説明

沸騰水型原子炉のサイクル停止を低減する単一サイクルおよび平衡状態の燃料装荷方法および燃料装荷システム

【課題】寿命の尽きた燃料バンドルを撤去し、新燃料バンドルを設置し、再使用する既存燃料バンドルの位置を入れ替える炉心装荷戦略を提供する。
【解決手段】偶数の燃料装荷サイクル時に移動させるべき燃料バンドルを表す偶数サイクル燃料バンドル移動マップを規定し、奇数サイクル時に移動させるべき燃料バンドルを表す奇数サイクル燃料バンドル移動マップを規定し、これらの燃料バンドル移動マップで特定された位置からバンドルを受け入れる別の位置を特定する排出マップを規定し、前の燃料取り替えサイクルからの燃料バンドルのうちのどの燃料バンドルを、その後の燃料サイクルの炉心の別の位置に移動させるかを示す位置の入れ替え指示を出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉(BWR)の燃料取り替えのための燃料炉心装荷に関する。本発明は詳細には、次の燃料サイクル中に、寿命の尽きた(「燃焼した」)燃料バンドルを撤去し、新燃料バンドルを設置し、炉心内で再使用する各既存燃料バンドルの位置を入れ替える炉心装荷戦略に関する。
【背景技術】
【0002】
このBWRの炉心は一連の燃料バンドルを備えている。各燃料バンドルは放射性物質で形成された複数の配列燃料棒を収容している。炉心内には、各バンドルに対する放射能曝露限界などの設計上の制約に基づいて、複数のバンドルが配置されている。炉心の放射能が原子炉内の水を加熱する。この原子炉は、一般にたとえば1年、1年半または2年のサイクル期間を有する燃料サイクルに従って運転している。原子炉は各燃料サイクルの終わりに運転を停止して燃料の取り替え、炉心および原子炉容器の保守、修理を行う。燃料取り替えの間、燃料バンドルが炉心から取り外され、再使用する各バンドルは現在の炉心位置にそのまま残されるかまたは次のサイクルの新しい炉心に位置を入れ替えられるか、また新しい燃料バンドルが炉心に設置される。
【0003】
燃料装荷操作時は、原子炉容器上部のクレーンが燃料バンドルを移動させる。既存バンドルを移動するために、クレーンはそのバンドルの上部に位置し、バンドルを捕らえ、炉心の外へバンドルを持ち上げ、炉心をタンクかまたは新しい炉心位置に移動させ、バンドルをそのタンクかまたは新しい炉心位置に下げる。各燃料バンドルをクレーンで移動させるのには一般に数分が必要である。1つの炉心を装荷する過程で、いくつかのバンドルは、たとえば、炉心位置からタンクまでと新しい炉心位置に戻るまでとの2度移動される。これまでは、炉心装荷計画および炉心装荷マップが複雑であり、かつ炉心内の大方の燃料バンドルの移動を伴った。
【0004】
炉心内には数百本のバンドルがある。全バンドルまたは大部分のバンドルだけを移動するには多くの日数が必要である。燃料装荷プロセスは完了するのに7日から14日を要することが多く、3日未満で完了することは稀であった。バンドルの配置ミスは稀ではあるが、間違った炉心位置にバンドルを配置する危険性はバンドルの配置数の増加とともに増加する。炉心内で再配置する、たとえば位置を入れ替えるバンドルの数を低減する切実な必要性が長年ある。
【0005】
炉心装荷戦略に従って、炉心内には複数のバンドルが配置されている。実行可能な炉心装荷戦略は一般に、炉心および燃料バンドルが必ず熱余裕(たとえば、限界出力比(CPR)における加熱および各バンドルの全長に沿った加熱(kw/フィート))および反応度余裕(たとえば、ホットエクセス(HOTEX)、運転停止余裕(SDM)、サイクル終了時(EOC)のエネルギ)に準拠するようにしている。炉心および各バンドルの熱余裕および反応度余裕に適合するために、燃料取り替え時の燃料バンドルの位置の入れ替えがしばしば用いられる。炉心装荷戦略は、燃料バンドルが必ず過大限界を超えないようにすることもできる。炉心装荷戦略は、燃料取り替えの各操作時に装荷する新燃料バンドルの位置と種類も決定する。
【0006】
従来の炉心装荷戦略では、再使用するために大部分のまたはすべての曝露した燃料バンドルの位置を入れ替えることは一般に行われていなかった。大規模なバンドル位置入れ替えは、適当な熱および反応度余裕限界を与えるために行われた。過剰な位置の入れ替えは、炉心の燃料取り替えに必要な時間を増加させ、バンドルが間違った炉心位置に配置される危険性を増加させる。
【0007】
炉心戦略は、熱および反応度余裕およびその他の炉心設計基準に準拠した「平衡状態」の炉心を設計目標として有していてもよい。「平衡状態」の炉心は、連続する燃料サイクル間で炉心内の炉心燃料の装荷の変化および炉心内のバンドルの曝露の変化が極めてわずかである。平衡状態の戦略は、同一の燃料バンドル装荷計画、新燃料の定義およびサイクル毎の燃料棒パターンの消耗を使用することを促す。炉心装荷への平衡状態のアプローチは、燃焼したバンドルが撤去されて新燃料が挿入される予定の炉心位置を最小限にし、また位置を入れ替えるバンドルを取り出し、配置する炉心位置は1つの炉心装荷サイクルから別の炉心装荷サイクルまで大きくは変わらない。平衡状態に達するには一般にいくつかの燃料装荷サイクル、たとえば、8から10サイクルを要する。この平衡状態の炉心の装荷計画は、多数の燃料サイクルにわたって継続する炉心装荷戦略における望ましい達成目標に相当する。この「平衡状態」戦略は、経済的および計画的考慮事項のために製造業者や顧客が長期の炉心装荷戦略を作成するのを手助けする。平衡状態炉心装荷計画は、1つの炉心装荷戦略を他の炉心装荷戦略と比較するのに用いてもよい。
【0008】
燃料バンドルを装荷するのに必要な時間を低減するためには、燃料取り替え各操作時に移動させる燃料バンドルを低減する方法およびシステムが必要である。燃料装荷の方法およびシステムは、新燃料バンドル、燃焼した燃料バンドルの撤去および2回または3回連続する燃料サイクル間でのバンドルの再使用に対する炉心装荷戦略を考慮する必要がある。撤去する燃焼したバンドルの選択、位置を入れ替える既存バンドルの特定と新しい炉心位置の決定、および新バンドルの選択とその炉心位置の特定は、炉心装荷戦略によって決定される。
【0009】
炉心装荷プロセスを簡略化し、燃料バンドルの除去、位置の入れ替えおよび炉心内への燃料バンドル装荷を行うのに必要な時間を低減する炉心装荷戦略に対する切実な必要性が長年ある。また、低減された装荷サイクル数で平衡状態に達し、連続する装荷サイクル間で炉心装荷の変更が少ない平衡状態に達する炉心装荷戦略に対する切実な必要性も長年ある。
【特許文献1】米国特許第号6748348
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
炉心が一連の燃料位置を含む、原子炉の炉心用の燃料装荷データを発生する方法であって、偶数の燃料装荷サイクル時に他の炉心位置に移動させる各燃料バンドルの偶数サイクル燃料バンドル移動マップを規定する段階と、奇数の装荷サイクルと偶数の装荷サイクルが交互に行いかつ連続する炉心燃料取り替えサイクルである奇数の装荷サイクル時に他の炉心位置に移動させる各燃料バンドルの奇数サイクル燃料バンドル移動マップを規定する段階と、偶数サイクルおよび奇数サイクルの各燃料バンドル移動マップで特定された各位置からバンドルを受け入れる別の各位置を特定する排出マップを規定する段階と、前の燃料サイクルからの燃料バンドルのうちのどの燃料バンドルを、その後の燃料サイクルの炉心の別の各位置のうちの1つに移動させるかを示す位置の入れ替え指示を出す段階とを含み、偶数の燃料装荷サイクル時に移動させるバンドルは偶数サイクルバンドル移動マップで移動させるよう特定した各燃料バンドルから選定され、奇数の燃料装荷サイクル時に移動させるバンドルは奇数サイクル燃料バンドル移動マップで移動させるよう特定した各燃料バンドルから選定される燃料装荷データを発生するための方法が開発された。
【0011】
この方法はさらに、それ以前に2回の燃料サイクルを経験した燃料バンドルの位置を特定する偶数サイクル移動マップと奇数サイクル移動マップを準備する段階を含んでいてもよく、また排出マップは3回目の燃料サイクルにかけられる燃料バンドルを受け入れる炉心位置を特定する。この方法は追加の段階、すなわち、各偶数燃料装荷サイクルにおいて、新燃料バンドルのための位置を特定する炉心用偶数新燃料装荷マップを規定する段階と、各奇数燃料装荷サイクルにおいて、新燃料バンドルのための位置を特定する炉心用奇数新燃料装荷マップを規定する段階と、偶数燃料装荷サイクル向けの偶数新燃料装荷マップに基づき新燃料装荷指示を出す段階と奇数燃料装荷サイクル向けの奇数新燃料装荷マップに基づき新燃料装荷指示を出す段階とを含んでもよい。
【0012】
炉心が一連の燃料位置を含む、原子炉向けの平衡状態炉心装荷戦略を作成するための方法であって、偶数燃料装荷サイクル時に、偶数燃料装荷サイクル向けの燃料装荷マップを、偶数サイクル新燃料装荷テンプレート、移動される予定のバンドルの燃料位置を特定する偶数サイクルバンドル移動テンプレート、および撤去される予定の2回使用した燃料バンドルの燃料位置を特定する排出マップに基づき発生する段階と、奇数燃料装荷サイクル時に、偶数燃料装荷サイクルと交互に行いかつこのサイクルと連続する奇数燃料装荷サイクル向けの燃料装荷マップを、奇数新燃料装荷テンプレート、および奇数移動テンプレート、および撤去される予定の2回使用した燃料バンドルの燃料位置を特定する排出マップに基づき発生する段階と、発生した偶数サイクル燃料装荷マップと、この偶数サイクル燃料バンドル装荷マップで特定された各燃料バンドルの曝露レベルに関するデータとに基づき偶数サイクル燃料バンドル曝露マップを発生する段階と、発生した奇数サイクル燃料装荷マップと、この奇数サイクル燃料装荷マップで特定された各燃料バンドルの曝露レベルに関するデータとに基づき奇数サイクル燃料バンドル曝露マップを発生する段階と、少なくとも偶数燃料装荷サイクルと奇数燃料装荷サイクルの2つの連続するループに対して、燃料装荷マップおよび燃料バンドル曝露マップを発生するステップを繰り返す段階と、2つの連続する偶数サイクルについて各偶数サイクル燃料バンドル曝露マップを比較し、各曝露マップが所定の類似性レベル以内にあることによって収束しているかどうか判定する段階と、連続する偶数サイクル燃料バンドル曝露マップが収束していない場合は、少なくとも偶数燃料装荷サイクルと奇数燃料装荷サイクルの2つの連続するループに対して、燃料装荷マップおよび燃料バンドル曝露マップを発生し、連続する偶数サイクル燃料曝露マップを比較するステップを繰り返す段階と、連続する偶数サイクルのファンネルが収束している場合は、炉心用平衡状態燃料装荷戦略を報告する段階とを含む平衡状態炉心装荷戦略を作成するための方法が開発された。
【0013】
原子炉向けの、核燃料バンドルの炉心内の位置を特定する一群の炉心マップであって、奇数サイクルおよび偶数サイクルは交互に行われかつ連続する炉心燃料取り替えサイクルである、新燃料バンドルを受け入れる炉心位置の偶数サイクル新燃料マップと、新燃料バンドルを受け入れる炉心位置の奇数サイクル新燃料マップと、他の位置に移動されるバンドルの偶数サイクル移動マップと、他の位置に移動されるバンドルの奇数サイクル移動マップと、偶数サイクルおよび奇数サイクル各移動マップで特定された位置からバンドルを受け入れる他の位置を特定する排出マップとを備える一群の炉心マップが開発された。偶数サイクル移動マップおよび奇数サイクル移動マップは、それ以前に2回の燃料サイクルを経験した燃料バンドルの位置を特定し、かつ排出マップは3回目の燃料サイクルにかけられる燃料バンドルを受け入れる炉心位置を特定する。さらに、この偶数サイクル移動マップは偶数サイクル新燃料マップの一部分でもよく、この一部分は、新燃料マップ内のこの一部分ではない新燃料位置に対して炉心内で半径方向外側に向かって配置される。
【0014】
偶数サイクルおよび奇数サイクル新燃料マップで新燃料バンドルを受け入れるように特定されたすべての炉心位置と排出マップで排出するように特定されたすべての炉心位置とを加算したものは炉心内の全燃料バンドル位置の合計と等しい。偶数サイクル移動マップで移動させることが特定された各燃料バンドル位置は、奇数サイクル移動マップで移動させないように特定された燃料バンドルと同じ位置にあってもよい。また、偶数サイクルおよび奇数サイクル各移動マップで特定された燃料バンドルだけが、連続する偶数および奇数の燃料装荷サイクル時に他の炉心位置に移動させることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1はBWRの炉心10のすべてをカバーする2次元概略図である。この炉心は数百の制御セル12を備えている(点線の円で示した)。各制御セルは制御ブレート17の周りに配置された4つの燃料バンドル14を含む。図を簡単化するために、図1において制御ブレートと制御セルはそれぞれ1つだけ示す。代表的な炉心では、燃料バンドルのすべてまたは大部分が制御セル内に配置されている。炉心10はそれぞれの燃料バンドルが特定の配列位置を割り当てられた2次元配列で配置されている。
【0016】
炉心内の各バンドル位置は、炉心装荷時に実行される炉心装荷計画によって決定され、一方、BWRはオフラインであり、寿命が切れた燃料バンドルを撤去し、新燃料バンドルを装荷し、次のサイクルで再使用するバンドルの位置を入れ替えるために炉心に接近することができる。炉心上部のクレーン16は、炉心内の適切な位置に各燃料バンドルを移動させる。このクレーンは一般に燃料バンドルを連続して、たとえば、1回に1つ移動させる。原子炉炉心近くのタンク18は、燃料バンドルを一時的に保管するのに使用される。クレーンはタンクに移動されて燃焼した燃料バンドルを廃棄し、新バンドルをつかむ。
【0017】
タンクと炉心の間の移動は(各炉心バンドル位置間の移動と比べで)比較的距離が長く、クレーンの移動に比較的長い期間が必要である。同様に、クレーンにとって炉心の広い区域を横断することは、炉心内の隣接するあるいは近くの燃料バンドル位置間をクレーン移動することよりも長いクレーン使用時間を要する。タンクと炉心の間および炉心の広い区域を通るクレーン移動の回数を低減することは、一般に燃料バンドルを炉心内に装荷するのに必要な合計時間の低減をもたらす。
【0018】
本明細書では、各クレーンが移動するときの、位置を入れ替えるバンドルの数、炉心とタンクの間の往復、および炉心を横切って移動する平均距離を低減する位置入れ替えのアルゴリズムが開示されている。この位置入れ替えのアルゴリズムは、たとえば炉心から撤去されタンクに移動される燃焼した燃料バンドルの炉心位置および新燃料バンドルを受け入れる炉心位置をそれぞれ特定する炉心マップ、たとえば、図2および図3を発生する。大多数の新燃料バンドルは、燃焼した燃料バンドルが撤去される炉心位置に配置されることになる。クレーン16が燃焼した燃料バンドルを炉心から撤去し、タンク18に移動し、そこで燃焼した燃料バンドルを位置20の炉心内に置き、タンクから新たに空になった炉心位置に振り向けられる新燃料バンドル22をつかみ、それから移動して炉心に戻り数分前に燃焼した燃料バンドルを撤去した同じ炉心位置に新バンドルを設置する。炉心とタンク間の1回の移動で、クレーンは燃焼した燃料バンドルをタンク内に預け、炉心用の新バンドルをつかむ。位置入れ替えのアルゴリズムが発生した炉心マップは、クレーンが各移動中に燃焼した燃料バンドルを降ろし新バンドルを拾い上げる計画を立てることによりタンクと炉心間の移動を低減する。
【0019】
炉心内で空いている燃料バンドル位置はたったの1つであるため、間違った炉心位置に新バンドルを配置する危険性は最小限になる。クレーンは燃焼した燃料バンドルの撤去と新燃料バンドルの設置を交互に行う。クレーンは多数の燃焼した燃料バンドルを再移動させこれによって多数の炉心位置を空けておく必要はない。空いた燃料バンドル炉心位置が多数あると、間違った炉心位置に燃料バンドルが配置される危険性が増加する。
【0020】
炉心を装荷するのに必要な期間は、一部は、1つの炉心位置から別の炉心位置へ位置を入れ替える燃料バンドルの数によって変わる。位置が入れ替えられる燃料バンドルの数が、燃料装荷時に再使用する各バンドルの大部分、たとえば50%超は1つの炉心位置から別の炉心位置へ位置が入れ替えられないというように低減される場合は、炉心を装荷するのに必要な期間は大幅に、たとえば、位置の入れ替え時間の50%超かつ85%も低減することができる。
【0021】
本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムは位置を入れ替える燃料バンドルの数を低減する。位置の入れ替えとは、前の装荷サイクルで使用した燃料バンドルをその後の装荷サイクルで使用するため新しい炉心位置に移すことである。位置入れ替えの回数は、一部は、燃焼した燃料バンドルの大部分を新しい燃料バンドルと交換することによって低減される。燃焼したバンドルの撤去および新バンドルの設置は位置の入れ替えを必要としない。
【0022】
この位置入れ替えのアルゴリズムは、さらに、位置入れ替えの大部分を炉心の外側環状領域24に限定することによって位置入れ替え操作数を低減する。この外側環状領域24は、少なくとも3回の燃料装荷サイクルにおいて使用されるそれらの燃料バンドルによって境界を定めてもよい。外側の炉心環状領域は、3回目の燃料サイクルの燃料バンドルが設置される炉心の周辺25における炉心位置を含まない。
【0023】
燃料取り替え操作の間、外側の環状領域24内の燃料バンドルは、最後の燃料サイクルと同じ炉心位置にとどまるか、または炉心の周辺25における炉心位置に位置を入れ替えられる。新燃料バンドルは、周辺に位置を入れ替えるためにバンドルが取り外された炉心位置に設置される。外側の炉心領域24内の新燃料バンドルは2回のサイクルの間は同じ炉心位置にとどまり、その後3回目のサイクルに対しては周辺の位置に位置が入れ替えられる。
【0024】
外側炉心領域24では、原子炉運転中の燃料バンドルの放射能曝露は、中央炉心領域26のバンドルの放射能曝露より少ない。燃料バンドルの運転上の寿命は、炉心内のバンドルの曝露レベルおよび運転時間によって変わる。曝露レベルが高い燃料バンドル(中央炉心領域26で起こる)は、燃料サイクルがただの2回で最大許容曝露レベルに達するため、運転上の寿命は2回の燃料装荷サイクルである。中央炉心領域26内の燃料バンドルは3回の燃料サイクルにわたって運転されることはないだろう。外側の炉心領域24内の燃料バンドルが受ける放射能曝露はより少ない。外側の炉心領域内の燃料バンドルは、より長い3回の燃料装荷サイクルの運転時間を有している。
【0025】
外側環状領域の内側にある中央炉心領域26は、寿命がたった2回の燃料装荷サイクルである燃料バンドルで構成されている。位置入れ替えのアルゴリズムを用いれば、中央炉心領域内の燃料バンドルは、炉心中央のバンドル28以外は位置を入れ替えない。中央炉心領域の燃料バンドルは、撤去されて新バンドルと交換されるか、または2回目の燃料サイクルのために現在の炉心位置にそのまま残される。中央の燃料バンドル28は一般に、炉心中央のバンドルの曝露レベルが高いため、各装荷サイクル時に位置が入れ替えられる。
【0026】
各燃料取り替え時に、(中央バンドル28以外の)中央炉心領域26の燃料バンドルの半分が取り替えられ、バンドルの残り半分は動かさない。各炉心装荷操作時に移動した半分の燃料バンドルは、各連続する装荷操作時に切り替わる。たとえば、交互の炉心位置にある燃料バンドルは中央炉心において撤去してもよい。
【0027】
図2および図3は、炉心10の4分の1部分を示し、燃料バンドル位置の半分が各炉心装荷操作時に撤去および交換される中央炉心領域26の模範的な装荷パターンを図示したものである。図2および図3に示される炉心は同じ炉心である。図2は、1サイクル、たとえば、奇数サイクルのBOCのときの各バンドルを示し、図3は、次のサイクルである偶数サイクルのBOCのときの同じ炉心を示す。図2および図3は、1つのサイクルの初め(BOC)の各バンドルの燃料バンドル平均曝露(GWD/T)を示す。新バンドルは曝露がないため「0.0」で表す。再使用するバンドルは曝露値がゼロより大きい、たとえば、23.2、22.5および39.8であり、最大BOC曝露閾値、たとえば、40.0より十分に低い。これらのBOC曝露値は、前の1または2サイクルの間のバンドルの放射能曝露量を示す。BOCにおいて、中央領域26内の曝露したバンドルは前の燃料サイクル時は炉心内にあった。外側炉心領域24内の曝露したバンドルは、前の1または2燃料サイクル内のものでもよい。
【0028】
設計上の制限はBOCの各バンドルに対し曝露限界を課している。この曝露限界はバンドルによって変わり、周辺に向かうバンドルはより高いBOC曝露限界、たとえば、40.0以上を有し、炉心中央の各バンドルはより低いBOC曝露限界、たとえば、24.0を有する。このBOC曝露限界は、1つのバンドルがサイクルの終わり(EOC)において曝露限界、たとえば、44.0を超えない曝露値を有するように決定してもよい。
【0029】
中央炉心領域26から撤去される燃料バンドルのパターンは、模様上の「白」の位置と模様上の「黒」の位置が交互になった市松模様と同じでよい。1つの炉心装荷操作の間、中央炉心領域の「白」の位置にある燃料バンドルは原位置に残り、「黒」の位置の燃料バンドルはタンク18に移動され新燃料バンドル22と交換される。次の炉心装荷操作の間は、中央炉心領域の「黒」の位置にある燃料バンドルは原位置に残り、「白」の位置の燃料バンドルはタンク18に移動され新燃料バンドル22と交換される。それぞれの連続する炉心装荷操作の間、中央炉心領域26の炉心装荷は白から黒へ前後に切り替える。
【0030】
同様に、外側炉心領域24(周辺25は含まない)内の燃料バンドルは、「白」位置上の燃料バンドルは3回目のサイクルのために周辺に位置が入れ替えられて新バンドルと交換され、また「黒」の位置のバンドルは2回目のサイクルのために原位置に残される市松模様に配置してもよい。次のサイクルでは、白の位置のバンドルは2回目のサイクルのために所定位置に残され、黒の位置のバンドルは周辺に位置が入れ替えられて新バンドルと交換される。
【0031】
図2および図3は、中央炉心領域26内に市松模様に配置された新燃料バンドル(0.0)を示すBOC炉心曝露マップである。図2および図3を比較すると、新バンドルの位置が市松模様上で切り換わっていることが示される。図2は、或る炉心装荷操作に対して新燃料バンドル位置をマッピングするのに使用してもよく、図3は、次の炉心装荷操作に対して新燃料バンドル位置をマッピングするのに使用してもよい。次の連続する炉心装荷操作(3番目の操作)は、中央炉心領域26における図2に示す位置に装荷される新しい炉心であろう。
【0032】
炉心内の白および黒の各位置の別の表示法は、炉心位置を奇数位置および偶数位置と呼ぶ方法である。炉心位置は、図1に示す炉心線図の左側および上部の余白に沿った1から30の座標数を参照することによって特定することができる。たとえば、中央バンドル位置28は16−16位置として表示される。偶数の炉心位置は2つの偶数または2つの奇数である一対の座標数字によって計画される。奇数の炉心位置は、1つの奇数および1つの偶数を含む一対の座標数字によって表示される。
【0033】
最初の燃料装荷サイクルにおいて、中央領域26および外側炉心領域24内の奇数の炉心位置(図2)の燃料バンドル(中央バンドル28および周辺のバンドルは含まない)は炉心装荷操作時に移動されない。中央領域26内の偶数の炉心位置(図3)のバンドルは撤去されて新バンドルと交換され、また外側の炉心領域24のバンドルは周辺に位置が入れ替えられる。次の燃料装荷操作(1つの燃料装荷サイクルの後に起こる)時に、中央領域および外側領域24、26内の偶数の炉心位置のバンドルは、炉心装荷操作時に移動されない。奇数の燃料装荷サイクル時に、中央領域内の奇数の炉心位置のバンドルは撤去されて新バンドルと交換され、また外側の炉心領域のバンドルは周辺に移動される。
【0034】
周辺のバンドルは各燃料取り替えサイクルにおいてタンクに移動される。炉心中央のバンドル28は周辺に位置が入れ替えられるかまたはタンクに移動される。本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって、位置が入れ替えられるバンドルは、外側炉心領域26内のバンドルおよび場合により炉心中央のバンドル28の2分の1に限定されている。
【0035】
従来の技術では燃料バンドルを交換する偶数−奇数(黒対白)炉心装荷戦略が使用されてきた。本発明者の知る限りでは、偶数−奇数炉心装荷戦略の従来の使用は、一連の燃料装荷サイクル用の炉心装荷計画を発生する規定の位置入れ替えのアルゴリズムと一緒に使用されず、また複数の燃料装荷サイクルのためのまたは平衡状態をえるための炉心装荷戦略を発生するアルゴリズムの一部ではなかった。
【0036】
本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いて、一般に外側炉心領域24内の燃料バンドルの位置を入れ替える。内側炉心領域26内の燃料バンドルは、燃料装荷操作毎に位置を入れ替える中央の燃料バンドル位置28を例外として、一般に位置を入れ替えない。したがって、位置の入れ替えは主に数を低減した一組の炉心位置に対し、炉心の限定された区域において行われる。
【0037】
図4は、1つの炉心位置から他の炉心位置に位置が入れ替えられる燃料バンドルを示す線が記された炉心の4分の1部分の模範的な図である。図がごちゃごちゃになるのを減らすためにすべての位置入れ替えの線は記されているわけではない。図4で、位置が入れ替えられるバンドルは下線が引いてあり、位置が入れ替えられたバンドルと交換される2度燃焼したバンドルは丸で囲った。このマップは、位置が入れ替えられる燃料バンドルはたいてい外側炉心領域24に限定され、図5に示す従来の位置入れ替えと比較して比較的少ないバンドルが位置を入れ替えられることを示している。図4に示す位置入れ替えマップは、本明細書に開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いて発生された。
【0038】
図5は、対比を目的として、1つの炉心位置から他の炉心位置に移動されるバンドルを示す線が記された従来の位置入れ替えマップを示す。この従来の位置入れ替えマップは、図4に示す位置入れ替えマップと比べて、実質上より多数の位置が入れ替えられるバンドルと炉心を横断する距離がより長いバンドルとを有する。従来の手法では、図5に示すような多数の燃料バンドルの位置入れ替え(特に新バンドル装荷に対する奇数対偶数の従来のやり方に関し)を常に行っているわけではないとはいえ、図5は燃料装荷サイクル時に従来行われている燃料バンドルの大規模な位置入れ替えを代表している。
【0039】
図4と図5を比較すると、本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いることによって、発生した燃料取り替え戦略におけるバンドルの位置の入れ替え数が、図5に示した位置の入れ替え数に比較して低減することが示される。本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いることによって、位置の入れ替え数は大幅に、たとえば、ほぼ86%低減され、図5に示した位置の入れ替えマップと比較して図4に示した位置の入れ替えマップを発生した。さらに、図4に示す位置の入れ替えは、バンドルが、図5に示す位置の入れ替えの距離と比較して炉心を横切る比較的短い距離を移動することを要求している。位置の入れ替え数および位置の入れ替えの距離を短縮することにより、燃料装荷による運転停止時間を数日短縮、たとえば、3日から5日節減することができる。いくつかのBWRは1日あたり百万米ドルの収益を生み出すと推定されている。その推定を用いれば、運転停止時間を3日間低減することによってBWRの各燃料装荷サイクルにつき3百万米ドルの収益が増加する。
【0040】
図6は模範的な燃料バンドル14を図示している。炉心は一般に200から1200の燃料バンドルを備えている。各バンドルは、一般的に直線の燃料棒の行列内で一般にお互いに平行に伸びている複数の燃料棒32を囲む外側チャネル30を備えている。この燃料棒32は、燃料棒およびチャネルの全長に沿って各種の垂直高にあるスペーサ34によってお互いに間隔をおき水平に配置されている。バンドルはクレーンで釣って炉心またはタンクの外へバンドルを持ち上げ、炉心上部の位置にバンドルを移動させ、炉心またはタンク内の新しい位置にバンドルを下げるハンドル36を備えている。
【0041】
燃料バンドル14は特別の操作特性、たとえば、熱余裕および反応度余裕を有していてもよい。バンドルのこれらの特性は、バンドル内に装荷される燃料棒の種類および配置によって変わる。各バンドルは異なった特性、たとえば、燃料棒組成を有しているので、1つのバンドルは別のバンドルと必ずしも容易には置き換えられない。同じ特性を有する燃料バンドルは同一タイプであると呼ばれる。1つの炉心は一般にいくつかの、たとえば7つ以上のタイプの燃料バンドルを有している。各燃料バンドル位置にどのタイプの燃料バンドルを置くかについて決定がなされる。この決定は位置入れ替えのアルゴリズムの外側で行ってもよい。位置入れ替えのアルゴリズムへの入力として入力マトリックスを与えてもよい。模範的な入力マトリックスが図10の82の位置に示されている。この入力マトリックスは、炉心内の各バンドル位置に対し燃料バンドルタイプ、たとえば、1〜7を規定する。入力マトリックスは位置入れ替えのアルゴリズムに関する制限である。このアルゴリズムは、各炉心位置に対する入力マトリックスで規定された燃料タイプを有するバンドルを装荷する計画を立てる炉心装荷戦略を発生する。
【0042】
図7はBWRのサイクル毎の運転停止作業の方法の流れ図50である。ステップ52で、BWRは、一般に1〜2年、たとえば、12〜24ヶ月の運転中に発電用の水蒸気を生成する。BWRの予定された運転停止は各燃料サイクルの終わり(EOC)に起こる。原子炉が運転を停止した後、保守、修理および燃料装荷のためステップ54で原子炉容器が分解され、原子炉炉心が開放される。原子炉の分解は一般に3〜4日の工程である。原子炉への接近がいったん可能になると、炉心の制御棒およびその他部品に関し保守作業が行われる。ステップ56で、燃料バンドルを撤去し、制御棒およびその他部品へのアクセスを設けて、ステップ58で検査、修理および交換を行ってもよい。一般にステップ56および58で、燃料バンドルを撤去し、炉心構成部品の検査、修理および交換を行うには3〜5日が必要である。
【0043】
炉心は、炉心に関する保守作業が完了した後に燃料装荷工程の準備が整う。ステップ60で、燃焼した燃料バンドル(たとえば、EOC曝露限界、たとえば、44.0にあるまたはこの限界に近いバンドル)が炉心から撤去され、新バンドルが炉心内に装荷され、再使用されるバンドルは現在の炉心位置にとどまるか、または新しい位置に位置が入れ替えられる。クレーンは一般に燃料バンドルを炉心とタンク間で移動させ、炉心内の新しい位置にバンドルの位置を入れ替えるのに使用される。燃料バンドルを移動させるための従来の燃料装荷操作は一般に7日から14日を要するのに対して、燃料バンドルの移動は本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いて3日に(それより少ない日数にも)短縮することができる。位置入れ替えのアルゴリズムは、位置を入れ替えるバンドルの数を低減し、炉心を横切って位置を入れ替えるバンドルを移動させる距離を低減するのに使用してもよい。位置入れ替えの操作は、本明細書で開示した位置入れ替えのアルゴリズムを使用しない従来の装荷操作における3〜7日と比較して半日の操作に低減してもよい。
【0044】
ステップ62で、燃料バンドルが炉心内に装荷され、すべての保守および検査操作が炉心内で完了した後、原子炉容器が組み立てられる。ステップ64で、原子炉は運転開始手順を実行し、次のサイクルを始める。次のサイクルの開始時、炉心はサイクルの初め(BOC)にある。ステップ52で、原子炉は燃料サイクルを繰り返すように新たに1〜2年間電力を生成する。この燃料サイクルはBWRの寿命の間ずっと繰り返される。本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムはBWRのサイクルをシミュレートし、時間的に類似したサイクル間の各燃料マップおよび装荷戦略の間の差がごくわずかである平衡状態のサイクルを期待している。平衡状態燃料装荷マップは燃料装荷戦略に用いる目標である。
【0045】
図8は、本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズム70の模範的な実施形態の流れ図である。本明細書の位置入れ替えのアルゴリズム70は、BWRの一連の燃料装荷サイクルの間の燃料バンドルの位置入れ替えを最小限にする炉心装荷計画を作成するためのプロセス、方法、および設計戦略の一部であってもよい。このアルゴリズム70は、重要な運転パラメータのユーザ入力制御を提供する実行可能なコンピュータプログラムにコード化してもよい。このコンピュータプログラムはBWRの炉心設計を開発するのに用いたコンピュータ上で実行してもよい。
【0046】
位置入れ替えのアルゴリズムは、連続する炉心装荷サイクルで使用するための交互に起こる炉心燃料装荷のマップを発生する。この炉心マップは中央領域および外側炉心領域を有しており、各領域内では新燃料バンドルと2回目のサイクル用に保持されるバンドルの各位置がパターン化されて配置されている。これらの炉心中央領域の装荷パターンは、1つの装荷サイクルから他の装荷サイクルに反転してもよい。図2および図3を比較すると、連続する炉心装荷サイクルの各炉心装荷マップの例が示される。図2および図3の各炉心装荷マップはそれぞれが中央領域26を有し、炉心装荷は燃焼したバンドルの撤去と、燃焼したバンドルが取り替えられるのと同じ場所への新バンドルの設置に限定されている。新バンドルの装荷パターンは図3の装荷パターンの鏡像関係のパターンである。
【0047】
各バンドルが位置を入れ替えられない中央炉心領域を限定することにより、大部分の炉心位置、たとえば、全炉心位置のおおむね86%が位置の入れ替えから除外される。各バンドルが位置を入れ替えられる外側環状領域24内および各バンドルが位置を入れ替えられない中央炉心領域26内(炉心中央28以外)にそれぞれ炉心を分けることによって、各炉心装荷操作時に行われる位置の入れ替えの回数が低減され、位置の入れ替え操作に必要な時間が低減される。
【0048】
図9は位置入れ替えのアルゴリズム70の制御入力74の一実施例の図である。ステップ72において、この制御入力はアルゴリズム内にロードされアルゴリズムに対して炉心を定める。制御入力は、炉心の4分の1部分の縦列および横列の数、および各装荷サイクル時にこの4分の1の炉心部分に装荷する新バンドルの数、炉心の4分の1部分のバンドルの合計数、および熱水力学的のタイプを規定してもよい。この熱水力学的のタイプは、炉心内の燃料バンドルのタイプを指定する入力であり、ユーザが規定してもよい。入力74は、燃料装荷サイクルの数、たとえばループを含む2を規定してもよい。図2および図3は、その他のあらゆる新燃料装荷マップが実質的に同じである2つのサイクルのループを示す。ループは、新燃料バンドルを装荷するパターンを変えるのに用いられる燃料装荷サイクルのシーケンスである。
【0049】
ユーザは、炉心装荷マップが新燃料バンドル装荷の「奇数」パターンなのかあるいは「偶数」パターンなのかを規定してもよい。この奇数と偶数の選択は2つのサイクルのループを仮定している。このループが3つ以上のサイクルを含む場合、装荷の選択は1、2、3等(奇数および偶数ではない)の1つでよい。ステップ76で、装荷パターン、たとえば、奇数か偶数か、の選択は手作業で行えばよい。ユーザの位置入れ替えアルゴリズムの設定は奇数か偶数かを選択するだけでよいが、位置入れ替えのアルゴリズム用の他の入力パラメータを見直し、変更してもよい。奇数または偶数の装荷方式の選択は以前の装荷サイクルが奇数か偶数かを示し、次のサイクルに反対の装荷パターンを選択するデータをもとに自動的に行ってもよい。
【0050】
図9の入力には、炉心内の燃料バンドルの前の繰り返しを定める入力ファイルが含まれていてもよい。これらの入力ファイルは、燃料サイクル時の炉心およびその燃料バンドルの状態を確実に予測する従来の炉心シミュレーションプログラムによって発生してもよい。このシミュレーションプログラムは燃料サイクル時の炉心内燃料バンドルの状態に関するデータを発生する。このデータは、位置入れ替えのアルゴリズム70が使用して次の燃料取り替えサイクルの燃料装荷マップを発生する。
【0051】
各入力ファイルは先頭の新バンドルの特性、BOC棒、BOC記述子、EOC棒およびEOC記述子を含み、位置入れ替えマップを発生する時に位置入れ替えのアルゴリズムが使用する制約を提供してもよい。たとえば、先頭の新バンドルの特性は、特殊燃料バンドル再装荷操作で加えられるすべてのバンドルに用いられる共通の記述子、たとえば、「C05」、BOC棒ファイル、たとえば、「rods.ced」であり、前の燃料サイクルにおける燃料サイクルの初め(BOC)における燃料バンドルに関しデータ、たとえば、曝露値を参照し、またEOC棒ファイルは、燃料バンドル、たとえば、サイクルり終わり(EOC)におけるバンドル曝露値に関するデータであり、BOCおよびEOCの各記述子ファイルは、炉心内の燃料バンドルのそれぞれに対する記述子、たとえば、バンドルのハンドル番号を特定するデータファイルである。炉心シミュレータはBOCおよびEOCの各棒に対するデータファイルを発生してもよい。
【0052】
ステップ78では、位置入れ替えアルゴリズムへの入力として炉心の各燃料バンドル戦略マップがロードされる。これらのマップは、バンドル位置入れ替えのアルゴリズムが次の燃料サイクルで移動できないバンドルがある燃料位置、新バンドルを受け入れる位置、排出される予定のバンドルの位置、および移動される予定のバンドルの燃料位置はそれぞれどれであるかを決定するのに使用するテンプレートである。
【0053】
図10および図11は模範的な戦略マップである。この戦略マップは、炉心内のすべての燃料バンドル位置を特定する燃料位置マップ80(このマップで、「1」は燃料バンドルの位置を、「0」は燃料バンドルのない位置および炉心外の位置をそれぞれ示す)、炉心の各位置における燃料バンドルタイプを特定する燃料タイプマップ82(このマップで、数字1から7は、各炉心燃料バンドル部位に燃料の7つの可能なタイプのうちどれが配置されることになるのかを表している)、3回の燃料サイクルを経験したため撤去される燃料バンドルを有する炉心位置を特定する燃料排出位置マップ84(このマップで、「1」は3回目の燃料サイクルを完了する燃料バンドルを有する位置を示す)、奇数サイクル用の新バンドル位置マップ86(このマップで、「1」は新バンドルが設置されることになる位置を、「0」は2回目の燃料サイクルのためにそれらの現在位置にとどまる燃料バンドルを示す)、偶数サイクル時の新燃料バンドル位置マップ88(このマップで、「1」は新バンドルが設置されることになる位置を、「0」は2回目の燃料サイクルのためにそれらの現在位置にとどまる燃料バンドルを示す)、2回の燃料サイクルを経験し、3回目のサイクルのために周辺(マップ84参照)に位置を入れ替えられることになる燃料バンドルの炉心位置を示す奇数サイクル用2度燃焼した燃料マップ90(奇数サイクル燃料バンドル移動マップとも呼ぶ)(このマップで、「1」は2度燃焼した燃料バンドルの位置を示す)、および2回の燃料サイクルを経験し、3回目のサイクルのために周辺(マップ86参照)に位置を入れ替えられることになる燃料バンドルの炉心位置を示す偶数サイクル用2度燃焼した燃料マップ92(偶数サイクル燃料バンドル移動マップとも呼ぶ)(このマップで、「1」は2度燃焼した燃料バンドルの位置を示す)を含んでいてもよい。これらのマップ80〜92は、炉心内の、新バンドルが設置される位置、2回目のサイクルで再使用されるバンドルが現在位置にとどまるその位置、および3回目のサイクルで再使用するため位置が入れ替えられる燃料バンドルの位置をそれぞれ特定している。別々の燃料バンドルテンプレートの対象に対してではあるが、2回の燃料サイクルの後に排出される、たとえば、タンクに移動される燃料バンドルは、2度燃焼した燃料マップにも含まれない新燃料バンドル位置マップの対象である。
【0054】
ステップ94で、燃料バンドル装荷戦略マップ80〜92はユーザかまたは使用最適化ツールによって変更してもよい。この最適化ツールは、マップ80〜92の1つまたは複数をかき乱すコンピユータソフトウェアプログラムでもよい。かき乱されたマップは位置入れ替えのアルゴリズムに対する入力となり、強化された装荷戦略を導くことができるかどうか決定する。最適化ツールの例は、全体が参照によって組み込まれている共通に譲渡され、同時係属中の米国特許出願第11/610197に開示されている。たとえば、最適化ツールは、各バンドル位置において燃料タイプのマップ82をかき乱してもよい。かき乱されたマップ82は位置入れ替えのアルゴリズムに対する入力となり、新バンドルの選択を検討、改善し、熱余裕の要件、反応度余裕の要件および燃料サイクル効率の改善を厳守している。
【0055】
ステップ96では、位置入れ替えのアルゴリズムは、前の燃料装荷サイクルに関する情報を読み込む。前の燃料装荷サイクルは、位置入れ替え計画によって運転しているサイクルの前のサイクルに対して炉心およびそのバンドルの操作をモデル化した炉心シミュレータの出力でもよい。前のサイクルに関し、BOCおよびEOCのCedar Rod Data Files、およびBOCおよびEOCの記述子を含むデータは、図7に示す入力ファイルに規定されたファイルによって与えられる。
【0056】
前のサイクルのEOC曝露マップは、EOCにおける各燃料バンドルの曝露の量を決定する場合に有用である。BOCとEOCの曝露マップを比較することにより(たとえば、BOCとEOCのCedar Rod Data Filesの比較)、各炉心バンドル位置が次の燃料サイクルで経験すると予測される曝露量は、次のサイクル時に同じ位置で予期される曝露量を推定するのに使用することができる。曝露の予測は、各炉心バンドル位置は次のサイクルで同じ量の曝露を経験するということであろう。
【0057】
図12および図13は、EOC曝露マップ(たとえば、Cedar棒データファイル)の例である。BOC曝露マップ(たとえば、Cedar棒データファイル)の例は図2および図3に示している。単一の燃料サイクル中の各バンドルの曝露は、図12および図13に示すように同じ燃料バンドルのBOC(図2および図3)における燃料バンドルの曝露とサイクルの終わり(EOC)の曝露との比較によって得てもよい。図12および図13は、EOCの炉心内の各燃料バンドルの平均曝露(GWD/T)を示す。図12は「奇数」燃料マップを示し、図12が図2に示す同じ燃料バンドルのEOCにおける燃料バンドル曝露を示し、図2がBOCにおけるバンドルの曝露を示すという点で図2に対応している。
【0058】
偶数の燃料装荷サイクルの新バンドル位置(マップ88)の外側環状領域89は、偶数サイクル(マップ92)からの2度燃焼した位置と同じである。偶数燃料サイクル時、2度燃焼した燃料バンドル(マップ92)、たとえば、既に2回の燃料サイクルを経験したバンドルはマップ92に示す位置から撤去され、炉心の周辺、たとえば、マップ84に規定された排出位置に移動される。新バンドルは移動されるバンドルの空いた位置に配置され、その空いた位置はマップ92によって特定される。偶数の新バンドルマップ88の外側環状部に配置された新バンドルは、2回の燃料サイクルの間ずっとその位置にとどまり、その後3回目のサイクルのために排出位置(マップ84)に移動される。同様に、奇数の燃料装荷サイクル(マップ87)は、奇数サイクル用2度燃焼した燃料マップ90と重なる外側環状部を有する。したがって、位置が入れ替えられる各バンドルは、炉心の周辺上の排出位置(マップ84)に移動され、3回目のサイクルを経験する各バンドルに限定してもよい。
【0059】
位置入れ替え法70のステップ98では、入力の誤りチェックが行われる。たとえば、図8のマップ入力は、それがすべてのバンドルを説明していることを確認するために分析してもよい。排出マップ(マップ84中の「1」を合計することによって得られる)のバンドル位置の合計数は、奇数および偶数マップ90および92のおのおので位置が入れ替えられる2度燃焼した燃料バンドルの数と等しくなければならない。別の誤りチェックは、バンドル炉心位置(マップ80で数字1で表示された各位置)の合計数が、(i)バンドル排出位置(マップ84で数字1で表示された各位置)、(ii)偶数サイクル新バンドルマップ88の新バンドル位置(マップ88で数字1で表示された各位置)、および(iii)奇数サイクル新バンドルマップ86の新バンドル位置(マップ86で数字1で表示された各位置)の合計に等しいことを確認することである。
【0060】
ステップ100では、位置入れ替えのアルゴリズムが、各バンドル位置について位置に依存する曝露レベルを決定する。この値は、バンドルがあるサイクルの間に経験する曝露である。曝露値は、各バンドルのBOC曝露からEOC曝露を差し引く、たとえば、各バンドルの図2の曝露値から図12の曝露値を差し引くことによって得てもよい。同様に図3は、偶数燃料マップ用のBOC曝露図であり、図13に示すEOCマップに対応している。図3および図13に示す燃料バンドルパターンを持つ炉心が経験した曝露は、各燃料バンドルの図13と図3の各曝露値の間の差である。そのサイクルの間に各バンドルが経験する曝露は、位置入れ替えのアルゴリズムが使用してどの燃料バンドルの位置を別の炉心位置に入れ替えるかを決定する。
【0061】
ステップ102において、位置入れ替えのアルゴリズムが、位置が入れ替えられるバンドルのおのおのの曝露レベルを順位付けする。これらのバンドルは、2度燃焼した燃料マップ90、92によって特定された位置にある。そのときこのアルゴリズムが評価しているサイクルが「偶数サイクル」であれば、前のサイクルは奇数サイクルであり、奇数の2度燃焼した燃料マップ90が、位置が入れ替えられるバンドルを有する前のサイクルからバンドル位置を特定する。前のサイクルのEOC曝露マップ、たとえば、図13(奇数EOC)は、入力データ、たとえば位置が入れ替えられるバンドルのおのおのの曝露レベルを決定するための、たとえばEOC のCedarファイルを提供する。位置入れ替えのアルゴリズムが、位置が入れ替えられるバンドルのおのおののEOC曝露レベルを、たとえば最も低いレベルから最も高いレベルへ順位付けする。さらに、この順位付けでは、位置が入れ替えられる位置のバンドルのタイプを考慮してもよい。たとえば、これらのバンドルは2次元で順位付けしてもよく、1つの次元はバンドルの燃料種であり、他方の次元はバンドルの曝露レベルである。この順位付けは、炉心排出マップ84で特定されたように、周辺の新しい炉心位置に位置が入れ替えられるバンドルを付き合わせる際に位置入れ替えのアルゴリズムを手助けする。
【0062】
ステップ104では、位置入れ替えのアルゴリズムが、位置入れ替えの指示、たとえば、位置が入れ替えられる各バンドルの新しい炉心位置を特定する位置入れ替えマップを発生する。位置が入れ替えられる各バンドルの新しい炉心位置を決定する場合、アルゴリズムはEOC曝露レベルの順位付け(前のサイクルから位置が入れ替えられたバンドルの曝露および場合によっては燃料種を特定する)を使用して、新しい炉心位置、たとえば、排出マップ84で定められたように周辺近くの炉心位置に移動させるのに適した曝露を特定する。排出マップ84に関して特定された各位置における曝露期待値は、前のサイクルの排出位置における各バンドルのEOCとBOCの各曝露レベル間の差から得ることができる。各排出位置において次のサイクル時に予期される曝露レベルおよび位置が入れ替えられるバンドルの曝露レベルの順位付けを知って(マップ90および92)、位置入れ替えのアルゴリズムは、次のサイクル時に曝露が最も高いと予測される排出位置に位置を入れ替えるために最も曝露が低いバンドルを特定することができる。このやり方で、位置入れ替えのアルゴリズムは各バンドルの位置をどこに入れ替えるかの位置入れ替えマップを発生する。この位置入れ替えマップは、2度使用した各バンドル(奇数燃料取り替えサイクルについてはマップ90を、偶数サイクルについてはマップ92を参照)をどの排出炉心位置(マップ84参照)に置くかを特定してもよい。
【0063】
ステップ106では、位置入れ替えの指示が使用されて炉心内の各曝露位置における燃料バンドルを特定する炉心マップを発生する。炉心マップを構成するこのデータはコンピータデータベースから入手可能である。このデータは、(排出位置のバンドルを特定する−マップ84参照)位置入れ替えの指示、新バンドル位置マップ(サイクルが奇数の場合のマップ90か、偶数の場合のマップ92のどちらか)、および図12および図13に示すような前のサイクルからのEOC曝露マップを含んでいる。このEOC曝露マップは、次の燃料サイクルで同じ炉心位置にとどまることになる燃料バンドルと位置が入れ替えられる燃料バンドルの曝露の情報を提供する。次のサイクルで使用されるその他すべての燃料バンドルは新しい。
【0064】
図2および図3に示すように、次の燃料サイクルが偶数の燃料取り替えサイクルか奇数の燃料取り替えサイクルかによって、発生する曝露マップは偶数サイクルBOC曝露マップになるか、または奇数サイクルBOC曝露マップになる。次のサイクルの曝露マップを用いて、コンピュータは、炉心の次の燃料サイクルをシミュレートする。原子炉シミュレータは従来のものであり、本発明の範囲外である。「原子炉燃料管理の設計方法」と題し、発明者名称がWilliam E.Russell IIである米国特許第号6748348号には、模範的な原子炉シミュレータが記載されている。この原子炉シミュレータは、シミュレートしている燃料サイクルのEOCを予測するデータを発生する。位置入れ替えのアルゴリズムは、独立に手計算で使用してもよく、原子炉炉心の熱および反応度の性能基準すべてを厳守するために3次元(3D)最適化ツールに組み込んだものでもよい。シミュレータ「Control Cell Core」および「Conventional Design」を含む異なった炉心設計戦略は、本明細書に開示された位置入れ替えマッピング方法を利用してもよい。
【0065】
発生したデータは、位置入れ替えのアルゴリズムへのユーザ入力74を含むEOCのCedar File(図9参照)を含む。このシミュレータは、BOCのCedar Fileを含めシミュレートしているサイクルのBOCに関するデータを出力してもよい。ステップ108では、このシミュレータが発生したBOCおよびEOCの燃料バンドルデータがデータとして保存され、位置入れ替えアルゴリズムが次の燃料装荷サイクルの位置入れ替え指示を発生する際に次の繰り返しのステップ96で利用できるようにする。
【0066】
シミュレータが予測された次のサイクルのデータ、たとえば、BOCおよびEOCの曝露マップを発生した後、位置入れ替えのアルゴリズムがユーザ入力ファイル74内の奇数/偶数設定を切り替える(図9)。位置入れ替えのアルゴリズムは、位置入れ替えアルゴリズムおよびシミュレータがシミュレートした最後のサイクルの直後のサイクルである別の燃料装荷サイクルに向けて再始動する。再始動の前に、ステップ110でこのアルゴリズムは奇数から偶数に、あるいは偶数から奇数に変わる。この位置の入れ替えおよびシミュレータは連続する燃料サイクル全体をランする。
【0067】
奇数および偶数の燃料パターンを備えた燃料サイクルのループは、図2から図12、図3、図13へと移り図2に戻るシーケンスによって示される。図2は中央領域26内の新燃料炉心位置の奇数パターンを表す。図2に示す曝露レベルはBOCにおけるものである。図12は、図2に示す同じ奇数パターンのEOCにおける燃料バンドルの曝露レベルを表す。たとえば、図12において、中央炉心領域26内の燃料バンドルは、2回のサイクルを経て44.0の曝露限界に近いバンドル(縦列14、横列10の炉心位置にある曝露値が43.9のバンドルを参照)か、ただ1回のサイクルに供し、同じ位置(縦列14、横列11にある曝露値が23.4のバンドルを参照)で2回目のサイクルに供す用意ができたバンドルのどちらかである。
【0068】
奇数燃料サイクル時、BOCにおける燃料バンドルの曝露レベルは図2に示した通りであり、EOCにおけるそれは図12に示した通りである。同様に、図3は中央領域26内の新燃料炉心位置の偶数パターンを表す。図3に示す曝露レベルはBOCにおけるものである。図13は、図3に示す同じ偶数パターンのEOCにおける燃料バンドルの曝露レベルを表す。偶数燃料サイクル時、BOCにおける燃料バンドルの曝露レベルは図3に示した通りであり、EOCにおけるそれは図13に示した通りである。燃料装荷の偶数および奇数の各パターンを通る燃料サイクルのループは、1つのサイクルを構成する図2および図12のシーケンス、および2回目のサイクルを構成する図3および図13のシーケンスによって示される。このループは2つのサイクルが一緒になったものである。ループはBWRの寿命の間ずっと繰り返される。
【0069】
図12および図13は、位置入れ替えのアルゴリズムの結果を反映したEOCの各バンドルマップを示す。排出される燃料バンドルのほとんどすべてが、42から47.3の間の狭い範囲の曝露値を有している。各バンドルが3回のサイクルを経験する炉心の周辺において、各曝露値は5GWD/Tの範囲にある。排出バンドル、特に周辺の排出バンドルはすべて曝露が非常に類似しているので、他のバンドルと比較して燃料バンドルの1つが過剰に曝露を経験するという懸念が最小になっている。したがって、全体的な排出曝露限界は増加させることができる。
【0070】
位置入れ替えのアルゴリズムは、平衡状態の解に達するまで偶数および奇数の燃料サイクルを通ってループし続ける。このアルゴリズム70は、各サイクルの対話のために発生された位置入れ替えの指示を保管する。これらの連続する炉心装荷マップは共に、原子炉の寿命に対する炉心装荷戦略の一部になる。本明細書で開示された位置入れ替えの方法は、炉心の周辺に向かってより高い濃縮リングを設け、制御セル位置で濃縮を低減し、この新しい方法と一緒に開発された軸線上で濃縮を低減する炉心の放射同位体濃縮の利用を提供するのに使用してもよい。
【0071】
本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを利用したBWR炉心の設計は、連続するサイクルに対しては、この2つのサイクルの間で新位置は似ていなくても、たとえば、曝露レベルなどの炉心運転特性は非常に類似していることが分かった。本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって提供される炉心マップは、排出時の曝露を最小限にし、十分な熱余裕と反応度余裕および優れた燃料サイクル効率を提供するために使用された。本明細書で開示されたアルゴリズムを用いて作成した炉心装荷計画によって、位置の入れ替えが従来の炉心装荷戦略よりも86%少ない装荷戦略を得た。燃料バンドルの位置入れ替えの低減は、原子炉の運転停止の低減、たとえば、運転停止を数日削減、をもたらす。運転停止日数の低減は、直接的には発電日数の増加および発電からの収益の増加と言い換えられる。BWRは1日あたり百万米ドルのエネルギを発生すると推定されている。その尺度により、運転停止時間を1日低減することによって各装荷サイクルにつき百万米ドルの利益が与えられる。
【0072】
位置入れ替え時間を短縮することが重要であるのと同時に、設計で必要な熱余裕、反応度余裕、および所望のエネルギを生み出すことが重要である。シミュレータのステップ106は、炉心計画、たとえば、燃料バンドルのBOC炉心マップが安全上の余裕などの設計の制限をすべて満足することを確認するチェックを含んでいてもよい。それほどではないが、平衡状態の検討にとっては重要なことは、連続するサイクル間で設計が類似の対照を示す必要がある。たとえば、2つの連続する奇数燃料サイクルが類似の曝露値と性能を有し、また同様に2つの連続する偶数燃料サイクルが類似の曝露値と性能を有することは平衡の目的にとって有利である。実際、位置入れ替えアルゴリズムの偶数サイクルの連続する繰り返しおよび炉心シミュレーションが類似の結果を得た、および/または位置入れ替えアルゴリズムの奇数サイクルの連続する繰り返しおよび炉心シミュレーションが類似の結果を得た場合に、平衡状態に達していたと判定してもよい。位置入れ替えの方法は、前のサイクルにおけるバンドルの曝露、たとえば、バンドルの減耗を分析し、位置に依存する曝露蓄積の可能性を決定するので、位置入れ替えの方法によってこの位置を最もうまく利用するバンドルを用意する。設計基準に適合した装荷戦略は位置入れ替えのアルゴリズムによって作成される。
【0073】
図14および図15は、各値、たとえば0.886(炉心位置13−16)、がバンドルのBOC曝露限界と実際のBOC曝露の間の余裕に対応する炉心バンドルの奇数および偶数BOCマップを示す。図14および図15に示す燃料バンドルの炉心位置は位置入れ替えのアルゴリズムによって決定された。位置入れ替えのアルゴリズムは、すべて設計目標近くで運転するバンドルを有する炉心を製造する場合に有用である。0.886の余裕値は、このバンドルが曝露限界の88.6%の曝露を受けており、これは11.4%の余裕に対応することを示している。設計目標は10%の余裕を持つことである。曝露限界は、各バンドル位置に対して設定され、その位置におけるバンドルがさらに別に1回のサイクルに供するか2回のサイクルに供するかによって変わり、また次のサイクルのその位置で予測される曝露量によって変わる。 図14および図15における炉心マップで示されるすべてのバンドルの余裕はかなり接近しており、炉心の周辺を除いて一般に25%から11%の余裕である。炉心内のバンドルが比較的設計目標に近いような炉心マップを作成することが有利であり、燃料バンドルの良好な利用を示す。
【0074】
図16および図17は、奇数(図16)および偶数(図17)の燃料取り替えサイクルの各バンドルのEOCの限界出力比(CPR)の限界を示す。これらの図は、各バンドルが0.85の設計CPR目標に近いことを示している(15%目標)。
【0075】
図18および図19は、それぞれ模範的なサイクルの初め(BOC)とサイクルの中間(MOC)であり、炉心内の各セルの運転停止余裕(SDM)の炉心全体の図である。これらの図は、本明細書で開示した位置入れ替えのアルゴリズムを用いて発生した燃料装荷マップのSDMを示す。このSDMは、炉心周辺および中央を除いて大部分のSDMがBOCにおいては2.2から1.4の範囲内であり、MOCにおいては2.7から1.3の範囲内であるという点で比較的均一である。図18および図19に示すように、SDMの範囲が比較的狭いことは効果的な燃料装荷であることを示す。
【0076】
本明細書で開示した方法とシステムの新規な点としては、各燃料装荷サイクルに位置入れ替えの指示を発生するための自動的な解法、炉心シミュレータと併用して平衡状態の炉心戦略を作成することができる位置入れ替えのアルゴリズム、ユーザ定義の入力と以前の燃料装荷サイクルからのデータを用いて入れ替え位置を決定する、曝露蓄積の可能性、位置入れ替えのアルゴリズムを手作業および/またはソフトウェアによる最適化ツールとともに使用して強化した位置入れ替えの指示を作成することができ、位置入れ替えのアルゴリズムは多様な新燃料使用計画について使用してよく、位置入れ替えのアルゴリズムは、バンドルがより長く曝露される周辺に向かってより高く濃縮されたバンドルを設置するのに有用であり、位置入れ替えのアルゴリズムは制御セルの操作支援のための位置に低濃縮バンドルを収容し、面が隣接することを考慮して軸線上を低濃縮にし、また位置入れ替えのアルゴリズムは、位置の入れ替えが曝露と移動距離に基づいて決定される周辺に位置が入れ替えられる2度燃焼した燃料バンドルの自動選択を提供することなどがあろう。
【0077】
本明細書で開示した方法とシステムの技術的な効果としては、大きな基礎を備えた炉心装荷設計、よりよいBOCのキロワット/フィートの利用、よりよいEOCのCPRの利用、よりよいEOCの排出曝露、すばらしい目標、平衡状態、位置の入れ替え無しの解法。本明細書で開示した方法とシステムの商用上の利点としては、3日以下の顧客の運転停止、運転停止期間の短縮に起因する電力製造期間の増加による収益の増加、運転停止期間が短いためマンパワーコストが低下、位置入れ替えの削減が、燃料装荷の誤操作の危険性低減をもたらし、迅速な位置入れ替え無しの炉心設計の解法をもたらすなどが挙げられよう。
【0078】
現在、最も実用的で好ましいと実施形態と考えられるものに関連して本発明を説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、添付した特許請求の精神と範囲に含まれる数多の変更およびこれと同等の構成を網羅するものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】BWRの炉心の概略図である。
【図2】炉心の4分の1部分の概略図であり、図2は「奇数」の新燃料バンドル装荷パターンを示す。
【図3】炉心の4分の1部分の概略図であり、図3は「偶数」の新燃料バンドル装荷パターンを示す。
【図4】燃料バンドルの位置入れ替えパターンを示す線を示す炉心の4分の1部分の、本明細書で開示された位置入れ替えのアルゴリズムを用いて発生したマップを示す図である。
【図5】燃料バンドルの位置入れ替えパターンを示す線を示す炉心の4分の1部分の、燃料装荷に対する従来の方法を用いて作成したマップを示す図である。
【図6】模範的な燃料バンドルの斜視図である。
【図7】BWRサイクル毎の作業の方法の流れ図である。
【図8】位置入れ替えのアルゴリズムの模範的な実施形態の流れ図である。
【図9】位置入れ替えのアルゴリズムの模範的な制御入力一式の図である。
【図10】位置入れ替えのアルゴリズムへの入力として使用される模範的な一連の炉心装荷戦略マップである。
【図11】位置入れ替えのアルゴリズムへの入力として使用される模範的な一連の炉心装荷戦略マップである。
【図12】それぞれ奇数および偶数の炉心装荷方式用の模範的なサイクルの終わりの曝露マップである。
【図13】それぞれ奇数および偶数の炉心装荷方式用の模範的なサイクルの終わりの曝露マップである。
【図14】各バンドルの曝露余裕を示す模範的なサイクル初めの炉心マップであり、本明細書に開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって、ほとんどすべてのバンドルの曝露余裕は10%の設計曝露余裕に比較的近いことが示される。
【図15】各バンドルの曝露余裕を示す模範的なサイクル初めの炉心マップであり、本明細書に開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって、ほとんどすべてのバンドルの曝露余裕は10%の設計曝露余裕に比較的近いことが示される。
【図16】各バンドルの限界出力比(CPR)余裕を示す模範的なサイクル終わり(EOC)の炉心マップであり、本明細書に開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって、ほとんどすべてのバンドルのCPR余裕は15%の設計曝露余裕に比較的近いことが示される。
【図17】各バンドルの限界出力比(CPR)余裕を示す模範的なサイクル終わり(EOC)の炉心マップであり、本明細書に開示された位置入れ替えのアルゴリズムによって、ほとんどすべてのバンドルのCPR余裕は15%の設計曝露余裕に比較的近いことが示される。
【図18】模範的なサイクルの初め(BOC)とサイクルの中間(MOC)の図であり、炉心内の燃料バンドルの運転停止余裕の炉心全体の図である。
【図19】模範的なサイクルの初め(BOC)とサイクルの中間(MOC)の図であり、炉心内の燃料バンドルの運転停止余裕の炉心全体の図である。
【符号の説明】
【0080】
10 BWR炉心
12 制御セル
14 燃料バンドル
16 クレーン
17 制御ブレード
18 タンク
20 燃焼した燃料バンドル
22 新燃料バンドル
24 外側炉心領域
25 炉心周辺
26 中央炉心領域
28 中央燃料バンドル位置
30 バンドルの外側チャネル
32 燃料棒
34 バンドル内のスペーサ
40 ハンドル
42 制御ブレード
50 BWR寿命サイクル
52 原子炉の操作
54 容器の分解
56 オフロードバンドル
58 炉心の保守
60 燃料装荷
62 容器の組み立て
64 原子炉の運転開始
70 位置入れ替えのアルゴリズム
72 装荷制御入力
74 制御入力
76 制御入力の手動変更
78 装荷戦略マップ、テンプレートマップ
80〜92 戦略マップ、燃料マップ
94 変更マップ
96 前のサイクル情報読み込み
98 誤りチェック
100 位置依存曝露値
102 位置入れ替えのバンドルの順位付け
104 位置入れ替えの指示
106 燃料サイクルのシミュレート
108 BOCおよびEOCのシミュレータが発生の燃料バンドルデータを保存
110 奇数/偶数を反映するための変更入力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心が一連の燃料位置を含む、原子炉の炉心(10)用の燃料装荷データを発生する方法であって、
偶数の燃料装荷サイクル時に他の炉心位置に移動させる対象である各燃料バンドル(14)の偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)を規定する段階と、
奇数の燃料装荷サイクルと偶数の燃料装荷サイクルが交互に行う炉心燃料取り替えサイクル(110)である奇数の燃料装荷サイクル時に他の炉心位置に移動させる各燃料バンドル(14)の奇数サイクル燃料バンドル移動マップ(90)を規定する段階と、
偶数サイクルおよび奇数サイクルの各燃料バンドル移動マップで特定された各位置からバンドルを受け入れる別の各位置を特定する排出マップ(84)を規定する段階と、
前の燃料取り替えサイクルからの燃料バンドルのうちのどの燃料バンドルを、その後の燃料サイクルの炉心の別の各位置のうちの1つに移動させるかを示す位置の入れ替え指示(104)を出す段階とを含み、偶数の燃料装荷サイクル時に移動させる燃料バンドル(14)は偶数サイクル燃料バンドル移動マップで移動させるよう特定した各燃料バンドルから選定され、奇数の燃料バンドル装荷サイクル時に移動させるバンドルは奇数サイクル燃料バンドル移動マップで移動させるよう特定した各燃料バンドルから選定される燃料装荷データを発生する方法。
【請求項2】
偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)および奇数サイクル燃料バンドル移動マップ(90)は、それ以前に2回の燃料サイクルを経験した燃料バンドルの位置を特定し、排出マップ(84)は3回目の燃料サイクルにかけられる燃料バンドルを受け入れる炉心位置を特定する請求項1記載の方法。
【請求項3】
各偶数燃料装荷サイクルにおいて、新燃料バンドル(14)を受け入れる炉心位置を特定する炉心用偶数サイクル新燃料バンドル装荷マップ(88)を規定する段階と、
各奇数燃料装荷サイクルにおいて、新燃料バンドル(14)を受け入れる炉心位置を特定する炉心用奇数サイクル新燃料バンドル装荷マップ(86)を規定する段階と、
偶数燃料装荷サイクル向けの偶数サイクル新燃料バンドル装荷マップに基づき新燃料装荷指示(104)を出す段階と奇数燃料装荷サイクル向けの奇数サイクル新燃料バンドル装荷マップに基づき新燃料装荷指示を出す段階とを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)で移動させることが特定された各燃料バンドルの燃料バンドル位置は、偶数サイクル新燃料マップ(88)において新燃料バンドルを受け入れるように特定された各燃料バンドル位置の一部である請求項3記載の方法。
【請求項5】
偶数サイクルおよび奇数サイクル新燃料バンドルマップで新燃料バンドルを受け入れるように特定されたすべての炉心位置と排出マップで排出するように特定されたすべての炉心位置を加算したものが炉心内の全燃料バンドル位置の合計と等しいかどうかを判定する段階(98)をさらに含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
連続する偶数および奇数燃料装荷サイクルに対し位置を入れ替えの指示(104)を出すために、方法(70)の連続的繰り返しを行う段階をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
炉心(10)が一連の燃料バンドル(14)の位置を含む、原子炉向けの平衡状態炉心装荷戦略を作成する方法であって、
偶数燃料装荷サイクル時に、偶数燃料装荷サイクル向けの燃料装荷マップを、偶数サイクル新燃料バンドル装荷テンプレート(88)、移動される予定のバンドルの燃料位置を特定する偶数サイクル燃料バンドル移動テンプレート(92)、および撤去される予定の2回使用した燃料バンドルの燃料位置を特定する排出マップ(84)に基づき発生する段階と、
偶数燃料装荷サイクルと交互に行う奇数燃料装荷サイクル向けの燃料装荷マップを、奇数サイクル新燃料バンドル装荷テンプレート(86)、奇数サイクル燃料バンドル移動テンプレート(90)、および燃料位置を特定する排出マップ(84)に基づき発生する段階と、
発生した偶数サイクル燃料装荷マップと、この偶数サイクル燃料バンドル装荷マップで特定された各燃料バンドルの曝露レベルに関するデータとに基づき偶数サイクル燃料バンドル曝露マップを発生する段階(108)と、
発生した奇数サイクル燃料装荷マップと、この奇数サイクル燃料バンドル装荷マップで特定された各燃料バンドルの曝露レベルに関するデータとに基づき奇数サイクル燃料バンドル曝露マップを発生する段階(108)と、
少なくとも偶数燃料装荷サイクルと奇数燃料装荷サイクルの2つの連続するループに対して、燃料装荷マップおよび燃料バンドル曝露マップを発生するステップを繰り返す段階と、
2つの連続する偶数サイクルについて各偶数サイクル燃料バンドル曝露マップを比較し、各曝露マップが所定の類似性レベル内に収束しているかどうか判定する段階と、
連続する偶数サイクル燃料バンドル曝露マップが収束していない場合は、少なくとも偶数燃料装荷サイクルと奇数燃料装荷サイクルの2つの連続するループに対して、燃料装荷マップおよび燃料バンドル曝露マップを発生し、連続する偶数サイクル燃料曝露マップを比較するステップを繰り返す段階と、
連続する偶数サイクルのファンネルが収束している場合は、炉心用平衡状態燃料装荷戦略を報告する段階とを含む平衡状態炉心装荷戦略を作成する方法。
【請求項8】
原子炉向けの、核燃料バンドルの炉心内の位置を特定する一群の炉心マップであって、
奇数サイクルおよび偶数サイクルは交互に行われる炉心燃料取り替えサイクルである、新燃料バンドルを受け入れる炉心位置を特定する偶数サイクル新燃料バンドルマップ(88)と、
新燃料バンドルを受け入れる炉心位置を特定する奇数サイクル新燃料バンドルマップ(86)と、
他の炉心位置に移動される燃料バンドルを特定する偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)と、
他の炉心位置に移動される燃料バンドルを特定する奇数サイクル燃料バンドル移動マップ(90)と、
および偶数サイクルおよび奇数サイクル各燃料バンドル移動マップで特定された炉心位置からバンドルを受け入れる他の炉心位置を特定する排出マップ(84)とを備える炉心マップ。
【請求項9】
偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)で移動させることが特定された各バンドルの炉心位置は、偶数サイクル新燃料バンドルマップ(88)において新燃料バンドルを受け入れるように特定された各炉心位置の一部である請求項8記載の一群の炉心マップ。
【請求項10】
偶数サイクル燃料バンドル移動マップ(92)で移動させることが特定された各燃料バンドル位置は、奇数サイクル燃料バンドル移動マップ(90)で移動させないように特定された燃料バンドルと同じ炉心位置にある請求項8記載の一群の炉心マップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−164605(P2008−164605A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331280(P2007−331280)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)