説明

汚水処理設備における沈殿槽からの汚泥引き抜き装置の構造

【課題】汚水処理設備における底面が四角形状の沈殿槽と、汚泥引抜きのための吸い込み口が四角形状の集泥器を配備する沈殿槽において、沈殿槽の稜線イに沿って沈積する汚泥をも効率よく吸引・除去できる汚水処理設備における沈殿槽からの汚泥引き抜き装置を提供する。
【解決手段】汚水処理設備の沈殿槽において、四角錘形の集泥器の下部各辺が沈殿槽底面の各辺と45度の角度に配備することによって、沈殿槽の稜線に沿って沈積する汚泥をも極めて効率よく吸引・除去でき、スカムの発生を効率よく押さえる。従来、沈殿槽の稜線に沿って汚泥が堆積して、しばしばスカムが発生し、これが沈殿槽全体に蔓延、ついには、気泡を抱き込んで沈殿槽上部にまで浮上して、処理水と共に越流するトラブルをほぼ完全に防止することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚水処理設備における沈殿槽からの汚泥引き抜き装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な排水の活性汚泥法による比較的小型の汚水処理設備は、図1に示すフローシートの如き単位装置(各種機器)を配した設備を有している。前処理された流入水は、主たる生物処理に関わる曝気槽6において、沈澱槽7より返送される返送汚泥と、好気状態のもとで混合撹拌され、含有される有機質の大半は活性汚泥に吸着及び酸化分解、資化、脱窒された後、沈澱槽7に移流する。沈澱槽7では処理水と汚泥に固液分離され、処理水は消毒槽8を経て河川などに放流される。通常、沈殿槽7の底部に堆積した汚泥は、エアリフトポンプ、動力ポンプ、移動エアーリフト、チエーンフライトなどの汚泥引き抜き装置により引き抜き、一部は、返送汚泥として曝気槽6に戻され、他は汚泥濃縮槽に貯留され、脱水、乾燥後肥料等に再利用されたり、燃焼、廃棄される。
【0003】
一般的に用いられている小型の汚水処理設備の沈澱槽7の構造を図2、3に示す。沈澱槽7は正方形の形状で下部は角錐ホッパー構造を有している。即ち、底辺が正方形で、四面とも底辺より60度以上の角度で上方に傾斜する角錐状の構造となる。
汚水処理運転中、曝気槽6より流入する槽内懸濁水は移流管を通じて図示しないセンターウェルに導かれ、下方に流れて上澄み水と汚泥に固液分離される。上澄み水は越流堰19を経て消毒槽8へ流下する。沈殿槽7の底部に集積した汚泥は、パイプ(図3ではエアリフト管)を通してエアリフトポンプ又は動力ポンプで吸引し、計量、一部は曝気槽6に返送汚泥として戻され、余剰となる汚泥は濃縮、貯留後系外に搬出され、脱水・乾燥して廃棄・燃焼等に付される。汚泥引き抜きの効率を高めるために、多くの場合、パイプの先端に汚泥引き抜き装置11であるベルマウスと呼ばれる吸い込み金具が付設されている。
【0004】
ベルマウスの形状は、吸い込み抵抗を出来るだけ少なくして効率よく堆積汚泥を吸引出来るように、底面に向かって末広がりの角錐状、円錐状(ラッパの口の形状)をしたものが多く用いられ、その底面、即ち汚泥吸い込み口は沈澱槽底面に比し一般に小さい。角錐状のベルマウスの場合、沈殿槽7の四角形の底面に四角形のベルマウスの下部が沈澱槽底面と相似形をなすように配備されている。
【0005】
このような形状を有するベルマウスを配備した沈殿槽7を運転中、主に沈殿槽の角錐部稜線に沿って沈澱した汚泥21はベルマウスで充分に吸い取ることが出来ず堆積する。汚泥は長時間停滞するとガス(気泡)が発生し、凝集力を失った汚泥は浮上してスカム22となり、時には水面全体を覆い越流堰19から流出して処理水の悪化を招き、河川に流れ込む重大なトラブルにまで発展する。特に、ベルマウスを配備しない場合は、スカムの発生によるトラブルは一層著しい。
この問題を解決するために、沈殿槽7の底辺を出来るだけ小さく、ホッパー角を急角度にとる方法があるが、この場合、沈澱槽7の角錐部を長くする必要があり、施工費も高くなる。一方、沈殿槽7の底辺を出来るだけ大きくとる方法があるが、広い沈澱槽底部からベルマウスを経て汚泥を万遍なく吸引することは汚泥の移動する流速から最良とは言えない。逆に、ホッパー角を鈍角度にとる方法があるが、集積した汚泥が側面や稜線に残留し易く、スカムが発生して処理水の悪化を招きやすい。現状では効率よく沈澱槽に集積した汚泥を吸引、排出する根本的な解決策は未だ見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汚水処理設備における底面が四角形状の沈殿槽と、汚泥引抜きのための吸い込み口が四角形状の集泥器を配備する沈殿槽において、沈殿槽の稜線13に沿って沈積する汚泥をも効率よく吸引・除去できる汚水処理設備における沈殿槽からの汚泥引き抜き装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はこの問題を解決する方策を鋭意検討の結果、図4及び図5に示すように、沈殿槽7において、汚泥吸引用パイプ12の先端に角錐状の集泥器11(ベルマウス)の下部111の各辺が沈殿槽底面14の対角線に直角となるように、即ち、沈殿槽底面が正方形である場合、沈殿槽底面の各辺と45度の角度に配備することによって、沈殿槽の稜線に沿って沈積する汚泥を21をも極めて効率よく吸引・除去できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
従来、ホッパー構造の沈殿槽稜線部に汚泥が堆積、腐敗し、ガス(気泡)を巻き込んで沈澱槽水面に浮上し、水面全体に蔓延して処理水の悪化を招いていたが、汚水処理設備において、本発明による沈殿槽からの汚泥引き抜き装置の構造をとることによって、沈澱した汚泥は余すことなく吸引除去されようになり、処理水と共にスカムが越流するトラブルをほぼ完全に防止することが出来る。併せて、点検保守時のスカム除去作業が低減できる。
本発明の汚泥引き抜き装置の構造をとることによって、沈殿槽の底部面積を小さくし、下部のホッパー角を立てる、即ち、角錐の稜線部を底面に対して60度を越えて急角度に立てる場合に比べて、沈殿槽の底部面積を広く取ることが可能となり、同時にシンダーコンクリート25の打設容量を低減出来、或いは鋼材を用いて加工する場合、鋼材料損失が少なくなる副次的経済効果も大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するに当たっては、汚水処理設備において、沈殿槽7の底面が正方形である場合、集泥器の下部周辺が沈殿槽底面の対角線と直角となるよう配備し、集泥器下部から沈澱槽底面までの間隔は沈殿槽底面及び集泥器の大きさにもよるが、通常1cmから20cm、小型の汎用のもので1cmから10cmの間隔で適度に配備する。従来沈殿槽の稜線部に沿って堆積した汚泥を充分に引き抜くことが困難であったところ、本発明によって、驚くべきことに、稜線部に堆積した汚泥の沈殿槽底部方向への流れが加速され、万遍なく汚泥が集泥器によって吸引、除去される。このため、スカムの発生も大幅に抑制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一般の活性汚泥による汚水処理設備のフローシートである。
【図2】一般的な汚水処理設備における沈殿槽の平面図である。
【図3】一般的な汚水処理設備における沈殿槽の横断面を示す図である。
【図4】本発明の沈澱槽の縦断面図である。
【図5】本発明の沈殿槽と集泥器の配備を示す沈殿槽の平面図である。
【符号の説明】
【0011】
6 曝気槽
7 沈殿槽
8 消毒槽
11 集泥器
111 集泥器の下面
12 エアリフトパイプ
13 沈殿槽の下部稜線
14 沈殿槽の底面辺
19 越流堰
21 汚泥
22 スカム
25 シンダーコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面が正方形である沈殿槽の下部に沈殿した汚泥を吸引して引抜きをする装置において、四角錐形の集泥器を、沈殿槽底面の各辺と45度の角度を以って中吊りに配してなる汚水処理設備における沈殿槽からの汚泥引き抜き装置の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−283177(P2007−283177A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111205(P2006−111205)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(306020070)有限会社志賀プラントサービス (1)
【出願人】(395000555)
【Fターム(参考)】