説明

治療装置

【課題】 棒状閃光灯などのパルス状非レーザ型光源による治療装置を提供する。
【解決手段】 処置のための光出力を供給するように動作できる非コヒーレントパルス状光源(14)と、この光源に接続された電源と、反射器(16)を含み開口部を有するハウジングとを備え、光源はハウジング(12)の内部に配置され、反射器は光源からの光を開口部へ反射し、開口部と治療部位の間に可撓性光ガイドが配置され、この光ガイドは光源からの非コヒーレント光を受けてその光を治療部位へ送り、光源と反射器および光ガイドがあいまって6J/cmと100J/cmの間の光を供給する治療部位を処置するための治療装置であって、光ガイドは所定の角度で発散している光を送り、発散は希望の処置深さに応じて選択されることを特徴とする治療装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として治療電磁処置技術に関するものであり、更に詳しく言えば、治療処置またはその他の用途のために、そのような処置のための閃光灯(閃光管)などの空間的に拡がっているパルス動作光源を利用するため、または閃光灯からの光を光ファイバに効率的に集束するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この出願の優先権主張の基礎を成す米国特許出願は、1992年10月20日に出願された「Method And Apparatus For Therapeutic Electromagnetic Treatment」という名称の未決の米国特許出願一連番号07/964210の一部継続出願である。
【0003】
皮膚疾患の処置などの治療用の医療用途に電磁放射線を使用することが従来技術で知られている。たとえば、Mutzhasに付与された米国特許第4298005号は、美容用、光生物学用および光化学用の連続紫外線灯について記述している。スペクトルの紫外線部分を用いることを基にした治療と、皮膚に対するそれの光化学的相互作用が記述されている。Mutzhasの紫外線灯を用いて皮膚に供給されるパワーは150W/mとして記述されている。これは皮膚温度に大きな効果を及ぼさない。
【0004】
紫外線を含む従来技術の治療に加えて、アルゴンレーザ、COレーザ、Nd(Yag)レーザ、銅蒸気レーザ、ルビーレーザ、および色素レーザを含めたレーザが皮膚科治療のために使用されてきた。たとえば、フルモトに付与された米国特許第4829262号は、皮膚科への応用に使用する色素レーザの製造方法を記述している。レーザ光によって処置できる2種類の皮膚状態は、皮膚の色素沈着または皮膚の構造の局部的な違いなどの外部皮膚疾患と、ポートワインしみ、末梢血管拡張症、脚静脈および老年性血管腫および星芒性血管腫を含めて、各種の皮膚異常をひき起こす皮膚の下の深くに存在する血管疾患である。それらの皮膚疾患のレーザ治療は、レーザ光の吸収による治療部位の局部加熱を一般に含む。皮膚を加熱すると皮膚の疾患が変化または治療され、皮膚の異常が全部または部分的に消される。
【0005】
色素沈着などの、ある外部疾患も、皮膚の部分を蒸発させるために十分高い温度まで非常に急速に皮膚を加熱することによって、治療することもできる。より深い所に存在する血管の疾患は、血液を凝固させるために十分高い温度まで血液を加熱することによって、一層典型的に治療される。そうすると疾患は最終的に消える。処置の深さを制御するために、パルス動作する放射源をしばしば用いる。熱が血管内部に入り込む深さは、放射源のパルス幅を制御することによって制御される。皮膚の吸収係数と散乱係数も熱の浸透に影響する。それらの係数は皮膚の構成物質と放射線の波長との関数である。とくに、表皮中および真皮中における光の吸収係数はゆっくり変化して、単調に減少する波長の関数である。したがって、治療される皮膚の特定の状態と血管の太さに対して吸収係数が最適にされるように、光の波長を選択しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
入れ墨除去および生まれつきのあざおよびエージマークの除去などの用途のためのレーザの効率は、レーザが単色であるために低下する。第1の種類の皮膚色素沈着異常を治療するために所与の波長のレーザを効果的に使用できるが、第2の種類の疾患を持つ皮膚によってレーザの特定の波長が効率的に吸収されないとすると、その波長は第2の種類の皮膚疾患には効果的ではない。また、レーザは通常は複雑で、製造に費用がかかり、供給されるパワーに対して大きく、信頼できず、維持が困難である。
【0007】
血管疾患の付近の血液の成分が変化し、血液成分が治療部位の吸収係数に影響するために、光の波長は血管疾患の治療にも影響する。酸化血球素が、血液の光学的特性を制御し、可視領域に強い吸収帯を持つ主な色素団である。更に詳しくいえば、酸化血球素の最強の吸収ピークは418nmで生じ、60nmの帯域幅を持つ。吸収係数がより小さい二つの追加の吸収ピークが542nmと577nmで起こる。それら二つのピークの総帯域幅は100nm程度である。また、500nmないし600nmの波長範囲の光は皮膚の血管疾患の治療に望ましい。その理由は、その光が血液によって吸収され、皮膚を通じて浸透するからである。1000nmまでのより長い波長も効果的である。その理由は、それらの波長が皮膚の中により深く浸透できて、周囲の組織を加熱し、パルス幅が十分に広いと、熱伝導によって血管の加熱に寄与するからである。また、より長い波長はより太い直径の血管の治療に効果的である。その理由は、血管中の光のより長い経路によって低い吸収係数が補償されるためである。
【0008】
したがって、スペクトルの近紫外線部および可視部をカバーする広帯域電磁放射源が、外皮疾患および血管疾患の治療に望ましい。光源の全波長範囲はいくつかの用途のいずれの治療も最適にするために十分でなければならない。そのような治療電磁放射装置は、治療する特定の疾患に対する全範囲内の最適な波長範囲の供給もできなければならない。光の強さは、求められている温度まで治療部位の温度を上昇させることによって、求められている熱効果を生じさせるために十分でなければならない。また、各用途で最適な浸透深さを達成するように、パルス幅は十分に広い範囲にわたって可変でなければならない。したがって、求められている皮膚治療に従って選択できる広い波長範囲を持ち、パルス幅を制御でき、治療部位に照射するために十分に高いエネルギー密度を有する光源を得ることが望ましい。
【0009】
棒状閃光灯などのパルス状非レーザ型光源がそれらの利益を提供する。求められている熱効果を達成するために、放出された光の強さを十分高くできる。熱の浸透深さを制御できるようにパルス幅を広い範囲にわたって変化できる。典型的なスペクトルは可視範囲および紫外線範囲をカバーし、特定の用途に最も効果的な光学帯を選択でき、または蛍光物質を用いて強めることができる。更に、閃光灯などのパルス状非レーザ型光源はレーザよりも製造がはるかに簡単かつ容易であって、同じ出力パワーでは極めて安価であり、一層効率的で信頼性もある。それらの光源は種々の特定の皮膚治療用途に対して最適にできる広いスペクトル範囲を持つ。それらの光源は、各種の皮膚治療に重要である広い範囲にわたって変化できるパルス長さも有する。
【0010】
皮膚疾患を治療するために使用されることに加えて、膀胱結石切破術および血管の詰まりの除去などの侵襲医療処置では、レーザ光は光ファイバに結合され、ファイバを通じて治療部位に供給される。膀胱結石切破術では、ファイバはパルスレーザからの光を腎臓または胆石まで送り、石との光相互作用が石を粉砕する衝撃波を発生する。血管の詰まりを除去するために、光がファイバによって詰まり部分に結合され、その詰まり物質をばらばらにする。いずれの場合でも、レーザ皮膚処置に関して上記レーザの欠点が存在する。したがって、閃光灯を利用する膀胱結石切破術および詰まり物質除去のための治療装置が望ましい。
【0011】
ある部位を効果的に治療するために、光源からの光を治療部位に集束しなければならない。医療においてパルス状レーザ光を光ファイバに結合することは全く一般的なことである。従来技術はCW灯などの等方性非コヒーレント点光源を細い光ファイバに結合することを記述している。たとえば、1988年7月12日にCross他に付与された米国特許第4757431号が、小さいフィラメントを持つ非コヒーレント点光源、または電極間隔が2mmであるアーク灯からの光を小さい領域に集束する方法を開示している。点(または小さい)光源は寸法が小さいために、また、大きなエネルギー損失なしに集束することが比較的容易である。1977年5月10日にKishnerに付与された米国特許第4022534号が、フラッシュ管によって発生され、そのフラッシュ管によって放出された光のほんの一部を光ファイバに集めることを開示している。
【0012】
しかし、閃光灯などの大きい寸法の拡大された光源では、それのエネルギーの大きな部分を小さい領域に集束することは困難である。光ファイバへの結合はより一層困難である。というのは、高いエネルギー密度を達成しなければならないだけでなく、光の角度分布を、光ファイバが光を捕らえることができるようなものにしなければならないからである。したがって、拡がった高輝度パルス光源の出力を光ファイバに結合するための装置を得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の実施例によれば、治療装置がハウジングと、このハウジングの内部に配置され、処置のためのパルス状光出力を発生するように動作できる非コヒーレント光源、閃光灯が適当である、とを備える。ハウジングは開口部を有し、皮膚治療部位の近くに配置するのに適当である。ハウジングの内部の光源の近くに反射器が設けられ、ハウジングの開口部の近くに少なくとも一つの光フィルタが設けられる。開口部と同じ拡がりで絞りが設けられる。可変パルス幅パルス形成回路によって閃光灯に電力が供給される。そうすると、治療装置は密度が制御されて、濾波されたパルス状光出力をハウジングの開口部を通じて治療のため皮膚部位に供給する。
【0014】
本発明の第2の実施例によれば、光エネルギーによる治療方法が、非レーザ、非コヒーレント光源からの大きなパワーのパルス状光出力を供給する過程と、そのパルス状光出力を治療部位に照射する過程とを備える。光のパワー密度が制御されるように、その光出力のパルス幅を制御し、集束する。また、光のスペクトルを制御するために光を濾波する。
【0015】
本発明の第3の実施例によれば、結合器がトロイダル閃光灯などの非コヒーレント光源を備える。その非コヒーレント光源と少なくとも一つの光ファイバすなわち光ガイドとの周囲に反射器が配置される。光ファイバの端部が反射器の内部に配置される。この端部は円形灯からの光を集める。類似の結合構成で光ファイバを、光源からの光を受けるために配置されて、光を光ファイバに供給する直線−円光ファイバ送り装置とともに、設けることができる。反射器の直線すなわち棒状閃光灯の軸線に平行な平面内の横断面は長円形で、棒状閃光灯は長円の一つの焦点に配置され、直線−円光ファイバ送り装置は長円の他の焦点に配置される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照する。図面で類似の番号は図面全体を通じて対応する要素または対応する部分を示すものとする。
【0017】
本発明の少なくとも一つの実施例を詳しく説明する前に、本発明の用途は以下の説明で述べ、図面に示す部品の構造および配置の詳細に限定されないことを理解すべきである。本発明は他の実施例で実施でき、または種々のやり方で実施できる。また、ここで用いる用語および術語は説明のためのものであって、限定するものと見なすべきではない。
【0018】
まず、図1および図2を参照すると、本発明の原理に従って構成され、動作する非コヒーレントパルス状光源皮膚治療装置の横断面図と側面図とがそれぞれ示されている。装置10は開口部を有するハウジング12と、ハンドル13(図2のみ)と、外部ガラス管15を有する光源14と、長円形反射器16と、1組の光フィルタ18と、絞り20と、検出器22(図1のみ)とを含むことが図を見ればわかる。
【0019】
ハウジング12の内部に設けられている光源14は、ILCから入手できるガス入り棒状閃光灯、型番L5568、などの典型的な非コヒーレント光源である。このガス入り棒状閃光灯14によって放出された光のスペクトルは電流密度と、ガラス管材料の種類と、管内部で使用する混合ガスとに依存する。電流密度が高い(たとえば、3000A/Cmまたはそれ以上)と、スペクトルは黒体放射スペクトルに類似する。典型的には、ほとんどのエネルギーは300〜1000nmの波長範囲で放出される。
【0020】
皮膚(または見える)疾患を治療するためには、皮膚で求められている光密度を供給しなければならない。この光密度は図1と図2に示す集束装置で達成できる。図1は、やはりハウジング12に設けられている反射器16の横断面図を示す。図1に示すように、閃光灯14の軸線に垂直な平面内の反射器16の横断面は長円である。棒状閃光灯14はその長円の一つの焦点に配置され、皮膚21の治療部位が他の焦点に配置されるように反射器16は配置される。図示の装置はレーザに用いる集束装置に類似し、閃光灯14からの光を皮膚に効率的に結合する。しかし、この装置は限定的なものと考えてはならない。長円反射器16は金属反射器、典型的には、容易に機械加工でき、かつスペクトルの可視範囲および紫外線範囲で非常に高い反射率を有する研磨アルミニウム反射器とすることができる。他の無被覆金属または被覆金属をこの目的のために使用することもできる。
【0021】
光学フィルタおよび中性フィルタ(neutral density filter)18がハウジング12の内部で治療部位の近くに配置され、光のスペクトルおよび強さを制御するためにビームまで移動させたり、ビームから離ように移動させたりできる。典型的には、50〜100nmの帯域幅のフィルタ、およびスペクトルの可視部および紫外線部分中の低遮断フィルタを使用する。ある治療では、紫外線部分のみを遮断して、ほとんどのスペクトルを使用することが望ましい。他の用途では、主としてより深く浸透させるために、より狭い帯域幅を使用することが好ましい。帯域幅のフィルタおよび遮断フィルタは市販品を容易に入手できる。
【0022】
ガラス管15は閃光灯14と同軸に配置され、それには蛍光物質が付着される。ガラス管15は、血管の凝固の治療に際して、装置10のエネルギー効率を最適にするために典型的に用いられる。閃光灯14のスペクトルの紫外線部分を吸収して、血液が吸収するために最適である500〜650nmの範囲の光を発生するために蛍光物質を選択できる。類似の物質が市販の蛍光灯の内壁に塗布される。蛍光灯で「暖」白色光を発生するために使用される代表的な物質の変換効率は80%、ピーク放出波長は570nm、帯域幅は70nmで、血液が吸収するために有用である。それらの蛍光体の数ミリ秒の崩壊時間が血管の治療に求められる長いパルスに適合する。
【0023】
閃光灯14は円形、らせん形、短い円弧および多重棒状などの他の形状のものを使用できる。反射器16は放物線形反射器または円形反射器などの他の形のものを使用できる。光源は反射器なしでも使用でき、光源14を治療部位に近接して配置することによって、求められているエネルギー効率とパワー密度を達成できる。
【0024】
絞り20はハウジング12の内部で光フィルタ18と治療部位の間に設けられ、閃光灯14の出力を平行にすることによって、露出される領域の長さと幅を制御する。閃光灯14の長さは露出できる最大長さを制御する。典型的には、長さ(円弧長さ)8cmの管を使用し、管の中央部の5cmのみが露出される。中央の5cmを使用すると露出された皮膚部分のエネルギー密度の一様性を高くできる。そうすると、この実施例では絞り20(コリメータとも呼ばれる)によって最大長さ5cmの皮膚部分を露出できることになる。最小1ミリメートルの露出長さを得るために絞り20を絞ることができる。同様に、5mm幅の閃光灯に対して、露出される皮膚部分の幅を1mmないし5mmの範囲で制御できる。より長い閃光灯または多重閃光灯を使用することによってより広い露出部を容易に達成でき、ビームをより完全に平行にする絞りでより小さい露出部を得ることができる。本発明は従来のレーザすなわち点光源と比較して露出部をより大きくするものであって、血管のより長い部分にわたって血流遮断が血管の凝固に一層効果的であるために、血管の凝固に非常に効果的である。露出される部分が広いと必要な治療時間が同時に短縮される。
【0025】
検出器22(図1)がハウジング12の外部に設けられる。この検出器は皮膚から反射された光をモニタする。検出器22を光学フィルタ18および中性フィルタに組合わせて用いて、皮膚のスペクトル反射係数およびスペクトル吸収係数を迅速に見積もることができる。これは、主治療パルスを照射する前に低いエネルギー密度レベルで行うことができる。主治療パルスを照射する前に皮膚の光学特性を測定することは、最適治療条件を決定するために有用である。上記のように、非レーザ型光源から放出された広いスペクトルの光によって皮膚を広いスペクトル範囲にわたって調べることができ、かつ最適治療波長を選択できる。
【0026】
別の実施例においては、検出器22または第2の検出器システムを用いて、皮膚にパルス状光源からの光を照射している間に皮膚温度を実時間で測定できる。これは、表皮および真皮で光が吸収される、長いパルスによる皮膚熱解離の応用に有用である。表皮の外側部分が高すぎる温度に達すると、皮膚に永久的な火傷痕が生じることになることがある。したがって、皮膚の温度を測定すべきである。加熱されている皮膚の赤外線放出を用いて皮膚温度を測定して、過大露出を避けることができる。
【0027】
典型的な実時間検出器システムは、2台の検出器およびフィルタを用いて、二つの特定の波長における皮膚の赤外線放出を測定する。2台の検出器の信号の間の比を用いて瞬時皮膚温度を測定できる。予め選択した皮膚温度に達した時にパルス光源の動作を停止できる。皮膚に火傷痕を生じることがある断続加熱の温度しきい値は、赤外線放出を用いて容易に測定できる50℃またはそれ以上程度であるため、温度測定は比較的容易である。
【0028】
熱浸透の深さは皮膚の種々の層における光の吸収および散乱と、皮膚の熱特性とに依存する。別の重要なパラメータはパルス幅である。極めて薄い層にエネルギーが吸収されるパルス状光源では、パルスが持続している間に熱伝導による熱浸透の深さ(d)は式1に示すように表すことができる。
(式1) d=4[kΔt/Cρ]1/2
ここで、k =照明されている物質の熱伝導度
Δt=光源のパルス幅
C =物質の熱容量
ρ =物質の密度
である。
【0029】
この式1から、光源のパルス幅によって熱浸透の深さを制御できることが明らかである。したがって、パルス幅が10−5秒から10−1秒の範囲で変化すると、熱浸透の深さが100の率で変化することになる。
【0030】
したがって、閃光灯14は10−5秒から10−4秒までのパルス幅の光を発生する。皮膚中の血管の凝固が目的である血管疾患の治療のために、血管の厚さ全体のできるだけ多くを一様に加熱して効率的な凝固を行うようにパルス長さを選択する。皮膚内部で治療する必要がある典型的な血管の厚さは0.5mmの範囲である。したがって、最適なパルス幅は、血液の熱特性を考慮して、100ミリ秒程度である。もっと短いパルスを使用したとしても、熱は血液を通じていぜんとして伝えられて凝固を行わせるが、血管中の血液の、組織を囲んでいる部分の瞬時温度は凝固のために必要な温度より高く、そのために望まない損傷をひき起こすことがある。
【0031】
皮膚の蒸発が目的である、外皮疾患の治療のために、非常に狭いパルス幅を用いて皮膚の内部へ非常に浅く熱浸透させる。たとえば、パルス幅が10−5秒のパルスは僅か5ミクロン程度の深さで皮膚に(熱伝導によって)浸透する。したがって、皮膚の薄い層のみが加熱され、皮膚の外部あざが蒸発するように、非常に高い瞬時温度が得られる。
【0032】
図3は、閃光灯4のパルス幅を変化させる複数の個々のパルス形成ネットワーク(PFN)で構成された可変パルス幅形成回路を示す。容量CとインダクタンスLを有する単一素子PFNによって駆動される閃光灯の最大の半分における光パルスの全幅(FWHM)は(式2)
【数1】

にほぼ等しい。
【0033】
閃光灯14は図3に示すような3種類のPFNによって駆動できる。高電圧電源によって充電される3個のコンデンサC1、C2、C3のうちから選択するためにリレー接点R1’、R2’およびR3’を使用する。閃光灯14に接続されるPFNを選択するためにリレーR1、R2およびR3を使用する。PFNのコンデンサに充電されている電力を閃光灯14に放電するために高電圧スイッチS1、S2、S3を使用する。一実施例においては、L1、L2、L3の値はそれぞれ100mH、1mH、5mHであり、C1、C2、C3の値はそれぞれ100mF、1mF、10mFである。
【0034】
パルス幅の基本的な可変性を提供する各PFNを別々に起動できることに加えて、PFN’を逐次起動することによって追加の変化を達成できる。たとえば、第1のパルスがそれの振幅の半分に減衰した後で第2のPFNが起動されるように、パルス幅Δt1とΔt2を持つ二つのPFN’が起動されるものとすると、システムのこの動作の実効光パルス幅が関係
【数2】

によって与えられる。
【0035】
充電電源の電圧範囲は典型的には500Vないし5kVである。したがって、リレーはそれらの電圧を確実に絶縁できる高電圧リレーでなければならない。スイッチSは閃光灯14の電流を流すこと、およびPFNが順次起動されるならば発生される逆高電圧を絶縁できる。個体スイッチ、真空スイッチまたはガス入りスイッチをこの目的のために使用できる。
【0036】
閃光灯を低電流導通モードに維持するためにシマー(simmer)電源(図3には図示せず)を使用できる。パルス幅を変化させるために、単一のPFNとクロウバースイッチを用いる、または開閉できるスイッチを使用するなどの、他の構成を使用できる。
【0037】
典型的には、電気的パルス幅が1〜10m秒である閃光灯14を動作させるために、100〜300J/cmの直線電力密度入力を使用できる。典型的な閃光灯の穴の直径が5mmで、皮膚上で30ないし100J/cmの電力密度を達成できる。500〜650nmの帯域を使用すると入射エネルギーの20%が送られる。したがって、皮膚において6〜20J/cmのエネルギー密度が達成される。蛍光物質を含むと希望の範囲で出力放射線が一層増大されて、閃光灯14へのより低いエネルギー入力で皮膚に同じ量の光を照射できるようにされる。
【0038】
パルス状レーザ皮膚治療は、パルス幅が0.5m秒の範囲で、0.5〜10J/cmであるエネルギー密度が血管に関連する皮膚疾患の治療に一般に効果的であることを示している。この範囲のパラメータは棒状閃光灯などのパルス非レーザ型光源の動作範囲に含まれる。皮膚におけるエネルギー密度を制御するために数ステップの中性ガラスフィルタ18も使用できる。
【0039】
外部疾患のためには5マイクロ秒の典型的なパルス幅を用いる。5mmの穴閃光灯に20J/cmの電力密度が入力すると、皮膚におけるエネルギー密度が10J/cmに近付く。スペクトルのハード(hard)紫外線部分を遮断すると90%のエネルギーが透過する、すなわち、皮膚に照射されるエネルギー密度が10J/cmに近付くことになる。このエネルギー密度は皮膚の外部あざを蒸発させるために十分高い。
【0040】
治療装置10は、医師がハンドル13を用いて持つ軽量ユニットと、手持ちユニットとの二つのユニットとして構成できる。手持ちユニットは閃光灯14と、フィルタ18と、絞り20と、検出器とを含む。フィルタ18と絞り20とは一緒に、スペクトルと、露出部位の寸法とを制御する。検出器は反射率と瞬時皮膚温度を測定する。電源と、PFNと、電気的制御器とは、可撓性ケーブルを介して手持ちユニットに接続される別々の箱(図示せず)に納められる。これによって動作と、治療すべき皮膚の部位への接近とを容易に行えるようにされる。
【0041】
以上、本発明を皮膚の治療に関連して説明した。しかし、侵襲治療にレーザではなくて閃光灯を用いることによる利点がさらに得られる。膀胱結石切破術または血管の詰まりの除去などの処置を閃光灯で行うことができる。そのような治療装置は図1および図2に示す装置に類似させることができ、閃光を発生するために図3の電子回路を使用できる。しかし、光ファイバに光を正しく結合するために、図4と図8ないし10にいくつかの結合器40、80、90をそれぞれ示す。
【0042】
結合器40は棒状フラッシュ管42などの高輝度非コヒーレントおよび等方性パルス光の光源と、光エネルギーを光ファイバ46に供給する光反射器44とを含む。図4に示す実施例では光ファイバ46の縁部は全体として円錐形である。光ファイバ46は集光システム44からの光を治療部位に送る。一般に、結合器40は閃光灯からのパルス光を光ファイバに結合するものであって、医療、産業および家庭などの領域で用途がある。
【0043】
たとえば、処理されている材料の一部を急速に加熱または融除するために、または光化学処理を誘導するために、材料処理に結合器40を使用できる。あるいは、写真撮影のためのフラッシュを発生するために写真撮影で結合器40を使用できる。そのような結合器を使用すると、フラッシュ管をカメラの内部に組込んで、発生した光を光ファイバを用いてカメラの外に送るようにできる。結合器40によって、過去にはコヒーレント光または非コヒーレント光を用いていた多くの用途に、非コヒーレント光を使用できるようになることを当業者は認識するにちがいない。
【0044】
光を光ファイバに結合するために、フラッシュ管42の形は、図5および図6に示すように、トロイダル形であって、反射器44の内部に配置される。トロイダル形に加えて、連続らせんなどのその他の形をフラッシュ管42に使用できる。しかし、らせん管はトロイダル管より製作が困難である。ここで図6を参照すると、フラッシュ管42の形は全体として環形であるが、環の端部に配置されている電極を電源に接続しなければならないために、完全な環ではない。電極への接続は極めて小さく行うことができるので、電極を電源に接続することはフラッシュ管42の形を円形から大きく乱すものではない。
【0045】
反射器44は光を集めて集中するためのものであって、トロイダルフラッシュ管42の短軸に垂直な平面内における横断面はほぼ長円である。この長円の長軸はトロイダルフラッシュ管42の長軸に対して小さい角度を成すことが好ましい。長円の軸とフラッシュ管42の長軸との間の角度の正確な値は、光ファイバの開口数(NA)に依存する。トロイダルフラッシュ管42の短軸が長円の焦点に一致するように、トロイダルフラッシュ管42は配置される。長円の他の焦点は光ファイバ46の縁部にある。反射器44は金属を機械加工して製作でき、光を良く反射するように内面を研磨する。アルミニウムは可視波長および紫外線波長で反射率が高い、非常に良い反射材であって、この目的のために使用できる。反射器は一体に機械加工し、その後で装置の主軸に垂直な表面に沿って切断できる。こうするとトロイダルフラッシュ管42を装置に一体にできる。
【0046】
図4に示すように、光ファイバ46の縁部は開口角が小さい円錐形であるから、フラッシュ管からの光にさらされる光ファイバの全面積は広くなる。ここで、光を円錐形先端部に結合するための幾何学的図形を示す図7を参照する。ここで、屈折率がnである空間内の領域から光が到来し、光ファイバの円錐形部分(および光ファイバのコアの残りの部分)の屈折率がnであると仮定する。
【0047】
円錐形部分に入射する光線の必ずしも全てがそれに入り込むわけではない。システムの主軸を含む平面内を伝わる光線に対して、入り込んで光ファイバに吸収される光線の角度について条件を誘導できる。その条件を式3に示す。
(式3)
Sin(μcriti)=Cos(β)−[n/n−1]1/2sin(β)
【0048】
入射角μが式3から計算したμcritiより大きければ、光は光ファイバの円錐形部分に捕捉される。n>nである時だけ、捕捉が可能である。光ファイバの外部の媒体が空気であれば、n=1である。コアと被覆を有する光ファイバを用いるとすると、光ファイバの円錐形部分に捕らえられた光の全部ではないが、光ファイバのまっすぐな部分に捕らえられもする。コアはあるが、被覆が設けられていない(空気被覆)光ファイバを用いるとすると、ファイバの円錐形部分によって捕らえられた全ての光線は、光ファイバのまっすぐな部分に捕らえられもする。
【0049】
図4に示す構成は、反射器と光ファイバの間の容積を充たす流体に使用することもできる。この目的に非常に便利な流体は水とすることができる。水は、繰り返し率が高いパルスを使用した場合に閃光灯を冷却するために非常に効果的でもある。流体が存在すると、閃光灯の外被材料と空気の間の遷移などの、ガラスから空気へ遷移することに伴う損失を減少する。反射器の容積内に流体を使用するものとすると、円錐形部分に捕らえられた全ての光線が、コア/被覆光ファイバを使用しているとしても、光ファイバに捕らえられもする。
【0050】
反射器の内部に光ファイバを設ける別のやり方は、平らな縁部を持つ光ファイバを用いることによるものである。この構成を図8に示す。この構成の捕獲効率は円錐形縁部の捕獲効率に非常に近い。球面形などの、光ファイバの縁部の他の多くの形状を使用することもできる。光ファイバの縁部の構成は光ファイバの出口側における光の分布にも影響するために、この装置の特定の用途に従ってその構成を選択できる。
【0051】
この装置には各種の光ファイバを使用できる。単一光ファイバ、または直径がミリメートルまたはミリメートルより細いファイバを少数まとめて構成した光ファイバが侵襲医療用に通常使用される。他の用途、とくに産業用および家庭用へは、太い直径の光ファイバ、または多数のファイバをまとめた光ファイバ、あるいは光ガイドを使用することが好ましい。
【0052】
一実施例によれば、光を治療部位に結合するために可撓性光ガイドまたは硬質光ガイドを使用できる。石英繊維の束またはその他のガラス繊維の束から製造した可撓性光ガイドを束の縁部で一緒に熱融着できる。束の形は円形、長方形、またはその他の任意の有用な形にできる。硬質光ガイドは高い透明度を持つ石英、アクリル、ガラス、またはその他の材料から製造できる。その材料の全ての面を全体として高度に研磨する。
【0053】
治療のために有用な円形光ガイドの適当な横断面の直径は1mmから10mmである。あるいは、典型的な寸法が3mm×10mm〜30mm×100mmである長方形光ガイドを使用できる。いずれの場合にも、長さを20〜300mmにでき、または特定の用途の必要に応じた長さにできる。
【0054】
別の実施例によれば、光を一層効率的に結合するために長方形光ガイドを使用できる。長方形光ガイドは、長方形の棒状閃光灯に合致する、または治療する血管の形に合致する形を取るように選択される。
【0055】
別の実施例では、治療部位に供給される光のスペクトルを制御するために、上記光ガイドを使用できる。吸収染料が溶解されている材料から光ガイドを製作することによってスペクトルを制御できる。そうすると、光ガイドによって伝えられる光のスペクトルは吸収染料によって決定される。あるいは、光ガイドの一つの端部(入力端部が好ましい)に平らな個別フィルタを付加できる。それらのフィルタの両方とも吸収フィルタである。Schottによって製造された吸収フィルタOG515、OG550、OG570、およびOG590が適当な特性を持つことを発明者が見出だしている。
【0056】
また、適切な光被覆を光ガイドに付着することによって、干渉フィルタまたは光ガイドにおける反射被覆を使用できる。この場合も、単一の離散型干渉フィルタも使用できる。さらに、本明細書に記述した様々なフィルタまたはその他のフィルタの組合せも使用できる。ここで説明するフィルタを使用することによって、図1を参照して先に説明したフィルタの使用が冗長にされることがある。
【0057】
別の実施例は用途に特有の光ガイドを使用することを伴う。このようにして、種々の処置のための光のスペクトルを容易に制御できる。この別の実施例によれば、各種類の処置を特定の光ガイドで行う。
【0058】
光ガイドの光学特性を選択して特定の処置を最適にする。下記の波長がそれぞれの処置にとくに有用である。
直径が0.1mmより細い動脈−520〜650nm
直径が0.1mmより細い静脈−520〜700nm
直径が0.1mmと1.0mmの間の血管−550〜1000nm
より太い血管−600〜1000nm
各場合に、皮膚がより黒いとすると(より高い色素沈着)スペクトルのより低い遮断部おいてより長い波長を使用すべきである。
【0059】
浸透を最適にするために多重スペクトルを使用できる。これは、種々のスペクトルをおのおの持つ数個のパルスを照射することによって行うことができる。たとえば、第1のパルスが血液に非常に良く吸収されるスペクトルを持つことができる。このパルスは血液を凝固させることによって、血液の光学特性を変化させて、その血液が別の波長範囲(長い方が好ましい)を一層吸収するようにする。第2のパルスはより効率的に吸収される。その理由は、血液がより長い波長範囲のエネルギーを吸収するからである。この原理をレーザその他の光源で同様に使用できる。
【0060】
上記光ガイドの諸特徴に加えて、皮膚に入射する光線の角度分布を制御するために、一実施例においては、光ガイドを使用する。大きい角度(垂直に対して)で皮膚に入射する光は組織の中に非常に深くは浸透しない。逆に、皮膚に垂直に入射する光は組織の中に非常に深く浸透する。したがって、治療が浅い浸透を要する時は、比較的広い角度で発散する光線を分布させることが望ましい。あるいは、深い浸透を要する処置には狭い発散が望ましい。ある治療は浅い浸透と深い浸透の両方を要することがある。
【0061】
図15は、入射ビームの発散角度より大きい角度で発散する出射ビームを持つ光ガイド115を示す。図15に示すように、ビーム116が、光ガイド115の軸に対して小さい角度で光ガイド115に入る。ビーム501が光ガイド115を出ると、その軸に対する角度ははるかに大きい。光ガイド115のテーパ状の形がこの発散を強くする。
【0062】
図16はまっすぐな光ガイド118を示す。この光ガイドはそれに入る光線の角度分布を維持する。ビーム119が結合器601の軸に対して同じ角度で光ガイド118に入り、それから出ることが示されている。光ガイド115と118を別のやり方で使用することによって、上記のような狭くて深い浸透を行うことができる。あるいは、行う治療に必要な浸透深さに従ってユーザが結合器の種類を選択できる。
【0063】
図9および図10は棒状閃光灯92を直線−円形光ファイバ変換器94を介して光ファイバ束96に結合するための結合器90を示す。この実施例においては、反射器98の、棒状フラッシュ管92の軸に平行な平面内の、図10に示す、横断面は長円形である。フラッシュ管92は長円形の一つの焦点に配置され、直線−円形光ファイバ変換器94の直線側が長円形の他の焦点に配置される。この構成は製作が比較的簡単で、General Fiber Opticsから入手できる25−004−4などの市販されている直線−円形変換器を使用できる。この構成は光ファイバのより大きい露出部に対して、または閃光照明のために、とくに有用である。
【0064】
本発明によって達成できるエネルギー密度およびパワー密度は、表面処置すなわち医療用に希望の効果を達成するために十分高い。図4に示す実施例では、全エネルギー密度およびパワー密度を次のように見積もることができる。穴の直径が4mmで、主直径が3.3cmである典型的なトロイダル閃光灯では、閃光灯への10J/cmの電気的線形エネルギー密度入力を5μ秒のパルス幅で使用できる。閃光灯の光出力は最適な電気的動作条件で5〜6J/cmである。図4に示す反射器では閃光灯で発生された光の50%が下側の焦点に到達する。そうすると、その焦点において25〜30Jの全エネルギー束を得ることができる。図4または図8に示す実施例では、焦点面における反射器の全横断面面積は0.8cmである。光ファイバの入口における30〜40J/cmのエネルギー密度をこの横断面で得るべきである。これは5〜10MW/cmのパワー密度に対応する。それは、医療または物質処理において使用する典型的なパワー密度である。
【0065】
より長いパルスの場合には、閃光灯に入射するより高い線形パワー密度を使用できる。フラッシュ管への1m秒パルスでは線形パワー密度100J/cmを使用できる。焦点領域における対応するエネルギー密度は300J/cmまでである。そのようなエネルギー密度は産業用清掃および処理の用途、および医療用において非常に効果的である。
【0066】
棒状フラッシュ管などの伸ばされた光源に光ファイバを結合するための別の実施例を図11と図12に示す。図11の実施例では、閃光灯102および閃光灯外囲器103の周囲に光ファイバ101が巻かれる。閃光灯によって発生された光のいくらかが光ファイバに結合される。光ファイバによって捕らえられる向きに光線が伝えられるとすると、その光は光ファイバ中を伝わり、光ファイバの出口104でその光を使用できる。この構成の一つの制約は、閃光灯102によって発生された光のほとんどが、閃光灯102の表面に垂直な向きに進んで、光ファイバ101によって捕らえられないという事実である。
【0067】
図12に示す実施例はこの問題を克服するものである。図11の光ファイバ101などのドープされていない光ファイバではなくて、ドープされた光ファイバ105が閃光灯102と外囲器103の周囲に巻かれる。ドーパントは蛍光物質である。この蛍光物質は閃光灯102によって放出された光によって励起されて、光ファイバの内部に光を放射する。この光は全方向に放射され、その光のうち、光ファイバ105の臨界角内の光が捕らえられて、光ファイバの内部を伝わり、光ファイバの出口104で使用できる。光ファイバ内部に捕らえられた光の角度は、その光ファイバまたは光波ガイドを製造している材料の臨界角である。空気中の光ファイバ(または光波ガイド)ではこの角度はsinα=1/nによって与えられる。
【0068】
典型的には、ガラスまたはその他の透明な物質ではn=1.5およびα=41.8度である。これは、光ファイバの内部の蛍光物質によって放出された光の10%を超える捕獲効率に対応する。蛍光プロセスの効率が50%であると仮定すると、閃光灯によって発生された光の5%以上が捕獲され、光ファイバに沿って伝わる。たとえば、直線電力入力が300J/inchで、電気−光変換効率が50%であるある4”閃光灯が、それの電力の2.5%を光ファイバに結合する。これは、4”閃光灯の場合には、全光エネルギー30Jに対応する。この実施例は、閃光灯によって放出された光の波長を、上記治療または処理の用途のいくつかに一層有用なことがある波長に変換するという付加利点を有する。したがって、光ファイバにドープされる蛍光物質を、装置の特定の用途によって決定される放出波長に従って選択できる。
【0069】
一つの別の実施例は光を皮膚に結合するためにゲルを使用することを含む。この別の実施例は皮膚の外部層(表皮および真皮の上側層)の加熱を減少する。ゲルは水をベースとする高い粘性のゲルであることが好ましく、治療の前に皮膚に塗布する。もっとも、必ずしも水をベースとしない他のゲルを使用できる。比較的高い熱容量および熱伝導度を持つ、水をベースとするゲルなどのゲルが外皮(とくに表皮)の冷却を可能にするために好ましい。治療中に光が透明なゲルを透過して皮膚に到達するから、透明であることも望ましい。
【0070】
ここで、図13を参照して、治療の前にゲル110が皮膚21に塗布される。皮膚の上のゲルの平らな層を用いる。その理由は、光が透過するゲルの上側層が平らでないと、光を散乱させて皮膚の内部への光の浸透を減少させるからである。ゲルの上側層を平らにするために、皮膚の表面に透明で平らな固体片111を付着できる。構成を図13に概略的に示す。透明な板をガラスその他の透明な材料から製作できる。閃光灯ハウジングまたは上記光ガイドを透明板に直接接触して置くことができる。
【0071】
図13の構成には、皮膚の表面が粗いために皮膚に入る光の散乱(矢印113で表している)を減少するという利点がある。皮膚の屈折率は空気の屈折率より大きい。その結果、空気と皮膚の境界面に入射するどの光子も、入射角0度で皮膚に入射しなければ、屈折させられる。皮膚の表面は粗いから皮膚の角度分布は増加する。これを図14に概略的に示す。
【0072】
ゲルを使用するのはこの問題に対処するためである。というのは、皮膚の構造によって形成されている不規則な空所をゲルが埋めることができるからである。ゲルを覆う透明な板およびゲル自体の屈折率は、皮膚の屈折率に近いことが好ましい。可視光および紫外線における皮膚の屈折率は1.4程度であるので、そのようにすることは比較的容易である。ほとんどのガラスおよび透明プラスチックの屈折率は1.5程度であり、これは十分に近い。この範囲では水の屈折率は1.34程度である。水をベースとするゲルの屈折率も同様である。適切な付加物質によって屈折率を高くできる。したがって板とゲルは入射する光に対して平らな表面として作用する。ゲルおよび板の屈折率は皮膚の屈折率に近いので、ゲルと板の境界面およびゲルと皮膚の境界面における光の散乱は非常に少ない。
【0073】
ゲルの使用は脚の静脈および皮膚のその他の良性血管病変の治療に実験的に成功している。治療は上記閃光灯を用いて行った。しかし、別の実施例においては、異なる非コヒーレント光源、またはコヒーレント光源を使用できる。
【0074】
動作中は光は3個のパルスの列で照射するのが普通で、パルスの間には短い遅延時間を置く。この動作モードを使用する理由は、脚の静脈が代表的なものである、大きくて深い血管と比較して、表面にある、薄い(厚さが0.1mmより薄い)表皮がより急速に冷却することを利用するためである。皮膚に接触しているゲルはパルスの間の待機期間中に表皮を冷却する。この冷却によって表皮の受ける損傷が大幅に減少する。
【0075】
本発明に従って、長いパルスまたは遅延によって分離されたパルス列のいずれかで治療部位に光が照射される。遅延とパルス幅の少なくとも一方をオペレータが制御して、希望の処置を行うためには十分であるが、皮膚を損傷させない熱を加えることが好ましい。
【0076】
この着想を太くて深い血管(直径が2mmで、深さが2mm)で試験した。水をベースにしている市販の超音波ゲルの薄い層(アメリカ合衆国のParkerによって製造されている「Aqua clear」ゲル、厚さ1〜2mm)を皮膚に塗布した。ゲルの平らな層を発生するために1mmの薄いガラス窓を使用した。装置からの光がその薄いガラスとゲルを透過して皮膚に入射した。ゲル中に気泡が存在しないように注意を払った。この構成を30〜50J/cmの光子エネルギー密度で試験した。血管の凝固と掃除を皮膚に損傷を与えることなしに行った。これは、ゲルを使用せず、同じパルス構造の20J/cmの作用によって行って皮膚に火傷を生じた類似の試験とは正反対である。
【0077】
表皮の厚さは約0.1mmで、冷却時間は約5m秒である。したがって、火傷を避けるためには5m秒より長い遅延を用いる。
【0078】
別の実施例においては、閃光灯に供給する電圧と電流の少なくとも一方を制御することによって、治療のために使用する光のスペクトルを制御する。この技術で周知のように、閃光灯によって発生される光のスペクトルは、閃光灯に供給する電圧と電流に依存する。この実施例によれば、希望の治療スペクトルを得るために入力電圧と入力電流を選択する。使用する各閃光灯ごとに適切な電圧と電流を実験的に決定できる。たとえば、200アンペアの閃光灯電流で図17に示すスペクトルを発生した。同様に、図18に示すスペクトルは380アンペアの閃光灯電流で発生したものである。図17に示すスペクトルは800〜1000nmの波長範囲を大きく強めていることを示す。そのようなスペクトルは太い血管の治療にとくに有用である。
【0079】
出力スペクトルを制御するために用いる種々の電流および電圧は、閃光灯の電源の一部として直列または並列に接続できるコンデンサ群を用いて得ることができる。直列接続では比較的高い電圧と比較的大きい電流が得られ、それによって500〜650nmなどのより短い波長にエネルギーを有するスペクトルを発生する。そのような直列接続は、より細い血管の治療のために有用であるより短いパルス(たとえば、1〜10m秒)を発生するために適切である。
【0080】
並列接続はより低い電圧とより小さい電流を提供するから、700〜1000nmなどのより長い波長の出力スペクトルを発生する。そのようなスペクトルはより太い血管の治療に適切で、より長いパルス(たとえば、10〜50m秒の範囲)を発生するために適当である。直列接続または並列接続の選択はリレーまたはリレー群を用いて行うことができる。
【0081】
別の実施例においては、図3に示すパルス形成ネットワークを、図19に示すようなGTOドライバ回路121で置き換えることができる。図19に示すドライバ回路は、閃光灯への電力供給を制御するためにターンオンおよびターンオフできるスイッチを使用する。この別の実施例をスイッチとして使用するGTOに関して説明するが、IGBTなどの、ターンオンおよびターンオフできる他のスイッチも使用できる。
【0082】
ここで図19を参照して、ドライバ回路121は、高電圧電源122、コンデンサバンクC5、インダクタL5、ダイオードD5、スイッチGT01、ダイオードD6、ダイオードD7、抵抗R5、コンデンサC6、GTOトリガ発生器TR1、抵抗R7、コンデンサC7、および閃光灯トリガ発生器TR2を含む。それらの部品は閃光灯14に接続されて、電力パルスを閃光灯14に供給する。パルスの持続時間とタイミングはここでの説明に従って定められる。ドライバ回路121は下記のようにして動作する。
【0083】
高電圧電源122はコンデンサバンクC5の端子間に接続され、コンデンサバンクC5を閃光灯14に印加するために適当な電圧までコンデンサバンクC5を充電する。コンデンサバンクC5は1個または複数のコンデンサを用いて、上記のようにして構成できる。
【0084】
閃光灯14を発光させる前に、閃光灯トリガ発生器TR2は閃光灯14を降伏させて、それの内部に比較的低いインピーダンスの通路を形成する。閃光灯が降伏した後で、コンデンサC7は電流を閃光灯14に急激に流して、それの内部に比較的低いインピーダンスの通路を更に形成する。このようにして、閃光灯14がパワーパルスを発生する準備を行わせる予備放電が行われる。コンデンサC7はコンデンサバンクC5より小さい電流を供給する。あるいは、ドライバ回路121をシマー(simmer)モードで動作できる。このモードでは予備放電は不要である。
【0085】
その後で、GTOトリガ発生器TR1からのパルスでスイッチGTO1をターンオンして、閃光灯14とコンデンサバンクC5との間の回路を完結する。そうするとコンデンサバンクC5は閃光灯14を通じて放電する。閃光灯14を流れる電流の立ち上がり時間を制御するためにインダクタL5を設けることができる。インダクタL5は、図示しない固有の抵抗性部品を含むことができる。
【0086】
希望のパルス幅によって決定された長さの時間が経過した後で、GTOトリガ発生器TR1はパルスをスイッチGTO1に供給してそれをオフにする。制御回路がトリガパルスのタイミングを決定して、希望のパルス幅および希望の遅延に従ってそれらのパルスを供給する。
【0087】
ダイオードD6と、抵抗R5と、コンデンサC6とで構成されたスナッバー(snubber)回路がスイッチGTO1のために設けられる。また、スイッチGTO1を逆電圧から保護するためにダイオードD5とD7が設けられる。スイッチGTO1の設けられ電流を測定するために抵抗R7が閃光灯14に並列接続される。その抵抗はスイッチGTO1を適切に動作させるために使用できる。
【0088】
コンデンサバンクC5にSCRその他のスイッチを並列に設けるためにドライバ回路121にそれらの部品を付加することもできる。こうすることによって、スイッチGTO1をターンオンすることなしにコンデンサバンクC5を放電またはリセットできる。図示の並列トリガではなくて直列トリガを行う回路を設けるということなどの、その他の変更を行うことができる。別の変更は、閃光灯14ではなくてレーザを用いるドライバ回路を使用することである。
【0089】
パルス幅と遅延を適切に使用することによって表皮の火傷を避けることを支援できる。表皮の冷却時間は5m秒であり、太い血管の冷却時間はそれより長い(1mmの血管の冷却時間は約300m秒である)。そうすると、5m秒より長い持続時間を持つパルスが持続している間は、表皮は冷却できるが、血管はそうではない。たとえば、太い血管(直径が約1mmの血管)を治療するためには、100m秒のパルスでは皮膚は冷却するが、血管は冷却しない。
【0090】
一連のパルスを用いて同じ効果を達成できる。これは、1個の長いパルスを閃光灯に供給することが実際的ではない場合に有用である。皮膚は冷却できるが、血管が冷却するためには短かすぎるようにパルスの間の遅延時間を選択する。そうすると、太い血管の冷却時間は長いから、より長い遅延時間で太い血管を処置できる。細い血管は急速に冷却するから長い遅延時間は効果的ではない。しかし、細い血管は必要とするエネルギーも小さく、1個のパルスで効果的に処置できる。
【0091】
適当な遅延時間は20〜500m秒の範囲である。更に詳しくいえば、直径が1mmより太い血管では100〜500m秒の遅延時間が効果的である。直径が0.5〜1mmの血管では20〜100m秒の遅延時間が効果的である。直径が0.1〜0.5mmの血管では10〜50m秒の遅延時間が効果的である。直径が0.1mmより細い血管では1〜20m秒の範囲のパルス幅のパルス1個が効果的である。
【0092】
また、皮膚の色素沈着に従って遅延時間を選択すべきである。色が濃い皮膚はより多くのエネルギーを吸収するから冷却に必要な時間が長くなる。したがって、より長い遅延時間を必要とする。色が薄い皮膚はより少ないエネルギーを吸収するからより短い遅延時間で済む。
【0093】
多数のパルスは皮膚中または皮膚に近い細い血管の「パーポラ(purpora)」すなわち破裂を避けることが判明されている。火傷を避け、冷却するためにパルスを使用することは、レーザまたはその他の光源によって供給される光についても同様に有効である。
【0094】
別の実施例は閃光灯を制御するためにマイクロプロセッサまたはパーソナルコンピュータを使用することを含む。タイミング機能を提供し、上記トリガ信号を後見するためにマイクロプロセッサを使用できる。また、一実施例においては、マイクロプロセッサはスクリーンおよびキーボード、ボタン、マウス、またはその他の入力装置などのユーザインタフェースを含む。マイクロプロセッサには治療パラメータの選択を支援する情報を記憶する。
【0095】
たとえば、治療される状態がポートワインしみ皮膚III型であるとすると、医師はその状態をマイクロプロセッサに入力する。そうするとマイクロプロセッサは、570nm遮断フィルタを用いる、遅延時間が50m秒で、エネルギー密度が55J/cmである二重パルスなどの示唆された治療パラメータで応答する。医師はそれらの示唆された治療パラメータを変更できるが、示唆された治療パラメータに対して動作の指針を参照する必要はない。
【0096】
マイクロプロセッサまたはパーソナルコンピュータは患者情報を作成して、それをデータベースに保存するために使用することもできる。そうすると、処置した状態、処置パラメータ、治療回数等過去の治療情報を保存し、患者を再び治療する際にその情報を呼び出すことができる。これは患者に適切な治療を施すことを支援する。また、データベースは各治療の前後における患者の状態の写真を含むこともできる。また、これは記録保持と、どの処置が所与の状態に対して最も有効であるかの決定も支援する。
【0097】
上記治療に加えて、ここで説明している装置および方法は他の状態を処置するためにも使用できる。たとえば、乾癬またはいぼの治療に成功している。同様に皮膚の若返り(しわの処置)にも効果があるはずである。発明者は痔、のどの病変、および血管の不具合に起因する婦人科の諸疾患を治療するために本発明を使用することも目論んでいる。
【0098】
したがって、上記諸目的および諸利点を十分に満足する閃光灯および結合器を本発明に従って得られたことが明らかである。本発明を特定の実施例に関連して説明したが、多くの代替例、変更が当業者には明瞭であろう。したがって、添付した特許請求の範囲の要旨および範囲に含まれるそのような代替例および変更の全てを包含することを意図するものである。

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】非コヒーレントパルス光源皮膚治療装置の横断面図である。
【図2】図1の光源の側面図である。
【図3】図1と図2の皮膚治療装置に使用するための可変パルス幅パルス形成回路の回路図である。
【図4】トロイダルフラッシュ管からの光を円錐形縁部を持つ光フィルタに結合する結合器の横断面図である。
【図5】トロイダルフラッシュ管の側面図である。
【図6】トロイダルフラッシュ管の上面図である。
【図7】円錐形部分に結合するための構造を示す図である。
【図8】トロイダルフラッシュ管からの光を平らな縁部を持つ光フィルタに結合する結合器の横断面図である。
【図9】棒状フラッシュ管からの光を円形光ファイバ束に結合する結合器の正面断面図である。
【図10】図9の結合器の側面断面図である。
【図11】棒状フラッシュ管からの光を光ファイバに結合する結合器の正面図である。
【図12】棒状フラッシュ管からの光をドープされている光ファイバに結合する結合器の正面図である。
【図13】透明な板によるゲルと皮膚の境界面の略図である。
【図14】ゲルを用いない光子の浸透の角度分布を示す図である。
【図15】大きな角度発散を行う光ガイドを示す図である。
【図16】小さい角度発散を行う光ガイドを示す図である。
【図17】200アンペアの電流で閃光灯によって発生されたスペクトルを示す図である。
【図18】380アンペアの電流で閃光灯によって発生されたスペクトルを示す図である。
【図19】閃光灯用GTOドライバ回路を示す。
【符号の説明】
【0100】
10 皮膚治療装置
14 光源(閃光灯)
16、44 反射器
18 フィルタ
40、80、90、601 結合器
42、92 フラッシュ管
46 光ファイバ
94 直線−円形光ファイバ変換器
115、118 光ガイド
121 ドライバ回路
122 高電圧電源
TR1 GTOトリガ発生器
TR2 フラッシュ管トリガ発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置のための光出力を供給するように動作できる非コヒーレントパルス状光源と、この光源に接続された電源と、反射器を含み開口部を有するハウジングとを備え、光源はハウジングの内部に配置され、反射器は光源からの光を開口部へ反射し、開口部と治療部位の間に可撓性光ガイドが配置され、この光ガイドは光源からの非コヒーレント光を受けてその光を治療部位へ送り、光源と反射器および光ガイドがあいまって6J/cmと100J/cmの間の光を供給する治療部位を処置するための治療装置であって、
光ガイドは所定の角度で発散している光を送り、発散は希望の処置深さに応じて選択されることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
光源と光ガイドの間に第1の干渉フィルタが配置され、第1のフィルタと治療部位の間に第2の吸収フィルタが配置されることを特徴とする請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
吸収染料を含む材料から光ガイドが製作され、この光ガイドが第2の吸収フィルタであることを特徴とする請求項2に記載の治療装置。
【請求項4】
反射器が円の一部である反射部を含むことを特徴とする請求項1に記載の治療装置。
【請求項5】
反射部が光源に比較的近いことを特徴とする請求項4に記載の治療装置。
【請求項6】
治療部位の上に冷却ゲルが配置されることを特徴とする請求項5に記載の治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−188473(P2008−188473A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126734(P2008−126734)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【分割の表示】特願2005−5997(P2005−5997)の分割
【原出願日】平成8年2月2日(1996.2.2)
【出願人】(596015756)イー・エス・シイ・メデイカル・システムズ・リミテツド (2)
【Fターム(参考)】