説明

治療組織用の密閉された自動システム、及び治療組織の投与方法

【課題】被検者に移植された治療用微小器官により作成された治療薬の投薬量と、治療薬の排出量を適切に調整する。
【解決手段】器官の微小構造を保持している組織片である微小器官、及び栄養素の注入口と廃棄物の排出口とを有するモジュール群と、モジュール群に設けられたポートを経由して組織サンプル又は微小器官をあるモジュールから次のモジュールに移動させる手段とを含む治療用微小器官(TMO)の移植すべき量を、インビトロでの微小器官の量から求められる治療薬の分泌レベルと、インビトロでの分泌とインビボでの微小器官の血液濃度との推定される関係とに基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小器官を基礎とした組織(例えば、治療用の組織)の分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願の関連出願としては、米国仮出願第60/330,959号(出願日:2001年11月5日)、米国仮出願第60/393,746号(出願日:2002年7月8日)、米国仮出願第60/393,745号(出願日:2002年7月8日)がある。これらは、引用することをもって本願に含まれるものとする。
【0003】
治療薬を投与するための様々な手法が知られている。例えば、治療薬は経口、経皮、吸入、注射、徐放性薬剤のデボ(depot)により投与することができる。どの場合でも、供給方法は、頻繁な投与によって生じる薬による身体作用と、利用される分子サイズの限定により制限される。また、ある方法では、治療薬の量は投与中に変化する。本明細書では、治療薬を作成及び/または投与するための治療用微小器官(therapeutic micro-organ:TMO)を作成する方法及び装置と、作成された治療用微小器官の使用について説明する
【0004】
一般に、ある方法と、微小器官及び治療用微小器官の使用が、米国特許第5,888,720号(特許文献1)、PCT出願第PCT/MOI/00979号、欧州出願第01 204 125.7号、及び米国特許出願第09/589,736号において説明されている。これらは、開示することをもって本発明の一部とする。これらの文献は従来技術についての批評を含んでいるので、本発明では繰り返さない。また、これらの文献は、TMOの使用の可能性と、生成される可能性のあるタンパク質の種類とについての情報を含んでいる。
【0005】
Mitraniによる米国特許第5,888,720号(特許文献1)及び第6,372,482号(特許文献2)と、未公開の特許出願09/589,736、PCT/IEL01/00979及びEP 01 204 125.7は、微小器官及び遺伝子操作された微小器官の作成及び維持に関する情報を提供する。これらは、開示することをもって本発明の一部とする。これらの情報のいくつかは、維持するための栄養とガスに関する情報と、遺伝子組み換えの可能性に関する情報を含んでいる。これらの情報は、本発明の実施形態に適用することが可能である。本発明は、概ね、微小器官及び遺伝子操作された微小器官の作成、維持、及び使用するための技術の向上を図っているが、前記した特許文献において説明されていることは、本明細書中では繰り返さない。
【0006】
一般に、調合薬は、図1に示すような手順により作成される。まず、治療用分子が少量作成し、その有効性を検査する(10)。次に、治療用分子(例えば、タンパク質)を大量に作成する(12)。そして、作成された治療用分子は流通し(14)、保存され(16)、患者(20)に注射する(18)または他の方法により導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,888,720号明細書
【特許文献2】米国特許第6,372,482号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0008】
本明細書中では、微小器官及び微小器官及び遺伝子操作された微小器官を、作成及び利用するための方法及び装置について説明する。
【0009】
(本明細書中で使用される言葉の定義)
「外植片」という単語は、被験者の1つまたはそれ以上の器官から生体組織を切り取った部分のことを指す。
【0010】
「微小器官」という単語は、外植片から生じた組織構造体のことを指す。この微小器官は、少なくともインビボの相互作用中に、細胞の生存能力と機能を助けるために作成される。微小器官は、2つ以上の隣接した組織の層から成り、器官またはそれが由来する器官の微小構造を持ち続ける。そして、細胞への適切な栄養とガスの受動拡散を可能にする。細胞の拡散は、細胞の毒性を最小限に抑えるべく前記細胞を消費し、栄養不足と消費の蓄積に起因する死を伴う。
【0011】
「ドナー」という単語は、外植片が切り取られた被験者のことを指す。切り取られた外植片は、1つまたはそれ以上の微小器官を作成するのに使用される。
【0012】
「治療用微小器官(therapeutic micro-organ:TMO)」という単語は、例えばタンパク質のような治療薬を作成するために遺伝子操作された微小器官のことを指す。治療薬は体物質に天然で存在する場合もあるし存在しない場合もある。
【0013】
「移植」は、披移植者に1つまたはそれ以上の微小器官またはTMOを導入することを指す。微小器官またはTMOは、被移植者の組織に由来する。または、他の固体または動物の組織に由来する。微小器官またはTMOの転移は、被移植者の皮膚に移植することにより、皮下埋め込み術に移植することにより、または被移植者の他の望ましい位置に配置することにより行うことができる。
【0014】
「被移植者(対象)」は、1つ又はそれ以上の微小器官又はTMOが移植される被験者のことを指す。
【0015】
説明を明瞭及び安全にするために、TMOの製造及び利用の全ての態様が本明細書中に説明されている、及び本発明の例示的な実施形態がそのプロセスの最初から最後まで説明されているが、本明細書中で説明される前記態様の各々は、他の態様を実行するために他の方法及び/または装置と共に用いることができる、及びそのいくつかは本明細書中で説明される他の目的に使用することができることを理解すべきである。本発明は、TMOへ改変するための微小器官の作成及び維持のためのタンパク質の充填を含む。本発明のこれらの態様に従って作成された微小器官は、TMOへの変換以外の目的に使用できることを理解されたい。
【0016】
TMOの作成は、次の手順で行う。(1)患者(又は動物)又は類似した(又は異なる)タイプの他の人間(動物)から、組織サンプルを採取する。(2)組織から生存可能な微小器官(又は微小器官の構造体)を作成する。(3)微小器官を遺伝子操作する。(4)また、好ましくは、遺伝子操作された微小器官(TMO)により、所望の物質(例えばタンパク質)が生成されたことを確認する。TMOの利用は、患者または動物自体の体内に、治療のために、例えばタンパク質などの治療物質を生成することを含む。例えば、TMOは、治療物質をインビボで生成するために、対象の皮膚に移植または埋め込むことができる。他の対象から組織を採取した場合は、例えば、免疫防御性を有するカプセルまたはシース内にTMOを収容することによって、移植片は随意的に被移植者の免疫系による反応から保護される。例えば、移植前にTMOをカプセル内に収容することによりまたはそれ以外の方法により、TMOを覆うように膜を配置することができる。前記膜は、栄養素廃棄物及び治療物質を通過させる程度に十分に大きいが、免疫系細胞を通過させない程度に十分に小さいサイズの細孔を有しているべきである。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の1つの広範な態様は、微小器官の作成に適した、組織サンプルを採取する装置及び方法に関する。本発明の例示的な実施形態では、組織はTMOの基礎原料として使用される。組織は皮膚ではなく、肺、腸、筋肉、及び肝組織でもよい。つまり、どうような組織でも使用することができる。組織は、人体から、従来の方法(例えば生検方法)によって採取することができる。好ましくは、組織を採取するときは、組織の微小構造を傷つけないようにする。本発明の例示的な実施形態では、TMOの基礎材料として、皮膚組織が使用される。あるいは、肺、腸、筋肉、または肝臓の組織を使用することもできる。潜在的に、あらゆる組織を使用することができる。例えば皮膚、肺、肝臓などの様々な種類の組織が、微小器官の作成に適することが分かっている。組織は、当該技術分野で既知の任意の方法(例えば生検方法)によって身体から採取することができる。組織採取するときは、組織の微小構造を傷つけないようにすることが好ましい。
【0018】
本発明の例示的な実施形態では、例えば、採取される組織が皮膚の場合は、組織サンプルは、組織の表面を持ち上げた後、皮膚の一部を所定の厚さで切断することにより採取される。皮膚の一部は、皮膚の所望する層が全て含まれるように、十分な厚さで切断する。随意的に、所望する層は、表皮全体と、下層真皮の少なくとも一部を含み(最大で皮膚全体まで)、採取される皮膚の場所に基づいて、0.3〜3mmの厚さにする。表皮と真皮の一部との両方を含む皮膚構造体(それを構成する真皮の、全ての細胞層、マトリクス及び間質構造を含む)を使用し、該皮膚構造体を処理して微小器官にする場合、採取された組織の移植後の生存能力はインビトロでもインビボでも長期間維持される。本明細書中で用いられる「切断する(cut)」及び「薄く切る(slice)」という動詞は、鋭利なブレードまたはブレードの様なものを使用して、組織の一部を他の部分から分離させることを示すのに使用される。
【0019】
組織を採取した後、採取したサンプルから、インビトロ及び好ましくは再移植後のインビボで生存可能な適切な構造体が作成される。このサンプルは、好ましくは、全ての生存層を含んでおり、サンプルが維持される培地からの栄養素がサンプル全体に拡散できるようにそして、廃棄物が培地に拡散できるように、十分に薄い厚さを有する。随意的に(または、培地をリフレッシュするときに)、培地に拡散された老廃物は、培地から除去される。外面から各細胞までの距離は、好ましくは100μm〜400μmであり、それよりも小さいまたは若干大きい距離も可能である。実際、ある環境下では、500μm、600μm、または1000μmの距離も成功的に用いることができる。もちろん、薄片自身は、最大距離の約2倍の厚さである。
【0020】
本明細書の背景技術の欄で説明した従来技術は、切断プロセス中に、組織を安定させるための手段を提供することできなかった。そのため、従来の方法によって得られた組織薄片の幅及び形状は均一ではなかった。さらに、微小器官の長さは制限されており、微小器官の処理及び利用が困難である平行6面体の形状にしか形成することができなかった。さらに、皮膚の表皮層は硬く、表皮層の縁部は鋭利なために、組織を薄片化する際に組織の形状が崩れる傾向にあるという問題があった。さらに、皮膚は接触した表面に付着しやすいので、そのことは切断プロセスをさらに困難なものとする。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態のある態様は、組織サンプルから微小器官を作成することに関する。本発明の例示的な実施形態では、採取された皮膚サンプルは、支持台上に載置された皮膚サンプルに対して昇降する単一のアッセンブリに設けられた複数の切断ブレードを使用して、単純な切断動作ではなく押し付ける動作によって複数の微小器官に切断される。ある実施形態では、前記ブレードは2セット配置される。一方のセットのブレードは他方のセットのブレードと組み合わされるが、ブレードの長さ方向に沿って位置が若干ずらされている。組織サンプルにこのカッターを押し付けると、サンプルの長さ方向に交互に形成された端部はアコーディオンのように接続されたままである。そして、サンプルを引き伸ばすと、実質的に均一な幅及び厚さ(皮膚の厚さ方向の厚さ)を有する細長いサンプルが作成される。ここに説明するように、この比較的扱いやすいサンプルは、比較的大量の組織を有しており、使用時に任意の適切な長さに切断することができる。サンプルの幅及び厚さは均一なので、各部分の治療物質生成能力は実質的に同一となる。必要とされる(例えば対象に移植するための)サンプルの長さは、インビトロでのサンプル全体による治療物質の生成に基づいて決定することができる。サンプルから微小器官を作成した後、微小器官は遺伝子操作される。組織の細胞に、組み換えウイルスベクターによって遺伝子を導入する。この概略的なプロセスは、上記では線形状の構造体を作成するために説明したが、メッシュ状またはその他の有用な微小器官構造体を作成するために変更することもできる。
【0022】
前述した手段によってまたはその他の任意の手段によってサンプルから適切な微小器官構造体を形成した後、随意的に微小器官は遺伝子操作される。組織の遺伝子操作は、当該技術分野で既知の任意の方法を用いて行うことができる。1つの例示的な方法は、組換ウイルスベクターによって遺伝子を組織の細胞内に挿入することである。治療物質をエンコードしている外生的な核酸断片を標的細胞及び/または組織へ導入するために、例えばウイルスベクター、プラスミドベクター、線形DNAなどの当該技術分野で既知の多種多様なベクターのうちの任意のベクターを使用することができる。これらのベクターは、例えば、感染、形質転換、トランスフェクション、リン酸カルシウム介在トランスフェクション、DEAEデキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、リポゾーム介在トランスフェクション、バイオリスティック遺伝子送達、融合性及びアニオン性リポゾーム(カチオン性リポゾームの代替物である)を用いたリポゾーム遺伝子送達、直接注入、レセプター介在取り込み、マグネットポレーション、及び当該技術分野で既知のその他の手法のうちの任意の手法を用いて挿入することができる。遺伝子挿入は、ベクターが微小器官の細胞と反応できるように、ベクターを微小器官の近傍に導入することにより達成される。一旦、外生的な核酸断片が細胞に組み込まれると、前記核酸断片によりエンコードされた治療物質の生成率を定量化することができる。
【0023】
前述したように、前記プロセス中は、微小器官は栄養素溶液と接触している。そのため、微小器官によって生成された治療物質は、濃度が測定可能な溶液中に分泌される。
【0024】
微小器官は、遺伝子操作の有無に関わらず、様々な方法で利用することができる。1つの方法は、微小器官(または作成した微小器官の一部)を対象に移植することである。本発明の重要な例示的実施形態では、TMOは、組織を採取した対象と同一の対象へ移植される。例えば、遺伝子操作された皮膚は、対象の皮膚下に移植され得るかまたは皮膚上に移植され得る。そのような移植片がインビボで相当な時間に渡って治療物質の生成を継続することが、動物試験により分かっている。
【0025】
あるいは、TMOはインビトロで保持することができ、TMOを取り囲む上清媒体に残された治療物質またはそれから単離された治療物質を、同一のまたは異なる対象に注射または投与することができる。
【0026】
代替的にまたは追加的に、組織サンプルから作成した直後または遺伝子操作後に、微小器官またはTMOを、10%DMSO含有DMEM培地を用いた段階的冷凍方法(0℃、−20℃、−80℃、−196℃)などの当該技術分野で既知の方法によって冷凍保存することもできる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態のある態様では、移植するTMOの量は、下記の1つまたは複数の条件に基づいて決定される。
【0028】
類似する患者用の規定のガイドライン、規定の臨床試験計画書または人口統計に基づいて同様の患者に対象に対して定期的に投与された同一の治療用タンパク質の量に相当する量。
【0029】
以前に同一の対象に対して注射またはその他の経路により投与された同一の治療用タンパク質の量に相当する量。
【0030】
体重、年齢、健康状態、臨床状態などの対象のデータ。
【0031】
以前に他の類似する対象に対してTMOを投与したときに得られた薬物動態データ。
【0032】
以前に同一の対象に対してTMOを投与したときの反応。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態のある態様では、採取してから移植するまでの間、微小器官/TMOを運搬、支持及び改変するのに密閉モジュール装置が使用される。理想的には、前記プロセスの全ては、密閉された、随意的に無菌のモジュールを用いて実施され、各モジュール間の微小器官/TMOの移動は、無菌下の制御された環境下で、手作業ではなく自動的に行われる。
【0034】
本発明のある態様では、前記モジュールは、前記モジュール間での微小器官/TMOの移動を容易にするため、及び前記複数のモジュールが前記プロセスを協力して実施することができるようにするための接続ポートを有する。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態のある態様では、前記モジュールは、前記プロセスが実施される及び/または微小器官/TMOが保持される1つ以上の一続きの連結ステーションに搭載される。前記プロセスは、随意的に、プロトコルに従ってコンピュータ制御される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態のある態様では、作成されたTMOの一部のみが、所与の治療処置に使用される。TMOの残りの部分は、その後の使用のために戻されて維持される(あるいは冷凍またはその他の方法により保存される)。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態の特徴は、大量の微小器官を同時に処理してTMOにすることである。これにより、TMOの分泌の決定がより容易かつ正確にできるようになり、投与量の決定が可能になる。
【0038】
そのため、本発明の例示的な実施形態では、対象から組織サンプルを採取するための方法であって、
前記組織サンプルの一部の外面を実質的に平坦な表面領域に付着させるステップと、
前記表面領域を前記組織の一部と一緒に持ち上げるステップと、
前記組織の一部を前記表面領域の下方に所定距離離間した位置で薄く切り、前記組織の一部を前記対象から分離させるステップとを含む方法が提供される。随意的に、前記付着させるステップは、真空吸引により行われる。代替的にまたは追加的に、前記付着させるステップは、前記実質的に平坦な表面領域に接着面を設けることを含む。
【0039】
本発明の例示的な実施形態では、前記持ち上げるステップは、前記平坦な表面領域の延長部の間に、その表面が実質的に前記所定距離だけ持ち上げられる支持要素を配置することを含む。随意的に、前記薄く切るステップは、前記組織を、前記組織表面から離間させた前記支持要素の表面と実質的に等しい高さで薄く切ることを含む。
【0040】
本発明の例示的な実施形態では、前記組織は皮膚であり、前記組織表面は皮膚の外面である。随意的に、前記所定距離は、0.3mm〜3mmである。随意的に、前記距離は、0.5mm〜0.5mmである。
【0041】
本発明の例示的な実施形態では、採取された組織の寸法は、3mm〜150mmである。随意的に、最小寸法は、5mm〜20mmである。代替的にまたは追加的に、最大寸法は、20mm〜60mmである。
【0042】
本発明の例示的な実施形態では、
その表面に組織表面を付着させるように構成された組織キャリアと、
前記組織表面の一部を持ち上げるように構成されたリフターと、
前記組織を、該組織の表面の下方に所定距離離間した位置で該組織の表面と実質的に並行に切断するように構成された切断ブレードとを含む皮膚切断器が提供される。随意的に、前記キャリアの表面には孔が形成され、前記孔に真空を提供する真空源をさらに含み、それにより、前記付着をこの変形例に提供する。代替的にまたは追加的に、前記キャリア表面は接着面であり、それにより、前記付着をこの変形例に提供する。
【0043】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断ブレードは、スライス動作を提供するために、前進しながら左右に移動する。代替的にまたは追加的に、前記切断ブレードは、切断中は、前記キャリア表面から所定距離隔てて位置する。代替的にまたは追加的に、前記切断ブレードは、切断中は、前記組織表面から所定距離隔てて位置する。随意的に、前記皮膚切断器は、前記切断ブレードを、前記所定距離隔てた位置に位置決めするためのガイドを含む。
【0044】
本発明の例示的な実施形態では、組織から作成された少なくとも2つの微小器官部分を該微小器官の作成に使用された組織から作成した接合部によって互いに連結した微小器官構造体が提供される。随意的に、少なくとも3つの微小器官が、該微小器官の作成に使用された組織と同一の組織から作成された前記接合部によって互いに連結される。本発明の例示的な実施形態では、多数の連結部が微小器官によって相互接続され、少なくとも1つの微小器官の一端がある前記連結部と接続し、前記少なくとも1つの微小器官の他端が別の前記連結部と接続するように構成された、微小器官の連結部から形成された微小器官のメッシュ構造体が提供される。
【0045】
また、本発明の例示的な実施形態では、相互連結される連結部を含み、前記相互連結された連結部の少なくともいくつかがそれに接続された2つの線形微小器官を有する、分節化された線形の微小器官構造が提供される。
【0046】
また、本発明の例示的な実施形態では、相互連結される連結部を含み、前記相互連結された連結部の少なくともいくつかがそれに接続された2つ以上の線形微小器官を有する、分節化された線形の微小器官構造が提供される。随意的に、前記相互連結された連結部のそれぞれは、それに接続された4つの線形微小器官を有する。随意的に、前記線形微小器官構造体及び前記連結部が、メッシュ構造体を形成する。
【0047】
本発明の例示的な実施形態では、前記線形微小器官及び前記連結部は、微小器官と接合部との交互のストリングを含む超線形構造体を形成する。
【0048】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官は複数の組織層から成り、前記連結部は同一の層を有する。随意的に、前記連結部は微小器官である。
【0049】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官は複数の組織層から成り、前記微小器官は前記微小器官よりも少ない数の層を有する、微小器官構造体が提供される。
【0050】
本発明の例示的な実施形態では、微小器官の作成に用いられる組織は、人間の皮膚組織である。
【0051】
本発明の例示的な実施形態では、組織ボリュームから切断することによって微小器官を作成するための装置であって、
(a)複数の互いに隣接する切断ブレードであって、各切断ブレードの長さ方向の少なくとも一部に沿って互いに平行に配置され、かつ各切断ブレードの切断エッジが前記一部に沿って約200μm乃至約2000μmのスライス距離だけ離間するように前記一部に沿って互いに略等距離を保っている切断ブレードを有する切断アレイと、
(b)前記組織を前記切断アレイに対して押し付けたときに前記切断ブレードによって前記組織が薄切りされるように、組織の薄片を保持するように構成された組織サンプル・キャリアとを含む装置が提供される。随意的に、前記装置は、前記ブレードの前記切断動作を妨げることなく前記切断ブレードの前記平行な部分間に適合する少なくとも1つのインサート(挿入部)を有する。随意的に、前記少なくとも1つのインサートは、複数の前記インサートを含む。随意的に、前記切断ブレード間への挿入及び前記切断ブレード間からの除去を一緒に行うことができるように、前記複数のインサートは互いに連結されている。
【0052】
本発明の例示的な実施形態では、前記装置は、前記組織サンプル・キャリアと前記切断アレイとの間に圧力を加えるための手段を含む。
【0053】
本発明の例示的な実施形態では、前記組織サンプルから複数の線形微小器官を切り出すことができるように、全ての前記切断ブレードは同一の長さを有する。
【0054】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断ブレードは、実質的に同一の長さを有するが長手方向に互いにずれており、微小器官連結構造によって隣接する線形微小器官とその交互の端部で互い接続された複数の線形微小器官を切断する。
【0055】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断アレイは、ブレードの線形アレイの端から端まで所与の空間を隔てて配置された少なくとも3つの複数のブレードを有しており、前記線形アレイは、隣接するアレイの空間の間に位置する1つのアレイの空間を隔てて並んで配置されている。随意的に、前記所与の空間は、スライス空間の0.5倍ないし2倍の空間である。
【0056】
本発明の例示的な実施形態では、前記各切断ブレードは、全て同一の長さを有し、その長手方向において互いにずれておらず、組織の全層の厚さ未満の厚さを有する連結部によって連結されている組織から複数の線形微小器官を切断することができるように、前記隣接するブレードの両端の切断ブレードの切断縁部は、前記切断ブレードの依然として延びるブレードよりも下方に位置する。
【0057】
本発明の例示的な実施形態では、前記各切断ブレードは、全て同一の長さを有し、その長手方向において互いにずれておらず、組織の全層の厚さ未満の厚さを有する連結部によって互いに連結されている組織から複数の線形微小器官を切断することができるように、前記組織ホルダは隣接するブレードの交互の端部と対応する位置に形成された凹部を有する。
【0058】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断アレイは、少なくとも3つのブレードを有しており、前記ブレードは前記残りのブレードの切断面よりも低い断続的に離間する切断エッジを有し、前記線形アレイは、1つのブレードの低い切断面が、前記隣接するブレードの前記低くされた切断面の間に並ぶように配置されており、前記低い切断面において前記組織サンプルの厚さよりも薄い厚さを有する一続きの連結部が形成されるように構成されている。
【0059】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断アレイは少なくとも3つのブレードを有しており、前記組織キャリアには、前記切断ブレードの位置に対応する凹部が断続的に離間する複数の平行なアレイが形成され、1つのアレイの前記凹部が、隣接するアレイの前記凹部の間に配置されており、前記凹部において前記組織サンプルの厚さよりも薄い厚さを有する一続きの連結部が形成されるように構成されている。
【0060】
本発明の例示的な実施形態では、前記ブレードは、組織からリング状の複数の微小器官が作成することができるように、前記スライス間隔だけ離間された一続きの同心円形状に構成されている。
【0061】
本発明の例示的な実施形態では、前記ブレードは、上述したように、前記スライス間隔だけ離間された連続的な螺旋形状を有するので、渦巻き形状の微小器官が組織から作成される。
【0062】
本発明の例示的な実施形態では、前記組織キャリアは、真空によって組織を保持するように構成されている。代替的にまたは追加的に、前記組織キャリアは、接着によって前記組織を前記キャリア表面に保持するように構成されている。
【0063】
また、本発明の例示的な実施形態では、切断によって、組織から利用し易い微小器官または微小器官構造を作成するための方法であって、
(a)前記微小器官を形成すべく、適切な厚さの組織を提供するステップと、
(b)上述した微小器官を作成するための装置を提供するステップと、
(c)前記装置の前記サンプル・キャリア上に前記組織を配置するステップと、
(d)前記キャリア上の前記組織を、前記装置の前記切断ブレードと密接に接触させるステップと、
(e)前記組織の一部がその厚さに渡って切断されるまで、前記組織を前記切断ブレードに対して押し付け、それによって少なくとも1つの微小器官または微小器官構造を作成するステップとを含む方法が提供される。
【0064】
また、本発明の例示的な実施形態では、切断によって、組織から利用し易い微小器官または微小器官構造を作成するための方法であって、
(a)前記微小器官を形成すべく、適切な厚さの組織を提供するステップと、
(b)上述した微小器官を作成するための装置を提供するステップと、
(c)前記装置の前記サンプル・キャリア上に前記組織を配置するステップと、
(d)前記キャリア上の前記組織を、前記装置の前記切断ブレードと密接に接触させるステップと、
(e)前記組織の一部がその厚さに渡って切断されるまで、前記組織を前記切断ブレードに対して押し付け、それによって少なくとも1つの微小器官または微小器官構造を作成するステップと
(f)前記切断ブレードの間から前記マスクを取り出すことによって、前記切断ブレードの間から前記少なくとも1つの微小器官または微小器官構造を取り出し、それによって前記切断された微小器官を前記取り出されたマスクの前記表面上に載置するステップとを含む方法が提供される。
【0065】
本発明の例示的な実施形態では、前記押し付けるステップは、前記キャリアの一端から他端へ円筒状ドラムを転がすことを含み、前記円筒状ドラムの転がりによって前記組織を切断するようにする。
【0066】
また、本発明の例示的な実施形態では、組織サンプルから微小器官を作成するための方法であって、
厚さ、及び前記厚さ方向に対して垂直方向の広がりを有する、薄い組織サンプルを提供するステップと、
前記サンプルの少なくとも一部分を前記厚さ方向に切断し、少なくとも1つの寸法が2000μmよりも小さく、また少なくとも1つの別の寸法が前記広がりの最長寸法よりも大きい微小器官を作成するステップとを含む方法が提供される。随意的に、前記切断するステップは、スタンプ動作を含む。代替的にまたは追加的に、前記薄い組織サンプルは、薄い略矩形状の組織サンプルであり、切断サンプルは、一続きの略直線形切断の形態を有し、同一の長さを有する前記切断されたものの一端に対して平行であり、かつ、前記切断サンプルの交互の端部において隣接する細長い組織間に前記組織の連結部を残すべく、長さ方向に互いにずれている。随意的に、この方法は、上記のようにして形成された切断サンプルを展開し、前記連結部によって連結された組織ストリップを有する、広げられた微小器官を作成することを含む。
【0067】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断するステップは、渦巻き形状に切断することを含む。随意的に、前記方法は、前記渦巻き形状を引き伸ばし、広げられた微小器官を作成する生成することを含む。
【0068】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断するステップは、前記組織を一続きの同心円形状に切断することを含む。
【0069】
また、本発明の例示的な実施形態では、組織サンプルから微小器官を作成するための方法であって、
厚さ、及び前記厚さ方向に対して垂直方向の広がりを有する、薄い組織サンプルを提供するステップと、
前記サンプルをその厚さ方向に切断すると同時に複数の切り込みを入れるステップであって、前記切り込みは長手方向に列をなして形成されており、各列は複数の離隔された切断であって間隔が設けられており、又各々の列が切り込み方向にずれており、前記所与の列の空間が隣接する列の切り込み部分に対し接近して配置されているステップとを含む方法が提供される。随意的に、前記ずれは、前記間隔の約2分の1に等しく、各列の前記切り込みは、隣接する列の前記空間の実質的に中心に位置する。代替的にまたは追加的に、隣接する切り込み間の前記距離は200μm乃至2000μmである。随意的に、前記距離は、500μm乃至1500μmである。
【0070】
本発明の例示的な実施形態では、隣接する切り込み間の前記距離は、隣接する列間の前記距離の5分の1から5倍の間である。代替的にまたは追加的に、隣接する切り込み間の前記距離は、隣接する列間の前記距離の2分の1から2倍の間である
【0071】
本発明の例示的な実施形態では、前記間隔は、前記隣接する列間の距離と略等しい。
【0072】
本発明の例示的な実施形態では、前記方法は、前記切断された組織サンプルを引き伸ばしてメッシュを形成するステップを含む。
【0073】
本発明の例示的な実施形態では、前記切断するステップは、スタンプ動作を含む。
【0074】
本発明の例示的な実施形態では、前記薄い組織サンプルは、少なくとも表皮の基底層と真皮の一部とを含む皮膚組織である。随意的に、前記組織サンプルは、前記表皮全体を含む。代替的にまたは追加的に、前記組織サンプルは、角質層を含む。代替的にまたは追加的に、前記組織サンプルは、前記真皮の主要部を含む。代替的にまたは追加的に、前記組織サンプルは、実質的に真皮全体を含む。
【0075】
本発明の例示的な実施形態では、前記薄い組織サンプルは、0.3mmないし3mmの厚さを有する。随意的に、前記組織サンプルは、0.5mmないし1.5mmの厚さを有する。
【0076】
本発明の例示的な実施形態では、前記切り込み間の前記距離は、200μmないし2000μmである。随意的に、前記切り込み間の前記距離は、500μmないし1500μmである。
【0077】
本発明の例示的な実施形態では、前記ブレード間の前記空間に対する前記ブレードの長さの比率は、1:1から100:1である。
【0078】
また、本発明の例示的な実施形態では、微小器官の維持中及び随意の遺伝子操作中または運搬中に、バイオリアクタ内で微小器官を保持するための固定器具であって、
1つ以上の開口部を有し、その開口部の上に微小器官が載置されるホルダと、
前記微小器官の両側の70%以上が露出されるように、前記微小器官を前記1つ以上の開口に対して並列に保持する複数の微小器官固定要素とを含む器具が提供される。随意的に、前記微小器官の両側の80%以上が露出される。随意的に、前記微小器官の両側の90%以上が露出される。
【0079】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官はメッシュ構造を有し、前記固定要素は、前記メッシュ及び開口部の外周において前記メッシュと係合するように構成された要素を含む。随意的に、前記ホルダは、部分的にまたは完全に引き伸ばされた前記メッシュの開口部を貫通して配置されるように構成された、メッシュを固定するピンまたはロッドを含む。
【0080】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官はメッシュ機構を有し、前記固定要素はその非微小器官の周辺で前記メッシュと係合するように構成される。随意的に、前記ホルダは、メッシュを固定すべく、その非微小器官の周辺の開口部に突き刺さるまたは貫通して配置されるように構成されたピンまたはロッドを有し、それにより前記装置上で前記メッシュを固定する。
【0081】
本発明の例示的な実施形態では、前記ホルダは、円周スロットが形成されたリングであり、前記開口部を含んでいる。
【0082】
本発明の例示的な実施形態では、前記スロットは、300μmないし2000μmの軸状突起を有する。随意的に、前記スロットは、500μmを超える軸状突起を有する。随意的に、前記スロットは、1mm以上の軸状突起を有する。
【0083】
本発明の例示的な実施形態では、前記固定要素は、前記リングの前記円周に沿って配置され、前記固定要素間で前記微小器官が露出されるように、長い微小器官をその長さが前記円周に沿って配向して保持するように構成される。
【0084】
また、本発明の例示的な実施形態では、微小器官の維持中及び随意の遺伝子操作中または運搬中に微小器官を保持するための方法であって、
少なくとも2つの微小器官固定要素を有する固定器具を提供するステップと、
少なくとも前記微小器官の前記表面が前記固定要素間に存在し、全ての側で露出するように、前記微小器官を前記固定要素に固定するステップとを含む方法が提供される。
【0085】
また、本発明の例示的な実施形態では、患者に移植される治療用微小器官の量を決定するための方法であって、
インビトロでの前記微小器官の量によって治療物質の分泌濃度を割り出すステップと、
前記治療物質のインビトロでの分泌濃度とインビボでの血液濃度との関係を推定するステップと、
前記割り出された分泌レベル及び前記推定された関係に基づいて、移植する治療用微小器官の量を決定するステップとを含む方法を提供する。随意的に、前記関係は、下記の(a)〜(c)よりなる群から選択される1つ以上の要素に基づいて推定される。
(a)体重、年齢、健康状態、臨床状態などの対象のデータ。
(b)他の類似する対象へ以前にTMOを投与したときの薬物動態学的データ。
(c)同一の対象へ以前にTMOを投与したときの薬物動態学的データ。
【0086】
随意的に、前記関係は、前記要素のうちの少なくとも2つに基づいて推定される。随意的に、前記関係は、前記要素のうちの少なくとも3つに基づいて推定される。
【0087】
本発明の例示的な実施形態では、患者に移植する治療用微小器官の量の決定も、類似する対象用の規定のガイドライン、規定の臨床試験計画書または人口統計に基づいて前記対象に対して定期的に投与された同一の治療用タンパク質の量に相当する量、及び、以前に同一の対象に対して注射またはその他の経路により投与された同一の治療用タンパク質の量に相当する量の一方または両方に基づいて行われる。
【0088】
本発明の例示的な実施形態では、前記方法は、前記決定された量に基づいて、移植用の治療用微小器官の量を用意するステップをさらに含む。
【0089】
また、本発明の例示的な実施形態では、患者に微小器官を移植する方法であって、
既知の向き皮膚表面を有する微小器官を用意するスッテプと、
患者の前記皮膚に切り込み(スリット)を形成するステップと、
前記皮膚の向きと同一の向きで、前記切り込みに前記微小器官を移植するステップとを含む方法を提供する。随意的に、前記切り込みを形成するステップは、所定のサイズ及び形状の切り込みを形成することを含む。代替的にまたは追加的に、前記微小器官は、皮膚組織の微小器官である。
【0090】
本発明の例示的な実施形態では、前記移植するステップは、前記皮膚表面と、前記微小器官の対応する表面とが実質的に同じ高さとなるように、前記微小器官を前記切り込みに配置することを含む。随意的に、前記方法は、前記微小器官を所定の位置に保つために、前記高さの位置で前記切り込みを前記微小器官によって塞ぐことを含む。
【0091】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官は、治療用物質を分泌する遺伝子操作された治療用微小器官である。
【0092】
また、本発明の例示的な実施形態では、患者に微小器官を移植する方法であって、
組織の表面に孔を形成するステップと、
前記孔から入れたカテーテルを前記皮膚表面の下方へ前進させるステップと、
その既知位置に微小器官を付着させた細長いキャリアを、前記カテーテル内に挿入し、前記皮膚表面が前記カテーテルの外に出るように前記カテーテルを貫通させるステップと、
前記微小器官が前記組織表面下の前記カテーテル内の既知位置に位置するように、前記キャリアを位置決めするステップと、
前記微小器官を所定位置に維持したままで、前記カーテルを取り出すステップとを含む方法を提供する。随意的に、前記微小器官は、治療用物質を分泌する遺伝子操作された治療用微小器官である。
【0093】
また、本発明の例示的な実施形態では、対象に移植された治療用微小器官の分泌によって生成された治療用物質の投与量を調節する方法であって、
(a)前記対象内での前記治療用物質の濃度をモニタするステップと、
(b)前記治療用物質の濃度を所望濃度とを比較するステップと、
(c)前記治療用物質の濃度が最低濃度よりも低い場合、追加的な治療用微小器官を移植するステップと、
(d)前記治療用物質の濃度が最低濃度よりも高い場合、前記移植した微小器官の一部を不活化させるまたは除去するステップとを含む方法が提供される。随意的に、前記方法は、前記(a)〜(d)のステップを定期的に繰り返すことを含む。代替的にまたは追加的に、前記不活化または除去は、前記移植された微小器官の一部を除去することを含む。随意的に、前記除去は外科的に行う。代替的にまたは追加的に、前記不活化または除去は、前記移植された微小器官の一部を不活性化させることを含む。随意的に、前記不活化は、前記移植された微小器官の一部を死滅させることを含む。随意的に、前記不活化は、前記移植された微小器官の一部を切除することを含む。
【0094】
本発明の例示的な実施形態では、
組織サンプルから微小器官を作成するプロセスの全てまたは一部で各々使用される複数の操作可能モジュールと、
前記プロセス中に、前記組織サンプルを前記モジュールから取り出すことなく、前記組織サンプルまたは微小器官をあるモジュールから別のモジュールへ前記モジュールに設けられたポートを経由して移動させる手段とを含む微小器官処理システムが提供される。随意的に、前記モジュールの1つは、前記組織に対して押し付けられ、前記組織の規定された厚さの表面スライスを採取するための組織採取モジュールである。随意的に、前記組織採取モジュールは、規定された幅及び長さの組織を採取する。代替的にまたは追加的に、前記モジュールの1つは、前記組織サンプルを1つ以上の微小器官に切断するための微小器官モジュールである。随意的に、前記組織サンプルは、組織キャリアに保持され、微小器官を形成すべく、前記キャリアに保持されたままの状態でカッターに押し付けられる。
【0095】
本発明の例示的な実施形態では、前記モジュールの1つは、前記組織サンプルを1つ以上の微小器官に切断するための微小器官モジュールである。
【0096】
本発明の例示的な実施形態では、前記組織は、未展開のアコーディオン形状に形成するために、蛇行するように切断される。
【0097】
本発明の例示的な実施形態では、前記微小器官は別のモジュールに移され、前記微小器官は、長く超線形形状に展開した状態で、前記組織サンプルよりも長い長さを有するように展開される。随意的に、前記微小器官の先端縁部は、さらなる別のモジュールに移され、展開された微小器官は、そのモジュール内のホルダ上に移される。随意的に、前記ホルダは、その限られた部分上でのみ前記微小器官の表面と接触するように、前記微小器官を保持する。随意的に、前記部分は、前記微小器官の10%未満に相当する。随意的に、前記微小器官の5%未満に相当する。
【0098】
本発明の例示的な実施形態では、前記さらなるモジュールには、その内部で微小器官を維持するために、栄養物を注入するための入口と廃棄物を排出するための出口とが設けられている。代替的にまたは追加的に、前記さらなるモジュールには、その内部で前記微小器官を遺伝子操作できるようにするために、形質転換物質を供給するための入口が設けられている。代替的にまたは追加的に、前記さらなるモジュールには、その内部にある周囲液体を試料採取するための試料採取用出口が設けられる。代替的にまたは追加的に、前記さらなるモジュールには、その内部にある前記微小器官を1つ以上の小片に切断するように構成された切断装置が設けられている。
【0099】
本発明の例示的な実施形態では、前記システムは、前記微小器官の少なくとも選択された部分を前記運搬用モジュールに移すべく、前記さらなるモジュールの入口または出口から前記さらなるモジュール内に入り前記微小器官の少なくとも選択された部分を前記入口または出口から取り出すことができるように構成された腕を含む。
【0100】
本発明の例示的な実施形態では、前記モジュール間で物質を外部環境に曝すことなく移動させることができるように、前記モジュールには互いに適合するポート及び連結機構が設けられる。代替的にまたは追加的に、前記モジュールは、前記組織サンプルの導入から始まる前記プロセスを無菌状態で行う。
【0101】
本発明の例示的な実施形態では、
1つのモジュールまたは複数の連結されたモジュールと連通結合するための少なくとも1つのポートと、
前記モジュールの少なくも1つへのまたは前記モジュールの少なくも1つからの、1つ以上の流動体及び廃棄物の流れを制御すべく作動する流体制御システムと、
少なくともいくつかの前記モジュールの各要素に動力を供給すべく作動する電力制御システムとを含む、微小器官の維持及び随意的な遺伝子操作を制御するための微小器官処理ステーションが提供される。随意的に、前記ステーションは、前記モジュールの少なくとも1つの内部で物質を保持するために、前記モジュールの少なくとも1つに制御された真空を供給すべく作動する真空制御システムを含む。随意的に、前記流体制御システムは、前記モジュールの1つの内部で前記微小器官の遺伝子操作を引き起こす少なくとも1つの物質の導入を制御すべく作動する。
【0102】
本発明の例示的な実施形態では、前記ステーションは、少なくとも1つのモジュールから流動体を採取するための試料採取機構を含む。代替的にまたは追加的に、前記ステーションは、前記流動体を、グルコース、乳酸、溶解酸素、溶解二酸化炭素、アンモニア、グルタミン、pH、汚染物質または分泌した治療物質を含む1つ以上のプロセスパラメータについて分析するための分析器を含む。随意的に、前記分析器は、前記微小器官から分泌された治療物質について前記流体を分析する。
【0103】
本発明の例示的な実施形態では、前記ステーションは、治療物質の量をモニタし、前記微小器官が移植に適している場合に通知する制御器を含む。随意的に、前記ステーションは、前記微小器官の遺伝子操作を促進するための促進手段を含む。随意的に、前記促進手段は機械振動または音響振動を含む。
【0104】
本発明の例示的な実施形態では、前記電力制御システムは、組織を1つ以上の微小器官へ切断する動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】薬剤の作成及び利用のための「製薬」の実例の模範的な従来技術を示す図式的概観である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、遺伝子操作された微小器官(therapeutic micro-organ: TMO)を作成及び利用活用する好適な方法を示す概略ブロック図である。
【図3A】本発明の例示的な実施形態に係る、被験者から皮膚サンプルを採取する好適な方法を示す図である。
【図3B】本発明の例示的な実施形態に係る、被験者から皮膚サンプルを採取する好適な方法を示す図である。
【図4A】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な器具を示す図である。
【図4B】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な器具を示す図である。
【図4C】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な器具を示す図である。
【図4D】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な器具を示す図である。
【図5A】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な刃物構造体と、結果として得られる微小器官とを示す図である。
【図5B】本発明の例示的な実施形態に係る、組織サンプル(例えば、図3に示した方法により採取した皮膚の組織サンプル)から微小器官を作成するための好適な刃物構造体と、結果として得られる微小器官とを示す図である。
【図6】本発明の例示的な実施形態に係る、メッシュ状の微小器官の構造体を示す図である。
【図7】本発明の例示的な実施形態に係る皮膚サンプルを示す図である。この皮膚サンプルは、メッシュ状の微小器官が形成することができるようにカットされている。
【図8】本発明の例示的な実施形態に係る、図7に示したパターンをカットする器具を概略的に示す図である。
【図9A】超直線状及びメッシュ状にパターンされた微小器官を、それぞれ1つ以上のプロセス(移送、管理、遺伝子組み換え)中に保持する備品の構造体を概略的に示す図である。
【図9B】超直線状及びメッシュ状にパターンされた微小器官を、それぞれ1つ以上のプロセス中(移送、管理、遺伝子組み換え)に保持する備品の構造体を概略的に示す図である。
【図10】本発明の例示的な実施形態に係る、微小器官を処理してTMOを作成するためのバイオリアクタを概略的に示す図である。
【図11】本発明の例示的な実施形態に係る、TMO又は微小器官を移植するための器具を示す図である。
【図12A】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第1の連続するステップを示す図である。
【図12B】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第1の連続するステップを示す図である。
【図12C】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第1の連続するステップを示す図である。
【図12D】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第1の連続するステップを示す図である。
【図13A】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第2の連続するステップを示す図である。
【図13B】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第2の連続するステップを示す図である。
【図13C】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第2の連続するステップを示す図である。
【図13D】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第2の連続するステップを示す図である。
【図13E】本発明の例示的な実施形態に係る皮下移植手順の、第2の連続するステップを示す図である。
【図14A】本発明の実施形態に係る、移植前のmIFNα−TMOのインビトロでの分泌と、移植後の血清のインビボでのレベルとの間の相関分析を示すグラフである。
【図14B】SCIDマウス内のヒト皮膚TMOによって生成され運搬されたmIFNαと共に、被験者に注射された様々な組み替え型治療タンパク質の薬物動態性を示すグラフである。
【図15】本発明の実施形態に係る、異なる回数処置された、異なる患者より採取された皮膚サンプルの、インビボでの分泌レベルの変動の度合いを示すグラフである。間変化の程度が極めて小さいことを示している。
【図16】本発明の実施形態に係る、移植後のSCIDマウス内でのエリスロポエチンの増加レベルを示すグラフである。
【図17】移植されたTMOの異なる番号の作用としての、移植されたマウスのインビボでのエリスロポエチン反応を示すグラフである。
【図18A】本発明の実施形態に係る、ELISA分析により測定された血清のhEPOレベルを示すグラフである。
【図18B】本発明の実施形態に係る、小型のブタにおける自己TMO移植後の網状赤血球数の増加を示すグラフである。
【図19A】形質導入後に検出された、hEPOタンパク質のインビトロでの分泌を示すグラフである。
【図19B】形質導入後に検出された、hEPOタンパク質のインビトロでの分泌を示すグラフである。
【図19C】形質導入後に検出された、hEPOタンパク質のインビトロでの分泌を示すグラフである。
【図20】本発明の実施形態に係る、閉ざされた殺菌した微小器官プロセッシングカセットのメインモジュールを示す図である。なお、モジュールは見易いように分離されている。
【図21】本発明の実施形態に係る、組織採取モジュールの動作及び詳細を示す図である。
【図22】本発明の実施形態に係る、組織採取モジュールの動作及び詳細を示す図である。
【図23】本発明の実施形態に係る、皮膚サンプルからの微小器官の形成を示す図である。
【図24】本発明の実施形態に係る、皮膚サンプルからの微小器官の形成を示す図である。
【図25】本発明の実施形態に係る、皮膚サンプルからの微小器官の形成を示す図である。
【図26】本発明の実施形態に係る、TMOバイオプロセッシングモジュールと、そこへの微小器官の移送との詳細を示す図である。
【図27】本発明の実施形態に係る、TMOバイオプロセッシングモジュールと、そこへの微小器官の移送との詳細を示す図である。
【図28A】本発明の実施形態に係る、TMOバイオプロセッシングモジュールと、そこへの微小器官の移送との詳細を示す図である。
【図28B】本発明の実施形態に係る、TMOバイオプロセッシングモジュールと、そこへの微小器官の移送との詳細を示す図である。
【図29】本発明の実施形態に係る、それぞれが複数のモジュールから成るカセットを有する処理ステーションを示す図である。
【図30】本発明の実施形態に係る、超直線状の微小器官の断片への切断を示す図である。
【図31】本発明の実施形態に係る、超直線状の微小器官の断片への切断を示す図である。
【図32】本発明の実施形態に係る、超直線状の微小器官の断片への切断を示す図である。
【図33】本発明の実施形態に係る移送モジュールを概略的に示す図である。
【図34】本発明の実施形態に係る、バイオプロセッシングモジュールからの微小器官/TMOの断片の除去と、それらの移送モジュールへの移送とを概略的に示す図である。
【図35】本発明の実施形態に係る、バイオプロセッシングモジュールからの微小器官/TMOの断片の除去と、それらの移送モジュールへの移送とを概略的に示す図である。
【図36】本発明の実施形態に係る、バイオプロセッシングモジュールからの微小器官/TMOの断片の除去と、それらの移送モジュールへの移送とを概略的に示す図である。
【図37】本発明の実施形態に係る、バイオプロセッシングモジュールからの微小器官/TMOの断片の除去と、それらの移送モジュールへの移送とを概略的に示す図である。
【図38】本発明の実施形態に係る、微小器官/TMOの断片の移植ホルダへの移送を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
(システムの概要)
図2は、本発明の例示的な実施形態による、微小器官及び遺伝子操作された微小器官(therapeutic micro-organ:TMO)を作成及び利用するための方法200の概略を示すブロック図である。202では、その後に治療される対象から外植片が採取される。本発明の例示的な実施形態では、前記サンプルは、皮膚サンプルである。随意的に、他の組織を採取し、後述する皮膚サンプルの場合と同様の方法で使用することもできる。なお、後述する方法は例示的な方法であり、本発明のいくつかの実施形態では、例えばコアリングやパンチングなどの他の採取方法を用いることもできる。さらに、一般的に、任意の市販の皮膚節を使用することができる。採取されたサンプルは、その状態を判断するために随意的に検査した後、随意的に後述する方法を用いて微小器官作成装置に運ばれる。所望に応じて、組織の外植片は、その後の使用のために(すなわち、プロセスの同一段階で導入される)、冷凍貯蔵することもできる。
【0107】
204では、生存可能な微小器官(micro-organ:MO)が外植片から作成される。生存可能にするためには、微小器官は、微小器官と接触する栄養媒体から微小器官の細胞全体に栄養素が拡散して入ることができ、かつ、老廃物が微小器官から栄養媒体へ拡散して排出されることができるように、十分に小さい寸法を有する必要がある。このことにより、後述するさらなるプロセスのため、及び微小器官をタンパク質などの治療物質のソースとして随意的にさらに利用するために、微小器官がインビトロで十分に長期間生存することが可能となる。微小器官の外面から依然として生存している組織までの最大間隔は、1000μm未満であることが好ましいが、それよりも大きい間隔でも生存可能な構造体を作成することができる。組織サンプルから微小器官を作成するこの方法によれば、後述するように、微小器官がインビトロで数ヶ月間生存することが可能となる。
【0108】
微小器官が作成された後、随意的に、前記微小器官が適切に作成されたか及び望ましい寸法を有しているかを視覚的に検査する。検査は光学的に行うこともできる。その後、微小器官をホルダ上に載せて、遺伝子操作するための装置に移される(206)。適切な遺伝子操作物質が調製される(208)。前記物質を調製するための他の例示的な方法は、所定のウイルス粒子の希釈緩衝液を使用して、望ましい力価濃度でアリコートを作成するステップ(冷凍保存し、制御された温度(0〜4℃)下でウイルスアリコートを解凍することが可能である)、及びウイルスベクターの活性化を確認するステップを含んでいる。これらのプロセスはすべて、当該技術分野では周知である。この時点では、微小器官は、その後に前記プロセスの同一段階で導入するために、冷凍保存することができる。冷凍保存は、例えば10%DMSO含有DMEM培地を使用して行われる、織及び細胞を段階的に冷凍するための既知の手法を用いて行うことができる。
【0109】
210では、微小器官が遺伝子操作される。課題を解決するための手段の欄で説明したように、遺伝子操作の方法が数多く知られており、本発明で使用することができる。例えば、以下の説明は、ウイルスベクターを使用して微小器官の細胞に遺伝子を導入することに基づいている。このプロセスは周知であるので、ウイルスを微小器官に導入するための特別な方法及び装置に関すること以外は、それ以上は説明しない。
【0110】
212では、随意的に、遺伝子操作した微小器官(TMO)の治療物質の分泌量が検査される。分泌量を測定する方法としては、例えば、ELISA、その他の免疫学的測定、スペクトル解析などの様々な方法がある。加えて、例えば分泌されたタンパク質の無菌性と活性を調べるために、分泌の品質が随意的に検査される。この検査は、オンラインで、定期的にまたは継続的に行われる。
【0111】
この時点では、TMOは、その後の使用のために、冷凍保存することができる。
【0112】
214と216では、所望の治療効果を得るために必要とされるTMOの量が決定される。後述するが、必要とされる治療用量は、インビトロでの分泌濃度とインビボでの血中濃度と間の推定されるまたは既知の関係に基づいて、測定された分泌量、患者のパラメータ、人口統計から推測することができる。
【0113】
218では、TMOの選択された部位が、移植器具へ移される。例示的な移植器具については、後述する。必要であれば、同種移植または異種移植のために、あるいは別の理由で、TMOをカプセル化する。荷電した移植手段(またはTMO)を運搬する必要がある場合、移植手段等は維持ステーション(220)内に随意的に保持される。維持ステーションは、運搬中にTMOが生存し続けるように、温度及び湿度を一定に保つ。TMO物質の残りは、将来の使用のために、インビトロで随意的に維持される。これは、上述したようなインキュベーターの暖かい状態(37℃)、またはインキュベーターの冷たい状態(4℃)で行われる(このことによりインビボでの生存が長期化する)。
【0114】
224では、TMOの一部(または前回作成されたTMOの一部)を対象に移植する。この移植手順のための数多くの方法が、明細書中で説明されている。また、当業者が思い付くことができる、微小器官の特異的な構造に主に基づく他の方法も用いることができる。動物実験により、微小器官及びTMOがインビボで生存を維持できることが示された。つまり、TMOは、移植後数ヶ月の間、治療物質を継続して作成し分泌する。動物実験では、治療物質は最大で120日間(またはそれ以上)作成された。微小器官またはTMOの組織が、対象の組織と一体化しているように見える間は(特に、組織が、それを採取した組織と同じ種類の組織に移植された場合は)、微小器官またはTMOを含んでいる細胞は、治療物質を継続して作成し分泌する。
【0115】
本発明の代替的な実施形態では、治療物質はインビトロのTMOから採取され、栄養素及び老廃物を除去するために精製される。精製された物質は、注射またはその他の方法によって対象に投与される。
【0116】
いずれの場合でも、TMOのインビボでの能力は、随意的に測定される(228)。例えばこの評価及び/または過去の患者データ(226)に基づいて、後述するように、移植片の量を増やすか、または移植片をいくつかの除去することにより、患者への投与量が調節される(230)。移植片の効果が変化すると、さらなるTMO断片が移植される。
【0117】
以下、上記の行為のいくつかとその変形例についてさらに詳しく説明する
(外植片の採取)
図3A及び3Bは、本発明の例示的な実施形態による、対象から皮膚サンプルを採取する例示的な方法を概略的に示す。皮膚サンプルを採取すべく、基板314が、対象311のドナー部位と接触して配置される。基板314は、随意的に、例えば腕に巻き付けられたストラップ313またはその他の手段により、わずかな圧力で皮膚に押し付けられる。基板314は切欠された窓を有しており、この窓によって採取される組織の長さと幅が規定される。また、この窓は、ドナー部位の周囲の皮膚を安定させる働きもする。サンプル・キャリア310は、基板314の上面の上方に所定距離(採取される組織の厚さ)だけ離間した位置に配置される。本発明の一実施形態では、サンプル・キャリア310には小孔(スロット)が形成されており、サンプル・キャリアの背面側(皮膚との反対側)には、真空ヘッド312が設けられている。そして、真空源320の作動時に、皮膚の表面をサンプル・キャリア310に引き寄せ、基板の上方の所定の高さでしっかりと保持する。後述するような異なる形態の微小器官構造体には、様々な孔構造体(基板)を用いることができる。真空吸引は、採取される皮膚サンプルを安定させるため、及び、人体からの組織採取後の採取された皮膚サンプルのキャリアへの付着を保つための役割を果す。真空吸引の代わりに、皮膚がサンプル・キャリアに付着するように、サンプル・キャリア上に接着テープを設けることもできる。例えば、サンプル・キャリア310の下面に、両面接着テープが配置される。接着テープを使用する場合、周囲の皮膚から持ち上げる前にサンプル・キャリアを皮膚に接触させることを可能にする準備がなされる。
【0118】
薄くて鋭利なブレード316を基板314の上面を横切るように引くことにより、皮膚サンプル318が採取される。サンプル・キャリア上でのサンプルの厚さは、基板310の上面とサンプル・キャリア310の下面との間隔により決定される。随意的に、サンプルの切断を容易にするために、ブレード316は左右に動かされる。ブレードの左右の動作は、電動で行ってもよいし、全ての動作を手動で行ってもよい。さらに、ブレードの前進動作は、電動で行ってもよい。真空ヘッド312は、サンプル・キャリア310から皮膚サンプル318(図3B参照)が落下するのを防止するために、以下のプロセスの最中は、サンプル・キャリア310に取り付けられたままにされる。
【0119】
典型的には、皮膚サンプルの寸法は、幅6mm、長さ35mm、厚さ1mmである。しかし、他の長さ、幅、厚さであってもよい。横方向の寸法は、あまり重要ではない。しかし、以下のプロセスによって均一な微小器官を作成する上では、標準サイズの外植片を採取することは有用である。
【0120】
(微小器官の作成及び載置)
図4A及び4Bは、本発明の例示的な実施形態による、組織サンプル(例えば、図3に示した方法を用いて採取した皮膚組織サンプル)から微小器官を作成するための例示的な器具410を示している。
【0121】
図4Aに示すように、サンプル・キャリア310(図3B参照)上に載置され、真空ヘッド312により保持されている皮膚サンプル318を、ブロック414上に設置された一連のブレード(複数の刃)412に接触させて押し付ける。前記ブレードは、サンプルの長さよりも若干長い同一の長さを有し、平行に配置されている。組織を切断する前に、各ブレードの間に微小器官マスク416が配置される。ブレードに対してサンプル・キャリアを十分な力で押し付けると、組織は切断され、皮膚サンプル(切断後は微小器官418となる)は各ブレードの間に受け止められる。微小器官が各ブレードの間にぴったりと保持されると、吸着用の真空源(または接着テープ)と共にサンプル・キャリアを取り去る。微小器官を切断した後の状態を図4B(等角図)及び4C(断面図)に示す。各ブレードの間の間隔Wは、微小器官の幅を決定する。その後、図4Dに示すように、微小器官マスク416を刃から持ち上げる。このことにより、さらなるプロセスのために、微小器官の薄片を刃から取り去ることができる。上述した押し付けの動作は、押圧固定具により補助され得るか、またはサンプル・キャリアの上面にロッドを転がすことにより補助され得る。
【0122】
図5Aは、別の形状の微小器官を切断するための構造体を示す等角図である。図示するように、この構造体では、複数のブレード512は、互いに軸方向(ブレードの長手方向)にずらされた2つのグループに分けられている。各ブレードの間には、マスク416と同様の微小器官マスクが設置される。皮膚サンプルをブレードに接触させ押し付けると、皮膚サンプル(切断後は微小器官となる)は図5Bに示すパターン(形状)のように切断される。そして、微小器官マスク416をブレードから持ち上げると、微小器官518は各ブレード間から取り出されて微小器官マスク416上に載置される。図5Bに示すように、微小器官518は、曲がりくねった形状に切断される。
【0123】
上述した方法では、サンプルの全層は、直線構造体の「連結部」の両端部で連結される。一般的には、その後のプロセスで複数の線形片を一緒に保持することにのみ十分である構造体が実際には必要とされる。例えば、皮膚サンプルの場合は、表皮層だけを残せば十分である。1つのアプローチは、整列された同じ長さを有する複数のブレードを用いることである。好ましくは、組織サンプル・キャリアに凹部を形成し(図3Eのように)、凹部が形成された位置でブレードが組織を厚さ方向に完全に切断しないようにする。このことにより、組織の厚さ方向に部分的にのみ切断された連結部を形成することができる。
【0124】
前記構造体を展開すると(すなわち、前記構造体をその全長方向にいっぱいに伸ばすと)、微小器官は非常に長い構造(ほぼ平行6面体の形状)となる。このような構造体は元のサンプルと比較すると極端に長いので、本明細書では「超線形構造体」と呼ぶ。他の形状とすることも可能である。例えば、外植片を螺旋状のパターンで切断した場合は、図5で説明した方法で作成した構造体と類似する構造体が作成される。また、環状の構造体や、長方形の薄肉の構造体も、押し付けまたは切断により作成することができる。大型の微小器官構造体の別の変形例は、2つの隣接する線形微小器官をその両端で連結部によって連結した構造体であり、そのような構造体を広げると微小器官組織の環を形成することができる。
【0125】
図6(A)は、例示的なメッシュ状の微小器官600を示す概念図である。メッシュ部分の詳細は、図6(B)及び図6(C)に示す。
【0126】
図6中に見える表面は、皮膚層(角質層)の外面か、またはその反対側の内皮面(真皮下層)である。メッシュ構造体600は、その各部分が、周囲の栄養素溶液から栄養素を受け取ることができ、かつ前記栄養素溶液へ老廃物を排出できるような距離だけ表面から離間するように設計されている。また、メッシュ構造体600は、組織の取り扱い及び処理を容易にすべく、組織サンプル全体の一体的な結合を実質的に保つことができるように設計されている。さらに、前記構造体は、皮膚の表面または裏面の継続的な識別を可能にし、そのことにより、後述するように、微小器官またはTMOを適切な向きで移植することができる。
【0127】
図6(B)に示すように、前記メッシュ構造体の2つの要素間の連結部604の幅602(図6(C)参照)が、前記メッシュ構造体の腕部608の厚さ606(図6(B)参照)と同一になるように作成されている場合は、栄養素からの距離が、腕部608の最も内側の組織と栄養素との距離よりも遠い領域は非常に小さくなる。また、前記距離は、栄養素のソースから、わずかに離れているだけの距離である。幅602を狭くすれば、前記領域及び距離をさらに小さくすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、前記幅は、厚さ606と等しく形成される。また、前記幅は、厚さ606よりも狭い場合や広い場合もある。図6(B)に示すように、前記メッシュ構造体の各部分は、実質的に、直線状の微小器官と同様である。
【0128】
図6(A)〜6(C)に示したようなメッシュ構造体を作成する方法の1つに、組織サンプルの一部に、図7に示すよなパターン700を押し付ける方法がある。スリットの長さの連結部の長さに対する比率は、1:1から1:100までの広範な範囲を取ることができる。この比率により、メッシュの硬さと、伸張させ広げたときにメッシュが広がることができる度合いが決まる。(図4Aの器具414に対応する)押し付けて切断するための、例示的なブレードカートリッジ器具800を図8に示す。前記超線形構造体について上述した器具の代わりに、前記メッシュ構造体の一体的な結合に保つための十分な部分的厚さを有する連結部を形成するために特別に設計されたキャリアに、等しい長さのブレード(各ブレードは図5Aのように互いにブレードの長手方向にはずれていない)を使用することができる。
【0129】
上述したような超線形微小器官構造体及びメッシュ状微小器官構造体の両方は、微小器官自体または非微小器官組織の一部であり得る連結部で互いに連結された直線状微小器官の構造体と見なすことができることを理解されたい。
【0130】
図7に示すような構造体を形成すべく組織を押し付けた後、図6(A)に示したメッシュを形成すべく、前記組織を横方向に引き伸ばす。図7における各参照番号で示されるの要素は、図6(A)において同じ参照番号で示される要素に対応する。メッシュは、スリットが広げられてひし形の形状になるまで引き伸ばすことができる。或いは、メッシュは、最大に広げたときの大きさよりも小さい大きさに広げられる。
【0131】
図9Aは、「超線形」微小器官をプロセス中に保持するために使用される例示的な保持器具900を示す。この保持器具900の他の機能は、本発明の或る実施形態による、微小器官のバイオリアクタ内への導入及びバイオリアクタからの取り出しを容易にすることである。
【0132】
図9Aに示すように、保持器具900は略矩形(ただし曲線状である)の本体910を備えており、本体900には組織サンプルと同一の(あるいは組織サンプルよりも若干大きい)幅を有するスロット912が形成されている。スロット912は、微小器官の両側に、流体が自由に流れることを可能にする。
【0133】
本体910の側部には、クリップ914または微小器官を保持するためのその他の手段が、本体910の長さ方向(周方向)に沿って一定間隔で形成される。微小器官518が本体910に装填された後、微小器官518を保持すべく、クリップは閉じる。微小器官のクリップ内への初期配置は、微小器官の端部を真空保持器具で掴むことにより、効果的に行うことできる。第1のクリップ(914´で示す)は閉じており、微小器官を保持している。微小器官が本体910に保持されているときは、微小器官の一方の面が自由に露出しており、他方の面が前記スロットに対して露出しているため、微小器官の大部分は露出している。このことにより、微小器官はその周囲の流体若しくは物質と良好に物理的接触することができる。これにより、インビトロの期間中における、微小器官の生存性が向上する。また、最初のクリップと最後のクリップとの間のクリップは、微小器官上では閉じていない。むしろ、それらのクリップ(中間のクリップ)は開けたままにしておき、微小器官を左右に移動させ続ける。また、前記中間のクリップを、微小器官が横方向に滑動するのを防止するためのホルダの表面に対して垂直な他の要素と置き換えることもできる。
【0134】
図9Bは、プロセス中に、メッシュ状の微小器官を保持するために使用される例示的な保持器具960を示す。この保持器具960の他の機能は、本発明の或る実施形態による、微小器官のバイオリアクタ内への導入及びバイオリアクタからの取り出しを容易にすることである。
【0135】
図9Bに示すように、その中央部に開口部964を有するホルダ962上に、メッシュ型微小器官600が載置されている。開口部964の周縁部には複数のピン966が形成されている。メッシュ構造体600は上述したようにして引き伸ばされ、ピン966により開口部964内に保持される。なお、ピンまたはロッド型のホルダが図示されているが、メッシュ構造体の縁部を保持するように構成された他の種類のホルダ(例えばクリップなど)を用いることもできる。さらに、正方形の開口部が図示されているが、開口部の形状は、長方形、円形、または4つ以上の側辺を有する他の形状であってもよい。また、完全に広げた状態のメッシュ構造体が図示されているが、部分的に広げた状態のメッシュ構造体を用いると、他の形状及び大きさを有する微小器官を得ることができる。
【0136】
(微小器官のバイオリアクタ、及び遺伝子改変)
微小器官が作成及び載置されると、TMOを作成するために微小器官を遺伝子改変する準備が整う。
【0137】
一般的に、遺伝子改変は、タンパク質などの所望の治療物質の作成及び随意的に分泌を細胞に引き起こす選択された遺伝子を細胞内に導入する遺伝子操作を含んでいる。
本発明の例示的な実施形態では、上述したように、遺伝子改変の最中に微小器官を維持するプロセスの少なくとも一部及び遺伝子改変自体はバイオリアクタ内で行われる。
【0138】
バイオリアクタは、以下の性質のいくつかまたは全てを有していることが好ましい。
(1)栄養素とガスを微小器官内に拡散させ微小器官を生存させ続けることができるように、微小器官の表面に栄養素とガスを供給することができる。このことにより、微小器官のかなりの領域及び体積が、周囲の液体との接触を阻害されない。
(2)微小器官を所望の温度で維持することができる。
(3)微小器官の周囲を所望のpH及びガス組成で維持することができる。
(4)微小器官及びバイオリアクタから老廃物を除去することができる。
(5)挿入ベクターが周囲を汚染する危険性を実質的に伴わずに、遺伝子操作されたベクターを簡単な方法で挿入することができる。
(6)過剰な未使用ベクターを除去することができる。
(7)生成された治療物質の量を測定することができる。
(8)実質的に無菌の治療物質を取り出すことができる。
(9)微小器官を容易に挿入することができる、及び、全てのまたは測定された量のTMOを取り出すことができる。
【0139】
図10は、本発明の例示的な実施形態によるバイオリアクタ1000の概略断面図である。このバイオリアクタ1000は、簡単かつ有用なバイオリアクタの一例であり、究極的なバイオリアクタの上記した望ましい性質の全ては備えてはいない。図示したバイオリアクタ1000は、図9に示すようなホルダに保持されたメッシュ型微小器官と共に使用するのに適しているが、簡単な改変で超線形構造体及び従来技術の短線形構造体に使用することもできる。
【0140】
プラスチックまたはその他の非反応性材料からなる容器1002は、その底部に形成された凹部1004を有する。凹部1004は、ホルダ962(図9(B)参照)に保持された例えば微小器官600(図6(A)参照)などの微小器官を保持するのに適している。随意的に容器1002の最下部に設けられたドレイン1006は、バルブ1008によって制御される。
【0141】
容器1002には、入口ポート1010が設けられている。微小器官の生存に必要な栄養素溶液(例えば、グルタミン及び抗生物質を、随意的に溶解ガスと共に含んでいる微小量のDMEM)が、ポンプ1014によって栄養素貯留部1012から容器1002に供給される。
【0142】
また、容器1002には、容器1002内の過剰な栄養素溶液がオーバーフロー容器1018に溢れ出るように、オーバーフロー出口1016が設けられている。容器1002からの平均排出流量は容器1002への供給流量と等しいので、容器1002内では一定の水位が保たれる。容器1002内の機密性と無菌性を保つべく、容器1002は、適切な図示しないガスケット・システムにより取り付けられたカバー1020により覆われている。また容器内の無菌性を保つためにフィルター処理された空気の吸気口(または排気口)1021が、容器1002、栄養素貯留部1012及びオーバーフロー容器1018に設けられている。吸気口(または排気口)1021の主な役割は、圧力を均一に保つことである。また、容器1002の栄養素溶液上の、酸素及び/または他のガスの濃度が制御するために、容器102内における栄養素溶液の水位よりも上方の位置にガスフローシステムが随意的に設けられる。随意的に、栄養素貯留部1012または容器1002にガスをバブリング通気させることにより、栄養素溶液内にガスを溶解させることもできる。
【0143】
作動中は、微小器官600は容器1002に入れられる(図2の206参照)。1つの随意的な実施形態では、カバーを閉じたときに微小器官を容器内に正確に位置させるロッドにより、微小器官ホルダをカバー1020の下側に物理的に取り付けることもできる。容器1002には栄養素溶液1030が部分的に満たされ、容器1002内は室温に近い適切な温度に保たれる。新しい栄養素溶液が容器1002内に継続的に供給され、(出口1016から溢れ出る)栄養素溶液は微小器官により生成された老廃物の一部を運び出す。随意的に、微小器官への新鮮な栄養素溶液の定常流が存在するように、及び微小器官の近傍で老廃物が濃縮されないように、機械的または音波振動により或いは流体を栄養素溶液と混合させることにより栄養素溶液を攪拌する。
【0144】
あるいは、等しい比率の栄養素溶液を容器1002内に供給し、ドレイン1006から排出させる。ドレイン1006は微小器官の近くにあるので、及び、流れの方向は常に微小器官からドレイン口1006への方向なので、常に新鮮な栄養素溶液が微小器官に供給されると共に、老廃物が効果的に除去される。流入量と流出量は、栄養素溶液及びガスの必要な濃度が維持するのに十分な量にするべきであるが、微小器官により自然に生成される、最少培地で維持する際に微小器官の生存を維持するのに必要な成長因子を洗い流さない程度の量にするべきである。
【0145】
いずれにしても、随意的に、容器1002内に残る栄養素溶液は、グルコース、乳酸、アンモニア、溶解酸素、溶解酸二酸化炭素、及び他の栄養素(例えばアミノ酸)の量について定期的または継続的に検査される。前記量が望ましい範囲の外にある場合は、是正処置が取られる。
【0146】
微小器官のウイルス形質導入を助けることが判明している所定の待ち時間(典型的には約24時間)の後(または、随意的に、容器1002内に微小器官を入れるとすぐに)、栄養素溶液1030はドレイン1006を経由して除去され、ウイルスベクターを含む新しい栄養素溶液と取り替えられる。栄養素溶液は、微小器官を覆うだけの量であれば十分であるが、それよりも多い量を用いることもできる。随意的に、ウイルスベクターは、隔壁ポート1023から注射によって添加することもできる。代替的に、ウイルスベクターは、ポート1010に至るラインの設けられた三方向接続要素、及びポート1010を経由して供給することもできる。随意的に、栄養素溶液の一部だけを除去し、残りの栄養素溶液を、遺伝子挿入中に栄養素を供給するのに使用することもできる。
【0147】
随意的に、遺伝子改変のプロセス中は、栄養素溶液は交換しない。前記プロセスの完了後に、ウイルスを含んでいる栄養素溶液を容器1002から排出し、ウイルスの残留物を排出するために、溶液の充填及び排出を数回繰り返して容器1002を洗浄する。
【0148】
新しい栄養素溶液を追加して、潅流を所定期間(典型的には数日)継続する。このことにより、随意的に、分泌量の正確な特性、及び滅菌などのための試験を可能にする。
【0149】
随意的に、前記プロセスの全ての段階、特に、所定の待ち時間、形質導入、及び形質導入前の維持の段階において、振盪、揺動、転動、流体混合、音響振動などにより、微小器官を攪拌することができる。その後、例えばドレイン1006または出口1016から除去された液体中の治療物質の濃度を測定することにより、治療物質の分泌の進展を定期的に検査する。随意的に、分泌データに基づいて、是正処置を取る(例えば、さらなる潅流を行う)。
【0150】
さらに、一旦、微小器官由来の所望の物質の分泌レベルが分かると、この情報を適切な薬物動態学的モデル及び/または人口統計と共に用いることにより、所望の治療効果を達成するために対象に戻すのに必要な微小器官/TMOの量を決定することができる。TMOは、生存を保ち、血管新生し、活性的な生理学的機能を維持することができるように患者の皮膚にまたは皮膚下に或いは他の組織に移植され、安全で効果的な治療のための所望の量で前記物質を長期間生成し送達する。本発明のいくつかの実施形態では、微小器官/TMOは、元の組織サンプルを採取した対象と同一の対象に移植される(自己移植)。別の随意的な実施形態では、微小器官/TMOは、元の組織サンプルを採取した対象とは異なる対象に移植される(非自己移植)。移植についての詳細は後述する。
【0151】
(微小器官/TMOの移植)
本発明の実施形態によるTMOの移植は、比較的簡単かつ効果的であることが証明された。
【0152】
移植する前に、TMOの一部をバイオリアクタから取り出し、移植のために準備する必要がある。図9A及び9Bの例では、TMOが載置されたホルダ962(または900)をバイオリアクタから取り出し、TMOの所望の部分を移植ために取り出す。取り出すTMOの量は、バイオリアクタで計測された分泌量に基づいて決定される。
【0153】
TMOの全治療潜在能力は、随意的に、治療タンパク質を必要としている対象にTMOを移植することにより達成される。この移植方法は、有効性及びTMOを使用した治療における可能性のある副作用に対して、著しい効果がある。
【0154】
TMOの効果を最大化するためには、TMOから分泌される治療たんぱく質の利益を最適化するような方法で、前記組織を患者に導入すべきである。例えば、TMOは、タンパク質の局所的な送達が必要とされている領域に移植することができる。または、TMOは、全身に送達されるように(または全身への送達が最適化されるように)移植することができる。随意的に、移植される組織は、前記移植処置中にいかなる方法によっても改変されないまたは損傷されない。そのような損傷は、治療効果に影響を及ぼすからである。さらに、いくつかの実施形態では、好ましくは形成外科や皮膚科などの専門的技術を必要とせずに行うことができるように、移植処置は簡略化されることが望ましい。また、移植処置は、素早く、かつ、治療される患者にとっての痛みが最小限となるように行われるべきである。
【0155】
移植するTMOの数と大きさにより、治療物質の用量を制御することができる。患者内での分泌量を調節するために、TMOの全体または一部を移植または除去/中和することができる。それぞれ異なる治療物質を生成する複数のTMOを移植することも可能である。
【0156】
線形TMOを移植するための1つの方法と、TMOを皮下移植するための2つの方法を以下に説明する。
【0157】
(線形TMOの移植)
図11は、ある長さのTMO1112を、皮膚表面1106内の切れ目(スリット)1104に移植するための器具(移植用器具)1102を示す。図11に示すように、移植用器具1102には複数の孔1108が形成されており、菅1110を介して図示しない真空源に接続されている。孔1108は、TMOの角質層の縁部を真空吸引で保持することにより、TMO1112の長さを保持する。この真空保持器具は、TMO1112をスリット1104に導くのに使用される。
【0158】
線形TMOは、被移植部位に適切な深さ及び長さの切れ目を形成し、その切れ目に線形TMOを挿入し、前記切れ目をその中に挿入されたTMOで塞ぐことにより、患者の皮膚上へ移植することができる。移植されたTMOは、被移植部において皮膚と一体化する。最良の結果を得るために、TMOの向きは、TMOの角質層、表皮及び真皮層が、周囲の皮膚組織の対応する層とぴったりと一致するような向きにすべきである。随意的に、切れ目を形成するために使用される外科用メスは、切れ目の深さを制御する器具(開切用器具)に保持される。切れ目の形成に使用されるこの開切用器具は、切れ目の長さを規定する窓を有し、切れ目を作成する前に皮膚の周囲をわずかな圧力で押さえる手段を提供する基板を有する。開切用器具は前記基板上に置かれ、切れ目の深さが正確に規定されるように、外科用メスの先端を基板の下方に約1mm突出させる。一旦、切れ目が作成されると、開切用器具を取り除き、開切用器具の代わりに、真空保持器具(移植用器具)の正確な方向への下降を案内するために使用されるガイドを配置する。このガイドにより、移植用器具に保持された線形TMOを切れ目1104内に正確に挿入することができる。一旦、線形TMOが切れ目に挿入されると、移植された線形TMOの周囲の切れ目が閉じるように組織の周辺への圧力が緩和され、随意的に、創傷部位が閉じられた状態を保つために若干の圧力が加えられる。この段階では、真空は停止され、真空保持器具(移植用器具)は基板と共に取り除かれる。
【0159】
治癒期間中に、移植片が周囲に押し出されたり露出したりしないように、創傷部位に包帯を巻くことは確実に行うべきである。随意的に、包帯を巻く際は、移植片を一定の位置に保つため及び皮膚への一体化を助けるために、移植片に適度な圧力が加えられる。移植されたTMOによって生成されたタンパク質は、皮膚組織中に分泌し、真皮及び皮下に入る。TMOは自己皮膚サンプルなので、拒否反応の心配はない。
【0160】
(線形TMOの皮下移植)
皮下に移植されたTMOは、(外に押し出されることなく)一定の位置に留まり、軽度の外傷から保護される。このような皮下移植は、グラフト処置の場合よりも皮膚への外的損傷が少なく、痛みも少なく、見栄えも良い。この皮下移植手法は、外科的に切断する手法よりも注射に近い。
【0161】
この皮下移植方法では、移植スペースを介して、皮膚の切れ目にカテーテルが挿入される。随意的に、カテーテルは、その鋭利な先端が挿入側の反対側から皮膚の表面に出るように挿入される。皮膚下に挿入されるカテーテルの既知の長さを確実にするために、患者の皮膚における被移植部位を機械的手段(例えば真空吸引や両面テープ)を用いて持ち上げ、この皮膚の突出部分の基部にカテーテルを貫通させる。前記基部の長さは、真空を生成する器具の大きさや、使用される両面テープの大きさにより規定される。
【0162】
一旦皮下に移植されると、TMOは移植スペースにおいて、皮下スペース内の細胞内液と接触し、全ての分泌したタンパク質が皮下スペース内に到達する。この皮下スペースは、治療タンパク質を大量注射する際の注射する場所と同じ場所である。
【0163】
図12A〜Dは、本発明の一実施形態による皮下移植方法の一連のステップを示す。この方法では、移植に備えて、まず、TMO1202を、例えばチタン製クリップ又はその他の締結用手段を用いて外科用の針1204またはその他の類似する針に取り付ける。次に、カテーテル1206を皮膚1208の下に挿入する。このとき、カテーテルの先端が、挿入側の反対側に突き出ないようにする(図12A参照)。糸は、剛性または柔軟性であり、吸収性を有しまたは有さず、任意の生体適合性材料から作製され、かつ、様々な範囲の直径を有する。糸の全長はカテーテルの長さよりも長く、糸の先端部には尖った構造の針1203または針状の物体が取り付けられる。糸が取り付けられた針1204とそれに保持されたTMO1202をカテーテル1206内に導入し(図12B参照)、カテーテルの先端を越えて、皮膚を貫通させる。その後、TMO1202が皮膚下の皮下スペース内に正確に位置するまで、針1204を引っ張る(図12C参照)。施術者は、糸とTMOを適所に残したまま、カテーテル1206を引き出すまでの間、針及び/または糸を保持する(図12D参照)。その後、糸の一端が皮膚から若干突出するように、或いは糸の両端が皮膚から若干突出するように、糸を切断する。
【0164】
糸は、TMOの位置をマークするのに役立ち、このことにより、TMOの位置の識別を、その後に、タンパク質治療の調節と停止のために必要に応じて行われるTMOの除去が容易になる。重要なのは、糸が、TMOの皮膚が生成したケラチンを皮下スペースから外に排出することができる経路を提供することである。TMOの角質層から剥がれ落ちたケラチンは、TMOが皮下移植された領域に蓄積され、封入嚢胞の形成を引き起こす。糸の存在は、ケラチンが糸の長手方向軸に沿って体外へ流れ出ることを可能にする。ある状況では、TMOの表皮が糸の周囲に表皮細胞を生成し、糸の周囲にケラチンの安定した経路が形成される。
【0165】
上述した方法の1つの変形例としては、カテーテルの先端が皮膚の反対側に突き出るように、カテーテルを皮下スペースに挿入する。縫合針は、その後、手術用糸の先端に取り付けられ、その後、針にTMOが取り付けられる。この方法の残りの部分は、上述した方法と同じである。
【0166】
他の形態では、糸は、フック状の突起に形成される。TMOが取り付けられた、針を必要としないこの糸は、カテーテルを皮下スペースに挿入する前に、カテーテル内に配置される。上述したように、カテーテルは、皮膚の反対側に突き出ないように挿入される。カテーテルを皮下スペースに挿入すると、カテーテルはすぐに引き出される。このとき、糸のフックは、糸がカテーテルと共に引き出されることを防ぐ。
【0167】
一般的に、皮下移植方法では、TMOは、カプセル化または膜で包むことも、カプセル化しないこともできる。前記膜は、栄養素、老廃物及び治療物質の通過を可能にする程度に十分に大きく、かつ、免疫系の細胞を通過させない程度に十分に小さいサイズの細孔を有する。
【0168】
図13A〜Eは、本発明の一実施形態による、第2の皮下移植方法の一連のステップを示す。
【0169】
この方法は第1の皮下移植方法と類似しているが、糸は使用しない。この方法では、上述したように、その先端が皮膚の反対側(挿入側に対する反対側)に突出するように、空のカテーテル1302を皮下スペースに挿入する。真空保持器1304をカテーテル内に挿入し、カテーテル1302の出口においてTMO1306の一端を保持する(図13A)。また、別の真空保持器1308によりTMO1306の他端を保持する。TMO1306がカテーテルの内部に位置するように、両真空保持器1304・1308を同時に動かす(図13B、13C)。そして、両真空保持器でTMOを保持した状態で、TMO1306だけが皮下スペース内に位置するように、カテーテル1302を引き出す(図13D)。この位置では、TMO1306の両端は皮膚の表面から突き出ている。その後、外科用メスを使用して、皮膚の被移植部位において、TMOの各端部及びそれに隣接する部分に1つずつ短い切れ目を作成する。そして、真空吸引を中止し、真空保持器を引き離す。その後、TMOの突出端を、上述した線形TMOを移植する方法と同様に、皮膚の互いに隣接する複数の切れ目に移植する(図13E)。
【0170】
この方法では、前記2つの端部でTMOが移植された部分は、TMOの位置を示すマーカとしての役割を果たす。さらに、TMOの皮膚の角質層は、それ自体がケラチンを体外に流出させる経路を形成する。糸と同様に、TMOの表皮は角質層のケラチンの周囲に表皮細胞を形成するので、TMOの角質層の周囲に安定したケラチン経路が形成される。ケラチンは、この経路を経由して分泌するため、TMOの近傍における封入嚢胞の形成が防止される。
【0171】
移植しない微小器官/TMO材料は、例えば移植材料の効果が或る要求量よりも減少した際などのその後の使用のために、冷凍保存することができる。
【0172】
代替的に、前記栄養素材料から物質を抽出し、精製し、注射またはその他の投与方法により対象に投与することもできる。
【0173】
(TMOの除去または中和化)
治療用の微小器官/TMOの利点は、治療物質を分泌する組織が、身体の特定の位置に局所的に配置されることである。そのため、何らの理由により治療を終了する際は、この組織を単純に除去するだけで、タンパク質の供給を中止することができる。また、移植された組織は、後述するようにして、除去するまたはその機能を中止させることができる。
【0174】
微小器官/TMOの位置を視認するための参照点は、移植された場合はTMOそれ自身により、又は皮下移植された場合は糸により、あるいはTMOと共に埋め込まれた任意のその他の物質により提供される。例えば、TMOの両端に蛍光性ビーズを埋め込み、その蛍光光源によりTMOの位置を特定することもできる。同様に、超音波、X線、MRIまたはその他の可視化ソースにより可視化することができる材料や、磁気特性を有する材料を使用することができる。
【0175】
移植後は、微小器官/TMOは、外科用メスまたはその他の切断手段により、外科的に除去することができる。また、除去する代わりに、TMOをその位置で、レーザー、低温、ラジオ周波数、及びマイクロ波エネルギーなどの外部エネルギーによって、TMOの細胞の一部または全部をアブレートすることもできる。これらの中和方法の実施形態は、皮膚表面に形成された移植片の経路に沿って、微小器官/TMOの近傍にプローブを導入することを含む。前記プローブは、TMO領域にRFまたはマイクロ波放射を行うことができる、又はTMO細胞を殺滅するためにその周囲の少量の組織を冷凍温度まで冷却させることができる。
【0176】
皮下に移植した場合、外科用メスまたはその他の切断手段により、TMOを外科的に切断することもできる。例えば、移植された組織を周囲の最小限の宿主組織と共に除去するべくTMOの経路をたどるために、コアリング器具を用いることもできる。ある実施形態では、プローブは、移植片の経路に沿って導入される。このプローブは、例えば、TMOの近傍に高温を提供するためにRFエネルギーを伝達させるために使用することができる。このことにより、TMO細胞の大部分に著しい損傷を引き起こし、タンパク質の分泌を中断させることができる。
【実施例1】
【0177】
SCIDマウスに移植された、マウスインターフェロンアルファ(mIFNα)を発現するヒト皮膚TMO
【0178】
おなかの脂肪を取る(tummy-tack)外科手術で得られた新鮮な皮膚組織サンプルから、ヒト皮膚微小器官を作成した。1.4〜1.5mmの皮膚厚さ(深さ)の切片を取り出し、次亜塩素酸溶液(10%ミルトン溶液)を用いて清浄した。無菌環境下で、組織切断装置(Sorval, Du-pont instruments社製のTC−2型チョッパー)を使用して、清浄された皮膚サンプルを450μmの切片(幅)に分割した。その結果得られた微小器官を、各ウェルあたり400μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する48ウェルのマイクロプレートの各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。その後、治療用微小器官(TMO)を生成するために、マウスインターフェロンアルファ(アデノ−mIFNα)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x1OIP/ml)を使用して、各ウェルの形質導入手順を行った。その後、TMOを、各ウェルあたり400μlのDMEMで再び維持した。この培地は2〜3日ごとに交換し、特定のELISAキット(Cell Science Inc社製のCat. # CK2010-1)を用いて、分泌されたmIFNαの存在について分析した。上述したヒト皮膚mIFNαTMOを、複数のSCID(重症複合免疫不全)マウスに皮下移植した。ヒト皮膚mIFNαTMOが移植されたマウスは、数週間に渡って、血清中に高レベルのインターフェロンアルファが検出された。それらSCIDマウスの血清中に検出された分泌mIFNαをウイルス細胞変性阻害アッセイによって分析すると、生物学的に活性であることが分かった(データは示さず)。図14Aは、移植前のインビトロでのmIFNαTMO分泌と、移植後の血インビボでの血清レベルとの間の相関分析を示すものである。この相関データは、移植前に測定されたインビトロでの分泌レベルを、所望の治療効果を達成するために移植されるTMOの投与量の計算に使用できることを示す。
【0179】
図14Bは、SCIDマウス内のヒト皮膚TMOによって生成され送達されたmIFNαと共に対象に注射された、様々な遺伝子組み替え型治療タンパク質の薬物動態性を示すものである。この値は、注射されたタンパク質の標識またはSCIDマウスの血清のいずれかからTMO技術により得られた比較タンパク質の血中濃度を示しており、各タンパク質についての各Cmaxのパーセンテージとして表されている。
【実施例2】
【0180】
マウスインターフェロンアルファ(mIFNα)を発現するヒト皮膚TMOは、タンパク質出力について患者間の高再現性を示す。
TMOを作成し、上述したような標準的(最適化されているわけではない)手順を用いて、1×10IP/mlのアデノウイルス価を有するAd5/CMV−mIFNαベクターによって形質導入した。形質導入は、微小器官を作成した24時間後に実施された。形質導入の6日後に、特定のELISAキット(Cell Science Inc社製のCat. # CK2010-1)を使用して、インビトロでのmIFNα分泌について培地を検査した。図15は、異なる患者由来の異なる回数処置された皮膚サンプル間の差異が極めて小さいことを示している。ヒト患者間の差異が低いことは、所望の治療効果を得るために移植されるTMOの投与量及び力価の計算するための特定の使用において十分に比較可能なタンパク質分泌レベルを、患者から採取した標準サイズ皮膚サンプルから得ることが可能であることを示す。
【実施例3】
【0181】
SCIDマウスに移植された(再移植を含む)、ヒトエリスロポエチン(hEPO)を発現するヒト皮膚線形TMO
【0182】
線形(長さ20mm、幅0.4μm)のヒト皮膚微小器官を、おなかの脂肪を取る外科手術により得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。0.85〜1.1mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられたグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0183】
線形微小器官を作成するために、上述したブレード構造を用いたプレス装置で、上記の組織サンプルを20mm×400μmの所望寸法に切断した。その結果得られた微小器官を、各ウェルあたり400μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する48ウェルのマイクロプレートの各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。治療用微小器官(TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は2〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Cell Science Inc社製のCat. # CK2010-1)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。
【0184】
上述したヒト皮膚hEPO線形TMOを、複数のSCID(重症複合免疫不全)マウスに皮下移植した。図16から分かるように、ヒト皮膚hEPO線形TMOが移植されたマウスは、数週間に渡って、血清中に高レベルのエリスロポエチンが検出された。それらSCIDマウスの血清中に検出された分泌hEPOは、ヘマトクリット値の上昇から分かるように、生物学的に活性であることが判明した。移植後70日間に渡って、複数のマウスに対して追加的な線形hEPO TMOの2回目の移植を実施した。このことにより、より長いhEPO分泌が達成され、より長期間の持続的な治療効果が得られた。
【実施例4】
【0185】
SCIDマウスに様々な用量で移植された、ヒトエリスロポエチン(hEPO)を発現するヒト皮膚線形TMO
【0186】
線形(長さ30.6mm、幅0.6μm)のヒト皮膚微小器官を、おなかの脂肪を取る外科手術により得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。0.85〜1.2mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられた、グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0187】
線形微小器官を作成するために、上述したブレード構造を用いたプレス装置で、上記の組織サンプルを30.6mm×600μmの所望寸法に切断した。その結果得られた微小器官を、各ウェルあたり500μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する48ウェルのマイクロプレートの各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。治療用微小器官(TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は2〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Quantikine IVD, R & D Systems社製のCat. # DEP00)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。
【0188】
上述したヒト皮膚hEPO線形TMOを、3種類の投与量(マウス1匹あたり、1〜3個のTMO)で複数のSCID(重症複合免疫不全)マウスに皮下移植した。図17から分かるように、ヒト皮膚hEPO線形TMOが移植されたマウスは、数週間に渡って、血清中に高レベルのエリスロポエチンが検出された。さらに、複数のマウスに見られる血中濃度は移植された線形TMOの数との間に相関関係を有しており、投与量に対応する効果が得られた。SCIDマウスの血清中に検出された分泌hEPOは、ヘマトクリット値の上昇から分かるように、生物学的に活性であることが判明した。
【実施例5】
【0189】
ヒトエリスロポエチンを発現する、ミニブタの皮膚の線形TMOの自己移植(免疫適格動物へのhEPO移植)
【0190】
線形(長さ30.6mm、幅0.6μm)のミニブタの皮膚微小器官を、一般的な麻酔手順下で生きている動物から得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。0.9〜1.1mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを市販の植皮刀(Aesculap GA630)を用いて取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられた、グルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0191】
線形微小器官を作成するために、上述したブレード構造を用いたプレス装置で、上記の組織サンプルを30.6mm×600μmの所望寸法に切断する。その結果得られた微小器官を、各ウェルあたり500μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する48ウェルのマイクロプレートの各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。ミニブタの治療用微小器官(ブタ皮膚TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は2〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Quantikine IVD, R & D Systems社製のCat. # DEP00)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。
【0192】
上述したミニブタ皮膚hEPO線形TMOを、複数の免疫適格ミニブタに皮下移植及び皮膚移植した(2匹のミニブタに対してTMO−hEPOを皮下移植し、別の2匹のミニブタに対してTMO−hEPOを深さ1mmのスリット内に移植した)。十分な数のTMO−hEPOを各ミニブタに移植し、各ブタにおけるそれらの組み合わされた移植前の分泌レベルが、1日あたりおよそ7μgとなるようにした。ELISA分析によって分かった血清hEPOレベルの上昇(図18A)、及び網状赤血球数の増加(図18B)は、移植後7日間に渡って得られた。図18A及び18Bは、生理学的に活性化された治療量の(エリスロポエチン効果)hEPOのブタ血清への送達を示す。
【実施例6】
【0193】
インビトロでヒトエリスロポエチン(hEPO)を発現するヒト皮膚の線形TMO及びメッシュTMO
【0194】
線形皮膚微小器官(長さ28mm、幅0.6μm)及びメッシュ皮膚微小器官(各メッシュ断片幅0.6μm)を、おなかの脂肪を取る外科手術により得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。0.85〜1.2mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられたグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0195】
線形微小器官及びメッシュ微小器官を作成するために、上記の組織サンプルから、図4Aに記載のブレード構造を用いたプレス装置によって線形微小器官を作成し、図8Aに記載のブレードカセットによってメッシュ微小器官を作成した。その結果得られた線形/メッシュ微小器官を、各ウェルあたり500μl/1000μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する48/24ウエルのマイクロプレートの各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。治療用微小器官(TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は3〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Quantikine IVD, R & D Systems社製のCat. # DEP00)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。図19Aから分かるように、hEPOタンパク質は、形質導入後31日間に渡ってインビトロ分泌が検出された。
【実施例7】
【0196】
インビトロでヒトエリスロポエチン(hEPO)を発現するヒト皮膚の線形TMO及び超線形TMO
【0197】
線形ヒト皮膚微小器官(長さ20mm、幅0.6μm)及び超線形ヒト皮膚微小器(長さ15mm、幅0.6μm)を、おなかの脂肪を取る外科手術により得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。0.85〜1.2mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられたグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0198】
線形微小器官及び超線形微小器官を作成するために、上記の組織サンプルから、図4Aに記載のブレード構造を用いたプレス装置によって線形微小器官を作成し、図5Aに記載のブレードカセットによって超線形微小器官を作成した。その結果得られた微小器官を、各ウェルあたり3750μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する各ウェル(線形)に1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。治療用微小器官(TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は3〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Quantikine IVD, R & D Systems社製のCat. # DEP00)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。図19Bから分かるように、hEPOタンパク質は、形質導入後14日間に渡ってインビトロ分泌が検出された。
【実施例8】
【0199】
インビトロでヒトエリスロポエチン(hEPO)を発現する、新規の皮膚採取器によって採取した皮膚サンプルに由来するヒト皮膚線形TMO
【0200】
線形ヒト皮膚微小器官(長さ30.6mm、幅0.6μm)を、おなかの脂肪を取る外科手術により得た新鮮な皮膚組織サンプルから作成した。図3A〜3Eに記載の皮膚採取器を使用して0.9〜1mmの切断皮膚厚さ(深さ)の組織サンプルを取り出し、ペトリ皿(90mm)に入れられたグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシンンを含有するDMEMを使用して清浄した。
【0201】
線形微小器官を作成するために、上記の組織サンプルから、図4Aに記載のブレード構造を用いたプレス装置によって線形微小器官を作成した。その結果得られた線形微小器官を、各ウェルあたり500μlのDMEM(Biological Industries社製のBeit Haemek)を含有する各ウェルに1つずつ配置し、摂氏37度、CO5%雰囲気、血清が存在しないという条件下で24時間培養した。治療用微小器官(TMO)を作成するために、ヒトエリスロポエチン(アデノ−hEPO)のための遺伝子を有するアデノウイルスベクター(1x10IP/ml)を使用して、プレートを攪拌しながら24時間に渡って各ウェルの形質導入手順を行った。前記培地は3〜4日ごとに交換し、特定のELISAキット(Quantikine IVD, R & D Systems社製のCat. # DEP00)を用いて、分泌されたhEPOの存在について分析した。図19Cから分かるように、hEPOタンパク質は、形質導入後23日間に渡ってインビトロ分泌が検出された。
【0202】
(密閉された無菌微小器官処理カセット)
図20〜39は、組織採取から始まり対象への移植で終わる微小器官/TMO処理の全ての段階での処理に使用されるカセットモジュールを説明するものである。説明されるカセットモジュールでは、上述した種々の機能は無菌環境で実行され、モジュール間での微小器官/TMOの運搬は効率的、無菌かつ制御可能な方法で実行される。
【0203】
図20は、主カセットモジュール2000を示し、モジュールは見易いように分離されている。主モジュールは、組織採取器2002、微小器官モジュール2010、バイオプロセッシングモジュール2020、流体モジュール2040である。各モジュールは、プラスチック製または他の生体適合性の材料からなるハウジングを含む。一般的に、組織採取器2002は組織を採取するときは前記カセットの残りの部分から取り外され、その後、採取した組織を運搬するために微小器官モジュール2010に取り付けられる。各モジュールの組は、バーコードなどの方法で識別される所与の対象及び所与のサンプルに対してユニークである。使用後、モジュールは廃棄されることが好ましい。
【0204】
図21及び22は、採取器2002の動作及び詳細を示す。
【0205】
外来診察室や手術室などの臨床的な無菌環境において、皮膚採取器2002を用いて対象から皮膚サンプルが採取される。採取器2002は、随意的に、それに搭載された電源または別体の電源モジュール(図示せず)の電源のいずれかにいって電力供給されるが、医学的に分離された電源などによっても電力供給され得る。
【0206】
図3に関連して上述したような組織採取装置の設計原理に従って、採取器2002は、専用ポータブル真空源であるかあるいは非可動式据付真空源から誘導され得る真空源2102を用いる。標準手術部位の作成はドナー部位で行われ、局所麻酔薬が投与される。
【0207】
ベースプレート2412上にポート2116が開口され、無菌組織採取器への唯一の開口部である窓2120が形成される。そして、無菌組織採取器は、皮膚表面2114が窓2120から突出するように十分な圧力を供給する手段(図示せず)と共に、対象の所望の位置に取り付けられる。
【0208】
プランジャ2106は、皮膚に接触させる必要がある場合に、気密ハウジング2105内で無菌ブッシング2104を通って下方に下降させられ、皮膚の表面をサンプル・キャリアの表面に対して平坦に保持すべく、サンプル・キャリア2108及びアクセス孔2110を介して真空が加えられる。
【0209】
サンプル・キャリアの接触面の垂直方向の位置はプランジャによって位置決めされ、所望の厚さの皮膚サンプルを切るために、ブレードの切断エッジの上方に所望の距離を隔てて維持される。
【0210】
ブレード2118(端部を図示する)は、随意的にモータ2122によって左右に振動させながら、組織(例えば皮膚)を切るために、例えばねじ駆動装置2126によって前進させられる。駆動装置2126は、図示しないモータによって駆動される。
【0211】
図22は、ポート2116が閉位置にあるときの、キャリアに取り付けられた採取された皮膚サンプル2202を示す。組織採取器モジュールは、無菌方法で再び密封され、微小器官モジュールへの微小器官の運搬及び移動の準備が整っている。
【0212】
図23〜25は、本発明の一実施形態による、皮膚サンプルからの微小器官の形成を示す。
【0213】
キャリア上に皮膚サンプルが取り付けられた閉鎖状態の採取器2002は、その後、図23に示すように、気密ガスケット2304を介してクリップ2302によって微小器官モジュール2010に着脱可能に取り付けられる。採取器モジュールの配置位置の平面図は図20に2014で示されている。
【0214】
微小器官モジュール2010において、トリミングカートリッジ2320は、典型的には、超線形微小器官の個別の断片の所望長さ(典型的には30mm)で離間されかつベース2321によって支持された2つの平行ブレード2318を含む。随意的に、トリミングカートリッジ2320は、サンプルの長さ及び幅の両方の寸法を描くような長方形をなす4つのブレードを含む。
【0215】
トリミングカートリッジ2320は採取器2002のサンプル・キャリアと整列させられ、採取器のポート2116及び微小器官モジュールのポート2306は開いている。
【0216】
切断及び運搬プロセス中に組織サンプルを湿潤に保つために用いられる湿潤剤は、ディスペンサ(図23には示されていないが、図29の平面図に見られる)を経由して、トリミングカートリッジ及び切断カートリッジの両方に送達される。
【0217】
プランジャ2106は、カートリッジ2320に対して駆動され、ブレードが皮膚をキャリアの真下の位置まで切り、そのことによって皮膚サンプルの2つの縁部がトリミングされる。
【0218】
真空が維持される間、プランジャ2106はブレード2318の真上の高さまで後退させられ、そのことによってトリミングされたサンプル及び切り代の両方をキャリアに対して保持する。
【0219】
図4及び5に関連して上述した組織採取装置の設計原理に従って、切断カートリッジ2321は、多数の平行な切断ブレード2330を含む。各切断ブレード2330は、支持ベース2322に載置されたスペーサ2331によって離間されている。また、奇数ブレードを対応する偶数ブレードに対して、典型的には微小器官の幅と等しい距離だけ(典型的には数百μmの範囲)軸方向にずらして配置している。
【0220】
取外し可能なマスク2328が各ブレード2330間に挿入され、オフセット2324に対して昇降するブラケット2326によって所定位置に保持される。ブラケット2326は随意的に例えば圧縮ばねなどの圧力に逆らって所定位置で留められ、ラッチ(図示せず)によって適所に保持される。
【0221】
トリミングカートリッジ2320及び微小器官カートリッジ2321は、微小器官カートリッジ2321がキャリアと整列するように、ねじ駆動装置2233によって駆動される。
【0222】
プランジャ2106は、図24に示すように、それが皮膚をキャリアの真下まで切断するまでブレード2330に対して駆動される。
【0223】
プランジャ2306を上に上昇させ、典型的には図25に示すような、2010に取り付ける前の初期開始位置へ戻す。
【0224】
マスク2328は、圧縮ばねを保持するラッチ(図示せず)の解放によって始動される圧縮ばねの反動などのいくつかの手段の1つによって上昇させられるブラケット2326によってブレード2330の上方に持ち上げられる。ラッチの解放は、とりわけ、切断カートリッジによる切断中にプランジャからの圧力によって行うことができる。
【0225】
結果として得られる超線形微小器官2502は、運搬の準備ができた既知の位置及び向きでマスク2328の上部に載置される。キャリア2108はこのときトリミングされた組織の端部を保持し、マスク上に超線形微小器官を維持することに留意されたい。
【0226】
図26〜28を参照すると、図20にも示したバイオプロセッシングモジュール2020の詳細が示されており、そこへの微小器官の運搬について詳細に説明する。バイオプロセッシングモジュール2020は、その内部にポート2024が形成されたハウジング2021を含む。ハウジング2020内には、後述するようにして、載置機構2602が回転可能に設置される。また、ハウジング2020には、流体モジュール2040からモジュール2020内の要素にパワーを伝えるための複数の流体ポート2023も形成されている。また、ハウジング2020には、モジュール2010のハウジング内の対応する孔2013と結合する載置ピン2027が形成されており、シーリングガスケット3037の助けを借りて2つのモジュールを密閉する。
【0227】
また図20には、モジュール2010に引き込まれた真空ガイド2011が示されている。
【0228】
載置機構2602の詳細は、図26及び27に示されている。機構2602は、内部回転機構2702と回転微小器官ホルダ2704とを含む。内部回転機構を回転させることによってリリースされるような真空ピックアップリード2604が内部回転機構に取り付けられている。
【0229】
図26は、モジュール2010と2020の間での微小器官の運搬を概略的に示す。ポート2025及び2306は、開放されている(図示されてはいない)。真空ガイド2011はモジュール間のポート領域に開始位置を有し、真空ピックアップリード2604は、そのピックアップ2606位置がマスク2328上に載置された微小器官2502から若干離間する位置に位置決めされるように、真空ガイド2011上に載置されている。微小器官2502を把持するために、内部回転機構2702は時計回りに僅かに回転し、それによって微小器官2502の側面に隣接する真空ピックアップ2604を押して、真空ピックアップ2604が微小器官の端部と重なるようにする。内部回転機構2702を反時計回りに回転させ、真空ガイド2011上に案内することによって、真空ピックアップ2606は駆動され、ピックアップリードはモジュール2020に引き込まれる。ここで、真空ガイド2011は、真空ピックアップリード2604に微小器官2502が結合された後に、両者の結合を保つのに十分な真空圧のみを有する。微小器官の先端が回転微小器官ホルダ2704に到達したとき、先端は断片載置部2610上に載置される。断片載置部2610(拡大したものを拡大円に示す)は、少なくとも2つの閉止部分2608と随意的に伸張性のクロスバー2614(後述する)とを含み、さらに、アイ2612(機能は後述する)を随意的に含む。一旦、微小器官が微小器官ホルダ2704に到達すると、内部回転機構2702及び外部回転機構2703が1つのユニットとして共に回転することができるように内部回転機構2702は外部回転機構2703に対してロックされる。このことにより、微小器官ホルダ2704は反時計回りに回転し、微小器官を微小器官ホルダ2704上にロードすることができる。
【0230】
真空ガイド2011は、運搬中に器官の向きが維持され、ねじれないように、低レベルの真空を微小器官に加える。随意的に、真空ガイド2011は、その長さに沿って孔2630が形成された長方形チューブ(線A−Aに示される)の形状をなし、微小器官が真空ガイド2011の側面と緩やかに付着する際に微小器官が前記側面に沿って摺動するのに十分な僅かな真空が孔2630から加えられる。
【0231】
随意的に、微小器官を整列させかつ微小器官の湾曲を防止するようなアライメント部材2632が取り付けられる。また、ガイド2011においてリード2604の位置を維持する凹部が設けられる。
【0232】
回転微小器官ホルダ2704には、それぞれ微小器官の1つの断片の長さであるような一連の断片載置部2610(拡大したものを拡大円に示す)が設けられ、載置部2610の各端にクリップ2608が1つずつ設置される。このことにより、微小器官ホルダが回転すると、微小器官断片の一方の端部は断片載置部の一端のクリップ上に載置され、微小器官断片の他方の端部は、断片載置部の他端のクリップ上に載置される。断片載置部が閉鎖機構2616を通過すると、閉鎖機構は回転し、断片載置部の端部でクリップ2608を閉じる2つのパドルを上昇させる。一旦、微小器官が完全に保持されたら、真空ピックアップ及び真空ガイドの真空を解放することができる。微小器官ホルダ2704に微小器官2502をしっかりと載置したまま、ガイド2011はねじ駆動装置により駆動されて、その後閉じられるポートを通過するまで微小器官カセット2010内に後退させられる。微小器官モジュール2010及び組織採取器モジュール2202は、その後、廃棄され得る。
【0233】
図28−Aは上記プロセスの側面図であり、図28−Bは断片載置部上に取り付けられた微小器官を示す。
【0234】
バイオリアクタベース2802は、超線形微小器官ホルダ2704がベース2802の内面上に載置されるまで上昇させられる。ベース2802は、例えばカップリング2808を介してモータ2806によって駆動される支持板2805によって上昇させられる。一実施形態では、超線形微小器官をその内部に保持するベースは、カバーで覆われない。随意的に、撹拌によるバイオリアクタ内での流体の跳ねを防止するために、あるいは気化を低減するために、必要に応じてベースをカバーで覆うこともできる。カバーは、ペトリ皿などのベースを覆う遊嵌カバーであり得るか、あるいはバイオリアクタ全体を密封する気密封止カバーであり得る。カバーは、硬性プラスチック製材料またはその他の生体適合性材料で製造され得るか、あるいは、気体透過性(通気性)、液体非透過性膜またはその他の種類の膜などの膜で製造され得る。通気性膜は、前記バイオリアクタを取り囲む追加的チャンバ内のガス濃度によって、気体環境の制御を可能にするという付加的な利点を有し得る。カバーは、ブレード・アセンブリ3220(後述する)の下方または上方に設けることができる。
【0235】
図29は、一連のモジュールが設置された処理ステーション2900を示す。本発明の例示的な実施形態では、図示するように、制御モジュール2900の一部を有する左側部分にモジュールが設置されたとき、図23〜28に関連して上述した機能が実施される。モジュール2010、2020及び2040が明確に示されている。モジュール2002は、図20及び29に2014で示されるポートでモジュール2010に接続される。作動中に、モジュール2002、2010、2020及び2040は、例えばクイックディスコネクトによって真空レギュレータ2923及び流体コントローラ2921に接続される。真空レギュレータ2923及び流体コントローラ2921はローカルコントローラ2960の制御下にあり、ローカルコントローラ2960は同様にマスタコントロール2940の制御下にある。また、ローカルコントローラ2960は、上述のポートの開放やホルダの回転などに必要なモータを制御する。流体及び電気的(モータ)制御が混在して述べられているとき、流体制御のみまたは電気的制御のみが用いられ得ることを理解されたい。
【0236】
採取器モジュール2002によって組織サンプルを採取した後、採取器モジュール2002はポート2014を介してモジュール2010に連結される。採取された組織サンプルは切断され(図23〜25)、切断された微小器官は図26に関連して説明したようにモジュール2020へ運搬される。この時点で、モジュール2002が取り付けられたままのモジュール2010はもはや必要なくなり、モジュール2020から取り外されて廃棄される。
【0237】
バイオプロセッシングモジュール2020及び流体モジュール2040は、その後、図29の右側に示されるドッキングステーションに、図示された向きで運搬される。処理ステーション2900では、多くの患者/部位の1つから作成された異なる組織サンプルを含むカセットのために、複数のドッキングステーションが設けられ得る。複数のドッキングステーションにおける全てのカセットは、その処理開始時に左側のドックを通過させる必要がある。図面の左側では、流体アクチュエータ2920(流体コントローラ2932によって制御される)及び真空レギュレータ2922(真空コントローラ2934によって制御される)に接続されたモジュール2020及び2040が示されている。モータ2224、2226、2906及び2912は、モータコントロール2936によって駆動させられる。
【0238】
モジュール2020及び2040は、外囲部2901内に配置され、温度センサ(図示せず)に応答してヒータ2942によって所望の温度に保たれ、ヒータコントローラ2938によって制御される。コントローラは、別体をなすコントローラであってもよく、または、大型ローカルコントローラ2930の一部であってもよい。ローカルコントローラ2930はまた、サンプル採取器2912を介してTMOからのサンプリング及び分析を制御する。サンプル採取器2912は、隔壁などの無菌ポート2943を介してバイオリアクタ2037から流体をサンプリングし、マスタコントロール2940と連通する分析器2996にこれらを与える。センサは、随意的に、温度、湿度、CO、pH、または、サンプル保管または制御のためにバイオリアクタにおいて用いられるその他の一般的にモニタされるパラメータなどの複数のパラメータを検知し得る。
【0239】
栄養素、老廃物、ガスなどの流体は、流体モジュール2040によって、バイオリアクタ2037へ及びバイオリアクタ2037から送達される。
【0240】
成長培地は、ディスペンシングボリューム(dispensing volume)2905内に保存され、流体コントローラ2932の制御下でバイオリアクタ2037へ送達される。
【0241】
廃棄培地は、流体コントローラ2932の制御下で、ディスペンシングボリューム2909に送達される。
【0242】
ディスペンシングボリューム2907は、酸素、窒素、COまたはそれらの混合体などの無菌ガスを送達させることができる。あるいは、ボリューム2907は、抗生物質、消毒薬または他の所望の流体を送達するために使用することができる。
【0243】
必要に応じて、真空の提供中に空気圧の平衡化を可能にするように、各モジュールに無菌エアフィルタ(図示せず)を追加することができる。
【0244】
マスタコントローラ2940によって実行されるマスタTMO処理アルゴリズムの制御下で、適切な時期における遺伝子導入ベクターを含有する流体の導入及び分離、並びに、バイオリアクタ2037に載置された微小器官の回転及び並進運動またはバイオリアクタ2037内の流体に加えられる音響エネルギーの使用をした方法あるいはその他の方法による撹拌を含むプロセスが時系列的に行われる。これらのプロセスのタイミング及び持続時間は、例えばプリセットプログラム及び/または測定されたプロセス状態によって決定され、典型的には、特定の遺伝子または遺伝子導入ベクターの性質、意図する用途、及び対象から得られたあるデータに一致するように選択される。
【0245】
遺伝子導入ベクター供与ボリューム2950は通常、図示されていない手段によって冷凍保存されており、適切な時期に取り出されて解凍され、隔壁などの無菌ポート2929を介して投与され、その後に流体コントローラ2932の制御下でバイオリアクタ2937に送達されるディスペンシングボリューム2911を満たす。
【0246】
適切な時期に、典型的には超線形微小器官を形成した24時間後に、遺伝子導入ベクターはディスペンシングボリューム2911を満たすために無菌ポート2929から注入され、前記ベクターの第1の部分の送達が開始される。
【0247】
(TMOの能力の検査)
単位時間あたりに所望の範囲のタンパク質を生成する能力などの所望の範囲の能力を有するTMOが作成されるように前記生成プロセスをモニタ及び調節するために、タンパク質生成率などのTMOの能力パラメータの検査を、遺伝子導入ベクターの適用前、適用中、及び適用後の様々な時期に行うことができる。前記検査の1つの方法は、サンプル材料の一部を使い切る免疫学的検査または類似の化学的もしくは生物学的検査などの、バイオリアクタから物理的に取り出した組織サンプルまたはその周囲の流体を必要とする方法である。また、他の方法は、光学的手段、分子プローブセンサ(例えばDNAまたはタンパク質アレイ)、または、その他の当該技術分野で既知の手段などの、バイオリアクタから組織サンプルを物理的に取り出すことなく、バイオリアクタ内でTMOまたはその培地の能力パラメータを検知することができる手段を用いた方法であり、この方法は前記第1の方法の代わりにまたは前記第1の方法と組合わせて用いることができる。いずれの方法でも、TMOの能力は、微小器官を最初にバイオリアクタに導入した時点から使用するために微小器官を取り出す時点までの間の様々な時点で検査することができる。
【0248】
所与の対象の微小器官のTMOへの変換の制御に用いられる手順は、所望の範囲の能力を得るために、TMOの作成中に1つ以上の変数を利用することができ、そのような変数には、これらに限定しないが、以下のものが挙げられる。
(1)ベクター処理の数:微小器官を含有するバイオリアクタ培地に添加することによる、微小器官の遺伝子導入ベクターに対する1回以上の曝露。
(2)各処理の継続期間:各回の暴露は、典型的には、バイオリアクタから残留ベクターを取り除くべく培地の一部または全てを交換することにより終了するが、バイオリアクタ内でのベクターの活性を時間、熱または他の手段などにより低減させることにより達成することもできる。
(3)ベクターの投薬量:各回の暴露は、各回の暴露のときと同一または異なるように選択され得る特定の投薬量または量の遺伝子導入ベクターが利用される。加ええられるベクターの量は、典型的には、使用されるベクターの同一または異なる特定の有効性(ウイルスベクターの場合は、感染性及び非感染性ウイルス粒子の力価)に応じて、またはバイオリアクタに加える総量に応じて変更される。
(4)ベクターを強化する手段:随意的に、ベクターが微小器官の培地に存在している間、またはその前、またはその後に、遺伝子導入の効果を高めるための1つ以上の手段を用いてベクターの動作を向上させることができる。そのような方法としては、次のようなものがある。
ベクターの摂取または効果を向上させることが知られている様々な形態の化学物質の添加。
組織(皮膚の場合は、例えば各質層または真皮)のアブレーションまたは穿孔などの微小器官の物理的処理により、ベクターの侵入を向上させること。
培地内での微小器官の物理的攪拌。
微小器官またはその培地を物理的に振動させること。
微小器官またはその培地を音波または超音波エネルギーに曝すこと。
エレクトロポレーションや電磁場などの様々な電気的手段を利用して、ベクターの摂取または効果を向上させること。
(5)維持状態の調整:バイオリアクタ内での成長培地の所望の状態を維持するための、培地を除去及び取り替える量及びタイミング、ガスを交換する割合、バイオリアクタの培地への物質(緩衝剤またはその他の化学物質など)の添加のスケジュール化。
(6)ステップのスケジュール化:微小器官の作成時からTMOが使える状態にあるまでの間の、微小器官からTMOへの変換における各段階のタイミングと継続期間。
【0249】
TMOの作成に使用されるアルゴリズムは、前述した変数及びステップのスケジュールのための固定プリセット値を含む、タイミング及び継続時間が既知の特定のステップのプレセットされた固定シーケンスであり得る。あるいは、前記アルゴリズムは調節可能であり、対象の治療時に所望の範囲の値が得られるようにTMOの能力を改変するために、作成プロセスの様々な段階でのTMOの測定された能力に基づいて前記変数の1つ以上に対して自己調整するように設計されている。
【0250】
前記作成プロセス中は、バイオリアクタ2937内の培地サンプルは、典型的には特定の所望のタンパク質の生成量を測定するために、採取器2912によって採取され、ELISAなどの当該技術分野で既知の方法の1つを用いて分析器2996によって分析される。TMOにより生成されたタンパク質を特徴化するために、スペクトル解析またはその他の試験などの他の検査も行われ得る。
【0251】
さらに、例えば無菌性及びある外来物質が存在しないことなどのTMOの安全面を試験するために、サンプリングが通常使用される。
【0252】
作成プロセスが終了しTMOが対象に投与できる状態になると、隣接する断片載置部間に事前形成されたスロット間に設置されたブレード2804を有するブレード・アセンブリ3220に近づけるために、ベース2802をさらに持ち上げる(図30参照)。図31はブレードの上面図である(図30の側面図と対応している)。ベースが近づくと、ブレード3804は超線形TMOを個々の断片に切断する。
【0253】
随意的に、ブレード・アセンブリ3220は所定の場所に残され、流体と個々の微小器官/TMOとを分離チャンバに実質的に分離するのに使用される。このことは、個々の切断された微小器官/TMO断片から個々のサンプルをサンプリングすることを可能にするのに使用される。この場合、ベース2802は、その底部及び側部が、例えばシリコンゴムなどの柔軟な生体適合性の不透過性層3004に沿って一致し、ブレード・アセンブリ3220はその下側に埋め込まれた材料と同一の材料からなる内部ディスク3012を有する。ブレード3220は、ベース2802の内径の間にぴったりと嵌り、下降させたときに、層3004を切れ込む。このとき、ディスク3012は、ベース2802の底部に対して緊密に嵌合する。他の断片から実質的に隔離された個々のチャンバが各TMO断片に形成されたことにより、個々の断片の分泌レベルを測定することが可能となる。
【0254】
対象に投与するTMOを作成するために、投与に必要な断片の数が推定される。推定は、典型的には、これらに限定しないが、下記の入力データに基づいて行われる。
(a)同様の対象に対する規定のガイドライン、規定の臨床試験計画書または人口統計に基づいて前記対象に投与されたのと同一の治療タンパク質の量に相当する量。
(b)以前に注射または他の投与方法により同一の対象に投与された同一の治療タンパク質に相当する量。
(c)体重、年齢、健康状態、臨床状態などの対象のデータ。
(d)以前に別の類似する対象へTMOを投与したときの薬物動態学的データ。
(e)以前に同一の対象へTMOを投与したときの反応。
【0255】
モジュールは結合ステーションから取り除かれ、TMO運搬モジュール3300は結合部材3304とシール用ガスケット3306を介してバイオプロセッサー2020に着脱自在かつ密閉的に取り付けられ(図33)、処理ステーションの左側の結合ステーションに戻される(図34)。
【0256】
図33及び34に示すように、運搬モジュール3300はハウジング3302を含み、ハウジングは、ポート3305と、2つのリードスクリュー3312、3314を備えモータ3406により駆動されるx−yステージ3311上に設けられた複数のトランスファーピン3310とを有する。トランスファーピン3310は、ポート3305を介して選択的に通過できるように構成されている。
【0257】
図34に示すように、モジュール2020は、アセンブリ3402を形成するために、モジュール2040と結合したままの状態でモジュール3300に結合されている。モジュール2020とモジュール3000との間のポートは開放されている。2つのモータ3404及び3406は模式的に示されている。これらのモータは、微小器官ホルダ2704の回転及びx−yステージ3311の昇降を行うように作動する。
【0258】
図35は、モジュール2020内に延出し、1つの微小器官載置部2610と結合している状態の一本のピン3310を示す。図37のAは、断片載置部2610の上面でアイ2612と噛み合っている状態のピン3310を示す。微小器官ホルダ2704をわずかに回転させると、またはピン3310が横方向に移動させると(x−yステージにより)、断片載置部(微小器官/TMO断片3702が載置されている)がホルダ2704から脱離し、微小器官断片3702はピン3310によりて保持される(図37のB)。アイレット2612は環状の構造体として図示されているが、管状またはピン3110の先端部の把持を補助するためのその他の形状であってもよい。
【0259】
断片3702を保持したピン3310は、その後、x−yステージにより、モジュール3300内に引き込まれる(図36)。このプロセスは、別のピンをx−yステージ上に装填し、その別のピンによりモジュール2200から別の微小器官を把持することにより、必要に応じて繰り返すことができる。ポートは閉じられ、モジュール2040と連結されたモジュール2020は、その後、ロードされていない微小器官/TMOを継続的に維持するために、結合ステーション内に戻される(図29の右側)。
【0260】
TMO運搬モジュール3300の全体はアセンブリから取り外され、随意的に温度、湿度、気体、及びその他の環境パラメータが制御された状態で、処理センターに運ばれる。モジュール3300は、随意的に、所望のピン3310を取り出すために手動で操作することが可能である。
【0261】
微小器官/TMOを移植するときは、ピンはモジュール3300から取り出され、図11を参照して説明したようにして、移植用器具1110(図38)へ移動させられる。当然ながら、背景技術の欄で説明した及び本明細書中で説明したその他の移植方法も用いることもできる。
【0262】
微小器官/TMOの投与は、典型的には、外来診察室または手術室などの臨床的クリーンルームで行われる。モジュール3300は、対象が存在する処置室内では、通常は手動で使用される。
【0263】
取り出された各ピン3310は、例えば図38に示すように、真っ直ぐにする処置が施される。微小器官/TMO断片3702がその作成プロセス中に緩みが生じた場合は、図38の左側の図に示すように、断片の直線性は次のステップのために十分なものではなくなる。断片を真っ直ぐにすることは以下のようにして達成される。
【0264】
各断片載置部は、共通するラチェットロッド3810上の、3802、3804、3806の3つの部分からなることに留意されたい。3802及び/または3804の部分を、中央部分3804から離れる方向に引っ張ることにより、TMO断片に対してテンションを加えることができ、その結果、真っ直ぐな断片3812が得られる。
【0265】
線形微小器官/TMO断片は断片載置部から信頼できる向きで取り除かれる。このことは、典型的には、図11を参照して説明した方法と組合せて用いることが意図された真空保持器具1110を使用して行われる。真空保持具1110は、真っ直ぐな断片3812の角質層3816側を保持することできるように真空源に接続されたままの状態で真っ直ぐな断片3812に接触させられ、その真空孔によって微小器官/TMOを保持する。
【0266】
このプロセスは、必要な数の微小器官/TMOが対象に投与されるまで、繰り返される。
【0267】
本発明の一実施形態では、バイオリアクタは、体温に近い温度(例えば36〜38度)、高い湿度(好ましくは95%)、及びCOエンリッチ環境(3〜10%CO、90〜97%空気)で維持される。随意的に、微小器官は、抗生物質、抗真菌剤、及びその他の物質などの存在下で維持される。タンパク質の分泌の正確な測定に必要とされる化学物質や試薬は、未使用時は冷凍保存される。
【0268】
命令を入力するため及びデータを受け取るためのコントロール・センターが、随意に設けられる。コントローラ2940は、処理を自動的または準自動的に行い、データをディスプレイに示すためのソフトウエアを備えている。
【0269】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて、種々の変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に移植される治療用微小器官(TMO)の量を決定するための方法であって、
インビトロでの微小器官の量により、治療薬の分泌レベルを割り出すステップと、
インビトロでの分泌とインビボでの微小器官の血液濃度との関係を推定するステップと、
分泌レベル及び推定された関係に基づいて移植する治療用微小器官の量を決定するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記関係は、下記の(a)〜(c)からなる群から1つ以上選択される要因に基づいて推定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
(a)体重、年齢、健康状態、臨床状態などの被験者のデータ
(b)以前の他の類似した被験者へTMOを投与したときの薬物動態学的データ
(c)以前の同一の被験者へTMOを投与したときの薬物動態学的データ
【請求項3】
前記関係は少なくとも2つの要因に基づいて推定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記関係は3つの要因に基づいて推定されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
患者に移植する治療用微小器官の量の決定は、
類似した被験者に対する規定の指針、規定の臨床試験計画書又は人口統計に基づいて投与された同じ治療用タンパク質の量と、
以前に注射又は他の投与方法により同一の被験者に投与された同じ治療薬の量との一方又は両方に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
決定された量に基づいて、移植する治療用微小器官の量を用意するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被検者に移植された治療用微小器官により作成された治療薬の投薬量と、治療薬の排出量を調整するシステムであって、
(a)被検者の治療薬のレベルをモニタする手段と、
(b)薬のレベルと所望するレベルとを比較する手段と、
(c)薬のレベルが最低レベルよりも低い場合、さらなる治療用微小器官の移植を指示する手段と、
(d)薬のレベルが最大レベルよりも高い場合、移植された微小器官の一部の不活性化又は除去を指示する手段とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
(a)〜(d)を定期的に動作させる手段を有することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
不活性化又は除去を指示する手段が、移植された微小器官の一部の除去を指示することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記不活性化又は除去を指示する手段が、移植された微小器官の一部の外科的除去を指示することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記不活性化又は除去を指示する手段が、移植された微小器官の一部を死滅させることを指示することを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記不活性化又は除去を指示する手段が、移植された微小器官の一部の切除を指示することを特徴とする請求項7に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2010−54513(P2010−54513A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268231(P2009−268231)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【分割の表示】特願2003−550677(P2003−550677)の分割
【原出願日】平成14年11月5日(2002.11.5)
【出願人】(504174881)メドジニックス・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】MEDGENICS, INC.
【Fターム(参考)】