説明

汚泥の中温発酵による揮発性脂肪酸の製造

汚泥から過剰水を除去する方法及び関連する装置であって、該方法は、(1)中温域の温度で汚泥を発酵させる工程と、(2)水力学的に静止した条件下で該発酵汚泥を所定時間維持して、相分離を達成する工程と、(3)固相及び液相を別々に除去する工程と、(4)バイオガスへ転化するための消化槽に該固相を供給する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子性の有機物を含有する汚泥から過剰水を除去するのに好適な方法、特に、消化槽内における固体滞留時間を増大させる手段として好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性消化プロセスでは、有機基質が、発電に用いられ得るバイオガスへと生物学的に転化される。このプロセスは廃棄物の処理に魅力的なものである。このようなプロセスは、当該技術分野において既知であり、多くの変化形を有し得る。かかるプロセスの例は特許文献1により記載されており、また、別の例が特許文献2により記載されている。一般的に、嫌気性消化は、有機化合物をメタン及び二酸化炭素に転化する微生物群によって媒介される一連の複雑な生化学的反応を含む。それは、臭気、病原体及び質量の減少を達成する安定化プロセスである。プロセス中、粒子は溶解し、大きいポリマーはモノマーに転化する。続いて、モノマーは、単純な物質へ、最終的にはバイオガスへと発酵する。特許文献3によれば、下水汚泥の場合の総消化時間はおよそ15日であるとされている。特許文献3は、汚泥の幾らかの成分が、無機化するのにかなりの時間及びエネルギーを要したことも示唆している。粒状物質の消化が可溶性物質よりも長い時間を要することは既知の事実である。粒状物質を高い割合で含有する下水汚泥の消化において、15日の処理時間では一般に、汚泥の有機含有量をわずか40%しか低減しない。
【0003】
バイオガスの最大限の転化を達成させるように、汚泥の有機含有量を最大限に減少させることが望ましい。汚泥の有機含有量の減少は、消化槽内の固体滞留時間が増大することによって高められ得ることが知られている。従来、これは、消化槽への同じ固体充填速度を維持しつつ、消化槽への容量供給量(volumetric feeding rate)を減少させることによって達成されてきた。特許文献4は、この目的に用いられ得る、汚泥を沈降濃縮する方法及び装置を記載している。特許文献4の発明は、可動のくま手及びとがりくいを備える従来型の沈殿槽を含んでいる。しかしながら、特許文献4の方法は、信頼性がないことが判明しており、残念ながら如何なる重大な商業的成功も達成しなかった。上記沈降濃縮方法の有効性を試みると共に改良するさらなる開発が特許文献5によって行われた。重力ベルトシックナー(gravity belt thickener)として知られるこの特許文献5の発明は、水の除去を達成するために、透水性ベルトの使用、及び凝集させるポリマーの汚泥への添加を伴っている。
【0004】
重力ベルトシックナーは成功した発明であり、その利用は広く普及している。典型的に、重力ベルトシックナーは、汚泥を消化槽に供給する前に、下水汚泥の固体含有量を3%重量/体積(w/v)から6%重量/体積(w/v)へと上げることができる。事実上、重力ベルトシックナーは、消化槽内の固体滞留時間を2倍に(by 100%)増大させることができる。しかしながら、高コストの建物内にこのような高価な設備を収容することが必要である。その上、該方法におけるポリマーの使用によって、汚泥のレオロジーが著しく変わり、圧送及び混合が極めて困難なものとなる。
【0005】
汚泥から水を除去する別の方法は、特許文献6によって提案されており、空気で系内の水を飽和させることを伴うものである。特許文献6の方法は、活性汚泥プロセスと併せて使用するように意図されている。しかしながら、系内の汚泥の最終的な固体含有量が3%重量/体積(w/v)未満のままであるため、これは消化プロセスにおける使用に適さない。
【0006】
消化槽内の有機固体粒子の滞留時間を増大させるために、消化すべき汚泥から過剰水を除去することが望ましい一方、何の欠点もなくこの目的を達成することができる方法が判明していないことは、上述から明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,022,665号明細書(Ghosh, et al., 1977)
【特許文献2】米国特許第5,746,919号明細書(Dague, et al., 1998)
【特許文献3】米国特許第2,315,577号明細書(Bach, 1943)
【特許文献4】米国特許第4,120,791号明細書(Wright, 1978)
【特許文献5】米国特許第4,595,499号明細書(Kormanik, et al., 1986)
【特許文献6】米国特許第5,849,191号明細書(Agranonik, et al., 1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、特に下水汚泥等の消化前又はさらに消化プロセス中に、汚泥から過剰水を除去する方法を提供することである。このような方法は、本明細書に上記した方法の欠点を克服するであろう。
【0009】
本発明のさらなる目的は、特に下水汚泥等の消化前又はさらに消化プロセス中に、汚泥から過剰水を除去する装置を提供することである。このような装置は、組立てが簡単であり、既存の消化資源(existing digestion assets)に容易且つ直ちに統合することができる。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、生物学的栄養分除去用途のための炭素源として有用な揮発性脂肪酸が豊富な液流を提供することである。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様によると、汚泥から過剰水を除去するのに好適な方法であって、
(i)中温域の温度で汚泥を発酵させる工程と、
(ii)水力学的に静止した条件下で発酵汚泥を所定時間維持して、相分離を達成する工程と、
(iii)固相及び液相を別々に除去する工程と
を含む方法が提供される。
【0012】
この方法は、好ましくは、バイオガスへ転化するための消化槽に固相を供給する工程をさらに含む。
【0013】
本発明の第1の態様による方法において、好ましくは、15℃〜45℃の範囲の温度で汚泥を発酵させ、より好ましくは、30℃〜42℃の範囲の温度で汚泥を発酵させる。
【0014】
さらに、本発明の第1の態様による方法において、好ましくは、発酵汚泥を、水力学的に静止した条件下で12時間〜120時間維持し、より好ましくは、発酵汚泥を、水力学的に静止した条件下で16時間〜48時間維持する。
【0015】
さらに、この方法の相分離を、発生時の(nascent)バイオガスの気泡によって促進し、且つ好ましくは汚泥が生汚泥を含む。
【0016】
本発明の第1の態様による方法によると、好ましくは汚泥が1%〜5%重量/体積(w/v)の初期固体濃度を含み、より好ましくは、固相が5%〜12%重量/体積(w/v)の固体濃度を含む。最も好ましくは、固相が5.5%〜10%重量/体積(w/v)の固体濃度を含む。
【0017】
さらに、本発明の第1の態様による方法によると、液相が0.5%重量/体積(w/v)未満の固体濃度を含む。より好ましくは、液相が0.35%重量/体積(w/v)未満の固体濃度を含む。
【0018】
本発明の第2の態様によると、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法における、汚泥から過剰水を除去するのに好適な装置であって、
発酵容器と、
混合をもたらすと共に発酵容器内の温度を中温域に維持する手段と、
生汚泥を発酵容器に送る手段と、
発酵容器から固相を除去する手段と、
発酵容器から液相を除去する手段と
を備える装置が提供される。
【0019】
好ましくは、この装置は、発酵容器からバイオガスを除去する手段をさらに備える。混合をもたらすと共に発酵容器内の温度を維持する手段が、好ましくは、別個の加熱機構と、別個の混合機構とを含む。固相を除去する手段及び液相を除去する手段が単一のユニットに結合され得る。
【0020】
最後に、本発明の第3の態様によると、生物学的栄養分除去用途のための炭素源としての使用に好適な揮発性脂肪酸リッチ液流であって、本発明の第1の態様に記載の方法、又は本発明の第2の態様に記載の装置を用いる場合に液相から生じる流が提供される。
【0021】
「生」汚泥という用語は、比較的高い有機含有量を有し、且つ汚泥に対する或る程度の事前処理があった可能性を除外しない汚泥を指すのに用いられることが理解されるであろう。生汚泥は一般に、65%〜85%重量/重量(w/w)有機成分を含有するが、残りは無機成分を含む。「発酵」という用語が、消化も含み得る生物学的な転化プロセスを指すことに留意されたい。
【0022】
汚泥発酵の早い段階のうちに、基質は加水分解及び酸生成を受ける。これらのプロセスは、典型的に80%を超える二酸化炭素を含む少量のバイオガスの発生をもたらす。驚くべきことに、発生時のバイオガスの気泡は、それ自体を生汚泥粒子に付着させると共に生汚泥粒子を浮き上がらせる能力を有する。平静な状態のまま、言い換えれば水力学的に静止した条件下で、本質的に生汚泥は、濃縮汚泥の上層と、汚泥液の下層とに分離する。本発明者らは、如何なる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、生汚泥粒子の表面が或る程度の疎水性を有するために、生汚泥粒子が、元来疎水性であるガスの気泡を引き寄せる傾向にあると考えている。他方、汚泥粒子は、消化の影響を受けると徐々に、それらの疎水性及びガスの気泡を引き寄せる傾向を失う。水よりも密度の大きい消化汚泥粒子は、汚泥液の下層に向かって沈殿する傾向にある。
【0023】
汚泥流を同じような材料から成る層に分割することが相分離として知られている。濃縮汚泥の上層は多くの場合固相と称され、汚泥液の下層は多くの場合液相と称される。相分離の産業利用を良好なものとするために、本発明者らは、かかる相分離のプロセス動力学に影響を与えるプロセス条件及びパラメータの検討を行った。
【0024】
相分離は本質的に発酵プロセスの副次的な効果であり、プロセス温度に著しく影響を受ける。分離は15℃〜45℃の温度範囲内で達成することができる。この温度範囲の両端では、細菌活性が不活発になり過ぎるため、プロセスが有用でない。温度が上がるにつれ、媒質の粘度が下がり、分離速度の増大がもたらされる。分離に最適なプロセス温度は、30℃〜42℃の範囲内であるとされる。
【0025】
上述のように、生汚泥粒子及び消化汚泥粒子は、発生時のバイオガスの気泡に対して異なった挙動を示すと考えられる。12日を超える間消化されてきた汚泥は、発生時のバイオガスの気泡に対する親和性をあまり有しないように見える。汚泥が、生汚泥と消化汚泥との混合物である相分離系において、プロセスは、系の中央に液相、並びに上部及び下部にそれぞれ生汚泥の固相層及び消化汚泥層を含む3つの別個の層をもたらし得る。汚泥中の固体の初期濃度は分離速度にかなりの影響を与えるが、分離相中の最終固体濃度にはあまり影響を与えない。一般的に、初期固体濃度が高いほど、分離は遅くなる。初期固体濃度が1%〜5%重量/体積(w/v)である汚泥流が、本発明による使用に好適である。全分離相中の最終固体濃度は極めて狭い値域内にあることが見出されている。固相は典型的に、6%〜12%重量/体積(w/v)の固体含有量を含み、且つ液相は典型的に約0.3%重量/体積(w/v)の固体含有量を含むものである。
【0026】
相分離プロセスを開始するために、汚泥は通常、十分な作用温度まで加熱されなければならない。加熱は、任意の従来手段によって、例えば、限定するものではないが、蒸気を汚泥中に直接噴射することによって、又は冷たい汚泥を、熱水供給源を有する熱交換器に再循環させることによって達成することができる。汚泥は通常、系の温度が作用可能な範囲に達したら直ちに発酵プロセスを始めることができ且つ必要なバイオガスを生成する、様々な好適な細菌を含有する。一様な発酵及びガスの生成を確実なものとするために、加熱の間ずっと汚泥を十分に混合することが望ましい。混合は、汚泥が所望の作用温度に達したら直ちに停止してもよい。発酵汚泥(fermenting sludge)が静止状態に置かれたら直ちに相分離が始まる。プロセスが進行すると、固相層及び(消化汚泥を伴う場合には)最下層の体積及び固体濃度が共に増大する。同時に、固体粒子を徐々に含まなくなる液相が現れる。任意の相分離の活動は通常、静止期間後に止まる。分離を完了するのに通常、12時間〜36時間の期間が必要とされ、最大6日の期間を用いてもよいが、当然ながら期間が長くなるほど便利なものではなくなる。
【0027】
静止状態とは、あらゆる乱れが相分離プロセスを妨げるであろうことから、汚泥が平静な状態のままであることを意味する。そうは言うものの、分離は重力軸方向、言い換えれば鉛直面でしか起こらないため、それゆえ半径方向運動は許容され得る。例えば、相分離に好ましくない影響を何ら有しなければ、汚泥塊全体を、鉛直軸を中心に回転させてもよい。半径方向運動は、固相を発酵容器の中心部に移行させる傾向にあり且つ固相のその後の除去を促す可能性があるため、有益な場合がある。
【0028】
相分離プロセスから得られる液相は通常、アンモニア、揮発性脂肪酸等を含む溶解物質を全て含有する。このような液相流は、生物学的栄養分除去用途のための価値ある炭素源を提供する。生物学的栄養分除去プロセスは水道産業においてよく知られており、例えば改良された生物脱リンに関する揮発性脂肪酸の使用が確立されている。
【0029】
本発明のより良好な理解のために、且つ本発明をどのように実行に移し得るかをより明確に示すために、ここで、付随する実施例及び図面をほんの一例として参照し、さらに詳細に本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態による装置の概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態による装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
添付の図面の図1を参照して、本発明の一実施形態による、汚泥から過剰水を除去する装置を例示する。装置は、汚泥の発酵及び相分離のための発酵容器1と、生汚泥を発酵容器に送る手段2と、固相を除去する手段3aと、液相を除去する手段3bと、混合をもたらすと共に、発酵容器内の温度を維持する手段4と、発酵容器からあらゆるバイオガスを除去する手段5とを備える。かかる装置は理想的にはバッチ操作に適する。
【0032】
添付の図面の図2を参照して、本発明の第2の実施形態による、汚泥から過剰水を除去する装置を例示する。装置は、汚泥の発酵及び相分離のための発酵容器1と、生汚泥を発酵容器に送る手段2と、固相を除去する手段3aと、液相を除去する手段3bと、混合をもたらすと共に発酵容器内の温度を維持する手段4と、発酵容器からあらゆるバイオガスを除去する手段5とを備える。本実施形態では、固相を除去する手段3aが、汚泥のフローを促進させるような鐘形の口の形状をした導入口を含む。かかる装置はさらに理想的には連続プロセス運転に適する。
【0033】
発酵及び相分離のための発酵容器1は任意の好適な構成を有し得る。高さ対直径の最小比が1.0である円形断面の槽が好ましいとされる。
【0034】
汚泥は、任意の使いやすい手段によって、例えばポンピングによって発酵容器1に送られ得る。好適なポンプのタイプとしては、渦巻ポンプ、一軸ねじポンプ(progressive cavity pumps)及び螺旋型スクリューポンプが挙げられる。螺旋型スクリューポンプが、生汚泥を発酵容器に送るのに最も好ましい手段2である。
【0035】
固相及び液相は、任意の使いやすい手段によって、例えばポンピングによって発酵容器1から除去され得る。好適なポンプのタイプとしては、渦巻ポンプ、一軸ねじポンプ及び螺旋型スクリューポンプが挙げられる。ガスリフトが、発酵容器から固相を除去する好ましい手段3aである。重力排水が、発酵容器から液相を除去する好ましい手段3bである。
【0036】
混合すると共に温度を維持する手段4は多くの場合、本発明の図面によって例示されるように単一のユニットに結合させることができる。オペレータの好みに応じて別個の混合ユニット及び温度維持ユニットを有することが可能である。図2によって例示されるように、汚泥を発酵容器1に送る前に、事前処理として加熱作業及び混合作業を行うことも可能であり、この場合、さらなる加熱及び混合を要しない。いずれの場合にも、発酵容器1は、如何なる熱損失も最低限に抑えるように断熱材で覆われていることが好ましい。
【0037】
連続プロセス運転では、事前処理として加熱作業及び混合作業を行うことがより好都合である。また、連続運転では、固相及び液相が同時に除去されるため、理想的には、固相層及び液相層に最低限の乱れを保証する発酵容器の領域内に、生汚泥を送り且つ分配することが好ましい。バッチ操作では、固相を除去する手段3a及び液相を除去する手段3bを単一のユニットとして結合させてもよい。理想的には、かかるユニットは、異なる相が次々に除去され得るように、発酵容器1内の最下位置に設けられる。
【0038】
あらゆるバイオガスが、悪臭公害を回避するように都合良く回収及び処理されるように、相分離は、嫌気条件下で行われることが好ましい。簡単な処理は、消化槽からのバイオガスを燃焼プロセス中へ混和し使用することである。
【0039】
ここで、以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
異なる初期汚泥固体濃度を有する非粘稠性汚泥サンプルを下水処理場(サイトA)から採取した。各々800mL体積の2つのサンプルは、2つの別個の発酵容器内で混合せずに42℃で48時間発酵させた。相分離の結果は表1により示した通りである。この結果から、初期固体濃度が低い汚泥が、より高い固体濃度を有する汚泥よりも迅速に分離することが示唆される。
【0041】
【表1】

【0042】
<実施例2>
実施例1における実験を、幾つかの異なる下水処理場からの汚泥サンプルを用いて繰り返した。表2に示される結果から、全分離相中の最終固体濃度が極めて狭い値域内にあることが示唆される。濃度係数又は初期汚泥濃度に対する固相最終濃度の比は、2倍〜3.5倍の範囲内であった。
【0043】
【表2】

【0044】
<実施例3>
下水処理場(サイトC)からの非粘稠性汚泥の40リットルサンプルを、各々20リットル体積の2つのサブサンプルに分けた。サブサンプルは両方とも、別個の発酵容器内で混合せずに異なる温度で96時間発酵させた。相分離の結果は表3により示した通りであった。この結果は、より速い速度及びより高い固相最終固体濃度の両観点から、より高い温度が非常に優れた相分離をもたらすことを明らかに示している。
【0045】
【表3】

【0046】
<実施例4>
サイトBからの汚泥を発酵させ、48時間にわたって42℃における相分離によって脱水させた。固相を14日間35℃で消化した。相分離実験の前後及び消化後に様々な分析測定をサンプルに行った。測定の結果は表4により示した通りであった。
【0047】
【表4】

【0048】
<実施例5>
汚泥から過剰水を除去する装置を組み立てた。汚泥の発酵及び相分離のための容器は、ガラス繊維強化プラスチックから成るものであり、断熱処理されているものとした。容器は、4000リットルの作業容積を有するものであった。容器の底にあるバルブを備える単一の排出管を、相分離プロセスの最後に固相及び液相を除去する手段として使用した。混合する手段として再循環ポンプを用いた。加熱すると共に発酵容器内の温度を42℃に維持する手段として、電気素子を用いた。4000リットルの1回分の汚泥を発酵させた。この結果は表5により示した通りであった。
【0049】
【表5】

【0050】
当然のことながら、本明細書中で概説した基本的な方法及び装置に対して多くの変更及び改良をなすことができる。例えば、固相からより多くの揮発性脂肪酸を抽出するために、固相を廃水中で再懸濁し、さらに発酵させてもよい。直列する数多くの容器等において相分離を行ってもよい。
【0051】
他の可能な変更形態又は用途は、適切な当業者にとって容易に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥から過剰水を除去するのに好適な方法であって、
(i)中温域の温度で前記汚泥を発酵させる工程と、
(ii)水力学的に静止した条件下で前記発酵汚泥を所定時間維持して、相分離を達成する工程と、
(iii)固相及び液相を別々に除去する工程と
を含む方法。
【請求項2】
バイオガスへ転化するための消化槽に前記固相を供給する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
15℃〜45℃の範囲の温度で前記汚泥を発酵させる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
30℃〜42℃の範囲の温度で前記汚泥を発酵させる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発酵汚泥を、水力学的に静止した条件下で12時間〜120時間維持する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発酵汚泥を、水力学的に静止した条件下で16時間〜48時間維持する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記相分離を、発生時のバイオガスの気泡によって促進する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記汚泥が生汚泥を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記汚泥が1%〜5%重量/体積(w/v)の初期固体濃度を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記固相が5%〜12%重量/体積(w/v)の固体濃度を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記固相が5.5%〜10%重量/体積(w/v)の固体濃度を含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記液相が0.5%重量/体積(w/v)未満の固体濃度を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液相が0.35%重量/体積(w/v)未満の固体濃度を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法における、汚泥から過剰水を除去するのに好適な装置であって、
発酵容器と、
混合をもたらすと共に前記発酵容器内の温度を中温域に維持する手段と、
生汚泥を前記発酵容器に送る手段と、
前記発酵容器から固相を除去する手段と、
前記発酵容器から液相を除去する手段と
を備える装置。
【請求項15】
前記発酵容器からバイオガスを除去する手段をさらに備える請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記発酵容器が、高さ対直径の最小比が1.0である円形断面の槽を備える請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記生汚泥を前記発酵容器に送る手段が、ポンピング手段、好ましくは螺旋型スクリューポンプを含む請求項14〜16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
混合をもたらすと共に前記発酵容器内の温度を維持する前記手段が、別個の加熱機構と、別個の混合機構とを含む請求項14〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
固相を除去する前記手段及び液相を除去する前記手段が、ポンピング手段を含む請求項14〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
固相を除去する前記手段及び液相を除去する前記手段が、好ましくは単一のユニットに結合される請求項19に記載の装置。
【請求項21】
生物学的栄養分除去用途のための炭素源としての使用に好適な揮発性脂肪酸リッチ液流であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法、又は請求項14〜20のいずれか一項に記載の装置を用いる場合に前記液相から生じる揮発性脂肪酸リッチ液流。
【請求項22】
添付の図面を参照して明細書中に記載された、汚泥から過剰水を除去するのに好適な装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−506056(P2011−506056A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536521(P2010−536521)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003978
【国際公開番号】WO2009/071878
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(510041393)ユナイテッド・ユーティリティーズ・ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】