説明

汚泥濃縮機

【課題】汚泥中に含まれる余剰水を効果的に除去でき、しかも、それを簡素な構造でコスト的に有利に実現できる汚泥濃縮機を提供する。
【解決手段】余剰水を含む汚泥が移送されるライン4に設けられ、二重管からなっていて、前記汚泥が内管9を通じてラインを移送されるようになされており、内管9の管壁には、汚泥中に含まれる余剰水を通す孔11…が設けられ、余剰水が、該孔11…を通じて内管9と外管10との間に送り込まれ、外管10を通じて排出されるようになされている。内管9を伸縮素材で構成し、内管9を管軸方向に伸長させる引張り機19が備えられ、該引張り機19で内管9を伸長状態にすることにより、内管9の余剰水通孔11…が拡げられ、その状態で逆洗を行うことができるようになされているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥濃縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、屎尿や下水等の廃水は、廃水処理場において、その中に含まれる懸濁物質(SS)等を汚泥濃縮槽で濃縮して分離した後に、河川等に放流されると共に、汚泥濃縮槽の濃縮汚泥は、移送ラインを通じて、ポンプにより汚泥貯留槽に送り込まれ、該貯留槽内の濃縮汚泥は、処分場に搬送されて、焼却、埋立て、コンポスト化の処理が施される。
【特許文献1】特開平11−253998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような廃水汚泥処理において、汚泥貯留槽に貯留された汚泥中には余剰水が含まれていて、この余剰水が処分場への汚泥の搬送に不都合を生じさせてしまうことがあるが、この余剰水を、簡素な構造でコスト的に有利に除去することができるようになされたものは、未だ提供されていない。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、汚泥中に含まれる余剰水を効果的に除去することができ、しかも、それを簡素な構造でコスト的に有利に実現することができる汚泥濃縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、余剰水を含む汚泥が移送されるラインに設けられ、二重管からなっていて、前記汚泥が内管を通じてラインを移送されるようになされており、内管の管壁には、汚泥中に含まれる余剰水を通す孔が設けられ、余剰水が、該孔を通じて内管と外管との間に送り込まれ、外管を通じて排出されるようになされていることを特徴とする汚泥濃縮機によって解決される(第1発明)。
【0006】
この汚泥濃縮機では、汚泥が内管を通過していく過程で、該汚泥中に含まれている余剰水が、内管の管壁の孔を通じて内管と外管との間に送り込まれ、外管を通じて排出されるようになされているので、汚泥中に含まれる余剰水を効果的に除去することができる。
【0007】
しかも、二重管からなり、汚泥が通過する内管の管壁に余剰水通孔が設けられ、外管を通じて余剰水が排出されるようになされただけの構造であり、汚泥が移送されるラインに設けられることによって、該ラインにおける汚泥移送力を利用して汚泥が内管を通過するようになされているので、余剰水の除去を、簡素な構造でコスト的に有利に実現することができる。
【0008】
第1発明において、外管に、前記余剰水を貯めるタンクが接続されると共に、外管と余剰水タンクを接続する配管にポンプが介設され、該ポンプを駆動し、余剰水タンクの余剰水を外管と内管との間に送り込むことにより、内管の余剰水通孔が逆洗されるようになされているとよい(第2発明)。
【0009】
この場合は、内管の余剰水通孔を塞ぐ汚泥を逆洗によって除去することができるのはもちろん、逆洗用の水として余剰水タンクの余剰水を使用する構成であることにより、余剰水を有効利用することができる。
【0010】
第2発明において、前記内管が伸縮素材からなると共に、該内管を管軸方向に伸長させる引張り機が備えられ、該引張り機で内管を伸長状態にすることにより、内管の余剰水通孔が拡げられるようになされて、該拡げられた状態で、前記逆洗を行うことができるようになされているとよい(第3発明)。
【0011】
この場合は、逆洗時に、内管の余剰水通孔を拡げることにより、余剰水通孔に詰まった汚泥を該通孔から外れやすくすることができると共に、逆洗水を内管の通孔に通しやすくすることができて、通孔に詰まった汚泥を、少ない量の逆洗水により、低ポンプ圧のもとで、短時間のうちに、きれいに除去することができ、伸縮素材からなる内管の逆洗による消耗も低く抑えることができる。
【0012】
また、上記の課題は、第1〜第3発明の汚泥濃縮機が、廃水処理設備において汚泥濃縮槽と汚泥貯留槽とをつなぐラインに設けられ、汚泥濃縮槽の汚泥を汚泥貯留槽に送り込むポンプにより、汚泥が前記汚泥濃縮機の内管を通過するようになされていることを特徴とする廃水処理設備によって同様に解決される。
【0013】
この設備では、汚泥貯留槽に貯留された濃縮汚泥中に含まれる余剰水を少なくすることができて、焼却、埋立て、コンポスト化の処理を行う処分場への搬送量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の汚泥濃縮機は、以上のとおりのものであるから、汚泥中に含まれる余剰水を効果的に除去することができ、しかも、それを簡素な構造でコスト的に有利に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4に示す実施形態の汚泥濃縮機1は、図1(イ)に示すように、廃水処理設備において汚泥濃縮槽2と汚泥貯留槽3とをつぐライン4に設けられているもので、該ライン4には、汚泥濃縮槽2の濃縮汚泥を汚泥貯留槽3に移送する第1ポンプ5が設けられている。なお、汚泥濃縮槽2は、受け入れる廃水6を、その中に含まれる懸濁物質等を濃縮分離した後に、河川等に放流7するもので、その濃縮汚泥が、第1ポンプ5によりライン4を通じて汚泥貯留槽3に移送されるようになされている。8は調整弁である。
【0017】
汚泥濃縮機1は、図1(ロ)(ハ)及び図2(イ)に示すように、内管9と外管10とによる二重管からなっていて、汚泥濃縮槽2からの汚泥は、内管9を通じてライン4を移送されるようになされている。外管10は金属からなり、内管9は、伸縮素材からなる本体管部9aと、該本体管部9aの両端に設けられた金属からなる端管部9b,9bとで構成されている。そして、内管9の本体管部9aの管壁には、図2(ロ)(ハ)に示すように、汚泥濃縮槽2から送られてくる汚泥中に含まれる余剰水を通す孔11…が備えられると共に、図1(イ)に示すように、外管10には配管12を介して余剰水タンク13が接続され、汚泥中の余剰水が内管9の本体管部9aの余剰水通孔11…を通じて、内管9と外管10との間に送り込まれ、外管10から配管12を通じて余剰水タンク13に排出されるようになされている。
【0018】
また、外管10と余剰水タンク13とをつなぐ配管12には、逆洗用の第2ポンプ14が設けられ、該第2ポンプ14を駆動することにより、余剰水タンク13の余剰水が外管10と内管9との間に送り込まれ、内管9の本体管部9aの余剰水通孔11…が逆洗されるようになされている。15は逆洗に用いられた水を排出する配管であり、該配管15には第3ポンプ16と調整弁17が介設され、逆洗中に第3ポンプ16を駆動することにより、逆洗に用いられた水が図示しない流量調整槽等に移送されるようになされている。
【0019】
更に、上記の内管9は、図2(ロ)に示すように、一方の端管部9bが外管10に固定18されると共に、もう一方の端管部9bが引張り機19に連結され、図2(ニ)に示すように、該引張り機19を駆動して内管9に引張り力を付与することにより、伸縮素材からなる本体管部9aが伸長して、図2(ホ)に示すように、余剰水通孔11…が拡げられるようになされており、該拡げられた状態で、上記の逆洗を行うことができるようになされている。
【0020】
上記の汚泥濃縮機1では、第1ポンプ5を駆動して汚泥濃縮槽2の濃縮汚泥を汚泥貯留槽3に移送していく過程において、該汚泥は、汚泥濃縮機1の内管9内を通過し、該通過の過程で、汚泥中に含まれている余剰水が、内管9の本体管部9aの管壁の通孔11…を通じて内管9と外管10との間に送り込まれ、外管10、配管12を通じて余剰水タンク13内に排出され、汚泥はそれにより濃縮されて内管9を出、汚泥貯留槽3に移送される。
【0021】
その過程で、図3(イ)〜(ハ)に示すように、内管9の余剰水通孔11…が汚泥20…で目詰まりをした状態となった場合は、第1ポンプ5の駆動を必要に応じて停止状態にして、図4に示すように、引張り機19と第2,第3のポンプ14,16を駆動することにより、内管9の本体管部9aを伸長させて図3(ニ)に示すように余剰水通孔11…を拡げた状態にすると共に、余剰水タンク13内の余剰水を外管10と内管9との間に送り込んで図3(ホ)に示すように余剰水通孔11…の逆洗を行えば、詰まっていた汚泥は通孔11…から外れて目詰まりが解消される。
【0022】
このように、上記の汚泥濃縮機1によれば、汚泥中に含まれる余剰水を、汚泥濃縮槽2から汚泥貯留槽3への移送過程において効果的に除去することができて、汚泥貯留槽3に貯留された汚泥を、焼却、埋立て、コンポスト化の処理を行う処分場への搬送量を少なくすることができる。
【0023】
しかも、汚泥濃縮機1は、二重管からなり、汚泥が通過する内管9の管壁に余剰水通孔11…が設けられ、外管10を通じて余剰水が排出されるようになされただけの構造であり、汚泥が移送されるラインに設けられることによって、該ラインにおける汚泥移送力を利用して汚泥が内管9を通過するようになされているので、余剰水の除去を、簡素な構造でコスト的に有利に実現することができる。
【0024】
また、逆洗機能を付与されていることにより、汚泥による余剰水通孔11…に生じる目詰まりを解消することができると共に、逆洗に余剰水を有効利用することができ、また、内管9に伸縮素材が用いられ、引っ張ることで通孔11…が拡げられるようになされているので、通孔11…に詰まった汚泥を、少ない量の逆洗水により、低ポンプ圧のもとで、短時間のうちに、きれいに除去することができ、逆洗による内管9の本体管部9aの消耗も低く抑えることができる。
【0025】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、本発明の汚泥濃縮機1を、汚泥濃縮槽2と汚泥貯留槽3とをつぐラインに設けた場合を示したが、本発明の汚泥濃縮機は、それに限らず、余剰水を含んだ汚泥が移送される各種の汚泥移送ラインに設けて用いることができるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図(イ)は実施形態の汚泥濃縮機及び廃水処理設備を示す説明図、図(ロ)は汚泥濃縮機の斜視図、図(ハ)は外管を省略した状態の斜視図である。
【図2】図(イ)は汚泥濃縮機の分解斜視図、図(ロ)は引張り前の内管の斜視図、図(ハ)は内管の管壁の拡大断面図、図(ニ)は内管を引っ張り状態にした斜視図、図(ホ)は引張り状態における内管の管壁の拡大断面図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は余剰水通孔に目詰まりを生じていく過程を示す断面図、図(ニ)は逆洗準備段階の断面図、図(ホ)は逆洗中の断面図である。
【図4】逆洗中の廃水処理設備の作動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1…汚泥濃縮機
2…汚泥濃縮槽
3…汚泥貯留槽
4…ライン
5…第1ポンプ
9…内管
10…外管
11…余剰水通孔
13…余剰水タンク
14…第2ポンプ
19…引張り機
20…汚泥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰水を含む汚泥が移送されるラインに設けられ、二重管からなっていて、前記汚泥が内管を通じてラインを移送されるようになされており、内管の管壁には、汚泥中に含まれる余剰水を通す孔が設けられ、余剰水が、該孔を通じて内管と外管との間に送り込まれ、外管を通じて排出されるようになされていることを特徴とする汚泥濃縮機。
【請求項2】
外管に、前記余剰水を貯めるタンクが接続されると共に、外管と余剰水タンクを接続する配管にポンプが介設され、該ポンプを駆動し、余剰水タンクの余剰水を外管と内管との間に送り込むことにより、内管の余剰水通孔が逆洗されるようになされている請求項1に記載の汚泥濃縮機。
【請求項3】
前記内管が伸縮素材からなると共に、該内管を管軸方向に伸長させる引張り機が備えられ、該引張り機で内管を伸長状態にすることにより、内管の余剰水通孔が拡げられるようになされて、該拡げられた状態で、前記逆洗を行うことができるようになされている請求項2に記載の汚泥濃縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一に記載の汚泥濃縮機が、廃水処理設備において汚泥濃縮槽と汚泥貯留槽とをつなぐラインに設けられ、汚泥濃縮槽の汚泥を汚泥貯留槽に送り込むポンプにより、汚泥が前記汚泥濃縮機の内管を通過するようになされていることを特徴とする廃水処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−248001(P2009−248001A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99500(P2008−99500)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】