波浪特性測定方法及びその装置
【課題】 船首に設置された圧力計による計測値から船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波浪特性を求める。
【解決手段】 a.模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、複数の圧力計の圧力計測値と流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、b.実船の船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置と、左右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計測値と、水の密度と、複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求め、c.圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求め、d.実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、上下変位量と、相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求め、e.絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求め、f.出会波スペクトルと、対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める。
【解決手段】 a.模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、複数の圧力計の圧力計測値と流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、b.実船の船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置と、左右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計測値と、水の密度と、複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求め、c.圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求め、d.実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、上下変位量と、相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求め、e.絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求め、f.出会波スペクトルと、対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は波浪特性測定方法及びその装置に関し、特に、船体の船首に設置された圧力計の計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波浪特性を求めるための演算処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波高等の波浪特性を計測する装置としては、例えば「船首の上下加速度センサ1の信号に基づき船首の上下変位を演算する装置3と、同装置3からの信号と波高計2からの信号を受けて絶対波高を演算する装置4と、同装置4からの信号を一定時間蓄積してパワースペクトラムを演算する装置5と、自船の方位から波向を設定することにより波出会い角を演算する装置6と、同装置6で演算された出会波角を用いて、パワースペクトラム演算装置5から得られた出会周波数ベースのパワースペクトラムを波周波数ベースに変換する装置7と、同装置7からの出力信号を受けて有義波高および平均波周波数を同定する装置8と、同装置8からの信号に基づき、平均波々長、スペクトラムピークの波長および周波数を演算する最終演算装置9とをそなえて構成される。」ものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−273198号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術(特許文献1)では、波高計と上下加速度計から求めた波高計位置における上下動揺から絶対波高の波スペクトルを求めており、これに波向と船速の値を与えることによって波スペクトルを求めているが、ここで船速は別に何らかの方法で求めて入力する必要がある、という問題点があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波浪特性を求めることを可能にした波浪特性測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める工程と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位を求め、前記上下変位と、前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める工程と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める工程と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0006】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める工程と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める工程と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0007】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記実船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める工程と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0008】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置に配置された上下加速度計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める処理と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位を求め、前記上下変位と、前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める処理と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【0009】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める処理と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【0010】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された第1の複数の圧力計と、船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された第2複数の圧力計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記第1の複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記第1の複数の圧力計の内、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記第2の複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める処理と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明においては、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波スペクトルを求めることを可能にしており、船速を別途求める必要がなく、装備の簡素化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明者らは、船首に複数の圧力計を設置し、それらの圧力計測値を解析することによって船体に流入する対水流速(=対水船速)/流向を求める測定方法を開発した。船舶は実海域では波浪中を航行することになるので、計測される圧力も波浪及びそれによる船体動揺によって時間的に変動する。船速はこれら変動量の平均値から求めることになるが、圧力変動量そのものから逆にその原因となる波浪を解析することが可能となる。波浪の解析が可能になると、平均(対水)船速と同時に入射波を確定することができる。
【0013】
ところで、ここで求まる波浪の波周期は船速の影響を受けた出会いの波周期である。例えば向波の場合には、船速の影響によって、出会いの波周期は短くなる。これを出会波周期と言う。また、この出会波周期に対応する波浪の不規則変動分布を出会波スペクトルという。実際に求めたいのは船舶が遭遇している(船舶に入射してくる)波浪のスペクトル(船速影響が入らない状態の波スペクトル)であり、これは出会波周期、波出会角、対水船速が分かれば求めることができる。本発明によれば、出会波周期、対水船速を求めることができるので、これらを用いて船舶が遭遇している波浪(波スペクトル)を特定することが可能になる。
【0014】
以下の説明においては、本発明の基礎となっている圧力計の計測値に基づいて船速を求る例を実施形態1とし、その船速を利用して波スペクトル等を求める例を実施形態2〜4として説明する。
【0015】
実施形態1.
本発明は、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めることができるようになったということに基づいてなされたものであり、本発明の波浪特性計測装置の内、船速の測定に着目してそれを実施形態1として説明する。
【0016】
図1は本発明の基礎になっている船速測定装置の構成を示すブロック図である。この船速測定装置は、圧力センサ11〜13、制御部2、記憶部3、表示部4及び操作部5から構成されている。なお、図1には上下加速度計6が図示されているが、これは後述の実施形態2において用いられるものであり、本実施形態1においては無視するものとする。
【0017】
圧力センサ11〜13は、例えば、外形がステンレス製の埋め込み型や、圧電素子等の電子式のものからなり、それぞれ圧力計測値Pc、Pp及びPsを制御部2に供給する。圧力センサ11〜13の容量は、例えば、船速が10m/s(約20ノット相当)の場合、よどみ圧が約5.1maq=約50kpaであるので、約100kpa(1気圧相当でよどみ圧換算の船速約27ノット)であれば良い。図2に示すように、圧力センサ11は船首水面下の船体中心線(図2の破線参照)の近傍位置の船体外板表面に配置し、圧力センサ12及び13はそれぞれ船首水面下の左舷及び右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる船体外板表面に配置する。
【0018】
制御部2は、CPU(中央処理装置)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、シーケンサ等からなり、記憶部3に記憶されている、特性曲線作成プログラム、船速測定プログラム等に基づいて、特性曲線作成処理、船速測定処理等を実行することにより、船速測定装置の全体を制御する。すなわち、例えば、特性曲線作成プログラムが読み出されると、制御部2に読み込まれ、制御部2の動作を制御する。制御部2は、特性曲線作成プログラムが起動されると、特性曲線作成プログラムの制御により、後述する特性曲線作成処理を実行するのである。
【0019】
記憶部3は、RAM、ROM、あるいはフラッシュメモリ等の半導体メモリ、FD(フロッピー(登録商標)・ディスク)が装着されるFDドライブ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライブ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライブ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライブ等からなる。記憶部3は、上記した制御部2が実行すべき特性曲線作成プログラム、船速測定プログラムその他の各種プログラムが予め記憶されているとともに、制御部2が上記した特性曲線作成プログラム、船速測定プログラムその他の各種プログラムを実行する際に作業用として用いられる。表示部4は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)、エレクトロルミネセンス(EL:Electro Luminescence)ディスプレイ、あるいはプラズマディスプレイパネル(PDP;Plasma Display Panel)等からなる。操作部5は、テンキー、エンターキー、あるいはファンクションキー等からなるキーボードや、マウス、タッチパッド、あるいはペンデバイス等のポインティングデバイスなどを有する。
【0020】
次に、上記の船速測定装置の動作について説明する。まず、この例の船速測定装置を模型船に実装した水槽試験を予め実施することにより、この例の船速測定装置を実船に実装した際に用いる特性曲線を作成する。なお、船速測定装置を模型船に実装するとは、ここでは船速測定装置の内、圧力センサを実装することを意味し、他の機器は必ずしも搭載する必要はない。以下、上記した特性曲線の作成について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。この例の船速測定装置が特性曲線作成モードに設定されると、制御部2は、喫水を変化させるべき回数である喫水変更数n(nは自然数)を設定するとともに、喫水変更数nをカウントするための変数kに1をセットする。また、検査者が操作部5を操作して入力した対水船速Uを記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP1)。ここで、喫水を変化させるのは、圧力センサ11〜13から出力される圧力計測値Pc、Pp及びPsが船舶の喫水変化による影響を受けるので、各喫水ごとの特性曲線を作成する必要があるためである。また、対水船速Uを設定するのは、制御部2が後述する特性曲線を作成する際に必要となるからである。
【0021】
次に、水槽において、その船首水面下の船体外板表面に図2に示されるように圧力センサ11〜13が最適配置位置に配置された模型船を斜航角をつけて一定速度で曳航する。斜航角は流入角度βに相当し、速度はステップSP1で設定した対水船速Uに相当する。これにより、圧力センサ11〜13から圧力計測値Pc、Pp及びPsが供給されるので、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP2)。作成すべき特性曲線は、後述するように、流入角度βの関数であるため、斜航角を、例えば、−30度から+30度まで5度おきに変化させて上記した模型船を一定速度で曳航する。したがって、制御部2は、各斜航角ごと、すなわち、各流入角度βごとの圧力センサ11〜13からの圧力計測値Pc、Pp及びPsを記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する。
【0022】
圧力センサ11〜13から各流入角度βごとの圧力計測値Pc、Pp及びPsがすべて供給されると、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から各流入角度βごとの圧力計測値Pc、Pp及びPsと、対水船速Uとを読み出し、各流入角度βごとの値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)及び値(Pc−Ps)/ρU2を算出した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP3)。ρは水槽に満たされた水の密度である。値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)は、この例の船速測定装置を実装した実船の実際の流入角度βを算出するためのパラメータである。例えば、左舷からの流れに対しては値Pp>Psとなり、(Pp−Ps)>0であるのに対し、右舷からの流れに対してはPp<Psとなり、(Pp−Ps)<0である。また、値(Pc−Ps)/ρU2は、この例の船速測定装置を実装した実船の実際の対水船速Uを算出するためのパラメータである。なお、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)及び値(Pc−Ps)/ρU2は、いずれも無次元(dimensionless)であるので、ある船舶が他の船舶と大きさは異なるが形状が同一である相似形である場合には、同一の値を用いることができる。
【0023】
次に、制御部2は、流入角度βと値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)との第1特性曲線を作成した後に、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP4)。すなわち、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から流入角度βとそれに対応した値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)とを読み出し、グラフの横軸に流入角度βを、縦軸に値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を置点し、各点を接続することにより、図4に曲線aで示す第1特性曲線を作成する。次に、制御部2は、流入角度βと値(Pc−Ps)/ρU2との第2特性曲線を作成した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP5)。すなわち、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から流入角度βとそれに対応した値(Pc−Ps)/ρU2とを読み出し、グラフの横軸に流入角度βを、縦軸に値(Pc−Ps)/ρU2を置点し、各点を接続することにより、図4に曲線bで示す第2特性曲線を作成する。
【0024】
次に、制御部2は、変数kに1をインクリメントした(ステップSP6)後、変数kが喫水変更数nより大きいか否か判断する。この判断結果が「NO」の場合には、制御部2は、ステップSP2へ戻り、上記したステップSP2〜SP6の処理を繰り返す。そして、変数kが喫水変更数nより大きくなると、ステップSP7の判断結果が「YES」となり、制御部2は、一連の処理を終了する。以上説明したステップSP2〜SP5の処理がn回繰り返されることにより、各喫水ごとの第1特性曲線及び第2特性曲線が作成され、それぞれが記憶部3の所定の記憶領域に記憶されるとともに、表示部4に表示される。なお、第1特性曲線及び第2特性曲線は、多項式に当てはめることにより数式で表現することは可能である。
【0025】
ここで、第1特性曲線及び第2特性曲線を作成する根拠について説明する。先端が球のような鈍い形状をした物体が水等の流れの中におかれると、水等の流れと真正面にある点では圧力が最も大きく、その点から離れるに従って急激に圧力が低下していくことが知られている。水等の流れと物体に加えられる圧力との関係は、球体のように構造的に単純な形状の物体の場合は理論的に数式で表すことができるが、船首の形状のような一般の形状の物体では理論的に数式で表すことができない。そこで、実験又は数値解析的手法を用いて、水等の流れと物体に加えられる圧力との関係がどのような特性曲線の傾向を示すかについて調査しておく必要がある。第1特性曲線及び第2特性曲線は、微少な流入角度βの変化でも大きくかつ単調に変化する傾向(例えば、流入角度βの変化に対してほぼ直線的に変化し、かつその勾配が大きいこと)にあることが望ましい。
【0026】
特性曲線の傾向の良否は、実船で計測される流入角度β及び対水船速Uの精度に影響を与えるため、望ましい特性曲線となるような圧力センサの配置(最適配置)を予め検討しておく必要がある。圧力センサの最適配置については、上記したように、第1特性曲線及び第2特性曲線の傾向が流入角度βの変化に対してほぼ直線的に変化し、かつその勾配が大きいことが望ましいので、例えば、ヘス・スミス(Hess & Smith)法を用いた事前の計算でそのような位置を探索しておくことが望ましく、それが満たされた位置が最適な配置位置となる。圧力センサの最適な配置位置は、船舶の形状ごとに異なるので、一般的な数値として喫水線から何mの深さで左右の配置位置は船体中心線から何m離れたところと限定することはできない。また、距離が離れていても平行な位置関係に配置したのでは特性曲線の傾向が良好とはならないので、各圧力センサの配置位置の法線がなるべく大きな角度で交差するように各圧力センサを配置したほうが良い。ここで、ヘス・スミス(Hess & Smith)法とは、流体力学において、流れの中に物体が存在するとき、その物体が流れを排除する効果を流体力学的特異点の1つである吹き出し分布で置き換え、この強さを数値解析で求めることにより、流れを解析する方法である。
【0027】
次に、この例の船速測定装置を実船に実装した場合の対水船速U及び流入角度βの測定について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。その船首水面下の船体外板表面に図2に示すように圧力センサ11〜13が最適配置位置に配置された実船を海上等において航走させる。これにより、圧力センサ11〜13から圧力計測値Pc、Pp及びPsが供給されるので、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する。また、制御部2は、図示せぬ密度計により計測された海水密度ρが供給され、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、例えば、ブリッジに設置された表示部4に表示する(ステップSP11)。なお、海水密度ρは、計測された水温や塩水濃度から換算した値であっても良いし、検査者が操作部5を操作して入力しても良い。
【0028】
次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から圧力計測値Pc、Pp及びPsを読み出し、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を算出した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP12)。次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)と、第1特性曲線とを読み出し、図4に示すように、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を取るときの第1特性曲線における流入角度βを求めた後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP13)。
【0029】
次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から値βと、第2特性曲線とを読み出し、図4に示すように、値βを取るときの第2特性曲線における値(Pc−Ps)/ρU2(これを値Aとする。)を求めた後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP14)。値(Pc−Ps)/ρU2と値Aとは等しいので、(式1)が成り立つ。次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から圧力計測値Pc及びPsと、海水密度ρとを読み出し、(式1)を変形した(式2)に代入することにより、対水船速Uを算出した後、一連の処理を終了する(ステップSP15)。
(Pc−Ps)/ρU2=A ・・・(式1)
U={ρA/(Pc−Ps)}1/2 ・・・(式2)
【0030】
このように、この実施の形態では、圧力センサ11を船首水面下のほぼ船体中心線上の船体外板表面に配置し、圧力センサ12及び13はそれぞれ船首水面下の左舷及び右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる船体外板表面に配置するとともに、第1特性曲線及び第2特性曲線を模型を使った水槽試験で予め求め、実船に実装した場合には、圧力センサ11〜13からの圧力計測値Pc、Pp及びPsと、密度計からの海水密度ρと、上記第1特性曲線及び第2特性曲線とに基づいて、船舶が航走している際の対水船速U及び流入角度βを算出している。上記第1特性曲線及び第2特性曲線を模型船を使った水槽試験で精度良く作成することができるので、これに基づく実船における対水船速U及び流入角度βも精度良く算出することができる。
【0031】
なお、上記の説明では、第1特性曲線及び第2特性曲線を模型を使った水槽試験で求める例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、第1特性曲線及び第2特性曲線を数値解析手法を用いた理論計算により求めても良い。数値解析手法としては、例えば、ポテンシャル流理論に基づく上記したヘス・スミス(Hess & Smith)法や、流れの運動方程式を数値的に解く数値流体力学(CFD;Computational Fluid Dynamics)シミュレーションがある。また第1特性曲線及び第2特性曲線の式の形式も前述のものに限る必要はなく、β,Uが精度良く求まる形になっていれば良い。
【0032】
以上の説明により圧力センサ(圧力計)の測定値を用いることにより対水船速の測定が可能であることが明らかになったところで、次に、圧力センサ(圧力計)の測定値に基づいて波スペクトル等(波浪特性)を求める波浪特性測定装置の実施形態を、実施形態2〜4として説明する。
【0033】
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートであり、図7はその説明図である。なお、波浪特性測定装置の構成は図1に示されたものと基本的に同一であり、本実施形態2では図1の船速測定装置に上下加速度計6が付加されたものが、波浪特性測定装置として用いられる。そして、制御部2が後述の各演算を行う(このことは後述の実施形態3、4においても同様である。)
【0034】
ここで、対水船速を計測した部位(圧力センサ11の位置)Pによる計測圧力をp(t)とする。ここで(t)は時間変動値であることを表す。圧力値がほぼ水頭に等しいとみなすと、相対水位変動Zr(t)は次の(式3)で求められる。
【0035】
【数3】
【0036】
また、部位Pの位置における上下変位Zp(t)は、上下加速度計6により計測される上下加速度を2回積分して、次の(式4)により求められる。
【0037】
【数4】
【0038】
また、部位Pの水面からの高さをh0とすると、相対水位変動Zr(t)と絶対水位変動ζ(t)との間には次の(式5)の関係があるので、相対水位変動Zr(t)、高さh0及び上下変位Zp(t)から(式6)のように絶対水位変動ζ(t)を求めることができる。h0は、喫水及び部位Pの船底からの取り付け高さが分かっているので、両者の差より求めることができる。
【0039】
【数5】
【数6】
【0040】
ここで得られた絶対水位変動ζ(t)は、パワースペクトル演算により出会波スペクトルS(ωe)に変換される。パワースペクトル演算にはBlackman-Tukey法、FFT法、MEM法など種々の方法が提案され用いられているが、例えば次の(式7)に示すように、
【0041】
【数7】
【0042】
により自己相関関数C(τ)を求め、そのフーリエ変換を行うことにより出会波スペクトルを求めることができる。
【0043】
【数8】
【0044】
さらに以下の演算により波スペクトルS(ω)に変換される。
【0045】
【数9】
【0046】
出会波周波数ωeと波周波数ωの関係は次のように与えられる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0047】
ここで、Uは船速であり上記の実施形態1に示された対水船速測定により計測される。またλは波長、χは船と波との出会角である。この波出会角χは、船首正面から入射する時をχ=0°として、斜め方向から入射する時の角度である。例えば横波がχ=90°、追波がχ=180°となる。この波出会角χは例えば、船上で目視観察によって確定する、船上のレーダー画像を画像処理することによって波向きを求める、気圧配置/風速・風向分布から、波浪推算によって波向きを推定する、等の方法により別途求めるものとする。
【0048】
求められた波スペクトルより、遭遇波浪の有義波高H、平均波周期Tは(式13)により求められる。
【0049】
【数13】
【数14】
【0050】
実施形態3.
図8は本発明の実施形態3に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。なお、波浪特性測定装置の構成は図1に示されたものと同一である。上記の実施形態2の場合と同様に、部位Pにおける計測圧力より圧力変動p(t)を求め、この圧力p(t)に対してパワースペクトル演算を行うことにより、船体動揺の影響を含めた圧力のスペクトルSp(ωe)を求める。この圧力のスペクトルSp(ωe)より、出会波のスペクトルは次式で求めることができる。
【0051】
【数15】
【0052】
ここに、Hp(ωe;U,χ)は圧力計位置における圧力の周波数応答関数であり、船速U及び波出会角χをパラメータとして理論計算あるいは模型試験により求めることができる。現実的には事前にいくつかの船速及び波出会角波をパラメータとして圧力周波数応答関数をデータベースとして準備しておき、実際の船速、波向で補間して求めるのが好ましい。実際の船速は本装置から求まる対水船速を用い、波出会角については上記の実施形態2と同様に何らかの方法により求める。得られた出会波スペクトルから波スペクトルを求め、それより遭遇波浪の有義波高、平均波周期等の波浪パラメータを求める手法については、上記の実施の形態2と同様である。本実施形態3では、船体動揺影響を除去するための上下加速度計の設置が不要となる。
【0053】
実施形態4.
図9は本発明の実施形態4に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートであり、図10はその説明図である。本実施形態4では、対水流速計の圧力計(船首に設置)及びそこから十分に離れた距離に設置した圧力計(例えば船体中央部付近の左右舷に設置)のそれぞれ(合計三箇所以上)の圧力変動計測値を用いて、波スペクトルを求める。いま、圧力計をP1,…,PMのM箇所に設置するものとして、それぞれの圧力計で計測される圧力変動をpm(t), m=1,…,Mとする。これらの圧力変動計測値より、クロススペクトル演算により圧力のクロススペクトルSmn(ωe),m,n=1,…Mを求める。クロススペクトルSmn(ωe)と方向波スペクトルE(ω,χ)との間には次の関係がある。
【0054】
【数16】
【0055】
ここに、Hpm(ω,χ)は圧力計mにおける圧力周波数応答関数であり、上記の実施形態3と同様に船速Vと波出会角χをパラメータとして求めることができる。またH*pm(ω,χ)はHpm(ω,χ)の共役複素数である。上記の(式16)の関係を用いると、クロススペクトルSmn(ωe)より出会いの方向波スペクトルE(ωe,χ)を求めることができる。この解析には、従来パラメータ法、拡張最大エントロピー法、拡張最尤法、ベイズ法、非線形計画法等の各種手法が提案されている。上述の(式16)はその一例である。また、出会いの方向波スペクトルE(ωe,χ)から方向波スペクトルE(ω,χ)は(式9)を用いて求めることができる。求められた方向波スペクトルE(ω,χ)は波向成分を含んでいることから、波出会角の主方向を求めることができる。また、この方向波スペクトルより、遭遇波浪の有義波高H、平均波周期Tは(式13)を用いて求めることができる。但し、この場合には、
【0056】
【数17】
である。この演算方法では、船体動揺影響を除去するための上下加速度計6の設置が不要になる。また、波出会角χも自動的に求めることができる。
【0057】
なお、本実施形態4の場合には、対水流速計用の船首圧力計以外に、船体中央部付近に圧力計を追設する必要があるが、追加の圧力計位置と船首圧力計位置との距離は、遭遇波浪の波長の解像精度から特定すればよい。また、船体中央部付近に設置する場合には、船体中央部には既設の、喫水計として使用されている圧力計で計測されるデータを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1である船速測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】圧力センサの配置の一例を示す概念図である。
【図3】制御部の特性曲線作成処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】特性曲線の一例を示す図である。
【図5】制御部の船速測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態2の説明図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態4に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態4の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
11〜13 圧力センサ、2 制御部、3 記憶部、4 表示部、5 操作部、6 上下加速度計。
【技術分野】
【0001】
本発明は波浪特性測定方法及びその装置に関し、特に、船体の船首に設置された圧力計の計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波浪特性を求めるための演算処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波高等の波浪特性を計測する装置としては、例えば「船首の上下加速度センサ1の信号に基づき船首の上下変位を演算する装置3と、同装置3からの信号と波高計2からの信号を受けて絶対波高を演算する装置4と、同装置4からの信号を一定時間蓄積してパワースペクトラムを演算する装置5と、自船の方位から波向を設定することにより波出会い角を演算する装置6と、同装置6で演算された出会波角を用いて、パワースペクトラム演算装置5から得られた出会周波数ベースのパワースペクトラムを波周波数ベースに変換する装置7と、同装置7からの出力信号を受けて有義波高および平均波周波数を同定する装置8と、同装置8からの信号に基づき、平均波々長、スペクトラムピークの波長および周波数を演算する最終演算装置9とをそなえて構成される。」ものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−273198号公報(要約、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術(特許文献1)では、波高計と上下加速度計から求めた波高計位置における上下動揺から絶対波高の波スペクトルを求めており、これに波向と船速の値を与えることによって波スペクトルを求めているが、ここで船速は別に何らかの方法で求めて入力する必要がある、という問題点があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波浪特性を求めることを可能にした波浪特性測定方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める工程と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位を求め、前記上下変位と、前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める工程と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める工程と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0006】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める工程と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める工程と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0007】
本発明に係る波浪特性測定方法は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める工程と、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記実船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める工程と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める工程とを備えたものである。
【0008】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置に配置された上下加速度計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める処理と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位を求め、前記上下変位と、前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める処理と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【0009】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める処理と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【0010】
本発明に係る波浪特性測定装置は、船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された第1の複数の圧力計と、船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された第2複数の圧力計と、模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記第1の複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記第1の複数の圧力計の内、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記第2の複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める処理と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める処理とを行う制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明においては、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めるとともに、圧力変動を解析することにより波スペクトルを求めることを可能にしており、船速を別途求める必要がなく、装備の簡素化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明者らは、船首に複数の圧力計を設置し、それらの圧力計測値を解析することによって船体に流入する対水流速(=対水船速)/流向を求める測定方法を開発した。船舶は実海域では波浪中を航行することになるので、計測される圧力も波浪及びそれによる船体動揺によって時間的に変動する。船速はこれら変動量の平均値から求めることになるが、圧力変動量そのものから逆にその原因となる波浪を解析することが可能となる。波浪の解析が可能になると、平均(対水)船速と同時に入射波を確定することができる。
【0013】
ところで、ここで求まる波浪の波周期は船速の影響を受けた出会いの波周期である。例えば向波の場合には、船速の影響によって、出会いの波周期は短くなる。これを出会波周期と言う。また、この出会波周期に対応する波浪の不規則変動分布を出会波スペクトルという。実際に求めたいのは船舶が遭遇している(船舶に入射してくる)波浪のスペクトル(船速影響が入らない状態の波スペクトル)であり、これは出会波周期、波出会角、対水船速が分かれば求めることができる。本発明によれば、出会波周期、対水船速を求めることができるので、これらを用いて船舶が遭遇している波浪(波スペクトル)を特定することが可能になる。
【0014】
以下の説明においては、本発明の基礎となっている圧力計の計測値に基づいて船速を求る例を実施形態1とし、その船速を利用して波スペクトル等を求める例を実施形態2〜4として説明する。
【0015】
実施形態1.
本発明は、船体の船首に設置された圧力計による計測値に基づいて船速を求めることができるようになったということに基づいてなされたものであり、本発明の波浪特性計測装置の内、船速の測定に着目してそれを実施形態1として説明する。
【0016】
図1は本発明の基礎になっている船速測定装置の構成を示すブロック図である。この船速測定装置は、圧力センサ11〜13、制御部2、記憶部3、表示部4及び操作部5から構成されている。なお、図1には上下加速度計6が図示されているが、これは後述の実施形態2において用いられるものであり、本実施形態1においては無視するものとする。
【0017】
圧力センサ11〜13は、例えば、外形がステンレス製の埋め込み型や、圧電素子等の電子式のものからなり、それぞれ圧力計測値Pc、Pp及びPsを制御部2に供給する。圧力センサ11〜13の容量は、例えば、船速が10m/s(約20ノット相当)の場合、よどみ圧が約5.1maq=約50kpaであるので、約100kpa(1気圧相当でよどみ圧換算の船速約27ノット)であれば良い。図2に示すように、圧力センサ11は船首水面下の船体中心線(図2の破線参照)の近傍位置の船体外板表面に配置し、圧力センサ12及び13はそれぞれ船首水面下の左舷及び右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる船体外板表面に配置する。
【0018】
制御部2は、CPU(中央処理装置)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、シーケンサ等からなり、記憶部3に記憶されている、特性曲線作成プログラム、船速測定プログラム等に基づいて、特性曲線作成処理、船速測定処理等を実行することにより、船速測定装置の全体を制御する。すなわち、例えば、特性曲線作成プログラムが読み出されると、制御部2に読み込まれ、制御部2の動作を制御する。制御部2は、特性曲線作成プログラムが起動されると、特性曲線作成プログラムの制御により、後述する特性曲線作成処理を実行するのである。
【0019】
記憶部3は、RAM、ROM、あるいはフラッシュメモリ等の半導体メモリ、FD(フロッピー(登録商標)・ディスク)が装着されるFDドライブ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライブ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライブ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(ReWritable)やDVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライブ等からなる。記憶部3は、上記した制御部2が実行すべき特性曲線作成プログラム、船速測定プログラムその他の各種プログラムが予め記憶されているとともに、制御部2が上記した特性曲線作成プログラム、船速測定プログラムその他の各種プログラムを実行する際に作業用として用いられる。表示部4は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD;Liquid Crystal Display)、エレクトロルミネセンス(EL:Electro Luminescence)ディスプレイ、あるいはプラズマディスプレイパネル(PDP;Plasma Display Panel)等からなる。操作部5は、テンキー、エンターキー、あるいはファンクションキー等からなるキーボードや、マウス、タッチパッド、あるいはペンデバイス等のポインティングデバイスなどを有する。
【0020】
次に、上記の船速測定装置の動作について説明する。まず、この例の船速測定装置を模型船に実装した水槽試験を予め実施することにより、この例の船速測定装置を実船に実装した際に用いる特性曲線を作成する。なお、船速測定装置を模型船に実装するとは、ここでは船速測定装置の内、圧力センサを実装することを意味し、他の機器は必ずしも搭載する必要はない。以下、上記した特性曲線の作成について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。この例の船速測定装置が特性曲線作成モードに設定されると、制御部2は、喫水を変化させるべき回数である喫水変更数n(nは自然数)を設定するとともに、喫水変更数nをカウントするための変数kに1をセットする。また、検査者が操作部5を操作して入力した対水船速Uを記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP1)。ここで、喫水を変化させるのは、圧力センサ11〜13から出力される圧力計測値Pc、Pp及びPsが船舶の喫水変化による影響を受けるので、各喫水ごとの特性曲線を作成する必要があるためである。また、対水船速Uを設定するのは、制御部2が後述する特性曲線を作成する際に必要となるからである。
【0021】
次に、水槽において、その船首水面下の船体外板表面に図2に示されるように圧力センサ11〜13が最適配置位置に配置された模型船を斜航角をつけて一定速度で曳航する。斜航角は流入角度βに相当し、速度はステップSP1で設定した対水船速Uに相当する。これにより、圧力センサ11〜13から圧力計測値Pc、Pp及びPsが供給されるので、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP2)。作成すべき特性曲線は、後述するように、流入角度βの関数であるため、斜航角を、例えば、−30度から+30度まで5度おきに変化させて上記した模型船を一定速度で曳航する。したがって、制御部2は、各斜航角ごと、すなわち、各流入角度βごとの圧力センサ11〜13からの圧力計測値Pc、Pp及びPsを記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する。
【0022】
圧力センサ11〜13から各流入角度βごとの圧力計測値Pc、Pp及びPsがすべて供給されると、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から各流入角度βごとの圧力計測値Pc、Pp及びPsと、対水船速Uとを読み出し、各流入角度βごとの値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)及び値(Pc−Ps)/ρU2を算出した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP3)。ρは水槽に満たされた水の密度である。値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)は、この例の船速測定装置を実装した実船の実際の流入角度βを算出するためのパラメータである。例えば、左舷からの流れに対しては値Pp>Psとなり、(Pp−Ps)>0であるのに対し、右舷からの流れに対してはPp<Psとなり、(Pp−Ps)<0である。また、値(Pc−Ps)/ρU2は、この例の船速測定装置を実装した実船の実際の対水船速Uを算出するためのパラメータである。なお、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)及び値(Pc−Ps)/ρU2は、いずれも無次元(dimensionless)であるので、ある船舶が他の船舶と大きさは異なるが形状が同一である相似形である場合には、同一の値を用いることができる。
【0023】
次に、制御部2は、流入角度βと値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)との第1特性曲線を作成した後に、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP4)。すなわち、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から流入角度βとそれに対応した値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)とを読み出し、グラフの横軸に流入角度βを、縦軸に値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を置点し、各点を接続することにより、図4に曲線aで示す第1特性曲線を作成する。次に、制御部2は、流入角度βと値(Pc−Ps)/ρU2との第2特性曲線を作成した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP5)。すなわち、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から流入角度βとそれに対応した値(Pc−Ps)/ρU2とを読み出し、グラフの横軸に流入角度βを、縦軸に値(Pc−Ps)/ρU2を置点し、各点を接続することにより、図4に曲線bで示す第2特性曲線を作成する。
【0024】
次に、制御部2は、変数kに1をインクリメントした(ステップSP6)後、変数kが喫水変更数nより大きいか否か判断する。この判断結果が「NO」の場合には、制御部2は、ステップSP2へ戻り、上記したステップSP2〜SP6の処理を繰り返す。そして、変数kが喫水変更数nより大きくなると、ステップSP7の判断結果が「YES」となり、制御部2は、一連の処理を終了する。以上説明したステップSP2〜SP5の処理がn回繰り返されることにより、各喫水ごとの第1特性曲線及び第2特性曲線が作成され、それぞれが記憶部3の所定の記憶領域に記憶されるとともに、表示部4に表示される。なお、第1特性曲線及び第2特性曲線は、多項式に当てはめることにより数式で表現することは可能である。
【0025】
ここで、第1特性曲線及び第2特性曲線を作成する根拠について説明する。先端が球のような鈍い形状をした物体が水等の流れの中におかれると、水等の流れと真正面にある点では圧力が最も大きく、その点から離れるに従って急激に圧力が低下していくことが知られている。水等の流れと物体に加えられる圧力との関係は、球体のように構造的に単純な形状の物体の場合は理論的に数式で表すことができるが、船首の形状のような一般の形状の物体では理論的に数式で表すことができない。そこで、実験又は数値解析的手法を用いて、水等の流れと物体に加えられる圧力との関係がどのような特性曲線の傾向を示すかについて調査しておく必要がある。第1特性曲線及び第2特性曲線は、微少な流入角度βの変化でも大きくかつ単調に変化する傾向(例えば、流入角度βの変化に対してほぼ直線的に変化し、かつその勾配が大きいこと)にあることが望ましい。
【0026】
特性曲線の傾向の良否は、実船で計測される流入角度β及び対水船速Uの精度に影響を与えるため、望ましい特性曲線となるような圧力センサの配置(最適配置)を予め検討しておく必要がある。圧力センサの最適配置については、上記したように、第1特性曲線及び第2特性曲線の傾向が流入角度βの変化に対してほぼ直線的に変化し、かつその勾配が大きいことが望ましいので、例えば、ヘス・スミス(Hess & Smith)法を用いた事前の計算でそのような位置を探索しておくことが望ましく、それが満たされた位置が最適な配置位置となる。圧力センサの最適な配置位置は、船舶の形状ごとに異なるので、一般的な数値として喫水線から何mの深さで左右の配置位置は船体中心線から何m離れたところと限定することはできない。また、距離が離れていても平行な位置関係に配置したのでは特性曲線の傾向が良好とはならないので、各圧力センサの配置位置の法線がなるべく大きな角度で交差するように各圧力センサを配置したほうが良い。ここで、ヘス・スミス(Hess & Smith)法とは、流体力学において、流れの中に物体が存在するとき、その物体が流れを排除する効果を流体力学的特異点の1つである吹き出し分布で置き換え、この強さを数値解析で求めることにより、流れを解析する方法である。
【0027】
次に、この例の船速測定装置を実船に実装した場合の対水船速U及び流入角度βの測定について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。その船首水面下の船体外板表面に図2に示すように圧力センサ11〜13が最適配置位置に配置された実船を海上等において航走させる。これにより、圧力センサ11〜13から圧力計測値Pc、Pp及びPsが供給されるので、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する。また、制御部2は、図示せぬ密度計により計測された海水密度ρが供給され、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、例えば、ブリッジに設置された表示部4に表示する(ステップSP11)。なお、海水密度ρは、計測された水温や塩水濃度から換算した値であっても良いし、検査者が操作部5を操作して入力しても良い。
【0028】
次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から圧力計測値Pc、Pp及びPsを読み出し、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を算出した後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP12)。次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)と、第1特性曲線とを読み出し、図4に示すように、値(Pp−Ps)/(Pc−Ps)を取るときの第1特性曲線における流入角度βを求めた後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶するとともに、表示部4に表示する(ステップSP13)。
【0029】
次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から値βと、第2特性曲線とを読み出し、図4に示すように、値βを取るときの第2特性曲線における値(Pc−Ps)/ρU2(これを値Aとする。)を求めた後、記憶部3の所定の記憶領域に記憶する(ステップSP14)。値(Pc−Ps)/ρU2と値Aとは等しいので、(式1)が成り立つ。次に、制御部2は、記憶部3の所定の記憶領域から圧力計測値Pc及びPsと、海水密度ρとを読み出し、(式1)を変形した(式2)に代入することにより、対水船速Uを算出した後、一連の処理を終了する(ステップSP15)。
(Pc−Ps)/ρU2=A ・・・(式1)
U={ρA/(Pc−Ps)}1/2 ・・・(式2)
【0030】
このように、この実施の形態では、圧力センサ11を船首水面下のほぼ船体中心線上の船体外板表面に配置し、圧力センサ12及び13はそれぞれ船首水面下の左舷及び右舷の船体中心線からほぼ等間隔となる船体外板表面に配置するとともに、第1特性曲線及び第2特性曲線を模型を使った水槽試験で予め求め、実船に実装した場合には、圧力センサ11〜13からの圧力計測値Pc、Pp及びPsと、密度計からの海水密度ρと、上記第1特性曲線及び第2特性曲線とに基づいて、船舶が航走している際の対水船速U及び流入角度βを算出している。上記第1特性曲線及び第2特性曲線を模型船を使った水槽試験で精度良く作成することができるので、これに基づく実船における対水船速U及び流入角度βも精度良く算出することができる。
【0031】
なお、上記の説明では、第1特性曲線及び第2特性曲線を模型を使った水槽試験で求める例を示したが、本発明はこれに限定するものではない。例えば、第1特性曲線及び第2特性曲線を数値解析手法を用いた理論計算により求めても良い。数値解析手法としては、例えば、ポテンシャル流理論に基づく上記したヘス・スミス(Hess & Smith)法や、流れの運動方程式を数値的に解く数値流体力学(CFD;Computational Fluid Dynamics)シミュレーションがある。また第1特性曲線及び第2特性曲線の式の形式も前述のものに限る必要はなく、β,Uが精度良く求まる形になっていれば良い。
【0032】
以上の説明により圧力センサ(圧力計)の測定値を用いることにより対水船速の測定が可能であることが明らかになったところで、次に、圧力センサ(圧力計)の測定値に基づいて波スペクトル等(波浪特性)を求める波浪特性測定装置の実施形態を、実施形態2〜4として説明する。
【0033】
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートであり、図7はその説明図である。なお、波浪特性測定装置の構成は図1に示されたものと基本的に同一であり、本実施形態2では図1の船速測定装置に上下加速度計6が付加されたものが、波浪特性測定装置として用いられる。そして、制御部2が後述の各演算を行う(このことは後述の実施形態3、4においても同様である。)
【0034】
ここで、対水船速を計測した部位(圧力センサ11の位置)Pによる計測圧力をp(t)とする。ここで(t)は時間変動値であることを表す。圧力値がほぼ水頭に等しいとみなすと、相対水位変動Zr(t)は次の(式3)で求められる。
【0035】
【数3】
【0036】
また、部位Pの位置における上下変位Zp(t)は、上下加速度計6により計測される上下加速度を2回積分して、次の(式4)により求められる。
【0037】
【数4】
【0038】
また、部位Pの水面からの高さをh0とすると、相対水位変動Zr(t)と絶対水位変動ζ(t)との間には次の(式5)の関係があるので、相対水位変動Zr(t)、高さh0及び上下変位Zp(t)から(式6)のように絶対水位変動ζ(t)を求めることができる。h0は、喫水及び部位Pの船底からの取り付け高さが分かっているので、両者の差より求めることができる。
【0039】
【数5】
【数6】
【0040】
ここで得られた絶対水位変動ζ(t)は、パワースペクトル演算により出会波スペクトルS(ωe)に変換される。パワースペクトル演算にはBlackman-Tukey法、FFT法、MEM法など種々の方法が提案され用いられているが、例えば次の(式7)に示すように、
【0041】
【数7】
【0042】
により自己相関関数C(τ)を求め、そのフーリエ変換を行うことにより出会波スペクトルを求めることができる。
【0043】
【数8】
【0044】
さらに以下の演算により波スペクトルS(ω)に変換される。
【0045】
【数9】
【0046】
出会波周波数ωeと波周波数ωの関係は次のように与えられる。
【数10】
【数11】
【数12】
【0047】
ここで、Uは船速であり上記の実施形態1に示された対水船速測定により計測される。またλは波長、χは船と波との出会角である。この波出会角χは、船首正面から入射する時をχ=0°として、斜め方向から入射する時の角度である。例えば横波がχ=90°、追波がχ=180°となる。この波出会角χは例えば、船上で目視観察によって確定する、船上のレーダー画像を画像処理することによって波向きを求める、気圧配置/風速・風向分布から、波浪推算によって波向きを推定する、等の方法により別途求めるものとする。
【0048】
求められた波スペクトルより、遭遇波浪の有義波高H、平均波周期Tは(式13)により求められる。
【0049】
【数13】
【数14】
【0050】
実施形態3.
図8は本発明の実施形態3に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。なお、波浪特性測定装置の構成は図1に示されたものと同一である。上記の実施形態2の場合と同様に、部位Pにおける計測圧力より圧力変動p(t)を求め、この圧力p(t)に対してパワースペクトル演算を行うことにより、船体動揺の影響を含めた圧力のスペクトルSp(ωe)を求める。この圧力のスペクトルSp(ωe)より、出会波のスペクトルは次式で求めることができる。
【0051】
【数15】
【0052】
ここに、Hp(ωe;U,χ)は圧力計位置における圧力の周波数応答関数であり、船速U及び波出会角χをパラメータとして理論計算あるいは模型試験により求めることができる。現実的には事前にいくつかの船速及び波出会角波をパラメータとして圧力周波数応答関数をデータベースとして準備しておき、実際の船速、波向で補間して求めるのが好ましい。実際の船速は本装置から求まる対水船速を用い、波出会角については上記の実施形態2と同様に何らかの方法により求める。得られた出会波スペクトルから波スペクトルを求め、それより遭遇波浪の有義波高、平均波周期等の波浪パラメータを求める手法については、上記の実施の形態2と同様である。本実施形態3では、船体動揺影響を除去するための上下加速度計の設置が不要となる。
【0053】
実施形態4.
図9は本発明の実施形態4に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートであり、図10はその説明図である。本実施形態4では、対水流速計の圧力計(船首に設置)及びそこから十分に離れた距離に設置した圧力計(例えば船体中央部付近の左右舷に設置)のそれぞれ(合計三箇所以上)の圧力変動計測値を用いて、波スペクトルを求める。いま、圧力計をP1,…,PMのM箇所に設置するものとして、それぞれの圧力計で計測される圧力変動をpm(t), m=1,…,Mとする。これらの圧力変動計測値より、クロススペクトル演算により圧力のクロススペクトルSmn(ωe),m,n=1,…Mを求める。クロススペクトルSmn(ωe)と方向波スペクトルE(ω,χ)との間には次の関係がある。
【0054】
【数16】
【0055】
ここに、Hpm(ω,χ)は圧力計mにおける圧力周波数応答関数であり、上記の実施形態3と同様に船速Vと波出会角χをパラメータとして求めることができる。またH*pm(ω,χ)はHpm(ω,χ)の共役複素数である。上記の(式16)の関係を用いると、クロススペクトルSmn(ωe)より出会いの方向波スペクトルE(ωe,χ)を求めることができる。この解析には、従来パラメータ法、拡張最大エントロピー法、拡張最尤法、ベイズ法、非線形計画法等の各種手法が提案されている。上述の(式16)はその一例である。また、出会いの方向波スペクトルE(ωe,χ)から方向波スペクトルE(ω,χ)は(式9)を用いて求めることができる。求められた方向波スペクトルE(ω,χ)は波向成分を含んでいることから、波出会角の主方向を求めることができる。また、この方向波スペクトルより、遭遇波浪の有義波高H、平均波周期Tは(式13)を用いて求めることができる。但し、この場合には、
【0056】
【数17】
である。この演算方法では、船体動揺影響を除去するための上下加速度計6の設置が不要になる。また、波出会角χも自動的に求めることができる。
【0057】
なお、本実施形態4の場合には、対水流速計用の船首圧力計以外に、船体中央部付近に圧力計を追設する必要があるが、追加の圧力計位置と船首圧力計位置との距離は、遭遇波浪の波長の解像精度から特定すればよい。また、船体中央部付近に設置する場合には、船体中央部には既設の、喫水計として使用されている圧力計で計測されるデータを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1である船速測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】圧力センサの配置の一例を示す概念図である。
【図3】制御部の特性曲線作成処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】特性曲線の一例を示す図である。
【図5】制御部の船速測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態2に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態2の説明図である。
【図8】本発明の実施形態3に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態4に係る波浪特性測定装置の演算処理の過程を示したフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態4の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
11〜13 圧力センサ、2 制御部、3 記憶部、4 表示部、5 操作部、6 上下加速度計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める工程と、
前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、前記上下変位量と前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める工程と、
前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める工程と、
前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項2】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める工程と、
前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める工程と、
前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項3】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記実船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める工程と、
前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項4】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、
船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置に配置された上下加速度計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める処理と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、前記上下変位量と前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める処理と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【請求項5】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める処理と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【請求項6】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された第1の複数の圧力計と、
船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された第2複数の圧力計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記第1の複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記第1の複数の圧力計の内、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記第2の複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める処理と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【請求項1】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める工程と、
前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、前記上下変位量と前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める工程と、
前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める工程と、
前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項2】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める工程と、
前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める工程と、
前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項3】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求める工程と、
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに複数の圧力計が配置された実船の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を算出する工程と、
前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記実船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める工程と、
前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める工程と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定方法。
【請求項4】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、
船首水面下の船体外板表面のほぼ船体中心線上の位置に配置された上下加速度計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて相対水位変動を求める処理と、前記実船に配置された上下加速度計の出力に基づいて上下変位量を求め、前記上下変位量と前記相対水位変動とに基づいて絶対水位変動を求める処理と、前記絶対水位変動に基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、別途求められた波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【請求項5】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された複数の圧力計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記圧力計の計測値に基づいて出会圧力スペクトルを求める処理と、前記対水船速及び別途求められた波出会角を関数とする圧力周波数応答関数と前記出会圧力スペクトルとに基づいて出会波スペクトルを求める処理と、前記出会波スペクトルと、前記対水船速と、前記波出会角とに基づいて波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【請求項6】
船首水面下の船体外板表面の、ほぼ船体中心線上の位置と、左舷及び右舷の前記船体中心線からほぼ等間隔となる位置とに配置された第1の複数の圧力計と、
船の左舷及び右舷にそれぞれ配置された第2複数の圧力計と、
模型船を用いた水槽試験又は理論計算により、喫水ごと及び流入角度ごとに、前記第1の複数の圧力計の圧力計測値と前記流入角度とに関する複数の特性曲線を求め、前記複数の圧力計の圧力計測値と、水の密度と、前記複数の特性曲線とに基づいて対水船速を求める処置と、前記第1の複数の圧力計の内、前記ほぼ船体中心線上の位置に配置された圧力計の計測値と、前記第2の複数の圧力計の計測値とに基づいて圧力クロススペクトルを求める処理と、前記対水船速を関数とする圧力周波数応答関数と、前記圧力クロススペクトルとに基づいて方向波スペクトルを求める処理とを行う制御部と
を備えたことを特徴とする波浪特性測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−85795(P2007−85795A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272768(P2005−272768)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
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