)次に、本発明の第2実施例について説明する。図7及び図8に示すように、本例は、水平方向に対向して配設された各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間にも仕切板(33)を配設した構成としている。これにより、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) は、夫々独立した空間に位置されることになる。
【0030】このような構成によれば、上下方向の伝熱管(17a),(17b),(17c) 同士の融解部分の領域がつながることを回避できるばかりでなく、左右方向の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士の融解部分がつながることも回避できる。即ち、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための冷媒の循環量を容易に制御することができる。つまり、複数の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち1つの伝熱管を監視しておくことにより、その他の伝熱管の周囲におけるにおける氷の残量等が推定できるので、冷熱取出運転時の制御が容易になる。
【0031】(第3実施例)次に、本発明の第3実施例について説明する。本例は、図9に示すように、伝熱管配列を格子状配列に代えて千鳥状配列にしたものである。
【0032】すなわち、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されている。このような千鳥状配列にすることにより、伝熱管を氷蓄熱槽(15)内に均等に分散させることができ、氷蓄熱槽(15)内の配管本数を格子状配列の場合よりも減らすことができる利点がある。
【0033】そして、この場合の仕切板(27)の配置状態としては、この仕切板(27)を波板状に形成しておき、氷蓄熱槽(15)の内部を上下3空間(C),(D),(E) に仕切って、互いに同一平面上に位置する伝熱管と、この各伝熱管の中間位置の僅か下側位置に配設された伝熱管とを同一の空間内に位置するようにしている。
【0034】(第4実施例)次に、本発明の第4実施例について説明する。図10に示すように、本例も伝熱管配列を千鳥状配列にしたものである。そして、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の夫々が独立した空間に位置されるように、図10において右方向に向うにしたがって下方に傾斜された仕切板(27a) と左方向に向うにしたがって下方に傾斜された仕切板(27b) とが組合わされて氷蓄熱槽(15)内に配設されている。つまり、この各仕切板(27a),(27b) によって、上述した第2実施例のように水平方向の仕切板(27)と鉛直方向の仕切板(33)とを備えたものと同様の効果が得られるようになっている。
【0035】なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含するものであり、例えば本発明の氷蓄熱装置(A) は空気調和装置(B) 以外の用途に使用するものであってもよい。
【0036】
【発明の効果】以上のように、各請求項に係る発明の氷蓄熱装置によれば以下に述べるような効果が発揮される。請求項1記載の発明では、鉛直方向に対向配置された伝熱管の間に水平仕切板を設け、下側の伝熱管周囲において氷が融解して生じた融解水が上側の伝熱管周囲に達することを阻止するようにしたために、従来のように、融解水が上下の伝熱管の回りを次々と上昇していく対流の発生が回避でき、下側の伝熱管で加温された水が上側の伝熱管を通過する所謂サーマルウェークによる冷熱回収量の減少が回避できる。また、特に、請求項3に係る発明では、各管列の対応する伝熱管同士が上下に対向するように配置されており、この伝熱管同士の間隔寸法が狭くなって融解部分同士が繋り易いといった課題を有していたが、これを確実に回避できる。また、請求項4に係る発明では、横方向の配管間隔が大きくなり、伝熱管側方の氷が残留する課題を有していたが、仕切板の存在により氷の融解方向を横方向に向わせることができるので、効率良く氷の融解が行える。つまり、本発明によれば、各伝熱管において均等且つ効率良く冷熱の取出しが行え、氷蓄熱槽から回収できる冷熱量を増加させることができる。
【0037】請求項2記載の発明によれば、水平方向に対向配置された伝熱管の間に鉛直仕切板を設け、各伝熱管周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管周囲に達することを阻止するようにしたために、左右方向の伝熱管同士の融解部分がつながることも回避でき、各伝熱管が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための流体の循環量の制御を容易に行うことができる。つまり、複数の伝熱管のうち1つの伝熱管を監視しておくことにより、その他の伝熱管の周囲におけるにおける氷の残量等が推定でき、冷熱取出運転時の制御が容易になる。
【0038】請求項5及び6記載の発明によれば、製氷運転時において、仕切板で仕切られた各空間内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分を上側の空間で吸収できるようにしたために、仕切板や氷蓄熱槽に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避でき、氷蓄熱装置の信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の蓄熱式空気調和装置の冷媒配管系統図である。
【図2】氷蓄熱槽の断面図である。
【図3】氷蓄熱槽の内部構造の一部を示す斜視図である。
【図4】伝熱管周辺での氷の融解状態を示す断面図である。
【図5】第1の変形例における氷蓄熱槽の内部構造を示す平面図である。
【図6】第2の変形例における図5相当図である。
【図7】本発明の第2実施例における図2相当図である。
【図8】本発明の第2実施例における図3相当図である。
【図9】本発明の第3実施例における図2相当図である。
【図10】本発明の第4実施例における図2相当図である。
【図11】従来の氷蓄熱槽の断面図である。
【図12】従来における融解初期の状態を示す説明図である。
【図13】従来における融解水の流れの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
(15) 氷蓄熱槽
(17a),(17b),(17c) 伝熱管
(27) 仕切板(水平仕切板)
(29) 開口
(31) 連通孔
(33) 仕切板(鉛直仕切板)
(C),(D),(E) 氷蓄熱槽の内部空間
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、氷蓄熱槽内の氷を伝熱管により融解して冷熱を回収する氷蓄熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、この種の氷蓄熱装置は、空調システムその他工業用、農業用の冷却システム等への利用を目的として開発されており、氷蓄熱槽に氷を蓄え、氷の冷熱を利用して空気調和や冷却を行うものである。前記氷蓄熱装置として、例えば図11に示すように、氷蓄熱槽(a) と、該氷蓄熱槽(a) 内に配設された複数本の(図中では9本)の伝熱管(b),(b),…とを備え、伝熱管(b),(b),…で氷蓄熱槽(a) 内の水を冷却して製氷を行う一方、製氷後に氷(c) で伝熱管(b),(b),…内の流体を冷却して冷熱を回収するようにしたものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記氷蓄熱装置の場合、冷熱回収時において、氷蓄熱槽(a) 内の氷(c) は、当初各管(b),(b),…の周囲から均等に融解される。しかし、氷(c) の融解が進むと、伝熱管(b),(b),…で加温された融解水が上昇するため、図12に示すように、伝熱管(b) の上方の氷(c) が側方よりも融け易くなる。そして、伝熱管(b) の上方と側方とで融解の程度に差があるため、伝熱管(b) 側方から冷熱を回収しにくいという問題が生じる。
【0004】特に、図11に示すように、複数本の伝熱管(b),(b),…が上下に同一鉛直面上に配列されている場合、伝熱管(b) 上方への融解の程度が大きいことから、融解開始後の早い段階で上下3本の伝熱管(b),(b),(b) の回りに形成された融解部分(d) (図12)がつながる。そして、いったん上下の融解部分(d) がつながると、図13に示すように、融解水が上下3本の伝熱管(b),(b),(b) (図中では上下2本のみ示す)の回りを次々と上昇していく対流が生じるため、上方への融解速度と側方への融解速度との差が顕著になる。このため、氷蓄熱槽(a) 内には、図11に示すように、上下3本の伝熱管(b),(b),(b) の回りに上下に細長い融解空間(e),(e),(e) が形成されると共に、伝熱管(b) 側方に氷の残留部分(f),(f),…ができる。また、下方の伝熱管(b),(b),…で加温された水が上方の伝熱管(b),(b),…を通過する(サーマルウェーク)ため、上方の伝熱管(b),(b),…ほど融解水との間の伝熱量が減少するという問題も生じる。
【0005】本発明はかかる点に鑑みてなされたものであって、伝熱管側方からの冷熱の回収を容易にすると共にサーマルウェークの影響を軽減することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、鉛直方向に対向配置する伝熱管同士の間を仕切板により仕切って下側の伝熱管周辺で生じた融解水が上側の伝熱管に達しないようにした。具体的に請求項1記載の発明は、氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内にそれぞれ水平方向へ延びるように設けられ、内部を流通する流体と前記氷との熱交換により冷熱を回収する複数本の伝熱管(17a),(17b),(17c) とを備えた氷蓄熱装置を前提としている。そして、鉛直方向に対向配置された伝熱管(17a),(17b),(17c) の間に、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することを阻止する水平仕切板(27)を設けた構成としている。
【0007】請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の氷蓄熱装置において、水平方向に対向配置された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間に、各伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲に達することを阻止する鉛直仕切板(33)を設けた構成としている。
【0008】請求項3記載の発明は、前記請求項1または2記載の氷蓄熱装置において、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が水平方向に並列して成る管列を上下複数段設け、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士を上下に対向させた構成としている。
【0009】請求項4記載の発明は、前記請求項1または2記載の氷蓄熱装置において、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列を上下複数段設け、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士を上下に対向するように配置させた構成としている。
【0010】請求項5記載の発明は、前記請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置において、仕切板(27)の側縁部と氷蓄熱槽(15)の内面との間にスリット状の開口(29)を形成した構成としている。
【0011】請求項6記載の発明は、前記請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置において、仕切板(27)の側縁部に、該仕切板(27)によって仕切られた氷蓄熱槽(15)の内部空間(C),(D),(E) 同士を連通させる連通孔(31),(31),…を形成した構成としている。
【0012】
【作用】上記の構成により、各請求項に係る発明では、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲で氷が融解されて生じる融解水が上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することが水平仕切板(27)によって阻止されるので、上下の伝熱管(17a),(17b),(17c) の回りに形成された融解部分の領域がつながることが回避され、従来のように、融解水が上下の伝熱管(17c),(17b),(17a) の回りを次々と上昇していく対流の発生が回避でき、下側の伝熱管(17c),(17b) で加温された水が上側の伝熱管(17b),(17a) を通過する所謂サーマルウェークによる冷熱回収量の減少が回避できる。特に、請求項3に係る発明では、各管列の対応する伝熱管同士が上下に対向するように配置されており、この伝熱管同士の間隔寸法が狭くなって融解部分同士が繋り易いといった課題を有していたが、これを確実に回避できる。また、請求項4に係る発明においては、横方向の配管間隔が大きくなり、伝熱管側方の氷が残留する課題を有していたが、仕切板(27)の存在により氷の融解方向を横方向に向わせることができるので、効率良く氷の融解が行える。
【0013】請求項2記載の発明では、左右方向の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士の融解部分がつながることも回避でき、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための流体の循環量の制御を容易に行うことができる。
【0014】請求項5及び6記載の発明では、製氷運転時において各空間(C),(D),(E) 内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分が上側の空間に吸収されることになるので、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避できる。
【0015】
【実施例】
(第1実施例)以下、本発明の第1実施例を図面に基づき説明する。図1は本例に係る氷蓄熱装置(A) を備えた冷房専用の蓄熱式空気調和装置(B) を示す。前記蓄熱式空気調和装置(B) は、前記氷蓄熱装置(A) 以外に、圧縮機(1) と、凝縮器として機能する室外熱交換器(3) と、冷媒の減圧または流量調節を行う開度調節可能な第1電子膨脹弁(5) および第2電子膨脹弁(7) と、蒸発器として機能する室内熱交換器(9) とを備えている。これらの機器(1) 〜(9) は冷媒配管(11)で順次接続されており、これにより、冷媒が流通する主冷媒回路(13)が構成されている。
【0016】前記氷蓄熱装置(A) は冷熱を蓄熱する氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内に水平に配設された伝熱管(17)とを備えている。該伝熱管(17)の一端は第1分岐路(19a) を介して主冷媒回路(13)の液管(21)における第1電子膨脹弁(5) の上流側に、他端は第2分岐路(19b) を介して前記第1電子膨脹弁(5) の下流側にそれぞれ接続され、伝熱管(17)と液管(21)との間で冷媒が流通可能となっている。前記第1分岐路(19a) には流路を開閉する第1開閉弁(23a) が介設されている。また、第1分岐路(19a) における第1開閉弁(23a) と伝熱管(17)との間からは第3分岐路(19c) が分岐し、該第3分岐路(19c) は主冷媒回路(13)のガス管(25)に接続され、伝熱管(17)とガス管(25)との間で冷媒が流通可能となっている。前記第3分岐路(19c) には流路を開閉する第2開閉弁(23b) が介設されている。
【0017】前記氷蓄熱槽(15)内に配設されている伝熱管(17)は図1では1本としているが、実際は、図2に示すように、いわゆる格子状に9本配設されている。この9本の伝熱管(17a),(17b),(17c),…は、図3に示すように、同一水平面上に位置するもの同士はU字状に折曲げられたU字管部を介して互いに連続した1本の管で形成されている。つまり、氷蓄熱槽(15)の内部には上下3本の配管が配設されていることになる。
【0018】そして、本例の特徴としては、上下に配設された各伝熱管(17a),(17b),(17c)の間に仕切板(27),(27) が配設されていることにある。この仕切板(27)は、図2及び図3に示すように、氷蓄熱槽(15)の内部空間を上下3空間(C),(D),(E) に仕切るものであって、左右に並設された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士は同じ空間(C),(D),(E) 内に位置している一方、上下に位置された伝熱管(17a),(17b),(17c) 同士は仕切板(27),(27) によって仕切られた異なる空間(C),(D),(E) に位置している。即ち、1空間に1本の配管のみが配設された構成となっている。
【0019】次に、上述の如く構成された氷蓄熱装置(A) の運転動作を図1に基づいて説明する。冷熱回収を行わない通常冷房運転の場合、第1開閉弁(23a) および第2開閉弁(23b) を閉じ、第1電子膨脹弁(5) で流量調節した状態で運転を行い、圧縮機(1) で圧縮した冷媒を室外熱交換器(3) で凝縮し、第2電子膨脹弁(7) で減圧し、室内熱交換器(9) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す。
【0020】前記氷蓄熱槽(15)において製氷を行う氷蓄熱運転の場合、第1開閉弁(23a) を閉じ、第2開閉弁(23b) を開き、且つ第2電子膨脹弁(7) を全閉にした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(3) を経た冷媒を第1電子膨脹弁(5)で減圧し、第2分岐路(19b) を介して伝熱管(17)に流通させ、伝熱管(17)で蒸発させて氷蓄熱槽(15)の水を冷却して製氷を行い、第3分岐路(19c) およびガス管(25)を経て圧縮機(1) に戻す(実線の矢視で示す流れ)。
【0021】冷熱を回収して冷房運転を行う蓄熱冷房運転の場合、第1開閉弁(23a) を開け、第2開閉弁(23b) を閉じ、且つ第1電子膨脹弁(5) で流量調節をした状態で運転を行い、圧縮機(1) および室外熱交換器(3) を経た冷媒の一部または全部を第1分岐路(19a) を介して伝熱管(17)に流通させ、伝熱管(17)で過冷却し、第2分岐路(19b) を介して液管(21)に戻し、第2電子膨脹弁(7) で減圧し、室内熱交換器(9) で蒸発させて圧縮機(1) に戻す(破線の矢視で示す流れ)。
【0022】次に、前記蓄熱冷房運転時の氷の融解状態について最下部(3段目)の伝熱管(17c) を例に挙げて説明する。運転開始後、伝熱管(17c) の周囲の氷が融解されていくと、図4に示すように、加温された融解水が上昇するため、この融解部分において対流が発生し、伝熱管(17c) の上方の氷が側方よりも融解が促進する。そして、この氷の融解による融解水の領域(F) が仕切板(27)に達すると、図4に矢印で示すように、融解水の対流は、この仕切板(27)の下面で反転され、この仕切板(27)と伝熱管(17c) の周囲との間で行われる。つまり、伝熱管(17c) の周囲で氷が融解されて生じる融解水が上側の伝熱管(17b) の配設部周辺に流れるようなことがなくなる。このような状態が2段目の伝熱管(17b) においても同様に生じており、この伝熱管(17b) の周囲で氷が融解されて生じる融解水も最上部(1段目)の伝熱管(17a) の配設部周辺に流れるようなことはない。
【0023】このため、上下3本の伝熱管(17a),(17b),(17c) の回りに形成された融解部分の領域(F) がつながることが回避され、従来のように、この各融解部分の領域(F),(F) 同士がつながって、融解水が上下3本の伝熱管(17c),(17b),(17a) の回りを次々と上昇していく対流が生じることがない。従って、下方の伝熱管(17c),(17b) で加温された水が上方の伝熱管(17b),(17a) を通過する所謂サーマルウェークによって、上方の伝熱管ほど融解水との間の伝熱量が減少するといった状況が生じなくなり、また、氷の融解方向を仕切板(27)に沿って側方に向わせることができるので、各伝熱管(17a),(17b),(17c) において均等且つ効率良く冷熱の取出しが行え、氷蓄熱槽(15)から回収できる冷熱量を増加させることができる。
【0024】(変形例)次に、上述した第1実施例の変形例について説明する。本例は仕切板(27)の変形例であって、その他の構成は、上述した第1実施例と同様であるので、ここでは仕切板(27)についてのみ説明する。
【0025】先ず、第1の変形例について説明する。図5R>5に示すように、本例の仕切板(27)は、その左右両側部が氷蓄熱槽(15)の内面に所定寸法の間隔を有するように、その幅寸法が氷蓄熱槽の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている。これにより、仕切板(27)と氷蓄熱槽(15)の内面との間にはスリット状の開口(29)が形成されており、仕切板(27)によって仕切られていた空間(C),(D),(E) 同士は、この開口(29)によって、互いに連通されている。
【0026】このような構成により、製氷運転時において各空間(C),(D),(E) 内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分が上側の空間に吸収されることになるので、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避できる。
【0027】次に、第2の変形例について説明する。この変形例は、上述したような仕切板(27)と氷蓄熱槽(15)の内面との間に形成したスリット状の開口(29)に代えて、仕切板(27)の左右両側部に沿って間欠的に連通孔(31),(31),…を形成した構成としている。
【0028】このような構成により、本例にあっても、水が氷化する際の体積膨張分を、連通孔(31),(31),…を通過させて上側の空間に吸収させることができ、仕切板(27)や氷蓄熱槽(15)の変形や破損が回避できる。
【0029】(第2実施例)次に、本発明の第2実施例について説明する。図7及び図8に示すように、本例は、水平方向に対向して配設された各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間にも仕切板(33)を配設した構成としている。これにより、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) は、夫々独立した空間に位置されることになる。
【0030】このような構成によれば、上下方向の伝熱管(17a),(17b),(17c) 同士の融解部分の領域がつながることを回避できるばかりでなく、左右方向の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) 同士の融解部分がつながることも回避できる。即ち、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための冷媒の循環量を容易に制御することができる。つまり、複数の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち1つの伝熱管を監視しておくことにより、その他の伝熱管の周囲におけるにおける氷の残量等が推定できるので、冷熱取出運転時の制御が容易になる。
【0031】(第3実施例)次に、本発明の第3実施例について説明する。本例は、図9に示すように、伝熱管配列を格子状配列に代えて千鳥状配列にしたものである。
【0032】すなわち、複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されている。このような千鳥状配列にすることにより、伝熱管を氷蓄熱槽(15)内に均等に分散させることができ、氷蓄熱槽(15)内の配管本数を格子状配列の場合よりも減らすことができる利点がある。
【0033】そして、この場合の仕切板(27)の配置状態としては、この仕切板(27)を波板状に形成しておき、氷蓄熱槽(15)の内部を上下3空間(C),(D),(E) に仕切って、互いに同一平面上に位置する伝熱管と、この各伝熱管の中間位置の僅か下側位置に配設された伝熱管とを同一の空間内に位置するようにしている。
【0034】(第4実施例)次に、本発明の第4実施例について説明する。図10に示すように、本例も伝熱管配列を千鳥状配列にしたものである。そして、各伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の夫々が独立した空間に位置されるように、図10において右方向に向うにしたがって下方に傾斜された仕切板(27a) と左方向に向うにしたがって下方に傾斜された仕切板(27b) とが組合わされて氷蓄熱槽(15)内に配設されている。つまり、この各仕切板(27a),(27b) によって、上述した第2実施例のように水平方向の仕切板(27)と鉛直方向の仕切板(33)とを備えたものと同様の効果が得られるようになっている。
【0035】なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形例を包含するものであり、例えば本発明の氷蓄熱装置(A) は空気調和装置(B) 以外の用途に使用するものであってもよい。
【0036】
【発明の効果】以上のように、各請求項に係る発明の氷蓄熱装置によれば以下に述べるような効果が発揮される。請求項1記載の発明では、鉛直方向に対向配置された伝熱管の間に水平仕切板を設け、下側の伝熱管周囲において氷が融解して生じた融解水が上側の伝熱管周囲に達することを阻止するようにしたために、従来のように、融解水が上下の伝熱管の回りを次々と上昇していく対流の発生が回避でき、下側の伝熱管で加温された水が上側の伝熱管を通過する所謂サーマルウェークによる冷熱回収量の減少が回避できる。また、特に、請求項3に係る発明では、各管列の対応する伝熱管同士が上下に対向するように配置されており、この伝熱管同士の間隔寸法が狭くなって融解部分同士が繋り易いといった課題を有していたが、これを確実に回避できる。また、請求項4に係る発明では、横方向の配管間隔が大きくなり、伝熱管側方の氷が残留する課題を有していたが、仕切板の存在により氷の融解方向を横方向に向わせることができるので、効率良く氷の融解が行える。つまり、本発明によれば、各伝熱管において均等且つ効率良く冷熱の取出しが行え、氷蓄熱槽から回収できる冷熱量を増加させることができる。
【0037】請求項2記載の発明によれば、水平方向に対向配置された伝熱管の間に鉛直仕切板を設け、各伝熱管周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管周囲に達することを阻止するようにしたために、左右方向の伝熱管同士の融解部分がつながることも回避でき、各伝熱管が受け持つ氷の冷熱量が同一となることから、夫々の回収する冷熱を略一致させることができるので、冷熱を回収するための流体の循環量の制御を容易に行うことができる。つまり、複数の伝熱管のうち1つの伝熱管を監視しておくことにより、その他の伝熱管の周囲におけるにおける氷の残量等が推定でき、冷熱取出運転時の制御が容易になる。
【0038】請求項5及び6記載の発明によれば、製氷運転時において、仕切板で仕切られた各空間内の水が氷化する際に体積膨張しても、その膨張分を上側の空間で吸収できるようにしたために、仕切板や氷蓄熱槽に氷から作用する応力が低減されて、その変形や破損が回避でき、氷蓄熱装置の信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の蓄熱式空気調和装置の冷媒配管系統図である。
【図2】氷蓄熱槽の断面図である。
【図3】氷蓄熱槽の内部構造の一部を示す斜視図である。
【図4】伝熱管周辺での氷の融解状態を示す断面図である。
【図5】第1の変形例における氷蓄熱槽の内部構造を示す平面図である。
【図6】第2の変形例における図5相当図である。
【図7】本発明の第2実施例における図2相当図である。
【図8】本発明の第2実施例における図3相当図である。
【図9】本発明の第3実施例における図2相当図である。
【図10】本発明の第4実施例における図2相当図である。
【図11】従来の氷蓄熱槽の断面図である。
【図12】従来における融解初期の状態を示す説明図である。
【図13】従来における融解水の流れの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
(15) 氷蓄熱槽
(17a),(17b),(17c) 伝熱管
(27) 仕切板(水平仕切板)
(29) 開口
(31) 連通孔
(33) 仕切板(鉛直仕切板)
(C),(D),(E) 氷蓄熱槽の内部空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】 氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内にそれぞれ水平方向へ延びるように設けられ、内部を流通する流体と前記氷との熱交換により冷熱を回収する複数本の伝熱管(17a),(17b),(17c) とを備えた氷蓄熱装置において、鉛直方向に対向配置された伝熱管(17a),(17b),(17c) の間には、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することを阻止する水平仕切板(27)が設けられていることを特徴とする氷蓄熱装置。
【請求項2】 水平方向に対向配置された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間には、各伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲に達することを阻止する鉛直仕切板(33)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱装置。
【請求項3】 複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c)が水平方向に並列して成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の氷蓄熱装置。
【請求項4】 複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c)の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の氷蓄熱装置。
【請求項5】 仕切板(27)の側縁部と氷蓄熱槽(15)の内面との間にはスリット状の開口(29)が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置。
【請求項6】 仕切板(27)の側縁部には、該仕切板(27)によって仕切られた氷蓄熱槽(15)の内部空間(C),(D),(E) 同士を連通させる連通孔(31),(31),…が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置。
【請求項1】 氷を貯溜する氷蓄熱槽(15)と、該氷蓄熱槽(15)内にそれぞれ水平方向へ延びるように設けられ、内部を流通する流体と前記氷との熱交換により冷熱を回収する複数本の伝熱管(17a),(17b),(17c) とを備えた氷蓄熱装置において、鉛直方向に対向配置された伝熱管(17a),(17b),(17c) の間には、下側の伝熱管(17c),(17b) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、上側の伝熱管(17b),(17a) 周囲に達することを阻止する水平仕切板(27)が設けられていることを特徴とする氷蓄熱装置。
【請求項2】 水平方向に対向配置された伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) の間には、各伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲において氷が融解して生じた融解水が、水平方向に対向する伝熱管(17a),(17b),(17c) 周囲に達することを阻止する鉛直仕切板(33)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の氷蓄熱装置。
【請求項3】 複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c)が水平方向に並列して成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の氷蓄熱装置。
【請求項4】 複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c)の上下方向の位置を交互にずらして配置されて成る管列が、上下複数段設けられ、前記複数本の伝熱管(17a),(17a) 、(17b),(17b) 、(17c),(17c) のうち上下の管列の対応するもの同士が上下に対向するように配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の氷蓄熱装置。
【請求項5】 仕切板(27)の側縁部と氷蓄熱槽(15)の内面との間にはスリット状の開口(29)が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置。
【請求項6】 仕切板(27)の側縁部には、該仕切板(27)によって仕切られた氷蓄熱槽(15)の内部空間(C),(D),(E) 同士を連通させる連通孔(31),(31),…が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の氷蓄熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平7−301438
【公開日】平成7年(1995)11月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−94096
【出願日】平成6年(1994)5月6日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【公開日】平成7年(1995)11月14日
【国際特許分類】
【出願日】平成6年(1994)5月6日
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
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