説明

油圧モータ

【課題】ハウジング部材に摺動自在に嵌挿されたブレーキピストン及びハウジング部材に減速機部材を取付けた油圧モータにおいて、小型化にし、軽量化した油圧モータにする。
【解決手段】油圧モータ10はケース11とプレート12により構成されるハウジング13と、を備える。ハウジング13内にはシリンダーブロック18が軸19と共に軸受20、21を介して軸支されている。シリンダーブロック18のシリンダー孔22はピストン23を摺動自在に嵌挿してシリンダー室24を形成し、ピストン23がシュー25を介して斜板26に沿って摺動自在にさせている。プレート12の斜板26の背面との接触面12aには、軸心方向側の一部に断面円形状の凹部39が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械用の旋回装置を駆動するための油圧モータに関し、さらに詳細には、小型・軽量化を図る油圧モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の油圧モータ40は、図3に示されるように、ケース41と端板43とを備えるハウジング44内にシリンダーブロック45が軸受67及び68により軸支された軸46と共に回転自在に設けられている。このシリンダーブロック45のシリンダー孔47内にピストン48を嵌挿してシリンダー室49を形成し、前記ピストン48がシュー50を介して斜板51に沿って摺動自在に形成されている。ケース41の開口部は、小径内周面52と、中間径内周面53と、大径内周面54とからなる段付形状を有し、前記小径内周面52とシリンダーブロック45の外周面45aには固定側摩擦板59と移動側摩擦板60が交互に回転しないように取付けられている。参照符号55は中空形状のブレーキピストンを示し、該ブレーキピストン55は大径基部56、中間径基部57及び小径基部58よりなり、該大径基部56、中間径基部57がケース41の大径内周面54、中間径内周面53に摺動自在に嵌挿されている。
【0003】
前記ケース41と前記端板43との合わせ面には、液密的に閉塞するためのシール部材であるOリング62が設けられ、該Oリング62の外周にはケース41と端板43を結合するボルト63が配置されている。端板43は、相手部品、例えば減速機本体64などを取着する構造となっている。前記ハウジング44及び前記減速機本体64の内部には、これらの内部に滞留する油を図示しないタンク室に戻すケースドレーン室42及び65が形成され、該ケースドレーン室42及び65内に滞留する油の外部漏出を防止するため、前記ケースドレーン室42及び65と外部とを液密的に封止するOリング66が前記端板43と前記減速機本体64の合わせ面に設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−177899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載する油圧モータ40の構造では、端板43は回転体(図2に示すシリンダブロック45のシリンダー孔47に組み付けられて往復運動をするピストン48に結合したシュー50からの荷重)を受けても変形しないように、端板43を斜板51の一体化により剛性をもたせ、多くのボルト、例えばボルト63でハウジング44に固定している。
【0006】
しかしながら、通常、油圧モータ40は該油圧モータ40を搭載する機械の仕様に合わせ、数種類の容量水準を設定している。
油圧モータの容量は、ピストン径及びピストン配置PCDが同一であれば、シュー摺動部の角度により決定する。例えば、角度が大きければ容量は大きく、角度が小さければ容量は小さい。この際、同じ油圧モータの回転数を出力するためには、機械から油圧モータへの供給流量が大きい場合には大きなモータ容量、供給流量が小さい場合には小さな容量、の組み合わせとなる。この供給流量は、各機械メーカーの設計思想により異なる。
【0007】
これらの要求にこたえるため、シューの摺動部の角度水準を数種類設定している。この端板の角度を加工する方法として、フライス加工により狙いの角度になるような治具を使用するのが一般的であるが、角度が多水準となるときは多くの治具を保有し、水準ごとに治具の段取り替えを実施する必要があり、生産性が悪い。
また、水準ごとの治具を必要としない特殊な能力を持った加工機であれば、治具の準備や段取り替え工数が不要で生産性は確保されるが、高額な加工機への設備投資が必要である。
さらに、端板43のように大きな部品はシュー50の摺動部をラップ仕上げすることができないため、端板43にラップ仕上げを施した部品であるスワッシュプレート61を設置してシュー50との接触面を形成している。
【0008】
しかし、この構造では剛性をもたせるために例えば、端板43の厚みを大きくしたり、端板43に硬い材料を使用したり、ボルト63の本数を増やす構造にしているが、この構造は、端板43の価格が高価になることに加え、油圧モータ40全体も大きく、重くなることから、実機において取付位置(レイアウト)の自由度が低下する。
一方、特に近年の実機における機器の取り付けスペースは縮小傾向にあるため、油圧モータをコンパクト化に対する要求がユーザーから望まれている。
本発明は、係る課題を解決するためになされたもので、小型化にし、かつ軽量化した油圧モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ハウジング部材に回転自在に支持された軸に一体的に設けたシリンダーブロックに摺動自在に嵌挿されたピストンを有し該ピストンに係合する斜板を支持するプレート部材を該ハウジング部材に取付けると共に、前記ハウジング部材に摺動自在に嵌挿されたブレーキピストン及びハウジング部材に減速機部材を取付けた油圧モータにおいて、
前記斜板の背面に係合する前記プレート部材の接触面には軸心方向側に断面円形状の凹部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明はプレートに施す容易な凹み加工により該プレートの変形量を抑えることができるため、硬さの高い材料の使用や厚みを大きくする必要もないので、安価かつモータ全体の高さ寸法低減、軽量化が実現できる。これにより、本モータを搭載する実機における取付位置(レイアウト)の自由度が増す。
また本発明の加工は、プレートの旋盤加工でわずかな段差で良いため、加工時間は従来品とほとんど変わらず、プレートの硬さが高い材料使用や厚みの増加が不要になるため、安価での加工が可能である。
くわえて、ボルトに作用するモーメント荷重も軽減されるので、ボルトの本数が少なくて済み、安価でかつ組立時間の短縮により生産性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る油圧モータの要部断面図である。
【図2】図1の凹部の拡大図である。
【図3】従来の油圧モータ概略構造を断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る油圧モータ10の要部を示す縦断面図を示す。
図1に示すように、油圧モータ10は、基本的にはケース11とプレート(プレート部材)12により構成されるハウジング(ハウジング部材)13と、を備える。前記ケース11の内周面には、大径内周面14と、中間径内周面15と、小径内周面16と、を備える。前記ケース11の大径内周面14及び中間径内周面15は、プレート12が嵌挿され、円周方向に配置された複数個のねじ部材17によりケース11と一体的に締結される。ハウジング13内にはシリンダーブロック18が軸(軸部材)19と共に軸受20、21を介して軸支されている。
【0013】
前記シリンダーブロック18のシリンダー孔22はピストン23を摺動自在に嵌挿してシリンダー室24を形成し、前記ピストン23がシュー25を介して斜板26に沿って摺動自在にさせて油圧モータ10が構成されている。なお、斜板26は、プレート12に支持されている。
【0014】
前記ケース11の中間径内周面15及び小径内周面16には、段付形状を呈するブレーキピストン17の大径基部28、小径基部29が摺動自在に嵌挿されている。前記プレート12とブレーキピストン27との間には、ばね部材30が装着され、前記ばね部材30の弾発力によりブレーキピストン27が図1で右方向に付勢され、シリンダーブロック18にスプライン31aにより固着されたリング状のディスクプレート31に係合される。
【0015】
ケース11の大径内周面14には減速機本体(減速機部材)32が嵌挿され、ケース11と減速機本体32との合わせ面が円周方向に配置された複数個のねじ部材33により締結され、これらの合わせ面にOリング34に設けてハウジング13及び減速機本体32内の油を図示しないタンクに戻すケースドレーン室36及び35を外部と液密的に封止している。
この場合、ハウジング13のケースドレーン室36は、軸受20の隙間(開示しない)、フィルタ37を通り減速機本体32のケースドレーン室35に連通されている。
【0016】
また、プレート12の斜板26の背面(図1で斜面の対向面)との接触面12aには、軸心方向側の一部に断面円形状の凹部39が形成されている。凹部39の深さTは図2に示すように、加工精度を含め、斜板26がプレート12に接触しない程度であれば、必要以上に深くしない寸法、例えば0.2mm程度が望ましい。深くなりすぎると、プレート12に組みつけてある軸受20の支持部が少なくなり異常摩耗や破損の原因になるためである。
また、凹部39の半径方向の範囲Bは図2に示すように、軸19の中心側からできるだけ広い範囲で凹んでいることが望ましいが、広くなりすぎると斜板26の背面の面圧応力が過大になり、プレート12や斜板26の異常摩耗を引き起こすため、許容面圧応力以内に設定することが望ましい。
【0017】
本発明の実施の形態に係る油圧モータ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、プレート12に施す凹部39は容易な加工により該プレート12の変形量を抑えることができるため、硬さの高い材料の使用や厚みを大きくする必要もないので、安価かつ油圧モータ10の全体の高さ寸法低減、軽量化が実現できる。これにより、油圧モータ10を搭載する実機における取付位置(レイアウト)の自由度が増す。
また本発明によるプレート12は旋盤加工でわずかな段差で良いため、加工時間は従来品とほとんど変わらず、プレートの硬さが高い材料使用や厚みの増加が不要になるため、安価での加工が可能である。
くわえて、ボルトに作用するモーメント荷重も軽減されるので、ボルトの本数が少なくて済み、安価でかつ組立時間の短縮により生産性も向上する。
【符号の説明】
【0018】
10 油圧モータ 11 ケース
12 プレート 13 ハウジング
18 シリンダブロック 19 軸
20、21 軸受 23 ピストン
26 斜板 39 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部材に回転自在に支持された軸部材に一体的に設けたシリンダーブロックに摺動自在に嵌挿されたピストンを有し該ピストンに係合する斜板を支持するプレート部材を該ハウジング部材に取付けると共に、前記ハウジング部材に摺動自在に嵌挿されたブレーキピストン及びハウジング部材に減速機部材を取付けた油圧モータにおいて、
前記斜板の背面に係合する前記プレート部材の接触面には軸心方向側に断面円形状の凹部を形成したことを特徴とする油圧モータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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