説明

治療装置

【課題】湾曲又は屈曲したパイプ部分(2)及びその第1端部(3)に挿入されたマウスピース(6)を有する、患者の呼吸を改善するための治療装置(1)であって、気道の病気を治療し、又は患者の肺活量及び肺吸入能力を改善させる、扱い易い医療装置(1)を提供する。
【解決手段】これは、パイプ部分(2)に固定して連結された保持ペグ(11)が、パイプ部分(2)の第2端部(4)に押し込まれ、通路チャネル(12)が、パイプ部分(2)の内部に完全に又は部分的に入り込んだ保持ペグに加工され、保持ペグ(11)は、パイプ部分(2)の内部に延在するそれに取り付けられたフレキシブルなホース(13)を有し、その自由端(24)がパイプ部分(2)の内側の壁(5)の間でマウスピース(6)の領域で自由に移動できることで実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の呼吸を改善する治療装置に関し、湾曲又は屈曲したパイプ部分とその第1端部に挿入されたマウスピースを有する。
【背景技術】
【0002】
患者の呼吸を補助する治療装置は、例えば特許文献1に開示されている。この場合、湾曲したパイプ部分は、その端部に挿入された高さ調節可能なマウスピースを有する。結局、マウスピースは、ある領域においてパイプ部分内に入り込む。マウスピースの入り込み領域は、それに取り付けられたホースを有し、それはパイプ部分の内部輪郭によって曲げられている。パイプ部分の第2端部は開いており、従って治療装置は吸入と放出に使用できる。ホース部分の屈曲により、これは吸入及び放出の間振動を受けることになり、よって患者の咽頭及び肺の領域で振動を生じさせ、従って気道の病気を治療することができる。
【0003】
特許文献1に開示された治療装置は実用的に効果的だと証明されているが、吸入の間ホース部分で生じる振動は、放出の間のそれらよりも振幅及び周波数が顕著に小さいため、空気がホース部分を介して吸入されるとき、最適な治療サクセスが実現されないことが明らかになっている。
【0004】
吸入の間のこの治療装置による別な不都合は、空気抵抗がかなり大きいほどホース部分の断面が狭く、又はホース部分が完全に閉じており、空気が患者の気道に入らないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 0681853 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゆえに、本発明の課題は、前述のタイプの治療装置を発展させ、振動する空気抵抗が吸入の間生成され、それにより患者の気道から粘液や他の不純物を取り除くこと、又は患者の気道を訓練し、エリートスポーツのための大きい肺活量(肺ボリューム)を達成することである。同時に、治療装置は扱い易く、患者の個人的な医療要件に応じて調節可能でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これは、パイプ部分に固定して連結された保持ペグがパイプ部分の第2端部に押し込まれ、保持ペグはパイプ部分の内部に完全に又は部分的に入り込み、それに加工された通路チャネルを有し、保持ペグは、パイプ部分の内部に延在するそれに取り付けられたフレキシブルなホースを有し、その自由端がパイプ部分の内壁の間のマウスピースの領域で自由に動くことで、実現される。
【0008】
ねじがパイプ部分の第2部分に挿入され、パイプ部分に対して回り、ねじ山(スレッド)に支持され、ねじはそれに加工された通路穴を有し、保持ペグがそれに挿入されると特に有利である。これは、保持ペグに取り付けられたホースがパイプ部分の内部でその位置を変更することを意味するからである。パイプ部分は湾曲し、それでホースは、2つの位置、少なくともホームポジションでパイプ部分の内壁と接触し、よって、ねじを回すとパイプ部分の内壁とホースとの接触面が変更され、又はホースに加えられる捩りを生じさせる。このような設定オプションは、マウスピースを介して取り入れられる空気がホースを貫流し、そこからパルス的に出力されるため、空気抵抗が加えられるという有利な効果を有する。すなわち、ホースの調節可能な位置決めにより、ホースの屈曲を変えることができ、生じる空気抵抗はホースの屈曲状態に依存し、それぞれの患者はホースの空気抵抗を彼らの個々の医療要件に適合させることができる。
【0009】
空気抵抗は、パイプ部分に入り込む保持ペグの長さを可変に調節することでも調節できる。つまり、ホースは異なる高さ位置を有してパイプ部分の内部に延在する。
【0010】
本発明のさらなる有利な構成は従属請求項に開示される。
図面は、本発明に従い構成される3つの治療装置の断面図であり、その詳細を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】湾曲したパイプ部分を有する治療装置の第1の実施形態を示す。その内部に保持ペグに取り付けられたホースが接触しており、ホースの自由端は、第1の操作状態において、パイプ部分の内壁の間でマウスピースの領域において自由に移動できる。
【図2】第2の操作状態における図1に従う治療装置を示す。
【図3】第3の操作状態における図1に従う治療装置を示す。
【図4】第4の操作状態における図1に従う治療装置を示す。
【図5】湾曲したパイプ部分を有する治療装置の第2の実施形態を示す。その内部に通気ホースがマウスピースの領域に挿入され、それを介して周囲の空気が吸い込まれる。
【図6】湾曲したパイプ部分とそれに挿入された保持ペグを有する治療装置の第3の実施形態を示す。それは、外部に対して殆ど気密なシールを作るカバーを有し、それにより空気供給が調節される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜4は治療装置1を示し、これにより、振動する空気抵抗を用いて患者の気道が治療される。この場合治療装置1は、スポーツマンの肺活量又は肺吸入能力を増大させるために、患者による吸入の間呼吸を補助するのに使用され、又はスポーツ用品として使用される。
【0013】
治療装置1は、湾曲したパイプ部分2からなり、その縦の部分はほぼ四分の一の円である。パイプ部分2は、開放した端部3,4を有する。第1端部3は、そこに押し込まれたマウスピース6を有し、それはビーク(嘴)として設計されている。少なくとも1つのフィルターインサート7’又は7’’がマウスピース6内に具備されている。フィルターインサート7’は、ホース13の自由端24に隣接して配置され、吸入しようとする空気に存在する又はホース13から分離する不純物や他の粒子を捕えるように意図された微孔性の通路開口を有する。フィルターインサート7’’は、患者の気道に治療効果のある薬剤サブストレート又は他の物質で充満され、吸入の間空気がフィルターインサート7’’を貫流し、それにより薬剤サブストレートの粒子を拾い、それらを呼吸毎に患者の気道に運ぶ効果が得られる。図1〜4は、様々な選択の可能性を示す。これは、様々な種類のフィルターインサート7’又は7’’がマウスピース6に挿入されるためである。
【0014】
ねじ14が、パイプ部分2の第2端部4の回転装置のねじ山15に支持される。ねじ14の中央はそれに加工された通路開口16を有し、そこに保持ペグ11が配置され、高さ調節可能な位置でそこに保持される。ゆえに、保持ペグ11はパイプ部分2の内部に部分的に突出する。保持ペグ11は、パイプ部分2内部でそれに押し込まれたホース13の位置を固定する。ホース13のデザイン及び構造は以下でより詳細に説明する。保持ペグ11は、ホース13の内部に現れる、それに加工された通路チャネル12を有する。従って、周囲空気が吸入の間通路チャネル12を通ってホース13に吸い込まれ、そこからマウスピース6に達する。
【0015】
多数のノッチ26が保持ペグ11の外側に形成され、ノッチ26は切り込み(アンダーカット)として構成される。ねじ14の外側は、それに配置・連結された戻り止めフック25を有し、戻り止めフック25は特定のノッチ26に係合し、それで保持ペグ11は、戻り止めフック25により高さ調節可能装置のねじ14に保持される。
【0016】
ホース13は、ホース部分13の入り口領域とホース13の2つの膨らんだサブ領域23の間の遷移領域として配置された少なくとも2つの屈曲領域21又は22を有する。屈曲領域21,22の内径は、ホース13の2つの膨らんだサブ領域23の内径より小さく設計される。ねじ14を回すこの手段により、ホース13の位置はパイプ部分2の壁5に対して変化し、ホース13はそれ自体の縦軸回りに捩れる。図1は、屈曲領域21,22がパイプ部分2の壁5の領域内に延在する様子を示す。これらの領域は、ねじ14の捩れによって壁5から持ち上げられる。保持ペグ11の高さ調節により、パイプ部分2内部に延在するホース13はその位置が変化し、それによりホース13がパイプ部分13の壁5に対してどのように延在するか調節することができる。
【0017】
吸入の間ホース13の自由端24は、壁5の間で前後に自由にはためくので、振動し始める。さらに、ホース13の個々のサブ領域は、吸入プロセスの間様々な程度に空気で満たされる。これは、屈曲領域21,22が特定のサブ領域23からの空気の流れを減速し、それにより入口サイドのサブ領域23が膨らんで膨張形状を有するためである。図4は、どのようにホース13の自由端24が壁5の間で前後に動くかを示す。
【0018】
図3におけるホース13は、異なるサイズの縦寸法を有する4つのサブ領域23を有する。膨らんだサブ領域23の間の遷移領域は設計寸法により既に狭くなっており、又はホース13の屈曲は、ねじ14の回転又は保持ペグ11の高さ調節によって作られる。2つの隣接するサブ領域23の間の遷移領域22におけるこの種の狭窄(絞り)は、ホース13がパイプ部分2の壁5に接触することでも実現される。
【0019】
図2は、図1での位置に比べてパイプ部分2により深く押し込まれた保持ペグ11を示す。つまり、ホース13は異なる位置をとっており、ゆえに図1に比べて異なる反りを有する。
【0020】
入口開口17が治療装置1の壁5に加工され、入口開口17はそこに押し込まれた入口弁18を有する。それは保持ペグ11の領域に延在し、ホース27を介してコンテナ28に連結している。調節要素19が、空気の貫流する入口弁18の断面積20を変更し、患者は、通路チャネル12及びホース13だけでなく、空気の貫流する入口弁18及びその断面領域をも介して、大気からの空気又はガス又は薬剤を吸入することができる。ガス又は薬剤、好ましくは酸素はコンテナ28に収容され、その内部は入口弁18に接続し、ゆえに調節可能な量でパイプ部分2の内部に入る。コンテナ28のガスは正圧を受け、又は患者の吸入によりそこから吸い出される。
【0021】
図5は、図1〜4に従う治療装置1の別な構成をとる第2の実施形態を示す。通気パイプ31が、マウスピース6とホース13の自由端24の間に挿入されており、それにより大気に連通するバイパス管路が備えられる。通気パイプ31は入口穴34を有し、当該穴はそれに加工された特定の内径を有する。入口穴34の縦軸は、パイプ部分2内の呼気の流れ方向と直角に延在する。入口穴34を通る周囲空気の供給を調節するために、入口穴34は調節リング32でシールされる。
【0022】
調節リング32は、通気パイプ31の外周に回転するように設置され、4つの通路開口33が図5に示される実施形態における調節リング32に加工される。4つの通路開口33は、異なるサイズの内径を有する。この場合通路開口33の最大の内径は、入口穴34の内径に一致する。入口穴34が調節リング32でシールされる場合、周囲空気は入口穴34を貫流せず、治療装置1の機能モードは、図1〜4に従う治療装置1の基本バージョンに一致する。
【0023】
調節リング32を回すことで、調節リング32における4つの通路開口33が入口穴34と一直線になり、それにより通路開口33は入口穴34の上に配置され、吸入プロセスの間特定量の空気がパイプ部分2の内部に吸い込まれる。この手段は、ホース13を介して吸入されるべき空気量に加えて、周囲空気が通路穴33及び入口穴34を介してパイプ部分2の内部に入るので、患者が、ホース13の自由端24の振動を開始するために、大きめの肺の力を出さなければならない効果をもたらす。特に、肺活量及び肺の力を増大させるための医療的貢献がなされるのは、周囲空気を吸入するためのこの付加的な可能性であり、図5に従う治療装置1は、例えばダイバーやサイクリスト(自転車乗り)のためのスポーツ装置としても使用される。
【0024】
図6は、図1〜4に従う治療装置1の別な実施形態を示す。保持ペグ11の自由端は、そこに加工された入口開口36を備えたカバー35ですなわちシールされる。入口穴36は、回転するようにカバー35に支持された調節リング37によってカバーされている。調節リング37の側方の外郭は、そこに加工された複数の通路チャネル38を有し、その内径は互いにサイズが異なる。この場合入口チャネル38の最大の内径は、入口穴36の内径に一致する。調節リング37を捩るこの手段により、入口穴36と対応する通路チャネル38を貫流する周囲空気の量が調節される。選択されたセッティングに依存して、大気から入口穴34を介してホース13に空気を吸い込むためには、より大きな肺の力が要る。結局、この手段は治療装置1の有効性をも増大させ、治療装置は、エリートスポーツマンのトレーニングのためのスポーツ装置として使用できる。
【0025】
図5,6に示され、説明された図1〜4に従う治療装置1の別な実施形態は、互いに組み合わせることができ、又はモジュラー装置の図1〜4に従う治療装置1に結合されてもよい。図5,6で説明された手段は、ホース13の振動が引き起こされる吸入速度を変更する。結局、それぞれの患者は、彼らの個人的な要件に従い治療装置1を調節し、いわゆる刺激的な肺活量測定又は刺激的な筋肉トレーナーとして使用することができる。ともに穿孔されたリング装置を形成する、保持ペグ11に連結したカバー35と調節リング37を有する装置は、調節リング37が異なる位置に回されるとそれに応じて必要になる吸入圧力を調節・変更する。
【符号の説明】
【0026】
1 治療装置
2 パイプ部分
3 第1端部
4 第2端部
6 マウスピース
11 保持ペグ
12 通路チャネル
13 ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲又は屈曲したパイプ部分(2)及びその第1端部(3)に挿入されたマウスピース(6)を有する、患者の呼吸を改善するための治療装置(1)において、
パイプ部分(2)に固定して連結された保持ペグ(11)が、パイプ部分(2)の第2端部(4)に押し込まれ、パイプ部分(2)の内部に完全に又は部分的に入り込んだ保持ペグに加工された通路チャネル(12)を有し、
保持ペグ(11)は、パイプ部分(2)の内部に延在するそれに取り付けられたフレキシブルなホース(13)を有し、その自由端(24)がパイプ部分(2)の内側の壁(5)の間でマウスピース(6)の領域で自由に移動できることを特徴とする治療装置。
【請求項2】
ねじ(14)が、パイプ部分(2)の第2端部(4)に挿入され、パイプ部分(2)に対して回転し、ねじ山(15)に支持され、
ねじ(14)は、そこに加工された通路穴(16)を有し、保持ペグ(11)がそこに挿入されることを特徴とする請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
パイプ部分(2)に入り込む保持ペグ(11)の長さが可変に調節されることを特徴とする請求項1又は2に記載の治療装置。
【請求項4】
ねじ(14)の外側が、それに形成された戻り止めフック(25)を有し、戻り止めフック(25)は、保持ペグ(11)の外側に加工された切り込みの形状のノッチ(26)に係合し、
戻り止めフック(25)は、保持ペグ(11)をねじ(14)上に保持し、それで保持ペグの高さが調節されることを特徴とする請求項2又は3に記載の治療装置。
【請求項5】
入口開口(17)が、好ましくは保持ペグ(11)の領域で、パイプ部分(2)の壁(5)に加工され、入口弁(18)が入口開口(17)に挿入されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項6】
調節要素(19)が入口弁(18)に具備され、それにより空気が貫流する入口弁の断面積(20)が変更されることを特徴とする請求項5に記載の治療装置。
【請求項7】
コンテナ(28)が入口弁(18)に連結し、コンテナ(28)は、ガス又はガス・液体混合物、好ましくは酸素又は薬剤を収容し、これらは入口弁(18)を介して正圧により調節可能な量でパイプ部分(2)の内部に入り、又は患者の呼吸により吸い込まれることを特徴とする請求項5又は6に記載の治療装置。
【請求項8】
静止時に、ホース(13)は、少なくとも1箇所でパイプ部分(2)の壁(5)に接触し、パイプ部分(2)の内側の外郭により曲げられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項9】
ホース(13)は、遷移又は屈曲領域(22)により共に連結した2つのサブ領域(23)を有し、
遷移又は屈曲領域(22)の内径は、ホース(13)の2つの隣接するサブ領域(23)の内径よりサイズが小さいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項10】
少なくとも1つのフィルターインサート(7’,7’’)がマウスピース(6)に挿入され、
フィルターインサート(7’)は、吸入される空気の不純物や他の粒子を掃除し、
フィルターインサート(7’’)は、吸入の間患者の気道に入り込む薬剤、サブストレートなどで充満することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項11】
通気チューブ(31)が、ホース(13)の自由端(24)とマウスピース(6)の間のパイプ部分(2)に挿入され、
通気チューブ(31)は、吸い込まれる呼気の流れ方向と垂直に延在する縦軸を有する入口穴(34)を有し、
通気チューブ(31)の外側プロフィールが、回転するようにそこに保持された調節リング(32)を有し、そこに、入口穴(34)と一直線になる、異なるサイズの内径を有する1又は複数の通路開口(33)が加工されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の治療装置。
【請求項12】
外側に突出した保持ペグ(11)の自由端はカバー(35)でシールされ、
カバー(35)はそこに加工された入口穴(36)を有し、当該入口穴は、カバー(35)に回転設置された調節リング(37)で覆われ、
入口穴(36)と一直線に配置される多数の通路チャネル(38)が、調節リング(37)に設けられ、異なるサイズの内径を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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