説明

汚泥掻寄装置

【課題】チェーンの付着汚泥の除去が容易であり、かつ除去結果が確認でき、チェーンの腐食を確実に予防することが可能となる。
【解決手段】汚泥掻寄装置は、沈殿池1の上流側11と下流側12に設けたスプロケット21、22、23、24に掛け渡されて回動する主務チェーン3には、平行に配設される隣接したチェーンとの間に、長板状の合成樹脂製フライト33が架け渡して取り付けられる。フライト33を移動させて、沈殿した汚泥を下流側12から上流側11の方に掻き寄せ、汚泥ピット14に集めるよう構成されている。そして、主務チェーン3の一部を水面上方に露出させる手段と、主務チェーン3の上方位置には、露出した主務チェーン3に向けて洗浄水を下方に噴射する洗浄水噴射ノズル51が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理施設などに設置される沈殿池に付設される汚泥掻寄装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水処理場など処理原水中の汚泥を沈殿除去するための沈殿池には汚泥の掻寄装置が設けられている。一般には、沈殿池の上流側と下流側に設けたスプロケットに掛け渡されて回動する主務チェーンを複数列に配置し、その主務チェーンの相互間にはフライトが適宜間隔を設けて架設されている。そして、主務チェーンの回動に伴い、当該フライトを沈殿池の底部に沿って移動させ、沈殿した汚泥を上流側に掻き寄せるよう構成されている。
【0003】
ところで、このような汚泥掻寄装置は、掻き寄せ運転を経過するに従い、主務チェーンに汚泥が付着して堆積するようになる。この場合、この汚泥に硫酸塩還元菌などの微生物が繁殖し、付着部分には酸性物質が集合するため、主務チェーンが孔食など腐蝕が進行することになり、場合によっては主務チェーンが切断するという問題があった。
【0004】
これら主務チェーンには、従来、球状黒鉛鋳鉄が用いられていたが、耐食性を高めるためフェライト系ステンレスSUS403も用いられるようになったが、酸性分濃度が高い場合には十分な耐食性を確保できないため、材料費が高価なオーステナイト系ステンレスSUS304などが必要となり、大幅なコストアップをまねくという問題があった。
【0005】
このような腐蝕問題の解決案として、これら沈殿池の水中において、掻き寄せ用主務チェーンに向けて空気や水などの流体をノズルから噴射して付着汚泥を除去するようにした汚泥掻寄装置が提案されている。(特許文献1を参照のこと)
【0006】
【特許文献1】願開平07−328325号公報:特許請求の範囲、図1など
【0007】
ところが、このような付着汚泥の除去方法では、主務チェーンの付着汚泥の除去効果が不十分であった、また洗浄結果が確認し難いという不具合のほか、特に、主務チェーンの入り組んだ部分の洗浄が十分に行い難いなどの問題点があり、チェーンの腐食を確実に予防するという目的には不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、チェーンの付着汚泥の除去が容易であり、かつ除去結果が確認でき、チェーンの腐食を確実に予防することが可能となる汚泥掻寄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題は、沈殿池の下流側から上流側に向け、底部に沿って主務チェーンを駆動し、その主務チェーンに適宜間隔をもって配置したフライトを移動させて沈殿汚泥を上流側に掻き寄せるようにした汚泥掻寄装置において、その主務チェーンの一部を水面上方に露出させる手段と、露出した主務チェーンに向けて洗浄水を噴射する洗浄手段とを設けたことを特徴とする本発明の汚泥掻寄装置によって、解決することができる。
また、本発明は、前記洗浄される主務チェーンの下方には、噴射された洗浄水を受けるトレイを配設した形態が好ましく、さらには、主務チェーンの洗浄箇所を検知するセンサと、そのセンサによって主務チェーンの洗浄箇所に洗浄水を噴射するようにした洗浄水制御装置とを備えた形態がより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚泥掻寄装置は、このように、主務チェーンの一部を水面上方に露出させたこと、この露出した主務チェーンに向けて直接に洗浄水を噴射するようにしたことなどにより、チェーンの汚泥付着状態、腐食状況、洗浄効果などの確認ができるとともに、洗浄水が妨害されないので洗浄効果が高いという利点の他、主務チェーンの入り組んだ部分の洗浄も十分に行える利点がある。さらに、前記洗浄箇所検知センサおよび前記洗浄水制御装置などを備える場合は、洗浄作業の自動化、洗浄水の節約なども期待できるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した汚泥掻寄装置として、実用的価値はきわめて大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の汚泥掻寄装置に係る実施形態について、図1〜6を参照しながら説明する。
本発明の汚泥掻寄装置を例示する図1において、沈殿池の構造と汚泥掻寄装置の運転メカニズムなどのの点は従来から知られている構造を前提としている。
上下水処理場など処理原水中の汚泥を沈殿除去するための沈殿池1には、汚泥掻寄装置が通常設けられている。一例を図2示すと、その汚泥掻寄装置は、沈殿池1の上流側11と下流側12に設けたスプロケット21(上流側水中軸スプロケット)、22(上部駆動軸スプロケット)、23(上部水中軸スプロケット)、24(下流側下部水中軸スプロケット)に掛け渡されて回動する主務チェーン3で構成されている。そして、この主務チェーン3は、図3に示すように、ステンレス鋼製のリンクプレート31、32を連結して構成され、適宜間隔にフライト取付部32bを突出させたリンクプレート32aが配置されている。
【0012】
このリンクプレート32aのフライト取付部32bと、平行に配設される隣接したチェーンのリンクプレートのフライト取付部(図示せず)との間には、長板状(例えば、長さ4650×高さ180×50mm)の合成樹脂製フライト33が架け渡して取り付けられる。そして、同様に、多数のフライト33が主務チェーン3の全周にわたって、適宜なピッチ(例えば、3048mm間隔)で配置される。
【0013】
そして、この主務チェーン3は、駆動装置34によって、約0.6m/分程度の速さで回動させ、これに伴い、フライト33を沈殿池1の底部13に沿って移動させることによって、原水から沈殿した汚泥を下流側12から上流側11の方に掻き寄せ、汚泥ピット14に集めるよう運転されるのである。
【0014】
本発明はこのような汚泥掻寄装置を前提としており、その特徴的構造は、主務チェーン3の一部を水面上方に露出させる手段と、露出した主務チェーンに向けて洗浄水を噴射する洗浄手段を設けた点にあり、具体的には、図1に示す通り、主務チェーン3は、回動するに従い、上向きガイドレール41aに導かれて水面10上に露出し、下向きガイドレール41bによって水面下に導かれるよう、それぞれガイドレール41a、41bが配置されている。そして、図4にも例示の通り、この主務チェーン3が露出した区域において、洗浄手段として洗浄水噴射ノズル51が主務チェーン3の上方位置に、洗浄水を主務チェーン3に向けて下方に噴射するよう配置されている。
【0015】
この洗浄水噴射ノズル51と主務チェーン3との位置関係は、図5に示すように、フライト33を掛け渡されている並行する2本の主務チェーン3a、3bのそれぞれの上方に洗浄水噴射ノズル51a、51bが配置される。この噴射ノズル51の洗浄水噴射方向は、直上から直下方向に向かう他、斜め上方から噴射するように設定してもよいし、洗浄水噴射ノズル51を複数本、直列に配列してもよい。
【0016】
本発明の場合、洗浄水噴射ノズル51の洗浄区域において、図4に示すように、洗浄水トレイ6を主務チェーン3に接近して配置することにより、洗浄効果を向上させることができる。この洗浄水トレイ6は、図6に示すように、主務チェーン3が通過する切り欠き部61を備えた箱型容器であり、溜まった洗浄水が切り欠き部61から溢れ出る流れによって主務チェーン3を洗浄できる利点が得られる。また、深さのより浅い洗浄水トレイ6aの場合には、噴射洗浄水の跳ね返りによって主務チェーン3の内側など落ちにくい箇所の洗浄に効果が期待できる。
【0017】
図1、4の事例では、ガイドレール41は、その上で主務チェーン3を滑らせて誘導して上昇、下降させているが、このようなガイドレールに代えて適宜な歯車機構を用いてもよい。また、露出高さは、チェーンの付着水が流れ落ちて汚損状態が目視確認できる程度の高さで十分である。
【0018】
本発明の作用効果をまとめると、次の通りである。
a)洗浄水を噴射ノズルによって主務チェーンに直接に噴射できるから、チェーンの外側のみならずリンクの内側のようなブラシなどを用いても洗浄しにくい個所まで、付着部を除去できるので、主務チェーンへの汚泥の付着を防止し、汚泥中の硫酸塩還元菌などの微生物による腐蝕も効果的に抑制することが可能となる。
b)洗浄水による洗浄区域では、主務チェーンが沈殿池の水面上に露出しているので、チェーンの汚損状態および洗浄状態が直接に目視確認できるから、汚泥の付着状態に応じて洗浄水量を調整できる。また、従来の水中での洗浄に較べて洗浄効果も大きいので、その結果、洗浄水量も節減することが可能となる。
c)洗浄手段として噴射ノズルを配置するという簡単な構造で実施可能であるから、沈殿池内壁に設けた簡単なブラケットに固定するなどコンパクトな装置が可能である。
【0019】
主務チェーン3の腐食などは、主務チェーンのリンクプレートのピン連結部分に多く認められること、主務チェーンの移動速度が比較的ゆっくりしていることから、洗浄水を連続して噴射する必要もないので、前記のような所定の洗浄箇所を検知するセンサ(図示せず)と、そのセンサによってその洗浄箇所に洗浄水を集中的に噴射するようにした洗浄水制御装置(図示せず)とを配備して、洗浄操作を間欠的に行うようにすれば、洗浄水を節約でき、洗浄の自動化も容易となるなど好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の汚泥掻寄装置を説明するための要部断面略図。
【図2】汚泥掻寄装置を備えた沈殿池全体の概要を示す断面略図。
【図3】汚泥掻寄装置の主務チェーンとフライトとの部分を示す側面図。
【図4】本発明における主務チェーンと洗浄ノズルとの関係を示す要部断面図。
【図5】本発明における主務チェーンと洗浄ノズルとの関係を示す進行方向に直角の要部断面図。
【図6】洗浄水を受けるトレイ容器を示す斜視図。
【符号の説明】
【0021】
1:沈殿池、10:水面、11:上流側、12:下流側、13:底部、14:汚泥ピット
21:上流側水中軸スプロケット、22:上部駆動軸スプロケット、23:上部水中軸スプロケット、24:下流側下部水中軸スプロケット
3、3a、3b:主務チェーン、31、32、32a:リンクプレート、32b:フライト取付部、33:フライト、34:駆動装置
41a:上向きガイドレール、41b:下向きガイドレール、42:43:44、
51、51a、51b::洗浄水噴射ノズル
6:洗浄水トレイ、61:切り欠き部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池の下流側から上流側に向け、底部に沿って主務チェーンを駆動し、その主務チェーンに適宜間隔をもって配置したフライトを移動させて沈殿汚泥を上流側に掻き寄せるようにした汚泥掻寄装置において、その主務チェーンの一部を水面上方に露出させる手段と、露出した主務チェーンに向けて洗浄水を噴射する洗浄手段とを設けたことを特徴とする汚泥掻寄装置。
【請求項2】
前記洗浄される主務チェーンの下方には、噴射された洗浄水を受けるトレイを配設した請求項1に記載の汚泥掻寄装置。
【請求項3】
主務チェーンの洗浄箇所を検知するセンサと、そのセンサによって主務チェーンの洗浄箇所に洗浄水を噴射するようにした洗浄水制御装置とを備えた請求項1または2に記載の汚泥掻寄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−229520(P2008−229520A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73846(P2007−73846)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)