説明

汚泥かき寄せ装置

【課題】小さな動力で汚泥のかき寄せを可能とする汚泥かき寄せ装置を提供すること、汚泥かき寄せ時の汚泥の舞い上がりを抑えることが可能な汚泥かき寄せ装置を提供することにある。
【解決手段】汚泥ピット3を有する矩形沈澱池1に設置される汚泥かき寄せ装置10において、汚泥を汚泥ピット3へ案内する多数のスクレーパ27を取り付け、矩形沈澱池1の長手方向に配置されるかき寄せフレーム20と、矩形沈澱池1に支持され、かき寄せフレーム20の一側部に取り付けられてかき寄せフレーム20を矩形沈澱池1の長手方向に往復動させる駆動装置80と、かき寄せフレーム20を移動自在に垂下し、かき寄せフレーム20の往き時50Aにスクレーパ27を汚泥沈澱池1の床面2上に沿って案内しかき寄せフレーム20の復り時50Bにスクレーパ27を往き時50Aの高さより高い位置で案内するガイド装置50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水処理における矩形沈澱池用の汚泥かき寄せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、最初沈殿池や最終沈殿池など下水処理における汚泥ピットを備える矩形沈澱池用の汚泥かき寄せ装置は、古くはチェーンフライト式を主として使用してきた。
しかし、チェーンフライト式は、価格が高く、消耗部品が多いため、補修費用が高くなる問題があった。
【0003】
そこで、近年は、レシプロ式、ピンラック式、カスケード式などの往復動の汚泥かき寄せ装置が、低価格で消耗部品が少なく補修費が安価などの利点を有するため、シェアを伸ばしている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3888751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レシプロ式、ピンラック式、カスケード式などの往復動の汚泥かき寄せ装置に分類される各装置は、それぞれ以下のような問題点を有している。
レシプロ式汚泥かき寄せ装置は、多数のくさび形スクレーパを池底レール上に沿ってスライド往復するように構成されている。スクレーパの池底に垂直に近い掻き取り面を動かす際も速度が分速1.5mと速いが、戻り動作の際はスクレーパの池底に鋭角な面を持つくさび面上に汚泥を掬ってその位置に落とすため戻り速度が分速4.5mと非常に速い。戻り時にくさびで掬う動作と速い掻き取り/戻り動作をスクレーパにさせるため、せっかく沈降した汚泥を巻き上げてしまう問題点が最大の欠点である。
【0006】
ピンラック式汚泥かき寄せ装置は、沈殿池上面の躯体上に設置した楕円軌道上を回転する回転体から単純リンクを垂下して、多数のくさび形スクレーパを取り付けたビームに揺動自在に連結し、池底の汚泥ピットから遠い辺を支点にビームの一辺を上下揺動しながら往復するように構成されている。戻り速度を分速1.5mと掻き取り速度の3倍程度で戻すので、駆動装置の制御が複雑であり、戻り時にくさびで掬う動作および速い戻り動作をスクレーパにさせるため、せっかく沈降した汚泥を巻き上げてしまう問題点がある。
【0007】
カスケード式汚泥かき寄せ装置は、スクレーパを下端に備える多数のフライトをビームに軸支し、ビーム自体を池底に平行に往復動させ、往復動を正逆回転をリンク変換する駆動装置からその駆動方向をさらにリンクでフライトに伝え、掻き取り動作時はフライトを池底に略垂直に当接させ、戻り動作時はフライトを池底に略水平にして動作させるように構成されている。フライト部のリンクやビーム案内のローラなど摩耗部品や可動部品が多く消耗部品が実は多いという問題がある。また、戻り速度を掻き取り速度より遅くする動作のため、制御が複雑であるという問題も保有する。
【0008】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、小さな動力で汚泥のかき寄せを可能とする汚泥かき寄せ装置を提供することにある。
本発明の別の目的は、汚泥かき寄せ時の汚泥の舞い上がりを防止することが可能な汚泥かき寄せ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、汚泥ピットを有する矩形沈澱池に設置される汚泥かき寄せ装置において、汚泥を汚泥ピットへ案内する多数のスクレーパを取り付け、矩形沈澱池の長手方向に配置されるかき寄せフレームと、矩形沈澱池に支持され、かき寄せフレームの一側部に取り付けられてかき寄せフレームを矩形沈澱池の長手方向に往復動させる駆動装置と、かき寄せフレームを移動自在に垂下し、かき寄せフレームの往き時にスクレーパを汚泥沈澱池の床面上に沿って案内しかき寄せフレームの復り時にスクレーパを往き時の高さより高い位置で案内するガイド装置とを有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の汚泥かき寄せ装置において、かき寄せフレームは、1つの上弦材と、2つの下弦材と、上弦材と下弦材との間及び下弦材間を接続する複数の斜材とで構成される立体トラス構造を為し、多数のスクレーパを下弦材に取り付けていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の汚泥かき寄せ装置において、かき寄せフレームは、ガイド装置によって案内されるローラを備えた垂下部材を介してガイド装置に移動自在に垂下されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、かき寄せフレームは、長手方向にフロートを備えていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4記載の汚泥かき寄せ装置において、垂下部材は、かき寄せフレームの上弦材に取り付ける連結部材と、連結部材の頂部から連結部材と直交する方向に突出するローラ取付部材と、ローラ取付部材に取り付けられるローラとを有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の汚泥かき寄せ装置において、ガイド装置は、両端部に備えられ、スクレーパを矩形沈澱池の床面上に沿って移動する高さにローラを保持するローラ位置決め部と、ローラ位置決め部の床面間を結ぶ直線状の床部材と、ローラ位置決め部の上面間を結ぶ略台形状の上面部材と、床部材と上面部材との間の上面部材の上底と対向する領域に上底と平行に配置される棚部材と、棚部材の一側からかき寄せフレームの後端部側に向かって棚部材の一側に軸支され延びる、床部材上をローラが移動できるように上面部材側へ跳ね上げられ、かき寄せフレームの復り時にローラを介して床部材上に押し下げられ、ローラの踏み面を形成する第一のフラップ部材と、棚部材の他側からかき寄せフレームの先端部側に向かって棚部材の他側に軸支され延びる、床部材上にローラの移動に伴って上面部材側へ跳ね上げられ、ローラの通過後に床部材上に押し下げられ、かき寄せフレームの復り時にローラの踏み面を形成する第二のフラップ部材とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、スクレーパは、かき寄せフレームの下面に錘設されていることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、かき寄せフレームは、振れ防止車輪を備えていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、かき寄せフレームは、スカムかき寄せブレードを上部に備え、かき寄せフレームの復り時にスカムかき寄せブレードを水面上に突出する位置に固定するスカムかき寄せ部材を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至請求項9の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、駆動装置は、矩形沈澱池に支持されるモータと、モータの回転軸に取り付けられるクランクと、クランクに取り付けられる連結棒と、矩形沈澱池に支点部を枢着し、連結棒に力点部を枢着し、かき寄せフレームの一側部に作用点部を枢着してなる三節リンクとを有することを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項6記載の汚泥かき寄せ装置において、第一のフラップ部材を軸支する軸部は、第一のフラップ部材を常時上面部材側へ跳ね上げられるように錘を有し、第二のフラップ部材を軸支する軸部は、第二のフラップ部材を常時上面部材側へ跳ね上げられるように錘を有することを特徴とする。
【0015】
請求項12に係る発明は、請求項5記載の汚泥かき寄せ装置において、ガイド装置は、両端部に備えられ、スクレーパを矩形沈澱池の床面上に沿って移動する高さにローラを保持するローラ位置決め部と、ローラ位置決め部の床面間を結ぶ直線状の床部材と、ローラ位置決め部の上面間を結ぶ略台形状の上面部材と、床部材と上面部材との間の上面部材の上底と対向する領域に回動自在に軸支される可動ガイド部材とを備え、可動ガイド部材は、床部材と上面部材との間の上面部材の上底と対向する領域に回動自在に軸支される棚部と、棚部の一側からかき寄せフレームの後端部側に向かって延びる、床部材上をローラが移動できるように上面部材側へ跳ね上げられ、かき寄せフレームの復り時にローラを介して床部材上に押し下げられ、ローラの踏み面を形成する第一フラップ部と、棚部の他側からかき寄せフレームの先端部側に向かって延びる、床部材上にローラの移動に伴って上面部材側へ跳ね上げられ、ローラの通過後に床部材上に押し下げられ、かき寄せフレームの復り時にローラの踏み面を形成する第二フラップ部とを有することを特徴とする。
【0016】
請求項13に係る発明は、請求項12記載の汚泥かき寄せ装置において、可動ガイド部材は、棚部を軸支する軸に、棚部の他側からかき寄せフレームの先端部側に向かって延びる錘付きの軸部を取り付けていることを特徴とする。
請求項14に係る発明は、請求項13記載の汚泥かき寄せ装置において、錘付きの軸部は、床部材との間に配置される引っ張りバネを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、かき寄せ動作及び戻り動作として多数のスクレーパを備えたかき寄せフレームを往復動させるのに際し、レールとシューなど、摺動して案内されるような摩擦係数が高く動作に大動力が必要で、摩耗も激しい案内部材を用いず、かき寄せフレームを軸支するローラによって往復動の案内を行うので、小さな動力で汚泥の汚泥ピットへのかき寄せを可能とする汚泥かき寄せ装置を提供することができる。
【0018】
本発明によれば、戻り動作時にかき寄せフレーム全体を持ち上げてスクレーパを沈降汚泥からレベル的に回避させるため、戻り速度を速くしてスクレーパを汚泥層に潜り込ませる必要がなく、汚泥かき寄せ動作の後の戻り時に汚泥の舞い上がりを抑えることが可能な汚泥かき寄せ装置を提供することができる。
【0019】
本発明によれば、駆動装置の中の回転駆動装置を一方向に定速で動作させればよいので、複雑な制御を必要としない安価でメンテナンスフリーである汚泥かき寄せ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の汚泥かき寄せフレームの往き時の側面形状を示す図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の汚泥かき寄せフレームの復り時の側面形状を示す図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の平面形状を示す図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の下面側形状を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の縦断面形状を示す図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の振れ防止車輪の縦断面形状を示す図である。
【図7】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のスカムかき寄せ部材の縦断面形状を示す図である。
【図8】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のスクレーパの側面形状を示す図である。
【図9】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のスクレーパの取り付け構造を示す図である。
【図10】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のスカムかき寄せ部材の側面形状を示す図である。
【図11】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のスカムかき寄せ部材の縦断面形状を示す図である。
【図12】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置の側面形状を示す図である。
【図13】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置の平面形状を示す図である。
【図14】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置の正面形状を示す図である。
【図15】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置の正面形状を示す図である。
【図16】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の駆動装置の引っ張り動作を示す図である。
【図17】本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置の駆動装置の押し出し動作を示す図である。
【図18】本発明の第二実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置を示す図である。
【図19】本発明の第三実施形態に係る汚泥かき寄せ装置のガイド装置の平面形状を示す図である。
【図20】図19のガイド装置の側面形状を示す図である。
【図21】図19のガイド装置の可動ガイド部材の錘の移動を示すA矢視図である。
【図22】図19のガイド装置の正面形状を示す図である。
【図23】図12又は図19のガイド装置に対する垂下装置のローラ中心軌跡を示す図である。
【図24】図19のガイド装置に対する垂下装置のローラの移動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1〜図17は、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10を示す。
本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10は、汚泥ピット3を有する矩形沈澱池1に設置される。矩形沈澱池1は、パイプ式スカムスキマ7と越流トラフ9とを設けている。また、汚泥ピット3に集められた汚泥は図示しない公知の手法によって排出されるように構成されている。
【0022】
本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10は、多数のスクレーパ27と振れ防止車輪29とスカムかき寄せ部材31を取り付け、矩形沈澱池1の長手方向に配置されるかき寄せフレーム20と、ローラ45を備え、かき寄せフレーム20に取り付けられる垂下部材40と、矩形沈澱池1の長手方向に対向する壁面5,5間に支持され、ローラ45を介して垂下部材40を吊り下げるガイド装置50と、矩形沈澱池1の汚泥ピット3の上部側の縁部1aに支持され、かき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aに取り付けられてかき寄せフレーム20を矩形沈澱池1の長手方向に往復動させる駆動装置80とを備えている。
【0023】
かき寄せフレーム20は、図1乃至図7に示すように、正面及び背面が三角形で、各側面がトラス構造を構成するように、矩形沈澱池1の長手方向に配される1つの上弦材21と、上弦材21と平行して矩形沈澱池1の長手方向に配される2つの下弦材23,23と、上弦材21と各下弦材23との間及び2つの下弦材23,23間を接続する複数の斜材25とで構成される立体トラス構造を為している。そして、垂下部材40を上弦材21に取り付け、多数のスクレーパ27を2本の下弦材23,23に取り付けている。上弦材21、下弦材23及び斜材25は、何れもSUS製のパイプが用いられている。かき寄せフレーム20は、2つの下弦材23,23を上弦材21より先方側へ突出させ、上弦材21の先端部20Aは駆動装置80の三節リンク89との連結部を形成している。
【0024】
スクレーパ27は、矩形沈澱池1の池底(床面)2上の汚泥を汚泥ピット3へ案内するために、矩形沈澱池1の池底2の幅方向の長さとほぼ同等の長さを有し、かき寄せフレーム20の長手方向に等間隔で取り付けられている。そして、図8、図9に示すように、L型形状を為すSUS製の板材又はFRPで構成され、かき寄せフレーム20の下面側から矩形沈澱池1の池底2に向かって垂下される汚泥かき寄せ部27aと、かき寄せフレーム20の下面側の下弦材23,23間に取り付けられる折曲部27bとを有し、汚泥かき寄せ部27aの背面を、かき寄せフレーム20の下面側の下弦材23,23に取り付けた接続金具22に螺子止め又は溶接止めされることによって取り付けられている。折曲部27bは、汚泥かき寄せフレーム20の後端部20B側に位置するように配置される。スクレーパ27は、かき寄せ時に矩形沈澱池1の池底2に接地しないように、下端部と池底2との間に10〜20mm程度の間隔が取れるように設置されている。
【0025】
振れ防止車輪29は、図1乃至図4、図6に示すように、かき寄せフレーム20の下面側の下弦材23,23に取り付けた棒材又はパイプなどのSUS製の連結部材28の両端に、車輪接地面を池底2に平行に取り付けられている。本実施形態では、振れ防止車輪29は、かき寄せフレーム20に対し、前方側と後方側との2箇所に設けられている。振れ防止車輪29は、汚泥堆積の状態などで偏荷重が生じた場合や地震時の横揺れ時にスクレーパ27を保護することができるように、通常の最下端時でも矩形沈澱池1の池底2に接地しないように、池底2との間に5〜10mm程度の間隔が取れるように設置されている。つまり、かき寄せフレーム20が矩形沈殿池1の長手方向を軸心に回転した際に、スクレーパ27両端のどちらかが池底2に接地する前に振れ防止車輪29が接地する。
【0026】
スカムかき寄せ部材31は、矩形沈澱池1上に浮遊するスカムをパイプ式スカムスキマ7へ案内するために、矩形沈澱池1の幅方向の長さとほぼ同等の長さを有し、かき寄せフレーム20の長手方向に等間隔で取り付けられている。そして、図1乃至図4、図7、図10、図11に示すように、かき寄せフレーム20の上弦材21と下弦材23とに棒材又はパイプなどのSUS製の連結部材35を介して枠形状に組み付け、筋交い39によって形状を保持できるように構成され、上部にスカムかき寄せブレード33を棒材又はパイプなどのSUS製の連結部材37にUボルトなどの締結具によって固定している。スカムかき寄せブレード33は、スクレーパ27と同様に、L型形状を為すSUS製の板材又はFRPで構成されている。
【0027】
垂下部材40は、図1、図2、図5、図12乃至図15に示すように、かき寄せフレーム20の上弦材21に取り付けられる下部組付け部材41と、両端にガイド装置50に取り付けられるローラ45を回転自在に装着するローラ支持部材43と、ローラ支持部材43を装着する上部組付け部材49とを備え、下部組付け部材41と上部組付け部材49とを螺子止めすることによって組み立てられている。本実施形態では、垂下部材40は、かき寄せフレーム20に対し、前方側と後方側との2箇所に設けられている。
【0028】
ガイド装置50は、図1乃至図5、図12乃至図15、図23に示すように、かき寄せフレーム20を垂下部材40のローラ45を介して移動自在に垂下し、かき寄せフレーム20の往き時にスクレーパ27を矩形沈澱池1の池底2上に沿って移動させるようにローラ45を案内する直線状の往き路50aと、かき寄せフレーム20を元の位置に戻すかき寄せフレーム20の復り時に、かき寄せフレーム20を矩形沈澱池1の池底2上からスクレーパ27を往き時の高さより高い位置で上昇させ元の位置に降下させるようにローラ45を案内する略台形状の復り路50bとを有する一対のガイドレール50A,50Bを、それぞれの往き路50a及び復り路50bを対向配置することによって構成されている。
【0029】
このガイド装置50は、垂下部材40のローラ45を往き路50aと復り路50bとを異なった経路を辿らせることによって、かき寄せフレーム20の往き時にはスクレーパ27を池底2上に堆積する汚泥を汚泥ピット3方向へ移動させ、かき寄せフレーム20の復り時にはスクレーパ27を池底2上に堆積する汚泥から引き離して汚泥を巻き上げないようにして移動させることが可能となるように構成されている。
ガイド装置50は、背面側に垂下部材40と平行に取付金具71を取り付け、矩形沈澱池1の壁面5,5間に取り付けた支持金具73から垂下するように組み付けられている。
【0030】
一対のガイドレール50A、50Bは、矩形沈澱池1の池底2と平行に配置される直線状の床部51aと、床部51aの長手方向の一側部に設けた壁部51bと、床部51aの両端に設けた壁部51cとを設けた床部材51を有する。この床部材51の両端部には、スクレーパ27を矩形沈澱池1の池底2上に沿って移動する高さにローラ45を保持するローラ位置決め部53,53が形成されている。このローラ位置決め部53,53の上面間を略台形状の上面部材55が連結している。上面部材55の背面は、床部材51の背面に設けた壁部51bが略台形状に延出している。
【0031】
床部材51と上面部材55との間の中間位置において、上面部材55の上底55bと対向する領域には、上底55bと平行に配置される平板部57bと両側が上面部材55の斜面55a,55cと平行に配置される斜面57a,57cとを有する略台形状の棚部材57が設けられている。
【0032】
棚部材57の一側の斜面57cからかき寄せフレーム20の後端部20B側に向かって第一のフラップ部材59が設けられている。第一のフラップ部材59は、床部材51上をローラ45が移動できるように、常に上面部材55の斜面55c側へ跳ね上げられ、かき寄せフレーム20の復り時にローラ45を介して床部材51上に押し下げられ、ローラ45の踏み面を形成するように壁面51bに軸61を介して軸支されている。軸61には、第一のフラップ部材59を上面部材55の斜面55c側へ跳ね上げるために、錘63が第一のフラップ部材59の軸61を対称軸として反対側に最大モーメントを発生するように取り付けられている。第一のフラップ部材59は、往き時にローラ45の上方に位置するフラップ板59aと、復り時にローラ45の踏み面を形成する踏み板59bと、フラップ板59aと踏み板59bとを繋ぐ連結板59cとで構成されている。
【0033】
棚部材57の他側の斜面57aからかき寄せフレーム20の先端部20A側に向かって第二のフラップ部材65が設けられている。第二のフラップ部材65は、常に床部材51側へ押し下げられ、ローラ45の移動に伴って上面部材55の斜面55a側へ跳ね上げられ、ローラ45の通過後に床部材51上に押し下げられ、かき寄せフレーム20の復り時にローラ45の踏み面を形成するように壁面51bに軸67を介して軸支されている。軸67には、第二のフラップ部材65を上面部材55の斜面55a側へ跳ね上げるために、錘69が第二のフラップ部材65の軸67を対称軸として同じ側に最大モーメントを発生するように取り付けられている。第二のフラップ部材65は、往き時にローラ45の上方に位置するフラップ板65aと、復り時にローラ45の踏み面を形成する踏み板65bと、フラップ板65aと踏み板65bとを繋ぐ連結板65cとで構成されている。
【0034】
駆動装置80は、図1乃至図3に示すように、矩形沈澱池1の縁部1aに支持されるモータ81と、モータ81の回転軸83に取り付けられるクランク85と、クランク85に取り付けられる連結棒87と、矩形沈澱池1に設けたデッキ8に支点部91を枢着し、連結棒87に力点部93を枢着し、かき寄せフレーム20の上弦材21の先端部20A側に枢着される連結リンク20aに作用点部95を枢着してなる三節リンク89とを有する。
【0035】
モータ81は、図16、図17に示すように、矢印方向に回転し、それに伴って回転軸に取り付けられたクランク85を同じ方向に回転させながら連結棒87を矢印方向へ引き上げと引き下げとを行う。この連結棒87の引き上げ動作は、クランク85が下死点から上死点までの回転時に起こり、連結棒87の引き下げ動作は、クランク85が上死点から下死点までの回転時に起こる。それに伴って三節リンク89は、支点部91が回転中心として力点部93を連結棒87の上昇又は下降に追従させ、作用点部95を矢印方向へ回転させ、この作用点部95の回転に伴ってかき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aを矢印方向へ引き込み又は押し出す動作を行う。
【0036】
次に、本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10の作用を説明する。
かき寄せフレーム20のスクレーパ27の下端部が、矩形沈澱池1の池底2から10mm〜20mm程度の間隔ができるように、かき寄せフレーム20を垂下部材40を介してガイド装置50に吊り下げる。そして、かき寄せフレーム20の上弦材21の先端部20A側に枢着される連結リンク20aを三節リンク89の作用点部95に枢着する。
ここで、ガイド装置50は、図12に示すように、かき寄せフレーム20の往き時と復り時との最大揚程Hを220mmとしてある。
【0037】
また、駆動装置80は、かき寄せフレーム20によるかき寄せ速度を0.7m/min(一定速度で往復)となるように調節してある。
先ず、駆動装置80のモータ81を回転駆動させると、モータ81は、図1、図16に示すように、矢印方向に回転し、それに伴って回転軸に取り付けられたクランク85を同じ方向に回転させながら連結棒87を矢印方向へ引き上げ、これに連結する三節リンク89は、支点部91が回転中心として力点部93を連結棒87の上昇に追従させ、作用点部95を矢印方向へ回転させ、この作用点部95の回転に伴ってかき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aを矢印方向へ引き込む。
【0038】
この動作に伴って、図12に示すように、ガイド装置50の図面の右端のローラ位置決め部53に保持されていたローラ45が、図面の左端のローラ位置決め部53に向かって往き路50aに沿って床部材51上を移動する。この時には、第一のフラップ部材59は、常に錘63によって上面部材55の斜面55c側へ跳ね上げられている。そして、床部材51が直線状の平坦面であるから、かき寄せフレーム20は複数のスクレーパ27の下端部を、矩形沈澱池1の池底2から10mm〜20mm程度の間隔を置いて移動させ、池底2上に堆積している汚泥を汚泥ピット3に向かって移動させる。
【0039】
ローラ45が往き路50aを塞いでいる第二のフラップ部材65に当接すると、第二のフラップ部材65はローラ45の移動に伴って二点差線で示すように上面部材55の斜面55a側へ押し上げられる(図12)。第二のフラップ部材65は、ローラ45に当接する前は、図12に示すように、常に錘69によって床部材51側へ押し下げられている。
そして、ローラ45が図面の左端のローラ位置決め部53に移動すると、第二のフラップ部材65は、図12において実線で示すように、錘69によって床部材51側へ押し下げられる。
【0040】
この地点が、駆動装置80によってかき寄せフレーム20を引っ張る距離の終点となる。つまり、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が上死点に到達し、かき寄せフレーム20の引っ張りを停止する。
【0041】
次に、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が下死点に向かって回転を始めると、モータ81は、図2、図17に示すように、矢印方向に回転し、それに伴って回転軸83に取り付けられたクランク85を同じ方向に回転させながら連結棒87を矢印方向へ押し下げ、これに連結する三節リンク89は、支点部91が回転中心として力点部93を連結棒87の下降に追従させ、作用点部95を矢印方向へ回転させ、この作用点部95の回転に伴ってかき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aを矢印方向へ押し出す。
【0042】
この動作に伴って、図12に示すように、ガイド装置50の図面の左端のローラ位置決め部53に保持されていたローラ45が、図面の右端のローラ位置決め部53に向かって復り路50bに沿って第二のフラップ部材65の踏み板65b上を移動する。この移動に伴ってかき寄せフレーム20は、復り路50bの傾きに従って上昇しながら移動する。そのため、複数のスクレーパ27がかき寄せフレーム20の移動軌跡に伴われて池底2から徐々に上昇し、池底2上に堆積する汚泥から離れた位置に持ち上げられ、移動時(復り時)に汚泥を巻き上げることが少なくなる。
【0043】
そして、ローラ45が棚部材57の他側の斜面57aから棚部材57の平板部57b上に移送されると、ローラ45は池底2と平行な状態での走行に変わる。
次に、ローラ45が棚部材57の平板部57bから一側の斜面57cへ移動し、斜面57cを通過すると、上面部材55の斜面55c側へ跳ね上げられている第一のフラップ部材59の踏み板59b上に移動し、第一のフラップ部材59を二点差線(図12)で示す位置へ押し下げながら移動する。
【0044】
その後、ローラ45は、図12の図面の右端のローラ位置決め部53に移動する。
この地点が、駆動装置80によってかき寄せフレーム20を押し出す終点となる。つまり、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が下死点に到達し、かき寄せフレーム20の押し出しを停止する。
そして、本実施形態においては、かき寄せフレーム20の復り時に、図2に示すように、スカムかき寄せ部材31のスカムかき寄せブレード33が水面上にその上端を覗かせるように矩形沈澱池1の幅全域に亘って位置し、水面直近や水面上に浮遊するスカムをパイプ式スカムスキマ7へ導き、浮遊するスカムを取り除く。
【0045】
次に、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85は、再び上死点に向かって移動を開始し、ローラ45を介してかき寄せフレーム20を上述の往き路50aに沿って案内する工程へ移行し、以下順次上述した工程を繰り返す。
この工程の繰り返し行うことによって、矩形沈澱池1の池底2上に堆積している汚泥は、スクレーパ27によって順次汚泥ピット3方向へ送り出され、先端部20A側のスクレーパ27によって汚泥ピット3内へ送り込まれる。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、下記のような利点がある。
1.従来の装置で必要とされた底盤、リターンガイドレール及びガイドシューが不要になる。
2.ローラ45によるころがり抵抗のため、省エネルギーである。従来は、すべりで摩擦抵抗が大きかった。また、機体を合成樹脂製(FRPなど)にすれば、さらに省エネルギーとなる。
【0047】
3.駆動装置80のモータ81は、一方向にのみ定速回転するので、複雑な電気制御を必要としないため、制御盤が不要になる。
4.スカムかき寄せは、スカムかき寄せブレード33をかき寄せフレーム20に連結するだけで、かき寄せ時だけ水面上に突出してかき寄せ、戻り時には水面下に退避しスカムを乱さずに機能するので、別途に設ける必要がない。
【0048】
5.かき寄せ能力がチェーンフライト式と大差なく、十分な能力を発揮することができる。
6.消耗部品が少ない。
【0049】
7.汚泥を確実にかき寄せるので、信頼性が高い。
8.従来のチェーン破断のような大トラブルの心配がない。
9.大地震に対してもトラブルが生じない。従来のチエーンフライト式では、上方の復り側機構において、水面の波打ちによりチェーンがスプロケットから外れたりするトラブルが発生することがあった。
【0050】
図18は、本発明の第二実施形態に係る汚泥かき寄せ装置を示す。
本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置は、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10におけるかき寄せフレーム20にフロート100を設けた点で、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10とは相違する。その他の構成は、本発明の第一実施形態と同様であるからこれらの説明は省略する。
本実施形態において、フロート100は、例えば、塩化ビニールなどの合成樹脂やアルミニウムなどの軽金属などからなるパイプの両端部を封鎖し、10m当たり150kgの浮力を有する浮き子として使用する。
【0051】
フロート100は、かき寄せフレーク20の上弦材21の下部に長手方向に沿って全長又は不連続的に数箇所に設けられる。
本実施形態によれば、かき寄せフレーム20の復り時において、かき寄せフレーム20はフロート100の浮力がトラス頂点を形成する上弦材21を両側の斜材25に挟まれながら無理なく押し上げることによって、駆動装置80の動力を少なくして確実に操作できるようになる。
本実施形態においても、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【0052】
図19乃至図24は、本発明の第三実施形態に係る汚泥かき寄せ装置を示す。
本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置は、ガイド装置500を、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10におけるガイド装置50を構成する棚部材57、第一のフラップ部材59及び第二のフラップ部材65を一体化した可動ガイド部材507を有する構成とした点で、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10とは相違する。その他の構成は、本発明の第一実施形態と同様であるから、これらの符号はそのまま使用し、これらの説明は省略する。
【0053】
本実施形態において、ガイド装置500は、図19、図20に示すように、第一実施形態におけるガイド装置50と同様に、かき寄せフレーム20を垂下部材40のローラ45を介して移動自在に垂下し、かき寄せフレーム20の往き時にスクレーパ27を矩形沈澱池1の池底2上に沿って移動させるようにローラ45を案内する直線状の往き路500aと、かき寄せフレーム20を元の位置に戻すかき寄せフレーム20の復り時に、かき寄せフレーム20を矩形沈澱池1の池底2上からスクレーパ27を往き時の高さより高い位置で上昇させ元の位置に降下させるようにローラ45を案内する略台形状の復り路500bとを有する一対のガイドレール500A,500Bを、それぞれの往き路500a及び復り路500bを対向配置することによって構成されている。
【0054】
このガイド装置500は、図22乃至図24に示すように、垂下部材40のローラ45を往き路500aと復り路500bとを異なった経路を辿らせることによって、かき寄せフレーム20の往き時にはスクレーパ27を池底2上に堆積する汚泥を汚泥ピット3方向へ移動させ、かき寄せフレーム20の復り時にはスクレーパ27を池底2上に堆積する汚泥から引き離して汚泥を巻き上げないようにして移動させることが可能となるように構成されている。
【0055】
ガイド装置500は、第一実施形態におけるガイド装置50と同様に、背面側に垂下部材40と平行に取付金具71を取り付け、矩形沈澱池1の壁面5,5間に取り付けた支持金具73から垂下するように組み付けられている。
一対のガイドレール500A、500Bは、矩形沈澱池1の池底2と平行に配置される直線状の床部501aと、床部501aの長手方向の一側部に設けた壁部501bと、床部501aの両端に設けた壁部501cとを設けた床部材501を有する。この床部材51の両端部には、スクレーパ27を矩形沈澱池1の池底2上に沿って移動する高さにローラ45を保持するローラ位置決め部503,503が形成されている。このローラ位置決め部503,503の上面間を略台形状の上面部材505が連結している。上面部材505の背面は、床部材501の背面に設けた壁部501bが略台形状に延出している。この壁部501bは、取付金具71及び支持金具73に組み付けられている。
【0056】
床部材501と上面部材505との間の中間位置において、上面部材505の上底505bと対向する領域には、可動ガイド部材507の棚部508が壁部501bに軸509を介して回転自在に軸支されている。軸509には、可動ガイド部材507の第一フラップ部514を上面部材505の斜面505c側へ跳ね上げるために、錘510を取り付けた軸511が取り付けられ、錘510が軸509を対称軸として反対側に最大モーメントを発生するように取り付けられている。また、軸511には、可動ガイド部材507に付勢力を付与すために引っ張りバネ512が取り付けられている。引っ張りバネ512は、床部材501に取り付けられる支持板513に取り付けられている。
【0057】
棚部508の一側には、かき寄せフレーム20の後端部20B側に向かって第一フラップ部514が設けられている。第一フラップ部514は、例えば、図21、図22に示すように、錘510及び引っ張りバネ512によって、床部材501上をローラ45が移動できるように、常に上面部材505の斜面505c側へ跳ね上げられ、かき寄せフレーム20の復り時にローラ45を介して床部材501上に押し下げられてローラ45の踏み面を形成するように調整されている。図21において、実線で示される錘510の位置が、第一フラップ部514を上面部材505の斜面505c側へ跳ね上げる位置である。
棚部508の他側には、かき寄せフレーム20の先端部20A側に向かって第二フラップ部515が設けられている。第二フラップ部515は、錘510及び引っ張りバネ512によって、常に床部材501側へ押し下げられ、ローラ45の移動に伴って上面部材505の斜面505a側へ跳ね上げられ、ローラ45の通過後に床部材501上に押し下げられ、かき寄せフレーム20の復り時にローラ45の踏み面を形成するように調整されている。図21において、2点破線で示される錘510の位置が、第二フラップ部515を上面部材505の斜面505a側へ跳ね上げる位置である。
【0058】
次に、本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置におけるガイド装置500の作用を説明する。
なお、本実施形態に係る汚泥かき寄せ装置は、ガイド装置500を除くと、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10と同様の動作をするので、以下の説明では、本発明の第一実施形態に係る汚泥かき寄せ装置10の説明に基づいて説明する。
かき寄せフレーム20のスクレーパ27の下端部が、矩形沈澱池1の池底2から10mm〜20mm程度の間隔ができるように、かき寄せフレーム20を垂下部材40を介してガイド装置500に吊り下げる。そして、かき寄せフレーム20の上弦材21の先端部20A側に枢着される連結リンク20aを三節リンク89の作用点部95に枢着する。
【0059】
ここで、ガイド装置500は、図22に示すように、かき寄せフレーム20の往き時と復り時との最大揚程Hを220mmとしてある。
また、駆動装置80は、かき寄せフレーム20によるかき寄せ速度を0.7m/min(一定速度で往復)となるように調節してある。
先ず、駆動装置80のモータ81を回転駆動させると、モータ81は、図1、図16に示すように、矢印方向に回転し、それに伴って回転軸に取り付けられたクランク85を同じ方向に回転させながら連結棒87を矢印方向へ引き上げ、これに連結する三節リンク89は、支点部91が回転中心として力点部93を連結棒87の上昇に追従させ、作用点部95を矢印方向へ回転させ、この作用点部95の回転に伴ってかき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aを矢印方向へ引き込む。
【0060】
この動作に伴って、図22、図24(a)に示すように、ガイド装置500の図面の右端のローラ位置決め部503に保持されていたローラ45が、図22、図24(b)、図24(c)に示すように、図面の左端のローラ位置決め部503に向かって往き路500aに沿って床部材501上を移動する。この時には、第一フラップ部514は、常に錘510及び引っ張りバネ512によって上面部材505の斜面505c側へ跳ね上げられている。そして、床部材501が直線状の平坦面であるから、かき寄せフレーム20は複数のスクレーパ27の下端部を、矩形沈澱池1の池底2から10mm〜20mm程度の間隔を置いて移動させ、池底2上に堆積している汚泥を汚泥ピット3に向かって移動させる。
【0061】
図22、図24(c)に示すように、ローラ45が往き路500aを塞いでいる第二フラップ部515に当接すると、第二フラップ部515はローラ45の移動に伴って上面部材55の斜面55a側へ押し上げられる。第二フラップ部515は、ローラ45に当接する前は、図22、図24(a)(b)に示すように、常に錘511及び引っ張りバネ512によって床部材501側へ押し下げられている。
そして、図22、図24(d)に示すように、ローラ45が図面の左端のローラ位置決め部503に移動すると、第二フラップ部515は、錘511によって床部材501側へ押し下げられる。
【0062】
この地点が、駆動装置80によってかき寄せフレーム20を引っ張る距離の終点となる。つまり、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が上死点に到達し、かき寄せフレーム20の引っ張りを停止する。
次に、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が下死点に向かって回転を始めると、モータ81は、図2、図17に示すように、矢印方向に回転し、それに伴って回転軸83に取り付けられたクランク85を同じ方向に回転させながら連結棒87を矢印方向へ押し下げ、これに連結する三節リンク89は、支点部91が回転中心として力点部93を連結棒87の下降に追従させ、作用点部95を矢印方向へ回転させ、この作用点部95の回転に伴ってかき寄せフレーム20の先端部に枢着される連結リンク20aを矢印方向へ押し出す。
【0063】
この動作に伴って、図22、図24(e)に示すように、ガイド装置500の図面の左端のローラ位置決め部503に保持されていたローラ45が、図面の右端のローラ位置決め部503に向かって復り路500bに沿って第二フラップ515の踏み板515a上を移動する。この移動に伴ってかき寄せフレーム20は、復り路500bの傾きに従って上昇しながら移動する。そのため、複数のスクレーパ27がかき寄せフレーム20の移動軌跡に伴われて池底2から徐々に上昇し、池底2上に堆積する汚泥から離れた位置に持ち上げられ、移動時(復り時)に汚泥を巻き上げることが少なくなる。
そして、ローラ45が棚部508上に移送されると、図22、図24(e)に示すように、ローラ45は池底2と平行な状態での走行に変わる。
【0064】
次に、図22、図24(f)に示すように、ローラ45が棚部508から第一フラップ部514の踏み板514a上に移動し、第一フラップ部514を押し下げながら移動する。
その後、ローラ45は、図22、図24(a)に示すように、図面の右端のローラ位置決め部503に移動する。
この地点が、駆動装置80によってかき寄せフレーム20を押し出す終点となる。つまり、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85が下死点に到達し、かき寄せフレーム20の押し出しを停止する。
【0065】
そして、本実施形態においても、本発明の第一実施形態と同様は、かき寄せフレーム20の復り時に、図2に示すように、スカムかき寄せ部材31のスカムかき寄せブレード33が水面上にその上端を覗かせるように矩形沈澱池1の幅全域に亘って位置し、水面直近や水面上に浮遊するスカムをパイプ式スカムスキマ7へ導き、浮遊するスカムを取り除く。
次に、モータ81の回転軸83に取り付けたクランク85は、再び上死点に向かって移動を開始し、ローラ45を介してかき寄せフレーム20を上述の往き路500aに沿って案内する工程へ移行し、以下順次上述した工程を繰り返す。
【0066】
この工程の繰り返し行うことによって、矩形沈澱池1の池底2上に堆積している汚泥は、スクレーパ27によって順次汚泥ピット3方向へ送り出され、先端部20A側のスクレーパ27によって汚泥ピット3内へ送り込まれる。
以上のように、本実施形態においても、本発明の第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ガイド装置500の可動ガイド部材507を、棚部508の両側に第一フラップ部514と第二フラップ部515とを一体化した構成としたので、可動ガイド部材507がシーソー式のフラップとなる。
そのため、本発明の第一実施形態のガイド装置50において必要とされた第一のフラップ部材59及び第二のフラップ部材65を1つのフラップ部材とすることが可能となる。そして、第一のフラップ部材59及び第二のフラップ部材65にそれぞれ必要とされた回転軸となる軸61,67を1つの軸509とすることが可能となり、かつ2つの軸61,67に連結していた錘63,69を1つの錘511とすることが可能となる。
【0068】
これにより、ガイド装置500の部品点数が半減し、ガイド装置500における故障発生率が半減し、信頼性が向上するという利点がある。
そのため、製造コストの削減に寄与し、補修費用を低減することも可能となる。
なお、上記第一実施形態では、第一のフラップ部材59及び第二のフラップ部材65のそれぞれの軸61,67に錘63,69による荷重を掛けるようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、軸61,67にトーションバネを取り付けたり、軸61,67とガイド装置50の機体との間に引っ張りバネを取り付けても良い。また、錘63,69とこれらのバネとの組合せにしても良い。
【0069】
また、上記第三実施形態では、錘510を取り付けた軸511に引っ張りバネ513を取り付けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、引っ張りバネ513に代えてトーションバネを取り付けたり、引っ張りバネ513を取り除いても良い。
また、上記各実施形態では、ガイド装置50を2箇所設けた場合について説明したが、1箇所又は3箇所以上にしても良い。
【0070】
また、上記各実施形態では、かき寄せフレーム20を立体トラス構造として説明したが、小型にする場合には、I形鋼を用いても良い。
また、上記各実施形態では、駆動装置80に三節リンク89を連結して説明したが、モータ81の回転運動をかき寄せフレーム20の押し引き動作に利用できる機構であれば、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 矩形沈澱池
2 池底(床面)
3 汚泥ピット
5 壁面
7 パイプ式スカムスキマ
9 越流トラフ
10 汚泥かき寄せ装置
20 かき寄せフレーム
21 上弦材
23 下弦材
25 斜材
27 スクレーパ
29 振れ防止車輪
31 スカムかき寄せ部材
33 スカムかき寄せブレード
45 ローラ
40 垂下部材
50,500 ガイド装置
50A,50B,500A,500B ガイドレール
50a,500a 往き路
50b,500b 復り路
51,501 床部材
53,503 ローラ位置決め部
55,505 上面部材
57 棚部材
59 第一のフラップ部材
59a,65a フラップ板
59b,65b 踏み板
61,67,509,511 軸
63,69,510 錘
65 第二のフラップ部材
71 取付金具
73 支持金具
80 駆動装置
81 モータ
83 回転軸
85 クランク
87 連結棒
89 三節リンク
91 支点部
93 力点部
95 作用点部
100 フロート
507 可動ガイド部材
508 棚部
512 引っ張りバネ
514 第一フラップ部
514a,515a 踏み面
515 第二フラップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥ピットを有する矩形沈澱池に設置される汚泥かき寄せ装置において、
汚泥を前記汚泥ピットへ案内する多数のスクレーパを取り付け、前記矩形沈澱池の長手方向に配置されるかき寄せフレームと、
前記矩形沈澱池に支持され、前記かき寄せフレームの一側部に取り付けられて前記かき寄せフレームを前記矩形沈澱池の長手方向に往復動させる駆動装置と、
前記かき寄せフレームを移動自在に垂下し、前記かき寄せフレームの往き時に前記スクレーパを前記汚泥沈澱池の床面上に沿って案内し前記かき寄せフレームの復り時に前記スクレーパを前記往き時の高さより高い位置で案内するガイド装置と
を有することを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項2】
請求項1記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記かき寄せフレームは、1つの上弦材と、2つの下弦材と、前記上弦材と前記下弦材との間及び前記下弦材間を接続する複数の斜材とで構成される立体トラス構造を為し、前記多数のスクレーパを前記下弦材に取り付けている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記かき寄せフレームは、前記ガイド装置によって案内されるローラを備えた垂下部材を介して前記ガイド装置に移動自在に垂下されている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記かき寄せフレームは、長手方向にフロートを備えている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記垂下部材は、
前記かき寄せフレームの上弦材に取り付ける連結部材と、
前記連結部材の頂部から前記連結部材と直交する方向に突出するローラ取付部材と、
前記ローラ取付部材に取り付けられるローラと
を有することを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項6】
請求項5記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記ガイド装置は、
両端部に備えられ、前記スクレーパを前記矩形沈澱池の床面上に沿って移動する高さに前記ローラを保持するローラ位置決め部と、
前記ローラ位置決め部の床面間を結ぶ直線状の床部材と、
前記ローラ位置決め部の上面間を結ぶ略台形状の上面部材と、
前記床部材と前記上面部材との間の前記上面部材の上底と対向する領域に前記上底と平行に配置される棚部材と、
前記棚部材の一側から前記かき寄せフレームの後端部側に向かって前記棚部材の一側に軸支され延びる、前記床部材上を前記ローラが移動できるように前記上面部材側へ跳ね上げられ、前記かき寄せフレームの復り時に前記ローラを介して前記床部材上に押し下げられ、前記ローラの踏み面を形成する第一のフラップ部材と、
前記棚部材の他側から前記かき寄せフレームの先端部側に向かって前記棚部材の他側に軸支され延びる、前記床部材上に前記ローラの移動に伴って前記上面部材側へ跳ね上げられ、前記ローラの通過後に前記床部材上に押し下げられ、前記かき寄せフレームの復り時に前記ローラの踏み面を形成する第二のフラップ部材と
を有することを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記スクレーパは、前記かき寄せフレームの下面に錘設されている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記かき寄せフレームは、振れ防止車輪を備えている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記かき寄せフレームは、スカムかき寄せブレードを上部に備え、前記かき寄せフレームの復り時に前記スカムかき寄せブレードを水面上に突出する位置に固定するスカムかき寄せ部材を備えている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9の何れか記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記駆動装置は、
前記矩形沈澱池に支持されるモータと、
前記モータの回転軸に取り付けられるクランクと、
前記クランクに取り付けられる連結棒と、
前記矩形沈澱池に支点部を枢着し、前記連結棒に力点部を枢着し、前記かき寄せフレームの一側部に作用点部を枢着してなる三節リンクと
を有することを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項11】
請求項6記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記第一のフラップ部材を軸支する軸部は、前記第一のフラップ部材を常時前記上面部材側へ跳ね上げられるように錘を有し、
前記第二のフラップ部材を軸支する軸部は、前記第二のフラップ部材を常時前記上面部材側へ跳ね上げられるように錘を有する
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項12】
請求項5記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記ガイド装置は、
両端部に備えられ、前記スクレーパを前記矩形沈澱池の床面上に沿って移動する高さに前記ローラを保持するローラ位置決め部と、
前記ローラ位置決め部の床面間を結ぶ直線状の床部材と、
前記ローラ位置決め部の上面間を結ぶ略台形状の上面部材と、
前記床部材と前記上面部材との間の前記上面部材の上底と対向する領域に回動自在に軸支される可動ガイド部材と
を備え、
前記可動ガイド部材は、
前記床部材と前記上面部材との間の前記上面部材の上底と対向する領域に回動自在に軸支される棚部と、
前記棚部の一側から前記かき寄せフレームの後端部側に向かって延びる、前記床部材上を前記ローラが移動できるように前記上面部材側へ跳ね上げられ、前記かき寄せフレームの復り時に前記ローラを介して前記床部材上に押し下げられ、前記ローラの踏み面を形成する第一フラップ部と、
前記棚部の他側から前記かき寄せフレームの先端部側に向かって延びる、前記床部材上に前記ローラの移動に伴って前記上面部材側へ跳ね上げられ、前記ローラの通過後に前記床部材上に押し下げられ、前記かき寄せフレームの復り時に前記ローラの踏み面を形成する第二フラップ部と
を有する
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項13】
請求項12記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記可動ガイド部材は、
前記棚部を軸支する軸に、前記棚部の他側から前記かき寄せフレームの先端部側に向かって延びる錘付きの軸部を取り付けている
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項14】
請求項13記載の汚泥かき寄せ装置において、
前記錘付きの軸部は、前記床部材との間に配置される引っ張りバネを有する
ことを特徴とする汚泥かき寄せ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−253468(P2010−253468A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75508(P2010−75508)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)