説明

油圧ショベルの作業装置

【課題】 前側リンクとアームとの隙間に入り込んだ石等を噛み込まないように逃すことにより、この石等によって前側リンクとアームが損傷するのを防止する。
【解決手段】 前側リンク21のバケット側ボス22とシリンダ側ボス24との間に位置する左,右の外側板26の内側に、アーム13の上面板13Aに向けて拡開し、互いの間隔寸法が大きくなる方向に傾斜した左,右の内側傾斜板27をそれぞれ設ける構成とする。従って、前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの間に石Rが入り込んだ状態で、バケット16を下側に回動し、前側リンク21をアーム13の上面板13Aに接近させたときには、この石Rを左,右の内側傾斜板27による傾斜面に沿って前側リンク21の上側に逃すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂の掘削作業、破砕作業等に好適に用いられる油圧ショベルの作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
作業装置は、旋回フレームの前側に設けられブームシリンダにより俯仰動されるブームと、該ブームの先端側に設けられアームシリンダにより回動されるアームと、該アームの先端側に設けられ作業具シリンダにより回動されるバケット等の作業具と、前記作業具シリンダの先端側を該作業具と前記アームに連結するリンク機構とを備えている。このリンク機構は、作業具と作業具シリンダとの間に設けられた前側リンクと、アームと作業具シリンダとの間に設けられた後側リンクとにより構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−57313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1によるリンク機構は、アームに対して回動可能に取付けられた後側リンクを支点として前側リンクを変位させているから、アームに対して作業具を上側に回動したときには、後側リンクが立上って前側リンクがアームの外表面から離間した状態となる。一方、アームに対して作業具を下側に回動したときには、後側リンクが前側に倒れて前側リンクがアームの外表面に接近した状態となる。
【0006】
従って、作業具を上側に回動し、前側リンクがアームの外表面から離間した状態では、これらの間に大きな隙間が形成されるから、この隙間に石等が入り込むと、作業具を下側に回動して前側リンクがアームの外表面に接近したときに、前側リンクとアームの外表面との間で石等を噛み込んでしまう。これにより、噛み込んだ石等によって前側リンクやアームが削られてしまうという問題がある。一方で、前側リンクとアームとの間に石が入り込まないように、ゴム製の壁板で覆うことが考えられるが、この場合には、組立時の部品点数、作業工数が増大するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、前側リンクとアームとの隙間に入り込んだ石等を噛み込まないように逃すことにより、前側リンクとアームの損傷を防止できるようにした油圧ショベルの作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による油圧ショベルの作業装置は、油圧ショベルの車体に設けられブームシリンダにより俯仰動されるブームと、該ブームの先端側に設けられアームシリンダにより回動されるアームと、該アームの先端側に設けられ作業具シリンダにより回動される作業具と、前記作業具シリンダの先端側を該作業具と前記アームに連結するリンク機構とを備え、前記リンク機構は、前記作業具と前記作業具シリンダとの間に設けられた前側リンクと、前記アームと前記作業具シリンダとの間に設けられた後側リンクとにより構成してなる。
【0009】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記リンク機構の前側リンクには、前記作業具と作業具シリンダとの間で左,右方向に離間して設けられた左,右の外側板の内側に、前記アームの外表面に向け間隔寸法が大きくなる方向に傾斜した左,右の内側傾斜板を設ける構成としたことにある。
【0010】
請求項2の発明は、前記リンク機構の前側リンクは、前記作業具に連結ピンを介して連結される作業具側ボスと、前記作業具シリンダと前記後側リンクとに連結ピンを介して連結されるシリンダ側ボスと、前記作業具側ボスとシリンダ側ボスとを接続する前記左,右の外側板と、該各外側板の内側にそれぞれ設けられ前記アームの外表面に向けて拡開した前記左,右の内側傾斜板とにより構成したことにある。
【0011】
請求項3の発明は、前記前側リンクを形成する左,右の外側板と左,右の内側傾斜板とは、前記アームの外表面側に位置する内端部を互いに接合し、前記アームの外表面から離れた外端部側には、これらの間を連結する連結板を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、前側リンクを形成する左,右の外側板の内側に設けた左,右の内側傾斜板は、アームの外表面に向け間隔寸法が大きくなる方向に傾斜している。従って、アームに対して作業具を上側に回動し、前側リンクがアームの外表面から離間したときに、これらの間に石、コンクリート片等が入り込み、この状態で、作業具を下側に回動し、前側リンクがアームの外表面に接近した場合には、前側リンクとアームの外表面との間に入り込んだ石等を、前側リンクとアームとの間に噛み込むことなく、左,右の内側傾斜板による傾斜面に沿って前側リンクの上側に逃すことができる。
【0013】
この結果、掘削作業、破砕作業等を行っているときに前側リンクとアームの外表面との間に石等が入り込んでも、この石等は各内側傾斜板に沿って逃すことができるから、石等の噛み込みによる前側リンクとアームの摩耗等の損傷を防止でき、信頼性や寿命を向上することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、左,右の外側板と左,右の内側傾斜板とによって作業具側ボスとシリンダ側ボスとを強固に接続することができる。この上で、前側リンクがアームの外表面に接近して石等を噛み込む虞がある場合でも、左,右の内側傾斜板は、この石等を傾斜面に沿ってアームと反対側に逃がすことができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、外側板の内端部と内側傾斜板の内端部とを接合することにより、アームの外表面側に位置する端部を鋭角に形成することができる。これにより、外側板、内側傾斜板とアームの外表面との間に石等を噛み込み難くすることができる。さらに、外側板の外端部と内側傾斜板の外端部とを連結板によって連結することで、この外側板、内側傾斜板および連結板により強度をもった断面三角形状の筒状体を形成することができ、作業具側ボスとシリンダ側ボスとをより一層強固に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態による前側リンクが適用される作業装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】アーム、リンク機構、バケットシリンダ等を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2中の前側リンクを単体で上側から見た拡大斜視図である。
【図4】図3の前側リンクを単体で下側から見た拡大斜視図である。
【図5】図3の前側リンクを単体で示す正面図である。
【図6】図3の前側リンクを単体で示す平面図である。
【図7】図5中の矢示VII−VII方向から見た前側リンクの拡大断面図である。
【図8】バケットを上側に回動することでアームと前側リンクとの間に形成される隙間に石等が入り込んだ状態を示す動作説明図である。
【図9】バケットを下側に回動したときにアームと前側リンクとの隙間に入り込んだ石等が逃げている状態を示す動作説明図である。
【図10】左,右の内側傾斜板に沿って石等が移動している状態を図9中の矢示X−X方向から見た断面図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態による前側リンクを単体で上側から見た拡大斜視図である。
【図12】図11の前側リンクを単体で下側から見た拡大斜視図である。
【図13】図11中の矢示XIII−XIII方向から見た前側リンクの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る油圧ショベルの作業装置を、添付図面に従って詳細に説明する。
【0018】
まず、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1はクローラ式の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた後述の作業装置11とにより大略構成されている。
【0019】
ここで、上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回可能に設けられた旋回フレーム4と、該旋回フレーム4の左前側に搭載されたキャブ5と、前記旋回フレーム4の後部に取付けられ、後述する作業装置11との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、前記旋回フレーム4上に搭載されたエンジン(図示せず)とにより大略構成されている。また、キャブ5は、オペレータが搭乗するもので、その内部にはオペレータが着座する運転席、各種操作レバー等(いずれも図示せず)が設けられている。
【0020】
11は上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置を示している。この作業装置11は、例えば土砂の掘削作業等を行うもので、後述のブーム12、アーム13、バケット16、ブームシリンダ17、アームシリンダ18、バケットシリンダ19、リンク機構20により大略構成されている。
【0021】
12は作業装置11を構成するブームで、該ブーム12は、基端側のフート部が旋回フレーム4の前側に俯仰動可能に取付けられている。このブーム12は、長さ方向の中間部がほぼL字状に屈曲し、先端部には後述するアーム13の基端側が回動可能に取付けられている。ブーム12には、長さ方向のほぼ中間部の上面側に位置してアームシリンダ用ブラケット12Aが設けられ、該アームシリンダ用ブラケット12Aには、後述するアームシリンダ18のチューブ18Aが回動可能に取付けられている。さらに、ブーム12の長さ方向のほぼ中間部で、左,右の側面には、ブームシリンダ用ボス部12B(左側のみ図示)が設けられ、該各ブームシリンダ用ボス部12Bには、後述するブームシリンダ17のロッド17B先端が回動可能に取付けられている。
【0022】
13はブーム12の先端部に回動可能に設けられたアームで、該アーム13は、作業装置11を伸ばした状態で上側に位置する外表面としての上面板13A、下側に位置する下面板13Bおよびこれらの間に位置する左側面板13C、右側面板13D(図2、図10参照)によって断面四角形状の細長い箱状体(角筒体)として形成されている。また、アーム13は、その基端側がブーム12の先端部に連結ピン14を介して回動可能に取付けられている。
【0023】
アーム13の基端部にはアームシリンダ用ブラケット13Eが設けられ、該アームシリンダ用ブラケット13Eには、後述するアームシリンダ18のロッド18B先端が連結ピン15を介して回動可能に取付けられている。また、アーム13の上面板13Aの基端側には、バケットシリンダ用ブラケット13Fが設けられ、該バケットシリンダ用ブラケット13Fには、後述するバケットシリンダ19のチューブ19A基端が連結ピン15を介して回動可能に取付けられている。
【0024】
また、アーム13の先端部には、図2に示すように、円筒状のバケット用ボス部13Gが設けられている。このバケット用ボス部13Gには、後述するバケット16のブラケット19Cが連結ピン14を介して回動可能に連結されている。
【0025】
さらに、アーム13の先端側には、バケット用ボス部13Gよりも基端側に位置してリンク用ボス部13Hが設けられ、該リンク用ボス部13Hは、左,右方向に延びる円筒体として左,右の側面板13C,13Dを貫通して設けられている。このリンク用ボス部13Hには、後述する後側リンク31が連結ピン15を介して回動可能に連結されている。
【0026】
16はアーム13の先端部に回動可能に設けられたバックホウ式のバケットで、該バケット16は、作業装置11の先端部に取付けられる作業具の一つを構成している。このバケット16は、凹状に湾曲して形成された底板16Aと、該底板16Aの左,右両側に固着された側板16Bとにより大略構成されている。底板16Aの基端側には、アーム用ブラケット16Cとリンク用ブラケット16Dとが連続するように立設されている。そして、バケット16のアーム用ブラケット16Cは、図10に示すように、アーム13のバケット用ボス部13Gに連結ピン14を介して回動可能に連結されている。また、リンク用ブラケット16Dは、後述する前側リンク21のバケット側ボス22に連結ピン15を介して回動可能に連結されている。
【0027】
17は旋回フレーム4とブーム12との間に設けられた左,右のブームシリンダ(左側の1本のみ図示)で、該各ブームシリンダ17は、ブーム12を俯仰動させるものである。また、ブームシリンダ17は、チューブ17Aと、該チューブ17Aの先端から軸方向に伸縮可能に突出したロッド17Bとから大略構成されている。そして、ブームシリンダ17は、チューブ17Aの基端部が旋回フレーム4に回動可能に連結され、ロッド17Bの先端部がブーム12のブームシリンダ用ボス部12Bに回動可能に連結されている。
【0028】
18はブーム12とアーム13との間に設けられたアームシリンダで、該アームシリンダ18は、ブーム12に対してアーム13を回動させるものである。また、アームシリンダ18は、ブームシリンダ17とほぼ同様に、チューブ18A、ロッド18Bとから大略構成されている。そして、アームシリンダ18は、チューブ18Aの基端部が連結ピン15を介してブーム12のアームシリンダ用ブラケット12Aに回動可能に連結され、ロッド18Bの先端部が連結ピン15を介してアーム13のアームシリンダ用ブラケット13Eに回動可能に連結されている。
【0029】
19はアーム13と後述のリンク機構20との間に設けられた作業具シリンダとしてのバケットシリンダで、該バケットシリンダ19は、リンク機構20を介してバケット16を回動させるものである。また、バケットシリンダ19は、ブームシリンダ17とほぼ同様に、チューブ19A、ロッド19Bとから大略構成されている。そして、バケットシリンダ19は、チューブ19Aの基端部が連結ピン15を介してアーム13のバケットシリンダ用ブラケット13Fに回動可能に連結され、ロッド19Bの先端部が連結ピン25を介して前側リンク21と後側リンク31に回動可能に連結されている。
【0030】
次に、本実施の形態の特徴部分である作業装置11のリンク機構20の構成について、詳しく説明する。
【0031】
即ち、20はアーム13の先端側に設けられたリンク機構を示している。このリンク機構20は、バケットシリンダ19の動力をバケット16に伝えるために、バケットシリンダ19のロッド19Bをバケット16とアーム13に連結するものである。また、リンク機構20は、図2ないし図10に示すように、バケット16の回動角度を大きくするもので、後述の前側リンク21、連結ピン23,25、後側リンク31により大略構成されている。
【0032】
21はバケット16とバケットシリンダ19との間に設けられた前側リンクである。この前側リンク21は、全体的な骨格が略U字状に形成されている。前側リンク21は、図3ないし図7に示す如く、後述のバケット側ボス22、シリンダ側ボス24、外側板26、内側傾斜板27、補強部材29,30により大略構成されている。
【0033】
22は前側リンク21のバケット16側に設けられたバケット側ボスで、該バケット側ボス22は、図3、図4、図6に示すように、左,右方向に延びる円筒体として形成されている。このバケット側ボス22は、軸方向の両端部にバケット16のリンク用ブラケット16Dが配置された状態で、連結ピン23を挿着することにより、バケット16の基端側に回動可能に取付けられている。
【0034】
24は前側リンク21のバケットシリンダ19側に設けられたシリンダ側ボスで、該シリンダ側ボス24は、バケットシリンダ19と後述する後側リンク31とが回動可能に連結されるものである。このシリンダ側ボス24は、バケット側ボス22から所定寸法離間した位置に平行をなすように同軸に配設された2個の円筒体22Aにより構成されている。シリンダ側ボス24は、各円筒体24Aの軸方向の外端部に後側リンク31の一端側が配置され、各円筒体24A間にバケットシリンダ19のロッド19B先端が配置された状態で、これらに亘って連結ピン25を挿着することにより、前側リンク21とバケットシリンダ19と後側リンク31とを回動可能に連結することができる。
【0035】
26はバケット16とバケットシリンダ19との間、即ち、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24との間に設けられた左,右の外側板である。この左,右の外側板26は、略長方形状の板体からなり、各ボス22,24の軸方向に離間した左,右方向の外側位置で互いに平行となるように、該各ボス22,24の軸線に対して直交する方向に延びている。そして、各外側板26は、前部がバケット側ボス22の端部側寄りに溶接手段を用いて固着され、後部がシリンダ側ボス24の円筒体24Aの外側端部側寄りに、前部と同様に溶接手段を用いて固着されている。さらに、略長方形状の板体からなる各外側板26は、アーム13の上面板13A側の端縁が内端部26Aとなり、アーム13の上面板13Aから離れた端縁が外端部26Bとなっている。
【0036】
27は左,右の外側板26の内側に設けられた左,右の内側傾斜板を示している。この左,右の内側傾斜板27は、バケット側ボス22と後述する第1の補強部材29との間で、外側板26に沿って延びている。そして、内側傾斜板27は、アーム13の上面板13A側に位置する斜面部27Aと、アーム13と離れた位置に該斜面部27Aに連続した縦面部27Bとにより構成されている。
【0037】
ここで、各内側傾斜板27の斜面部27Aは、図7に示すように、アーム13の上面板13Aに向け間隔寸法が大きくなる方向に直線的に傾斜している。即ち、斜面部27Aは、外側板26に対して角度αだけ傾斜した斜面となっている。この場合、各斜面部27Aは、アーム13の上面板13A側に位置する内端部27Cが外側板26の内端部26Aに溶接手段等を用いて固着されている。これにより、内側傾斜板27は、外側板26に対して断面V字状に配置されている。
【0038】
従って、図8に示すように、アーム13に対してバケット16を上側に回動すると、前側リンク21がアーム13から離間した状態となる。このときに、前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの間に石、コンクリート片、金属片等(以下、代表して石Rという)が入り込むことがある。この状態で、図9に示すように、バケット16を下側に回動すると、前側リンク21がアーム13の上面板13Aに接近し、この前側リンク21と上面板13Aとの間で石Rを挟むことになる。しかし、左,右の内側傾斜板27は、図10に示すように、前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの間に入り込んだ石Rを、噛み込むことなく、その傾斜面に沿って前側リンク21の上側に逃すことができる。しかも、内側傾斜板27の内端部27Cと外側板26の内端部26Aとの接合部は、鋭角に形成しているから、石Rが接触したときの抵抗をより小さくすることができ、石Rを円滑に移動させることができる。
【0039】
さらに、アーム13の上面板13Aから離れた内側傾斜板27の外端部27Dには、該内側傾斜板27と外側板26とを連結する連結板28が設けられている。この連結板28は、外側板26のほぼ全長に亘って延びた短冊状の板体として形成され、その幅方向の端部が内側傾斜板27の外端部27Dと外側板26の外端部26Bとに溶接手段を用いて固着されている。この場合、外側板26の外端部26Bと内側傾斜板27の外端部27Dとを連結板28によって連結したことにより、この外側板26、内側傾斜板27および連結板28により強度をもった断面三角形状の筒状体を形成することができ、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24とを強固に接続することができる。
【0040】
29は前側リンク21に設けられた第1の補強部材で、該第1の補強部材29は、シリンダ側ボス24と内側傾斜板27との間に設けられている。この第1の補強部材29は、長方形状の板体をU字形状に曲げ加工することにより形成されている。第1の補強部材29は、開口側となる2つの端縁部がシリンダ側ボス24の各円筒体24Aに固着され、端縁部と円弧部との間は左,右の内側傾斜板27に固着されている。これにより、第1の補強部材29は、前側リンク21の全体が捩れたり、2個の円筒体24Aが位置ずれしたりしないように、前側リンク21の強度、特に、シリンダ側ボス24側の強度を高めることができる。
【0041】
30は前側リンク21に設けられた第2の補強部材で、該第2の補強部材30は、バケット側ボス22寄りに位置して左,右の外側板26、内側傾斜板27間に亘って設けられている。この第2の補強部材30は、左,右方向に延びた円柱体(棒状体)として形成されている。第2の補強部材30は、バケット側ボス22と第1の補強部材29との間に位置し、左,右の外側板26、内側傾斜板27を左,右方向に貫通しつつ、該外側板26、内側傾斜板27に溶接手段を用いて固着されている。これにより、第2の補強部材30は、第1の補強部材29と協働し、前側リンク21の全体が捩れたりしないように、該前側リンク21の強度、特に、バケット側ボス22側の強度を高めることができる。
【0042】
31は前側リンク21とアーム13とに取付けられた左,右で2本の後側リンクで、該各後側リンク31は、長さ方向の一端側が連結ピン25を介して前側リンク21のシリンダ側ボス24に回動可能に連結され、他端側が連結ピン15を介してアーム13のリンク用ボス部13Hに回動可能に連結されている。
【0043】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1を操作して作業を行うときの動作について説明する。
【0044】
まず、オペレータは、キャブ5内に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2のクローラを駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、作業装置11を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0045】
この土砂の掘削作業等を行うときには、作業装置11上に石Rが降り掛かり、その一部の石Rは、図8に示すように、前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの隙間に入り込むことがある。この状態で、作業を続け、図9に示すように、バケット16を下側に回動すると、前側リンク21がアーム13の上面板13Aに接近し、この前側リンク21と上面板13Aとの間で石Rを挟むことになる。このように、硬質な石Rを噛み込むと、前側リンク21やアーム13の上面板13Aが摩耗してしまう。
【0046】
然るに、第1の実施の形態では、前側リンク21を、バケット16のリンク用ブラケット16Dに連結ピン23を介して連結されるバケット側ボス22と、バケットシリンダ19と左,右の後側リンク31とに連結ピン25を介して連結されるシリンダ側ボス24と、前記バケット側ボス22とシリンダ側ボス24との間で左,右方向に離間して設けられ前記バケット側ボス22とシリンダ側ボス24とを接続する左,右の外側板26と、該各外側板26の内側にそれぞれ設けられアーム13の上面板13Aに向けて拡開するように間隔寸法が大きくなる方向に傾斜した左,右の内側傾斜板27とにより構成している。
【0047】
従って、前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの間に石Rが入り込んだ状態で、バケット16を下側に回動し、前側リンク21をアーム13の上面板13Aに接近させたときには、石Rは、前側リンク21とアーム13との間に噛み込むことなく、左,右の内側傾斜板27による傾斜面に沿って前側リンク21の上側に逃すことができる。
【0048】
この結果、掘削作業等を行っているときに前側リンク21とアーム13の上面板13Aとの間に入り込んだ石Rは、各内側傾斜板27に沿って逃すことができるから、石Rの噛み込みによる前側リンク21やアーム13の上面板13Aの摩耗等の損傷を防止でき、信頼性や寿命を向上することができる。
【0049】
また、左,右の外側板26と左,右の内側傾斜板27とは、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24とを強固に接続することができる。この上で、外側板26とバケット側ボス22とシリンダ側ボス24とによって囲まれた範囲に入り込んだ石Rは、各内側傾斜板27によりアーム13と反対側に逃がすことができる。
【0050】
さらに、内側傾斜板27の内端部27Cと外側板26の内端部26Aとの接合部は、鋭角に形成しているから、石Rが接触したときの抵抗をより小さくすることができる。これにより、各外側板26、内側傾斜板27とアーム13の上面板13Aとの間に石Rを噛み込み難くすることができ、この石Rを円滑に移動させて逃すことができる。しかも、外側板26の内端部26Aと内側傾斜板27の内端部27Cとを連結板28によって連結することで、この外側板26、内側傾斜板27および連結板28により強度をもった断面三角形状の筒状体を形成することができ、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24とをより一層強固に接続することができる。
【0051】
次に、図11ないし図13は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、外側板と内側傾斜板と連結板とからなる断面三角形状の筒状体を、作業具側ボスとシリンダ側ボスとの間の全長に亘って設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
図11において、41は第2の実施の形態による前側リンク、42は該前側リンク41に設けられた第2の実施の形態による左,右の内側傾斜板を示している。この左,右の内側傾斜板42は、第1の実施の形態による内側傾斜板27とほぼ同様に、斜面部42Aと縦面部42Bとを有し、その内端部42Cが外側板26の内端部26Aに固着され、外端部42Dが連結板28に固着されている。しかし、第2の実施の形態による各内側傾斜板42は、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24との間の全長に亘って設けられている点で、第1の実施の形態による内側傾斜板27と相違している。この場合、第1の実施の形態によるU字状の第1の補強部材29は廃止されている。
【0053】
43は第1の補強部材29に代えて設けられた第2の実施の形態による第1の補強部材である。この第1の補強部材43は、図12、図13に示すように、略台形状の板体からなり、シリンダ側ボス24寄りに位置して左,右の内側傾斜板42に溶接手段を用いて固着されている。これにより、第1の補強部材43は、第2の補強部材30と協働し、前側リンク41の強度を高めることができる。
【0054】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、左,右の内側傾斜板42をバケット側ボス22とシリンダ側ボス24との間の全長に亘って設けているから、バケット側ボス22とシリンダ側ボス24とを接続する断面三角形状の筒状体の強度を高めることができる。
【0055】
なお、第1の実施の形態では、外側板26と内側傾斜板27と連結板28とをそれぞれ別個に設け、溶接手段を用いて互いに固着した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば外側板と内側傾斜板とを1枚の板体を折曲げることにより形成し、これに連結板を固着する構成としてもよい。同様に、内側傾斜板と連結板とを1枚の板体から形成してもよく、外側板と連結板とを1枚の板体から形成してもよい。これらの構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0056】
また、第1の実施の形態では、内側傾斜板27の斜面部27Aを、アーム13の上面板13Aに向け間隔寸法が大きくなる方向に直線的に傾斜して形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば内側傾斜板27の斜面部27Aを、湾曲した円弧面として形成してもよい。この構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0057】
また、第1の実施の形態では、前側リンク21に対し第1の補強部材29と第2の補強部材30の2個を設ける構成とした場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば補強部材を廃止する構成としてもよい。また、補強部材を1個または3個以上設ける構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0058】
さらに、各実施の形態では、油圧ショベルの作業装置として、クローラ式の油圧ショベル1に設けられ、作業具としてバケット16を備えた作業装置11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルの作業装置に適用してもよい。また、作業具として、岩盤や建造物を破砕する破砕装置、カッタ等を備えた作業装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
11 作業装置
12 ブーム
13 アーム
13A 上面板(外表面)
16 バケット(作業具)
17 ブームシリンダ
18 アームシリンダ
19 バケットシリンダ(作業具シリンダ)
20 リンク機構
21,41 前側リンク
22 バケット側ボス(作業具側ボス)
23,25 連結ピン
24 シリンダ側ボス
26 外側板
26A,27C,42C 内端部
26B,27D,42D 外端部
27,42 内側傾斜板
27A,42A 斜面部
27B,42B 縦面部
28 連結板
29,43 第1の補強部材
30 第2の補強部材
31 後側リンク
α 内側傾斜板の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ショベルの車体に設けられブームシリンダにより俯仰動されるブームと、該ブームの先端側に設けられアームシリンダにより回動されるアームと、該アームの先端側に設けられ作業具シリンダにより回動される作業具と、前記作業具シリンダの先端側を該作業具と前記アームに連結するリンク機構とを備え、
前記リンク機構は、前記作業具と前記作業具シリンダとの間に設けられた前側リンクと、前記アームと前記作業具シリンダとの間に設けられた後側リンクとにより構成してなる油圧ショベルの作業装置において、
前記リンク機構の前側リンクには、前記作業具と作業具シリンダとの間で左,右方向に離間して設けられた左,右の外側板の内側に、前記アームの外表面に向け間隔寸法が大きくなる方向に傾斜した左,右の内側傾斜板を設ける構成としたことを特徴とする油圧ショベルの作業装置。
【請求項2】
前記リンク機構の前側リンクは、前記作業具に連結ピンを介して連結される作業具側ボスと、前記作業具シリンダと前記後側リンクとに連結ピンを介して連結されるシリンダ側ボスと、前記作業具側ボスとシリンダ側ボスとを接続する前記左,右の外側板と、該各外側板の内側にそれぞれ設けられ前記アームの外表面に向けて拡開した前記左,右の内側傾斜板とにより構成してなる請求項1に記載の油圧ショベルの作業装置。
【請求項3】
前記前側リンクを形成する左,右の外側板と左,右の内側傾斜板とは、前記アームの外表面側に位置する内端部を互いに接合し、
前記アームの外表面から離れた外端部側には、これらの間を連結する連結板を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の油圧ショベルの作業装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−28988(P2013−28988A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166799(P2011−166799)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】