油中水型乳化組成物
【課題】 本発明は、乳化安定性に優れ、乳化剤特有の異味異臭が感じられず、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されたバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供する。
【解決手段】油中水型乳化組成物中、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含有する。 好ましくは、カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である。
【解決手段】油中水型乳化組成物中、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含有する。 好ましくは、カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、食感が改良された油中水型乳化組成物に関する。本発明の油中水型乳化組成物は、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリンなどに好適に利用される。
【背景技術】
【０００２】
従来、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリンなどの油中水型乳化組成物の製造時には、乳化を安定にするために、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルといった乳化剤が必須的に使用されている。一般にこのような乳化剤を使用した場合、乳化剤特有の異味異臭が感じられたり、乳化物の口溶けが悪く、水相部の呈味成分を感じにくくなったりする傾向があり、乳化剤を無添加或いは添加量を減じて乳化物を調製する製法が検討されている。
【０００３】
例えば、カラギナン、ファーセレラン、寒天、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、アルギン酸、ペクチン、ジェランガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アルギン酸塩、ペクチンを含有する食物繊維などの、セルロースを除く多糖類を含有し、かつ乳化剤を含有しない油中水型乳化組成物（特許文献１）や、加工澱粉を含有し、かつ乳化剤を含有しない油中水型乳化組成物が、乳感安定性に優れ、クリーミング性も良好であること（特許文献２）、油脂含有物に乳化保持剤としてジェランガムを添加する乳化油脂食品が、オーバーラン性がよく、油脂の分離が少なく乳化性に優れた油脂ができることが記載されている（特許文献３）。しかし、使用する多糖類によっては、乳化安定性が充分でなかったり、却って、食感が重たくなったりするなどの問題点がある。乳化安定性に優れ、なおかつ得られた乳化物の食感が優れている油中水型乳化組成物を得るためには、更に改良の余地があった。
【０００４】
【特許文献１】特開２０００−２４５３７８号公報
【特許文献２】特開２０００−２４５３７８号公報
【特許文献３】特開昭６３−１６９９３２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、乳化安定性に優れ、乳化剤特有の異味異臭が感じられず、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されたバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、油中水型乳化組成物中に、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含むことにより、乳化安定力に優れ、かつ、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されることを見いだした。また、カルシウム反応性の多糖類としては、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種又は２種以上が好ましいことを見いだした。
【０００７】
本発明は、以下の態様を有する；
項１． 下記（１）及び（２）を含むことを特徴とする油中水型乳化組成物：
（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上
（２）カルシウム反応性の多糖類
項２． カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である、項１に記載の油中水型乳化組成物。
【発明の効果】
【０００８】
本発明により、乳化安定性に優れ、かつ、得られた乳化物の口溶けが向上し、油っぽさが軽減され良好な食感となるバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明の油中水型乳化組成物は、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含むことを特徴とする。
【００１０】
まず、（１）で掲げる、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上について説明する。
【００１１】
本発明で使用する微結晶セルロースは、微結晶セルロースと分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する複合体とした微結晶セルロース製剤を好適に使用することが出来る。微結晶セルロース製剤の製法としては、例えば、パルプを磨砕して得られた微細セルロースを分散剤や崩壊剤と均一に混合して均質なスラリーとしてこれを乾燥することにより得られる方法を挙げることができるが、具体的には、特公昭４０−１４１７４号公報、特公昭６２−４３６６１号公報、特開平６−３３５３６５号公報などに記載のものが使用できる。分散剤や崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース塩（ナトリウム、カルシウム）、ガラクトマンナン（グァーガム、酵素分解グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等）、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、ゼラチン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチンなどを使用することが出来る。中でも、好ましいのは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、ペクチンである。また、微結晶セルロースの結晶粒子の大きさとしては、平均粒径２０μｍ以下、好ましくは１０μｍ以下２μｍ以上である。本発明で使用する微結晶セルロース製剤は商業上入手可能であり、例えば、旭化成工業株式会社製のアビセル・セオラス製品や、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−１９０４などを挙げることができる。
【００１２】
微結晶セルロースの添加量としては、油中水型乳化組成物に対して、０．２〜０．５重量％、好ましくは、０．３〜０．４５重量％、更に好ましくは、０．３５〜０．４５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１３】
本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、油糧種子（大豆、パーム、椰子、コーン、綿実等）または穀類（米、小麦等）や豆類（小豆、エンドウ豆等）を原料とし、それらから通常の方法で油脂、タンパク質、澱粉質を除いた穀又は粕を用いて、それらを酸性乃至アルカリ性の条件下、好ましくは各々のタンパク質の等電点付近ｐＨで、好ましくは８０℃〜１３０℃、より好ましくは１００℃〜１３０℃で加熱分解して水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか又は例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理或いはエタノール沈殿処理して疎水性物質もしくは低分子物質を除去し乾燥することによって得ることができる。
【００１４】
原料が大豆であれば、豆腐、豆乳及び分離大豆タンパク質を製造するときに副生するオカラを利用することができる。こうして得られた水溶性ヘミセルロースは、平均分子量が数万〜数百万であり、その組成のおよそ８割以上が多糖類で、その他、粗灰分、粗タンパクおよび水分を含有している。また、構成糖としてはガラクトースが最も多く、次いでウロン酸およびアラビノース、その他キシロース、フコース、ラムノースおよびグルコースがあげられる。
【００１５】
本発明の水溶性ヘミセルロースの原料としては上記のものがあげられるが、溶解性や工業性の面から、豆類由来、特に大豆、なかでも子葉由来のものが好ましい。この水溶性ヘミセルロースは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のＳＭ−７００、ＳＭ−９００、ＳＭ−１２００等を挙げることができる。
【００１６】
なお、水溶性ヘミセルロースは、その分子量がどの様な物でも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には５千〜１００万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は標準プルラン（昭和電工株式会社）を標準物質として０．１ＭのＮａＮＯ３溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。
【００１７】
水溶性ヘミセルロースの添加量としては、油中水型乳化組成物に対し０．２〜３．０重量％、好ましくは、０．３〜１．０重量％、更に好ましくは、０．５〜１．０重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１８】
アラビアガムについては、マメ科アカシア属に属する植物（アカシア：特にAcacia senegal及びAcacia seyal）の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂である。アラビアガムは水に高濃度で溶解し、その水溶液は、比較的低濃度で、強い乳化安定性と保護コロイド性、及びフィルム形成性を有する。このため、アラビアガムは、従来から広く乳化剤、増粘剤、安定剤、結合材及び皮膜剤などとして利用されている（「INDUSTRIAL GUMS - Polysaccharides and Their Derivatives-」, SECOND EDITION, ACADEMIC PRESS, New York and London, 1973, pp.197-263）。アラビアガムの利用分野は多岐に亘っており、例えば食品分野においても、乳化剤、増粘剤、及び乳化安定剤などとして古くから使用されている。ゆえに、食への安全性も経験的に確認されている素材である。アラビアガムは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガムアラビックＳＤ等を挙げることができる。アラビアガムの添加量としては、油中水型乳化組成物に対し０．５〜５．０重量％、好ましくは、０．５〜３．０重量％、更に好ましくは、１．０〜１．５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１９】
本発明では、まず、（１）成分として、前述の微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上を油中水型乳化組成物に含むことを特徴とする。好ましくは、微結晶セルロース及び／又は水溶性ヘミセルロース、更に好ましくは、微結晶セルロースを使用する。
【００２０】
次に、本発明の油中水型乳化組成物には、前述の（１）に加えて、（２）成分として、カルシウム反応性の多糖類を含むことを特徴とする。
【００２１】
カルシウム反応性の多糖類としては、カルシウムと反応性を有する多糖類で有れば特に限定はされないが、特に、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上が好ましく、更に好ましくは、脱アシル型ジェランガムを使用するのが好ましい。
【００２２】
本発明で使用する脱アシル型ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類であり、１−３結合したグルコース、１−４結合したグルクロン酸、１−４結合したグルコース及び１−４結合したラムノースの４分子を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類である。１構成単位辺りカルボキシル基１残基を有する。脱アシル型ジェランガムの商業的に入手可能な製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のゲルアップ[商標]Ｋ−Ｓ、ケルコ社製のケルコゲル及びケルコゲルＬＴなどを挙げることができる。
【００２３】
本発明で使用するカラギナンについて、一般的にカラギナンとして市販されているものは、イオタタイプ、カッパタイプ、ラムダタイプがあり、カルシウム反応性を示すのはカッパタイプのカラギナンであるので、本発明ではカッパカラギナンを使用する。カッパカラギナンの商業的に入手可能な製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のカラギニンＣＳＫ−１、カラギニンＣＳＫ−２などを挙げることができる。
【００２４】
本発明で使用するＬＭペクチン（ローメトキシルペクチン）は、エステル化度が５０％以下、好ましくは、３５％以下５％以上のものを使用するのが好ましい。一般に、エステル化度が低くなればなるほど、カチオンとの反応性が高くなるため好ましい。なお、ＬＭペクチンは商業的に入手でき、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−４０２、ビストップ［商標］Ｄ−１３８２等が挙げられる。
【００２５】
これらカルシウム反応性の多糖類の添加量としては、油中水型乳化組成物に対して、０．０５〜１．５重量％、好ましくは、０．１〜１．０重量％、更に好ましくは、０．１〜０．５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００２６】
当該カルシウム反応性の多糖類は、油中水型乳化組成物の原料に含まれる少量のカルシウムと反応して、本発明の食感改良効果や保型性付与効果に寄与する。従って、本発明では、カルシウムが含まれる原料を水相部或いは油相部に使用する。カルシウムが含まれる原料として、例えば、バター、生クリーム、牛乳、生乳、特別牛乳、生山羊牛、殺菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳などの動物性乳；豆乳などの植物性乳；濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、発酵乳（ヨーグルト製品を含む）、乳飲料及び乳酸菌飲料の乳製品や、カルシウム分を含む植物性原料としてマーガリン等を挙げることができる。
【００２７】
なお、本発明の油中水型乳化組成物には、前述の多糖類の他に、本発明の効果に悪影響を与えない限り、他の多糖類が含まれていても良い。例えば、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、イオタカラギナン、ラムダカラギナン、ＨＭペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、ネイティブ型ジェランガム、タラガム、プルラン、ラムザンガム、水溶性セルロースエーテル（メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなど）等を挙げることができる。
【００２８】
本発明の油中水型乳化組成物は、前記成分を含む他は常法により調製することができる。例えば、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類や他の水溶性配合原料を含む水溶性成分を加熱溶解した水相部を、バターやマーガリンなどのカルシウムを含む油溶性成分を添加した油相部に加え、乳化・均質化した後、加熱殺菌処理し、ボテーター又はコンビネーターのような従来公知の混捏機を用いて急冷混捏することによって得ることができる。
【００２９】
均質化方法も常法により行うことができる。水相部と油相部の両者を予備乳化混合し、予備乳化液を先ず調製した後、この予備乳化液を更に均質化を行ってもよく、更に均質化は、二段階均質化など、均質化を数回繰り返しても良い。均質化は、市販のホモミキサーやホモゲナイザー等の強いせん断力を有する乳化機にて行うことができる。
【００３０】
加熱殺菌は、一般的には原材料を混合、均質化の後プレート式熱交換器やチェーブラ式熱交換器により加熱殺菌する方法を挙げることができるが、乳化物が高粘度になる場合は、原材料を混合、均質化の後、容器に充填して密封した後レトルト殺菌を行う方法などのいずれの方法によってもよい。
【００３１】
本発明の油中水型乳化組成物において、好ましい配合量（重量％）は油相部５０〜９９％、水相部１〜５０％であり、油相部を減らして水相部を増やすと、乳化組成物とすることはできるが、シロップを加えてバタークリームを作成すると、乳化型が油中水型から水中油型へと反転してしまい、安定した乳化状態とはならない可能性がある。本発明の油中水型乳化組成物は、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリン、サワークリーム等の乳化食品に適用可能である。
【００３２】
本発明においては、水溶性成分及び油溶性成分として、前述の他、食塩、糖類、塩類、各種エキス類、香辛料等を用いてもよく、また、上記以外の成分として、通常の油中水型乳化組成物に使用される香料、着色料及び酸化防止剤等を用いることができる。
【００３３】
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖（イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等）、トレハロース、糖アルコール（マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等）、砂糖結合水飴（カップリングシュガー）等をあげることができ、粉糖でも液糖でも良い。更に、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分も糖類の代わりに用いることができ、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物（グリチルリチン）、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末、等の甘味成分を用いてもよい。更に、塩類としては、ヘキサメタリン酸塩、重曹等が例示できる。
【００３４】
なお、本発明の風味に悪影響を与えない限度において、乳化剤を使用することも可能である。乳化剤は一般に水中油型乳化組成物の製造に使用される乳化剤であればよいが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩（ナトリウム塩、カルシウム塩）、ユッカ抽出物、サポニン、ポリソルベート等を挙げることができる。
【００３５】
また、油相部を形成する油脂として、上述の他、植物性油脂としては、ショートニング、なたね油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、こめ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、パーム軟質油、パーム核油、ヤシ油等を挙げることができる。動物性油脂としては、ラ−ド、牛脂、乳脂、魚油等を挙げることができる。
【００３６】
なお、本発明の油中水型乳化組成物を構成する、水相部及び油相部に使用する原料にカルシウムが含まれていない場合は、いずれかの相にカルシウム塩などを添加しても良い。カルシウム塩の例として、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウムなど、更には、焼成カルシウム、貝殻カルシウムなどのカルシウム成分を含む原料を挙げることができる。
【実施例】
【００３７】
以下に、実験例及び実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
なお、下記の実施例及び比較例において、微結晶セルロースは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−１９０４を、水溶性ヘミセルロースは同社製のＳＭ−１２００を、アラビアガムは、同社製のガムアラビックＳＤを、脱アシル型ジェランガムは、同社製のケルコゲルを、カッパカラギナンは同社製のカラギニンＣＳＫ−１を、ＬＭペクチンは同社製のビストップ［商標］Ｄ−４０２を使用した。
【００３８】
実験例１：バタークリーム（１）
下記表１に掲げる処方のうち、マーガリンと粉糖を撹拌機（キッチンエイドミキサーＫＳＭ５（株式会社エフ・エム・アイ社製）使用、撹拌速度目盛２）にて５分間混合する。次に水に表２に示す配合の安定剤を加えて、８０℃１０分間溶解した安定剤含有水溶液を添加後、さらに５分間混合し、バタークリームを得た。得られたバタークリームについて、乳化状態を目視観察し、また、口溶け、あぶらっぽさ、保型性について評価を行った。結果を表２に示す。
【００３９】
【表１】
【００４０】
【表２】
【００４１】
比較例１のキサンタンガムは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンエース［商標］、グァーガムは、同社製のビストップ［商標］Ｄ−２０２２を、プルランは同社製のビストップ［商標］Ｄ−８２２（Ｄ）（プルラン９８％含有）を使用した。
【００４２】
実験例２：バタークリーム（２）
下記表３に掲げる処方のうち、マーガリンと粉糖、乳酸カルシウムを撹拌機（キッチンエイドミキサーＫＳＭ５（株式会社エフ・エム・アイ社製）使用、撹拌速度目盛２）にて５分間混合する。次に水に表４に示す配合の安定剤を加えて、８０℃１０分間溶解した安定剤含有水溶液を添加後、さらに５分間混合し、バタークリームを得た。得られたバタークリームについて、乳化状態を目視観察し、また、口溶け、あぶらっぽさ、保型性について評価を行った。結果を表４に示す。
【００４３】
【表３】
【００４４】
【表４】
【００４５】
表２、４より、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、アラビアガムから選ばれる１種と、（２）脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン、ＬＭペクチンから選ばれる１種を安定剤として含む実施例１〜１２に関しては、乳化状態、口溶け、油っぽさ、保型性のいずれも良好であった。好ましくは、微結晶セルロース及び脱アシル型ジェランガムの組合せが好ましかった。
【産業上の利用可能性】
【００４６】
本発明により、乳化安定性に優れ、乳化剤特有の異味異臭が感じられず、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されたバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供できる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、食感が改良された油中水型乳化組成物に関する。本発明の油中水型乳化組成物は、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリンなどに好適に利用される。
【背景技術】
【０００２】
従来、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリンなどの油中水型乳化組成物の製造時には、乳化を安定にするために、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルといった乳化剤が必須的に使用されている。一般にこのような乳化剤を使用した場合、乳化剤特有の異味異臭が感じられたり、乳化物の口溶けが悪く、水相部の呈味成分を感じにくくなったりする傾向があり、乳化剤を無添加或いは添加量を減じて乳化物を調製する製法が検討されている。
【０００３】
例えば、カラギナン、ファーセレラン、寒天、キサンタンガム、アラビアガム、トラガントガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、アルギン酸、ペクチン、ジェランガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アルギン酸塩、ペクチンを含有する食物繊維などの、セルロースを除く多糖類を含有し、かつ乳化剤を含有しない油中水型乳化組成物（特許文献１）や、加工澱粉を含有し、かつ乳化剤を含有しない油中水型乳化組成物が、乳感安定性に優れ、クリーミング性も良好であること（特許文献２）、油脂含有物に乳化保持剤としてジェランガムを添加する乳化油脂食品が、オーバーラン性がよく、油脂の分離が少なく乳化性に優れた油脂ができることが記載されている（特許文献３）。しかし、使用する多糖類によっては、乳化安定性が充分でなかったり、却って、食感が重たくなったりするなどの問題点がある。乳化安定性に優れ、なおかつ得られた乳化物の食感が優れている油中水型乳化組成物を得るためには、更に改良の余地があった。
【０００４】
【特許文献１】特開２０００−２４５３７８号公報
【特許文献２】特開２０００−２４５３７８号公報
【特許文献３】特開昭６３−１６９９３２号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたもので、乳化安定性に優れ、乳化剤特有の異味異臭が感じられず、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されたバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意研究を重ねていたところ、油中水型乳化組成物中に、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含むことにより、乳化安定力に優れ、かつ、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されることを見いだした。また、カルシウム反応性の多糖類としては、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種又は２種以上が好ましいことを見いだした。
【０００７】
本発明は、以下の態様を有する；
項１． 下記（１）及び（２）を含むことを特徴とする油中水型乳化組成物：
（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上
（２）カルシウム反応性の多糖類
項２． カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である、項１に記載の油中水型乳化組成物。
【発明の効果】
【０００８】
本発明により、乳化安定性に優れ、かつ、得られた乳化物の口溶けが向上し、油っぽさが軽減され良好な食感となるバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
本発明の油中水型乳化組成物は、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類を含むことを特徴とする。
【００１０】
まず、（１）で掲げる、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上について説明する。
【００１１】
本発明で使用する微結晶セルロースは、微結晶セルロースと分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する複合体とした微結晶セルロース製剤を好適に使用することが出来る。微結晶セルロース製剤の製法としては、例えば、パルプを磨砕して得られた微細セルロースを分散剤や崩壊剤と均一に混合して均質なスラリーとしてこれを乾燥することにより得られる方法を挙げることができるが、具体的には、特公昭４０−１４１７４号公報、特公昭６２−４３６６１号公報、特開平６−３３５３６５号公報などに記載のものが使用できる。分散剤や崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロース塩（ナトリウム、カルシウム）、ガラクトマンナン（グァーガム、酵素分解グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等）、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガティガム、カラギナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、ゼラチン、トラガントガム、ファーセレラン、プルラン、ペクチンなどを使用することが出来る。中でも、好ましいのは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、ペクチンである。また、微結晶セルロースの結晶粒子の大きさとしては、平均粒径２０μｍ以下、好ましくは１０μｍ以下２μｍ以上である。本発明で使用する微結晶セルロース製剤は商業上入手可能であり、例えば、旭化成工業株式会社製のアビセル・セオラス製品や、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−１９０４などを挙げることができる。
【００１２】
微結晶セルロースの添加量としては、油中水型乳化組成物に対して、０．２〜０．５重量％、好ましくは、０．３〜０．４５重量％、更に好ましくは、０．３５〜０．４５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１３】
本発明で使用する水溶性ヘミセルロースは、油糧種子（大豆、パーム、椰子、コーン、綿実等）または穀類（米、小麦等）や豆類（小豆、エンドウ豆等）を原料とし、それらから通常の方法で油脂、タンパク質、澱粉質を除いた穀又は粕を用いて、それらを酸性乃至アルカリ性の条件下、好ましくは各々のタンパク質の等電点付近ｐＨで、好ましくは８０℃〜１３０℃、より好ましくは１００℃〜１３０℃で加熱分解して水溶性画分を分画した後、そのまま乾燥するか又は例えば、活性炭処理、樹脂吸着処理或いはエタノール沈殿処理して疎水性物質もしくは低分子物質を除去し乾燥することによって得ることができる。
【００１４】
原料が大豆であれば、豆腐、豆乳及び分離大豆タンパク質を製造するときに副生するオカラを利用することができる。こうして得られた水溶性ヘミセルロースは、平均分子量が数万〜数百万であり、その組成のおよそ８割以上が多糖類で、その他、粗灰分、粗タンパクおよび水分を含有している。また、構成糖としてはガラクトースが最も多く、次いでウロン酸およびアラビノース、その他キシロース、フコース、ラムノースおよびグルコースがあげられる。
【００１５】
本発明の水溶性ヘミセルロースの原料としては上記のものがあげられるが、溶解性や工業性の面から、豆類由来、特に大豆、なかでも子葉由来のものが好ましい。この水溶性ヘミセルロースは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のＳＭ−７００、ＳＭ−９００、ＳＭ−１２００等を挙げることができる。
【００１６】
なお、水溶性ヘミセルロースは、その分子量がどの様な物でも使用可能であるが、高分子であることが好ましく、平均分子量が数千〜数百万、具体的には５千〜１００万であるのが好ましい。なお、この水溶性ヘミセルロースの平均分子量は標準プルラン（昭和電工株式会社）を標準物質として０．１ＭのＮａＮＯ３溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。
【００１７】
水溶性ヘミセルロースの添加量としては、油中水型乳化組成物に対し０．２〜３．０重量％、好ましくは、０．３〜１．０重量％、更に好ましくは、０．５〜１．０重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１８】
アラビアガムについては、マメ科アカシア属に属する植物（アカシア：特にAcacia senegal及びAcacia seyal）の幹や枝から得られるゴム状の滲出液を乾燥して調製される天然樹脂である。アラビアガムは水に高濃度で溶解し、その水溶液は、比較的低濃度で、強い乳化安定性と保護コロイド性、及びフィルム形成性を有する。このため、アラビアガムは、従来から広く乳化剤、増粘剤、安定剤、結合材及び皮膜剤などとして利用されている（「INDUSTRIAL GUMS - Polysaccharides and Their Derivatives-」, SECOND EDITION, ACADEMIC PRESS, New York and London, 1973, pp.197-263）。アラビアガムの利用分野は多岐に亘っており、例えば食品分野においても、乳化剤、増粘剤、及び乳化安定剤などとして古くから使用されている。ゆえに、食への安全性も経験的に確認されている素材である。アラビアガムは商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のガムアラビックＳＤ等を挙げることができる。アラビアガムの添加量としては、油中水型乳化組成物に対し０．５〜５．０重量％、好ましくは、０．５〜３．０重量％、更に好ましくは、１．０〜１．５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００１９】
本発明では、まず、（１）成分として、前述の微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上を油中水型乳化組成物に含むことを特徴とする。好ましくは、微結晶セルロース及び／又は水溶性ヘミセルロース、更に好ましくは、微結晶セルロースを使用する。
【００２０】
次に、本発明の油中水型乳化組成物には、前述の（１）に加えて、（２）成分として、カルシウム反応性の多糖類を含むことを特徴とする。
【００２１】
カルシウム反応性の多糖類としては、カルシウムと反応性を有する多糖類で有れば特に限定はされないが、特に、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上が好ましく、更に好ましくは、脱アシル型ジェランガムを使用するのが好ましい。
【００２２】
本発明で使用する脱アシル型ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類であり、１−３結合したグルコース、１−４結合したグルクロン酸、１−４結合したグルコース及び１−４結合したラムノースの４分子を構成単位とする直鎖状の高分子多糖類である。１構成単位辺りカルボキシル基１残基を有する。脱アシル型ジェランガムの商業的に入手可能な製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のゲルアップ[商標]Ｋ−Ｓ、ケルコ社製のケルコゲル及びケルコゲルＬＴなどを挙げることができる。
【００２３】
本発明で使用するカラギナンについて、一般的にカラギナンとして市販されているものは、イオタタイプ、カッパタイプ、ラムダタイプがあり、カルシウム反応性を示すのはカッパタイプのカラギナンであるので、本発明ではカッパカラギナンを使用する。カッパカラギナンの商業的に入手可能な製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のカラギニンＣＳＫ−１、カラギニンＣＳＫ−２などを挙げることができる。
【００２４】
本発明で使用するＬＭペクチン（ローメトキシルペクチン）は、エステル化度が５０％以下、好ましくは、３５％以下５％以上のものを使用するのが好ましい。一般に、エステル化度が低くなればなるほど、カチオンとの反応性が高くなるため好ましい。なお、ＬＭペクチンは商業的に入手でき、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−４０２、ビストップ［商標］Ｄ−１３８２等が挙げられる。
【００２５】
これらカルシウム反応性の多糖類の添加量としては、油中水型乳化組成物に対して、０．０５〜１．５重量％、好ましくは、０．１〜１．０重量％、更に好ましくは、０．１〜０．５重量％である。これよりも少ないと充分な効果を得ることができず、これより多く添加しても、更なる効果が望めないためである。
【００２６】
当該カルシウム反応性の多糖類は、油中水型乳化組成物の原料に含まれる少量のカルシウムと反応して、本発明の食感改良効果や保型性付与効果に寄与する。従って、本発明では、カルシウムが含まれる原料を水相部或いは油相部に使用する。カルシウムが含まれる原料として、例えば、バター、生クリーム、牛乳、生乳、特別牛乳、生山羊牛、殺菌山羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳及び加工乳などの動物性乳；豆乳などの植物性乳；濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、発酵乳（ヨーグルト製品を含む）、乳飲料及び乳酸菌飲料の乳製品や、カルシウム分を含む植物性原料としてマーガリン等を挙げることができる。
【００２７】
なお、本発明の油中水型乳化組成物には、前述の多糖類の他に、本発明の効果に悪影響を与えない限り、他の多糖類が含まれていても良い。例えば、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、イオタカラギナン、ラムダカラギナン、ＨＭペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、ネイティブ型ジェランガム、タラガム、プルラン、ラムザンガム、水溶性セルロースエーテル（メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースなど）等を挙げることができる。
【００２８】
本発明の油中水型乳化組成物は、前記成分を含む他は常法により調製することができる。例えば、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上と、（２）カルシウム反応性の多糖類や他の水溶性配合原料を含む水溶性成分を加熱溶解した水相部を、バターやマーガリンなどのカルシウムを含む油溶性成分を添加した油相部に加え、乳化・均質化した後、加熱殺菌処理し、ボテーター又はコンビネーターのような従来公知の混捏機を用いて急冷混捏することによって得ることができる。
【００２９】
均質化方法も常法により行うことができる。水相部と油相部の両者を予備乳化混合し、予備乳化液を先ず調製した後、この予備乳化液を更に均質化を行ってもよく、更に均質化は、二段階均質化など、均質化を数回繰り返しても良い。均質化は、市販のホモミキサーやホモゲナイザー等の強いせん断力を有する乳化機にて行うことができる。
【００３０】
加熱殺菌は、一般的には原材料を混合、均質化の後プレート式熱交換器やチェーブラ式熱交換器により加熱殺菌する方法を挙げることができるが、乳化物が高粘度になる場合は、原材料を混合、均質化の後、容器に充填して密封した後レトルト殺菌を行う方法などのいずれの方法によってもよい。
【００３１】
本発明の油中水型乳化組成物において、好ましい配合量（重量％）は油相部５０〜９９％、水相部１〜５０％であり、油相部を減らして水相部を増やすと、乳化組成物とすることはできるが、シロップを加えてバタークリームを作成すると、乳化型が油中水型から水中油型へと反転してしまい、安定した乳化状態とはならない可能性がある。本発明の油中水型乳化組成物は、バタークリーム、ファットスプレッド、マーガリン、サワークリーム等の乳化食品に適用可能である。
【００３２】
本発明においては、水溶性成分及び油溶性成分として、前述の他、食塩、糖類、塩類、各種エキス類、香辛料等を用いてもよく、また、上記以外の成分として、通常の油中水型乳化組成物に使用される香料、着色料及び酸化防止剤等を用いることができる。
【００３３】
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖（イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等）、トレハロース、糖アルコール（マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等）、砂糖結合水飴（カップリングシュガー）等をあげることができ、粉糖でも液糖でも良い。更に、従来公知若しくは将来知られ得る甘味成分も糖類の代わりに用いることができ、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物（グリチルリチン）、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末、等の甘味成分を用いてもよい。更に、塩類としては、ヘキサメタリン酸塩、重曹等が例示できる。
【００３４】
なお、本発明の風味に悪影響を与えない限度において、乳化剤を使用することも可能である。乳化剤は一般に水中油型乳化組成物の製造に使用される乳化剤であればよいが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩（ナトリウム塩、カルシウム塩）、ユッカ抽出物、サポニン、ポリソルベート等を挙げることができる。
【００３５】
また、油相部を形成する油脂として、上述の他、植物性油脂としては、ショートニング、なたね油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、コーン油、こめ油、大豆油、ヒマワリ油、パーム油、パーム軟質油、パーム核油、ヤシ油等を挙げることができる。動物性油脂としては、ラ−ド、牛脂、乳脂、魚油等を挙げることができる。
【００３６】
なお、本発明の油中水型乳化組成物を構成する、水相部及び油相部に使用する原料にカルシウムが含まれていない場合は、いずれかの相にカルシウム塩などを添加しても良い。カルシウム塩の例として、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、水酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウムなど、更には、焼成カルシウム、貝殻カルシウムなどのカルシウム成分を含む原料を挙げることができる。
【実施例】
【００３７】
以下に、実験例及び実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
なお、下記の実施例及び比較例において、微結晶セルロースは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ［商標］Ｄ−１９０４を、水溶性ヘミセルロースは同社製のＳＭ−１２００を、アラビアガムは、同社製のガムアラビックＳＤを、脱アシル型ジェランガムは、同社製のケルコゲルを、カッパカラギナンは同社製のカラギニンＣＳＫ−１を、ＬＭペクチンは同社製のビストップ［商標］Ｄ−４０２を使用した。
【００３８】
実験例１：バタークリーム（１）
下記表１に掲げる処方のうち、マーガリンと粉糖を撹拌機（キッチンエイドミキサーＫＳＭ５（株式会社エフ・エム・アイ社製）使用、撹拌速度目盛２）にて５分間混合する。次に水に表２に示す配合の安定剤を加えて、８０℃１０分間溶解した安定剤含有水溶液を添加後、さらに５分間混合し、バタークリームを得た。得られたバタークリームについて、乳化状態を目視観察し、また、口溶け、あぶらっぽさ、保型性について評価を行った。結果を表２に示す。
【００３９】
【表１】
【００４０】
【表２】
【００４１】
比較例１のキサンタンガムは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のサンエース［商標］、グァーガムは、同社製のビストップ［商標］Ｄ−２０２２を、プルランは同社製のビストップ［商標］Ｄ−８２２（Ｄ）（プルラン９８％含有）を使用した。
【００４２】
実験例２：バタークリーム（２）
下記表３に掲げる処方のうち、マーガリンと粉糖、乳酸カルシウムを撹拌機（キッチンエイドミキサーＫＳＭ５（株式会社エフ・エム・アイ社製）使用、撹拌速度目盛２）にて５分間混合する。次に水に表４に示す配合の安定剤を加えて、８０℃１０分間溶解した安定剤含有水溶液を添加後、さらに５分間混合し、バタークリームを得た。得られたバタークリームについて、乳化状態を目視観察し、また、口溶け、あぶらっぽさ、保型性について評価を行った。結果を表４に示す。
【００４３】
【表３】
【００４４】
【表４】
【００４５】
表２、４より、（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、アラビアガムから選ばれる１種と、（２）脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン、ＬＭペクチンから選ばれる１種を安定剤として含む実施例１〜１２に関しては、乳化状態、口溶け、油っぽさ、保型性のいずれも良好であった。好ましくは、微結晶セルロース及び脱アシル型ジェランガムの組合せが好ましかった。
【産業上の利用可能性】
【００４６】
本発明により、乳化安定性に優れ、乳化剤特有の異味異臭が感じられず、油っぽさ・べたつきが軽減され、口溶けが良好な食感を有し、適度な保形性が付与されたバタークリームなどの油中水型乳化組成物を提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
下記（１）及び（２）を含むことを特徴とする油中水型乳化組成物：
（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上
（２）カルシウム反応性の多糖類
【請求項２】
カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である、請求項１に記載の油中水型乳化組成物。
【請求項１】
下記（１）及び（２）を含むことを特徴とする油中水型乳化組成物：
（１）微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース及びアラビアガムから選ばれる１種以上
（２）カルシウム反応性の多糖類
【請求項２】
カルシウム反応性の多糖類が、脱アシル型ジェランガム、カッパカラギナン及びＬＭペクチンから選ばれる１種以上である、請求項１に記載の油中水型乳化組成物。
【公開番号】特開２００６−１２９７８５（Ｐ２００６−１２９７８５Ａ）
【公開日】平成１８年５月２５日（２００６．５．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００４−３２２７５４（Ｐ２００４−３２２７５４）
【出願日】平成１６年１１月５日（２００４．１１．５）
【出願人】（０００１７５２８３）三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年５月２５日（２００６．５．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１６年１１月５日（２００４．１１．５）
【出願人】（０００１７５２８３）三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]