説明

汚染土壌の埋め戻し方法

【課題】汚染物質の拡散を防止することができる汚染土壌の埋め戻し方法を提供する。
【解決手段】汚染土壌を掘削し、汚染物質の溶出防止剤を混合した後、掘削穴2の深部にこの混合物を供給し、その後、該穴2の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。汚染土壌を掘削し、掘削穴の底部に汚染物質の溶出防止剤層4を形成した後、汚染土壌を掘削穴の深部に供給し、その後、該穴2の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌を埋め戻す方法に係り、特にセシウム等によって汚染された表土を深部に埋め戻す場合に好適な汚染土壌の封じ込め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場等の廃棄物を含む汚染土壌が存在する地盤では、地盤面を例えば公園やその他の施設として有効利用しようとする場合、汚染土壌による影響が生じないようにする対策として、例えば汚染土壌を撤去して、汚染されていない土砂と入れ替える置換工法や、汚染土壌の周囲を遮水性を有する地盤や部材によって囲んで封印することにより、汚染物質が外部に漏出しないようにする封じ込め工法が行われることがある。
【0003】
封じ込め工法では、汚染土壌の底部を例えば遮水シートによって覆うと共に、汚染土壌の側部を例えば不透水層まで打ち込んだ鋼矢板による鉛直遮水壁や遮水シートによって覆い、さらに汚染土壌の上部を遮水シートによって覆った後、上部の遮水シートの上方に保護土層を形成する(特許文献1)。
【0004】
放射性物質で汚染された土壌を掘削して処理する方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−69044
【特許文献2】特開平6−51096
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の封じ込め方法では、底部の遮水シートに破損が生じた場合、この破損を検出できないだけでなく、破損箇所を通って汚染物質が土壌深部にまで拡散したり、地下水汚染をひき起こしたりするおそれがある。本発明は、汚染物質の拡散を防止することができる汚染土壌の埋め戻し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の汚染土壌の埋め戻し方法は、汚染土壌を掘削し、汚染物質の溶出防止剤を混合した後、掘削穴の深部にこの混合物を供給し、その後、該穴の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とするものである。この場合、穴の底部に汚染物質の溶出防止剤層を形成した後、前記混合物を穴内に供給してもよい。
【0008】
第2発明の汚染土壌の埋め戻し方法は、汚染土壌を掘削し、掘削穴の底部に汚染物質の溶出防止剤層を形成した後、汚染土壌を掘削穴の深部に供給し、その後、該穴の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とするものである。
【0009】
第1及び第2発明において、溶出防止剤としては、ゼオライト、イライト、雲母及び紺青の少なくとも1種が好適である。
【0010】
溶出防止剤として紺青を用いる場合、前記穴の底部に鉄粉含有層を形成したり、前記混合物に鉄粉を含有させることが望ましい。
【0011】
第1及び第2発明において、溶出防止剤層は周辺地盤と透水性が同等以上であることが必要であり、粒状の溶出防止剤を充填したり、透水性シート状の溶出防止剤を敷設することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の汚染土壌の埋め戻し方法では、汚染土壌を掘削穴の深部に供給するに際し、この汚染土壌に汚染物質の溶出防止剤を混合するか、又は汚染土壌の下側に溶出防止剤層を形成するので、穴深部に埋設された汚染土壌からの汚染物質の拡散や地下水汚染が防止される。
【0013】
溶出防止剤としては、ゼオライト、イライト、雲母又は紺青が好適である。溶出防止剤として紺青を用いる場合、鉄粉を混合物に含有させるか、又は混合物の下側に鉄粉含有層を形成し、紺青から溶出するシアンを捕捉することが好ましい。
【0014】
本発明の汚染土壌の封じ込め方法は、特に汚染物質がセシウムである場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態に係る汚染土壌の埋め戻し方法を説明する断面図である。
【図2】別の実施の形態に係る汚染土壌の埋め戻し方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、土壌が重金属特にセシウムで汚染されている場合に適用するのに好適であり、特に放射性セシウムが汚染源から飛散してきた場合のように表面部に集中して存在する場合に適用するのに好適である。ただし、セシウム以外の重金属、例えば、鉛、カドミウム、水銀等によって汚染された土壌に対しても本発明を適用することができる。
【0017】
以下、本発明について図面を参照してさらに詳細に説明する。図1(a)〜(d)は本発明の一例を説明する断面図である。図1(a)のように地盤1の一部の表土が汚染物質で汚染されて汚染土壌Pとなっている。そこで、図1(b)の通り、この汚染土壌Pと、その近傍の土壌を掘削し、次いでそれよりも深部も掘削し、穴2を掘削する。なお、汚染土壌Pは地下水面より上部に埋め戻すことが望ましい。地下水中に埋めると汚染物質が地下水に溶出するリスクが高くなる。また、清浄土壌Cを汚染土壌Pとは別に野積するのが好ましい。また、この掘削に際し、散水して発塵を防止することが好ましい。
【0018】
次いで、図1(c)の通り、汚染土壌Pと汚染物質溶出防止剤Aとを混合機3によって混合し、溶出防止剤含有汚染土壌P’とし、穴2の深部に埋め戻す。次いで、図1(d)の通り、穴2の浅部すなわち溶出防止剤含有汚染土壌P’の上側に清浄土壌Cを埋め戻す。
【0019】
このように汚染土壌を穴2の深部に埋めることにより、汚染土壌からの地表への影響(例えば、放射線や重金属の地表への拡散)が防止される。また、この実施の形態では、土壌P’が溶出防止剤を含有しているので、土壌P’からの汚染物質の溶出が防止され、汚染物質の周囲への拡散や地下水の汚染が防止される。
【0020】
本発明では、図2のように、穴2へ土壌P’を埋め戻す前に、穴2の底部に汚染物質溶出防止剤含有層4を形成しておいてもよい。この汚染物質溶出防止剤含有層4としては、周辺地盤と同等以上の透水性を有する必要があり、溶出防止剤は粒状であること、または透水性のシート状であることが望ましい。溶出防止剤が細かい粉状である場合は、清浄土壌Cに汚染物質溶出防止剤を混合したものが好適である。溶出防止剤含有層の透水性が低い場合は汚染物質が同層を迂回してしまい効果を発揮しない。この汚染物質溶出防止剤含有層4の上に汚染土壌P又はP’を埋め戻し、さらにその上に清浄土壌Cを埋め戻す。このように汚染物質溶出防止剤含有層4を設けることにより、汚染土壌P又はP’から下方に汚染物質が拡散することが防止される。この汚染物質溶出防止剤含有層4を形成した場合には、埋め戻す汚染土壌は汚染物質溶出防止剤を混合した汚染物質溶出防止剤含有汚染土壌P’であってもよく、汚染物質溶出防止剤を混合しない汚染土壌Pであってもよい。
【0021】
前述の通り、本発明は、汚染物質がセシウムである場合に適用するのに好適である。この場合の溶出防止剤としては、ゼオライト、イライト、雲母及び紺青の少なくとも1種が好適である。雲母としては白雲母、黒雲母、金雲母などの各種雲母を用いることができる。溶出防止剤は、予め平均粒径0.05〜0.2mm以下程度に粉砕しておくのが好ましい。汚染土壌1mに対する各溶出防止剤の好ましい混合量は次の通りである。
【0022】
ゼオライト:20〜100kg/t
イライト:20〜100kg/t
雲母:20〜100kg/t
紺青:20〜100kg/t
【0023】
溶出防止の観点では、溶出防止剤は多いほどよいが、多すぎると余剰の残土が多く発生する。また少なすぎると溶出防止効果が十分でなくなる。また、混合機の混合性能を十分に発揮できない。
【0024】
汚染物質溶出防止剤含有層4を形成する場合の清浄土壌への溶出防止剤の好ましい混合量も上記と同様である。
【0025】
溶出防止剤として紺青を用いる場合、紺青からのシアン溶出を防止するために、鉄粉を汚染土壌P’や汚染物質溶出防止剤含有層4に含有させることが好ましい。鉄粉の平均粒径は0.1〜0.5mm以下程度が好ましい。鉄粉の混合量は、紺青の重量に対し1〜2倍程度が好適である。
【0026】
図1又は図2のようにして汚染土壌の埋め戻しを行う場合、次のようにして行ってもよい。
(イ) 汚染土壌P’は、掘り出された場所とは別の場所に掘削された穴に埋め戻されてもよい。
(ロ) 穴2の周囲に鋼矢板などによって遮水壁を構築してもよい。
(ハ) 穴2の底に遮水シートなどによって遮水層を形成してもよい。場合によっては、埋め戻した汚染土壌層と清浄土壌層との間に遮水層や放射線を遮断する効果のあるシートや板等を形成してもよい。ただし、遮水層を形成すると、地表の水捌け性が低下することがあるので、地表の用途に応じて遮水層を設けることが好ましい。
(ニ) 将来、開発工事に際して汚染土壌P又はP’が持ち出されたり撹拌されたりすることを防止するために、汚染土壌P又はP’に色素を混合すること等によって着色し、汚染土壌であることが分かるようにしてもよい。その意味で紺青は青色を呈するので有効である。
(ホ) 汚染土壌P又はP’の層の上に砂利やコンクリート瓦礫を敷き詰め、過去において埋め戻し処理が行われた地域であることが分かるようにしてもよい。
【実施例】
【0027】
以下、土壌からのセシウム溶出試験について説明する。
【0028】
[実施例1]
1) 模擬汚染土壌の調製
以下の試験では、セシウムで汚染された土壌を模擬した模擬汚染土壌を調製して用いた。すなわち、含水率3wt%の砂質土壌1,500gをポリエチレン袋に入れ、100mg−Cs/Lの塩化セシウム(CsCl)水溶液150mLを添加し、揉み解しながら混合した。混合後、1晩以上養生し、模擬汚染土壌とした。
2) 不溶化試験
模擬汚染土壌に表1の溶出防止剤を混合した。次いで、環境省告示第18号の試験にて溶出試験を行い、溶出量を測定した。即ち、風乾後、10倍重量の水で6時間振盪後、上澄み液を0.45μmメンブレンフィルターで濾過し、濾液中のCs濃度をICP−MS法により測定した。結果を表1に示す。
【0029】
[実施例2]
実施例1において、塩化セシウム水溶液の濃度を1,000mg−Cs/Lとしたこと以外は同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0030】
[実施例3]
実施例1において、塩化セシウム水溶液の濃度を10,000mg−Cs/Lとしたこと以外は同様の方法で試験を実施した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の通り、溶出防止剤を土壌に混合することにより、セシウムの溶出が防止されることが認められる。
【符号の説明】
【0033】
1 地盤
2 穴
3 混合機
4 汚染物質溶出防止剤含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染土壌を掘削し、汚染物質の溶出防止剤を混合した後、掘削穴の深部にこの混合物を供給し、その後、該穴の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項2】
請求項1において、前記穴の底部に汚染物質の溶出防止剤層を形成した後、前記混合物を穴内に供給することを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項3】
汚染土壌を掘削し、掘削穴の底部に汚染物質の溶出防止剤層を形成した後、汚染土壌を掘削穴の深部に供給し、その後、該穴の浅部を清浄土壌で埋め戻すことを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれか1項において、溶出防止剤層が粒状の溶出防止剤又は透水性のシート状溶出防止剤であることを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記溶出防止剤は、ゼオライト、イライト、雲母及び紺青の少なくとも1種であることを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記溶出防止剤は紺青であり、前記穴の底部に鉄粉含有層を形成することを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記溶出防止剤は紺青であり、前記混合物に鉄粉を含有させることを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記汚染物質はセシウムであることを特徴とする汚染土壌の埋め戻し方法。

【図1】
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【図2】
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