説明

泌尿器系疾患を治療する医薬組成物

【課題】 感染および反復発作を効果的に制御し、膀胱表面傷口の癒合を促す泌尿器系統を治療する医薬組成物を提供する。
【解決手段】 直径が2 nm〜2 mmであるカーボン材料が0.1 mg/ml〜100 mg/ml含まれる。カーボン材料は、直径2 nm〜2 mmである銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、および、銅のうちの少なくとも一種を含む金属顆粒と結合することができる。金属顆粒と結合したカーボン材料は膀胱及び関連した組織と相互に接触することで、殺菌性能と炎症解消効果があり、感染および反復発作を効果的に制御できる。また、膀胱表面の傷口の癒合を促し、膀胱炎患者の病的症状を緩和する効果がある。さらに定期的の使用により、泌尿系統の無菌状態が保たれ、細菌尿、尿路感染症、膀胱炎、または、腎臓炎の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬用上使用可能であり、泌尿器系の病気の治療または予防に用いられる医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、泌尿器の疾病の多くは泌尿器が細菌、化学薬物、放射線、抗癌薬物また外因性感染によって引き起こされた膀胱炎或いは尿路感染症が多い。薬物投与で抵抗力が落ち、そして細菌が侵入して感染を引き起こすケースもある。泌尿器の疾病においては、特に女性及び導尿管使用の患者がかかりやすい。膀胱炎が起きているかどうかについて最も簡単な判断法は、細菌尿(bacteriuria)があるか 、すなわち尿中細菌が105CFU/ml以上あるかどうかである。尿中の細菌量が多すぎれば、膀胱炎或いは腎盂炎である恐れがある。男性の場合、細菌が尿道から2センチ離れた位置に存在する比率は約98 %、5センチの位置での比率は49 %である。女性の場合はさらに比率が高いと考えられる。
【0003】
2007年台湾集中治療室の統計によると、メディカルセンターまたは区域病院にかかわらず、尿路感染症が院内感染の37.5%で一位を占めている。また、あらゆる年齢層においても、細菌感染により引き起こされた泌尿系統の疾病のうち、尿道感染症が最も多いといわれる。
外因性感染の主要原因は病院でよく行われる導尿管挿入術或いは膀胱鏡検査等の侵入式治療である。侵入式治療により細菌が膀胱に持ち込まれて、上行性感染さらに細菌性膀胱炎を起こす。ひどい場合は急性膀胱炎或いは腎臓炎等を起こすことさえある。
一般的によく見られる細菌性膀胱炎は膀胱粘膜に赤くなったり腫れたりまた血管(Blood vessel、BV)充血等の状況が発生する。一方、間質性膀胱炎は粘膜下層と筋肉層との間に炎症が起きる。膀胱炎にかかると、一般的には膀胱に不快感と疼痛が感じ、頻尿、尿意逼迫等の関連病状が発生する。特に膀胱炎の治療が不適切の場合は、膀胱に厳重な感染が起き、患者が腎臓機能を失って腎臓透析治療が必要になったり、さらに敗血症に非係る恐れがある。
【0004】
現在、膀胱炎に用いられる治療法においては、主に薬物治療法、抗菌膀胱洗浄術(Bladder irrigation)、注入法(Infusion administration)等である。ただし、注入法(Infusion administration)の単一療法でも、また注入法と他の治療法との併用療法、上記三療法を結合する順序療法でも、同じくジメチルサルフォキサイド(dimethyl sulfoxide)、クロルパクチン(clorpactin)、ヘパリン(heparin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アドリアマイシン(adriamycin、ADM)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、亜硝酸(Silver nitrite)、ペントサンポリサルフェートソディウム(Pentosan Polysulfate Sodium)、クロモリンソディウム(cromolyn sodium)、ペニシリン(Pencillin)、ニトロフラゾン、ゲンタマイシン(gentamicin)或いはマイルドシルバープロテイン(Mild Silver Protein)等の薬物を使用している。上記の薬物の多くは膀胱粘膜(bladder mucosa)及び間質組織層の治療を目的にして、疼痛、尿酸、尿意逼迫等膀胱炎の症状を緩和させる効果がある。
尿道の細菌感染症を予防する技術においては、抗生物質法予防、導尿管表面薬物塗布技術、銀をメッキした導尿管技術等がある。
【0005】
しかし、上記の従来の膀胱炎の治療法或いは尿道細菌感染症の予防技術においては、持続的に症状を緩和したり長期的に治療また使用できたりすることが少なく、しかも治療期間の間は多少副作用が発生するのが現状である。
【0006】
膀胱炎の治療については、単なる抗菌薬物のみに頼りの治療では直ちに膀胱粘膜及び間質組織の修復ができないためながなが予期効果が達成できないことが現実である。もし破壊された膀胱粘膜、間質組織に対して効果的な修復を行い、と同時に感染を引き起こす原因を探し出し、即時に必要な処理を行えると、有効的に感染を制御また反復発作が防止でき、膀胱表面の傷口の癒合を促し、患者の病状を緩和することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を鏡みてなされたものであり、その目的は、破壊された膀胱粘膜(bladder mucosa)及び間質組織を修復し、更なる細菌の進入および繁殖を抑制可能な泌尿器系疾患を治療する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、下記の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物を開発した。
請求項1に係る発明の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物は、60 質量%以上のカーボンを含むカーボン材料と含水賦形剤とを組合せて形成され、薬用上使用可能である。ここで、カーボン材料の直径は2 nm〜2 mmである。
また、カーボン材料は0.1 mg/ml〜100 mg/ml含まれている。
さらに、カーボン材料は直径が2 nm〜2 mmである銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、および、銅の中の少なくとも一種を含む金属顆粒と結合する。金属顆粒と結合したカーボン材料は、膀胱及び関連した組織と相互接触することで、例えば、膀胱炎、急性膀胱炎、慢性膀胱炎、出血性膀胱炎、細菌性膀胱炎、気腫性膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱或いは尿道に傷口、および、尿道感染の治療及び予防することができる。さらに、感染および反復発作を有効的に抑制し、膀胱表面の傷口の癒合を促し、患者の病状を緩和することができる。
【発明の効果】
【0009】
これにより、本発明の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物は、膀胱炎が起きる時、炎症を引き起こす原因である細菌を迅速に吸着して内毒素物質が人体へ及ばす影響を除去する。そして破壊された膀胱粘膜(bladder mucosa)及び間質組織を修復し更なる細菌の進入と繁殖を抑制することができる。よって、膀胱表面の傷口の癒合、感染の制御、さらに反復発作の抑制、膀胱炎の病状の緩和等の効果が期待さできる。
よって、本発明の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物は、感染を効果的に制御しながら膀胱炎の反復発作を防止し、膀胱表面傷口の癒合を促すことで膀胱炎患者の病的症状を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例の各組ラットの尿中の炎症誘導剤含量と膀胱質量の比較図である。
【図2】本発明の第1実施例のM1−1(Normal)組の正常ラットの膀胱のH & E染色図である。
【図3】本発明の第1実施例のM1−2(LPS)組のラットの炎症誘導剤により炎症誘導後の膀胱H & E染色図である。
【図4】図3のM1−2 (LPS)組の膀胱の粘膜組織のH & E染色図である。
【図5】本発明の第1実施例のM1−3(LSP−ACF)組のラットが炎症誘導剤により炎症誘導後、複合賦形剤の医薬組成物で注入治療が行われた膀胱のH & E染色図である。
【図6】本発明の第1実施例の、各組ラットの血清中のプロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度及び膀胱質量の比較図である。
【図7】本発明の第1実施例のM2−1(Normal)組の正常ラットの膀胱のH & E染色図である。
【図8】本発明の第1実施例のM2−2(LPS)組の炎症誘導剤により炎症が誘導された膀胱のH & E染色図である。
【図9】本発明の第1実施例のM2−3(LPS−ACF)組のラットが炎症誘導剤により炎症誘導後、複合賦形剤の医薬組成物で注入治療を行われた膀胱のH & E染色図である。
【図10】本発明の第2実施例のM3−1(Normal)組の正常ラットの膀胱H & E染色図である。
【図11】本発明第2実施例のM3−2(LPS)組のラットが炎症誘導剤により炎症誘導後、膀胱のH & E染色図である。
【図12】本発明第2実施例のM4−3(LPS−ACF)組のラットが炎症誘導剤により膀胱炎症誘導後、複合賦形剤の医薬組成物で注入治療を行われた膀胱のH & E染色図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面に基づいて本発明の実施例についての詳細に説明する。
(第1実施例)
本発明の第1実施例による泌尿器系疾患を治療する医薬組成物を以下に示す。
本実施例では、泌尿器系疾患を治療する医薬組成物は、60 質量%以上のカーボンを含むカーボン材料と含水賦形剤とを組合せることで形成される薬用上使用できる複合賦形剤である。
【0012】
カーボン材料は、粒状であり、カーボンファイバー(carbon fiber)、活性炭ファイバー(active carbon fiber)、活性炭(active carbon)、グラファイト(Graphite)、膨張化グラファイト(expanded graphite)、ナノカーボンチューブ(nano−carbon tube)、カーボンナノカプセル(Carbon Nanocapsules)、コークボール(coke ball)、および、カーボンブラック(carbon black)の内の少なくとも一種を含む。その直径は20 nm〜2 mmであり、比表面積値(specific surface area、BET)は20 m2/g 〜 4000 m2/gである。本実施例では、カーボン材料は、80質量%以上のカーボンを含む活性炭ファイバー(active carbon fiber)粉末、或いは活性炭(active carbon)で構成されるもので、比表面積値(specific surface area、BET)が200 m2/g 〜 3000 m2/gであることが好ましい。
【0013】
それに対し、含水賦形剤は、緩衝液(buffer solution)、抗生物質(antibiotic agents、antibiotic medicament)、および、膀胱炎治療剤(Treatment of interstitial cystitis with drugs)の内の少なくとも一種を含み、カーボン材料の剤量は0.01mg/ml以上である。本実施例では、カーボン材料の剤量は0.1 mg/ml〜500 mg/mlであることが好ましい。
【0014】
(第2実施例)
本発明の第2実施例の主要組成と効果は、第1実施例と相同であるため、詳述は行わない。
カーボン材料はさらに直径2 nm〜2 mmの間の銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、銅の内の少なくとも一種を含む小顆粒金属顆粒と結合する。金属顆粒は、カーボン材料と金属顆粒との総質量の20 質量%以下であり。第2実施例では、小顆粒金属がカーボン材料と金属顆粒との総質量の5 質量%以下であることが好ましい。
小顆粒金属がカーボン材と結合した後、さらに含水賦形剤と組合せば、泌尿器系疾患の治療ができる医薬組成物が形成される。
【0015】
含水賦形剤に用いられる抗生物質(antibiotic agents 、antibiotic medicament)は、トリメトプリムスルファメトキサゾール(Trimethoprim−sulfame−thoxazole (TMP−SMX)) 、 トリメトプリム(Trimethoprim (TMP))、スルファメトキサゾール(sulfame−thoxazole (SMX))、フルオロキノロン(fluoroquinolones)、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、オフロキサシン(Ofloxacin)、セファレキシン(Cephalexin)、および、テトラサイクリン(tetracycline)の中の少なくとも一種を含む。
一方、含水賦形剤に用いる膀胱炎治療剤(Treatment of interstitial cystitis with drugs)は、ジメチルサルフォキサイド(dimethyl sulfoxide)、次亜塩素酸(Clorpactin)、ヘパリン(heparin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アドリアマイシン(adriamycin、ADM)、コンドロイチン硫酸(chondroitin sulfate)、炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、亜硝酸(Silver nitrite)、ペントサンポリサルフェートソディウム(Pentosan Polysulfate Sodium)、クロモリンソディウム(cromolyn sodium)、ペニシリン(Pencillin)、ニトロフラゾン、ゲンタマイシン(gentamicin)、および、マイルドシルバープロテイン(Mild Silver Protein)の中の少なくとも一種を含む。
【0016】
そのため、医薬組成物のカーボン材料或いは金属顆粒と結合したカーボン材料は、膀胱及びその関連組織と相互に接触することによって、例えば、膀胱炎、急性膀胱炎、慢性膀胱炎、出血性膀胱炎、細菌性膀胱炎、気腫性膀胱炎、間質性膀胱炎、膀胱或いは尿道に傷口、または、尿路感染症の治療と予防に効果がある。また、感染および反復発作有効的に抑制することができ、膀胱表面の傷口の癒合を促し、患者の病状を緩和することができる。
【0017】
上記実施例の構造特徴、運用技術及び予期効果について、下記のように説明する。
図1〜5に示すように、医薬組成物のカーボン材料は、活性炭ファイバー(active carbon fiber)を50μm〜100μm含み、比表面積値(specific surface area、BET)が200 m2/g〜2000 m2/gの顆粒に研磨されるものである。
【0018】
第1実施例では、無菌水の緩衝液(buffer solution)を含水賦形剤としている。そしてカーボン材料を緩衝液(buffer solution)中に加え、十分に撹拌すると、カーボン材料を含む複合賦形剤ができあがる。複合賦形剤の剤量は0.2 mg/mlである。
実験体に重さ約290gのメスSprague−Dawleyラットを3匹を使用し、3組にわける。
(1)、M1−1(Normal):炎症誘導剤未注射の正常なラット。
(2)、M1−2(LPS):炎症誘導剤を注射し、膀胱炎症を誘導されたラット。
(3)、M1−3(LPS−ACF):炎症を誘導後、複合賦形剤で注射治療を行われたラット。
実験開始前に、先ず各ラットにウレタン(urethane)で麻酔を行う。麻酔が効いたのを確認後、テープでラットを軟板に固定してポリエチレンチューブ(polyethylene tube、PE−50)で尿道挿管を行う。
上記準備完成後、下記の実験を始まる。
【0019】
先ず、M1−2(LPS)組及びM1−3(LPS−ACF)組のラットに、それぞれ尿道からプロタミンサルフェート(Protamine sulfate、PS)を膀胱に注入し、その膀胱粘膜(bladder mucosa)を損傷させる。そして炎症誘導剤を注入する。上記実施例で注射する炎症誘導剤は、膀胱炎症を誘導する効果のある、通称内毒素のリポポリサッカリド(Lipopolysaccharides、LPS)である。
プロタミンサルフェート(Protamine sulfate、PS)を注射して45分後、膀胱間質層(Lamina propria、Lp)細胞まで損傷させないように、生理食塩水(normal saline)を注射して膀胱を洗浄し、損傷の範囲をコントロールする。
【0020】
膀胱洗浄後、再び炎症誘導剤、すなわち内毒素750 E.U.を 30分毎に計2回を注射し膀胱炎症を誘導する。1時間後、同じく生理食塩水(normal saline)で膀胱を洗浄する。洗浄してからさらに1時間おいた後、3匹のラットの第一次尿を収集する。
次に、M1−3(LPS−ACF)組のラットに対して、剤量4 mg スラッシュ 20 mlの上記実施例の医薬組成物を注射する。一方、M1−2(LPS)組のラットには、生理食塩水(normal saline)だけを注射する。注射は30分毎に1回、計4回注射する。注射が終わってからさらに1時間を経ってから、3匹のラットの第二次尿を収集する。
第二次尿を収集してから24時間後、3匹のラットの膀胱を収集し、質量を量り、3組のラットの膀胱のH&E染色病理切片を製作する。
【0021】
図1に示すように、第一次收集尿の分析結果は下記の通りである。
M1−1(Normal)組は対照組であるため、採集する必要はない。
M1−2(LPS)組のラットの炎症誘導剤濃度は9.6 EU/mlに達し、M1−3(LPS−ACF)組は36.0 EU/mlに達した。
3時間後の第二次收集尿の分析結果は下記の通りである。
対象組であるM1−1(Normal)組の炎症誘導剤濃度は1.0 EU/mlである。
M1−2(LPS)組の炎症誘導剤濃度は1.8 EU/mlまで低下した。
複合賦形剤の医薬組成物を注射したM1−3(LPS−ACF)組の炎症誘導剤含量は、1.0 EU/mlに低下した。
【0022】
M1−1 (Normal)組、M1−2 (LPS)組、M1−3 (LPS−ACF)組のラ炎症誘導剤濃度テストの結果を比較したところ、下記の結果が分かった。
M1−2(LPS)組は炎症誘導剤注射後、第一次尿中の炎症誘導剤含量は9.6 EU/mlであるが、新陳代謝によって、3時間後の第二次尿中の炎症誘導剤含量は1.8 EU/mlを残っていることが分かった。
それに対し、M1−3(LPS−ACF)組のラットには、第一次尿中の炎症誘導剤濃度は36.0 EU/mlにも達したが、複合賦形剤の医薬組成物を注射した後、第二次尿中の炎症誘導剤含量は対照組のM1−1(Normal)と相同の1.0 EU/mlにまで低下した。よって、既に炎症を起こっているラットの膀胱に対し、複合賦形剤の医薬組成物は治療効果があることが分かった。
【0023】
また、ラット膀胱の質量からも複合賦形剤の医薬組成物の治療効果が見られる。
M1−2(LPS)組のラット膀胱の質量は177.3 mgである一方、複合賦形剤の医薬組成物を注射したM1−3(LPS−ACF)組のラット膀胱の質量は134.8 mgにまで低下した。これは複合賦形剤の医薬組成物が治療効果が発生し、膀胱炎による水腫が改善されたことを示している。
【0024】
ラット膀胱の内部状況を図2に示す。
図2はM1−1(Normal)組のラットの正常な膀胱のH & E染色で、膀胱表面の膀胱粘膜(bladder mucosa)上皮細胞(Epithelium、Ep)が非常に平滑であることを示す。図には血管(Blood vessel、BV)、粘膜を構成する上皮細胞(Epithelium、Ep)、筋肉組織(Muscle、M)、結合組織(Connective tissue、CT)及び間質層(Lamina propria、Lp)が見える。
図3はM1−2(LPS)組のラットの、炎症誘導剤により炎症誘導後の膀胱のH & E染色図で、炎症により白血球が粘膜下方の膀胱間質層(Lamina propria、Lp)に集合していることを示す。図には炎症が起きている膀胱表面に、白血球 (White blood cells、WBC)が集まり、水腫 (Edema)と出血 (Bleed)現象が見える。
図4では、M1−2(LPS)組のラットの内部組織に非常に深刻な内出血が起こっていることを示す。
【0025】
図5は複合賦形剤の医薬組成物によって治療されたM1−3(LPS−ACF)組のラット膀胱のH&E染色図である。その膀胱粘膜(bladder mucosa)組織は図2のM1−1(Normal)組の正常なラットの膀胱粘膜(bladder mucosa)組織と比較したところ、両者は非常に類似していることが分かった。
M1−3(LPS−ACF)組のラットには、白血球集合、水腫、内出血等の深刻な炎症現象が現れていない。これは、複合賦形剤の医薬組成物が、既に炎症が起こっているラット膀胱に対して治療効果があることが判明できる。
【0026】
図6〜9に示す実施例の主要な実施方式は、第1実施例と相同であるため、詳述は行わない。
血清中のプロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)の濃度測定は全身性炎症反応を示す細菌感染症などの重症細菌感染症を判断するマーカーであるため、本実施方式では、ラット血清中のプロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)の濃度測定を行った。
プロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度が上昇すると、膀胱炎症現象が細菌性の感染、敗血症ショック或いは他の深刻な全身性細菌感染で引き起こしたことを示す。
【0027】
図6によると、M2−1 (Normal)組は対照組の正常ラットで、プロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度が0.021 ng/mlである。
M2−2 (LPS) 組は炎症誘導剤により炎症を誘導されたラットで、プロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度が0.036 ng/mlまで上がった。
M2−3(LPS−ACF)組は、炎症誘導剤により炎症を誘導し、そして注射治療を行ったラットで、プロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度が0.02 ng/mlである。
上記の結果を比較したところ、M2−3(LPS−ACF)組のラットとM2−1(Normal)のラットのプロカルシトニン(Procalcitonin、PCT)濃度が一致する。M2−2(LPS)組のラットの膀胱質量の177.6 mgと比べると、M2−3(LPS−ACF)組のラットの膀胱質量は138.1 mgまで低下した。これは複合賦形剤の医薬組成物が膀胱炎症に対して確実な治療効果があることを示している。
【0028】
図7〜9は、各組のラット膀胱のH & E染色図である。
図7に示すM2−1(Normal)組のラット膀胱組織切片では、非常に平滑な膀胱粘膜(bladder mucosa)が見える。
図8に示すM2−2(LPS)組のラット膀胱組織切片では、図中左側に深刻な水腫現象が見える。
図9に示すM2−3(LPS−ACF)組のラット膀胱組織切片では、平滑な膀胱粘膜(bladder mucosa)表面が現れ、白血球集合、水腫また内出血等膀胱の炎症現象が現れていない。
よって、複合賦形剤の医薬組成物が既に炎症が起こっているラット膀胱に対して治療効果を有することが分かる。
【0029】
図10〜12は、各組のラット膀胱のH & E染色病理組織切片である。主な実施方式は第1実施例と相同であるため、詳述は行わない。M3−3 (LPS−ACF)組は本発明の第2実施例である。実施例で用いられた医薬組成物はナノレベルの金属顆粒とカーボン材料とを結合し、そして含水賦形剤と組合せて形成する膀胱炎治療用のものである。
図10には、M3−1(Normal)組の正常ラットの膀胱H & E染色切片で、炎症、水腫、内出血等の病状が現れていない。
【0030】
図11に示すように、M3−2(LPS)組のラット膀胱は炎症誘導剤により炎症が誘導され、白血球集合、水腫及び内出血等の深刻な炎症現象が現れている。
また、図12に示すようにM4−3(LPS−ACF)組のラットは、炎症誘導剤により炎症誘導後、銀を含む金属顆粒と結合したカーボン材料で治療されたため、白血球集合、水腫、内出血等の炎症現象が現れていない。
よって、カーボン材料と銀を含む金属顆粒と結合して形成する医薬組成物は、殺菌及び膀胱炎の症状を緩和する効果を有することが明らかである。
【0031】
上述の説明により、上記実施例の長所及び予想される効果を下記の通りである。
1、上記実施例は、カーボン材料と含水賦形剤とを組合せて形成された薬用上使用できる複合賦形剤としての泌尿器系疾患を治療する医薬組成物である。そして膀胱粘膜(bladder mucosa)の病症にも対応でき、膀胱炎の病状を緩和しながら長時間の治療効果を有する。
2、上記実施例は、カーボン材料を含水賦形剤と組合せて形成された薬用上使用できる複合賦形剤としての泌尿器系疾患を治療する医薬組成物である。そして膀胱粘膜(bladder mucosa)に対する修復作用を有し、さらなる治療効果を期待できる。
3、上記実施例の泌尿器系統を治療する医薬組成物は、カーボン材料が直径2 nm〜2 mmの銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、および、銅の内の少なくとも一種を含むナノレベルの金属顆粒と結合するものであり、殺菌及び膀胱炎の症状を緩和する効果を高めることができる。
4、上記実施例の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物は、カーボン材料が比較的に高い比表面積値(specific surface area、BET)及び良好な生体適合性を有するため、自ら細菌を吸着し、膀胱内の細菌量を105 CFU以下まで迅速に低下させる。また、細菌外毒素、内毒素(LPS)等の有害物質を吸着して尿と共に体外に排出させることで、膀胱炎の炎症反応を軽減させ、予防の効果を果すことができる。
【0032】
以上説明した本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施例に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は特許の要件である新規性を有しながら従来の同類製品に比べ、十分な進歩性がある。また、実用性も高く、社会のニーズに合致している。さらに、産業上の利用価値は極めて高いと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が2 nm〜2 mmの粒状であり60 質量%以上のカーボンを含むカーボン材料と、
含水賦形剤と、を含み、
薬用上受け入れ可能であり、膀胱及びその関連組織と接触することで、膀胱炎の症状を緩和させることを特徴とする泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項2】
前記カーボン材料は0.01mg/ml以上含まれていることを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項3】
前記カーボン材料は0.1 mg/ml〜500 mg/ml含まれていることを特徴とする請求項2に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項4】
前記カーボン材料は80 質量%のカーボンを含むことを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項5】
前記カーボン材料には、直径が2 nm〜2 mmである銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、および、銅の内の少なくとも一種を含む金属顆粒が結合され、
前記金属顆粒は、前記カーボン材料と前記金属顆粒との総質量の20 質量%以下を占めることを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項6】
前記金属顆粒は、前記カーボン材料と前記金属顆粒との総質量の5 質量%以下を占めることを特徴とする請求項5に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項7】
前記カーボン材料は、カーボンファイバー、活性炭ファイバー、活性炭、グラファイト、膨張化グラファイト、ナノカーボンチューブ、カーボンナノカプセル、コークボール、カーボンブラックの内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項8】
前記カーボン材料の直径は20 nm〜2 mmであり、カーボン層平面堆積厚度は1nm〜1000mmであることを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項9】
前記含水賦形剤は、緩衝液、抗生物質、膀胱炎治療薬剤の内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項10】
前記の抗生物質は トリメトプリムスルファメトキサゾール、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、フルオロキノロン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、セファレキシン、および、テトラサイクリンの内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項9に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項11】
前記膀胱薬剤は、ジメチルサルフォキサイド)、次亜塩素酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、アドリアマイシン、コンドロイチン硫酸、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸、ペントサンポリサルフェートソディウム、クロモリンソディウム、ペニシリン、ニトロフラゾン、ゲンタマイシン、および、マイルドシルバープロテインの中の少なくとも一種を含む膀胱炎治療剤であることを特徴とする請求項9に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項12】
前記カーボン材料の比表面積値は20 m2/g 〜 4000 m2/gであることを特徴とする請求項1に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項13】
前記カーボン材料の比表面積値は200 m2/g 〜 2000 m2/gであることを特徴とする請求項12に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項14】
60 質量%以上のカーボンを含むカーボン材料と、
含水賦形剤と、を含み、
前記カーボン材料は、直径は2 nm〜2 mmであり、20 質量%以下の金属顆粒と結合し、カーボンファイバー、活性炭ファイバー、活性炭、グラファイト、膨張化グラファイト、ナノカーボンチューブ、カーボンナノカプセル、コークボール、および、カーボンブラックの内の少なくとも一種を含み、
薬用上受け入れ可能であり、膀胱及びその関連組織と相互接触することで、殺菌を行い、膀胱炎の症状を緩和させることを特徴とする泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項15】
前記カーボン材料は、80 質量%以上のカーボンを含み、直径が5 nm〜2 mmの間の銀、プラチナ、パラジウム、金、亜鉛、銅の内の少なくとも一種を含む小顆粒金属と結合し、
前記金属顆粒は、前記カーボン材料と前記金属顆粒との総質量の5 質量%以下占めることを特徴とする請求項14に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項16】
前記カーボン材料は0.1 mg/ml〜500 mg/ml含まれていることを特徴とする請求項14に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項17】
前記カーボン材料の比表面積値は、200 m2/g 〜2000 m2/gであることを特徴とする請求項14に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項18】
前記含水賦形剤は、緩衝液、抗生物質、膀胱炎治療剤の内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項14に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項19】
前記抗生物質は、トリメトプリムスルファメトキサゾール、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、フルオロキノロン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、セファレキシン、および、テトラサイクリンの内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項18に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。
【請求項20】
前記膀胱治療剤は、ジメチルサルフォキサイド、次亜塩素酸、ヘパリン、ヒアルロン酸、アドリアマイシン、コンドロイチン硫酸、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸、ペントサンポリサルフェートソディウム、クロモリンソディウム、ペニシリン、ニトロフラゾン、ゲンタマイシン、および、マイルドシルバープロテインの内の少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項18に記載の泌尿器系疾患を治療する医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−116818(P2012−116818A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270610(P2010−270610)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(504117165)逢甲大學 (5)
【Fターム(参考)】