波面の位相情報を回復するためのシステムおよび方法
【課題】記録された濃度値からの位相情報の回復のためのシステムおよび方法が開示される。
【解決手段】一つ以上のジオプトリ・レンズ等、位相フィルタ(230)は、物体を観察するために使用されるレンズ(210)のバック・フォーカル・プレーン(BFP)(230)に配置される。位相フィルタ(230)は、既知の方法で、BFPにおける波面分布の位相を変える。前記システムは、電子的に可変的な位相フィルタ(230)によって生成される、Nの異なる位相フィルタ(230)またはNの位相分布を使用して、像表面(IP)(240)におけるNの異なる組の濃度データを捕捉する。Nの濃度像は、レンズのBFPにおける波面の評価を得るために使用される。このBFP波面評価は、IPにおける波面の、Nの変更された評価を生成するために使用され、変更された評価の各々はBFP位相フィルタ(230)のNの位相分布の一つに対応する。
【解決手段】一つ以上のジオプトリ・レンズ等、位相フィルタ(230)は、物体を観察するために使用されるレンズ(210)のバック・フォーカル・プレーン(BFP)(230)に配置される。位相フィルタ(230)は、既知の方法で、BFPにおける波面分布の位相を変える。前記システムは、電子的に可変的な位相フィルタ(230)によって生成される、Nの異なる位相フィルタ(230)またはNの位相分布を使用して、像表面(IP)(240)におけるNの異なる組の濃度データを捕捉する。Nの濃度像は、レンズのBFPにおける波面の評価を得るために使用される。このBFP波面評価は、IPにおける波面の、Nの変更された評価を生成するために使用され、変更された評価の各々はBFP位相フィルタ(230)のNの位相分布の一つに対応する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、波面位相情報を回復し、および前記回復した情報を表示のために使用するためのシステムおよび方法に関し、より特定的には、計測された濃度情報から位相関数を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント単色画像システムにおいて、濃度情報のみを記録する検出媒体から位相情報を抽出する問題は、一貫した解決策がなく、問題を残している。波面に関する位相関数を決定するための実験的方法が、提案されている。Gabor、D.“新しい顕微鏡原理(A New Microscope Principle)”、Nature161,777(1948)に開示されたそのような方法は、基準波を、記録面における、関心のある波に加えることを伴う。その結果であるホログラムは、写真板(photographic plate)に一連の濃度縞(intensity fringes)を記録し、それは、関心のある完全な波動関数を再構築するために十分な情報を含む。しかしながら、最も実用的な応用において、この方法は、採用するには面倒であり、実用的でない。
【0003】
他の方法は、基準波を採用しておらず、濃度記録から完全な波動関数を推測することを提案していた。例えば、Erickson,H.およびKlug,A.“電子顕微鏡写真のフーリエ変換...(The Fourier Transform of an Electron Micrograph...)”、Berichte der Bunsen Gesellschaft、74,1129(1970)を参照。ほとんどの部分で、これらの方法は、線形近似を伴っており、関心のある波面に対する小さな位相および/または振幅偏差にのみ有効である。一般的に、これらの方法は、集中的な計算リソースを必要とするという欠点にも悩む。
【0004】
さらなる方法は、波面の濃度記録は、画像面および回折面の両方で都合よく実行することができることを提案した。Gerchberg,R.およびSaxton,W.“電子顕微鏡における位相決定(Phase Determination in the Electron Microscope)”Optik、34,275(1971)。前記方法は、像および回折面におけるその濃度に関して、前記波動に対する波動関数を定義する二次方程式のセットを使用する。この解析方法は、上述の、小さな位相偏差の欠点によって制約されないが、しかしここでも、大量の計算リソースを必要とする。
【0005】
1971年、本発明者は、画像および回折面における濃度記録から、完全な波動関数(振幅および位相)を決定する計算方法を説明した論文を共著した。Gerchberg,R.およびSaxton,W.“位相の決定のための実用的アルゴリズム(A Practical Algorithm for the Determination of Phase...)”Optik,35,237(1972)。前記方法は、これらの2面における複合波関数間にフーリエ変換関係があるかに依存する。本方法は、X線回折パターンのみが計測されてもよい、電子顕微鏡、通常の光写真、および結晶学において有用な応用ができることがわかった。
【0006】
いわゆるGerchberg−Saxton解決法は、図1にブロック図で示されている。アルゴリズムへの入力データは、画像面100および回折面110における、物理的にサンプル抽出された波動関数濃度の平方根である。器具は、物理的に濃度を計測することしかできないが、複合波関数の振幅は、直接的に、計測された濃度の平方根に比例する。πから−πまでの乱数のアレイ120を生成するために乱数生成装置が使用され、前記乱数はサンプル抽出された、画像化された振幅に対応する位相の初期評価として機能する。より良い位相評価が演繹的にある場合、代わりにそれが使用されてもよい。アルゴリズムのステップ130において、評価された位相120(単位振幅“フェーザー(phasor)”として表示される)は、像表面からの、対応する、サンプル抽出された像振幅を乗じられ、および合成された複合離散関数の離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムによって、ステップ140において達成される。この変換から生じる離散複合関数の位相は、単位振幅“フェーザー”として保持され(ステップ150)、それらはステップ160において、真の対応する、サンプル抽出された回折面振幅を乗じられる。この離散複合関数(複合回折面波動の評価)は、ステップ170において逆高速フーリエ変換される。再度、生成された離散複合関数の位相は、単位振幅“フェーザー”として保持され(ステップ180)、それは像表面130において複合波関数の新しい評価を形成するために、対応する、計測された像振幅を乗じられる。ステップ130−180のシーケンスは、波形の算出された振幅が、計測された振幅に、十分に近く適合するまで繰り返される。これは、分子が、2乗された複合離散波動関数の計測された振幅と算出された振幅との間の差の、いずれかの面におけるすべてのサンプル点に対する和であり、および分母が、2乗された計測された振幅の面におけるすべての点に対する和である分数を用いることによって計測することができる。この分数が0.01より小さい時、前記関数は通常、うまく管理されている。この分数はしばしば、波動関数の計測されたエネルギで除された、平方誤差の和(sum of the squared error)(SSE):SSE/Energyとして表現される。前記分数は、分数誤差(Fractional Error)として知られている。
【0007】
上述の、Gerchberg−Saxtonプロセスに関する理論的な制約は、平方和誤差(SSE)、すなわち分数誤差が、減少するか、最悪でも前記処理の各反復に対して一定でなければならないことである。
【0008】
Gerchberg−Saxton解決法は、多くの様々なコンテクストで幅広く使用されてきたが、主な問題は、前記アルゴリズムが、ゼロの平方和誤差(SSE)へと減少するよりもむしろ、“ロックする(lock)”かもしれないということであった。すなわち、前記誤差は、変わらずとどまり、通常は各反復とともに発展する前記波動関数は、変化をやめるであろう。SSEが増加しえないという事実は、このように、“エラー・ウェル(error well)”に、アルゴリズムの進行を閉じ込めるかもしれない。Gerchberg,R.“位相回復のためのGerchberg Saxtonアルゴリズムにおけるロック問題(The Lock Problem in the Gerchberg Saxton Algorithm for Phase Retrieval)”Optik、74,91(1986)、およびFienup,JおよびWackerman,C.“位相回復停滞問題および解決法(Phase retrieval stagnation problems and solutions)”J.Opt.Soc.Am.A,3,1897(1986)を参照のこと。前記方法に関する別の問題は、独自でない解決法が現れた1次元写真において明らかになった。さらに、前記アルゴリズムは、遅い集束に苦しむ。今のところ、Gerchberg−Saxton方法に関するこれらの問題に対して、代替的な、満足のいく解決法はない。従って、従来技術に関連する欠点のない、波面位相情報を回復することができるシステムおよび方法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、“誤差低減(error reduction)”原理によって働き、および観察されている物体からの、波面の複数のサンプルを必要とする。前記方法は、物体からの散乱波が突き当たる集束レンズのバック・フォーカル・プレーンは、波動関数を含んでいるという事実に依存しており、それは直接的に、前記物体のフーリエ変換に比例し、それゆえに、前記物体の像表面波動関数のフーリエ変換に比例する。一つのピクセルから、その隣接するピクセルのいずれかへの位相角がほんの少ししか変わらない場合において、従来の方法は、これらの小さな位相角の区別を試みることに、計算上、集中していた。実際のバック・フォーカル・プレーン(BFP)波は、これらの二つの面の間のドリフト空間の介入によって、像表面における真の像へ変換するので(計算上、BFP波に、像表面波を生じさせるフーリエ変換を受けさせる)、これらの二つの共役面における計測値の間には、一つの、大変有用な関係がある。しかしながら、これら二つの面における波動の間の他の関係は、BFPのみにおける位相分布(振幅分布ではない)を変化させることによって、達成可能である。これは、既知の、しかし物理的には異なる位相フィルタを使用することによって、BFPにおいて達成することができ、そのBFP位相分布に対する効果は、公知である。
【0010】
BFPにおける位相を効果的に変える、他の物理的方法(例えば、デフォーカス(defocus)の使用)があることが注目される。この介入から生じる像表面波は、これら二つの共役面における濃度計測値の間に、結果的に新しい関係を生じさせる真の物体波とは大変異なりうる。本発明は、再構築された波形の計算を劇的に減らすために、反復アルゴリズムにおける停滞を避けるために、および再構築された波動関数における特定のよく知られた不明確さを避けるために、これらの新しい“合成された”関係のいくつかを使用する。
【0011】
本発明の一つの実施例においては、ランダム位相フィルタが、集束レンズのバック・フォーカル・プレーン(BFP)に挿入される。この位相フィルタは、公知の方法でBFPにおけるピクセルに関する位相を変え、それによって、像表面におけるその結果の像を変える。BFPにおける個別のピクセルの位相分布は、無作為に、または所望の分布に従って選択することができる。本発明の代替的実施例において、従来の集束および/または拡散レンズが、位相フィルタとして使用されうる。
【0012】
上記のフィルタを使用して、Nの異なるセットの振幅(濃度)データが、像表面から得られる。すなわち、物体の、Nの異なる像は、像表面で作成される。本発明の代替的実施例において、波動濃度は、同様に、BFPに記録されても良いことが注目される。次に、N濃度像の各々は、像表面で計測された濃度値、および無作為か、または従来の知識に基づいて選択されてもよい位相値を使用して、“合成”波面を得るために処理される。実際問題として、利便性のために、各複合ピクセルに関する位相は、最初にゼロであると仮定することができるが、どんな初期位相評価値でも機能する。Nの像の各々に関する、その結果の波動関数は、(標準高速アルゴリズムを用いて)逆フーリエ変換され、および対応するBFPフィルタの各々の、既知の移相が、各ピクセルから減じられる。これは、同様に、BFPにおける波動関数のNの評価を得るために、Nの像の各々に関して行われる。その結果のBFP評価は、Nの像の各々に関してセーブされる。それから、好ましい実施例に従って、これらBFP評価は、複合BFP波面の単一のBFP評価を得るために、平均される。
【0013】
本発明の代替的実施例においては、BFP濃度データは、NのIP像とともに計測され、BFP波動評価の振幅は、反復処理のこの点において、計測された振幅分布に変えられる。それから、NのIP像の各々に関して、その対応するフィルタの移相は、同様に、単一のBFP評価に加えられ、およびNの異なるBFP評価(Nの異なる位相フィルタ効果で異なる)は、像表面における波動関数のNの評価を生成するために、フーリエ変換される。Nの評価の各々は、特定の像に関する、実際に計測された振幅を用いて修正される。この修正は、誤差値という結果を生む。上述の処理は、すべてのNの像のSSEが、本アプリケーションの目的のために、十分に小さくなるまで、反復方法で繰り返される。典型的な場合では、すべてのNの像のエネルギの1%未満(すなわち、分数誤差は1%未満である)を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、位相情報を回復するための従来の方法を示す。
【図2】図2は、本発明の一つの実施例に従って、濃度データを得るための装置を示す。
【図3】図3は、本発明の方法の好ましい実施例を、ブロック図形式で示す。
【図4A】図4Aは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4B】図4Bは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4C】図4Cは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4D】図4Dは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4E】図4Eは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4F】図4Fは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5B】図5Bは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5C】図5Cは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5D】図5Dは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図6】図6は、本発明の方法の一つの実施例に従って、合計エネルギで除されたすべてのNの像に関する、算出された、平方誤差和(SSE)(すなわち、SSE/合計エネルギ)を、反復数の関数として表す、典型的なグラフである。
【図7】図7は、異なる数のセットのデータに関する、本発明の方法の一つの実施例における、算出された分数誤差対反復数を示すグラフである。
【図8】図8は、図3に記載の計算アルゴリズムが反復するにつれての、二つの典型的なピクセルフェーザーの位相評価の進行を示す。
【図9】図9は、像表面からのデータのみを使用した実験的実行(experiment run)(グラフA)を、バック・フォーカル・プレーンおよび像表面の両方からのデータを使用した同じ実験(グラフB)と比較した、分数誤差のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を説明する目的で、図面には、現在好まれる形式が記載されているが、本発明は図面によって示された詳細な形式に限定されないことが理解されるであろう。
【0016】
本発明は、一般的に、波面を伝播することに適用され、その伝播の経路に沿って、二つの面が存在し、そこでは複合波分布が変換によって関連付けられ、前記変換は一般的には、フーリエ変換のように、線形で、転回的で(invertible)、エネルギを保存する。前記二つの面は、共役面とも称される。そのような共役面は、例えば、電磁アンテナ開口部と、その遠距離電磁界(フラウンホーファー)面との間、または物体面と、物体面を画像化する集束レンズのバック・フォーカル・プレーンとの間、または光学カメラ(light camera)の対物レンズとカメラの像表面との間、または透過電子顕微鏡の回折と像表面との間、またはX線照射された結晶構造とその回折面との間等、に存在する。記録媒体の性能が、これらの面における濃度分布のみを記録することに制限されるとすると、同様に、これらの面に対する位相分布を回復する必要性が生じる。波面は、濃度/振幅および位相を含む面に対する複合関数である。本開示において、簡潔にするために、前記二つの面は、光学カメラのバック・フォーカル・プレーン(BFP)およびそれの対応する像表面(IP)と称される。上述のとおり、像表面における波面は、カメラのバック・フォーカル・プレーン(BFP)における波動のフーリエ変換(FT)に比例する。
【0017】
本発明の好ましい実施例は可視電磁スペクトルにおける波面に関する位相情報を回復することについて説明されているが、本発明はそのようには制約されず、x線、赤外線、電子顕微鏡、ソナー(sonar)等、スペクトルの他の領域に対しても適用することができる。一般的に、本方法は、スカラー波動方程式が、コンテクストの物理的性質の十分に正確なピクチャ(picture)を生む、あらゆるコンテクストにおいて有効である。さらに、下方への回折/像表面において、様々な合成された濃度を生じるために、公知の方法で、物体/回折面における波動の位相を変えるための物理的メカニズムが必要となる。
【0018】
図2は、本発明の好ましい実施例に従って、濃度データを得るための装置である。エレメント200は、画像化されるべき物体を表している。この物体は、透明で、それゆえにバックライトを当てられてもよく、または光を反射するように照射されてもよい。好ましい実施例においては、前記物体からの前記光は、光線Aとして、図2において照射されている単色コヒーレント光である。本発明の代替的実施例においては、特定の実用的アプリケーションによって示されるとおり、純粋な単色コヒーレント源の代わりに、部分的にコヒーレントな光源を使用することができ、そこでは、ポイント・ソース(point source)の代わりに、本システムは分散ソース(distributed source)を使用する。(広くは、二つの穴を有するスクリーンを通して照らされた分散ソースからの光は、完全には、建設的/破壊的ではないが、距離でぼやけるスクリーン・フリンジ(screen fringe)の背後の壁に生じる)。他の代替的な実施例においては、狭帯域幅で発する、偽単色光源を使用することができる。これらの代替的実施例の光源を使用する実現可能性は、特定のアプリケーションによって決定される。
【0019】
さらに図2を参照すると、物体200からの光Aは、レンズ(またはレンズのシステム)210を使用して、光Bへと集束される。例えば、可視光の場合、従来の焦点距離を有する集束レンズが有用である一方で、電子顕微鏡のコンテクストにおいては、磁気レンズが適切であろう。どの種類のレンズ210が使用されるかは、アプリケーションによって決定され、唯一の制約は、それが、共役BFPおよびIP面の対を作り出すことである。
【0020】
図2に記載のエレメント220は、レンズ210のBFPを表している。位相フィルタ230は、図2に記載の実例におけるBFP220の位置に配置される。回折またはBFP220で形成する複合波関数は、選択された媒体のための有用な方法で捕捉され、および記録されたそれの濃度を有することができる。例えば、可視光、X線、または電子ビームの場合、写真フィルムを直接複合波に露出することは、有用な記録技術である。BFP220に像を捕捉するために、電荷結合デバイス(charged coupled device)(CCD)アレイも使用されもよい。直接的に、デジタル記録も、多くのアプリケーションで適切であり、それは当業者によって理解されるだろう。
【0021】
位相フィルタ・エレメント230は、BFP220で挿入される一つ以上の位相フィルタを表す。一般的に、フィルタ230は、本発明の方法によって必要とされる複数の像濃度データを生成するために使用される。一つの実施例において、位相フィルタ230は、一様分布のランダム位相プレート(random phase plate)である。他の分布を有する他のランダム位相フィルタが使用されてもよい。ランダム位相プレート230は、不作為に、−πから+πの間の何かで、ピクセルの位相を変える。例えば、一つのピクセルの位相が10度であり、その隣接するピクセルが11度の位相を有する場合、ランダム位相プレート230を通過した後は、これら二つのピクセルの位相は−75度および+34度になるであろう。各ピクセルが経験する移相の量は、その隣接するピクセルに関してランダムでもよく、本発明に従って、前記ピクセルの各々に適用される移相の量は、既知の量である。
【0022】
要約すると、BFP220における光は、位相フィルタ230によって変えられる。これは、ピクセルごとに実行され、BFP220から出る複合波面振幅/濃度に変化を生じさせないが、おそらく、その“不可視(invisible)”位相分布においては大いに変化があるであろう。それから、BFP220と像表面240との間の空間を通過した後(図2の光線Cを参照)、位相フィルタ230の効果は、像表面240における記録された濃度像に見られるであろう。像表面240において記録された像は、位相フィルタ230によって導入される位相変化のために、本来の物体200とは似ない。例えば、像表面240において、透明な位相物体200の像は、特徴のない一様濃度像(featureless uniform intensity image)ではない。また必ずしも、物体200の本来の位相に似るともかぎらない。
【0023】
必要ではないが、複数の像を得るために使用される様々なフィルタ230の間のクロス相関は、+0.1から−0.1の間であることが望ましい。本発明の異なる実施例において、従来の光学レンズも、位相フィルタ230として使用されうる。例えば、一連のコンピュータ・シミュレーションにおいて、9のレンズが、位相フィルタ230として使用され、第一のフィルタは、プラス8ジオプトリ・レンズであり、第9のフィルタ・レンズが72ジオプトリになるように、8ジオプトリずつ増加する。本発明の他の、好ましい実施例において、Boulder Nonlinear Systems,Inc.が供給するタイプの空間光モジュレータは、位相フィルタ230として使用されうる。現在、これらのモジュレータは、128×128または256×256ピクセルのアレイで使用可能であり、ピクセルごとに可変的位相変化(variable phase change)を導入するかもしれない。特定の実施例において、モジュレータは、+πまたは0に固定された位相変化を導入することができる(バイナリ位相フィルタ)。代替的実施例において、位相変化の量は任意であるが、これは速度の低下を生じるかもしれない。
【0024】
エレメント240は、本発明の装置の像表面を表す。像表面240に焦点を合わせられた像は、写真フィルムまたは電荷結合デバイス(CCD)アレイ等、適切な基準化記録媒体によって捕捉することができる。像表面240に記録された像は、像表面240に落ちる光の濃度に関して計測される。サンプル抽出された像の振幅は、計測された濃度の平方根に比例することが理解されるであろう。
【0025】
位相フィルタ230を使用して像表面240で捕捉される様々な像の一連は、この説明のために、“フェーザーグラム(phasorgrams)”と称されるであろう。フェーザーグラムは、位相フィルタ230からBFP220波動関数への移行を適用することによって誘導される、像表面における複合波形の合成濃度像である。像表面240における複合波関数は通常、振幅または位相分布のいずれかにおいても、実際の物体200には似ない。基本的に、フェーザーグラムは、様々な位相フィルタ230によってBFP220で実行される実験から生じる濃度ピクチャである。フェーザーグラムおよびそれらを作成したフィルタ230の認識を表す濃度データは、物体200の位相分布に関して解を出すために、図3に記載の新しいアルゴリズムによって要求されるデータを供給する。
【0026】
図2に記載のとおり、BFP220および像表面240は、プロセッサ250に結合される。この直接結合は、BFP像およびIP240における像の濃度が、上述のCCDアレイ等、電子機器を用いて捕捉される実施例を表している。写真フィルムが、像を捕捉するために使用される場合、プロセッサ250へのフィルムの結合は、基準化された光走査処理(図示されていない)を通して達成することができる。図3に記載のアルゴリズムおよび位相フィルタ230の既知の移相の分布を実行するためのソフトウェアが、プロセッサ250に予めロードされる。より完全に後述されるとおり、本発明の一つの実施例においては、濃度データは像表面240でのみ計測され、BFP220では計測されない。この実施例においては、BFP220とプロセッサ250との間には接続は必要ないであろう。当然、Boulder Nonliner Systems,Inc.から入手可能であるタイプの位相フィルタを使用する場合、前記プロセッサは、特定の計測のためのフィルタによって導入される位相角を選択するために使用されてもよい。
【0027】
図3は、物体200に関する位相情報を回復するための、本発明の処理の一つの実施例を表す。上述のとおり、図2に記載の装置は、位相フィルタ230を使用して得られる物体200の、Nの異なる像、フェーザーグラムのための濃度計測を得るために使用される。好ましい実施例に従って、Nの異なるフェーザーグラムに関して計測された濃度は、位相フィルタ230によって導入される移相とともに、プロセッサ250のメモリに記憶される。
【0028】
好ましい実施例に従って、ステップ300は、本発明の処理の最初の反復に関する、開始点である。最初の反復に関して、像表面240において計測された振幅(振幅は、計測された濃度の平方根である)が使用される。通常、利便性のために、各ピクセルに関する位相はゼロであると仮定される。すなわち、像表面240における複合波関数は、純粋に実数であると仮定される。より良い情報が存在する場合、初期移相分布評価はそれに一致するであろう。最初の反復において、Nのフェーザーグラムの振幅に修正はなされない。
【0029】
ステップ310(i)において、逆高速フーリエ変換が、Nのフェーザーグラムの各々に適用される。これは、画像処理の当業者にはよく知られているCooleyおよびTukeyの高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して達成することができる。Cooley,J.およびTukey,J.計算の数学的処理(Mathematics of Computation)、19,297(1965)を参照。個別のフェーザーグラムを逆変換することは、平行に(速度が必須である)または順番に、実行することができることが評価されるであろう。このように、図3におけるステップ310のインデックス(1)は、両方の実施例をカバーすると解釈されるべきである。従って、図2を参照すると、使用されるプロセッサ250の種類によって、逆フーリエ変換は、Nのフェーザーグラム(i=1,...,N)の各々に関して順番に計算され、または平行して実行されることができる。
【0030】
ステップ320において、その対応する位相フィルタ230(図2)によってコントリビュートされる、各ピクセルに関する既知の移相は、その結果の複合波関数から減じられる。逆フーリエ変換計算の場合のように、各複合波関数に関するこのオペレーション(i=1,...,N)は、順番に、または平行に実行されうる。減算ステップ320の結果は、共役BFP220における複合波の評価である(明確にするためには、図2を参照のこと)。続いての処理ステップにおいて、これらのNの評価は、コンピュータ・メモリにセーブされる。図3に記載の実施例に従って、BFP220(図2)で計測されうる実際のデータは使用されない。
【0031】
好ましい実施例において、BFP220におけるNの複合波評価はそれから合計され、BFP複合波関数の単一の平均された評価を得るために、前記合計はステップ330においてNで除される。この評価を用いて、その対応するフィルタによってコントリビュートされる各ピクセルに関する既知の移相は、等しい振幅分布であるが、異なる位相分布である、Nの異なる波形を生じるために加え戻される(ステップ230)。代替的に、濃度データがBFP220で計測された場合、計測された振幅データが、同様にステップ330で平均された、評価された複合波関数の振幅を修正するために使用される。
【0032】
その対応するフィルタによってコントリビュートされる各ピクセルに関する既知の移相が、ステップ340においてNの異なる波形を生じるために加えられた後、Nの波形は、共役像表面240における複合波の、Nの新しい評価を生むために、それぞれ高速フーリエ変換される(ステップ350)。これらの評価の各々は、その計測されたフェーザーグラムとして、対応する振幅分布を有するように修正される(ステップ300)。この点で、位相分布は変更されない。
【0033】
評価された像表面波形が、実際に計測されたフェーザーグラム振幅分布に関して修正されると、処理ステップ300−350は、ステップ300で必要な修正量が、ある閾値より下に下がるまで繰り返される。ほとんどの場合、分数誤差が、すなわち、すべてのNの像に対して2乗された振幅で除されたすべてのNの像に対するSSE(合計エネルギ)が、0.0001より小さい時にそれが生じる。
【0034】
図3に関して説明されたプロシージャは、すべてのNのフェーザーグラムにおけるすべてのピクセルに関して、各ピクセルに関する評価された振幅と、その、フェーザーグラムにおいて計測された値との間の差で定義される平方誤差和(Sum of the Squared Error)を減らすように、最悪でも維持するよう保証される。従来の方法とは対照的に、本発明の方法を用いることによって、Nのフェーザーグラムのすべてではないが、いずれかに費やされる“空間”SSEが、実際に、ある反復から次の反復へ増加することが可能である。しかしながら、(すべてのフェーザーグラムに関して合計される)合計SSEは、ある反復から次の反復へと、増加することができない。
【0035】
図4A−4Fは、図2に記載の装置を使用することによって得られる6の像の透視的グレースケール表示(フェーザーグラム)を示す。これらの算出された像は、BFP220に連続して配置された一連の、6の異なるジオプトリのレンズ230(図2)を通して、透過的位相物体200(図2)を写真撮影することをシミュレーションする。像4A−4Fにおける差は、単に、使用される異なるレンズ230によるものである。しかし、レンズ230の挿入に関して、物体200が透明であったので、像のすべては白であったろう。最初の実験的セット・アップにおいて使用される像表面240は、16×16の四角グリッドでサンプル抽出された。CooleyとTukeyの高速フーリエ変換アルゴリズムの要件を満足させると、BFP200においても、16×16のグリッドで256ピクセルがあった。
【0036】
最初の実験は、透明であるが、図で認識可能な位相関数を有する物体200を用いて実行された。ここでも、位相は、濃度記録媒体でも人間の目でも見つけることができない。前記物体および図で認識可能なそれの位相分布は不可視であった。位相分布は、次のように与えられるラジアンの位相を有する界において設定される、3.0ラジアンの一定の位相値で、ブロック体“G”の形式であった: theta(r,c)=(r3+0.5c3)/810-3.14159
r=16×16のピクチャ・マトリクスの列番号(0乃至15)
c=16×16の行番号
ピクチャ・マトリックス(0乃至15)
【0037】
第二の実験は、第二の物体200を用いて実施され、それはここでも透明であったが、今回は、−πと+πとの間の範囲に広がる一様ランダム分布から選択された各物体ピクセルに関する位相を有していた。すなわち、各ピクセルは、合計で、他のピクセルのいずれからも、位相が独立していた。
【0038】
これら二つの実験の各々において、一連の6の集束ジオプトリ・レンズが、位相フィルタ230(図2)として使用され、および濃度計測は、像表面240において取られた。BFPにおける波動関数の位相に加えられたこれらのレンズ230は、以下に従っている:
NR2/10
nは、異なる各レンズ・フィルタに関して、1からNまでの整数であり;および
Rは、バック・フォーカル・プレーンにおけるピクセルの半径である。
【0039】
さらに他の、第三の実験では、第二の実験の同じランダム位相物体200を使用して実施された。第三の実験に関して、一連のランダム位相フィルタ230は、最初の二つの実験のジオプトリ・フィルタと入れ替わった。ランダム位相フィルタ230は、+πから−πの間の一様分布に従って、バック・フォーカル・プレーンにおける各ピクセルの位相を変える。このシリーズで使用される各ランダム位相フィルタは、前記シリーズにおける他のフィルタのいずれかに関して、+0.1から−0.1の間のクロス相関数字(cross correlation figure)を有していた。
【0040】
図5A−5Dは、物体200の位相分布を回復する際のアルゴリズム(図3)の進行を示す。第一の実験における、アルゴリズムのサイクル数が増えるにつれての位相評価が示されている。図5Aは、処理ステップ300−350を10回反復した後の位相評価を示す。図5Bは90回反復後の位相評価を示す一方で、図5Cおよび5Dはそれぞれ、114回目、および126回目の反復の後の位相評価を示す。
【0041】
図5Dに明確に記載されたように、本発明の方法は、透明な物体200から発する波面に関する位相情報を回復することができた。
【0042】
図5には記載されていない初期位相評価は、前記関数が最初に実数であると仮定されるので、均一的に白いであろう。図5Aに記載の10回目の評価の後、評価された関数と計測された関数との間の分数誤差は、5%であった。図5Bに記載された90回目の評価の後、分数誤差は0.8%であった。114回目の反復の後、分数誤差は0.09%に減り、図5Dに記載の最後の評価では、分数誤差はたった0.01%であった。これらの分数誤差は、(6のすべてのフェーザーグラムに対する)合計フェーザーグラム・エネルギで除された(6のすべてのフェーザーグラムに対するSSEの和)合計誤差エネルギとして計測される。
【0043】
図6は、透明なランダム位相物体200および6の異なるジオプトリ・レンズ230を使用した第二の実験の結果のグラフを示す。このグラフは、本方法の反復数の関数として、フェーザーグラムの分数誤差のログ・ベース10に関して作成された。ここでも、この実験はBFP200における6の異なる集束レンズ230を使用し、および透明ランダム位相物体200を使用した。グラフに見られるように、初期の反復は、“検索位相(search phase)”と考えられる誤差エネルギにおける、ゆっくりした減少を示す。この“検索位相”中、分数誤差は、1回の反復あたり1000のうち1未満のオーダー(order)で、大変ゆっくり減少する。前記誤差はゆっくりと減少するが、ピクセルの位相は、実際には適した速度で変化している。分数誤差は、前記アルゴリズムが失敗している一方で、実際には、前記アルゴリズムが解に向かって適したペースで動いていることを示しているようである。およそ100の反復で、最終解への大変迅速な終了がある。
【0044】
図7は、6のランダム位相フィルタ230および同様のランダム位相透明物体200を使用した、第三の実験の結果を示す。ここでも、この図は、本発明の方法の反復数の関数として、分数誤差のグラフを示す。曲線の各々は、物体位相を再構築するために、多様な数のフェーザーグラムを使用した異なる実行での前記方法の進行を示す。最長の時間を経た処理は5のフェーザーグラムを使用した一方で、最速のものは、10のフェーザーグラムを処理した。この図に記載されたとおり、処理の各々は、前記方法が正しい解に向かうにつれての、反復数における、初期のゆっくりした減少およびそれに続く誤差の迅速な低下を経た。8および9のフェーザーグラムを使用した実行におけるマイナー・リバーサル(minor reversal)を除いて、一般的には、より多くのフェーザーグラムが使用され、より少ない反復が、位相分布を回復するために求められるようであった。
【0045】
上述の実験のコンテクストにおいて、約5未満のフェーザーグラムで位相分布を回復する試みは、一般的に成功せず、アルゴリズムは、実際的な点(practical point)を超えて分数誤差を減らすことができない。前記アルゴリズムは“ロックした(locked)”ようである。満足な解に到達するフェーザーグラムの最小数が、前記方法へのより基本的な制約を表すかどうかは、明らかではない。本来のGerchberg−Saxtonアルゴリズムが、位相分布を試し、および回復するために、二つの濃度像からのデータを使用するしかできない一方で、本発明の方法は、使用することができる濃度像(フェーザーグラム)の数に制約を与えないことを特記することは、さらなる関心事であろう。
【0046】
図8は、反復数の関数として、二つの異なるピクセルの位相を示す。これらのピクセルの処理は、図7に記載の10のフェーザーグラムの処理の曲線に対応する。図8および7のグラフを比較すると、“検索位相”中(およそ1番目から50番目の反復の間)は、誤差がゆっくりと減少していても(図7)、ピクセルの各々の評価された位相は、大変迅速に変化していることが注目される。ピクセル位相におけるこの迅速な変化は、前記関数への解に近づくと平坦になる(およそ60番目以降の反復)。
【0047】
本発明の第二の実施例において、BFP220で計測されたデータは、本発明の方法において使用される。簡潔に言えば、BFP220で濃度計測が実施される。これは本来、斬新な技術ではなく、概念的な困難を呈しない。例えば、それは、透過電子顕微鏡におけるBFPとIP面の両方で、濃度値を収集することに関して、問題をまったく呈しない。特定のコンテクストにおいて、これらのデータを獲得することの、物理的実現可能性は、多かれ少なかれ、困難であろう。
【0048】
本発明の方法の特定の実施例に従って、これらのデータは、図3に記載のアルゴリズムのステップ330において、BFP評価の振幅を修正するために使用することができる。すなわち、BFP220における波動に関する平均された評価が達成されると、前記評価の振幅分布は、計測された振幅分布と取り替えられる一方で、評価された位相分布を保持する。それから、前記アルゴリズムは前のように進行する。前記アルゴリズムにおけるこの追加的ステップは、図9に見られるように、物体の位相分布を見つける処理の速度を上げることにおいて、大変有効であるようである。
【0049】
図9は、本発明の第一の実施例(BFP計測がない)を用いて計測された分数誤差と、第二の実施例を用いて経験されたそれとの間の比較であり、そこでは、バック・フォーカル・プレーンから計測されたデータが採用される。これらのグラフの各々は、5の初期フェーザーグラムを用いて得られた。グラフAは、像表面において計測されたデータのみを使用した前記処理の進行を示す一方で、グラフBは、バック・フォーカル・プレーンと像表面の両方からのデータを用いた前記方法の進行を示す。図9に見られるとおり、バック・プレーンからのデータが使用される時、問題を解くために必要な反復数の劇的な減少が見られる。図9に見られるとおり、BFPからのデータの追加は、像表面からのデータのみを使用するのと対照的に、解を獲得する効率性を向上させる。
【0050】
本発明の反復処理において、修正が位相評価の維持、およびピクセル振幅の修正を伴う場合でも、多かれ少なかれ有効であるかもしれない他の修正も可能であることが注目される。このように、(j−1)番目の位相評価の場合、前記ピクセルのyj-1が利用可能であり、および第j番目の位相評価yjが生成され、そして新しい位相yjnewがyj-1<yjnew<2yj−yj-1の範囲のどこにあってもよい。前記範囲は明らかに、本開示の説明におけるにyjnewに関して使用される値であるyjを含む。
【0051】
本発明は、濃度計測から完全な波面を再構築するコンテクストにおいて上述されてきたが、少なくともその有用性のいくつかは、表示するための機能にも存在するかもしれないし、あるいは人間の監視者へ、再構築された波面を供給してもよい。原理的に、再構築された波面の像(可視光アプリケーションの場合)は、ホログラムとして現れるように作ることができる。主な差は、コヒーレント単色光の一つのソースのみが、表示のために必要となることであろう。再構築された波面に関する情報(振幅および位相)は、製造品においてコード化することができ、それは前記ソースによって照射される。
【0052】
好ましい実施例において、“スカルプテッド・フィルム(sculpted film)”を、再構築された波面を表示するために使用することができる。スカルプテッド・フィルムは、完全な位相および振幅情報を、アナログ容積測定ホログラム(analog volumetric hologram)(三次元像)に変換するために使用される、新しい媒体である。このフィルムは、二つの別個の部分を有する。
【0053】
像の位相情報は媒体へとコード化され、それはキノフォームとして知られる。像の振幅情報は、写真用感光乳剤で捕捉される。キノフォームと乳剤は結合する。このように、像の位相情報と振幅情報の両方が合体される。このように、光がこのフィルムの上に照射されると、像に関する完全な情報が再現され、三次元像が得られる。代替的実施例において、Boulder Nonlinear Systems,Inc.によって供給される位相フィルタも、コード化位相情報を供給するために当業者によって評価されているように、使用することができる。振幅増幅は、フィルムで、または電子的に可変的な光学濃度媒体の将来的な開発でも達成されるかもしれない。
【0054】
本発明は、その特定の実施例との関係で説明されてきたが、多くの他の変形ならびに変更および他の使用が当業者には明らかになるであろう。それゆえに、本発明は、ここでの特定の開示によってではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが望ましい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、波面位相情報を回復し、および前記回復した情報を表示のために使用するためのシステムおよび方法に関し、より特定的には、計測された濃度情報から位相関数を決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント単色画像システムにおいて、濃度情報のみを記録する検出媒体から位相情報を抽出する問題は、一貫した解決策がなく、問題を残している。波面に関する位相関数を決定するための実験的方法が、提案されている。Gabor、D.“新しい顕微鏡原理(A New Microscope Principle)”、Nature161,777(1948)に開示されたそのような方法は、基準波を、記録面における、関心のある波に加えることを伴う。その結果であるホログラムは、写真板(photographic plate)に一連の濃度縞(intensity fringes)を記録し、それは、関心のある完全な波動関数を再構築するために十分な情報を含む。しかしながら、最も実用的な応用において、この方法は、採用するには面倒であり、実用的でない。
【0003】
他の方法は、基準波を採用しておらず、濃度記録から完全な波動関数を推測することを提案していた。例えば、Erickson,H.およびKlug,A.“電子顕微鏡写真のフーリエ変換...(The Fourier Transform of an Electron Micrograph...)”、Berichte der Bunsen Gesellschaft、74,1129(1970)を参照。ほとんどの部分で、これらの方法は、線形近似を伴っており、関心のある波面に対する小さな位相および/または振幅偏差にのみ有効である。一般的に、これらの方法は、集中的な計算リソースを必要とするという欠点にも悩む。
【0004】
さらなる方法は、波面の濃度記録は、画像面および回折面の両方で都合よく実行することができることを提案した。Gerchberg,R.およびSaxton,W.“電子顕微鏡における位相決定(Phase Determination in the Electron Microscope)”Optik、34,275(1971)。前記方法は、像および回折面におけるその濃度に関して、前記波動に対する波動関数を定義する二次方程式のセットを使用する。この解析方法は、上述の、小さな位相偏差の欠点によって制約されないが、しかしここでも、大量の計算リソースを必要とする。
【0005】
1971年、本発明者は、画像および回折面における濃度記録から、完全な波動関数(振幅および位相)を決定する計算方法を説明した論文を共著した。Gerchberg,R.およびSaxton,W.“位相の決定のための実用的アルゴリズム(A Practical Algorithm for the Determination of Phase...)”Optik,35,237(1972)。前記方法は、これらの2面における複合波関数間にフーリエ変換関係があるかに依存する。本方法は、X線回折パターンのみが計測されてもよい、電子顕微鏡、通常の光写真、および結晶学において有用な応用ができることがわかった。
【0006】
いわゆるGerchberg−Saxton解決法は、図1にブロック図で示されている。アルゴリズムへの入力データは、画像面100および回折面110における、物理的にサンプル抽出された波動関数濃度の平方根である。器具は、物理的に濃度を計測することしかできないが、複合波関数の振幅は、直接的に、計測された濃度の平方根に比例する。πから−πまでの乱数のアレイ120を生成するために乱数生成装置が使用され、前記乱数はサンプル抽出された、画像化された振幅に対応する位相の初期評価として機能する。より良い位相評価が演繹的にある場合、代わりにそれが使用されてもよい。アルゴリズムのステップ130において、評価された位相120(単位振幅“フェーザー(phasor)”として表示される)は、像表面からの、対応する、サンプル抽出された像振幅を乗じられ、および合成された複合離散関数の離散フーリエ変換は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムによって、ステップ140において達成される。この変換から生じる離散複合関数の位相は、単位振幅“フェーザー”として保持され(ステップ150)、それらはステップ160において、真の対応する、サンプル抽出された回折面振幅を乗じられる。この離散複合関数(複合回折面波動の評価)は、ステップ170において逆高速フーリエ変換される。再度、生成された離散複合関数の位相は、単位振幅“フェーザー”として保持され(ステップ180)、それは像表面130において複合波関数の新しい評価を形成するために、対応する、計測された像振幅を乗じられる。ステップ130−180のシーケンスは、波形の算出された振幅が、計測された振幅に、十分に近く適合するまで繰り返される。これは、分子が、2乗された複合離散波動関数の計測された振幅と算出された振幅との間の差の、いずれかの面におけるすべてのサンプル点に対する和であり、および分母が、2乗された計測された振幅の面におけるすべての点に対する和である分数を用いることによって計測することができる。この分数が0.01より小さい時、前記関数は通常、うまく管理されている。この分数はしばしば、波動関数の計測されたエネルギで除された、平方誤差の和(sum of the squared error)(SSE):SSE/Energyとして表現される。前記分数は、分数誤差(Fractional Error)として知られている。
【0007】
上述の、Gerchberg−Saxtonプロセスに関する理論的な制約は、平方和誤差(SSE)、すなわち分数誤差が、減少するか、最悪でも前記処理の各反復に対して一定でなければならないことである。
【0008】
Gerchberg−Saxton解決法は、多くの様々なコンテクストで幅広く使用されてきたが、主な問題は、前記アルゴリズムが、ゼロの平方和誤差(SSE)へと減少するよりもむしろ、“ロックする(lock)”かもしれないということであった。すなわち、前記誤差は、変わらずとどまり、通常は各反復とともに発展する前記波動関数は、変化をやめるであろう。SSEが増加しえないという事実は、このように、“エラー・ウェル(error well)”に、アルゴリズムの進行を閉じ込めるかもしれない。Gerchberg,R.“位相回復のためのGerchberg Saxtonアルゴリズムにおけるロック問題(The Lock Problem in the Gerchberg Saxton Algorithm for Phase Retrieval)”Optik、74,91(1986)、およびFienup,JおよびWackerman,C.“位相回復停滞問題および解決法(Phase retrieval stagnation problems and solutions)”J.Opt.Soc.Am.A,3,1897(1986)を参照のこと。前記方法に関する別の問題は、独自でない解決法が現れた1次元写真において明らかになった。さらに、前記アルゴリズムは、遅い集束に苦しむ。今のところ、Gerchberg−Saxton方法に関するこれらの問題に対して、代替的な、満足のいく解決法はない。従って、従来技術に関連する欠点のない、波面位相情報を回復することができるシステムおよび方法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法は、“誤差低減(error reduction)”原理によって働き、および観察されている物体からの、波面の複数のサンプルを必要とする。前記方法は、物体からの散乱波が突き当たる集束レンズのバック・フォーカル・プレーンは、波動関数を含んでいるという事実に依存しており、それは直接的に、前記物体のフーリエ変換に比例し、それゆえに、前記物体の像表面波動関数のフーリエ変換に比例する。一つのピクセルから、その隣接するピクセルのいずれかへの位相角がほんの少ししか変わらない場合において、従来の方法は、これらの小さな位相角の区別を試みることに、計算上、集中していた。実際のバック・フォーカル・プレーン(BFP)波は、これらの二つの面の間のドリフト空間の介入によって、像表面における真の像へ変換するので(計算上、BFP波に、像表面波を生じさせるフーリエ変換を受けさせる)、これらの二つの共役面における計測値の間には、一つの、大変有用な関係がある。しかしながら、これら二つの面における波動の間の他の関係は、BFPのみにおける位相分布(振幅分布ではない)を変化させることによって、達成可能である。これは、既知の、しかし物理的には異なる位相フィルタを使用することによって、BFPにおいて達成することができ、そのBFP位相分布に対する効果は、公知である。
【0010】
BFPにおける位相を効果的に変える、他の物理的方法(例えば、デフォーカス(defocus)の使用)があることが注目される。この介入から生じる像表面波は、これら二つの共役面における濃度計測値の間に、結果的に新しい関係を生じさせる真の物体波とは大変異なりうる。本発明は、再構築された波形の計算を劇的に減らすために、反復アルゴリズムにおける停滞を避けるために、および再構築された波動関数における特定のよく知られた不明確さを避けるために、これらの新しい“合成された”関係のいくつかを使用する。
【0011】
本発明の一つの実施例においては、ランダム位相フィルタが、集束レンズのバック・フォーカル・プレーン(BFP)に挿入される。この位相フィルタは、公知の方法でBFPにおけるピクセルに関する位相を変え、それによって、像表面におけるその結果の像を変える。BFPにおける個別のピクセルの位相分布は、無作為に、または所望の分布に従って選択することができる。本発明の代替的実施例において、従来の集束および/または拡散レンズが、位相フィルタとして使用されうる。
【0012】
上記のフィルタを使用して、Nの異なるセットの振幅(濃度)データが、像表面から得られる。すなわち、物体の、Nの異なる像は、像表面で作成される。本発明の代替的実施例において、波動濃度は、同様に、BFPに記録されても良いことが注目される。次に、N濃度像の各々は、像表面で計測された濃度値、および無作為か、または従来の知識に基づいて選択されてもよい位相値を使用して、“合成”波面を得るために処理される。実際問題として、利便性のために、各複合ピクセルに関する位相は、最初にゼロであると仮定することができるが、どんな初期位相評価値でも機能する。Nの像の各々に関する、その結果の波動関数は、(標準高速アルゴリズムを用いて)逆フーリエ変換され、および対応するBFPフィルタの各々の、既知の移相が、各ピクセルから減じられる。これは、同様に、BFPにおける波動関数のNの評価を得るために、Nの像の各々に関して行われる。その結果のBFP評価は、Nの像の各々に関してセーブされる。それから、好ましい実施例に従って、これらBFP評価は、複合BFP波面の単一のBFP評価を得るために、平均される。
【0013】
本発明の代替的実施例においては、BFP濃度データは、NのIP像とともに計測され、BFP波動評価の振幅は、反復処理のこの点において、計測された振幅分布に変えられる。それから、NのIP像の各々に関して、その対応するフィルタの移相は、同様に、単一のBFP評価に加えられ、およびNの異なるBFP評価(Nの異なる位相フィルタ効果で異なる)は、像表面における波動関数のNの評価を生成するために、フーリエ変換される。Nの評価の各々は、特定の像に関する、実際に計測された振幅を用いて修正される。この修正は、誤差値という結果を生む。上述の処理は、すべてのNの像のSSEが、本アプリケーションの目的のために、十分に小さくなるまで、反復方法で繰り返される。典型的な場合では、すべてのNの像のエネルギの1%未満(すなわち、分数誤差は1%未満である)を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、位相情報を回復するための従来の方法を示す。
【図2】図2は、本発明の一つの実施例に従って、濃度データを得るための装置を示す。
【図3】図3は、本発明の方法の好ましい実施例を、ブロック図形式で示す。
【図4A】図4Aは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4B】図4Bは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4C】図4Cは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4D】図4Dは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4E】図4Eは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図4F】図4Fは、透明な物体(純粋な位相オブジェクト)を伴う、図2に記載の装置を使用して得られた、6の透視的グレー・スケール像濃度表示を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5B】図5Bは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5C】図5Cは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図5D】図5Dは、本発明の方法の一つの実施例において、特定の透明な物体が反復の過程中に発展するにつれての、透視的グレー・スケール表示である。
【図6】図6は、本発明の方法の一つの実施例に従って、合計エネルギで除されたすべてのNの像に関する、算出された、平方誤差和(SSE)(すなわち、SSE/合計エネルギ)を、反復数の関数として表す、典型的なグラフである。
【図7】図7は、異なる数のセットのデータに関する、本発明の方法の一つの実施例における、算出された分数誤差対反復数を示すグラフである。
【図8】図8は、図3に記載の計算アルゴリズムが反復するにつれての、二つの典型的なピクセルフェーザーの位相評価の進行を示す。
【図9】図9は、像表面からのデータのみを使用した実験的実行(experiment run)(グラフA)を、バック・フォーカル・プレーンおよび像表面の両方からのデータを使用した同じ実験(グラフB)と比較した、分数誤差のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を説明する目的で、図面には、現在好まれる形式が記載されているが、本発明は図面によって示された詳細な形式に限定されないことが理解されるであろう。
【0016】
本発明は、一般的に、波面を伝播することに適用され、その伝播の経路に沿って、二つの面が存在し、そこでは複合波分布が変換によって関連付けられ、前記変換は一般的には、フーリエ変換のように、線形で、転回的で(invertible)、エネルギを保存する。前記二つの面は、共役面とも称される。そのような共役面は、例えば、電磁アンテナ開口部と、その遠距離電磁界(フラウンホーファー)面との間、または物体面と、物体面を画像化する集束レンズのバック・フォーカル・プレーンとの間、または光学カメラ(light camera)の対物レンズとカメラの像表面との間、または透過電子顕微鏡の回折と像表面との間、またはX線照射された結晶構造とその回折面との間等、に存在する。記録媒体の性能が、これらの面における濃度分布のみを記録することに制限されるとすると、同様に、これらの面に対する位相分布を回復する必要性が生じる。波面は、濃度/振幅および位相を含む面に対する複合関数である。本開示において、簡潔にするために、前記二つの面は、光学カメラのバック・フォーカル・プレーン(BFP)およびそれの対応する像表面(IP)と称される。上述のとおり、像表面における波面は、カメラのバック・フォーカル・プレーン(BFP)における波動のフーリエ変換(FT)に比例する。
【0017】
本発明の好ましい実施例は可視電磁スペクトルにおける波面に関する位相情報を回復することについて説明されているが、本発明はそのようには制約されず、x線、赤外線、電子顕微鏡、ソナー(sonar)等、スペクトルの他の領域に対しても適用することができる。一般的に、本方法は、スカラー波動方程式が、コンテクストの物理的性質の十分に正確なピクチャ(picture)を生む、あらゆるコンテクストにおいて有効である。さらに、下方への回折/像表面において、様々な合成された濃度を生じるために、公知の方法で、物体/回折面における波動の位相を変えるための物理的メカニズムが必要となる。
【0018】
図2は、本発明の好ましい実施例に従って、濃度データを得るための装置である。エレメント200は、画像化されるべき物体を表している。この物体は、透明で、それゆえにバックライトを当てられてもよく、または光を反射するように照射されてもよい。好ましい実施例においては、前記物体からの前記光は、光線Aとして、図2において照射されている単色コヒーレント光である。本発明の代替的実施例においては、特定の実用的アプリケーションによって示されるとおり、純粋な単色コヒーレント源の代わりに、部分的にコヒーレントな光源を使用することができ、そこでは、ポイント・ソース(point source)の代わりに、本システムは分散ソース(distributed source)を使用する。(広くは、二つの穴を有するスクリーンを通して照らされた分散ソースからの光は、完全には、建設的/破壊的ではないが、距離でぼやけるスクリーン・フリンジ(screen fringe)の背後の壁に生じる)。他の代替的な実施例においては、狭帯域幅で発する、偽単色光源を使用することができる。これらの代替的実施例の光源を使用する実現可能性は、特定のアプリケーションによって決定される。
【0019】
さらに図2を参照すると、物体200からの光Aは、レンズ(またはレンズのシステム)210を使用して、光Bへと集束される。例えば、可視光の場合、従来の焦点距離を有する集束レンズが有用である一方で、電子顕微鏡のコンテクストにおいては、磁気レンズが適切であろう。どの種類のレンズ210が使用されるかは、アプリケーションによって決定され、唯一の制約は、それが、共役BFPおよびIP面の対を作り出すことである。
【0020】
図2に記載のエレメント220は、レンズ210のBFPを表している。位相フィルタ230は、図2に記載の実例におけるBFP220の位置に配置される。回折またはBFP220で形成する複合波関数は、選択された媒体のための有用な方法で捕捉され、および記録されたそれの濃度を有することができる。例えば、可視光、X線、または電子ビームの場合、写真フィルムを直接複合波に露出することは、有用な記録技術である。BFP220に像を捕捉するために、電荷結合デバイス(charged coupled device)(CCD)アレイも使用されもよい。直接的に、デジタル記録も、多くのアプリケーションで適切であり、それは当業者によって理解されるだろう。
【0021】
位相フィルタ・エレメント230は、BFP220で挿入される一つ以上の位相フィルタを表す。一般的に、フィルタ230は、本発明の方法によって必要とされる複数の像濃度データを生成するために使用される。一つの実施例において、位相フィルタ230は、一様分布のランダム位相プレート(random phase plate)である。他の分布を有する他のランダム位相フィルタが使用されてもよい。ランダム位相プレート230は、不作為に、−πから+πの間の何かで、ピクセルの位相を変える。例えば、一つのピクセルの位相が10度であり、その隣接するピクセルが11度の位相を有する場合、ランダム位相プレート230を通過した後は、これら二つのピクセルの位相は−75度および+34度になるであろう。各ピクセルが経験する移相の量は、その隣接するピクセルに関してランダムでもよく、本発明に従って、前記ピクセルの各々に適用される移相の量は、既知の量である。
【0022】
要約すると、BFP220における光は、位相フィルタ230によって変えられる。これは、ピクセルごとに実行され、BFP220から出る複合波面振幅/濃度に変化を生じさせないが、おそらく、その“不可視(invisible)”位相分布においては大いに変化があるであろう。それから、BFP220と像表面240との間の空間を通過した後(図2の光線Cを参照)、位相フィルタ230の効果は、像表面240における記録された濃度像に見られるであろう。像表面240において記録された像は、位相フィルタ230によって導入される位相変化のために、本来の物体200とは似ない。例えば、像表面240において、透明な位相物体200の像は、特徴のない一様濃度像(featureless uniform intensity image)ではない。また必ずしも、物体200の本来の位相に似るともかぎらない。
【0023】
必要ではないが、複数の像を得るために使用される様々なフィルタ230の間のクロス相関は、+0.1から−0.1の間であることが望ましい。本発明の異なる実施例において、従来の光学レンズも、位相フィルタ230として使用されうる。例えば、一連のコンピュータ・シミュレーションにおいて、9のレンズが、位相フィルタ230として使用され、第一のフィルタは、プラス8ジオプトリ・レンズであり、第9のフィルタ・レンズが72ジオプトリになるように、8ジオプトリずつ増加する。本発明の他の、好ましい実施例において、Boulder Nonlinear Systems,Inc.が供給するタイプの空間光モジュレータは、位相フィルタ230として使用されうる。現在、これらのモジュレータは、128×128または256×256ピクセルのアレイで使用可能であり、ピクセルごとに可変的位相変化(variable phase change)を導入するかもしれない。特定の実施例において、モジュレータは、+πまたは0に固定された位相変化を導入することができる(バイナリ位相フィルタ)。代替的実施例において、位相変化の量は任意であるが、これは速度の低下を生じるかもしれない。
【0024】
エレメント240は、本発明の装置の像表面を表す。像表面240に焦点を合わせられた像は、写真フィルムまたは電荷結合デバイス(CCD)アレイ等、適切な基準化記録媒体によって捕捉することができる。像表面240に記録された像は、像表面240に落ちる光の濃度に関して計測される。サンプル抽出された像の振幅は、計測された濃度の平方根に比例することが理解されるであろう。
【0025】
位相フィルタ230を使用して像表面240で捕捉される様々な像の一連は、この説明のために、“フェーザーグラム(phasorgrams)”と称されるであろう。フェーザーグラムは、位相フィルタ230からBFP220波動関数への移行を適用することによって誘導される、像表面における複合波形の合成濃度像である。像表面240における複合波関数は通常、振幅または位相分布のいずれかにおいても、実際の物体200には似ない。基本的に、フェーザーグラムは、様々な位相フィルタ230によってBFP220で実行される実験から生じる濃度ピクチャである。フェーザーグラムおよびそれらを作成したフィルタ230の認識を表す濃度データは、物体200の位相分布に関して解を出すために、図3に記載の新しいアルゴリズムによって要求されるデータを供給する。
【0026】
図2に記載のとおり、BFP220および像表面240は、プロセッサ250に結合される。この直接結合は、BFP像およびIP240における像の濃度が、上述のCCDアレイ等、電子機器を用いて捕捉される実施例を表している。写真フィルムが、像を捕捉するために使用される場合、プロセッサ250へのフィルムの結合は、基準化された光走査処理(図示されていない)を通して達成することができる。図3に記載のアルゴリズムおよび位相フィルタ230の既知の移相の分布を実行するためのソフトウェアが、プロセッサ250に予めロードされる。より完全に後述されるとおり、本発明の一つの実施例においては、濃度データは像表面240でのみ計測され、BFP220では計測されない。この実施例においては、BFP220とプロセッサ250との間には接続は必要ないであろう。当然、Boulder Nonliner Systems,Inc.から入手可能であるタイプの位相フィルタを使用する場合、前記プロセッサは、特定の計測のためのフィルタによって導入される位相角を選択するために使用されてもよい。
【0027】
図3は、物体200に関する位相情報を回復するための、本発明の処理の一つの実施例を表す。上述のとおり、図2に記載の装置は、位相フィルタ230を使用して得られる物体200の、Nの異なる像、フェーザーグラムのための濃度計測を得るために使用される。好ましい実施例に従って、Nの異なるフェーザーグラムに関して計測された濃度は、位相フィルタ230によって導入される移相とともに、プロセッサ250のメモリに記憶される。
【0028】
好ましい実施例に従って、ステップ300は、本発明の処理の最初の反復に関する、開始点である。最初の反復に関して、像表面240において計測された振幅(振幅は、計測された濃度の平方根である)が使用される。通常、利便性のために、各ピクセルに関する位相はゼロであると仮定される。すなわち、像表面240における複合波関数は、純粋に実数であると仮定される。より良い情報が存在する場合、初期移相分布評価はそれに一致するであろう。最初の反復において、Nのフェーザーグラムの振幅に修正はなされない。
【0029】
ステップ310(i)において、逆高速フーリエ変換が、Nのフェーザーグラムの各々に適用される。これは、画像処理の当業者にはよく知られているCooleyおよびTukeyの高速フーリエ変換アルゴリズムを使用して達成することができる。Cooley,J.およびTukey,J.計算の数学的処理(Mathematics of Computation)、19,297(1965)を参照。個別のフェーザーグラムを逆変換することは、平行に(速度が必須である)または順番に、実行することができることが評価されるであろう。このように、図3におけるステップ310のインデックス(1)は、両方の実施例をカバーすると解釈されるべきである。従って、図2を参照すると、使用されるプロセッサ250の種類によって、逆フーリエ変換は、Nのフェーザーグラム(i=1,...,N)の各々に関して順番に計算され、または平行して実行されることができる。
【0030】
ステップ320において、その対応する位相フィルタ230(図2)によってコントリビュートされる、各ピクセルに関する既知の移相は、その結果の複合波関数から減じられる。逆フーリエ変換計算の場合のように、各複合波関数に関するこのオペレーション(i=1,...,N)は、順番に、または平行に実行されうる。減算ステップ320の結果は、共役BFP220における複合波の評価である(明確にするためには、図2を参照のこと)。続いての処理ステップにおいて、これらのNの評価は、コンピュータ・メモリにセーブされる。図3に記載の実施例に従って、BFP220(図2)で計測されうる実際のデータは使用されない。
【0031】
好ましい実施例において、BFP220におけるNの複合波評価はそれから合計され、BFP複合波関数の単一の平均された評価を得るために、前記合計はステップ330においてNで除される。この評価を用いて、その対応するフィルタによってコントリビュートされる各ピクセルに関する既知の移相は、等しい振幅分布であるが、異なる位相分布である、Nの異なる波形を生じるために加え戻される(ステップ230)。代替的に、濃度データがBFP220で計測された場合、計測された振幅データが、同様にステップ330で平均された、評価された複合波関数の振幅を修正するために使用される。
【0032】
その対応するフィルタによってコントリビュートされる各ピクセルに関する既知の移相が、ステップ340においてNの異なる波形を生じるために加えられた後、Nの波形は、共役像表面240における複合波の、Nの新しい評価を生むために、それぞれ高速フーリエ変換される(ステップ350)。これらの評価の各々は、その計測されたフェーザーグラムとして、対応する振幅分布を有するように修正される(ステップ300)。この点で、位相分布は変更されない。
【0033】
評価された像表面波形が、実際に計測されたフェーザーグラム振幅分布に関して修正されると、処理ステップ300−350は、ステップ300で必要な修正量が、ある閾値より下に下がるまで繰り返される。ほとんどの場合、分数誤差が、すなわち、すべてのNの像に対して2乗された振幅で除されたすべてのNの像に対するSSE(合計エネルギ)が、0.0001より小さい時にそれが生じる。
【0034】
図3に関して説明されたプロシージャは、すべてのNのフェーザーグラムにおけるすべてのピクセルに関して、各ピクセルに関する評価された振幅と、その、フェーザーグラムにおいて計測された値との間の差で定義される平方誤差和(Sum of the Squared Error)を減らすように、最悪でも維持するよう保証される。従来の方法とは対照的に、本発明の方法を用いることによって、Nのフェーザーグラムのすべてではないが、いずれかに費やされる“空間”SSEが、実際に、ある反復から次の反復へ増加することが可能である。しかしながら、(すべてのフェーザーグラムに関して合計される)合計SSEは、ある反復から次の反復へと、増加することができない。
【0035】
図4A−4Fは、図2に記載の装置を使用することによって得られる6の像の透視的グレースケール表示(フェーザーグラム)を示す。これらの算出された像は、BFP220に連続して配置された一連の、6の異なるジオプトリのレンズ230(図2)を通して、透過的位相物体200(図2)を写真撮影することをシミュレーションする。像4A−4Fにおける差は、単に、使用される異なるレンズ230によるものである。しかし、レンズ230の挿入に関して、物体200が透明であったので、像のすべては白であったろう。最初の実験的セット・アップにおいて使用される像表面240は、16×16の四角グリッドでサンプル抽出された。CooleyとTukeyの高速フーリエ変換アルゴリズムの要件を満足させると、BFP200においても、16×16のグリッドで256ピクセルがあった。
【0036】
最初の実験は、透明であるが、図で認識可能な位相関数を有する物体200を用いて実行された。ここでも、位相は、濃度記録媒体でも人間の目でも見つけることができない。前記物体および図で認識可能なそれの位相分布は不可視であった。位相分布は、次のように与えられるラジアンの位相を有する界において設定される、3.0ラジアンの一定の位相値で、ブロック体“G”の形式であった: theta(r,c)=(r3+0.5c3)/810-3.14159
r=16×16のピクチャ・マトリクスの列番号(0乃至15)
c=16×16の行番号
ピクチャ・マトリックス(0乃至15)
【0037】
第二の実験は、第二の物体200を用いて実施され、それはここでも透明であったが、今回は、−πと+πとの間の範囲に広がる一様ランダム分布から選択された各物体ピクセルに関する位相を有していた。すなわち、各ピクセルは、合計で、他のピクセルのいずれからも、位相が独立していた。
【0038】
これら二つの実験の各々において、一連の6の集束ジオプトリ・レンズが、位相フィルタ230(図2)として使用され、および濃度計測は、像表面240において取られた。BFPにおける波動関数の位相に加えられたこれらのレンズ230は、以下に従っている:
NR2/10
nは、異なる各レンズ・フィルタに関して、1からNまでの整数であり;および
Rは、バック・フォーカル・プレーンにおけるピクセルの半径である。
【0039】
さらに他の、第三の実験では、第二の実験の同じランダム位相物体200を使用して実施された。第三の実験に関して、一連のランダム位相フィルタ230は、最初の二つの実験のジオプトリ・フィルタと入れ替わった。ランダム位相フィルタ230は、+πから−πの間の一様分布に従って、バック・フォーカル・プレーンにおける各ピクセルの位相を変える。このシリーズで使用される各ランダム位相フィルタは、前記シリーズにおける他のフィルタのいずれかに関して、+0.1から−0.1の間のクロス相関数字(cross correlation figure)を有していた。
【0040】
図5A−5Dは、物体200の位相分布を回復する際のアルゴリズム(図3)の進行を示す。第一の実験における、アルゴリズムのサイクル数が増えるにつれての位相評価が示されている。図5Aは、処理ステップ300−350を10回反復した後の位相評価を示す。図5Bは90回反復後の位相評価を示す一方で、図5Cおよび5Dはそれぞれ、114回目、および126回目の反復の後の位相評価を示す。
【0041】
図5Dに明確に記載されたように、本発明の方法は、透明な物体200から発する波面に関する位相情報を回復することができた。
【0042】
図5には記載されていない初期位相評価は、前記関数が最初に実数であると仮定されるので、均一的に白いであろう。図5Aに記載の10回目の評価の後、評価された関数と計測された関数との間の分数誤差は、5%であった。図5Bに記載された90回目の評価の後、分数誤差は0.8%であった。114回目の反復の後、分数誤差は0.09%に減り、図5Dに記載の最後の評価では、分数誤差はたった0.01%であった。これらの分数誤差は、(6のすべてのフェーザーグラムに対する)合計フェーザーグラム・エネルギで除された(6のすべてのフェーザーグラムに対するSSEの和)合計誤差エネルギとして計測される。
【0043】
図6は、透明なランダム位相物体200および6の異なるジオプトリ・レンズ230を使用した第二の実験の結果のグラフを示す。このグラフは、本方法の反復数の関数として、フェーザーグラムの分数誤差のログ・ベース10に関して作成された。ここでも、この実験はBFP200における6の異なる集束レンズ230を使用し、および透明ランダム位相物体200を使用した。グラフに見られるように、初期の反復は、“検索位相(search phase)”と考えられる誤差エネルギにおける、ゆっくりした減少を示す。この“検索位相”中、分数誤差は、1回の反復あたり1000のうち1未満のオーダー(order)で、大変ゆっくり減少する。前記誤差はゆっくりと減少するが、ピクセルの位相は、実際には適した速度で変化している。分数誤差は、前記アルゴリズムが失敗している一方で、実際には、前記アルゴリズムが解に向かって適したペースで動いていることを示しているようである。およそ100の反復で、最終解への大変迅速な終了がある。
【0044】
図7は、6のランダム位相フィルタ230および同様のランダム位相透明物体200を使用した、第三の実験の結果を示す。ここでも、この図は、本発明の方法の反復数の関数として、分数誤差のグラフを示す。曲線の各々は、物体位相を再構築するために、多様な数のフェーザーグラムを使用した異なる実行での前記方法の進行を示す。最長の時間を経た処理は5のフェーザーグラムを使用した一方で、最速のものは、10のフェーザーグラムを処理した。この図に記載されたとおり、処理の各々は、前記方法が正しい解に向かうにつれての、反復数における、初期のゆっくりした減少およびそれに続く誤差の迅速な低下を経た。8および9のフェーザーグラムを使用した実行におけるマイナー・リバーサル(minor reversal)を除いて、一般的には、より多くのフェーザーグラムが使用され、より少ない反復が、位相分布を回復するために求められるようであった。
【0045】
上述の実験のコンテクストにおいて、約5未満のフェーザーグラムで位相分布を回復する試みは、一般的に成功せず、アルゴリズムは、実際的な点(practical point)を超えて分数誤差を減らすことができない。前記アルゴリズムは“ロックした(locked)”ようである。満足な解に到達するフェーザーグラムの最小数が、前記方法へのより基本的な制約を表すかどうかは、明らかではない。本来のGerchberg−Saxtonアルゴリズムが、位相分布を試し、および回復するために、二つの濃度像からのデータを使用するしかできない一方で、本発明の方法は、使用することができる濃度像(フェーザーグラム)の数に制約を与えないことを特記することは、さらなる関心事であろう。
【0046】
図8は、反復数の関数として、二つの異なるピクセルの位相を示す。これらのピクセルの処理は、図7に記載の10のフェーザーグラムの処理の曲線に対応する。図8および7のグラフを比較すると、“検索位相”中(およそ1番目から50番目の反復の間)は、誤差がゆっくりと減少していても(図7)、ピクセルの各々の評価された位相は、大変迅速に変化していることが注目される。ピクセル位相におけるこの迅速な変化は、前記関数への解に近づくと平坦になる(およそ60番目以降の反復)。
【0047】
本発明の第二の実施例において、BFP220で計測されたデータは、本発明の方法において使用される。簡潔に言えば、BFP220で濃度計測が実施される。これは本来、斬新な技術ではなく、概念的な困難を呈しない。例えば、それは、透過電子顕微鏡におけるBFPとIP面の両方で、濃度値を収集することに関して、問題をまったく呈しない。特定のコンテクストにおいて、これらのデータを獲得することの、物理的実現可能性は、多かれ少なかれ、困難であろう。
【0048】
本発明の方法の特定の実施例に従って、これらのデータは、図3に記載のアルゴリズムのステップ330において、BFP評価の振幅を修正するために使用することができる。すなわち、BFP220における波動に関する平均された評価が達成されると、前記評価の振幅分布は、計測された振幅分布と取り替えられる一方で、評価された位相分布を保持する。それから、前記アルゴリズムは前のように進行する。前記アルゴリズムにおけるこの追加的ステップは、図9に見られるように、物体の位相分布を見つける処理の速度を上げることにおいて、大変有効であるようである。
【0049】
図9は、本発明の第一の実施例(BFP計測がない)を用いて計測された分数誤差と、第二の実施例を用いて経験されたそれとの間の比較であり、そこでは、バック・フォーカル・プレーンから計測されたデータが採用される。これらのグラフの各々は、5の初期フェーザーグラムを用いて得られた。グラフAは、像表面において計測されたデータのみを使用した前記処理の進行を示す一方で、グラフBは、バック・フォーカル・プレーンと像表面の両方からのデータを用いた前記方法の進行を示す。図9に見られるとおり、バック・プレーンからのデータが使用される時、問題を解くために必要な反復数の劇的な減少が見られる。図9に見られるとおり、BFPからのデータの追加は、像表面からのデータのみを使用するのと対照的に、解を獲得する効率性を向上させる。
【0050】
本発明の反復処理において、修正が位相評価の維持、およびピクセル振幅の修正を伴う場合でも、多かれ少なかれ有効であるかもしれない他の修正も可能であることが注目される。このように、(j−1)番目の位相評価の場合、前記ピクセルのyj-1が利用可能であり、および第j番目の位相評価yjが生成され、そして新しい位相yjnewがyj-1<yjnew<2yj−yj-1の範囲のどこにあってもよい。前記範囲は明らかに、本開示の説明におけるにyjnewに関して使用される値であるyjを含む。
【0051】
本発明は、濃度計測から完全な波面を再構築するコンテクストにおいて上述されてきたが、少なくともその有用性のいくつかは、表示するための機能にも存在するかもしれないし、あるいは人間の監視者へ、再構築された波面を供給してもよい。原理的に、再構築された波面の像(可視光アプリケーションの場合)は、ホログラムとして現れるように作ることができる。主な差は、コヒーレント単色光の一つのソースのみが、表示のために必要となることであろう。再構築された波面に関する情報(振幅および位相)は、製造品においてコード化することができ、それは前記ソースによって照射される。
【0052】
好ましい実施例において、“スカルプテッド・フィルム(sculpted film)”を、再構築された波面を表示するために使用することができる。スカルプテッド・フィルムは、完全な位相および振幅情報を、アナログ容積測定ホログラム(analog volumetric hologram)(三次元像)に変換するために使用される、新しい媒体である。このフィルムは、二つの別個の部分を有する。
【0053】
像の位相情報は媒体へとコード化され、それはキノフォームとして知られる。像の振幅情報は、写真用感光乳剤で捕捉される。キノフォームと乳剤は結合する。このように、像の位相情報と振幅情報の両方が合体される。このように、光がこのフィルムの上に照射されると、像に関する完全な情報が再現され、三次元像が得られる。代替的実施例において、Boulder Nonlinear Systems,Inc.によって供給される位相フィルタも、コード化位相情報を供給するために当業者によって評価されているように、使用することができる。振幅増幅は、フィルムで、または電子的に可変的な光学濃度媒体の将来的な開発でも達成されるかもしれない。
【0054】
本発明は、その特定の実施例との関係で説明されてきたが、多くの他の変形ならびに変更および他の使用が当業者には明らかになるであろう。それゆえに、本発明は、ここでの特定の開示によってではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に単色のコヒーレント波形の波面の位相情報を回復するためのシステムであって:
それを通過する波面の表示を、関連するバック・フォーカル・プレーン(BFP)および像表面(IP)に形成するレンズと;
前記BFPに配置され、前記波面へと、既知の移相を与える位相フィルタと; 前記IPにおいて形成された前記波面表示と関連する濃度を捕捉する記録媒体と;および
前記捕捉された濃度から、および前記位相フィルタによって与えられた前記既知の移相から、前記波面の位相情報を回復するプロセッサと
を具備する前記システム。
【請求項2】
前記BFPおよび前記IPは、フーリエ変換によって関連付けられる共役面であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バック・フォーカル・プレーンにおいて形成された前記波面表示の濃度を捕捉する第二の記録媒体をさらに具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記位相フィルタは、前記バック・フォーカル・プレーンに順番に配置された複数の位相フィルタを具備することを特徴とし、前記複数の追加の位相フィルタはそれぞれ、異なる、既知の移相を前記波面に与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記位相フィルタは、ランダム位相フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ランダム位相フィルタは、一様分布を有することを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記位相フィルタは、一つ以上の光学レンズを具備することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記一つ以上の光学レンズは、集束であることを特徴とする、請求項7のシステム。
【請求項9】
前記一つ以上の光学レンズは、拡散であることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記記録媒体は、ピクセルごとに前記濃度を捕捉することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記波面は、単色コヒーレント光で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記波面は、X線で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記波面は、電子ビームで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記位相フィルタは、前記バック・フォーカル・プレーンに順番に配置されたNの位相フィルタを具備し、および前記記録媒体は、前記Nの位相フィルタによって生成されたNセットの濃度データを捕捉することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項1】
実質的に単色のコヒーレント波形の波面の位相情報を回復するためのシステムであって:
それを通過する波面の表示を、関連するバック・フォーカル・プレーン(BFP)および像表面(IP)に形成するレンズと;
前記BFPに配置され、前記波面へと、既知の移相を与える位相フィルタと; 前記IPにおいて形成された前記波面表示と関連する濃度を捕捉する記録媒体と;および
前記捕捉された濃度から、および前記位相フィルタによって与えられた前記既知の移相から、前記波面の位相情報を回復するプロセッサと
を具備する前記システム。
【請求項2】
前記BFPおよび前記IPは、フーリエ変換によって関連付けられる共役面であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バック・フォーカル・プレーンにおいて形成された前記波面表示の濃度を捕捉する第二の記録媒体をさらに具備する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記位相フィルタは、前記バック・フォーカル・プレーンに順番に配置された複数の位相フィルタを具備することを特徴とし、前記複数の追加の位相フィルタはそれぞれ、異なる、既知の移相を前記波面に与える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記位相フィルタは、ランダム位相フィルタであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ランダム位相フィルタは、一様分布を有することを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記位相フィルタは、一つ以上の光学レンズを具備することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記一つ以上の光学レンズは、集束であることを特徴とする、請求項7のシステム。
【請求項9】
前記一つ以上の光学レンズは、拡散であることを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記記録媒体は、ピクセルごとに前記濃度を捕捉することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記波面は、単色コヒーレント光で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記波面は、X線で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記波面は、電子ビームで形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記位相フィルタは、前記バック・フォーカル・プレーンに順番に配置されたNの位相フィルタを具備し、および前記記録媒体は、前記Nの位相フィルタによって生成されたNセットの濃度データを捕捉することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−217897(P2010−217897A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67659(P2010−67659)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2001−536629(P2001−536629)の分割
【原出願日】平成12年11月8日(2000.11.8)
【出願人】(502163605)ウェイヴフロント アナリシス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2001−536629(P2001−536629)の分割
【原出願日】平成12年11月8日(2000.11.8)
【出願人】(502163605)ウェイヴフロント アナリシス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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