氷雪除去ネット
【課題】輸送機器の窓や屋根、建造物の窓や屋根に付着する氷雪を容易かつ確実に除去でき、簡便な構造である氷雪除去ネットを提供する。
【解決手段】本発明の氷雪除去ネット1は、線材3により平面格子状に形成された本体部2を備え、線材3は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。このような線材による平面格子状を有することで、本発明の氷雪除去ネット1は、窓や屋根に付着・成長する氷雪を、容易かつ確実に除去することができる。
【解決手段】本発明の氷雪除去ネット1は、線材3により平面格子状に形成された本体部2を備え、線材3は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。このような線材による平面格子状を有することで、本発明の氷雪除去ネット1は、窓や屋根に付着・成長する氷雪を、容易かつ確実に除去することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を始めとする輸送機器の窓や天井面、あるいは建造物の窓や天井面に付着する雪および氷を除去する氷雪除去ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地を始めとして、冬季に低温や積雪が見込まれる地域においては、駐車中の自動車の窓に氷が張り付いたり、雪が積もったりする。特に、自動車のガラス表面の水分が凍りつき、この氷に積もった雪が結合した氷雪が、自動車の窓に張り付いてしまうことがある。すなわち、自動車の窓に付着するのは、雪だけあるいは氷だけのこともあるが、このようにガラス表面に成長する氷と雪とが結合した氷雪であることが多い。
【0003】
自動車には、フロントガラス、ドアガラス、リアガラスなど複数の窓が存在するが、これらの中でフロントガラスは、傾斜があって雪や氷が付着しやすく、運転への支障も高い部位である。もちろん、自動車の天井面に氷雪が付着したり積もったりすることも多い。自動車だけでなく、電車、トラックなどの輸送機器全般の窓や天井面に氷雪が付着したり積もったりすることがある。
【0004】
このため、自動車の運転を開始する前に、フロントガラスに付着した氷雪を除去する手間の掛かる作業が必要となる。例えば、お湯や水を掛けたり、室内からの暖房をフロントガラスに吹き付けたり、雪かき道具を用いて手作業で剥ぎ取ったりするなどが必要となる。寒冷地においては、このような手作業は非常な負担であり、例えば高齢者にとっては危険をも伴う作業である。
【0005】
このような状況で、自動車のフロントガラスや天井面などに、付着した氷雪を剥離したり除去したりする部材を予め取り付けておく技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1は、ウインドウガラス形状のシートカバーであって、このシートカバーの各コーナーに吸着盤を設けたフロントウインドウガラスカバーを開示する。
【0007】
特許文献2は、特許文献1のガラスカバーのようにフロントガラス前面を封じるように覆う技術とは異なり、メッシュ状の氷雪除去ネットを開示する。
【0008】
あるいは、住宅やビルなどの建造物の窓や屋根に氷雪が付着したり積もったりすることも多い。建造物の屋根に積もった雪を除去するには、作業者が屋根に上って除雪作業を行う必要がある。当然ながら、屋根の上での除雪作業は危険を伴い、近年では高齢者が除雪作業中に事故に巻き込まれることも発生している。
【0009】
このような建造物の屋根の除雪を容易化する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
特許文献3は、屋根の頂部と下部とに平行に設けられた回転ローラと、この回転ローラに掛けられて屋根を覆うカバー部材と、回転ローラの回転でカバー部材を移動させて除雪する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−282156号公報
【特許文献2】特許第4224121号公報
【特許文献3】特開平5−280169号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のシートカバーは、自動車のフロントガラスの前面を封じるように覆ってしまう。このため、シートカバーとフロントガラスとの間に生じる水滴や水分が凍ることで、シートカバーがフロントガラスに凍り付いてしまう。このため、シートカバーをはがすこと自体が困難となり、フロントガラスの氷雪を除去することが困難である。
【0013】
フロントガラスを始めとした窓や屋根に付着する氷雪は、雪だけが積もるのではなく、フロントガラス表面の水分が凍りつき、これと雪とが結合して氷雪となることで成長する。このため、フロントガラス表面で凍りついた氷とこれに結合した(あるいは積もった)雪とを一緒に除去することが求められる。
【0014】
特許文献2は、フロントガラス表面で凍りついた氷とこれに結合した雪とを一緒に除去する。特許文献2は、メッシュ状のネットであって、メッシュ状のネットの格子間隔と線材の径とで特定することで、氷と雪とを一緒に除去することができるようになる。
【0015】
しかしながら、特許文献2の技術は、フロントガラス表面に成長する氷(あるいは氷に付着する雪)を、そのメッシュと線材に十分にひきつけることができない場合がある。特に、低温状態や積雪の多い場合には、成長する氷が厚くなることもあり、特許区分権2の技術は、十分な除去機能を発揮できない可能性があった。
【0016】
特許文献3の技術は、回転ローラや回転ローラを駆動する装置など、装置が大掛かりになり、手間が発生するという問題を有している。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、輸送機器の窓や屋根、建造物の窓や屋根に付着する氷雪を容易かつ確実に除去でき、簡便な構造である氷雪除去ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明の氷雪除去ネットは、線材により平面格子状に形成された本体部を備え、線材は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の氷雪除去ネットは、窓や屋根に付着した氷雪を、例えば窓ガラス表面に成長した氷と共にまとめて除去することができる。特に、雪と氷とを分離せずに、結合している雪と氷とをまとめて除去できるので、作業者は、ほぼ一度の作業で氷雪を除去できる。
【0020】
特に、自動車のフロントガラス表面に付着したり積もったりする氷雪を、簡単に除去できるので、冬季においても、使用者はすぐに自動車を使用できるようになる。
【0021】
また、本発明の氷雪除去ネットは、自動車の窓や屋根だけではなく、建造物の窓や屋根の氷雪を除去することにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における氷雪除去ネットの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における線材の断面図である
【図3】本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2における吸着盤10の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における実験結果のグラフである。
【図10】本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された自動車の正面図である。
【図11】本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された建造物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る氷雪除去ネットは、線材により平面格子状に形成された本体部を備え、線材は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【0024】
この構成により、氷雪除去ネットは、その線材の周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。結果として、本体部は、敷設対象において成長する氷雪と接続するようになり、本体部の取り外しに合わせて氷雪が確実に除去される。
【0025】
本発明の第2の発明に係る氷雪除去ネットは、第1の発明に合わせて、本体部は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設され、本体部が、該表面上をスライドされることで、線材および該線材の格子によって形成される開口部の周囲に付着する氷雪を除去する。
【0026】
この構成により、氷雪除去ネットは、敷設対象に付着・成長する氷雪を、本体部の取り外しによって確実に除去できる。
【0027】
本発明の第3の発明に係る氷雪除去ネットは、第1または第2の発明に加えて、線材は、主線と副線とのより合わせで生じる凹部に、敷設されている窓および屋根の少なくとも一方に生じる水分を吸収して、凹部に氷雪を付着させる。
【0028】
この構成により、氷雪除去ネットは、線材の周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。
【0029】
本発明の第4の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、主線および副線は、ラッセル織りにより撚り合わされる。
【0030】
この構成により、線材の断面に容易に凹部を生じさせることができる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、線材の断面は、第1直径の第1略円形と、第1略円形の外周に位置する第2直径を有する複数の第2略円形と、が組み合わされた形状を有する。
【0032】
この構成により、線材は、敷設対象からの水分を吸収しやすくなり、線材は、その周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。
【0033】
本発明の第6の発明に係る氷雪除去ネットは、第2から第5のいずれかの発明に加えて、主線の直径は0.5mm以上6mm以下であり、開口部の幅は、1mm以上50mm以下である。
【0034】
この構成により、本体部は、氷雪の付着・成長を促すことができ、本体部の取り外しにあわせて、確実に氷雪を除去することができる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は、略方形、略長方形および略多角形の少なくとも一つを有し、敷設される窓および屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有する。
【0036】
この構成により、氷雪除去ネットは、様々な敷設対象に容易に使用できるようになる。
【0037】
本発明の第8の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、本体部は、複数の角部の少なくとも一部に吸着盤を備える。
【0038】
この構成により、本体部の敷設対象への固定が高まる。
【0039】
本発明の第9の発明に係る氷雪除去ネットは、第8の発明に加えて、吸着盤は、該吸着盤の押し当ておよび引き抜きを行うフックを有する。
【0040】
この構成により、吸着盤による固定と取り外しが容易に行える。
【0041】
本発明の第10の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、本体部は、一方の端部の第1バンドおよび他方の端部の第2バンドを備える。
【0042】
この構成により、本体部は、自動車のドアなどに挟まれた第1バンドや第2バンドによって、固定されると共に盗難が防止される。
【0043】
本発明の第11の発明に係る氷雪除去ネットは、第10の発明に加えて、第1バンドは、第2バンドよりも短い。
【0044】
この構成により、本体部が敷設対象となる自動車のフロントガラスよりも小さい場合でも、自動車のドアに第1バンド及び第2バンドが確実に固定できるようになる。
【0045】
本発明の第12の発明に係る氷雪除去ネットは、第10又は第11の発明に加えて、第1バンドおよび第2バンドの少なくとも一方は、留め具を有する。
【0046】
この構成により、第1バンドおよび第2バンドが、ドアの隙間から取り出されることが防止される。結果として氷雪除去ネットの盗難が防止される。
【0047】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
【0049】
まず、実施の形態1における氷雪除去ネットの概要について説明する。
【0050】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における氷雪除去ネットの正面図である。図2は、本発明の実施の形態1における線材の断面図である。図1は、実施の形態1における氷雪除去ネットの一例の形状を模式的に表している。
【0051】
氷雪除去ネット1は、線材3により平面格子状に形成された本体部2を備えている。この本体部2が氷雪除去ネット1の外形を形成する。また、本体部2が、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根などに敷設される。この敷設によって、氷雪除去ネット1は、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根に付着する雪、氷、霜、あるいはこれらの結合である氷雪を、除去できる。
【0052】
なお、本明細書で記載される氷雪は、氷だけ、雪だけ、氷と雪とが結合した状態、積もった雪の一部が凍結して氷と雪の結合した状態、霜や氷の表面に雪が結合した状態など、氷、雪、霜などを様々に含む。
【0053】
本体部2は、線材3により平面格子状に形成されるが、この線材3は、第1直径を有する主線31と、主線31の周囲に撚り合わされる第2直径を有する複数の副線32と、を有する。図2は、この主線31の周囲に複数の副線32が撚り合わされている状態を示している。ここで、第1直径は、第2直径よりも大きい。すなわち、主線31の直径は、副線32の直径よりも大きい状態である。なお、図2は、線材3の断面形状を示しているので、中央の主線31の周囲に、整然と複数の副線32が並んでいるように見えるが、実際には主線31に副線32がより合わされているので、主線31と副線32の断面形状は、円形よりも潰れた楕円形となることもありうる。同様に、複数の副線32は、主線31の周囲に直線状に沿っているとは限らず、斜めに周回するように沿っていることもありうる。
【0054】
この線材3が縦横に織り合わされることで、図1に示されるような平面格子状の本体部2が形成される。このため、本体部2は、線材3の部分と線材3同士の隙間である開口部4と、を有することになる。
【0055】
この本体部2は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設される(あるいは装着される)。本体部2においては、線材3および開口部4に氷や雪が付着するようになり、本体部2が敷設されている窓や屋根の表面上を面方向にスライドされることで、氷雪除去ネット1は、この付着している氷雪を除去できる。
【0056】
(作用メカニズム)
次に、氷雪除去ネット1の氷雪除去のメカニズムについて説明する。氷雪除去ネット1は、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根など、雪や氷などが付着する様々な場所に適用可能であるが、説明を容易化するために自動車のフロントガラスに適用される場合を例に説明する。
【0057】
線材3においては、この主線31と副線32のより合わせにより、凹部33が形成される。この凹部33は、主線31の外周上であって、副線32同士の空隙であると共に副線32の外周に形成される。すなわち、凹部33の直径は、主線31の第1直径よりも小さい。また、副線32の撚り合わせ方によっては、第2直径よりも小さい。加えて、凹部33の周囲の一部は、主線31と副線32とに囲まれるので、小さな直径に比較して大きな表面積を有することになる。
【0058】
凹部33は、直径が小さく表面積が大きいことで、敷設されているフロントガラスに生じる水分を浸透圧によって吸収するようになる。フロンとガラスに生じる水分は、自動車に降る雨水によっても生じるが、霜や雪が窓やフロントガラスの表面で融解することによって生じることが多い。
【0059】
このフロントガラス表面で生じる水分は気温低下に伴って凍結し、この凍結した氷の表面に雪が結合して、フロントガラス表面に氷雪が付着・成長することになる。すなわち、フロントガラスの氷雪を除去するには、まずフロントガラス表面に最初に付着・成長する凍結水分を除去することが重要である。
【0060】
従来技術の氷雪除去装置は、このようなフロントガラス表面に最初に付着・成長する凍結水分を除去することを考慮しておらず、氷雪除去装置が吸収し切れない水分が、フロントガラス表面に直接凍結してしまい、ネットやシートによってフロントガラス表面に凍結した氷を除去できなかった。このため、フロントガラス表面に凍結した氷に結合した雪を除去することも難しかった。
【0061】
実施の形態1の氷雪除去ネット1は、線材3の周囲に形成される凹部33が、浸透圧によってフロントガラス表面で生じる水分を吸収する。この結果、フロントガラス表面で生じる水分は、線材3に付着するように凍結する。もちろん開口部4においても氷が付着・成長するが、開口部4において付着・成長する氷は、線材3にも繋がっている。
【0062】
ここで、凹部33において付着・成長する氷は、開口部4において付着・成長する氷よりも厚みが大きくなる。これは、凹部33が開口部4よりも径の小さい空隙であるからである。この結果、開口部4に付着・成長する氷は、凹部33に付着・成長する氷を根として、線材3に繋がることになる。すなわち、本体部2に対応する領域で付着・成長する氷は、全て線材3に接続した状態となる。
【0063】
更に、フロントガラスに降る雪は、この線材3に接続している氷の上に積もって結合する。結果的に、氷と雪とが結合した氷雪は、全て本体部2の線材3に接続した状態となる。言い換えると、フロントガラス上の氷雪のほとんどは、線材3に結合している状態である。
【0064】
使用者は、氷雪除去ネット1を敷設されているフロントガラスから、本体部2を面方向にスライドさせると、この本体部2(線材3)に結合している氷雪のほとんどが本体部2にくっついた様に除去される。これは、氷雪が、フロントガラスの表面に付着・成長するのではなく、線材3を基準として本体部2に付着・成長しているからである。これは、線材3の外周に形成される凹部33に給水されて凍りついた水分が、核となって線材3の周囲に(すなわち開口部4の周囲に)氷雪が付着・成長するからである。
【0065】
もちろん、僅かな氷雪が、本体部2を取り外した後にフロントガラス表面に残ることもありうる。しかし、僅かな量であり、氷雪除去ネット1を取り外した後の除雪作業はすぐに済む程度である。これも、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、フロントガラスに生じる氷や積もる雪による氷雪を、フロントガラス表面に直接的に成長させるのではなく、線材3を基準として、線材3および開口部4の周辺に成長させるからである。
【0066】
なお、フロントガラスに付着・成長する可能性のある氷雪は、線材3や開口部4の周辺に付着・成長するだけでなく、フロントガラス表面にも付着しうる。しかしながら、フロントガラス表面に付着・成長する氷雪は、線材3に付着・成長する氷雪の剥離に伴って、フロントガラスから剥離する。すなわち、本体部2が取り外される動作に合わせてフロントガラス表面に付着・成長している氷雪も、本体部2(線材3)にくっついて剥離する。
【0067】
すなわち、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、(1)主線31と副線32との縒りあわせによる凹部33がフロントガラスに生じる水分を吸収して核となる氷を成長させ、(2)凹部33に生じた核となる氷によって、線材3の周辺に氷が成長し、(3)線材3の周辺の氷に雪が付着して、線材3および開口部4の周辺に、線材3に接続する氷雪が付着・成長する、というメカニズムで、本体部2に氷雪を付着・成長させる。更に、氷雪除去ネット1は、本体部2をフロントガラスから取り外す際に、(A)線材3および開口部4に付着・成長している氷雪をそのまま除去し、(B)作用(A)と合わせて、フロントガラス表面に付着している氷雪をも一緒に剥離する、という一連の作用によって、フロントガラスに付着する氷雪を一気に除去できる。
【0068】
以上のように、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、フロントガラスに付着・成長する氷雪を、本体部2の取り外しだけで容易かつ確実に除去できる。
【0069】
次に各部の詳細について説明する。
【0070】
(本体部)
本体部2は、線材3によって平面格子状に形成された氷雪除去ネット1の全体的な外形を作り出す。図1に示されるように、本体部2は、平面格子状を有しており、線材3の部分と線材3で囲まれる開口部4とを備えている。この開口部4が格子状を顕している。
【0071】
本体部2は、自動車のフロントガラスや屋根を始めとして、自動車などの輸送機器の窓や屋根、建造物の窓や屋根に敷設される。敷設される輸送機器や建造物の窓や屋根に付着・成長する可能性のある氷雪を、本体部2そのものに付着・成長させる。
【0072】
本体部2は、敷設対象となる対象物の形状、大きさに対応する形状と大きさを有していればよい。すなわち、本体部2は、略方形、略長方形、略多角形の少なくとも一つの形状を有しており、敷設される窓や屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有していればよい。
【0073】
例えば、敷設対象が自動車のフロントガラスの場合には、本体部2は、略長方形を有している。あるいは、敷設対象が自動車の屋根である場合には、本体部2は、略方形もしくは略長方形を有している。あるいは、敷設対象が自動車のサイドウインドウやリアウインドウである場合には、本体部2は、略台形を有している。あるいは、敷設対象が建造物の屋根である場合には、本体部2は、略方形、略長方形、略多角形を有している。また、それぞれ対応する大きさを有しておけばよい。
【0074】
ここで、敷設対象が自動車のフロントガラスやリアガラスである場合には、その大きさは車種によって様々である。このような様々な車種の全てに合わせた本体部2を有する氷雪除去ネット1を用意することは難しい。このため、大・中・小などの大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が、予め容易されておくことも適当である。敷設対象の大きさと完全に一致しない場合でも、大体の範囲を覆うことができれば、実際の使用では十分であると考えられる。
【0075】
また、敷設対象が自動車の屋根である場合にも、その大きさは車種によって様々である。この場合でも、大・中・小などの大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が予め用意されていればよい。屋根の大体の範囲を覆うことができれば(あるいは、屋根の大きさよりも大きいとして)、実際の使用では十分である。
【0076】
あるいは、建造物の窓に敷設される場合には、窓の規格に合わせた大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が用意されればよい。住宅等においては、窓の大きさはハウスメーカーなどによってそのサイズや形状が規格化されていることが多く、これに合わせた氷雪除去ネット1が用意されれば良い。また、建造物の屋根に敷設される場合には、建造物の規格に合わせた数種類の氷雪除去ネット1が用意されても良いし、個々の建造物に合わせたカスタム品である氷雪除去ネット1が提供されても良い。
【0077】
また、本体部2は、窓や屋根に取り付け可能なように吸着盤10を備えていることも好適である。吸着盤10によって、フロントガラスなどの敷設対象に本体部2が固定されるようになる。また、本体部2は、線材3によって形成されるので、柔軟性を有しており、折り畳みが可能である。例えば、運搬時や不使用時においては、折り畳むことで便宜が高い。車に積み込んで運搬できるからである。
【0078】
以上のように、本体部2は、氷雪除去ネット1の外形を形成する要素であり、氷雪が付着・成長する対象物に敷設される。
【0079】
(線材)
線材3は、第1直径を有する主線31と第2直径を有する複数の副線32とが撚り合わされている。その断面は図2に示されるようなものである。
【0080】
線材が単一の繊維で構成されている場合には、フロントガラスなどに付着・成長する氷が線材に十分に接続できない。線材が単線であるので、その表面積が小さいことおよび吸水効果が弱いことに起因する。氷雪除去ネットは、敷設対象のフロントガラスや屋根において発生する氷を本体部の取り外しと共に剥ぎ取ることを必要とするが、フロントガラスや屋根に付着・成長する氷が、線材に十分に接続できないと、本体部の取り外しと共に氷が取り除かれないことになってしまう。
【0081】
実施の形態1の線材3は、主線31と副線32との撚り合わせであるので、図2に示されるような凹部33が形成される。これによって線材3の表面積が大きくなり、凹部33による吸水効果も生じて、フロントガラスや屋根に付着・成長する氷は、線材3に接続するようになる。この結果、本体部2が取り外される際に線材3に接続している氷(もちろん氷に積もっている雪も)を一緒に取り除くことができるようになる。
【0082】
このような撚り合わせによる線材3は、一例としてラッセル織りによってより合わされる。ラッセル織りによって、主線31と複数の副線32とが寄り合わされる。このとき、主線31は、第1直径を有しており、複数の副線32は第2直径を有しているが、第1直径は第2直径よりも大きい。このような構成により、線材3の断面は、第1直径の第1略円形と、この外周に位置する第2直径を有する複数の第2略円形とが、組み合わされたような形状となる。第2略円形は、放射状あるいは星状に位置する。もちろん、この位置に限定されるものではない。
【0083】
線材3は、ラッセル織りなどの方法でより合わされるので、主線31および副線32は潰れたような形状になることもある。略円形とは、この潰れたような形状(楕円形であったり、不確定の形状であったりする)を含む意味である。
【0084】
このような線材3が、更に縦横に織られることで、平面格子状の本体部2が形成される。実施の形態1における氷雪除去ネット1は、このような主線31と副線32の撚り合わせによる線材3を用いることで、従来技術に比較して、より確実かつ容易に氷雪を除去できる。
【0085】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
【0086】
実施の形態2では、実施の形態1で説明した氷雪除去ネット1に付加される種々の工夫について説明する。
【0087】
(吸着盤)
本体部2は、吸着盤10を備えることも好適である。図3は、本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの側面図である。氷雪除去ネット1が、自動車21のフロントガラス20に敷設されている(装着されている)。図3は、自動車21の前部分の一部を側面から見た状態を示しており、このフロントガラス20の表面に本体部2が敷設されている。
【0088】
本体部2は、吸着盤10を備えている。図3においては、フロントガラス20の上部と下部に対応する位置に、本体部2は、吸着盤10を備えている。図3では氷雪除去ネット1を側面から見ているので、本体部2は、2つの吸着盤10を備えているように見えるが実際には図1に示されるように、敷設対象のフロントガラス20の四隅に対応する位置に、吸着盤10を設けることが好ましい。
【0089】
もちろん、フロントガラス20が非常に大きくて、四隅だけでは本体部2の固定強度が弱い場合には、本体部2の別の場所に更に吸着盤10が取り付けられても良い。例えば、本体部2の真ん中近辺や外周上に設けられてもよい。もちろん、四隅以外に吸着盤10が設けられても良い。
【0090】
ここで、吸着盤10は、樹脂でできた吸着機能を有する部材や繰り返し使えるグリース系の樹脂などを用いることができる。また、本体部2に孔が設けられており、この孔に吸着盤10が取り外し可能に設けられることも好適である。取り外し可能であることで、運搬時や折り畳み時に便宜が図られる。
【0091】
吸着盤10は、使用者が吸着盤10を敷設対象(例えば自動車のフロントガラス)への押し当てと引抜を行う際に用いるフックを更に備えることも好適である。図4は、本発明の実施の形態2における吸着盤10の側面図である。吸着盤10は、フック11を備えている。フック11は、吸着盤10に取り付けられており、指や手を引っ掛けるカーブを有している。
【0092】
使用者は、フック11を掴んで押し付けることで吸着盤10を敷設対象により強く固定する。あるいは、使用者は、このカーブに指や手を引っ掛けて、吸着盤10を敷設対象から引き抜く。フックがカーブを有していることで、このような作業が容易となる。
【0093】
あるいは、フック11は、S字状を有していることも好適である。S字状を有していることで、押し当てたり引き抜いたりする作業が容易となる。もちろん、S字状に限られるものではなく、その他の形状を有していてもよい。いずれにしても、フック11が備わっていることで、吸着盤10の押し当てと引き抜きが容易となる。
【0094】
(バンド)
本体部2は、その両端にバンドを備えていることも好適である。
【0095】
図5は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。図6は、本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの模式図である。
【0096】
本体部2は、その一方の端部に第1バンド30を備え、他方に第2バンド31を備える。ここで、本体部2が長手方向と短手方向とを有する略長方形を有する場合には、本体部2は、長手方向の一方の端部に第1バンド30を備え、長手方向の他方の端部に第2バンド31を備える。この第1バンド30および第2バンド31は、使用者が氷雪除去ネット1を持ち運びやすくなることに加えて、本体部2の敷設対象への固定の効果を生じさせる。
【0097】
本体部2は、吸着盤10を有しているので、この吸着盤10によって敷設対象(例えば自動車のフロントガラス20)に固定される。しかしながら、気温が非常に下がる場合には、吸着盤10の柔軟性が失われてしまい、吸着能力が低下する。吸着能力が低下すると、吸着盤10による固定が弱まってしまい、本体部2が脱落する恐れもある。さらには、吸着盤10は、自動車のフロントガラス20の外側で本体部2を固定させるだけであるので、氷雪除去ネット1が盗難される恐れもある。
【0098】
第1バンド30および第2バンド31は、本体部2の敷設対象への固定に用いられると共に氷雪除去ネット1の盗難防止に用いられる。図6を用いて、第1バンド30および第2バンド31による本体部2の固定および盗難防止について説明する。図6では、自動車21のフロントガラス20に本体部2が敷設される場合を示している。このため、氷雪除去ネット1が自動車21のフロントガラス20に装着される場合を例として説明する。
【0099】
第1バンド30および第2バンド31は、本体部2の両端部から伸びる。このため、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれは、フロントガラス20の外側まで延伸する。自動車21は、フロントドア22を備えている。第1バンド30および第2バンド31のそれぞれは、近接するフロントドア22に挟み込まれる。例えば、フロントドア22の上から自動車内部に第1バンド30および第2バンド31が挿入される。挿入された後で、フロントドア22が閉じられると、この第1バンド30および第2バンド31が自動車内に挿入された状態でドアによって固定される(図6では、第1バンド30および第2バンド31の内、自動車内部に挿入されている部分を点線で表している)。
【0100】
このように第1バンド30および第2バンド31がフロントドア22によって固定されることで、吸着盤10の固定と相まって、本体部2が強固に固定されるようになる。加えて、第1バンド30および第2バンド31の一部が自動車内部に挿入されてフロントドア22で固定されることで、氷雪除去ネット1が外部から取り外し不能となって、氷雪除去ネット1の盗難が防止できる。特に、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれの先端にフックや留め具が備わっている場合には、これらによって盗難防止が更に図られる。
【0101】
図7は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【0102】
氷雪除去ネット1では、第1バンド30および第2バンド31の少なくとも一方は、その一部に留め具33を備えている。図7では、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれが、その先端に留め具33を備えているが、先端でなくてもよいし、いずれか一方が備えていることでも良い。留め具33は、自動車内部に挿入されるので、フロントドア22が閉じられると、留め具33がドアに引っ掛かることになって氷雪除去ネット1の盗難が困難になる。
【0103】
なお、留め具33は、リングフックやT字フックなどを用いればよい。
【0104】
第1バンド30および第2バンド31は、このように本体部2の固定と氷雪除去ネット1の盗難防止を両立させる。
【0105】
また、第1バンド30および第2バンド31の長さが異なっていることも好適である。例えば、第1バンド30は、第2バンド31よりも短い。これは、敷設対象となる自動車21のフロントガラス20のサイズと本体部2のサイズとに、不整合がある場合に対応するためである。
【0106】
図8は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。図8に示されるフロントガラス20に比較して、本体部2は、左右方向の長さが短い。自動車21のフロントガラス20は、車種によって様々な大きさを有していることが多い。このような車種による違いの全てに本体部2の大きさをあわせることは現実的ではない。このような場合には、図8に示されるように本体部2を、フロントガラス20において一方の端部に片寄らせて敷設することも好適である。
【0107】
このように、本体部2がフロントガラス20で一方の端部に片寄って敷設される場合には、フロントドア22によって固定される第1バンド30と第2バンド31の長さが異なっていることが適当である。本体部2は、第1バンド30が延伸する側に近寄って敷設されているので、第1バンド30は、フロントドア22までの距離が短い。一方、第2バンド31は、フロントドア22までの距離が長い。
【0108】
このように車種によっては、第1バンド30と第2バンド31のそれぞれにおいて、フロントドア22までの距離に不整合が生じることも多い。このため、第1バンド30が第2バンド31よりも短いことも好適である。言い換えると第2バンド31が第1バンド30よりも長いことも好適である。一方が長いことで、フロントガラス20の一方に片寄って本体部2が敷設される場合でも、第1バンド30および第2バンド31による固定が確実に行える。第1バンド30および第2バンド31が同じ長さであるよりも、異なる長さであることで、本体部2の敷設が容易となるメリットがある。
【0109】
もちろん、図8では、第1バンド30よりも第2バンド31が長い状態を示しているが、逆に第2バンド31よりも第1バンド30よりも長くてもよい。
以上のように、第1バンド30と第2バンド31の長さの差によって、本体部2の固定がより容易になる。
【0110】
以上のように、実施の形態2における氷雪除去ネット1は、様々な追加要素を有することで、敷設対象への敷設の容易性、敷設の固定力向上、盗難防止、使い勝手の向上などを実現することができる。
【0111】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0112】
実施の形態3では、本体部2における開口部の大きさ、線材3の直径などの特徴を説明する。線材3は、主線31と複数の副線32とが撚り合わされている。この線材3の大まかな幅は、主線31の直径によって表される。ここで、線材3の幅は、線材3における氷雪の付着・成長に影響するので、線材3の幅を生み出す主線31の直径を制御することが重要である。
【0113】
(主線の直径)
ここで、主線31の直径が、0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。なお、これはあくまでも氷雪除去ネット1の効果を得る一つの例であって、これ等以外の数値を排除する意図ではない。
【0114】
主線31の直径が、0.5mm以上6.0mm以下であることで、線材3に氷雪が付着・成長しやすくなり、本体部2が取り外される際に氷雪が本体部2に張り付いたまま除去されやすくなる。主線31の直径が0.5mm未満であると、線材3の幅が小さすぎて、線材3に氷雪が十分に付着しきれなくなる。一方で、主線31の直径が6.0mmより大きい場合には、本体部2が取り外される際に氷雪が敷設対象(例えば窓や屋根)に残りやすくなる。
【0115】
(実験結果)
発明者は、主線31の直径を0.5mm以上6.0mm以下とした線材3の効果を実験によって確認した。図9は、本発明の実施の形態3における実験結果のグラフであり、この実験結果を示す。なお、実地での実験の都合上、0.5mm以上6.0mm以下の条件を2つに分割して実験を行った。なお、図9に記載の線材幅および線径は、主線31の直径を示している。図9に示される実験では、自動車のフロントガラスに実施の形態1,2で説明した氷雪除去ネット1を敷設し、フロントガラスを氷結させた場合に、取り外した本体部2にどの程度の氷が残るか(残氷量)を測定したものである。
【0116】
図9の左半分から明らかな通り、主線31の直径が0.5mm未満では、本体部2にはほとんど氷が残らず、5.0mm以上(マージンを考慮して6.0mm以上)でも、本体部2にはほとんど氷が残らない。
【0117】
図9にしめされる実験結果からも明らかな通り、主線31の直径は、0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
【0118】
(開口部の幅)
本体部2は、平面格子状であるので、線材3同士に囲まれた開口部を有する(格子形状のメッシュとして把握される部分)。この開口部の幅は、1.0mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0119】
1.0mm未満の場合には、開口部が小さすぎる(すなわち格子の目がつまり過ぎた状態)ので、本体部2がいわゆるシート状態となってしまい本体部2と自動車のフロントガラスとの隙間を埋めるように氷が発達する。このため、本体部2の表面に氷が付着・成長しなくなり、本体部2を取り除いても氷がフロントガラスに残ってしまう。
【0120】
一方、50mmより大きい場合には、開口部が大きすぎる(すなわち格子の目が粗すぎる状態)ので、開口部において成長する氷が線材3に接続しきれず、本体部2を取り除くときにフロントガラスに氷が残ってしまう。
【0121】
以上のように、主線31(線材3)および開口部の幅を所定の範囲とすることで、氷雪除去ネット1の氷雪の除去能力が高まる。
【0122】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
【0123】
実施の形態4では、実際に自動車や建造物に氷雪除去ネットが装着されて使用される状態を説明する。
【0124】
図10は、本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された自動車の正面図である。自動車21は、寒冷地などに駐車されるのでフロントガラス20や屋根25に氷雪が付着・成長することが多い。
【0125】
氷雪除去ネット1(の本体部2)が、これら付着・成長する氷雪を除去するために用いられる。氷雪除去ネット1は、フロントガラス20に敷設される。氷雪除去ネット1Bは、屋根25に敷設される。氷雪除去ネット1、1Bのそれぞれは、実施の形態1〜3で説明された要素や特徴を有している。ここで、実施の形態2で説明した通り、氷雪除去ネット1、1Bは、第1バンドや第2バンドを備えており、第1バンドや第2バンドが、自動車21のドアに挟み込まれることで、氷雪除去ネット1、1Bが固定される。
【0126】
使用者は、自動車21を駐車したところで、必要に応じて氷雪除去ネット1、1Bをフロントガラス20や屋根25に敷設して装着する。駐車中に本体部2、2Bには、氷雪が付着・成長する。使用者は、駐車中の自動車21を使用する前に本体部2、2Bをフロントガラス20や屋根25の面方向に沿ってスライドさせながら、取り外す。このような取り外しによって、線材3に付着している氷雪が、接続している氷雪と合わせて本体部2、2Bと合わせて除去される。
【0127】
また、図11に示されるように、実施の形態1〜3で説明された氷雪除去ネット1は、建造物50の屋根51に敷設されても良い。図11は、本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された建造物の斜視図である。一例として住宅が示されている。
【0128】
建造物50は、当然ながら屋根51を有している。寒冷地では、この屋根51の上に雪が積もったり氷が付着したりする。このため、屋根51の上に氷雪除去ネット1が敷設される。敷設においては、例えば、本体部2の下端を屋根51の一部に固定して、本体部2を屋根51の表面に広げる。例えば、駆動機構52に本体部2の一部(例えばバンド)が装着されており、駆動機構5がこのバンドや本体部2を巻き上げることで、屋根51の表面に本体部2が敷設される。
【0129】
次いで、取っ手60を引き下げることで、本体部2が屋根51の表面に沿ってZ方向にスライドされる。このスライドによって、本体部2に付着・成長している氷雪が本体部2に合わせて取り除かれて、屋根51の下に落ちる。結果として、屋根51に付着・成長する氷雪が除去される。
【0130】
このとき、駆動機構5が取っ手60の引き下げに合わせて、本体部2の下方への移動を補助する。
【0131】
以上のように、実施の形態1〜3で説明された氷雪除去ネット1は、その構造上の特徴に基づいて、自動車のフロントガラスや屋根、建造物の屋根などに好適に用いることができる。
【0132】
以上、実施の形態1〜4で説明された氷雪除去ネットは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0133】
1 氷雪除去ネット
2 本体部
3 線材
31 主線
32 副線
4 開口部
10 吸着盤
11 フック
20 フロントガラス
21 自動車
25 屋根
30 第1バンド
31 第2バンド
33 留め具
50 建造物
51 屋根
60 取っ手
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を始めとする輸送機器の窓や天井面、あるいは建造物の窓や天井面に付着する雪および氷を除去する氷雪除去ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地を始めとして、冬季に低温や積雪が見込まれる地域においては、駐車中の自動車の窓に氷が張り付いたり、雪が積もったりする。特に、自動車のガラス表面の水分が凍りつき、この氷に積もった雪が結合した氷雪が、自動車の窓に張り付いてしまうことがある。すなわち、自動車の窓に付着するのは、雪だけあるいは氷だけのこともあるが、このようにガラス表面に成長する氷と雪とが結合した氷雪であることが多い。
【0003】
自動車には、フロントガラス、ドアガラス、リアガラスなど複数の窓が存在するが、これらの中でフロントガラスは、傾斜があって雪や氷が付着しやすく、運転への支障も高い部位である。もちろん、自動車の天井面に氷雪が付着したり積もったりすることも多い。自動車だけでなく、電車、トラックなどの輸送機器全般の窓や天井面に氷雪が付着したり積もったりすることがある。
【0004】
このため、自動車の運転を開始する前に、フロントガラスに付着した氷雪を除去する手間の掛かる作業が必要となる。例えば、お湯や水を掛けたり、室内からの暖房をフロントガラスに吹き付けたり、雪かき道具を用いて手作業で剥ぎ取ったりするなどが必要となる。寒冷地においては、このような手作業は非常な負担であり、例えば高齢者にとっては危険をも伴う作業である。
【0005】
このような状況で、自動車のフロントガラスや天井面などに、付着した氷雪を剥離したり除去したりする部材を予め取り付けておく技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1は、ウインドウガラス形状のシートカバーであって、このシートカバーの各コーナーに吸着盤を設けたフロントウインドウガラスカバーを開示する。
【0007】
特許文献2は、特許文献1のガラスカバーのようにフロントガラス前面を封じるように覆う技術とは異なり、メッシュ状の氷雪除去ネットを開示する。
【0008】
あるいは、住宅やビルなどの建造物の窓や屋根に氷雪が付着したり積もったりすることも多い。建造物の屋根に積もった雪を除去するには、作業者が屋根に上って除雪作業を行う必要がある。当然ながら、屋根の上での除雪作業は危険を伴い、近年では高齢者が除雪作業中に事故に巻き込まれることも発生している。
【0009】
このような建造物の屋根の除雪を容易化する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
特許文献3は、屋根の頂部と下部とに平行に設けられた回転ローラと、この回転ローラに掛けられて屋根を覆うカバー部材と、回転ローラの回転でカバー部材を移動させて除雪する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−282156号公報
【特許文献2】特許第4224121号公報
【特許文献3】特開平5−280169号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1のシートカバーは、自動車のフロントガラスの前面を封じるように覆ってしまう。このため、シートカバーとフロントガラスとの間に生じる水滴や水分が凍ることで、シートカバーがフロントガラスに凍り付いてしまう。このため、シートカバーをはがすこと自体が困難となり、フロントガラスの氷雪を除去することが困難である。
【0013】
フロントガラスを始めとした窓や屋根に付着する氷雪は、雪だけが積もるのではなく、フロントガラス表面の水分が凍りつき、これと雪とが結合して氷雪となることで成長する。このため、フロントガラス表面で凍りついた氷とこれに結合した(あるいは積もった)雪とを一緒に除去することが求められる。
【0014】
特許文献2は、フロントガラス表面で凍りついた氷とこれに結合した雪とを一緒に除去する。特許文献2は、メッシュ状のネットであって、メッシュ状のネットの格子間隔と線材の径とで特定することで、氷と雪とを一緒に除去することができるようになる。
【0015】
しかしながら、特許文献2の技術は、フロントガラス表面に成長する氷(あるいは氷に付着する雪)を、そのメッシュと線材に十分にひきつけることができない場合がある。特に、低温状態や積雪の多い場合には、成長する氷が厚くなることもあり、特許区分権2の技術は、十分な除去機能を発揮できない可能性があった。
【0016】
特許文献3の技術は、回転ローラや回転ローラを駆動する装置など、装置が大掛かりになり、手間が発生するという問題を有している。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑み、輸送機器の窓や屋根、建造物の窓や屋根に付着する氷雪を容易かつ確実に除去でき、簡便な構造である氷雪除去ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題に鑑み、本発明の氷雪除去ネットは、線材により平面格子状に形成された本体部を備え、線材は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の氷雪除去ネットは、窓や屋根に付着した氷雪を、例えば窓ガラス表面に成長した氷と共にまとめて除去することができる。特に、雪と氷とを分離せずに、結合している雪と氷とをまとめて除去できるので、作業者は、ほぼ一度の作業で氷雪を除去できる。
【0020】
特に、自動車のフロントガラス表面に付着したり積もったりする氷雪を、簡単に除去できるので、冬季においても、使用者はすぐに自動車を使用できるようになる。
【0021】
また、本発明の氷雪除去ネットは、自動車の窓や屋根だけではなく、建造物の窓や屋根の氷雪を除去することにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における氷雪除去ネットの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における線材の断面図である
【図3】本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの側面図である。
【図4】本発明の実施の形態2における吸着盤10の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図6】本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの模式図である。
【図7】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における実験結果のグラフである。
【図10】本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された自動車の正面図である。
【図11】本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された建造物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る氷雪除去ネットは、線材により平面格子状に形成された本体部を備え、線材は、第1直径を有する繊維である主線と、主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、第1直径は第2直径よりも大きい。
【0024】
この構成により、氷雪除去ネットは、その線材の周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。結果として、本体部は、敷設対象において成長する氷雪と接続するようになり、本体部の取り外しに合わせて氷雪が確実に除去される。
【0025】
本発明の第2の発明に係る氷雪除去ネットは、第1の発明に合わせて、本体部は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設され、本体部が、該表面上をスライドされることで、線材および該線材の格子によって形成される開口部の周囲に付着する氷雪を除去する。
【0026】
この構成により、氷雪除去ネットは、敷設対象に付着・成長する氷雪を、本体部の取り外しによって確実に除去できる。
【0027】
本発明の第3の発明に係る氷雪除去ネットは、第1または第2の発明に加えて、線材は、主線と副線とのより合わせで生じる凹部に、敷設されている窓および屋根の少なくとも一方に生じる水分を吸収して、凹部に氷雪を付着させる。
【0028】
この構成により、氷雪除去ネットは、線材の周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。
【0029】
本発明の第4の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、主線および副線は、ラッセル織りにより撚り合わされる。
【0030】
この構成により、線材の断面に容易に凹部を生じさせることができる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、線材の断面は、第1直径の第1略円形と、第1略円形の外周に位置する第2直径を有する複数の第2略円形と、が組み合わされた形状を有する。
【0032】
この構成により、線材は、敷設対象からの水分を吸収しやすくなり、線材は、その周囲に氷雪を付着・成長させやすくなる。
【0033】
本発明の第6の発明に係る氷雪除去ネットは、第2から第5のいずれかの発明に加えて、主線の直径は0.5mm以上6mm以下であり、開口部の幅は、1mm以上50mm以下である。
【0034】
この構成により、本体部は、氷雪の付着・成長を促すことができ、本体部の取り外しにあわせて、確実に氷雪を除去することができる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、本体部は、略方形、略長方形および略多角形の少なくとも一つを有し、敷設される窓および屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有する。
【0036】
この構成により、氷雪除去ネットは、様々な敷設対象に容易に使用できるようになる。
【0037】
本発明の第8の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、本体部は、複数の角部の少なくとも一部に吸着盤を備える。
【0038】
この構成により、本体部の敷設対象への固定が高まる。
【0039】
本発明の第9の発明に係る氷雪除去ネットは、第8の発明に加えて、吸着盤は、該吸着盤の押し当ておよび引き抜きを行うフックを有する。
【0040】
この構成により、吸着盤による固定と取り外しが容易に行える。
【0041】
本発明の第10の発明に係る氷雪除去ネットは、第1から第9のいずれかの発明に加えて、本体部は、一方の端部の第1バンドおよび他方の端部の第2バンドを備える。
【0042】
この構成により、本体部は、自動車のドアなどに挟まれた第1バンドや第2バンドによって、固定されると共に盗難が防止される。
【0043】
本発明の第11の発明に係る氷雪除去ネットは、第10の発明に加えて、第1バンドは、第2バンドよりも短い。
【0044】
この構成により、本体部が敷設対象となる自動車のフロントガラスよりも小さい場合でも、自動車のドアに第1バンド及び第2バンドが確実に固定できるようになる。
【0045】
本発明の第12の発明に係る氷雪除去ネットは、第10又は第11の発明に加えて、第1バンドおよび第2バンドの少なくとも一方は、留め具を有する。
【0046】
この構成により、第1バンドおよび第2バンドが、ドアの隙間から取り出されることが防止される。結果として氷雪除去ネットの盗難が防止される。
【0047】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
(実施の形態1)
実施の形態1について説明する。
【0049】
まず、実施の形態1における氷雪除去ネットの概要について説明する。
【0050】
(全体概要)
図1は、本発明の実施の形態1における氷雪除去ネットの正面図である。図2は、本発明の実施の形態1における線材の断面図である。図1は、実施の形態1における氷雪除去ネットの一例の形状を模式的に表している。
【0051】
氷雪除去ネット1は、線材3により平面格子状に形成された本体部2を備えている。この本体部2が氷雪除去ネット1の外形を形成する。また、本体部2が、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根などに敷設される。この敷設によって、氷雪除去ネット1は、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根に付着する雪、氷、霜、あるいはこれらの結合である氷雪を、除去できる。
【0052】
なお、本明細書で記載される氷雪は、氷だけ、雪だけ、氷と雪とが結合した状態、積もった雪の一部が凍結して氷と雪の結合した状態、霜や氷の表面に雪が結合した状態など、氷、雪、霜などを様々に含む。
【0053】
本体部2は、線材3により平面格子状に形成されるが、この線材3は、第1直径を有する主線31と、主線31の周囲に撚り合わされる第2直径を有する複数の副線32と、を有する。図2は、この主線31の周囲に複数の副線32が撚り合わされている状態を示している。ここで、第1直径は、第2直径よりも大きい。すなわち、主線31の直径は、副線32の直径よりも大きい状態である。なお、図2は、線材3の断面形状を示しているので、中央の主線31の周囲に、整然と複数の副線32が並んでいるように見えるが、実際には主線31に副線32がより合わされているので、主線31と副線32の断面形状は、円形よりも潰れた楕円形となることもありうる。同様に、複数の副線32は、主線31の周囲に直線状に沿っているとは限らず、斜めに周回するように沿っていることもありうる。
【0054】
この線材3が縦横に織り合わされることで、図1に示されるような平面格子状の本体部2が形成される。このため、本体部2は、線材3の部分と線材3同士の隙間である開口部4と、を有することになる。
【0055】
この本体部2は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設される(あるいは装着される)。本体部2においては、線材3および開口部4に氷や雪が付着するようになり、本体部2が敷設されている窓や屋根の表面上を面方向にスライドされることで、氷雪除去ネット1は、この付着している氷雪を除去できる。
【0056】
(作用メカニズム)
次に、氷雪除去ネット1の氷雪除去のメカニズムについて説明する。氷雪除去ネット1は、自動車の窓、屋根、建造物の窓、屋根など、雪や氷などが付着する様々な場所に適用可能であるが、説明を容易化するために自動車のフロントガラスに適用される場合を例に説明する。
【0057】
線材3においては、この主線31と副線32のより合わせにより、凹部33が形成される。この凹部33は、主線31の外周上であって、副線32同士の空隙であると共に副線32の外周に形成される。すなわち、凹部33の直径は、主線31の第1直径よりも小さい。また、副線32の撚り合わせ方によっては、第2直径よりも小さい。加えて、凹部33の周囲の一部は、主線31と副線32とに囲まれるので、小さな直径に比較して大きな表面積を有することになる。
【0058】
凹部33は、直径が小さく表面積が大きいことで、敷設されているフロントガラスに生じる水分を浸透圧によって吸収するようになる。フロンとガラスに生じる水分は、自動車に降る雨水によっても生じるが、霜や雪が窓やフロントガラスの表面で融解することによって生じることが多い。
【0059】
このフロントガラス表面で生じる水分は気温低下に伴って凍結し、この凍結した氷の表面に雪が結合して、フロントガラス表面に氷雪が付着・成長することになる。すなわち、フロントガラスの氷雪を除去するには、まずフロントガラス表面に最初に付着・成長する凍結水分を除去することが重要である。
【0060】
従来技術の氷雪除去装置は、このようなフロントガラス表面に最初に付着・成長する凍結水分を除去することを考慮しておらず、氷雪除去装置が吸収し切れない水分が、フロントガラス表面に直接凍結してしまい、ネットやシートによってフロントガラス表面に凍結した氷を除去できなかった。このため、フロントガラス表面に凍結した氷に結合した雪を除去することも難しかった。
【0061】
実施の形態1の氷雪除去ネット1は、線材3の周囲に形成される凹部33が、浸透圧によってフロントガラス表面で生じる水分を吸収する。この結果、フロントガラス表面で生じる水分は、線材3に付着するように凍結する。もちろん開口部4においても氷が付着・成長するが、開口部4において付着・成長する氷は、線材3にも繋がっている。
【0062】
ここで、凹部33において付着・成長する氷は、開口部4において付着・成長する氷よりも厚みが大きくなる。これは、凹部33が開口部4よりも径の小さい空隙であるからである。この結果、開口部4に付着・成長する氷は、凹部33に付着・成長する氷を根として、線材3に繋がることになる。すなわち、本体部2に対応する領域で付着・成長する氷は、全て線材3に接続した状態となる。
【0063】
更に、フロントガラスに降る雪は、この線材3に接続している氷の上に積もって結合する。結果的に、氷と雪とが結合した氷雪は、全て本体部2の線材3に接続した状態となる。言い換えると、フロントガラス上の氷雪のほとんどは、線材3に結合している状態である。
【0064】
使用者は、氷雪除去ネット1を敷設されているフロントガラスから、本体部2を面方向にスライドさせると、この本体部2(線材3)に結合している氷雪のほとんどが本体部2にくっついた様に除去される。これは、氷雪が、フロントガラスの表面に付着・成長するのではなく、線材3を基準として本体部2に付着・成長しているからである。これは、線材3の外周に形成される凹部33に給水されて凍りついた水分が、核となって線材3の周囲に(すなわち開口部4の周囲に)氷雪が付着・成長するからである。
【0065】
もちろん、僅かな氷雪が、本体部2を取り外した後にフロントガラス表面に残ることもありうる。しかし、僅かな量であり、氷雪除去ネット1を取り外した後の除雪作業はすぐに済む程度である。これも、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、フロントガラスに生じる氷や積もる雪による氷雪を、フロントガラス表面に直接的に成長させるのではなく、線材3を基準として、線材3および開口部4の周辺に成長させるからである。
【0066】
なお、フロントガラスに付着・成長する可能性のある氷雪は、線材3や開口部4の周辺に付着・成長するだけでなく、フロントガラス表面にも付着しうる。しかしながら、フロントガラス表面に付着・成長する氷雪は、線材3に付着・成長する氷雪の剥離に伴って、フロントガラスから剥離する。すなわち、本体部2が取り外される動作に合わせてフロントガラス表面に付着・成長している氷雪も、本体部2(線材3)にくっついて剥離する。
【0067】
すなわち、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、(1)主線31と副線32との縒りあわせによる凹部33がフロントガラスに生じる水分を吸収して核となる氷を成長させ、(2)凹部33に生じた核となる氷によって、線材3の周辺に氷が成長し、(3)線材3の周辺の氷に雪が付着して、線材3および開口部4の周辺に、線材3に接続する氷雪が付着・成長する、というメカニズムで、本体部2に氷雪を付着・成長させる。更に、氷雪除去ネット1は、本体部2をフロントガラスから取り外す際に、(A)線材3および開口部4に付着・成長している氷雪をそのまま除去し、(B)作用(A)と合わせて、フロントガラス表面に付着している氷雪をも一緒に剥離する、という一連の作用によって、フロントガラスに付着する氷雪を一気に除去できる。
【0068】
以上のように、実施の形態1における氷雪除去ネット1は、フロントガラスに付着・成長する氷雪を、本体部2の取り外しだけで容易かつ確実に除去できる。
【0069】
次に各部の詳細について説明する。
【0070】
(本体部)
本体部2は、線材3によって平面格子状に形成された氷雪除去ネット1の全体的な外形を作り出す。図1に示されるように、本体部2は、平面格子状を有しており、線材3の部分と線材3で囲まれる開口部4とを備えている。この開口部4が格子状を顕している。
【0071】
本体部2は、自動車のフロントガラスや屋根を始めとして、自動車などの輸送機器の窓や屋根、建造物の窓や屋根に敷設される。敷設される輸送機器や建造物の窓や屋根に付着・成長する可能性のある氷雪を、本体部2そのものに付着・成長させる。
【0072】
本体部2は、敷設対象となる対象物の形状、大きさに対応する形状と大きさを有していればよい。すなわち、本体部2は、略方形、略長方形、略多角形の少なくとも一つの形状を有しており、敷設される窓や屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有していればよい。
【0073】
例えば、敷設対象が自動車のフロントガラスの場合には、本体部2は、略長方形を有している。あるいは、敷設対象が自動車の屋根である場合には、本体部2は、略方形もしくは略長方形を有している。あるいは、敷設対象が自動車のサイドウインドウやリアウインドウである場合には、本体部2は、略台形を有している。あるいは、敷設対象が建造物の屋根である場合には、本体部2は、略方形、略長方形、略多角形を有している。また、それぞれ対応する大きさを有しておけばよい。
【0074】
ここで、敷設対象が自動車のフロントガラスやリアガラスである場合には、その大きさは車種によって様々である。このような様々な車種の全てに合わせた本体部2を有する氷雪除去ネット1を用意することは難しい。このため、大・中・小などの大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が、予め容易されておくことも適当である。敷設対象の大きさと完全に一致しない場合でも、大体の範囲を覆うことができれば、実際の使用では十分であると考えられる。
【0075】
また、敷設対象が自動車の屋根である場合にも、その大きさは車種によって様々である。この場合でも、大・中・小などの大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が予め用意されていればよい。屋根の大体の範囲を覆うことができれば(あるいは、屋根の大きさよりも大きいとして)、実際の使用では十分である。
【0076】
あるいは、建造物の窓に敷設される場合には、窓の規格に合わせた大きさの本体部2を有する氷雪除去ネット1が用意されればよい。住宅等においては、窓の大きさはハウスメーカーなどによってそのサイズや形状が規格化されていることが多く、これに合わせた氷雪除去ネット1が用意されれば良い。また、建造物の屋根に敷設される場合には、建造物の規格に合わせた数種類の氷雪除去ネット1が用意されても良いし、個々の建造物に合わせたカスタム品である氷雪除去ネット1が提供されても良い。
【0077】
また、本体部2は、窓や屋根に取り付け可能なように吸着盤10を備えていることも好適である。吸着盤10によって、フロントガラスなどの敷設対象に本体部2が固定されるようになる。また、本体部2は、線材3によって形成されるので、柔軟性を有しており、折り畳みが可能である。例えば、運搬時や不使用時においては、折り畳むことで便宜が高い。車に積み込んで運搬できるからである。
【0078】
以上のように、本体部2は、氷雪除去ネット1の外形を形成する要素であり、氷雪が付着・成長する対象物に敷設される。
【0079】
(線材)
線材3は、第1直径を有する主線31と第2直径を有する複数の副線32とが撚り合わされている。その断面は図2に示されるようなものである。
【0080】
線材が単一の繊維で構成されている場合には、フロントガラスなどに付着・成長する氷が線材に十分に接続できない。線材が単線であるので、その表面積が小さいことおよび吸水効果が弱いことに起因する。氷雪除去ネットは、敷設対象のフロントガラスや屋根において発生する氷を本体部の取り外しと共に剥ぎ取ることを必要とするが、フロントガラスや屋根に付着・成長する氷が、線材に十分に接続できないと、本体部の取り外しと共に氷が取り除かれないことになってしまう。
【0081】
実施の形態1の線材3は、主線31と副線32との撚り合わせであるので、図2に示されるような凹部33が形成される。これによって線材3の表面積が大きくなり、凹部33による吸水効果も生じて、フロントガラスや屋根に付着・成長する氷は、線材3に接続するようになる。この結果、本体部2が取り外される際に線材3に接続している氷(もちろん氷に積もっている雪も)を一緒に取り除くことができるようになる。
【0082】
このような撚り合わせによる線材3は、一例としてラッセル織りによってより合わされる。ラッセル織りによって、主線31と複数の副線32とが寄り合わされる。このとき、主線31は、第1直径を有しており、複数の副線32は第2直径を有しているが、第1直径は第2直径よりも大きい。このような構成により、線材3の断面は、第1直径の第1略円形と、この外周に位置する第2直径を有する複数の第2略円形とが、組み合わされたような形状となる。第2略円形は、放射状あるいは星状に位置する。もちろん、この位置に限定されるものではない。
【0083】
線材3は、ラッセル織りなどの方法でより合わされるので、主線31および副線32は潰れたような形状になることもある。略円形とは、この潰れたような形状(楕円形であったり、不確定の形状であったりする)を含む意味である。
【0084】
このような線材3が、更に縦横に織られることで、平面格子状の本体部2が形成される。実施の形態1における氷雪除去ネット1は、このような主線31と副線32の撚り合わせによる線材3を用いることで、従来技術に比較して、より確実かつ容易に氷雪を除去できる。
【0085】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
【0086】
実施の形態2では、実施の形態1で説明した氷雪除去ネット1に付加される種々の工夫について説明する。
【0087】
(吸着盤)
本体部2は、吸着盤10を備えることも好適である。図3は、本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの側面図である。氷雪除去ネット1が、自動車21のフロントガラス20に敷設されている(装着されている)。図3は、自動車21の前部分の一部を側面から見た状態を示しており、このフロントガラス20の表面に本体部2が敷設されている。
【0088】
本体部2は、吸着盤10を備えている。図3においては、フロントガラス20の上部と下部に対応する位置に、本体部2は、吸着盤10を備えている。図3では氷雪除去ネット1を側面から見ているので、本体部2は、2つの吸着盤10を備えているように見えるが実際には図1に示されるように、敷設対象のフロントガラス20の四隅に対応する位置に、吸着盤10を設けることが好ましい。
【0089】
もちろん、フロントガラス20が非常に大きくて、四隅だけでは本体部2の固定強度が弱い場合には、本体部2の別の場所に更に吸着盤10が取り付けられても良い。例えば、本体部2の真ん中近辺や外周上に設けられてもよい。もちろん、四隅以外に吸着盤10が設けられても良い。
【0090】
ここで、吸着盤10は、樹脂でできた吸着機能を有する部材や繰り返し使えるグリース系の樹脂などを用いることができる。また、本体部2に孔が設けられており、この孔に吸着盤10が取り外し可能に設けられることも好適である。取り外し可能であることで、運搬時や折り畳み時に便宜が図られる。
【0091】
吸着盤10は、使用者が吸着盤10を敷設対象(例えば自動車のフロントガラス)への押し当てと引抜を行う際に用いるフックを更に備えることも好適である。図4は、本発明の実施の形態2における吸着盤10の側面図である。吸着盤10は、フック11を備えている。フック11は、吸着盤10に取り付けられており、指や手を引っ掛けるカーブを有している。
【0092】
使用者は、フック11を掴んで押し付けることで吸着盤10を敷設対象により強く固定する。あるいは、使用者は、このカーブに指や手を引っ掛けて、吸着盤10を敷設対象から引き抜く。フックがカーブを有していることで、このような作業が容易となる。
【0093】
あるいは、フック11は、S字状を有していることも好適である。S字状を有していることで、押し当てたり引き抜いたりする作業が容易となる。もちろん、S字状に限られるものではなく、その他の形状を有していてもよい。いずれにしても、フック11が備わっていることで、吸着盤10の押し当てと引き抜きが容易となる。
【0094】
(バンド)
本体部2は、その両端にバンドを備えていることも好適である。
【0095】
図5は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。図6は、本発明の実施の形態2における自動車のフロントガラスに装着された氷雪除去ネットの模式図である。
【0096】
本体部2は、その一方の端部に第1バンド30を備え、他方に第2バンド31を備える。ここで、本体部2が長手方向と短手方向とを有する略長方形を有する場合には、本体部2は、長手方向の一方の端部に第1バンド30を備え、長手方向の他方の端部に第2バンド31を備える。この第1バンド30および第2バンド31は、使用者が氷雪除去ネット1を持ち運びやすくなることに加えて、本体部2の敷設対象への固定の効果を生じさせる。
【0097】
本体部2は、吸着盤10を有しているので、この吸着盤10によって敷設対象(例えば自動車のフロントガラス20)に固定される。しかしながら、気温が非常に下がる場合には、吸着盤10の柔軟性が失われてしまい、吸着能力が低下する。吸着能力が低下すると、吸着盤10による固定が弱まってしまい、本体部2が脱落する恐れもある。さらには、吸着盤10は、自動車のフロントガラス20の外側で本体部2を固定させるだけであるので、氷雪除去ネット1が盗難される恐れもある。
【0098】
第1バンド30および第2バンド31は、本体部2の敷設対象への固定に用いられると共に氷雪除去ネット1の盗難防止に用いられる。図6を用いて、第1バンド30および第2バンド31による本体部2の固定および盗難防止について説明する。図6では、自動車21のフロントガラス20に本体部2が敷設される場合を示している。このため、氷雪除去ネット1が自動車21のフロントガラス20に装着される場合を例として説明する。
【0099】
第1バンド30および第2バンド31は、本体部2の両端部から伸びる。このため、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれは、フロントガラス20の外側まで延伸する。自動車21は、フロントドア22を備えている。第1バンド30および第2バンド31のそれぞれは、近接するフロントドア22に挟み込まれる。例えば、フロントドア22の上から自動車内部に第1バンド30および第2バンド31が挿入される。挿入された後で、フロントドア22が閉じられると、この第1バンド30および第2バンド31が自動車内に挿入された状態でドアによって固定される(図6では、第1バンド30および第2バンド31の内、自動車内部に挿入されている部分を点線で表している)。
【0100】
このように第1バンド30および第2バンド31がフロントドア22によって固定されることで、吸着盤10の固定と相まって、本体部2が強固に固定されるようになる。加えて、第1バンド30および第2バンド31の一部が自動車内部に挿入されてフロントドア22で固定されることで、氷雪除去ネット1が外部から取り外し不能となって、氷雪除去ネット1の盗難が防止できる。特に、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれの先端にフックや留め具が備わっている場合には、これらによって盗難防止が更に図られる。
【0101】
図7は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。
【0102】
氷雪除去ネット1では、第1バンド30および第2バンド31の少なくとも一方は、その一部に留め具33を備えている。図7では、第1バンド30および第2バンド31のそれぞれが、その先端に留め具33を備えているが、先端でなくてもよいし、いずれか一方が備えていることでも良い。留め具33は、自動車内部に挿入されるので、フロントドア22が閉じられると、留め具33がドアに引っ掛かることになって氷雪除去ネット1の盗難が困難になる。
【0103】
なお、留め具33は、リングフックやT字フックなどを用いればよい。
【0104】
第1バンド30および第2バンド31は、このように本体部2の固定と氷雪除去ネット1の盗難防止を両立させる。
【0105】
また、第1バンド30および第2バンド31の長さが異なっていることも好適である。例えば、第1バンド30は、第2バンド31よりも短い。これは、敷設対象となる自動車21のフロントガラス20のサイズと本体部2のサイズとに、不整合がある場合に対応するためである。
【0106】
図8は、本発明の実施の形態2における氷雪除去ネットの正面図である。図8に示されるフロントガラス20に比較して、本体部2は、左右方向の長さが短い。自動車21のフロントガラス20は、車種によって様々な大きさを有していることが多い。このような車種による違いの全てに本体部2の大きさをあわせることは現実的ではない。このような場合には、図8に示されるように本体部2を、フロントガラス20において一方の端部に片寄らせて敷設することも好適である。
【0107】
このように、本体部2がフロントガラス20で一方の端部に片寄って敷設される場合には、フロントドア22によって固定される第1バンド30と第2バンド31の長さが異なっていることが適当である。本体部2は、第1バンド30が延伸する側に近寄って敷設されているので、第1バンド30は、フロントドア22までの距離が短い。一方、第2バンド31は、フロントドア22までの距離が長い。
【0108】
このように車種によっては、第1バンド30と第2バンド31のそれぞれにおいて、フロントドア22までの距離に不整合が生じることも多い。このため、第1バンド30が第2バンド31よりも短いことも好適である。言い換えると第2バンド31が第1バンド30よりも長いことも好適である。一方が長いことで、フロントガラス20の一方に片寄って本体部2が敷設される場合でも、第1バンド30および第2バンド31による固定が確実に行える。第1バンド30および第2バンド31が同じ長さであるよりも、異なる長さであることで、本体部2の敷設が容易となるメリットがある。
【0109】
もちろん、図8では、第1バンド30よりも第2バンド31が長い状態を示しているが、逆に第2バンド31よりも第1バンド30よりも長くてもよい。
以上のように、第1バンド30と第2バンド31の長さの差によって、本体部2の固定がより容易になる。
【0110】
以上のように、実施の形態2における氷雪除去ネット1は、様々な追加要素を有することで、敷設対象への敷設の容易性、敷設の固定力向上、盗難防止、使い勝手の向上などを実現することができる。
【0111】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
【0112】
実施の形態3では、本体部2における開口部の大きさ、線材3の直径などの特徴を説明する。線材3は、主線31と複数の副線32とが撚り合わされている。この線材3の大まかな幅は、主線31の直径によって表される。ここで、線材3の幅は、線材3における氷雪の付着・成長に影響するので、線材3の幅を生み出す主線31の直径を制御することが重要である。
【0113】
(主線の直径)
ここで、主線31の直径が、0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。なお、これはあくまでも氷雪除去ネット1の効果を得る一つの例であって、これ等以外の数値を排除する意図ではない。
【0114】
主線31の直径が、0.5mm以上6.0mm以下であることで、線材3に氷雪が付着・成長しやすくなり、本体部2が取り外される際に氷雪が本体部2に張り付いたまま除去されやすくなる。主線31の直径が0.5mm未満であると、線材3の幅が小さすぎて、線材3に氷雪が十分に付着しきれなくなる。一方で、主線31の直径が6.0mmより大きい場合には、本体部2が取り外される際に氷雪が敷設対象(例えば窓や屋根)に残りやすくなる。
【0115】
(実験結果)
発明者は、主線31の直径を0.5mm以上6.0mm以下とした線材3の効果を実験によって確認した。図9は、本発明の実施の形態3における実験結果のグラフであり、この実験結果を示す。なお、実地での実験の都合上、0.5mm以上6.0mm以下の条件を2つに分割して実験を行った。なお、図9に記載の線材幅および線径は、主線31の直径を示している。図9に示される実験では、自動車のフロントガラスに実施の形態1,2で説明した氷雪除去ネット1を敷設し、フロントガラスを氷結させた場合に、取り外した本体部2にどの程度の氷が残るか(残氷量)を測定したものである。
【0116】
図9の左半分から明らかな通り、主線31の直径が0.5mm未満では、本体部2にはほとんど氷が残らず、5.0mm以上(マージンを考慮して6.0mm以上)でも、本体部2にはほとんど氷が残らない。
【0117】
図9にしめされる実験結果からも明らかな通り、主線31の直径は、0.5mm以上6.0mm以下であることが好ましい。
【0118】
(開口部の幅)
本体部2は、平面格子状であるので、線材3同士に囲まれた開口部を有する(格子形状のメッシュとして把握される部分)。この開口部の幅は、1.0mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0119】
1.0mm未満の場合には、開口部が小さすぎる(すなわち格子の目がつまり過ぎた状態)ので、本体部2がいわゆるシート状態となってしまい本体部2と自動車のフロントガラスとの隙間を埋めるように氷が発達する。このため、本体部2の表面に氷が付着・成長しなくなり、本体部2を取り除いても氷がフロントガラスに残ってしまう。
【0120】
一方、50mmより大きい場合には、開口部が大きすぎる(すなわち格子の目が粗すぎる状態)ので、開口部において成長する氷が線材3に接続しきれず、本体部2を取り除くときにフロントガラスに氷が残ってしまう。
【0121】
以上のように、主線31(線材3)および開口部の幅を所定の範囲とすることで、氷雪除去ネット1の氷雪の除去能力が高まる。
【0122】
(実施の形態4)
次に実施の形態4について説明する。
【0123】
実施の形態4では、実際に自動車や建造物に氷雪除去ネットが装着されて使用される状態を説明する。
【0124】
図10は、本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された自動車の正面図である。自動車21は、寒冷地などに駐車されるのでフロントガラス20や屋根25に氷雪が付着・成長することが多い。
【0125】
氷雪除去ネット1(の本体部2)が、これら付着・成長する氷雪を除去するために用いられる。氷雪除去ネット1は、フロントガラス20に敷設される。氷雪除去ネット1Bは、屋根25に敷設される。氷雪除去ネット1、1Bのそれぞれは、実施の形態1〜3で説明された要素や特徴を有している。ここで、実施の形態2で説明した通り、氷雪除去ネット1、1Bは、第1バンドや第2バンドを備えており、第1バンドや第2バンドが、自動車21のドアに挟み込まれることで、氷雪除去ネット1、1Bが固定される。
【0126】
使用者は、自動車21を駐車したところで、必要に応じて氷雪除去ネット1、1Bをフロントガラス20や屋根25に敷設して装着する。駐車中に本体部2、2Bには、氷雪が付着・成長する。使用者は、駐車中の自動車21を使用する前に本体部2、2Bをフロントガラス20や屋根25の面方向に沿ってスライドさせながら、取り外す。このような取り外しによって、線材3に付着している氷雪が、接続している氷雪と合わせて本体部2、2Bと合わせて除去される。
【0127】
また、図11に示されるように、実施の形態1〜3で説明された氷雪除去ネット1は、建造物50の屋根51に敷設されても良い。図11は、本発明の実施の形態4における氷雪除去ネットが装着された建造物の斜視図である。一例として住宅が示されている。
【0128】
建造物50は、当然ながら屋根51を有している。寒冷地では、この屋根51の上に雪が積もったり氷が付着したりする。このため、屋根51の上に氷雪除去ネット1が敷設される。敷設においては、例えば、本体部2の下端を屋根51の一部に固定して、本体部2を屋根51の表面に広げる。例えば、駆動機構52に本体部2の一部(例えばバンド)が装着されており、駆動機構5がこのバンドや本体部2を巻き上げることで、屋根51の表面に本体部2が敷設される。
【0129】
次いで、取っ手60を引き下げることで、本体部2が屋根51の表面に沿ってZ方向にスライドされる。このスライドによって、本体部2に付着・成長している氷雪が本体部2に合わせて取り除かれて、屋根51の下に落ちる。結果として、屋根51に付着・成長する氷雪が除去される。
【0130】
このとき、駆動機構5が取っ手60の引き下げに合わせて、本体部2の下方への移動を補助する。
【0131】
以上のように、実施の形態1〜3で説明された氷雪除去ネット1は、その構造上の特徴に基づいて、自動車のフロントガラスや屋根、建造物の屋根などに好適に用いることができる。
【0132】
以上、実施の形態1〜4で説明された氷雪除去ネットは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0133】
1 氷雪除去ネット
2 本体部
3 線材
31 主線
32 副線
4 開口部
10 吸着盤
11 フック
20 フロントガラス
21 自動車
25 屋根
30 第1バンド
31 第2バンド
33 留め具
50 建造物
51 屋根
60 取っ手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材により平面格子状に形成された本体部を備え、
前記線材は、第1直径を有する繊維である主線と、前記主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、
前記第1直径は前記第2直径よりも大きい、氷雪除去ネット。
【請求項2】
前記本体部は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設され、
前記本体部が、該表面上をスライドされることで、前記線材および該線材の格子によって形成される開口部の周囲に付着する氷雪を除去する、請求項1記載の氷雪除去ネット。
【請求項3】
前記線材は、前記主線と前記副線とのより合わせで生じる凹部に、敷設されている窓および屋根の少なくとも一方に生じる水分を吸収して、前記凹部に氷雪を付着させる、請求項1又は2記載の氷雪除去ネット。
【請求項4】
前記主線および前記副線は、ラッセル織りにより撚り合わされる、請求項1から3のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項5】
前記線材の断面は、前記第1直径の第1略円形と、前記第1略円形の外周に位置する前記第2直径を有する複数の第2略円形と、が組み合わされた形状を有する、請求項1から4のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項6】
前記主線の直径は0.5mm以上6mm以下であり、前記開口部の幅は、1mm以上50mm以下である、請求項2から5のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項7】
前記本体部は、略方形、略長方形および略多角形の少なくとも一つを有し、敷設される窓および屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有する、請求項1から6のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項8】
前記本体部は、複数の角部の少なくとも一部に吸着盤を備える、請求項1から7のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項9】
前記吸着盤は、該吸着盤の押し当ておよび引き抜きを行うフックを有する、請求項8記載の氷雪除去ネット。
【請求項10】
前記本体部は、一方の端部の第1バンドおよび他方の端部の第2バンドを備える、請求項1から9のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項11】
前記第1バンドは、前記第2バンドよりも短い、請求項10記載の氷雪除去ネット。
【請求項12】
前記第1バンドおよび前記第2バンドの少なくとも一方は、留め具を有する、請求項10又は11記載の氷雪除去ネット。
【請求項13】
前記本体部を移動させる駆動機構を更に備える、氷雪除去ネット。
【請求項1】
線材により平面格子状に形成された本体部を備え、
前記線材は、第1直径を有する繊維である主線と、前記主線の周囲により合わされる第2直径を有する副線と、を有し、
前記第1直径は前記第2直径よりも大きい、氷雪除去ネット。
【請求項2】
前記本体部は、窓および屋根の少なくとも一つの表面上に接触するように敷設され、
前記本体部が、該表面上をスライドされることで、前記線材および該線材の格子によって形成される開口部の周囲に付着する氷雪を除去する、請求項1記載の氷雪除去ネット。
【請求項3】
前記線材は、前記主線と前記副線とのより合わせで生じる凹部に、敷設されている窓および屋根の少なくとも一方に生じる水分を吸収して、前記凹部に氷雪を付着させる、請求項1又は2記載の氷雪除去ネット。
【請求項4】
前記主線および前記副線は、ラッセル織りにより撚り合わされる、請求項1から3のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項5】
前記線材の断面は、前記第1直径の第1略円形と、前記第1略円形の外周に位置する前記第2直径を有する複数の第2略円形と、が組み合わされた形状を有する、請求項1から4のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項6】
前記主線の直径は0.5mm以上6mm以下であり、前記開口部の幅は、1mm以上50mm以下である、請求項2から5のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項7】
前記本体部は、略方形、略長方形および略多角形の少なくとも一つを有し、敷設される窓および屋根の形状および大きさに対応する形状および大きさを有する、請求項1から6のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項8】
前記本体部は、複数の角部の少なくとも一部に吸着盤を備える、請求項1から7のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項9】
前記吸着盤は、該吸着盤の押し当ておよび引き抜きを行うフックを有する、請求項8記載の氷雪除去ネット。
【請求項10】
前記本体部は、一方の端部の第1バンドおよび他方の端部の第2バンドを備える、請求項1から9のいずれか記載の氷雪除去ネット。
【請求項11】
前記第1バンドは、前記第2バンドよりも短い、請求項10記載の氷雪除去ネット。
【請求項12】
前記第1バンドおよび前記第2バンドの少なくとも一方は、留め具を有する、請求項10又は11記載の氷雪除去ネット。
【請求項13】
前記本体部を移動させる駆動機構を更に備える、氷雪除去ネット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−192750(P2012−192750A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55984(P2011−55984)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(311003271)エコネットジャパン株式会社 (1)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(311003271)エコネットジャパン株式会社 (1)
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