説明

汚染物質吸着マットおよび掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法

【課題】余分な枚数の敷設が必要とされず、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少の減少を防止できる汚染物質吸着マットおよび掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法を提供する
【解決手段】汚染物質を吸着する吸着剤を含む吸着資材層11と、吸着資材層11の上方に配置される上部シート12Aと、吸着資材層11の下方に配置される下部シート12Bと、を備え、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bが縫製されることで、全体に渡って厚みの不均一性を抑制し、一定以上の厚さを維持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質を吸着する汚染物質吸着マットおよび掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法に関する。
【0002】
トンネル、ダム、造成などの土木工事を行う現場においては、地山の掘削によって掘り起こし残土として例えば掘削ずりが発生する。掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質が含まれることがあるため、汚染物質を含む掘削ずりを用いて盛土や埋め立て等を行う場合にはこれらの汚染物質が周辺環境中に拡散することを防止するための対策が求められる。
【0003】
汚染物質を含む建設残土への対策の一つとして吸着層工法が知られている。吸着層工法は、汚染物質を吸着して捕捉する薬剤(以下、「吸着剤」という)と汚染物質を含まない健全土とを混ぜた吸着層を汚染土層の下に敷設し、この吸着層で汚染土層から浸出する汚染物質を捕捉する工法である。吸着層工法では、吸着層を構築する際に重機が必要であるため作業性が悪く、また、吸着層に吸着剤を均一に分散させることが難しいという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、近年、予め工場内において汚染物質を吸着する汚染物質吸着マットを作製し、この汚染物質吸着マットを吸着層に代えて使用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、複数の袋状部と、該袋状部内に充填されている汚染物質捕捉材と、該複数の袋状部を一体に纏めている纏め手段とを備え、該汚染物質捕捉材が炭素質の廃棄物を蒸し焼きにして形成した炭を主成分とする汚染物質捕捉マット(汚染物質吸着マット)が開示されている。このマットでは、長尺状の袋部材に汚染物質捕捉材を充填することにより、袋部材の内部で汚染物質捕捉材の粗密が発生することを抑制し、その形状を保持している。また、長尺状の袋部材を複数並設することにより、汚染物質吸着マット全体の形状を保持するようにしている。このため、汚染物質吸着マットの断面形状は、袋部材が設けられている部分が突出し、袋部材同士の間が凹んだ凹凸形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−028633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、均一に汚染物質吸着マットの汚染物質吸着性能を得るためには、吸着剤の集積厚みを均一にする必要がある。しかし、上記特許文献1に開示された汚染物質吸着マットでは、断面凹凸形状が形成されている。そのため、この汚染物質吸着マットを用いて、吸着材の集積厚みを均一にするためには、複数枚の汚染物質吸着マットを積層して敷設する必要がある。また、この汚染物質吸着マットの積層枚数が奇数の場合には、場所によって吸着剤の集積厚みが異なってしまう。そのため、吸着性能を均一にするためには、汚染物質吸着マットは偶数枚積層する必要がある。従って、特許文献1に記載の汚染物質吸着マットでは、吸着性能を均一にするために汚染物質の吸着に必要とされる枚数以上の汚染物質吸着マットを敷設しなければならない場合がある。
【0007】
ところで、盛土に対する法令上の高さ制限や埋め立て領域の制限から、掘削ずりを敷設できる容量には制約がある。一方、特許文献1のように吸着剤の偏りを防止するための凹凸を有する汚染物質吸着マットでは、余分な枚数の汚染物質吸着マットを敷設する必要があるため、掘削ずりを敷設するための容量が汚染物質吸着マットによって占有されることで汚染物質を含む掘削ずりの載置量が減少してしまう場合がある。その結果、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力が減少してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、余分な枚数の敷設が必要とされず、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少を防止できる汚染物質吸着マットおよび掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る汚染物質吸着マットは、汚染物質を吸着する吸着剤を含む吸着資材層と、吸着資材層の上方に配置される第1シートと、吸着資材層の下方に配置される第2シートと、を備え、第1シート、吸着資材層、及び第2シートが縫製されることで、全体に渡って厚みの不均一性を抑制し、一定以上の厚さを維持している。
【0010】
本発明に係る汚染物質吸着マットは、第1シート、吸着資材層、及び第2シートが縫製されることで、全体に渡って厚みの不均一性を抑制し、一定以上の厚さを維持している。ここで、第1シート、吸着資材層、及び第2シートの縫製が、第1シートと第2シートとの間の部分的な厚さの変化を抑制する押さえの役割を果たす。そのため、第1シート及び第2シートに挟まれて配置される吸着資材層の厚みが保たれ、吸着資材層に含まれる吸着剤の偏りが防止される。このような汚染物質吸着マットによれば、積層しなくても吸着性能を均一にできるため、余分な枚数の汚染物質吸着マットを敷設する必要がない。そのため、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少を防止することができる。
【0011】
本発明に係る汚染物質吸着マットでは、厚さ方向の縫糸の長さは、第1シート、吸着資材層、及び第2シートの厚さの合計であり、吸着資材層の厚さ方向の全長に渡って縫糸が立ち上がった状態で、第1シート、吸着資材層、及び第2シートが縫製されていてもよい。
【0012】
この場合、第1シート、吸着資材層、及び第2シートの厚さが、縫糸により押さえられるため、第1シートと第2シートとの間の部分的な厚さの変化が抑制され、吸着資材層が偏ることで吸着資材層に含まれる吸着剤の粗密が生じることを防止することができる。
【0013】
本発明に係る汚染物質吸着マットでは、第1シート、吸着資材層、及び第2シートは、第1シート、吸着資材層、及び第2シートの一方向に向かって等間隔に縫製されていてもよい。
【0014】
この場合、縫製が等間隔で行われるので、第1シートと第2シートとの間の部分的な厚さの変化が適切に抑制される。そのため、吸着資材層が偏ることで吸着資材層に含まれる吸着剤の粗密が生じることをより一層防止できる。
【0015】
本発明に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法は、掘り起こし残土載置領域に載置された掘り起こし残土中の汚染物質の拡散を防止するにあたり、掘り起こし残土載置領域上に、上記の汚染物質吸着マットを敷設し、汚染物質吸着マット上に、汚染物質を含む掘り起こし残土を堆積させて盛土を形成し、掘り起こし残土から排出される汚染物質を汚染物質吸着マットにおいて捕捉することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る汚染物質吸着マットおよび掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法によれば、余分な枚数の敷設が必要とされず、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法における掘り起こし残土の側断面図である。
【図2】本実施形態に係る汚染物質吸着マットの正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本実施形態に係る汚染物質吸着マットの製造工程の一部を示す図である。
【図5】複数の汚染物質吸着マットを接続して敷設した態様を示す正面図である。
【図6】複数の汚染物質吸着マットの接続箇所を示す側断面図である。
【図7】本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法における掘り起こし残土の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る汚染物質吸着マット10を用いた掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法における掘り起こし残土の側断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法では、掘り起こし残土載置領域Yの上に盛土Mを形成する。本実施形態における盛土Mは、例えばトンネルの掘削によって発生した掘削ずり(掘り起こし残土)によって形成される。この掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質(例えば、ヒ素、カドミウム、鉛、VOC等)が含まれていることがある。掘り起こし残土載置領域Yと盛土Mとの間に汚染物質吸着マット10が敷設されている。敷設される汚染物質吸着マット10の枚数は、掘削ずりに含まれると想定される汚染物質の量に応じて決まるものであり、2枚以上の複数枚であってもよいし、1枚であってもよい。
【0020】
汚染物質吸着マット10は、不織布等の繊維基材に吸着資材層11を挟み込んだ構造をなしている。汚染物質吸着マット10は巻き取り可能とされており、掘り起こし残土載置領域Yに敷設される前の段階では、巻き取られた状態とされており、汚染物質吸着マット10を掘り起こし残土載置領域Yに敷設する際には、吸着シートを巻き出しながら敷設する。以下、図2及び図3を参照して、汚染物質吸着マット10について詳細に説明する。
【0021】
図2,3に示すように、汚染物質吸着マット10は、吸着資材層11、上部シート12A(第1シート)、下部シート12B(第2シート)、及び縫糸13を備えている。吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bは、縫糸13により汚染物質吸着マット10の幅方向の全体に渡って縫製される。また、この縫製は汚染物質吸着マット10の奥行き方向に等間隔で行われる。隣接する縫糸13同士の間隔としては、吸着資材層11の厚さが著しく変化しないように、例えば5〜30cm程度の適切な間隔とすることが好ましい。また、汚染物質吸着マット10の幅方向及び奥行き方向の端部には、内部に吸着資材層11が形成されていない非吸着部14が形成される。汚染物質吸着マット10は、その厚さが全体にわたり20〜40mm程度とされている。
【0022】
吸着資材層11は、吸着剤を含む吸着資材により構成される層であり、汚染物質吸着マット10内部に浸透する水分に含まれる汚染物質を吸着するものである。ここで用いられる吸着剤としては、盛土Mに含有されていると想定される汚染物質に対応し、対応する汚染物質を吸着して不溶化するものが用いられている。吸着資材層11を構成する吸着資材としては、吸着剤と汚染物質を含まない客土とを混合したものを用いてもよいし、吸着剤のみを単体で用いてもよい。また、吸着資材層11は、単一の吸着剤を含んで構成されても良いし、複数種類の吸着剤を含んで構成されても良い。この吸着資材としては粒径5mm程度以下の粒体あるいは繊維状であることが好ましいが、一部が粉状であってもよい。また、吸着資材は、吸着資材層11の形状が保てるようにある程度の粘性を有していても良い。また、この吸着資材の比重は1未満であることが好ましく、含水率は50%程度以下であることが好ましい。吸着資材層11は、汚染物質吸着マット10の全体にわたり均一な厚さになるように形成される。
【0023】
上部シート12A及び下部シート12Bは、吸着資材層11の吸着剤が汚染物質吸着マット10の外部に漏出しないように、吸着資材層11を挟み込むように配置される。上部シート12Aは、吸着資材層11の上部に配置され、下部シート12Bは、吸着資材層11の下部に配置される。上部シート12A及び下部シート12Bとしては、不織布等の繊維基材が用いられる。
【0024】
縫糸13は、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bを縫製するために用いられる。縫糸13としては、伸張強度が20kgであり、伸張伸度が10〜15%のポリエステル糸が用いられる。ただし、縫糸13は上記のものに限られず、汚染物質吸着マット10の形状を維持するために十分な強度を有していれば良い。
【0025】
汚染物質吸着マット10の製造方法について以下に説明する。図4は、汚染物質吸着マット10の製造方法の一部を示している。図4(a)は、汚染物質吸着マット10が形成される様子を汚染物質吸着マット10の幅方向の断面から見た図であり、図4(b)は、汚染物質吸着マット10が形成される様子を汚染物質吸着マット10の奥行き方向の断面から見た図である。ここで、汚染物質吸着マット10の製造は、ホッパー21、ベルトコンベア22、高さ調整ねじ23、及び高さ調整板24を用いて行われる。
【0026】
ホッパー21から投入されてベルトコンベア22に落下した吸着資材Aは、ローラー22Aの回転により移動するベルト22Bにより搬送され、ベルトコンベア22の下方に設置される下部シート12B上に落下する。次に、吸着資材Aは、図示しないベルトにより図4(a)に示される進行方向へ移動する下部シート12Bとともに、進行方向へ搬送される。そして、高さ調整板24を通過する際に、所定の高さ以上に積み上がった吸着資材Aが払い落とされて、上面が平坦面とされた吸着資材層11が形成される。なお、高さ調整板24が設置される高さは高さ調整ねじ23により調整可能である。このため、高さ調整ねじ23により吸着資材層11の高さを調整することができる。その後、この平坦面とされた吸着資材層11の上面に上部シート12Aが載置される。
【0027】
次に、このように形成された吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bに対して縫製処理が行われる。図3に示すように、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bは、縫製され、互いに固定される。この際、縫い目のピッチや、縫糸13にかける引長力は、汚染物質吸着マット10の厚さや上部シート12A及び下部シート12Bの材質に応じて適切に調整される。なお実際には、縫糸13は、上部シート12A及び下部シート12Bに沿って縫製されるが、図3では、縫製方法の理解を容易にするために、縫糸13と上部シート12A及び下部シート12Bとに間隔を持たせて記載している。
【0028】
汚染物質吸着マット10の厚さ方向における縫糸13の長さDは、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bの合計の厚さであり、吸着資材層11の厚さ方向の全長に渡って縫糸が立ち上がった状態で、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bが縫製されている。また、この長さDは、汚染物質吸着マット10の全体に渡って均一になるように縫製されている。
【0029】
また、上部シート12A及び下部シート12Bの幅及び奥行きの長さは、吸着資材層11の幅及び奥行きの長さよりも若干長く形成されている。上部シート12A及び下部シート12Bの幅方向及び奥行き方向の端部では、上部シート12A及び下部シート12Bのみが縫製され、上部シート12A及び下部シート12Bが互いに固定されることにより非吸着部14が形成されている。
【0030】
また、掘り起こし残土載置領域Yの広さが汚染物質吸着マット10の表面の広さよりも広い場合には、複数の汚染物質吸着マット10を接続して用いることができる。図5,6を用いて汚染物質吸着マット10の接続方法を説明する。図5は、汚染物質吸着マット10A〜10Dの4枚の汚染物質吸着マット10を接続した例である。複数の汚染物質吸着マット10を接続する際には、非吸着部14を折りたたみ、隣接する汚染物質吸着マット10の吸着資材層11同士を密着させた上で、接続面に防水テープ15を貼着する。例えば、汚染物質吸着マット10A及び10Bの接続面に着目すると、図6に示すように汚染物質吸着マット10Aの非吸着部14を折りたたみ、汚染物質吸着マット10Bの非吸着部14を汚染物質吸着マット10Aの下方に敷くことで、汚染物質吸着マット10Aの吸着資材層11と汚染物質吸着マット10Bの吸着資材層11とを密着させる。そして、汚染物質吸着マット10Aと汚染物質吸着マット10Bとの接触面の上方に防水テープ15を貼着する。
【0031】
次に、図7を参照して、本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法について説明する。まず本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法では、区画された掘り起こし残土載置領域Y上に汚染物質吸着マット10を敷設する。次に、汚染物質吸着マット10の上に、トンネルなどの土木工事によって生じた掘削ずりなどの土砂を盛り上げて盛土Mを形成する。この際、図7に示すように、この掘削ずりには、自然由来または人工的な汚染物質Pが含有されているものとする。
【0032】
その後、盛土Mの周囲に、覆土Cを覆設する。覆土Cは、ベントナイト混合土やコンクリートにより構成される。盛土Mを覆土Cで覆うことにより、盛土Mに対する雨水の流入が阻止される。
【0033】
こうして掘削ずりを盛り上げて盛土Mが形成されると、時間の経過とともに、盛土Mからは掘り起こし残土載置領域Yに向けて水分Wpが流下する。この水分Wpには、盛土Mに含有される汚染物質Pが含まれている。すなわち、掘削ずりからは、水分Wpを介して汚染物質Pが排出される。この際、このまま流下した水分Wpが掘り起こし残土載置領域Yに到達すると、水分Wp中に含まれる汚染物質Pが掘り起こし残土載置領域Yの内外に浸出、流出することとなってしまう。
【0034】
この点、本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法では、掘り起こし残土載置領域Yと盛土Mとの間に、汚染物質吸着マット10を介在させている。このため、盛土Mから流下する水分Wpに含まれる汚染物質Pを汚染物質吸着マット10の吸着資材層11に吸着させて捕捉することができる。このため、汚染物質吸着マット10を通過して掘り起こし残土載置領域Yに流出する水分Wは汚染物質Pが除去されたものである。したがって、掘り起こし残土載置領域Yの内外に対する汚染物質Pの浸出、流出を防止することができる。
【0035】
本実施形態に係る汚染物質吸着マット10は、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bが縫製されることで、全体に渡って厚みの不均一性を抑制し、一定以上の厚さを維持している。ここで、第1シート、吸着資材層、及び第2シートとの縫製が、上部シート12Aと下部シート12Bとの間の部分的な厚さの変化を抑制する押さえの役割を果たす。そのため、上部シート12A及び下部シート12Bに挟まれて配置される吸着資材層11の厚みが保たれ、吸着資材層11に含まれる吸着剤の偏りが防止される。このような汚染物質吸着マット10によれば、積層しなくても吸着性能を均一にできるため、余分な枚数の汚染物質吸着マット10を敷設する必要がない。そのため、掘削ずりの載置量の減少を防止でき、その結果、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る汚染物質吸着マット10では、厚さ方向の縫糸の長さは、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bの厚さの合計であり、吸着資材層11の厚さ方向の全長に渡って縫糸が立ち上がった状態で、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bが縫製されている。この場合、縫糸13により上部シート12Aと下部シート12Bの間の部分的な厚さの変化が抑制され、吸着資材層11が偏ることで吸着資材層11に含まれる吸着剤の粗密が生じることを防止することができる。
【0037】
本実施形態に係る汚染物質吸着マット10では、上部シート12A、吸着資材層11、及び下部シート12Bは、上部シート12A、吸着資材層、及び下部シート12Bの一方向に向かって等間隔に縫製されている。縫製が等間隔で行われるので、上部シート12Aと下部シート12Bとの間の部分的な厚さの変化が適切に抑制される。そのため、吸着資材層11が偏ることで吸着資材層11に含まれる吸着剤の粗密が生じることをより一層防止できる。
【0038】
本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法は、掘り起こし残土載置領域Y上に、上記の汚染物質吸着マット10を敷設し、汚染物質吸着マット10上に、汚染物質を含む掘り起こし残土を堆積させて盛土Mを形成し、掘り起こし残土から排出される汚染物質を汚染物質吸着マットにおいて捕捉することで掘り起こし残土中の汚染物質の拡散を防止する。そのため、汚染物質拡散防止対策構造物または施設の掘削ずり受入れ能力の減少を防止することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法では、複数の上記汚染物質吸着マット10を接続し、当該接続面上に防水テープ15を貼着している。このように、複数の汚染物質吸着マット10を接続して用いることにより、掘り起こし残土載置領域Yの広さが汚染物質吸着マット10の表面の広さよりも広い場合でも、掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理を行うことができる。更に、隣接する吸着資材層11同士を密着させ、接続面に防水テープ15を貼着することにより、隙間なく吸着材が分散するように汚染物質吸着マット10を敷設することができる。このため、掘り起こし残土載置領域Yへの汚染物質の拡散を適切に防止することができる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bは、縫糸13により汚染物質吸着マット10の幅方向の全体に渡って縫製されているが、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bは、縫糸13により汚染物質吸着マット10の奥行き方向の全体に渡って縫製されてもよい。また、吸着資材層11、上部シート12A、及び下部シート12Bは、縫糸13により汚染物質吸着マット10の幅方向及び奥行き方向の全体に渡って縫製されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
10,10A,10B,10C,10D…汚染物質吸着マット
11…吸着資材層
12A…上部シート
12B…下部シート
13…縫糸
14…非吸着部
15…防水テープ
21…ホッパー
22…ベルト
22A…ローラー
23…高さ調整ねじ
24…高さ調整板
M…盛土
C…覆土
Y…掘り起こし残土載置領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を吸着する吸着剤を含む吸着資材層と、
前記吸着資材層の上方に配置される第1シートと、
前記吸着資材層の下方に配置される第2シートと、
を備え、
前記第1シート、前記吸着資材層、及び前記第2シートが縫製されることで、全体に渡って厚みの不均一性を抑制し、一定以上の厚さを維持している汚染物質吸着マット。
【請求項2】
厚さ方向の縫糸の長さは、前記第1シート、前記吸着資材層、及び前記第2シートの厚さの合計であり、
前記吸着資材層の厚さ方向の全長に渡って縫糸が立ち上がった状態で、前記第1シート、前記吸着資材層、及び前記第2シートが縫製されている
請求項1に記載の汚染物質吸着マット。
【請求項3】
前記第1シート、前記吸着資材層、及び前記第2シートは、前記第1シート、前記吸着資材層、及び前記第2シートの一方向に向かって等間隔に縫製されている
請求項1又は2に記載の汚染物質吸着マット。
【請求項4】
掘り起こし残土載置領域に載置された掘り起こし残土中の汚染物質の拡散を防止するにあたり、
前記掘り起こし残土載置領域上に、請求項1又は2に記載の汚染物質吸着マットを敷設し、
前記汚染物質吸着マット上に、汚染物質を含む前記掘り起こし残土を堆積させて盛土を形成し、前記掘り起こし残土から排出される汚染物質を前記汚染物質吸着マットにおいて捕捉することを特徴とする掘り起こし残土に含まれる汚染物質の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59724(P2013−59724A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199651(P2011−199651)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(306039164)株式会社テザック (4)
【Fターム(参考)】