説明

汚物流しユニット

【課題】本発明は、汚物の廃棄・洗浄作業に関する作業性に優れた汚物流しユニットを提供する。
【解決手段】少なくとも前面と上面とが遮蔽されたライニングと、前記ライニングの前面に設置されたボウルと、前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、を備え、前記ボウルの上面と、前記ライニングの上面とが近接する高さの位置にあること、を特徴とする汚物流しユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として多目的トイレに備えられる汚物流しユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
人工肛門や人工膀胱などの保持者であるオストメイトと呼ばれる人々は、身体の腹部に排泄物(以下、汚物という)を溜めておくための袋、いわゆるパウチを装着しており、時折、トイレにおいて溜まった汚物を廃棄したり、パウチの内面、ストーマ(身体の腹部に造設された排泄口)、ストーマ付近の腹部などに付着した汚物を洗い流すなどの作業を行う必要がある。
【0003】
近年、オストメイトと呼ばれる人々が外出先で気兼ねをすることなくこれらの作業を行うことのできる施設(以下、多目的トイレという)の設置が進められている。
この多目的トイレには、大便器とは別に専用の汚物流しユニットが設けられており、この汚物流しユニットには、ボウルを設置するためのキャビネット、ボウルの上方に設けられたシャワーユニットを有する水栓、ボウルに投入された汚物を排出させるためのフラッシュバルブ、液体石鹸供給器などが備えられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、オストメイトが汚物を廃棄したり、付着した汚物を洗い流したりする場合には、腹部をボウルに近接させてこれらの作業を行うが、一連の作業に必要となるもの、例えば、タオルや着替えなどを一時的に置く場所が必要となる。また、これらのものを置く場所は、作業に伴う水などにより濡れるおそれが少ない場所であることも必要となる。
そのため、例えば、特許文献1に開示されているもののような場合には、キャビネットの天井にタオルや着替えなどを一時的に置くようにしていた。
しかしながら、キャビネットは高さが高く、これの天井を物の置き場に利用するものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする位置から手が届かなくなるおそれがあった。
【0005】
また、ボウルの上方に水栓などを設けるようにすれば、目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓などが介在することになる。そのため、水栓などにより視線が遮られて作業の視認性が損なわれる場合もあった。
【特許文献1】特開2004−283394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、汚物の廃棄・洗浄作業に関する作業性に優れた汚物流しユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、少なくとも前面と上面とが遮蔽されたライニングと、前記ライニングの前面に設置されたボウルと、前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、を備え、前記ボウルの上面と、前記ライニングの上面とが近接する高さの位置にあること、を特徴とする汚物流しユニットが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、汚物の廃棄・洗浄作業に関する作業性に優れた汚物流しユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態に係る汚物流しユニットを例示するための模式斜視図である。
図1に示すように、汚物流しユニット1には、多目的トイレなどの壁面に設けられるライニング6、ライニング6の前面に設置されるボウル2、ボウル2の上部開口付近の内壁に設けられる水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5、ライニング6の上面に設けられるキャビネット25などが備えられている。
【0010】
図2は、ボウル2を例示するための模式図であり、図2(a)は模式平面図、図2(b)は模式正面図である。
また、図3は、ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
ボウル2は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
【0011】
図2、図3に示すように、ボウル2は、汚物の洗浄や投入がしやすいように上面が大きく開口され、前面10にはリップ部8が設けられている。リップ部8は、背の高いオストメイトであってもこのリップ部8に腹部を押し当てて容易に汚物の処理ができるような形状となっている。すなわち、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物を処理している最中に汚物が漏出しても汚物がボウル2の中に自然に入っていくように、ボウル2の外側に向けて凸状に湾曲した形状となっている。
【0012】
また、リップ部8は、ボウル2の溢れ面を形成している。ここでいう溢れ面とは、ボウル2の排水部9が詰まった時などに、ボウル2の外に汚水が流れ出す面のことである。このような溢れ面が形成されていると、排水部9が詰まるという異常事態が起きても、汚水は溢れ面から外に流れ出すので、他の部分が汚れることを抑制することができる。本実施の形態においては、図3に示すように、ボウル2の上面形状が前面10の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしているため前面10の側にあるリップ部8の高さが上面では一番低くなり、リップ部8が溢れ面となる。そのため、排水部9が詰まるという異常事態が起きても、汚水がライニング6の側に流れ出ることがなく、ライニング6や多目的トイレの壁面などが汚れるのを抑制することができる。
【0013】
また、ボウル2の前面10(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル2の背面側(前面10と対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。そのため、図3に示すように、ボウル2の下部に空間11が形成されるようになる。そして、この空間11に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をすることが容易となる。
また、ボウル2の側面12a、側面12bはボウル2の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面12a、側面12bを膝などで抱きかかえるようにして挟むこともできる。そして、側面12a、側面12bを膝などで挟むことができれば、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をする際の作業の安定性を向上させることができる。
【0014】
図3に示すように、ボウル2の下部には封水部13が設けられている。そして、ボウル2の内部と排水部9とを封水部13を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。尚、排水部9は図示しない排水管と接続されており、汚物が外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。
ボウル2の前面10と対向する側の面には、開口縁部に連接する傾斜面15が設けられている。また、傾斜面15には、水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などを取り付けるための孔14が設けられている。そして、孔14に取り付けられた水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などの上端部分が、オストメイトが作業する側(前面10の側)の上方に向けて突出するようになっている。そのため、水栓3などを操作する際の作業性を向上させることができる。また、水栓3、液体石鹸供給器4などの吐水口をボウル2の内部に位置するようにすることができるので、オストメイトが汚物の廃棄や洗浄などの作業を行う際に汚物がボウル2の外部に飛び散ることを抑制することができる。
【0015】
尚、傾斜面15は必ずしも必要ではなく、水栓3などをボウルの上部開口付近の内壁(例えば、略垂直な内壁)に備えるようにすることもできる。ただし、傾斜面15を設けて、そこに水栓3などを備えるものとすれば、前述したように水栓3などを操作する際の作業性を向上させることができる。
【0016】
また、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5は、必ずしも傾斜面15に備えられている必要はない。例えば、ボウル2の上方のキャビネット25やライニング6などに備えるようにすることもできる。ただし、これらを傾斜面15に備えるようにすれば、移動を伴わずともこれらのものに手が届くので、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0017】
本実施の形態においては、このようにボウル2の背面側の上部開口付近の内壁に水栓3などの装置を備えるようにしているため、オストメイトが行う汚物の廃棄や洗浄などの作業の高さ方向位置と水栓3などの装置の高さ方向位置とを近接させることができる。すなわち、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓3などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓3などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓3と液体石鹸供給器4との間の隙間、水栓3とフラッシュバルブの操作部5との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0018】
また、水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などの装置をボウル2に直接設けるようにしているため、汚物流しユニット1の設置スペースを少なくすることもできる。オストメイトが使用をする汚物流しユニット1は、駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置されることが多い。また、通常のトイレの大便器が設置されるような個室にも設置されることを考慮することが好ましい。このような、パブリックスペースなどでは、比較的狭いスペースしか確保できない場合もあるが、本実施の形態に係る汚物流しユニット1はそのような場所にも設置が可能となる。
【0019】
また、図3に示すように、ボウル2の上部の開口縁部にはリム部16が設けられている。そして、このリム部16の内壁面は、ボウル2の内壁面となだらかに連接するようになっている。また、リム部16の内壁面には、ボウル2内に噴出された水の旋回流を形成させるための案内部16aが設けられている。尚、案内部16aはその断面を凹状として、旋回流を形成させやすくすることもできる。
ボウル2には、案内部16aに向けて水道水などの水を噴出する噴出口16bが設けられ、噴出口16bには図示しない水タンクなどの給水源が接続されている。また、フラッシュバルブの操作部5を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水が噴出口16bを介して案内部16aに噴出されるようになっている。そして、水道水などの水は、噴出口16bから水平方向に噴出され、噴出された水は案内部16aに沿ってボウル2の上縁部分をほぼ一周旋回しながら、ボウル2の壁面などに付着した汚物を封水13の内へ流し込む。すなわち、ボウル2内に噴出された水は案内部16aに沿うようにして旋回流を形成し、ボウル2の壁面などに付着した汚物を除去しつつ封水13の内へ流し込む。封水13の中に流れ込んだ汚物はボウル2内に噴出された水とともに排水部9から外部に排出される。
【0020】
本実施の形態におけるリム部16の内壁面は、ボウル2の内壁面となだらかに連接するようになっている。そのため、内面壁に突出部や張り出し部がなく、突出部や張り出し部により水流が遮られるために汚物が付着しやすかったり、また、除去と清掃がし難いような部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル2の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル2内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができ、また、衛生面にも優れた汚物流しユニット1とすることができる。
【0021】
ライニング6は、多目的トイレなどの壁面に設けられ、その前面にはボウル2が設置される。また、ライニング6は、少なくとも前面と上面とが遮蔽された奥行方向に薄い箱形状を呈しており、堅牢なフレーム部材と複数枚の板状部材とから形成されている。尚、ライニング6の側面が多目的トイレなどの空間に露出する場合には、これを側面板で覆うようにすることが好ましい。また、背面側(多目的トイレなどの壁面側)、底面側(床面側)にも板状部材を設けるようにすることができる。また、ライニング6の内部には、ボウル2やボウル2に設けられる水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などの配管を設けるようにすることもできる。
【0022】
本実施の形態においては、ボウル2の背面側の上面高さ(ボウル2の最も高い部分の高さ)と、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしている。すなわち、ボウル2の上面と、ライニング6の上面とが近接する高さの位置となるようにしている。例えば、図3に例示をしたものでは、ボウル2の背面側の上面と、ライニング6の上面とが略同一の高さの位置となるようにしている。ただし、必ずしも同一高さとする必要はなく、両者の高さ方向の位置関係が近接していればよい。尚、後述する鏡26による視認性、扉25aの前方に形成されるスペースの有効利用などを考慮すれば、両者の高さが略同一か、ボウル2の背面側上面の高さの方が若干低くなるようにすることが好ましい。このように両者の高さを近接させたものとすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする高さ方向の位置と、ライニング6の上面の高さ位置とを極力近接させることができる。
【0023】
そのため、ライニング6の上面を、オストメイトが行う一連の作業に必要となるもの(例えば、タオルや着替えなど)を一時的に置く場所として利用するのに適した高さ、すなわち、オストメイトが行う作業姿勢のままでもこれらのものに手が届く高さとすることができる。その結果、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0024】
ここで、本発明者の得た知見によれば、ライニング6の上面の高さ寸法を床から700mm以上、900mm以下とし、奥行き寸法を200mm〜250mm程度とすれば、オストメイトが廃棄・洗浄作業をする姿勢のままで物を置いたり、取ったりすることが容易となる。そして、ライニング6の上面の高さ寸法をこのようにすれば、ボウル2の背面側の上面高さ寸法もこれと近接したものとなるので、ボウル2のリップ部8の高さ寸法も650mm程度とすることができる。そのため、オストメイトがリップ部8に腹部を押し当て行う立ち作業のみならず、例えば、車椅子使用者がカテーテル内の尿を廃棄するような座り作業にも適した高さとすることができる。
【0025】
この場合、作業に必要となる水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などや、ライニング6の上面もすべて近接した高さにあるので、車椅子使用者などが行う座り作業においても作業性を向上させることができる。
【0026】
そして、ボウル2の背面側の上面高さと、ライニング6の上面高さとを近接させたものとしても、水栓3や液体石鹸供給器4などがボウル2内に設けられているので、作業にともなう水などでライニング6の上面が濡れることを抑制することができる。すなわち、ライニング6の上面は、いわゆるドライカウンターとして利用することができる。
【0027】
図1に示すように、ボウル2の背面側のライニング6の上部にはキャビネット25が設けられている。キャビネット25は、その内部に空間を有し、例えば、フラッシュバルブの本体部21、電気温水器27、図示しない液体石鹸供給器4のタンクなどを設置したり、メンテナンス用の部品、洗剤、トイレットペーパーなどの消耗品を収納させたりすることができる。キャビネット25の前面には開閉式の扉25aを設けることができ、内部に設置された装置などのメンテナンスや消耗品などの出し入れが容易となっている。扉25aは、いたずら行為を防止するため施錠可能、または、取っ手などを設けずに開けにくい構造とすることが好ましい。尚、キャビネット25の前面に扉を設けずに、例えば、側面などに扉を設けるようにすることもできる。
【0028】
また、キャビネット25の奥行き寸法を小さく(薄く)するものとすれば、扉25a前方のライニング6上面にスペースができるので、ここを一時的に物を置く場所として利用することが可能となる。また、キャビネット25の幅寸法を小さくすれば、キャビネット25側方のライニング6上面のスペースが拡がるので、物が置きやすくなる。
【0029】
キャビネット25の前面(図3に例示をしたように、扉25aが備えられたものの場合は扉25aの前面)には、鏡26が設けられている。鏡26は、オストメイトがストーマやストーマの周辺を視認することなどに用いる。オストメイトの体格によっては、腹などに隠れてストーマやその周辺が視認しづらい場合がある。そのような場合、鏡26を設けるものとすれば、ストーマやその周辺の洗浄状況やストーマの装着状況を視認することが容易となる。
【0030】
本実施の形態においては、鏡26をキャビネット25の扉25aに設けるものとしている。そのため、オストメイトが作業を行う場所の正面に鏡26が設けられていることになり、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
【0031】
この場合、鏡26の下端とライニング6の上面とが近接するようにすることが好ましい。鏡26の下端とライニング6の上面とが近接していれば、映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。例えば、図1や図3に例示をしたものでは、鏡26の下端とライニング6の上面とが当接する程度に近接させるものとしている。ただし、鏡26の下端とライニング6の上面とを当接させる必要はなく、隙間を設けるようにすることもできる。
【0032】
また、鏡26の前面位置とライニング6の前面位置とが近接するようにすることが好ましい。鏡26がライニング6の前面側にあるほど映し出すことができる範囲を拡げることができ、前述の視認が容易となる。この場合、鏡26をライニング6の前面側に出せば、扉25aの前面に形成されるスペースは少なくなる。そのため、キャビネット25内部に設けることが必要な空間の大きさ、扉25aの前面に形成されるスペースの必要性、ストーマやストーマの周辺に対する視認性などを考慮して、キャビネット25などの奥行き寸法を決めるようにすることが好ましい。
【0033】
本実施の形態に係るボウル2は、ボウル2の背面側の上面高さとライニング6の上面高さとを近接したものとしている。また、上面形状が前面10の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしている。そして、水栓3などはボウル2の背面側の上部開口付近の内壁に設けられている。そのため、鏡26の下端より上方に設けられるものが極めて少なく、鏡26に映し出すことができる範囲を拡げることができる。また、オストメイトの視線が水栓3などに遮られることもない。
【0034】
図4は、水栓3を例示するための模式斜視図である。
水栓3には、水道水などの水を吐水させるための吐水ヘッド19と、吐水ヘッド19に接続された可撓性のホース17と、ホース17の収納と引き出しが可能な水栓取り付け部18と、が設けられている。吐水ヘッド19は、水栓取り付け部18からホース17とともに引き出して使用することができ、水道水などの水を所望の位置や向きで吐水させることができる。吐水ヘッド19が水栓取り付け部18に装着されている状態では、水がボウル2内に落下しやすいように、吐水ヘッド19は若干前向きに傾斜して設置されている。
【0035】
そして、吐水ヘッド19を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル2の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド19が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル2の内壁が常に洗い流され衛生面に優れた汚物流しユニット1となっている。また、吐水ヘッド19が水栓取り付け部18に装着されているままでもパウチ内などの洗浄がしやすいようにもなっている。また、吐水ヘッド19を引き出すことで、オストメイトが服を脱いでストーマやストーマ周辺を洗浄したり、ボウル2内部を局所的に洗浄したりすることがしやすいようにもなっている。
【0036】
また、水栓3は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓3のヘッド部20を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部20を押すことで吐水を停止させることができる。吐水ヘッド19は、シャワー状の吐水をさせるものとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0037】
ホース17が吐水ヘッド19とともに水栓取り付け部18から引き出され、ボウル2の上部開口付近で吐水ヘッド19から吐水をさせる場合において、ホース17の撓んだ部分が封水部13の封水に触れないようなホース17の長さとすることが好ましい。
また、水栓取り付け部18にホース17を収納させやすいようにするため、ホース17の収納(水栓取り付け部18への引き込み)を助長する図示しない付勢手段を設けるようにすることもできる。
【0038】
本実施の形態においては、ボウル2の背面側の上部開口付近に水栓3を設けるようにしているため、オストメイトが行う洗浄作業の位置と水栓取り付け部18の位置とを近接させることができる。そのため、水栓取り付け部18からの吐水ヘッド19の引き出し量を少なくすることができ、その分、引き出されるホース17の長さを短くすることができる。その結果、ホース17のたわみ量をも少なくすることができ、撓んだホース17が封水部13に触れることを防止することができる。
【0039】
また、キャビネット25の内部に設けられた電気温水器27により、水栓3から温水を吐水させることもできる。また、温水と水道水などの水との混合割合を調整するための調整手段を設けて水栓3から吐水させる水の温度を調整するようにすることもできる。
【0040】
また、水栓3の配管には図示しないバキュームブレーカを設けるようにすることができる。バキュームブレーカは、ボウル2のリップ部8よりも上方に位置するようにして設けられる。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、吐水ヘッド19を汚物などで汚してしまったような場合でも上流側(水道水側)が汚されるのを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図示しないバキュームブレーカは、例えば、キャビネット25の内部に設けるようにすることができる。
【0041】
図5は、フラッシュバルブを例示するための模式図である。
フラッシュバルブは、ボウル2の内壁に付着した汚物などを水圧を利用して一気に洗い流すためのものであり、前述したように、操作部5を操作することにより、水タンクなどの給水源からの水が汚物流し用水配管24を介して噴出口16bから案内部16aに噴出されるようになっている。
【0042】
また、フラッシュバルブの本体部21の下部(下流側)には、バキュームブレーカ22が設けられており、フラッシュバルブの本体部21の左側部は上流側の水配管23と接続されている。そして、水配管23は図示しない水タンクなどの給水源と接続されている。
【0043】
また、バキュームブレーカ22は、ボウル2のリップ部8よりも上方に位置するようにして設けられている。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、上流側(水道水側)が汚物などにより汚されたりすることを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。尚、図1に示したように、フラッシュバルブの本体部21はキャビネット25の内部に設けられている。
液体石鹸供給器4は、少量の液体石鹸を吐出可能とするものであり、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクや吐出手段などを備えている。尚、液体石鹸供給器4は、必ずしも必要ではなく省くこともできるが、公衆衛生の観点からは設けられていた方が好ましい。また、液体石鹸供給器4の変わりに、あるいは液体石鹸供給器4とともに、消毒液供給器などを設けるようにすることもできる。尚、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクは、例えば、キャビネット25の内部に設けるようにすることができる。
【0044】
図6は、電気温水器27を例示するための模式斜視図である。
図6に示すように、電気温水器27は、箱形状の本体51を備え、本体51の左側面には電源スイッチ52と湯温調節ダイヤル53が、前面には膨張弁操作レバー54、電源コード59、水抜栓67及び排水栓69が、上面には給水口55、出水口56、出湯口57、膨張水排水口58、吸気栓68がそれぞれ設けられている。また、本体51の内部には、図示しない貯湯タンク、貯湯タンク内の水を加熱するためのシーズヒータなどが設けられている。尚、電気温水器27は先止式であって、出水口56及び出湯口57よりも下流側の管路での開閉が可能となっている。
【0045】
その他、多目的トイレの壁面またはライニング6にトイレットペーパーホルダ7を設けるようにすることもできるし、衣類をかけるためのフックなどを適宜設けるようにすることもできる。
【0046】
次に、汚物流しユニット1の作用について説明をする。
オストメイトは、汚物の廃棄・洗浄作業を行うに先立ち、一連の作業に必要となるもの、例えば、タオル、新しいパウチ、着替えなどをボウル2の近傍のライニング6の上面に置く。
【0047】
次に、身体に装着していたパウチを外して、水栓3から吐水される水でこのパウチの内部を洗浄したり、ストーマ及びその周辺を洗浄したりする。この際、図4に示したように、吐水ヘッド19を水栓取り付け部18から引き出して吐水をさせるようにすることができる。また、冬場などにおいては、水栓3から所望の温度の温水を吐水させることもできるし、液体石鹸供給器4から液体石鹸を出して、手やパウチなどの洗浄を行うこともできる。 本実施の形態に係る汚物流しユニット1においては、前述したように、ホース17の撓み量を少なくすることができるので、撓んだホース17が封水部13に触れることを防止することができる。そのため、洗浄作業の作業性を向上させることができるのみならず、衛生的でもある。
【0048】
また、前述したように、吐水ヘッド19を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル2の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド19が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル2の内壁が常に洗い流され衛生的である。
【0049】
こうした汚物の廃棄・洗浄作業を行っている最中に、例えば、汚物がストーマから勢い良く飛び出したり、パウチ内やストーマ廻りの汚物の量、状態、洗い方などによって汚物が周囲に飛び散ったりして、不本意にも周辺を汚してしまうことがある。このような場合であっても、本実施の形態に係る汚物流しユニット1は、ボウル2のリム部16の内壁面がボウル2の内壁面となだらかに連接するようになっているため、汚物が付着しやすく、また、除去と清掃がし難い部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル2の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル2内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができるのみならず、衛生的でもある。
【0050】
次に、ストーマ及びその周辺を洗った後、タオルやトイレットペーパーなどでストーマやその周辺に付いた水を拭き取り、新しいパウチをストーマに装着する。
次に、操作部5を押し、フラッシュバルブの本体部21を作動させてボウル2の内壁面を洗い流すとともに、排水部9を介して汚物をボウル2の外部に一気に排出させる。この際、吐水ヘッド19からも吐水をさせてボウル2の内壁を洗い流すようにすることもできるし、吐水ヘッド19を水栓取り付け部18から引き出して吐水をさせることで、ボウル2の各所などを洗浄することもできる。
【0051】
本実施の形態に係る汚物流しユニット1においては、洗浄などの作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓3などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓3などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓3と液体石鹸供給器4との間の隙間、水栓3とフラッシュバルブの操作部5との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0052】
また、前述したように、オストメイトが作業を行う場所の正面には鏡26が設けられているので、移動や体の向きを変えることなくストーマやストーマの周辺を視認することができる。
また、鏡26の下端とライニング6の上面とが近接するようにしてあるので、映し出すことができる範囲が広く、かつ、オストメイトの視線が水栓3などに遮られることもないので前述の視認が容易となる。
また、これら一連の作業において必要となる装置、例えば、水洗3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5が廃棄・洗浄作業をする位置の近くに設けられている。そして、ライニング6の上面高さが低く、かつ、廃棄・洗浄作業をする位置とライニング6の上面の位置とが同一平面に近い状態となっている。そのため、オストメイトが行う作業姿勢のままでも、これらの装置やライニング6の上面に一時的に置いた物に容易に手が届くため、オストメイトにとって使い易いシステムとなっている。
【0053】
また、水栓3などをボウル2に直接設け、電気温水器27などもキャビネット25の内部に設けるようにしているので、汚物流しユニット1の設置スペースを少なくすることができる。そのため、設置スペースの狭いパブリックスペースやトイレの個室などにも設置が可能となりオストメイトにとって便利なシステムとなっている。
また、本実施の形態に係るボウル2は、そのリップ部8がボウル2の外側に向けて凸状に湾曲した形状をしている。そのため、背の高いオストメイトであってもリップ部8に腹部を押し当てやすく、容易に汚物の廃棄や洗浄をすることができる。
【0054】
また、ボウル2の前面10(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル2の背面側(前面10対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。この傾斜により形成される空間11に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄が容易となる。
【0055】
また、ボウル2の側面12a、側面12bはボウル2の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面12a、側面12bを膝などで挟むことができ、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄作業の安定性を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0057】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0058】
例えば、汚物流しユニット1に設けられる各要素などの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0059】
また、汚物流しユニット1の設置場所も多目的トイレに限定されるわけではなく、例えば、通常のトイレの大便器が設けられるような個室などにも設置をすることができる。
【0060】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る汚物流しユニットを例示するための模式斜視図である。
【図2】ボウル2を例示するための模式図であり、図2(a)は模式平面図、図2(b)は模式正面図である。
【図3】ボウルの設置を例示するための模式断面図である。
【図4】水栓3を例示するための模式斜視図である。
【図5】フラッシュバルブを例示するための模式図である。
【図6】電気温水器27を例示するための模式斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 汚物流しユニット、2 ボウル、3 水栓、4 液体石鹸供給器、5 操作部、7 トイレットペーパーホルダー、8 リップ部、9 排水部、10 前面、11 空間、12a 側面、12b 側面、13 封水部、15 傾斜面、16 リム部、16a 案内部、16b 噴出口、17 ホース、18 水栓取り付け部、19 吐水ヘッド、20 ヘッド部、21 フラッシュバルブの本体部、22 バキュームブレーカ、23 水配管、24 汚物流し用水配管、25 キャビネット、26 鏡、27 電気温水器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面と上面とが遮蔽されたライニングと、
前記ライニングの前面に設置されたボウルと、
前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、
を備え、
前記ボウルの上面と、前記ライニングの上面とが近接する高さの位置にあること、を特徴とする汚物流しユニット。
【請求項2】
前記ボウルの上面と前記ライニングの上面とが、略同一の高さの位置にあること、を特徴とする請求項1記載の汚物流しユニット。
【請求項3】
前記ボウルの上面は、前記ライニングの上面より低い高さの位置にあること、を特徴とする請求項1記載の汚物流しユニット。
【請求項4】
前記ライニングの上面の高さの位置は、床から700mm以上、900mm以下であること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の汚物流しユニット。
【請求項5】
前記ライニングの上面に設けられたキャビネットと、
前記キャビネットの前面、あるいは、前記キャビネットの前面に備えられた扉の前面に設けられた鏡と、を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の汚物流しユニット。
【請求項6】
前記鏡の下端と、前記ライニングの上面とが近接していること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の汚物流しユニット。
【請求項7】
前記ボウルの内側に水を噴出させるためのフラッシュバルブの操作部と本体部とを備え、
前記フラッシュバルブの操作部は、前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられ、
前記フラッシュバルブの本体部は、前記キャビネットの内部に設けられていること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の汚物流しユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−284043(P2008−284043A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129904(P2007−129904)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】