説明

法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機および同自走式施工機を使用した法面仕上げ締め固め工法

【課題】盛立材料が法面から下方へこぼれ落ちるのを完璧に防止できる、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機および同自走式施工機を使用した法面仕上げ締め固め工法を提供する。
【解決手段】台形CSGダム等の盛立工事における法面仕上げ締め固め工法を実施する自走式施工機10は、法肩に形成する土手状堤体15の法面6と天端面7に一致する断面形状の固定式型枠2と、同固定式型枠2と対向配置とされ駆動手段4により固定式型枠2側へ進退される可動式型枠3とより成る法肩成形型枠1、及び同法肩成形型枠1上に搭載した締め固め機5とを備えて成り、固定式型枠2を法肩に形成する土手状堤体15の法面と天端面に一致する配置とし、可動式型枠3を盛立材料8に食い込ませ駆動手段4により固定式型枠2側に向かって移動させることにより当該盛立材料8を固定式型枠2側へ引き寄せ、前記締め固め機5による締め固めにより法肩に土手状堤体15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば台形CSG(Cemented Sand and Gravel)ダムやCFRD(Concrete Face Rockfil Dam)その他の盛立工事(打設工事とも言う。以下同じ。)における法面仕上げ工事、特には法肩部分の盛り立てと締め固め成形の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
台形CSGダム等の盛立工事、および法面仕上げ締め固め工事は、その施工図の一例を図7に示したように、現地発生材にセメントを加えて混合したCSGあるいはソイルセメント(以下、盛立材料と総称する。)を1層あたり25cm程度の厚さにブルドーザBで盛り立て・敷き均す工程を3層分繰り返す。その後に振動ローラ等で前記3層分(75cm)をまとめて締め固める工程を繰り返して、先ず保護コンクリートDの下層リフト分を形成する。
次に、前記下層リフトの法面に沿ってプレキャストコンクリート型枠Cを設置し、続いて再び3層分の盛り立て・敷き均しと締め固め工程を繰り返して上層リフト分を施工し、この上下2層リフトを保護コンクリートDの1リフト分とする。
そして、前記プレキャストコンクリート型枠Cの内側へ保護コンクリートDを打設する工程までを1サイクルとし、以後同様なサイクルを繰り返して盛立工事を順次進める。
【0003】
ちなみに、一般的に、盛立材料としてソイルセメントを使用して法面を有する土木構造物を構築する工事を盛立工事といい、盛立材料としてCSGを使用して法面を有する土木構造物を構築する工事を打設工事というが、ここでは総称して盛立工事という。
【0004】
上記した盛立工事における法面仕上げ締め固め工事は、盛立材料をブルドーザBで盛り立て・敷き均した後に平板あるいは「への字」型振動プレート等で締め固めて法面を仕上げるので、図7から容易に推定できるように、ブルドーザBによる敷き均し作業時および前記振動プレート等による締め固め時に、一様な法面を仕上げようとするほど、多量の盛立材料が法面から下方へこぼれ落ちる不都合があり、その対策に難渋している。
この問題点は、特に盛立材料がいわゆるCSGあるいはソイルセメントであり、こぼれ落ちた盛立材料Eは全て産業廃棄物となり、大量の産業廃棄物処理を必要とするから、環境保全の面および経済面での負担がすこぶる大きいことである。その上、こぼれ落ちた盛立材料Eの清掃作業は、プレキャスト型枠Cの存在が邪魔になって手作業に頼るほか無く、不自由で窮屈な姿勢の清掃作業を長時間にわたり行うことになるので、工程の進捗、工期の短縮に大きな障害となるし、労務費の負担も大きいという問題点があり、盛立工事、および法面仕上げ締め固め工事の全体に大きな悪影響を及ぼしている。
【0005】
従来、上記問題点の解決を目的とする先行技術として、例えば下記の特許文献1には、横断面が方形状(角パイプ形状)の枠体を法肩へ階段状に2段分設置し、同枠体の中空部内に重量調整用の水を充填して重しとなし、その上で前記枠体の内側へ盛立材料の敷き均しと締め固めを行い、その終了後に枠体を吊り上げて更に上段へ盛り替え設置する施工法が開示されている。この施工法によれば、法肩に枠体を置いて堰を作るから盛立材料が崩れたりこぼれ落ちる虞れは少ない。
しかし、法肩および法面の仕上げ形状は階段状になることは避けられない。法面は設計上一定角度に傾斜した直線状の斜面であるため、前記階段状の分だけ保護コンクリートの食い込み量が大きくなり不経済である。また、施工工程の進捗毎に方形状(角パイプ形状)の枠体を法肩上方へ盛り替えて設置し、その都度、重量調整用の水を充填し、盛立材料の盛り立て・敷き均しと締め固めが終了した後には水を抜いて軽くし枠体を吊り上げて上段へ盛り替え設置する工程を繰り返すから、盛り替えの手間と給水、排水の時間と水処理費用が大きな負担となる。設計上は傾斜した直線であるためコンクリートの食い込み量が大きいという問題もある。
【0006】
下記の特許文献2に記載された法肩施工方法は、盛立材料を法肩よりもかなり内側部分へ偏って盛り立て敷き均しておく。そして、法面側の盛立材料の端部を、バックホウ等の走行式建設機械のアーム先端に取り付けたバケット形状の法肩成形装置で挟み持たせ、そのままこぼれないように横滑り状態に水平移動させて法肩部位へ移し、法肩の堤体として成形する手順を内容とする。法肩成形装置は、鉄板による法面側プレートと鉛直プレートとを正面方向に見てハの字形状に組み合わせた構成とし、バックホウ等のアーム先端に取り付けた振動コンパクタへ装着して使用される。
この法肩成形装置で挟み持たれた盛立材料は、挟み持たれた段階で既に成形され、そのまま振動コンパクタで振動を加えることにより締め固められるから、いわゆる土手状の堤体を形成できると説明されている。前記土手状堤体の成形後に、先に盛立材料の端部を前記法肩成形装置で移動させた跡に発生した凹部へ更に盛立材料を盛り立て充填して締め固めて、当該リフト分の工程が終了する。以下同様な工程を繰り返して盛り立て工事及び法面仕上げを進める施工方法と認められる。
確かに一理ある内容の施工法であるが、実際にはバックホウ等の走行式建設機械およびそのアームを操縦する技術の限界として、法肩成形装置で盛立材料を挟み持たせ、そのまま横滑り状態に水平移動させて法肩部位へ移す際の位置移動の誤差、そして、法肩において振動コンパクタで振動を加える締め固めの段階で、大なり小なり盛立材料が法面からこぼれ落ちることを防ぎきれない。また、法肩に土手状堤体として成形した法面の仕上げ精度、品質にも問題が発生すると考えられる。
【0007】
下記の特許文献3に記載された法肩締め固め工法は、やはりバックホウの腕の先端に、ベースプレート(転圧板)と起振板部とを法肩の形状(角度)に等しい「への字」形状に組み合わせた特殊振動プレート工具をアタッチメントとして取り付け、盛り立て堤体の法肩に盛った盛立材料を前記の特殊振動プレートで法肩形状(角度)に等しく押し当て、バックホウの油圧力により締め固める構成と説明されている。
したがって、法肩へ盛立材料を盛る段階で、および前記特殊振動プレート工具による盛り立ての締め固め時に、大なり小なり盛立材料が法面からこぼれ落ちることは防ぎきれない。
【0008】
【特許文献1】特開2007-297817号公報
【特許文献2】特開2007-51518号公報
【特許文献3】特開2005-163283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したとおり、CSGダム等の盛立工事、および法面仕上げ締め固め工事における盛立材料の盛り立て・敷き均し時および平板あるいは「への字」型振動プレート等による締め固め時に、法面を一様な高品質に仕上げようとするほど、盛立材料が法面から下方へこぼれ落ちる問題点が発生する。その解決を目的として、従来、幾つかの先行技術が提案されているが、いまだ十分な解決を見るに至っていない。
【0010】
本発明の目的は、上記した盛立工事における法面仕上げ締め固め工事について、盛立材料が法面から下方へこぼれ落ちるのを完璧に防止でき、もって産業廃棄物の発生を可及的に防止でき、環境保全と費用削減に寄与し、また、工期の短縮と施工精度、品質の向上を図ることができる、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機および同自走式施工機を使用した法面仕上げ締め固め工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機は、
台形CSGダム等の盛立工事における法面仕上げ締め固め工法を実施する自走式施工機において、
自走式施工機は、法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致する断面形状の固定式型枠と、同固定式型枠と対向する配置とされ駆動手段により固定式型枠側に向かって進退される可動式型枠とより成る法肩成形型枠、及び同法肩成形型枠上に搭載した締め固め機とを備えて成り、
前記固定式型枠を、法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致する配置とし、前記可動式型枠を盛立材料に食い込ませ前記駆動手段により固定式型枠側に向かって移動させることにより当該盛立材料を固定式型枠側へ引き寄せ、前記締め固め機による締め固めにより法肩に土手状堤体を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機において、自走式施工機は、バックホウ等の走行式建設機械のアーム先端に、前記締め固め機を搭載した前記法肩成形型枠が取り付けられて成ることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した発明に係る法面仕上げ締め固め工法は、台形CSGダム等の盛立工事における法面仕上げ締め固め工法において、
法面付近を除いた内側部分に盛立材料を敷き均す工程と、
前記請求項1又は2に記載した法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機の前記法肩成形型枠を、その固定式型枠が法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致するように設置して予め後退させておいた可動式型枠を盛立材料へ食い込ませ、前記駆動手段により固定式型枠側へ向かって前進させて前記法肩成形型枠が形成する限定空間内に存在する盛立材料を固定式型枠側へ引き寄せて当該限定空間内に盛り立て、前記締め固め機により締め固めて一定高さの土手状堤体を法肩へ形成する工程を、前記自走式施工機の走行にしたがい法面の長手方向に順次行って当該土手状堤体を法肩へ連続的に形成すると共に、引き寄せられた盛立材料の跡に盛立材料を敷き均すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、2に記載した法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機、および請求項3に記載した法面仕上げ締め固め工法によれば、成形する法面6から所要の間隔(本実施例では30cm程度)Sをあけた内側部分に盛立材料8を敷き均すので、この段階で盛立材料8が法面6から下方へこぼれ落ちる虞は一切ない。また、土手状堤体15を形成する場合にも、法面長より長い傾斜部2aを有する固定式型枠2による堰き止め効果により、盛立材料8が法面6から下方へこぼれ落ちる虞はない。さらに土手状堤体15を形成した後、土手状堤体15の内側に盛立材料8を敷き均す場合も、当該土手状堤体15による堰き止め効果により当然に、盛立材料8が法面から下方へこぼれ落ちる虞はない。
要するに、本発明に係る法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機10を使用した法面仕上げ締め固め工法によれば、盛土材料8を法面6から下方へこぼれ落ちることを完璧に防止して法面を有する土木構造物を構築することができる。
したがって、産業廃棄物が発生することを防ぎ、環境保全に寄与することができる。また、法面6から下方へこぼれ落ちた盛土材料8の清掃作業を一切省けるか、著しく簡易な作業に軽減でき、工期の短縮と労務費の節約を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図示した実施例に基づいて、本発明に係る法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機および同自走式施工機を使用した法面仕上げ締め固め工法を説明する。
図1は、本発明に係る法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機(以下、単に施工機という場合がある。)10を用いて実施する、台形CSGダムの盛立工事(打設工事)における法面仕上げ締め固め工法を実施する概況を示している。
この施工機10は、具体的に図2と図3に示したように、法肩に形成する土手状堤体15(図4D等を参照)の法面6と天端面7に一致する断面形状の固定式型枠2と、同固定式型枠2と対向する配置とされ駆動手段4により固定式型枠2側に向かって進退される可動式型枠3とで限定空間11を形成する法肩成形型枠1、及び同法肩成形型枠1上に搭載した締め固め機5とを備えて成り、
前記固定式型枠2を、図2Aに示したように、法肩に形成する土手状堤体15の法面6と天端面7に一致する配置とし、前記可動式型枠3を盛立材料8に食い込ませ前記駆動手段4により固定式型枠2側に向かって移動(前進)させることにより、法面6付近を除く内側部分に敷き均した盛立材料8の一部8aを、図2Bに示したように、固定式型枠側2へ引き寄せて前記限定空間11内で盛り立て、前記締め固め機5による締め固めにより法肩に一定高さ(本実施例では25cm程度)の土手状堤体15を形成する構成で実施している(請求項1記載の発明)。ちなみに図中の符号12は、空洞部を示している。
具体的に、本実施例に係る施工機10は、バックホウ等の走行式建設機械9のアーム9a先端に、前記締め固め機5を搭載した前記法肩成形型枠1が取り付けられて構成されている(請求項2記載の発明)。この走行式建設機械9の操縦席の乗員の操作により、前記締め固め機5を搭載した法肩成形型枠1を自在に移動させることはもとより、前記駆動手段4、及び締め固め機5を制御可能な構成で実施している。
【0016】
前記固定式型枠2は、法肩に形成する土手状堤体15の法面6と天端面7に一致する断面形状を有するように、ほぼ「くの字」形状に折り曲げ成形された金属製プレートで実施している。
なお、固定式型枠2の断面形状は「くの字」に限定されるものではなく、法肩に形成する土手状堤体15の形状に応じて適宜設計変更可能である。材質も金属製に限定されるものではなく、盛立材料(CSG)を締め固めるのに必要十分な剛性を有する部材であればよい。また、固定式型枠2は、その傾斜部2aを、成形する法面長より(本実施例では10〜15cm程度)長くして実施している。盛立材料8aが法面6から下方へこぼれ落ちるのを完璧に防止するためである。
ちなみに図示例に係る固定式型枠2は、その幅B(図3参照)を1.2m程度で実施しているが勿論これに限定されず、法面成形型枠1の性能等に応じて適宜設計変更可能である。
【0017】
前記可動式型枠3は、盛立材料8の一層分(25cm程度)だけ食い込む食い込み部3aを有するように、断面形状をほぼ「への字」に折り曲げ成形された金属製プレートで実施されている。
なお、可動式型枠3の断面形状も「への字」に限定されるものではなく、盛立材料8を一層分だけ固定式型枠2側へ移動させることが可能な形状であればよい。また、図示例に係る可動式型枠3は、その幅B(図3参照)を固定式型枠2と同様に1.2m程度で実施しているが勿論これに限定されず、固定式型枠2の大きさ等に応じて適宜設計変更可能である。
ちなみに、図2Aの符号3bは、可動式型枠3が、固定式型枠2の上面に設けた連結部材13(図3参照)との衝突を回避し当該固定式型枠2に向かって進退可能な構成とするための切欠溝を示している。
【0018】
前記駆動手段4は、本実施例では油圧ジャッキ4を使用し、前記固定式型枠2及び移動式型枠3の上面に左右にバランス良く2機設置して実施しているが勿論これに限定されない。可動式型枠3を固定式型枠2側に向かってスムーズに進退移動させることが可能な駆動手段および配置で実施すればよい。
【0019】
この施工機10の締め固め機5について、本実施例では、図3が分かり易いように、上下の支持板5a、5aの間に複数(本実施例では4個)のバネ5bをバランス良く配置し、下方の支持板5aの上面中央部に振動発生機(電動モータ)5cを設けて成り、固定式型枠2の上面に連結部材13を介して固定されている。前記振動発生機5cは、電動モータによって偏心錘を回転させて上下方向にのみに振動させる構成で実施している。ちなみに図中の符号5dは、走行式建設機械9のアーム9a先端との取付部材を示しており、符号16は、可動式型枠3を拘束するためのガイド部を示している。
なお、この締め固め機5の構成は勿論これに限定されるものではなく、法肩成形型枠1が形成する限定空間11内に取り込んだ盛立材料8aを適正な固さに締め固めることができる締め固め機(例えば、転圧用タンパなど)であればよい。
【0020】
かくして、本発明に係る法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機10は、法肩成形型枠1の固定式型枠2を、図2Aに示したように、法肩に形成する土手状堤体15の法面6と天端面7に一致する位置に合わせると、可動式型枠3の食い込み部3aが、法面6付近を除く内側部分に敷き均した盛立材料8に一層分(一例として、25cm程度)だけ食い込む。
この状態で、駆動手段(油圧ジャッキ)4により可動式型枠3を固定式型枠2側へ前進させると、法肩成形型枠1が形成する限定空間11内に存在する盛立材料8の一部8aが、一層分だけ、図2Bに示したように、固定式型枠側2へ引き寄せられて当該限定空間11内で盛り立てられる。盛立材料8aは固定式型枠2の堰き止め効果により下方へこぼれ落ちることはない。
この状態で、法肩成形型枠1上に搭載した締め固め機5を起動させると、限定空間11内に盛り立てられた盛立材料8aが適正な固さに締め固められて一定高さの土手状堤体15を形成する。
【0021】
次に、上記構成の法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機10を使用して実施する法面仕上げ締め固め工法を、図4〜図6に基づいて説明する。
ちなみに、図4A〜Eは、前記施工機10により第1層目の盛立材料(CSG)8を敷き均す工程を段階的に示した立面図であり、図5A〜Eは、同第2層目の盛立材料8を敷き均す工程を段階的に示した立面図であり、図6A〜Cは、同第2層目の盛立材料8を敷き均す工程を段階的に示した平面図である。
【0022】
図4Aに示したように、仕上げ面14上に、現地発生材にセメントを加えて混合した盛立材料(CSG)8を、1層あたり例えば25cm程度の厚さにブルドーザ等で層状に敷き均す。敷き均す際に、盛立材料8が下方へこぼれ落ちないように、成形する法面6から所要の間隔(本実施例では30cm程度)Sをあけた内側部分に施工する。前記間隔Sは、敷き均す盛立材料8の層厚、或いは気温等の作業環境等に応じて適宜設計変更可能である。
【0023】
図4Bに示したように、前記施工機10の法肩成形型枠1を、固定式型枠2が、法肩に形成する土手状堤体15の法面6と天端面7に一致するように設置する。そうすると、固定式型枠2と相対峙する可動式型枠3は、その食い込み部3aが盛立材料8へ一層分(25cm程度)だけ食い込む。ちなみに法肩成形型枠1を設置する際、この可動式型枠3は固定式型枠2に対し、油圧ジャッキ4を伸張させて予め後退させた状態としておく。
【0024】
図4Cに示したように、油圧ジャッキ4を収縮し、可動式型枠3を固定式型枠2側へ前進させる。
そうすると、盛立材料8のうち法肩成形型枠1が形成する限定空間11内に存在する盛立材料8aが固定式型枠2側へ引き寄せられる。盛立材料8aは固定式型枠2の堰き止め効果により下方へこぼれ落ちることはない。
前記限定空間11内に前記盛立材料8aが盛り立てられた状態(本実施例では、隙間なく充満された状態)を確認した後、施工機10の締め固め機5を起動させて限定空間11内の盛立材料8aを適正な固さに締め固めて、法面6と天端面7を有する一定高さの土手状堤体15を法肩へ形成する。
【0025】
図4Dに示したように、前記土手状堤体15を形成した後、施工機10の法肩成形型枠1を次の施工部位に移動させる。
以上の工程を、前記施工機10の走行にしたがい法面6の長手方向(幅方向)に順次行って土手状堤体15を法肩へ連続的に形成すると共に、引き寄せられた盛立材料8aの跡Tの仕上げ面14が露出した部位に、図4Eに示したように、盛立材料8を盛り立てて一層分の厚さに敷き均す工事をブルドーザ等で行い、例えば図7の左側部分の第1層目の盛立材料(CSG)8を敷き均す工程を終了する。
続いて、図7の右側部分についても、上記した図4A〜Eの工程を遂行し、かくして、第1層目の盛立材料8の全面を敷き均す。
【0026】
なお、図4Eに係る盛立材料8aの跡Tに盛立材料8を敷き均す作業は、本発明に係る施工機10の法肩成形型枠1の後方にブルドーザを追従させて土手状堤体15を形成する都度行うこともできるし、土手状堤体15を法面の長手方向に一定長さ形成した後にまとめて行うこともできる。
【0027】
上記したように、第1層目に係る法面仕上げ締め固め工法によれば、図4Aに示したように、第1層目の盛立材料8を敷き均す作業は、成形する法面6から所要の間隔(本実施例では30cm程度)Sをあけた内側部分で行うので、盛立材料8が法面6から下方へこぼれ落ちる虞はない。また、図4Cに示したように、盛立材料8aを可動式型枠3により固定式型枠2側へ引き寄せて土手状堤体15を形成する作業についても、法面長より長い傾斜部2aを有する固定式型枠2による堰き止め効果により、盛立材料8aが法面6から下方へこぼれ落ちる虞はない。土手状堤体15を形成した後、土手状堤体15の内側に盛立材料8を敷き均す場合も、当該土手状堤体15による堰き止め効果により当然に、盛立材料8aが法面6から下方へこぼれ落ちる虞はない。
【0028】
上記したように、図4A〜Eの工程を経て、第1層目の盛立材料(CSG)8の敷き均し作業を終了した後、図5Aに示したように、第1層目の盛立材料8の上面に、盛立材料8を、やはり1層あたり25cm程度の厚さにブルドーザ等で層状に敷き均す。敷き均す際に、盛立材料8が下方へこぼれ落ちないように、成形する法面6から所要の間隔(本実施例では30cm程度)Sをあけた内側部分に施工することは上記した第1層目の作業と同様である。
ちなみに、図5Aの符号a〜dが示す部位は、図6A〜Cの符号a〜dが示す部位に対応している。符号aは第1層目の法面を指す。符号bは第1層目の土手状堤体の天端面を指す。符号cは第2層目の法面を指す。符号dは第2層目の盛立材料8の天端面を指す。
【0029】
次に、上記した第1層目に係る作業と同様に、図5Bと図6Aに示したように、上記した施工機10の法肩成形型枠1を、固定式型枠2が、成形する法面6及びその天端面7と一致するように設置し、図5Cと図6Bに示したように、前記可動式型枠3を、前記油圧ジャッキ4を収縮して固定式型枠2側へ前進させる(詳しくは、段落[0022]、[0023]を参照)。
【0030】
続いて、図5Dと図6Cに示したように、土手状堤体15を形成した後、前記施工機10の法肩成形型枠1を次の施工部位に移動させる。
以上の工程を、前記施工機10の走行にしたがい法面6の長手方向(幅方向)に順次行って土手状堤体15を法肩へ連続的に形成すると共に、引き寄せられた盛立材料8aの跡Tの第1層目の盛立材料8の上面が露出した部位に、図5Eに示したように、盛立材料8を盛り立てて一層分の厚さに敷き均す工事をブルドーザ等で行い、例えば図7の左側部分の第2層目の盛立材料(CSG)8を敷き均す工程を終了する。
続いて、図7の右側部分についても、上記した図5A〜Eの工程を遂行し、かくして、第2層目の盛立材料8の全面を敷き均す。
【0031】
なお、図5Eに係る盛立材料8aの跡Tに盛立材料8を敷き均す作業は、上記した第1層目に係る作業と同様に、本発明に係る施工機10の法肩成形型枠1の後方にブルドーザを追従させて土手状堤体15を形成する都度行うこともできるし、土手状堤体15を法面の長手方向に一定長さ形成した後にまとめて行うこともできる。
ちなみに、図5Dの符号e〜jが示す部位は、図6A〜Cの符号e〜jが示す部位に対応している。符号eは第1層目の法面を指す。符号fは第2層目の土手状堤体15の法面を指す。符号gは第2層目の土手状堤体15の天端面を指す。符号hは第2層目の土手状堤体の法面を指す。符号iは露出した第1層目の天端面を指す。符号jは第2層目の盛立材料8の天端面を指す。
【0032】
かくして、第2層目に係る法面仕上げ締め固め工法によれば、上記図4A〜Eに示した第1層目の法面仕上げ締め固め工法と同様の手法で行うので、やはり、盛立材料8aが、法面6から下方にこぼれ落ちる虞は一切ないのである。
【0033】
以下、第3層目以降の作業工程(例えば、図1参照)も、上記した第1層目、第2層目と同様の工程を経て行うので、盛立材料8aが法面6から下方にこぼれ落ちる虞は一切ない。
要するに、本発明に係る法面仕上げ締め固め工法によれば、盛立材料8(8a)を法面6から一切こぼれ落とすことなく、適正な固さを有する一定高さの土手状堤体15を法面6の長手方向へ連続的に形成することができるのである。
【0034】
例えば、上記[背景技術]に係る図7に基づく作業工程を引用すると、1層あたり25cm程度の厚さにブルドーザBで盛り立て・敷き均す工程を3層分繰り返し、その後に振動ローラ等で前記3層分(75cm)をまとめて締め固める工程を繰り返して、保護コンクリートDの下層リフト分を形成する場合、本発明によれば、盛立材料8(E)を法面6から一切こぼれ落とすことなく実施することができる。また、下層リフトの法面に沿ってプレキャストコンクリート型枠Cを設置し、続いて再び3層分の盛り立て・敷き均しと締め固め工程を繰り返して上層リフト分を施工する場合も、本発明によれば、盛立材料8(E)を法面6から一切こぼれ落とすことなく実施することができる。
【0035】
以上に本発明を図示した実施例に基づいて説明したが、勿論、本発明は図示した実施例に限定されるものではない。本発明の目的と要旨を逸脱しない範囲で、当業者が必要に応じて行う設計変更を含め、更に多様に実施することができることを申し添える。
例えば、本実施例では、盛立材料8としてCSGを使用した盛立工事(打設工事)について説明したがこれに限定されず、盛立材料8としてソイルセメントを使用した盛立工事についても同様に実施することができる。
また、本実施例では、盛立材料8を一層(25cm程度の高さ)毎に締め固めているがこれに限定されず、大型で高性能の法肩成型型枠1、及び締め固め能力の大きな締め固め機5を用いることにより、三層分(75cm程度の高さ)敷き均した後に、一度に盛立材料8を引き寄せ、締め固めることもできる。
さらに、作業環境等により盛立材料8の性状が若干軟らかく固定式型枠2の両側から溢れる虞がある場合には、固定式型枠2の幅Bを可動式型枠3の幅より若干長くして実施したり、可動式型枠3の食い込み部3aの先端部を先細状(楔状)に形成して盛立材料8に食い込み易くする等の工夫は適宜行われる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る法面仕上げ締め固め工法を実施する要領を示した正面方向の立面図である。
【図2】A、Bはそれぞれ、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機の枢要部を示した斜視図である。
【図3】法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機の枢要部を示した側面図である。
【図4】A〜Eはそれぞれ、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機により第1層目の盛立材料を敷き均す工程を段階的に示した立面図である。
【図5】A〜Eはそれぞれ、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機により第2層目の盛立材料を敷き均す工程を段階的に示した立面図である。
【図6】A〜Cはそれぞれ、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機により第2層目の盛立材料を敷き均す工程を段階的に示した平面図である。
【図7】CSGダム等の盛土工事および法面仕上げ締め固め工事の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 法肩成形型枠
2 固定式型枠
3 可動式型枠
4 駆動手段
5 締め固め機
6 法面
7 天端面
8 盛立材料
9 走行式建設機械
10 法面仕上げ締め固め工法用施工機
11 限定空間
12 空洞部
13 連結部材
14 仕上げ面
15 土手状堤体
16 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台形CSGダム等の盛立工事における法面仕上げ締め固め工法を実施する自走式施工機において、
自走式施工機は、法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致する断面形状の固定式型枠と、同固定式型枠と対向する配置とされ駆動手段により固定式型枠側に向かって進退される可動式型枠とより成る法肩成形型枠、及び同法肩成形型枠上に搭載した締め固め機とを備えて成り、
前記固定式型枠を、法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致する配置とし、前記可動式型枠を盛立材料に食い込ませ前記駆動手段により固定式型枠側に向かって移動させることにより当該盛立材料を固定式型枠側へ引き寄せ、前記締め固め機による締め固めにより法肩に土手状堤体を形成することを特徴とする、法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機。
【請求項2】
自走式施工機は、バックホウ等の走行式建設機械のアーム先端に、前記締め固め機を搭載した前記法肩成形型枠が取り付けられて成ることを特徴とする、請求項1に記載した法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機。
【請求項3】
台形CSGダム等の盛立工事における法面仕上げ締め固め工法において、
法面付近を除いた内側部分に盛立材料を敷き均す工程と、
前記請求項1又は2に記載した法面仕上げ締め固め工法用の自走式施工機の前記法肩成形型枠を、その固定式型枠が法肩に形成する土手状堤体の法面と天端面に一致するように設置して予め後退させておいた可動式型枠を盛立材料へ食い込ませ、前記駆動手段により固定式型枠側へ向かって前進させて前記法肩成形型枠が形成する限定空間内に存在する盛立材料を固定式型枠側へ引き寄せて当該限定空間内に盛り立て、前記締め固め機により締め固めて一定高さの土手状堤体を法肩へ形成する工程を、前記自走式施工機の走行にしたがい法面の長手方向に順次行って当該土手状堤体を法肩へ連続的に形成すると共に、引き寄せられた盛立材料の跡に盛立材料を敷き均すことを特徴とする、法面仕上げ締め固め工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−280982(P2009−280982A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131595(P2008−131595)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)