油圧式無段変速装置
【課題】産業機械や車両等、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置において、可動斜板の冷却能力を確保しつつ、油圧配管長を削減することができる、斜板の冷却構造を有した油圧式無段変速装置を提供することが課題である。
【解決手段】油圧ポンプ(チャージポンプ26)と、油圧モータと、油圧サーボ機構3と、入出力側斜板6・12を有し、前記チャージポンプ26の入力軸2と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置1であって、前記油圧サーボ機構3とチャージポンプ26のシリンダブロック7の間に入力側斜板6を配置し、該油圧サーボ機構3のリリーフ弁70から放出される作動油を、前記入力側斜板6に向けて放出する。
【解決手段】油圧ポンプ(チャージポンプ26)と、油圧モータと、油圧サーボ機構3と、入出力側斜板6・12を有し、前記チャージポンプ26の入力軸2と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置1であって、前記油圧サーボ機構3とチャージポンプ26のシリンダブロック7の間に入力側斜板6を配置し、該油圧サーボ機構3のリリーフ弁70から放出される作動油を、前記入力側斜板6に向けて放出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械や車両等に用いられ、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置における斜板の冷却構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1および第2の回転軸と、軸線方向に往復動する第1および第2のプランジャと、同じく軸線方向に往復動する第1および第2のスプールと、該第1および第2のプランジャ、第1および第2のスプールを収容して第1の回転軸と一体的に回転するシリンダブロックと、該第1のプランジャと当接しつつ軸線に対する傾斜角を変更可能な可動斜板と、該第2のプランジャと当接しつつ軸線に対して所定の傾斜角を成しながら第2の回転軸と一体的に回転する固定斜板と、を具備する油圧式無段変速装置に関する技術が公知になっている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−083497号公報
【特許文献2】特開2005−083498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」、および、「特許文献2」に示される油圧式無段変速装置では、可動斜板の傾斜角を変更するための駆動調整機構として油圧サーボ機構が用いられており、前記第一のプランジャが前記可動斜板と当接しつつ、前記第一の回転軸周りを高速で回転するため、該当接部では摩擦による発熱が起こり、冷却が必要であった。
そのため従来は、作動用油圧配管の一部を分岐させて前記当接部の近傍まで油圧配管を延長し、該当接部に向かって作動油を放出させることで、当接部を冷却していた。
しかし、この方式では冷却用の油圧配管が別途必要となる結果、配管長さも長くなり、コスト増加に繋がっていた。
そこで本発明では、このような現状を鑑み、可動斜板の冷却能力を確保しつつ、油圧配管長を削減することができる、油圧式無段変速装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、油圧ポンプと、油圧モータと、油圧サーボ機構と、可動斜板を有し、前記油圧ポンプの入力軸と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置であって、前記油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出するものである。
【0006】
請求項2においては、前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出することにより、容易かつ効果的に可動斜板の冷却を行うことができる。
【0009】
請求項2においては、前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したことにより、冷却用作動油の油路構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置の全体的な構成を示した側面一部断面図である。
図2は本発明の一実施例に係るシリンダブロックを示す斜視図である。
図3は同じくシリンダブロックを示す背面図である。
図4は同じく図3におけるA−A断面図およびB−B断面図である。
図5は同じくA−A断面を示す斜視図である。
図6は本発明の一実施例に係るタイミングスプールを示す平面図である。
図7は同じくシリンダブロック挿入時のタイミングスプールを示す側面一部断面図である。
図8は本発明の一実施例に係るタイミングスプールおよびプランジャの一連の動作を示す模式図である。
図9は本発明の一実施例に係るチェックリリーフ弁の作動油閉回路を示す油圧系統図である。
図10は本発明の一実施例に係る入力斜板近傍を示す斜視図である。
図11は同じく斜視図である。
図12は同じくリリーフバルブを示す側面図である。
図13は本発明の一実施例に係る油圧サーボ機構の油圧回路図である。
図14は同じく油圧系統図である。
【0011】
[油圧式無段変速装置1の全体構成]
まず、本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置1の全体構成について説明をする。
尚、説明の便宜上、図1、および、図4中に示す矢印Aの方向を前方とする。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置1(HST)は、可変容量型の油圧ポンプと固定容量型の油圧モータとからなり、主に、入力軸2と、前記入力軸2の軸線方向に往復動する入力側プランジャ8・8・・・と、出力側プランジャ10・10・・・と、同じく軸線方向に往復動する入力側タイミングスプール9・9・・・と、出力側タイミングスプール11・11・・・と、前記各プランジャ8・10および各タイミングスプール9・11を収容して入力軸2と一体的に回転するシリンダブロック7と、軸線に対する傾斜角が変更可能であって前記入力側プランジャ8・8・・・と当接する入力側斜板6と、軸線に対して所定の傾斜角を成して前記出力側プランジャ10・10・・・と当接しつつ回転する出力側斜板12と、前記入力側斜板6の駆動機構である油圧サーボ機構3等から構成されている。
【0012】
詳しくは、油圧式無段変速装置1(HST)は、油圧ポンプが斜板保持部材5・入力側斜板6・シリンダブロック7・入力側プランジャ8・入力側タイミングスプール9等より構成され、油圧モータが該シリンダブロック7・出力側プランジャ10・出力側タイミングスプール11・出力側斜板12等より構成されている。
このように、一つのシリンダブロック7に油圧ポンプと油圧モータの各プランジャ8・10を収納する構成として、コンパクト化を図っている。
【0013】
図1に示すように、入力軸2は、エンジン等の駆動源からの駆動力を油圧式無段変速装置1に伝達するための軸であり、軸心部において油圧式無段変速装置1各部に作動油を供給するための油路2bが軸線方向に穿設されて、軸線方向の略中央部にはチェックリリーフ弁38a・38bを設けるための拡径部を有している。入力軸2は、入力側円錐コロ軸受21および入力側針状コロ軸受22を介して入力側ハウジング4に回転自在に軸支される。該入力側円錐コロ軸受21の内輪は、入力軸2に設けられた段差部と入力軸2の先端部2a側から螺装される入力側軸受締付ナット23により、入力軸2に対して相対回転不能に固定される。
該入力軸2にはシリンダブロック7がスプラインを介して外嵌されている。
【0014】
図1に示すように、入力側ハウジング4は、該入力側ハウジング4の基本構成部分である軸受ハウジング部4aと、該軸受ハウジング部4aの上方に形成される油圧サーボ機構3の出力部3aと、前記軸受ハウジング部4aの前進方向に向かって左方に形成される油圧サーボ機構3の調整部3b等からなる構成としている。
軸受ハウジング部4aには、前記入力軸2を貫通させるための貫通孔が穿設され、該貫通孔の内周面前部には入力側円錐コロ軸受21の外輪が嵌合し、内周面後部には入力側針状コロ軸受22が嵌合する。
【0015】
図1および図14に示すように、油圧サーボ機構3の出力部3aは、前記軸受ハウジング部4aの上方に前後方向に形成された出力部シリンダ4bと、該出力部シリンダ4bにおいて前後方向に往復摺動可能に内挿されるパワーピストン15と、該パワーピストン15の後端部に固設される掛止部材16等から構成されている。
パワーピストン15の前部には拡径部15aが形成され、該拡径部15aの前端面と出力部シリンダ4bによって前側油室17を構成するとともに、該拡径部15aの後端面と出力部シリンダ4bによって後側油室18を構成している。そして、各油室17・18内の油圧を変化させることにより、パワーピストン15を前後方向に往復摺動可能としている。
【0016】
前記前側油室17の前方側の壁部には調整ボルト19が螺設されており、該調整ボルト19の後端部が前記拡径部15aの前端面と当接するように構成している。
このように構成することにより、調整ボルト19を出力部シリンダ4b内部へ臨ませる長さを調整して、パワーピストン15の前方側への摺動位置を制限することができるようにしている。また、調整ボルト19をロックナット49で固定可能な構成として、調整ボルト19を出力部シリンダ4b内部へ臨ませる長さを保持できるようにしている。
掛止部材16は、後述する入力側斜板6の掛止部6cを掛止する断面視略コの字型の部材であり、コの字の開放側を下方に向ける態様で前記パワーピストン15の後端部に固設されている。
【0017】
図14に示すように、油圧サーボ機構3の調整部3bは、前記軸受ハウジング部4aの左方側部に上下方向に形成された調整部シリンダ4cと、該調整部シリンダ4cに内挿されて上下方向に往復摺動可能に構成されるサーボスプール13と、該サーボスプール13の下方において調整部シリンダ4cに内挿されるフィードバックスプール14と、サーボスプール13とフィードバックスプール14との間に介装して連結するバネ部材20等から構成されている。
【0018】
サーボスプール13は、複数の拡径部(ランド部)および縮径部を有しており、該サーボスプール13の軸芯上には油路13mが穿設されている。該油路13mは軸受ハウジング部4a内部に穿設した油路を介して作動油タンク27に連通されており、作動油が該油路13mや軸受ハウジング部4aに穿孔された接続口4qを介して作動油タンク27にドレンされる構成としている。
そして、調整部シリンダ4cとサーボスプール13の上端面13kにより頂部油室39が形成されて、該頂部油室39と比例調整弁25とが油路4gにより連通されており、該比例調整弁25を調整することによって該頂部油室39内の油圧を調整可能な構成としている。
また、油路4hによって前記後側油室18が調整部シリンダ4cに連通されており、油路4iによって前記前側油室17が調整部シリンダ4cに連通されており、油路4jによってチャージポンプ26が調整部シリンダ4cに連通されている。
以上の構成により、サーボスプール13の上下位置に応じて、サーポスプール13の縮径部を介し、前記前側油室17や前記後側油室18やチャージポンプ26が連通される。
【0019】
図14に示すように、フィードバックスプール14には、リンクピン34が遊嵌されており、該リンクピン34の上下変位に応じてフィードバックスプール14も上下に変位する構成としている。
該リンクピン34は、調整部シリンダ4cの左側面に形成された長孔状の窓部から調整部シリンダ4cの外側に臨ませて設けられている。そして、リンクピン34を軸受ハウジング部4aに枢支されたフィードバックリンク24に枢支して、該リンクピン34が入力側斜板6の角度と連係して上下に変位するように構成している。
【0020】
図1に示すように、斜板保持部材5は、前記軸受ハウジング部4aの後方に隣接して配設されており、入力側斜板6の斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更可能に、入力側斜板6を支持するための部材であり、略中央に孔が穿設されている。そして、斜板保持部材5は軸受ハウジング部4aに対して、ボルト締結により固定される。
斜板保持部材5の後端部(保持部5a)は略半円状に窪んだ形状を有している。該半円状に窪んだ部位には斜板用メタル軸受28がスプリングピン等により固設されている。
【0021】
図1および図14に示すように、入力側斜板6は、入力軸2の回転駆動力を入力側プランジャ8が往復動する力(即ち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の油圧)に変換するとともに、斜板面6aの傾斜角を変更することにより入力側プランジャ8の往復動時のストローク(即ち、入力側プランジャ8が往復動時に圧送する作動油の量)を変更するものである。入力側斜板6は略中央に入力軸2が貫通する孔が穿設された部材であり、その一方に平板面である斜板面6aが形成される。
斜板面6aには入力側プランジャ8の突出端(当接盤8c)が当接(または係合)する。一方、他方の板面には保持部6bが突設される。保持部6bの形状は、前記斜板保持部材5の保持部5aの半円状に窪んだ部位と対応しており、入力側斜板6は保持部6bにて斜板保持部材5の保持部5a(より厳密には側面視において半円状に窪んだ部位に設けられた斜板用メタル軸受28)と当接しつつ回動することが可能であり、斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更することが可能である。
尚、入力側斜板6の略中央に穿設された孔の直径は、入力側斜板6が回動しても入力軸2が干渉することが無い大きさとなっている。
【0022】
[入力斜板6の角度調整機構]
次に、前記油圧サーボ機構3による入力側斜板6の角度調整機構について説明する。
図1および図14に示すように、前記比例調整弁25を制御することにより、該比例調整弁25から吐出される油圧を変化させて、前記サーボスプール13を上下に摺動させる。そして、該サーボスプール13の位置に応じて、前側油室17にチャージポンプ26からの圧油が送油され後側油室18が作動油タンク27と連通する第1態様と(A位置)、前側油室17と作動油タンク27が連通し後側油室18にチャージポンプ26からの圧油が送油される第2態様と(B位置)、前側油室17および後側油室18に通じる油路がブロックされる第3態様(中立位置)とに切り換えることができるのである。
本実施例においては、パワーピストン15が後方に変位して、入力側斜板6が図14における時計回りに回動するときに出力側斜板12の回転出力が増加し、反対に、パワーピストン15が前方に変位して入力側斜板6が反時計回りに回動するときに出力側斜板12の回転出力が減少するように構成している。
【0023】
[シリンダブロック7]
次に、図1・図2・図5を用いて本発明の油圧式無段変速装置の一実施例に係るシリンダブロック7について詳細説明する。
図1・図2に示すように、シリンダブロック7は略円柱形状の部材であり、シリンダブロック7の略中央部には入力側端面7aから出力側端面7bに入力軸2を貫通する貫通孔7cが穿設され、該貫通孔7cの内周面の後端部(出力側端面7b側の端部)にはスプライン加工が施されている。一方、シリンダブロック7に入力軸2を貫装したときに前記シリンダブロック7のスプライン加工された部位と対応する入力軸2の外周面にもスプライン加工が施されており、シリンダブロック7は入力軸2とスプライン嵌合して相対回転不能かつ一体的に回転する。
入力側端面7aは入力側斜板6と対向する面であり、出力側端面7bは出力側斜板12と対向する面である。入力側端面7aおよび出力側端面7bは、いずれも入力軸2の軸線と直交している。
【0024】
図3乃至図5に示すように、シリンダブロック7には、計七箇所の入力側プランジャ孔31・31・・・と、計七箇所の入力側タイミングスプール孔32・32・・・とが、シリンダブロック7の入力側端面7aから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。
入力側プランジャ孔31・31・・・は入力側プランジャ8・8・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側プランジャ孔31・31・・・は出力側端面7bまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや出力側端面7b寄りとなる位置まで穿たれている。
入力側タイミングスプール孔32・32・・・は入力側タイミングスプール9・9・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側タイミングスプール孔32・32・・・は出力側端面7bまで貫通している。
【0025】
図2および図3に示すように、入力側プランジャ孔31・31・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側プランジャ孔31・31間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。
また、入力側タイミングスプール孔32・32・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側タイミングスプール孔32・32間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。さらに、入力側タイミングスプール孔32・32・・・は、入力側プランジャ孔31・31・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつ入力側プランジャ孔31と隣接する後述する出力側プランジャ孔41との距離は等距離となるように配置されている。つまり、貫通孔7cの中心を通り、かつ入力側プランジャ孔31とその隣りの後述する出力側プランジャ孔41の間を線対称とする線分上に入力側タイミングスプール孔32の中心が配置されている。
【0026】
図3乃至図5に示すように、入力側プランジャ孔31とこれに最も近くに隣接する入力側タイミングスプール孔32とを一組として、シリンダブロック7には7組が形成され、各組の入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32とは連通孔33によって互いに連通される。
このとき、連通孔33・33・・・は、シリンダブロック7における入力軸2の軸線方向略中央となる位置に穿設されるものであって、入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32の軸心間を最短で連通するものである。
【0027】
図3乃至図5に示すように、シリンダブロック7には、計七箇所の出力側プランジャ孔41・41・・・と計七箇所の出力側タイミングスプール孔42・42・・・とがシリンダブロック7の出力側端面7bから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。
出力側プランジャ孔41・41・・・は出力側プランジャ10・10・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側プランジャ孔41・41・・・は入力側端面7aまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや入力側端面7a寄りとなる位置まで穿たれている。
出力側タイミングスプール孔42・42・・・は出力側タイミングスプール11・11・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側タイミングスプール孔42・42・・・は入力側端面7aまで貫通している。
【0028】
図3に示すように、出力側プランジャ孔41・41・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側プランジャ孔41・41間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。
また、出力側タイミングスプール孔42・42・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側タイミングスプール孔42・42間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。さらに、出力側タイミングスプール孔42・42・・・は、出力側プランジャ孔41・41・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつ出力側プランジャ孔41と隣接する前記入力側プランジャ孔31のいずれからも等距離となるように配置されている。つまり、貫通孔7cの中心を通り、かつ出力側プランジャ孔41と入力側プランジャ孔31の間を線対称とする線分上に出力側タイミングスプール孔42の中心が配置されている。
【0029】
図3乃至図5に示すように、出力側プランジャ孔41とこれに最も近くに配設される出力側タイミングスプール孔42とを一組として、シリンダブロック7には七組が形成され、各組の出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42とは連通孔43によって互いに連通される。
このとき、連通孔43・43・・・は、シリンダブロック7における入力軸2軸線方向略中央となる位置に穿設されるものであって、出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42の軸心間を最短で連通するものである。
【0030】
図3乃至図5に示すように、入力側プランジャ孔31・31・・・と出力側プランジャ孔41・41・・・とは、入力軸2の軸線方向から見て等間隔で交互に隣接しており、即ち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→・・・の順に配列される。
同様に、入力側タイミングスプール孔32・32・・・と出力側タイミングスプール孔42・42・・・とも、入力軸2の軸線方向から見て等間隔で交互に隣接しており、即ち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側タイミングスプール孔32→出力側タイミングスプール孔42→入力側タイミングスプール孔32→出力側タイミングスプール孔42→・・・の順に配列される。
本実施例においてはシリンダブロック7に収容される入力側プランジャ8・入力側タイミングスプール9・出力側プランジャ10・出力側タイミングスプール11の個数をそれぞれ七個としているが、このように限定するものではなく、複数個であれば同様の効果を奏する。
【0031】
図4および図5に示すように、シリンダブロック7の貫通孔7cの内周面には、第1の内周溝および第2の内周溝からなる計二箇所の内周溝が形成されている。該内周溝は内周面の周方向にリング状に形成されており、いずれの内周溝も入力側タイミングスプール孔32・32・・・および出力側タイミングスプール孔42・42・・・と連通している。
尚、以後の説明では、入力側端面7aに近い第1の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を入力側油室35(高圧油路)とし、出力側端面7bに近い第2の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を出力側油室45(低圧油路)とする。
【0032】
[入力側プランジャ8および出力側プランジャ10]
次に、図1・図3・図4を用いて本発明の油圧式無段変速装置における第1のプランジャの、実施の一形態である入力側プランジャ8および第2のプランジャの実施の一形態である出力側プランジャ10の詳細説明を行う。
尚、本実施例においては入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とは部品共用化のために同一形状としているが、このように限定するものではなく、ポンプ容量およびモータ容量等に応じて入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とを異なる形状や個数で構成しても良い。
【0033】
図1に示すように、入力側プランジャ8は、入力軸2の回転駆動力をシリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力に変換するものである。また、出力側プランジャ10は、シリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力を出力側斜板12の回転駆動力に変換するものである。
また、図1・図3・図4に示すように、入力側プランジャ8・8・・・は入力側プランジャ孔31・31・・・に収容され、出力側プランジャ10・10・・・は出力側プランジャ孔41・41・・・に収容される。
【0034】
図1に示すように、前記出力側プランジャ10は主にプランジャ部10a・ボール10b・当接盤10c等から構成される。
プランジャ部10aは略円筒形状の部材であり、シリンダブロック7の出力側プランジャ孔41に摺接しつつ往復動可能である。ボール10bは略球状の部材であり、略円盤形状の部材である当接盤10cと一体的に固設される。当接盤10cはボール10bによりプランジャ部10aの突出端(出力側端面7bより出力側斜板12に向かって突出している側の端部)に揺動可能に連結されるとともに、プランジャ部10aの突出端はボール10bにより閉塞される。より厳密には、ボール10bおよび当接盤10cには潤滑用油路が穿設されており、出力側プランジャ孔41内の作動油は少量ずつ該潤滑用油路から当接盤10cと出力側斜板12との当接面に漏出し、該当接面を潤滑している。
【0035】
プランジャ部10aの内部にはバネ押さえ29およびバネ30が収容される。バネ30はその一端がバネ押さえ29と当接し、他端がプランジャ部10aの開口端から突出して出力側プランジャ孔41の底壁面に当接している。従って、出力側プランジャ10はバネ30により、シリンダブロック7の出力側端面7bから突出する方向(即ち、出力側斜板12の斜板面12aに当接盤10cが当接する方向)に付勢されている。
【0036】
一方、前記入力側プランジャ8も、主にプランジャ部・ボール・当接盤等から構成され、前記出力側プランジャ10と同様の構成としている。そして、プランジャ部の内部にはバネ押さえおよびバネが収容され、バネはその一端がバネ押さえと当接し、他端がプランジャ部の開口端から突出して入力側プランジャ孔31の壁面に当接している。従って、入力側プランジャ8はバネにより、シリンダブロック7の入力側端面7aから突出する方向(即ち、入力側斜板6の斜板面6aに当接盤が当接する方向)に付勢されている。
【0037】
[入力側タイミングスプール9および出力側タイミングスプール11]
以下では、図1および図6乃至図8を用いて、本発明の油圧式無段変速装置における第1のスプールの、実施の一形態である入力側タイミングスプール9および第2のスプールの、実施の一形態である出力側タイミングスプール11の詳細説明を行う。
尚、図6に示すように、本実施例においては入力側タイミングスプール9と出力側タイミングスプール11とは部品共用化のために同一形状としているが、これに限定されず、入力側タイミングスプール9と出力側タイミングスプール11とが異なる形状でも良い。
【0038】
図6乃至図8に示すように、入力側タイミングスプール9は、入力側プランジャ8を収容する入力側プランジャ孔31に出入する作動油の流路を切り替えるものである。入力側タイミングスプール9は外径の異なる略円柱形状の部材を有し、主に拡径部9a、拡径部9b・9b、弁軸部9c・9c、係合部9dから構成される。
拡径部9aおよび拡径部9b・9bは略円柱形状の部位であり、その外径はシリンダブロック7に形成された入力側タイミングスプール孔32の内径と略同じとなっている。従って、拡径部9aおよび拡径部9b・9bは入力側タイミングスプール孔32に対して気密的に摺接しつつ往復動することが可能である。尚、気密性を高めるために拡径部9b・9bにはラビリンスが外周に適宜形成されている。
拡径部9aは入力側タイミングスプール9の長手方向(往復動する方向)において中間部(または略中央部)に配置される。また、拡径部9b・9bは入力側タイミングスプール9の長手方向において両端に位置する。
弁軸部9cは、拡径部9aおよび拡径部9b・9bよりも外径が小さい略円柱形状の部位であり、拡径部9aと拡径部9b・9bとの間に位置する。
係合部9dは一方の拡径部9bから入力側タイミングスプール9の長手方向に向けて突設される。係合部9dと拡径部9bとの接続部はくびれた形状であり、図示しない入力側スプールカムに係合する。
【0039】
図7および図8に示すように、入力側タイミングスプール9は、係合部9dがシリンダブロック7の入力側端面7aから突出する向きとなるように、入力側タイミングスプール孔32に摺動可能に嵌装される。
係合部9dに連なる拡径部9bは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で往復動しても、常に第1の内周溝(高圧油路)により形成される入力側油室35と入力側タイミングスプール孔32とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。また、係合部9dから遠い方の拡径部9bは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で往復動しても、常に第2の内周溝により形成される出力側油室45と入力側タイミングスプール孔32とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。
【0040】
さらに、拡径部9aは、入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32とを連通する連絡油路(連通孔33)と、入力側タイミングスプール孔32との合流部36と対応する位置に配置される。このとき、合流部36の内径は拡径部9aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、入力側タイミングスプール9の長手方向(往復動する方向)における合流部36の長さと拡径部9aの長さとが略同じに構成される。
従って、図8に示すように、拡径部9aは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で摺動することにより、(1)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが遮断されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と入力側プランジャ孔31とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが連通されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
【0041】
図6乃至図8に示すように、出力側タイミングスプール11は、前記入力側タイミングスプール9と同様の形状に形成されており、出力側プランジャ10を収容する出力側プランジャ孔41に出入する作動油の流路を切り替えるものである。
図7に示すように、出力側タイミングスプール11は係合部11dがシリンダブロック7の出力側端面7bから突出する向きとなるように、出力側タイミングスプール孔42に摺動可能に嵌装される。
係合部11dに連なる拡径部11bは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で往復動しても、常に第2の内周溝(低圧油路)により形成される出力側油室45と出力側タイミングスプール孔42とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。また、係合部11dから遠い方の拡径部11bは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で往復動しても、常に第1の内周溝により形成される入力側油室35と出力側タイミングスプール孔42とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。
【0042】
さらに、拡径部11aは、出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42とを連通する連絡油路(連通孔43)と、出力側タイミングスプール孔42との合流部46と対応する位置に配置される。このとき、合流部46の内径は拡径部11aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、出力側タイミングスプール11の長手方向(往復動する方向)における合流部46の長さと拡径部11aの長さとが略同じに構成される。
従って、図8に示すように、拡径部11aは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で摺動することにより、(1)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが遮断されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と出力側プランジャ孔41とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが連通されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
【0043】
[出力側斜板12]
以下では図1を用いて本実施例における第2の斜板である出力側斜板12の詳細説明を行う。
出力側斜板12は、出力側プランジャ10を往復動させる力(即ち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の圧力)を出力軸等の回転駆動力に変換するものである。
図1に示すように、出力側斜板12は入力軸2(厳密には入力軸2に外嵌されたスペーサ56)が貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材であり、その前部には斜板面12aが設けられている。斜板面12aは平面であり、斜板面12aには出力側プランジャ10の突出端(当接盤10c)が当接する。斜板面12aは入力軸2の軸線に対して所定の傾斜角(斜板面12aと入力軸2の軸線とが成す角度)を成している。
【0044】
図1に示すように、出力側斜板12の後端は出力ケース48と固定され、出力側斜板12と出力ケース48とが一体的に回転するようにしている。尚、出力側斜板12の貫通孔後端には出力側円錐コロ軸受57の外輪が嵌設され、出力側斜板12の貫通孔とスペーサ56との間には出力側針状コロ軸受58が介装されるので、出力側斜板12は入力軸2と相対回転可能である。
【0045】
[チェックリリーフ弁38a・38b]
以下では図1および図9を用いて本実施例におけるチェックリリーフ弁38a・38bの詳細説明を行う。
図1および図9に示すように、チェックリリーフ弁38a・38bは、前記各プランジャ8・10等を作動させる作動油の補給経路上に設けて、作動油の逆流を防止するチェック弁の機能と、作動油閉回路内の圧力上昇を規定値以下とするために作動油閉回路内の圧力に応じて作動油を放出させるリリーフ弁の機能とを併せ持つように一体的に構成したものである。
本実施例では、入力側油室35と出力側油室45にそれぞれ連通するように、二個のチェックリリーフ弁38a・38bをそれぞれに対応して設けて、入力軸2の拡径部において、互いのチェックリリーフ弁38a・38bが直角方向で平行となる向きで、かつ、入力軸2の軸線に直交するようにして設けるようにしている。
これにより、油圧式無段変速装置1の小型化を可能とするとともに、入力軸2の軸線上の油路2bと連通して作動油閉回路の簡略化を可能としている。
以上が、本発明の一実施例に係る、油圧式無段変速装置1の全体構成についての説明である。
【0046】
[リリーフ弁70]
次に、本発明における入力側斜板6の冷却構造について、図1、および、図10乃至図14を用いて説明する。
尚、説明の便宜上、図1、および、図10乃至図14中に示す矢印Aの方向を前方とする。
リリーフ弁70は係止部材40と、バネ部材44と、ピストン部材47とにより構成されており、これら部材40・44・47が同軸上に連結され、ケース体となる前記入力側ハウジング4に穿孔される貫通孔54に納められている。
【0047】
係止部材40は前記バネ部材44の一端側を保持する部材であり、円盤形状からなる底部40aの一方の面において、該底部40aに比べて断面積の小さな円柱部40bを同軸上に延出する、二段の段付き形状から形成される。
【0048】
底部40aの外周近傍には円柱部40bを避けて、軸心に平行な複数の孔59・59・・・が放射状に配置されている。また、円柱部40bの断面部の直径寸法はバネ部材44の内径寸法に比べて僅かに小さな値に形成されており、該円柱部40bを該バネ部材44の内径部に同軸上に挿入することによって、該バネ部材44は、係止部材40に保持される。
【0049】
ピストン部材47はバネ部材44を介して、係止部材40と対峙して設けられ、後述の通り、入力側斜板6に噴射されるリリーフ油の流量を制御するためのものである。
ピストン部材47は円盤形状からなる蓋部47aの一方の面において、該蓋部47aに比べて断面積の小さな円柱部47bを同軸上に延出する、二段の段付き形状から形成されており、また、該蓋部47aの他方の面において、断面視略「十字」形状を有したガイド部47cが同軸上に延出して設けられている。
【0050】
円柱部47bの断面部の直径寸法は前記係止部材40の円柱部40bと同様に、バネ部材44の内径寸法に比べて僅かに小さな値に形成されており、該円柱部47bを該バネ部材44の内径部に同軸上に挿入することによって、ピストン部材47は該バネ部材44に保持される。
【0051】
ガイド部47cは断面視にて、円柱部材の四隅が湾曲に抉られた略「十字」形状に形成されており、その先端部は側面視にて緩やかなテーパ形状を有し、前記入力側ハウジング4の貫通孔54への挿入を容易にしている。
【0052】
ここで図1、図10、および、図12に示すように、前記入力側ハウジング4の貫通孔54は、入力側(図12に示す左側)から出力側(図12に示す右側)へ向かって貫通孔54a、貫通孔54b、貫通孔54cと順に内径寸法を拡大しながら形成されている。
貫通孔54bの軸方向への長さは前記ガイド部47cの延出方向への長さに比べて十分長く形成されており、また、その内径寸法は前記ガイド部47cの外周直径に比べて僅かに大きな値となっている。
貫通孔54cの軸方向への長さは、係止部材40の底部40aの厚み寸法(図12に示すX寸法)と、バネ部材44を最大限に縮めた時の全長(図12に示すY寸法)と、ピストン部材47の蓋部47aの厚み寸法(図12に示すZ寸法)と、を直列に並べた寸法(図12に示すA寸法)に比べて十分長く、かつ、該バネ部材44が完全に自由長、すなわち、外力を全く受けない場合の全長まで伸びきることがないような長さとなっている。
また、貫通孔54cの内径寸法は、前記係止部材40の底部40aの外周直径に比べて同程度な値となっている。
【0053】
このような形状からなる貫通孔54の内部において、リリーフ弁70は入力軸2に対して並行に、かつ、ガイド部47cの先端部を入力側(図12に示す左側)に向けて、前記入力側ハウジング4の貫通孔54に配設されている。
すなわち、係止部材40は底部40aの裏面が入力側ハウジング4の出力側の面(図12に示す右側)と同一平面内になるようにして、貫通孔54cに収納されており、ピストン部材47はバネ部材44により入力側(図12に示す左側)に向かって常に付勢され、貫通孔54bに摺動自在に配設されている。
【0054】
なお、上述のとおりピストン部材47はバネ部材44により常に付勢されているが、該ピストン部材47の蓋部47aの外径寸法は貫通孔54bに比べて大きな寸法となっているため、該蓋部47aにおいて、ガイド部47cが設けられる側の面が貫通孔54cの底面と当接し、該ピストン部材47は貫通孔54b内を、一定の距離以上、入力側(図12に示す左側)に入り込まないようになっている。
【0055】
一方、斜板保持部材5においては、前記貫通孔54と同軸上に放出孔60が穿孔されており、入力側斜板6を斜板保持部材5に組付けた際には、該放出孔60の出力側(図12に示す右側)出口部付近の延長線上に、該斜板保持部材5の斜板面5aが配置されるようになっている。
また、入力側ハウジング4に設けられる前記貫通孔54の入口部(図12に示す左側)は、図13、および、図14に示す用に、チャージポンプ26と連通されている。
【0056】
このような油圧系統によりリリーフ弁70は配置され、入力側斜板6の冷却構造が構築されている。
すなわち、図12において、通常はバネ部材44の付勢力により、ピストン部材47は貫通孔54cの入力側(図12に示す左側)端部に押し当てられ、該貫通孔54cと貫通孔54bとは、該ピストン部材47の蓋部47aを介して完全に仕切られた状態にある。
【0057】
ここで、チャージポンプ26から吐出される作動油が貫通孔54b内に充填され、該貫通孔54b内の圧力が前記バネ部材44により設定された付勢力に打ち勝つと、ピストン部材47は徐々に出力側(図12に示す右側)へと押しやられ、前記作動油は貫通孔54c内へと勢い付けて流れ込む。そして、前記貫通孔54c内へと流れ込んだ作動油は、その後、係止部材40の底部40aに設けられる断面積の小さな複数の孔59・59・・・を介して、前記斜板保持部材5に穿孔される放出孔60に貫流され、前記入力側斜板6へと放出される。
【0058】
このような機構からなる入力側斜板6の冷却構造を、油圧式無段変速装置1に設けることにより、可動斜板の冷却能力を確保しつつ、同時に、油圧配管長を削減することができるのである。
すなわち、油圧サーボ機構3とチャージポンプ26のシリンダブロック7の間に入力側斜板6が配置され、該油圧サーボ機構3のリリーフ弁70から放出される作動油を、前記入力側斜板6に向けて放出することにより、外部からの振動等により作動油の放出される向きが変えられることもなく、確実に前記入力側斜板6に作動油を当てることができる。
また、前記油圧サーボ機構3のケース体、すなわち、入力側ハウジング4と斜板保持部材5において、同軸上に連結される貫通孔54、および、放出孔60をそれぞれ設けることにより、外部に配管経路を別途設けることもなく、冷却用作動油の油路構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置の全体的な構成を示した側面一部断面図。
【図2】本発明の一実施例に係るシリンダブロックを示す斜視図。
【図3】同じくシリンダブロックを示す背面図。
【図4】同じく図3におけるA−A断面図およびB−B断面図。
【図5】同じくA−A断面を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施例に係るタイミングスプールを示す平面図。
【図7】同じくシリンダブロック挿入時のタイミングスプールを示す側面一部断面図。
【図8】本発明の一実施例に係るタイミングスプールおよびプランジャの一連の動作を示す模式図。
【図9】本発明の一実施例に係るチェックリリーフ弁の作動油閉回路を示す油圧系統図。
【図10】本発明の一実施例に係る入力斜板近傍を示す斜視図。
【図11】同じく斜視図。
【図12】同じくリリーフバルブを示す側面図。
【図13】本発明の一実施例に係る油圧サーボ機構の油圧回路図。
【図14】同じく油圧系統図。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧式無段変速装置
2 入力軸
3 油圧サーボ機構
4 入力側ハウジング
5 斜板保持部材
5a 保持部
6 入力側斜板
6a 斜板面
6b 保持部
6c 係止部
7 シリンダブロック
12 出力側斜板
16 係止部材
22 入力側針状コロ軸受
26 チャージポンプ
28 斜板用メタル軸受
37 シャフト
70 リリーフ弁
40 係止部材
44 バネ部材
47 ピストン部材
54 貫通孔
60 放出孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械や車両等に用いられ、各種の産業分野で広く利用可能な油圧式無段変速装置における斜板の冷却構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1および第2の回転軸と、軸線方向に往復動する第1および第2のプランジャと、同じく軸線方向に往復動する第1および第2のスプールと、該第1および第2のプランジャ、第1および第2のスプールを収容して第1の回転軸と一体的に回転するシリンダブロックと、該第1のプランジャと当接しつつ軸線に対する傾斜角を変更可能な可動斜板と、該第2のプランジャと当接しつつ軸線に対して所定の傾斜角を成しながら第2の回転軸と一体的に回転する固定斜板と、を具備する油圧式無段変速装置に関する技術が公知になっている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−083497号公報
【特許文献2】特開2005−083498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」、および、「特許文献2」に示される油圧式無段変速装置では、可動斜板の傾斜角を変更するための駆動調整機構として油圧サーボ機構が用いられており、前記第一のプランジャが前記可動斜板と当接しつつ、前記第一の回転軸周りを高速で回転するため、該当接部では摩擦による発熱が起こり、冷却が必要であった。
そのため従来は、作動用油圧配管の一部を分岐させて前記当接部の近傍まで油圧配管を延長し、該当接部に向かって作動油を放出させることで、当接部を冷却していた。
しかし、この方式では冷却用の油圧配管が別途必要となる結果、配管長さも長くなり、コスト増加に繋がっていた。
そこで本発明では、このような現状を鑑み、可動斜板の冷却能力を確保しつつ、油圧配管長を削減することができる、油圧式無段変速装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、油圧ポンプと、油圧モータと、油圧サーボ機構と、可動斜板を有し、前記油圧ポンプの入力軸と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置であって、前記油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出するものである。
【0006】
請求項2においては、前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0008】
請求項1においては、油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出することにより、容易かつ効果的に可動斜板の冷却を行うことができる。
【0009】
請求項2においては、前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したことにより、冷却用作動油の油路構成を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置の全体的な構成を示した側面一部断面図である。
図2は本発明の一実施例に係るシリンダブロックを示す斜視図である。
図3は同じくシリンダブロックを示す背面図である。
図4は同じく図3におけるA−A断面図およびB−B断面図である。
図5は同じくA−A断面を示す斜視図である。
図6は本発明の一実施例に係るタイミングスプールを示す平面図である。
図7は同じくシリンダブロック挿入時のタイミングスプールを示す側面一部断面図である。
図8は本発明の一実施例に係るタイミングスプールおよびプランジャの一連の動作を示す模式図である。
図9は本発明の一実施例に係るチェックリリーフ弁の作動油閉回路を示す油圧系統図である。
図10は本発明の一実施例に係る入力斜板近傍を示す斜視図である。
図11は同じく斜視図である。
図12は同じくリリーフバルブを示す側面図である。
図13は本発明の一実施例に係る油圧サーボ機構の油圧回路図である。
図14は同じく油圧系統図である。
【0011】
[油圧式無段変速装置1の全体構成]
まず、本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置1の全体構成について説明をする。
尚、説明の便宜上、図1、および、図4中に示す矢印Aの方向を前方とする。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置1(HST)は、可変容量型の油圧ポンプと固定容量型の油圧モータとからなり、主に、入力軸2と、前記入力軸2の軸線方向に往復動する入力側プランジャ8・8・・・と、出力側プランジャ10・10・・・と、同じく軸線方向に往復動する入力側タイミングスプール9・9・・・と、出力側タイミングスプール11・11・・・と、前記各プランジャ8・10および各タイミングスプール9・11を収容して入力軸2と一体的に回転するシリンダブロック7と、軸線に対する傾斜角が変更可能であって前記入力側プランジャ8・8・・・と当接する入力側斜板6と、軸線に対して所定の傾斜角を成して前記出力側プランジャ10・10・・・と当接しつつ回転する出力側斜板12と、前記入力側斜板6の駆動機構である油圧サーボ機構3等から構成されている。
【0012】
詳しくは、油圧式無段変速装置1(HST)は、油圧ポンプが斜板保持部材5・入力側斜板6・シリンダブロック7・入力側プランジャ8・入力側タイミングスプール9等より構成され、油圧モータが該シリンダブロック7・出力側プランジャ10・出力側タイミングスプール11・出力側斜板12等より構成されている。
このように、一つのシリンダブロック7に油圧ポンプと油圧モータの各プランジャ8・10を収納する構成として、コンパクト化を図っている。
【0013】
図1に示すように、入力軸2は、エンジン等の駆動源からの駆動力を油圧式無段変速装置1に伝達するための軸であり、軸心部において油圧式無段変速装置1各部に作動油を供給するための油路2bが軸線方向に穿設されて、軸線方向の略中央部にはチェックリリーフ弁38a・38bを設けるための拡径部を有している。入力軸2は、入力側円錐コロ軸受21および入力側針状コロ軸受22を介して入力側ハウジング4に回転自在に軸支される。該入力側円錐コロ軸受21の内輪は、入力軸2に設けられた段差部と入力軸2の先端部2a側から螺装される入力側軸受締付ナット23により、入力軸2に対して相対回転不能に固定される。
該入力軸2にはシリンダブロック7がスプラインを介して外嵌されている。
【0014】
図1に示すように、入力側ハウジング4は、該入力側ハウジング4の基本構成部分である軸受ハウジング部4aと、該軸受ハウジング部4aの上方に形成される油圧サーボ機構3の出力部3aと、前記軸受ハウジング部4aの前進方向に向かって左方に形成される油圧サーボ機構3の調整部3b等からなる構成としている。
軸受ハウジング部4aには、前記入力軸2を貫通させるための貫通孔が穿設され、該貫通孔の内周面前部には入力側円錐コロ軸受21の外輪が嵌合し、内周面後部には入力側針状コロ軸受22が嵌合する。
【0015】
図1および図14に示すように、油圧サーボ機構3の出力部3aは、前記軸受ハウジング部4aの上方に前後方向に形成された出力部シリンダ4bと、該出力部シリンダ4bにおいて前後方向に往復摺動可能に内挿されるパワーピストン15と、該パワーピストン15の後端部に固設される掛止部材16等から構成されている。
パワーピストン15の前部には拡径部15aが形成され、該拡径部15aの前端面と出力部シリンダ4bによって前側油室17を構成するとともに、該拡径部15aの後端面と出力部シリンダ4bによって後側油室18を構成している。そして、各油室17・18内の油圧を変化させることにより、パワーピストン15を前後方向に往復摺動可能としている。
【0016】
前記前側油室17の前方側の壁部には調整ボルト19が螺設されており、該調整ボルト19の後端部が前記拡径部15aの前端面と当接するように構成している。
このように構成することにより、調整ボルト19を出力部シリンダ4b内部へ臨ませる長さを調整して、パワーピストン15の前方側への摺動位置を制限することができるようにしている。また、調整ボルト19をロックナット49で固定可能な構成として、調整ボルト19を出力部シリンダ4b内部へ臨ませる長さを保持できるようにしている。
掛止部材16は、後述する入力側斜板6の掛止部6cを掛止する断面視略コの字型の部材であり、コの字の開放側を下方に向ける態様で前記パワーピストン15の後端部に固設されている。
【0017】
図14に示すように、油圧サーボ機構3の調整部3bは、前記軸受ハウジング部4aの左方側部に上下方向に形成された調整部シリンダ4cと、該調整部シリンダ4cに内挿されて上下方向に往復摺動可能に構成されるサーボスプール13と、該サーボスプール13の下方において調整部シリンダ4cに内挿されるフィードバックスプール14と、サーボスプール13とフィードバックスプール14との間に介装して連結するバネ部材20等から構成されている。
【0018】
サーボスプール13は、複数の拡径部(ランド部)および縮径部を有しており、該サーボスプール13の軸芯上には油路13mが穿設されている。該油路13mは軸受ハウジング部4a内部に穿設した油路を介して作動油タンク27に連通されており、作動油が該油路13mや軸受ハウジング部4aに穿孔された接続口4qを介して作動油タンク27にドレンされる構成としている。
そして、調整部シリンダ4cとサーボスプール13の上端面13kにより頂部油室39が形成されて、該頂部油室39と比例調整弁25とが油路4gにより連通されており、該比例調整弁25を調整することによって該頂部油室39内の油圧を調整可能な構成としている。
また、油路4hによって前記後側油室18が調整部シリンダ4cに連通されており、油路4iによって前記前側油室17が調整部シリンダ4cに連通されており、油路4jによってチャージポンプ26が調整部シリンダ4cに連通されている。
以上の構成により、サーボスプール13の上下位置に応じて、サーポスプール13の縮径部を介し、前記前側油室17や前記後側油室18やチャージポンプ26が連通される。
【0019】
図14に示すように、フィードバックスプール14には、リンクピン34が遊嵌されており、該リンクピン34の上下変位に応じてフィードバックスプール14も上下に変位する構成としている。
該リンクピン34は、調整部シリンダ4cの左側面に形成された長孔状の窓部から調整部シリンダ4cの外側に臨ませて設けられている。そして、リンクピン34を軸受ハウジング部4aに枢支されたフィードバックリンク24に枢支して、該リンクピン34が入力側斜板6の角度と連係して上下に変位するように構成している。
【0020】
図1に示すように、斜板保持部材5は、前記軸受ハウジング部4aの後方に隣接して配設されており、入力側斜板6の斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更可能に、入力側斜板6を支持するための部材であり、略中央に孔が穿設されている。そして、斜板保持部材5は軸受ハウジング部4aに対して、ボルト締結により固定される。
斜板保持部材5の後端部(保持部5a)は略半円状に窪んだ形状を有している。該半円状に窪んだ部位には斜板用メタル軸受28がスプリングピン等により固設されている。
【0021】
図1および図14に示すように、入力側斜板6は、入力軸2の回転駆動力を入力側プランジャ8が往復動する力(即ち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の油圧)に変換するとともに、斜板面6aの傾斜角を変更することにより入力側プランジャ8の往復動時のストローク(即ち、入力側プランジャ8が往復動時に圧送する作動油の量)を変更するものである。入力側斜板6は略中央に入力軸2が貫通する孔が穿設された部材であり、その一方に平板面である斜板面6aが形成される。
斜板面6aには入力側プランジャ8の突出端(当接盤8c)が当接(または係合)する。一方、他方の板面には保持部6bが突設される。保持部6bの形状は、前記斜板保持部材5の保持部5aの半円状に窪んだ部位と対応しており、入力側斜板6は保持部6bにて斜板保持部材5の保持部5a(より厳密には側面視において半円状に窪んだ部位に設けられた斜板用メタル軸受28)と当接しつつ回動することが可能であり、斜板面6aの傾斜角(斜板面6aと入力軸2の軸線とが成す角度)を変更することが可能である。
尚、入力側斜板6の略中央に穿設された孔の直径は、入力側斜板6が回動しても入力軸2が干渉することが無い大きさとなっている。
【0022】
[入力斜板6の角度調整機構]
次に、前記油圧サーボ機構3による入力側斜板6の角度調整機構について説明する。
図1および図14に示すように、前記比例調整弁25を制御することにより、該比例調整弁25から吐出される油圧を変化させて、前記サーボスプール13を上下に摺動させる。そして、該サーボスプール13の位置に応じて、前側油室17にチャージポンプ26からの圧油が送油され後側油室18が作動油タンク27と連通する第1態様と(A位置)、前側油室17と作動油タンク27が連通し後側油室18にチャージポンプ26からの圧油が送油される第2態様と(B位置)、前側油室17および後側油室18に通じる油路がブロックされる第3態様(中立位置)とに切り換えることができるのである。
本実施例においては、パワーピストン15が後方に変位して、入力側斜板6が図14における時計回りに回動するときに出力側斜板12の回転出力が増加し、反対に、パワーピストン15が前方に変位して入力側斜板6が反時計回りに回動するときに出力側斜板12の回転出力が減少するように構成している。
【0023】
[シリンダブロック7]
次に、図1・図2・図5を用いて本発明の油圧式無段変速装置の一実施例に係るシリンダブロック7について詳細説明する。
図1・図2に示すように、シリンダブロック7は略円柱形状の部材であり、シリンダブロック7の略中央部には入力側端面7aから出力側端面7bに入力軸2を貫通する貫通孔7cが穿設され、該貫通孔7cの内周面の後端部(出力側端面7b側の端部)にはスプライン加工が施されている。一方、シリンダブロック7に入力軸2を貫装したときに前記シリンダブロック7のスプライン加工された部位と対応する入力軸2の外周面にもスプライン加工が施されており、シリンダブロック7は入力軸2とスプライン嵌合して相対回転不能かつ一体的に回転する。
入力側端面7aは入力側斜板6と対向する面であり、出力側端面7bは出力側斜板12と対向する面である。入力側端面7aおよび出力側端面7bは、いずれも入力軸2の軸線と直交している。
【0024】
図3乃至図5に示すように、シリンダブロック7には、計七箇所の入力側プランジャ孔31・31・・・と、計七箇所の入力側タイミングスプール孔32・32・・・とが、シリンダブロック7の入力側端面7aから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。
入力側プランジャ孔31・31・・・は入力側プランジャ8・8・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側プランジャ孔31・31・・・は出力側端面7bまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや出力側端面7b寄りとなる位置まで穿たれている。
入力側タイミングスプール孔32・32・・・は入力側タイミングスプール9・9・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、入力側タイミングスプール孔32・32・・・は出力側端面7bまで貫通している。
【0025】
図2および図3に示すように、入力側プランジャ孔31・31・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側プランジャ孔31・31間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。
また、入力側タイミングスプール孔32・32・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する入力側タイミングスプール孔32・32間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。さらに、入力側タイミングスプール孔32・32・・・は、入力側プランジャ孔31・31・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつ入力側プランジャ孔31と隣接する後述する出力側プランジャ孔41との距離は等距離となるように配置されている。つまり、貫通孔7cの中心を通り、かつ入力側プランジャ孔31とその隣りの後述する出力側プランジャ孔41の間を線対称とする線分上に入力側タイミングスプール孔32の中心が配置されている。
【0026】
図3乃至図5に示すように、入力側プランジャ孔31とこれに最も近くに隣接する入力側タイミングスプール孔32とを一組として、シリンダブロック7には7組が形成され、各組の入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32とは連通孔33によって互いに連通される。
このとき、連通孔33・33・・・は、シリンダブロック7における入力軸2の軸線方向略中央となる位置に穿設されるものであって、入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32の軸心間を最短で連通するものである。
【0027】
図3乃至図5に示すように、シリンダブロック7には、計七箇所の出力側プランジャ孔41・41・・・と計七箇所の出力側タイミングスプール孔42・42・・・とがシリンダブロック7の出力側端面7bから入力軸2の軸線方向に向けて穿設されている。
出力側プランジャ孔41・41・・・は出力側プランジャ10・10・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側プランジャ孔41・41・・・は入力側端面7aまで貫通せず、入力側端面7aと出力側端面7bとの中間となる位置よりもやや入力側端面7a寄りとなる位置まで穿たれている。
出力側タイミングスプール孔42・42・・・は出力側タイミングスプール11・11・・・を収容するためにシリンダブロック7に穿設された孔であり、その長手方向は入力軸2の軸線と平行である。また、出力側タイミングスプール孔42・42・・・は入力側端面7aまで貫通している。
【0028】
図3に示すように、出力側プランジャ孔41・41・・・は、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側プランジャ孔41・41間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。
また、出力側タイミングスプール孔42・42・・・も、入力軸2の軸線方向から見て、入力軸2が貫装される貫通孔7cから等距離(同心円上)、かつ隣接する出力側タイミングスプール孔42・42間の距離が等距離(貫通孔7c軸心に対して等角度)となるように配置されている。さらに、出力側タイミングスプール孔42・42・・・は、出力側プランジャ孔41・41・・・よりも貫通孔7cからの距離が近く、かつ出力側プランジャ孔41と隣接する前記入力側プランジャ孔31のいずれからも等距離となるように配置されている。つまり、貫通孔7cの中心を通り、かつ出力側プランジャ孔41と入力側プランジャ孔31の間を線対称とする線分上に出力側タイミングスプール孔42の中心が配置されている。
【0029】
図3乃至図5に示すように、出力側プランジャ孔41とこれに最も近くに配設される出力側タイミングスプール孔42とを一組として、シリンダブロック7には七組が形成され、各組の出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42とは連通孔43によって互いに連通される。
このとき、連通孔43・43・・・は、シリンダブロック7における入力軸2軸線方向略中央となる位置に穿設されるものであって、出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42の軸心間を最短で連通するものである。
【0030】
図3乃至図5に示すように、入力側プランジャ孔31・31・・・と出力側プランジャ孔41・41・・・とは、入力軸2の軸線方向から見て等間隔で交互に隣接しており、即ち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→入力側プランジャ孔31→出力側プランジャ孔41→・・・の順に配列される。
同様に、入力側タイミングスプール孔32・32・・・と出力側タイミングスプール孔42・42・・・とも、入力軸2の軸線方向から見て等間隔で交互に隣接しており、即ち、貫通孔7cを中心とする同心円上において入力側タイミングスプール孔32→出力側タイミングスプール孔42→入力側タイミングスプール孔32→出力側タイミングスプール孔42→・・・の順に配列される。
本実施例においてはシリンダブロック7に収容される入力側プランジャ8・入力側タイミングスプール9・出力側プランジャ10・出力側タイミングスプール11の個数をそれぞれ七個としているが、このように限定するものではなく、複数個であれば同様の効果を奏する。
【0031】
図4および図5に示すように、シリンダブロック7の貫通孔7cの内周面には、第1の内周溝および第2の内周溝からなる計二箇所の内周溝が形成されている。該内周溝は内周面の周方向にリング状に形成されており、いずれの内周溝も入力側タイミングスプール孔32・32・・・および出力側タイミングスプール孔42・42・・・と連通している。
尚、以後の説明では、入力側端面7aに近い第1の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を入力側油室35(高圧油路)とし、出力側端面7bに近い第2の内周溝と入力軸2の外周面とで囲まれた空間を出力側油室45(低圧油路)とする。
【0032】
[入力側プランジャ8および出力側プランジャ10]
次に、図1・図3・図4を用いて本発明の油圧式無段変速装置における第1のプランジャの、実施の一形態である入力側プランジャ8および第2のプランジャの実施の一形態である出力側プランジャ10の詳細説明を行う。
尚、本実施例においては入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とは部品共用化のために同一形状としているが、このように限定するものではなく、ポンプ容量およびモータ容量等に応じて入力側プランジャ8と出力側プランジャ10とを異なる形状や個数で構成しても良い。
【0033】
図1に示すように、入力側プランジャ8は、入力軸2の回転駆動力をシリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力に変換するものである。また、出力側プランジャ10は、シリンダブロック7に形成された油圧回路内の作動油の圧力を出力側斜板12の回転駆動力に変換するものである。
また、図1・図3・図4に示すように、入力側プランジャ8・8・・・は入力側プランジャ孔31・31・・・に収容され、出力側プランジャ10・10・・・は出力側プランジャ孔41・41・・・に収容される。
【0034】
図1に示すように、前記出力側プランジャ10は主にプランジャ部10a・ボール10b・当接盤10c等から構成される。
プランジャ部10aは略円筒形状の部材であり、シリンダブロック7の出力側プランジャ孔41に摺接しつつ往復動可能である。ボール10bは略球状の部材であり、略円盤形状の部材である当接盤10cと一体的に固設される。当接盤10cはボール10bによりプランジャ部10aの突出端(出力側端面7bより出力側斜板12に向かって突出している側の端部)に揺動可能に連結されるとともに、プランジャ部10aの突出端はボール10bにより閉塞される。より厳密には、ボール10bおよび当接盤10cには潤滑用油路が穿設されており、出力側プランジャ孔41内の作動油は少量ずつ該潤滑用油路から当接盤10cと出力側斜板12との当接面に漏出し、該当接面を潤滑している。
【0035】
プランジャ部10aの内部にはバネ押さえ29およびバネ30が収容される。バネ30はその一端がバネ押さえ29と当接し、他端がプランジャ部10aの開口端から突出して出力側プランジャ孔41の底壁面に当接している。従って、出力側プランジャ10はバネ30により、シリンダブロック7の出力側端面7bから突出する方向(即ち、出力側斜板12の斜板面12aに当接盤10cが当接する方向)に付勢されている。
【0036】
一方、前記入力側プランジャ8も、主にプランジャ部・ボール・当接盤等から構成され、前記出力側プランジャ10と同様の構成としている。そして、プランジャ部の内部にはバネ押さえおよびバネが収容され、バネはその一端がバネ押さえと当接し、他端がプランジャ部の開口端から突出して入力側プランジャ孔31の壁面に当接している。従って、入力側プランジャ8はバネにより、シリンダブロック7の入力側端面7aから突出する方向(即ち、入力側斜板6の斜板面6aに当接盤が当接する方向)に付勢されている。
【0037】
[入力側タイミングスプール9および出力側タイミングスプール11]
以下では、図1および図6乃至図8を用いて、本発明の油圧式無段変速装置における第1のスプールの、実施の一形態である入力側タイミングスプール9および第2のスプールの、実施の一形態である出力側タイミングスプール11の詳細説明を行う。
尚、図6に示すように、本実施例においては入力側タイミングスプール9と出力側タイミングスプール11とは部品共用化のために同一形状としているが、これに限定されず、入力側タイミングスプール9と出力側タイミングスプール11とが異なる形状でも良い。
【0038】
図6乃至図8に示すように、入力側タイミングスプール9は、入力側プランジャ8を収容する入力側プランジャ孔31に出入する作動油の流路を切り替えるものである。入力側タイミングスプール9は外径の異なる略円柱形状の部材を有し、主に拡径部9a、拡径部9b・9b、弁軸部9c・9c、係合部9dから構成される。
拡径部9aおよび拡径部9b・9bは略円柱形状の部位であり、その外径はシリンダブロック7に形成された入力側タイミングスプール孔32の内径と略同じとなっている。従って、拡径部9aおよび拡径部9b・9bは入力側タイミングスプール孔32に対して気密的に摺接しつつ往復動することが可能である。尚、気密性を高めるために拡径部9b・9bにはラビリンスが外周に適宜形成されている。
拡径部9aは入力側タイミングスプール9の長手方向(往復動する方向)において中間部(または略中央部)に配置される。また、拡径部9b・9bは入力側タイミングスプール9の長手方向において両端に位置する。
弁軸部9cは、拡径部9aおよび拡径部9b・9bよりも外径が小さい略円柱形状の部位であり、拡径部9aと拡径部9b・9bとの間に位置する。
係合部9dは一方の拡径部9bから入力側タイミングスプール9の長手方向に向けて突設される。係合部9dと拡径部9bとの接続部はくびれた形状であり、図示しない入力側スプールカムに係合する。
【0039】
図7および図8に示すように、入力側タイミングスプール9は、係合部9dがシリンダブロック7の入力側端面7aから突出する向きとなるように、入力側タイミングスプール孔32に摺動可能に嵌装される。
係合部9dに連なる拡径部9bは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で往復動しても、常に第1の内周溝(高圧油路)により形成される入力側油室35と入力側タイミングスプール孔32とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。また、係合部9dから遠い方の拡径部9bは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で往復動しても、常に第2の内周溝により形成される出力側油室45と入力側タイミングスプール孔32とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。
【0040】
さらに、拡径部9aは、入力側プランジャ孔31と入力側タイミングスプール孔32とを連通する連絡油路(連通孔33)と、入力側タイミングスプール孔32との合流部36と対応する位置に配置される。このとき、合流部36の内径は拡径部9aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、入力側タイミングスプール9の長手方向(往復動する方向)における合流部36の長さと拡径部9aの長さとが略同じに構成される。
従って、図8に示すように、拡径部9aは、入力側タイミングスプール9が入力側タイミングスプール孔32内で摺動することにより、(1)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが遮断されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と入力側プランジャ孔31とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と入力側プランジャ孔31とが連通されて出力側油室45と入力側プランジャ孔31とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
【0041】
図6乃至図8に示すように、出力側タイミングスプール11は、前記入力側タイミングスプール9と同様の形状に形成されており、出力側プランジャ10を収容する出力側プランジャ孔41に出入する作動油の流路を切り替えるものである。
図7に示すように、出力側タイミングスプール11は係合部11dがシリンダブロック7の出力側端面7bから突出する向きとなるように、出力側タイミングスプール孔42に摺動可能に嵌装される。
係合部11dに連なる拡径部11bは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で往復動しても、常に第2の内周溝(低圧油路)により形成される出力側油室45と出力側タイミングスプール孔42とが連通する連絡部よりも出力側端面7b側に位置する。また、係合部11dから遠い方の拡径部11bは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で往復動しても、常に第1の内周溝により形成される入力側油室35と出力側タイミングスプール孔42とが連通する連絡部よりも入力側端面7a側に位置する。
【0042】
さらに、拡径部11aは、出力側プランジャ孔41と出力側タイミングスプール孔42とを連通する連絡油路(連通孔43)と、出力側タイミングスプール孔42との合流部46と対応する位置に配置される。このとき、合流部46の内径は拡径部11aの外径よりも大きくなるように構成されており、かつ、出力側タイミングスプール11の長手方向(往復動する方向)における合流部46の長さと拡径部11aの長さとが略同じに構成される。
従って、図8に示すように、拡径部11aは、出力側タイミングスプール11が出力側タイミングスプール孔42内で摺動することにより、(1)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが遮断されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが連通される位置と、(2)入力側油室35と出力側油室45と出力側プランジャ孔41とがいずれも遮断される位置と、(3)入力側油室35と出力側プランジャ孔41とが連通されて出力側油室45と出力側プランジャ孔41とが遮断される位置、の計三つの位置をとることが可能である。
【0043】
[出力側斜板12]
以下では図1を用いて本実施例における第2の斜板である出力側斜板12の詳細説明を行う。
出力側斜板12は、出力側プランジャ10を往復動させる力(即ち、シリンダブロック7内に形成された油圧回路内の作動油の圧力)を出力軸等の回転駆動力に変換するものである。
図1に示すように、出力側斜板12は入力軸2(厳密には入力軸2に外嵌されたスペーサ56)が貫通する貫通孔が設けられた略円筒形状の部材であり、その前部には斜板面12aが設けられている。斜板面12aは平面であり、斜板面12aには出力側プランジャ10の突出端(当接盤10c)が当接する。斜板面12aは入力軸2の軸線に対して所定の傾斜角(斜板面12aと入力軸2の軸線とが成す角度)を成している。
【0044】
図1に示すように、出力側斜板12の後端は出力ケース48と固定され、出力側斜板12と出力ケース48とが一体的に回転するようにしている。尚、出力側斜板12の貫通孔後端には出力側円錐コロ軸受57の外輪が嵌設され、出力側斜板12の貫通孔とスペーサ56との間には出力側針状コロ軸受58が介装されるので、出力側斜板12は入力軸2と相対回転可能である。
【0045】
[チェックリリーフ弁38a・38b]
以下では図1および図9を用いて本実施例におけるチェックリリーフ弁38a・38bの詳細説明を行う。
図1および図9に示すように、チェックリリーフ弁38a・38bは、前記各プランジャ8・10等を作動させる作動油の補給経路上に設けて、作動油の逆流を防止するチェック弁の機能と、作動油閉回路内の圧力上昇を規定値以下とするために作動油閉回路内の圧力に応じて作動油を放出させるリリーフ弁の機能とを併せ持つように一体的に構成したものである。
本実施例では、入力側油室35と出力側油室45にそれぞれ連通するように、二個のチェックリリーフ弁38a・38bをそれぞれに対応して設けて、入力軸2の拡径部において、互いのチェックリリーフ弁38a・38bが直角方向で平行となる向きで、かつ、入力軸2の軸線に直交するようにして設けるようにしている。
これにより、油圧式無段変速装置1の小型化を可能とするとともに、入力軸2の軸線上の油路2bと連通して作動油閉回路の簡略化を可能としている。
以上が、本発明の一実施例に係る、油圧式無段変速装置1の全体構成についての説明である。
【0046】
[リリーフ弁70]
次に、本発明における入力側斜板6の冷却構造について、図1、および、図10乃至図14を用いて説明する。
尚、説明の便宜上、図1、および、図10乃至図14中に示す矢印Aの方向を前方とする。
リリーフ弁70は係止部材40と、バネ部材44と、ピストン部材47とにより構成されており、これら部材40・44・47が同軸上に連結され、ケース体となる前記入力側ハウジング4に穿孔される貫通孔54に納められている。
【0047】
係止部材40は前記バネ部材44の一端側を保持する部材であり、円盤形状からなる底部40aの一方の面において、該底部40aに比べて断面積の小さな円柱部40bを同軸上に延出する、二段の段付き形状から形成される。
【0048】
底部40aの外周近傍には円柱部40bを避けて、軸心に平行な複数の孔59・59・・・が放射状に配置されている。また、円柱部40bの断面部の直径寸法はバネ部材44の内径寸法に比べて僅かに小さな値に形成されており、該円柱部40bを該バネ部材44の内径部に同軸上に挿入することによって、該バネ部材44は、係止部材40に保持される。
【0049】
ピストン部材47はバネ部材44を介して、係止部材40と対峙して設けられ、後述の通り、入力側斜板6に噴射されるリリーフ油の流量を制御するためのものである。
ピストン部材47は円盤形状からなる蓋部47aの一方の面において、該蓋部47aに比べて断面積の小さな円柱部47bを同軸上に延出する、二段の段付き形状から形成されており、また、該蓋部47aの他方の面において、断面視略「十字」形状を有したガイド部47cが同軸上に延出して設けられている。
【0050】
円柱部47bの断面部の直径寸法は前記係止部材40の円柱部40bと同様に、バネ部材44の内径寸法に比べて僅かに小さな値に形成されており、該円柱部47bを該バネ部材44の内径部に同軸上に挿入することによって、ピストン部材47は該バネ部材44に保持される。
【0051】
ガイド部47cは断面視にて、円柱部材の四隅が湾曲に抉られた略「十字」形状に形成されており、その先端部は側面視にて緩やかなテーパ形状を有し、前記入力側ハウジング4の貫通孔54への挿入を容易にしている。
【0052】
ここで図1、図10、および、図12に示すように、前記入力側ハウジング4の貫通孔54は、入力側(図12に示す左側)から出力側(図12に示す右側)へ向かって貫通孔54a、貫通孔54b、貫通孔54cと順に内径寸法を拡大しながら形成されている。
貫通孔54bの軸方向への長さは前記ガイド部47cの延出方向への長さに比べて十分長く形成されており、また、その内径寸法は前記ガイド部47cの外周直径に比べて僅かに大きな値となっている。
貫通孔54cの軸方向への長さは、係止部材40の底部40aの厚み寸法(図12に示すX寸法)と、バネ部材44を最大限に縮めた時の全長(図12に示すY寸法)と、ピストン部材47の蓋部47aの厚み寸法(図12に示すZ寸法)と、を直列に並べた寸法(図12に示すA寸法)に比べて十分長く、かつ、該バネ部材44が完全に自由長、すなわち、外力を全く受けない場合の全長まで伸びきることがないような長さとなっている。
また、貫通孔54cの内径寸法は、前記係止部材40の底部40aの外周直径に比べて同程度な値となっている。
【0053】
このような形状からなる貫通孔54の内部において、リリーフ弁70は入力軸2に対して並行に、かつ、ガイド部47cの先端部を入力側(図12に示す左側)に向けて、前記入力側ハウジング4の貫通孔54に配設されている。
すなわち、係止部材40は底部40aの裏面が入力側ハウジング4の出力側の面(図12に示す右側)と同一平面内になるようにして、貫通孔54cに収納されており、ピストン部材47はバネ部材44により入力側(図12に示す左側)に向かって常に付勢され、貫通孔54bに摺動自在に配設されている。
【0054】
なお、上述のとおりピストン部材47はバネ部材44により常に付勢されているが、該ピストン部材47の蓋部47aの外径寸法は貫通孔54bに比べて大きな寸法となっているため、該蓋部47aにおいて、ガイド部47cが設けられる側の面が貫通孔54cの底面と当接し、該ピストン部材47は貫通孔54b内を、一定の距離以上、入力側(図12に示す左側)に入り込まないようになっている。
【0055】
一方、斜板保持部材5においては、前記貫通孔54と同軸上に放出孔60が穿孔されており、入力側斜板6を斜板保持部材5に組付けた際には、該放出孔60の出力側(図12に示す右側)出口部付近の延長線上に、該斜板保持部材5の斜板面5aが配置されるようになっている。
また、入力側ハウジング4に設けられる前記貫通孔54の入口部(図12に示す左側)は、図13、および、図14に示す用に、チャージポンプ26と連通されている。
【0056】
このような油圧系統によりリリーフ弁70は配置され、入力側斜板6の冷却構造が構築されている。
すなわち、図12において、通常はバネ部材44の付勢力により、ピストン部材47は貫通孔54cの入力側(図12に示す左側)端部に押し当てられ、該貫通孔54cと貫通孔54bとは、該ピストン部材47の蓋部47aを介して完全に仕切られた状態にある。
【0057】
ここで、チャージポンプ26から吐出される作動油が貫通孔54b内に充填され、該貫通孔54b内の圧力が前記バネ部材44により設定された付勢力に打ち勝つと、ピストン部材47は徐々に出力側(図12に示す右側)へと押しやられ、前記作動油は貫通孔54c内へと勢い付けて流れ込む。そして、前記貫通孔54c内へと流れ込んだ作動油は、その後、係止部材40の底部40aに設けられる断面積の小さな複数の孔59・59・・・を介して、前記斜板保持部材5に穿孔される放出孔60に貫流され、前記入力側斜板6へと放出される。
【0058】
このような機構からなる入力側斜板6の冷却構造を、油圧式無段変速装置1に設けることにより、可動斜板の冷却能力を確保しつつ、同時に、油圧配管長を削減することができるのである。
すなわち、油圧サーボ機構3とチャージポンプ26のシリンダブロック7の間に入力側斜板6が配置され、該油圧サーボ機構3のリリーフ弁70から放出される作動油を、前記入力側斜板6に向けて放出することにより、外部からの振動等により作動油の放出される向きが変えられることもなく、確実に前記入力側斜板6に作動油を当てることができる。
また、前記油圧サーボ機構3のケース体、すなわち、入力側ハウジング4と斜板保持部材5において、同軸上に連結される貫通孔54、および、放出孔60をそれぞれ設けることにより、外部に配管経路を別途設けることもなく、冷却用作動油の油路構成を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例に係る油圧式無段変速装置の全体的な構成を示した側面一部断面図。
【図2】本発明の一実施例に係るシリンダブロックを示す斜視図。
【図3】同じくシリンダブロックを示す背面図。
【図4】同じく図3におけるA−A断面図およびB−B断面図。
【図5】同じくA−A断面を示す斜視図。
【図6】本発明の一実施例に係るタイミングスプールを示す平面図。
【図7】同じくシリンダブロック挿入時のタイミングスプールを示す側面一部断面図。
【図8】本発明の一実施例に係るタイミングスプールおよびプランジャの一連の動作を示す模式図。
【図9】本発明の一実施例に係るチェックリリーフ弁の作動油閉回路を示す油圧系統図。
【図10】本発明の一実施例に係る入力斜板近傍を示す斜視図。
【図11】同じく斜視図。
【図12】同じくリリーフバルブを示す側面図。
【図13】本発明の一実施例に係る油圧サーボ機構の油圧回路図。
【図14】同じく油圧系統図。
【符号の説明】
【0060】
1 油圧式無段変速装置
2 入力軸
3 油圧サーボ機構
4 入力側ハウジング
5 斜板保持部材
5a 保持部
6 入力側斜板
6a 斜板面
6b 保持部
6c 係止部
7 シリンダブロック
12 出力側斜板
16 係止部材
22 入力側針状コロ軸受
26 チャージポンプ
28 斜板用メタル軸受
37 シャフト
70 リリーフ弁
40 係止部材
44 バネ部材
47 ピストン部材
54 貫通孔
60 放出孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、油圧モータと、油圧サーボ機構と、可動斜板を有し、前記油圧ポンプの入力軸と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置であって、前記油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出すること、を特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したこと、を特徴とする請求項1記載の油圧式無段変速装置。
【請求項1】
油圧ポンプと、油圧モータと、油圧サーボ機構と、可動斜板を有し、前記油圧ポンプの入力軸と、前記油圧モータの出力軸を、エンジン出力軸と同一軸心上に配置した油圧式無段変速装置であって、前記油圧サーボ機構と油圧ポンプのシリンダブロックの間に可動斜板を配置し、該油圧サーボ機構のリリーフ弁から放出される作動油を、前記可動斜板に向けて放出すること、を特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記油圧サーボ機構のケース体に、放出孔を形成したこと、を特徴とする請求項1記載の油圧式無段変速装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−128469(P2008−128469A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317777(P2006−317777)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
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