説明

注射用徐放性マイクロカプセル

【課題】薬物の取込率が高く、薬物の初期バーストが顕著に抑制され、薬物を長期間にわたって放出する注射用徐放性マイクロカプセルの提供。
【解決手段】有効量の薬物と基剤としての水可溶の低分子化合物の含有量が1塩基酸として高分子重合物100gに対し0.01モル未満である生体内分解型高分子重合物を含有する注射用徐放性マイクロカプセル。
【効果】有効量の薬物と基剤としての水可溶の低分子化合物の含有量が1塩基酸として高分子重合物100gに対し0.01モル未満である生体内分解型高分子重合物を含有するマイクロカプセルは、薬物の取込率が高く、薬物の初期バーストが顕著に抑制され、薬物を長期間にわたって放出する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有効量の薬物と製剤における基剤として有用な生体内分解型高分子重合物を含有する注射用徐放性マイクロカプセルに関する。
【0002】
【従来の技術】生体内分解型高分子重合物は、たとえばマイクロカプセル等の製剤の基剤として用いることができる。このような生体内分解型高分子重合物としては、たとえば乳酸とグリコール酸との共重合物が強酸性イオン交換樹脂の存在下に縮合させて得られている(日本特開昭56−45920号公報参照)。また、乳酸及び/またはグリコール酸を、無機固体酸触媒の存在下に重縮合させるか、あるいは、無触媒で縮合させ水を除去した後重縮合させることにより、これらの重合体もしくは共重合体が得られている(日本特許出願昭和59年第140356号明細書参照。なお本願は特開昭61−28521号として公開されている。)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】今まで行なわれていた方法によると、得られた生体内分解型高分子重合物中には、未反応の単量体,重合度の低い重合体等の低分子化合物が含まれているため、マイクロカプセルなどを製造する時、含有する薬物のマイクロカプセル中への取込み率が低下したり、投与後の初期バーストといわれる薬物のマイクロカプセルからの初期放出が異常に増大する傾向にある。また、生体内分解型高分子重合物は、化学的に不安定で、室温に放置すると数週間〜数ケ月で分解し、重合度が低下する。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記した欠点に鑑み、該高分子重合反応物を種々の方法で処理したところ、水または水と水易溶性有機溶媒との混液で処理することにより、水可溶性の低分子化合物の量を減少させ得ることを見い出し、これに基づいてさらに研究した結果、本発明を完成した。本発明は、水可溶性の低分子化合物の含有量が1塩基酸として高分子重合物100gに対し0.01モル未満である生体内分解型高分子重合物,水可溶性の低分子化合物の含有量が高分子重合物100gに対して1塩基酸として0.01モル以上の生体内分解型高分子重合反応物から、該低分子化合物を水または水と水易溶性有機溶媒との混液で除去することを特徴とする該生体内分解型高分子重合物の製造法および有効量の薬物と基剤としての該生体内分解型高分子重合物を含有する注射用徐放性マイクロカプセルを提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明方法の原料物質である生体内分解型高分子重合反応物は、いずれの方法で製造したものでもよく、たとえば前記した日本特開昭56−45920号公報,日本特許出願昭和59年140356号明細書に記載された方法等が挙げられる。該原料物質は、水可溶の低分子化合物の含有量が、原料物質100gに対して、1塩基酸として0.01モル以上であるものが用いられる。水可溶の低分子化合物の含有量の測定方法としては、通常の中和滴定が用いられる。たとえば、原料高分子重合物300mgを、ジクロルメタン10mlに溶解し、これを蒸留水20mlと10分間撹拌振とうし、水相と油相とを遠心分離で分け、水相中に含まれる遊離酸を、フェノールフタレインを指示薬として、N/100 NaOH水溶液で中和滴定する。中和に要したNaOHのモル数を、遊離1塩基酸として表示する。
【0006】本発明の生体内分解型高分子重合物としては、生体適合性のすぐれたものがこのましく、その例としては、たとえばポリオキシ酸エステル(例、ポリ乳酸,ポリグリコール酸),ポリシアノアクリル酸エステル,ポリヒドロキシ酪酸,ポリ−γ−カプロラクトン,ポリオルソエステル,ポリオルソカーボネートなどが挙げられる。該高分子重合物としては、上記高分子重合物を形成するモノマーにおいて、異なった2種またはそれ以上のモノマーを原料とする共重合物でもよい。又、該高分子重合物としては、ブロック重合体,グラフト重合体でもよい。これらの高分子重合物においては、生体内での分解が比較的速やかなものが好ましい。
【0007】本発明の高分子重合物の好ましい例としては、ポリ乳酸,乳酸とグリコール酸との共重合物が挙げられる。乳酸とグリコール酸との共重合物としては、その組成比が乳酸約100〜50モル%、残りがグリコール酸であるものが挙げられる。さらに、乳酸とグリコール酸との共重合物であって、重量平均分子量が約2000〜50000であるものが好ましい。さらに、乳酸とグリコール酸との共重合物としては、その組成比が乳酸約90〜50モル%,グリコール酸約10〜50モル%で、重量平均分子量が約5000〜35000であって、クロロホルム中での0.5重量%の固有粘度(η inh)が約0.05〜0.5dl/gのものが挙げられる。本発明方法で用いられる水易溶性有機溶媒としては、たとえば、アセトン,メタノール,エタノール,テトラヒドロフラン,アセトニトリル,酢酸エチルなどが挙げられ、なかでもアセトン,エタノールが安全性の面から好ましく、さらにエタノールがより好ましい。水と水易溶性有機溶媒との混液を用いる場合の比率(V/V)としては、水/有機溶媒=約100/0〜50/50のいずれでも良い。とりわけ100%の水を用いるのが好ましい。
【0008】本発明方法を行なうにあたって、該方法による処理を行なう前に、原料化合物である高分子重合物は、固体の状態(例えば、粉末)でもよいがあらかじめ有機溶媒〔例、ハロゲン化アルカン(例、ジクロルメタン,クロロホルム,ジクロルエタン,トリクロルエタンなど),アセトン,テトラヒドロフラン,酢酸エチル,ベンゼンなど〕に溶解(通常3〜20倍量(W/V)の有機溶媒を用いる)した溶液にして用いる方が効率が良いので好都合である。すなわち、該有機溶媒に溶解した高分子重合反応物は、水あるいは、水に易溶性の有機溶媒と水との混液に接触した時、撹拌等の手段でその接触表面積を著しく増大させうることができる。本発明方法を行なう際の温度は、通常約0゜〜90℃であるが、そらに好ましくは約20゜〜70℃である。
【0009】本発明方法は、原料物質である生体内分解型高分子重合反応物を、水または水と水易溶性有機溶媒との混液中に撹拌しながら注入することにより、水可溶の低分子化合物が水または該混液中に溶解する。この時、目的とする生体内分解型高分子重合物は水または該混液には溶解しないので、該低分子化合物を、目的とする高分子重合物から分離することができる。本発明方法で用いられる水または水と水易溶性有機溶媒との混液と、高分子重合反応物との量比は、特に制限はないが、水又は混液の量は、大過剰である方が望ましい。又、適当な捕集装置を備えた、連続通水洗浄式でも良い。上記水または混液の撹拌は、通常の撹拌機や振盪機,ブレンダーの類のいずれでも良いが、該高分子重合物中の未反応物や水に可溶の低分子化合物を充分除去できる協力な混合性能を備えたものが望ましい。目的とする高分子重合物は、水または該混液には溶解せずに、析出又は、分離するので、析出物又は液滴,固型分を、たとえばろ別,分取などを行なうことにより分離し、次いで乾燥することにより、得ることができる。
【0010】本発明方法を行なうことにより、原料物質である高分子重合反応物中の水可溶の低分子化合物が効率良く除去される。一般の、高分子重合反応物を精製する場合は、その触媒あるいは気体状態のモノマーあるいは毒性の強いモノマー(塩化ビニル等)を除去することに主眼があるが、本発明と同様に低分子化合物や未反応物を除去することもある。この場合の多くは蒸留方法でその初留部分をとり除く方法が行なわれている。しかし、微量の水可溶物を除去することは、通常必要のないことであり本発明に示したような方法で微量の水可溶物を除去することは通常は行なわれていない。このようにして得られた生体内分解型高分子重合物は、次に示す特長を有する。
(1)本発明方法で得られた高分子重合物自体、該高分子重合物を用いて製造された製剤中の高分子重合物は、経日安定性が良好である。
(2)本発明方法で得られた高分子重合物を用いて、W/O/Wエマルジョン形成後の水中乾燥法に付してマイクロカプセルを製造すると、該マイクロカプセル化の際の薬物の取込率が向上する。
(3)本発明方法で得られた高分子重合物を用いて上記(2)のマイクロカプセルを製造すると、マイクロカプセルからの薬物の初期バースト(大きな放出)が顕著に抑制されるため、薬物が長期間にわたって放出される。
【0011】本発明方法で得られた生体内分解型高分子重合物は、たとえば、マイクロカプセルの基剤として用いることができる。たとえば、水溶性薬物(黄体形成ホルモン放出ホルモン,甲状腺ホルモン等のペプチドなど)を含む溶液を内水層とし、必要により内水層に薬物保持物質(なかでも、ゼラチン,アルブミン,ペクチン,寒天などが特に好ましい。)を添加し、本発明方法で得られた生体内分解型高分子重合物を含む溶液を油層としてW/O型乳化物をつくり、該乳化物を水層に分散させてW/O/W型乳化物をつくり(ここにおいてW/O/W型乳化物をつくる際のW/O型乳化物の粘度を約150cpないし10000cpとなるように調整するのが好ましい。)、水中乾燥に付すことにより、水溶性薬物の徐放性マイクロカプセルを製造することができる。このようにして得られたマイクロカプセルは、徐放性の注射剤として投与することができる。その投与量は、主薬である水溶性薬物の種類と含量,剤形,薬物放出の持続期間,投与対象動物(例、マウス,ラット,ウマ,ウシ,人等の温血哺乳動物),投与目的により種々異なるが、該主薬の有効量であればよい。たとえば、1回あたりの投与量として、マイクロカプセルの重量が約0.02ないし200mg/kg、好ましくは約0.2ないし40mg/kgの範囲から、適宜選択することができる。なお、上記注射剤として投与する場合の懸濁溶液として用いる場合の容量は、約0.1ないし5ml、好ましくは約0.5ないし3mlの範囲から適宜選ぶことができる。
【0012】
【実施例】以下、参考例、および実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する参考例13種類の異なる方法〔すなわち、■強アニオンイオン交換樹脂触媒法,■固体酸(酸性白土)触媒法,■無触媒法でいずれも縮合重合法である。〕で合成された乳酸・グリコール酸共重合物(組成比75/25,平均分子量12500)約10gをジクロルメタン約20mlに溶解後約60℃の熱水1000ml中に撹拌しながら注入するとジクロルメタンは揮散し、高分子重合物が浮遊した。これを集め減圧乾燥し脱水、脱溶媒を行ない、所定の高分子重合物を得た。得られた該高分子を密閉容器に入れ室温での経日保存品をGPC(ゲルバーミエーションクロマトグラフィー)にて平均分子量を求め、安定性を評価した。その結果〔表1〕に示すように本発明によって得られた遊離単量体酸の含有量の低い高分子重合物は著明に安定性の向上が認められた。
【0013】
【表1】


* 遊離酸の測定法:試料300mgをジクロルメタン10mlに溶解し、これを蒸留水20mlで抽出し水相10mlを0.01N NaOH溶液で中和滴定する(指示薬フェノールフタレイン)。数字は、高分子重合物100gに対する水中へ溶出した遊離酸を、1塩基酸として、モルで表わした。なお、上記で用いられた乳酸・グリコール酸共重合物は、下記の方法で得られたものを使用した。
【0014】■強アニオン交換樹脂触媒法:85%乳酸水溶液160g,グリコール酸38gにダウエックス50W6.8gを加え窒素気流下、内温、内圧をそれぞれ105℃,35mmHgから150℃,30mmHgまで6時間かけて減圧加熱反応を行ない留出水を除去した。さらにダウエックス50Wを6.8g追加して3〜5mmHgで175℃40時間反応を行った後反応液を熱時ろ過してダウエックス50Wを除き、ろ液を冷却して乳酸・グリコール酸共重合物を得た。
■固体酸(酸性白土)触媒法:85%乳酸水溶液160g,グリコール酸38gに酸性白土17.4gを加え窒素気流下で内温及び内圧を105℃350mmHgから150℃,30mmHgまで段階的に温度及び減圧度を高めながら6時間かけて減圧加熱を行ない留出水を除去した。引きつづき内圧を30mmHgとし、内温175℃で36時間加熱を行った。反応液を室温まで冷却し、塩化メチレン400mlを加えて、撹拌溶解後、酸性白土をろ過して除きろ液を濃縮乾固して、白色の乳酸・グリコール酸共重合物を得た。
■無触媒法:85%乳酸水溶液160gにグリコール酸38gを加え窒素気流下、内温,内圧をそれぞれ105℃,350mmHgから150℃,30mmHgまで6時間かけて減圧加熱を行ない留出水を除去した。さらに3〜5mmHg,175℃で36時間減圧加熱を行なった後、室温まで冷却して、無色の乳酸・グリコール酸共重合物を得た。
【0015】参考例2450mgのリュープロライド〔式(Pyr)Glu−His−Trp−Ser−Tyr−D−Leu−Leu−Arg−Pro−NH−CH2CH3 で表わされる黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH−RH)と同様の作用を有するポリペプチドの酢酸塩。略号は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による。アミノ酸に関し、光学異性体は、特に明示しなければ、L体を示す。〕と40mgのゼラチンを800mgの蒸留水に加温溶解した(内水相)。参考例1の乳酸・グリコール酸共重合体のロット2−1,2−2,3−1,3−2の各々3.5gをメチレンクロライド5mlに溶解した(油相)。内水相に油相をポリトロン(キネマチカ社製,スイス)で撹拌しつつ加えW/Oエマルジョンをつくった。ロットNo. 2−2およびNo.3−2のW/Oエマルジョンの15℃における粘度は2000cpであった。一方ポリビニルアルコール0.5%水溶液200mlを用意し、これにW/Oエマルジョンをオートホモミキサー(特殊機化株式会社製)でかくはんしつつ加え、(W/O)/Wエマルジョンをつくった。このエマルジョンを窒素気流下,プロペラでかくはんしながら約2時間かけてジクロルメタンを揮散させ油相を固化させマイクロカプセルをつくった。このマイクロカプセルをろ別,水洗した後乾燥して粉末として得た。得られたマイクロカプセル50mgを2mlのジクロルメタンと7mlの蒸留水で溶解し、蒸留水中のリュープロライド濃度を逆相系HPLCで定量し、マイクロカプセル中にとりこまれたリュープロライドの含量を求め、理論量に対する割合として〔表2〕に示す
【表2】


〔表2〕から明らかなように、本発明方法で得られた高分子重合物を用いる場合の方が高いリュープロライドの取込率を示した。
【0016】参考例3参考例2で調製されたマイクロカプセルを50mgづつ秤量し10mlのpH7.0リン酸緩衝液中に分散した。この分散液を37℃の恒温槽中で25rpm で撹拌しつつ、マイクロカプセルから緩衝液中へのリュープロライドの放出を測定した。参考例2のリュープロライド含量をイニシャル値として、37℃,保存後1,7,14,21,28日目にマイクロカプセルをろ別し残存しているリュープロライド量をHPLCで測定し、イニシャル値に対する残存率を求め〔図1〕に示した。この〔図1〕から明らかなように本発明の高分子重合物を用いると、初期バースト(1日目の放出量)が少なく、ほぼゼロ次で1〜1.5ケ月リュープロライドを放出していることがわかる。〔図1〕において、□はロットNo.2−1の高分子重合物を、■はロットNo.2−2の高分子重合物を、○はロットNo.3−1の高分子重合物を、●はロットNo.3−2の高分子重合物を用いた場合をそれぞれ示す。
【0017】参考例4参考例1の■と同様の方法で高分子重合物を合成した。この時の遊離酸含量は高分子重合物100gに対し0.021モルであった。
参考例585%乳酸水溶液191g及びグリコール酸17.5gとダウエックス50W6.8gを秤り、参考例1の■と同様にして反応し留出水を除去した後、3mmHg,175℃で72時間反応して高分子重合物を得た。この時の遊離酸含量は高分子重合物100gに対し0.018モルであった。
参考例685%乳酸水溶液150gを参考例1の■と同様の方法で反応し、留出水を除去した。その後3mmHg,175℃で12時間反応して高分子重合物を得た。この時の遊離酸含量は高分子重合物100gに対し0.035モルであった。
【0018】実施例1参考例4で得られた乳酸・グリコール酸の組成比75/25平均分子量13000のポリ乳酸・グリコール酸(無触媒で合成したもの)をジクロルメタンに溶解後、約60℃の熱水中に撹拌下注入し、浮遊してくる高分子重合物を集め、乾燥して乳酸・グリコール酸(75/25)分子量13000の共重合物を得た。このものの遊離酸含量は高分子重合物100g中に、0.005モル、0.5%クロロホルム中の固有粘度は0.15であった。
実施例2参考例5で得られた乳酸・グリコール酸の組成比90/10平均分子量20000のポリ乳酸・グリコール酸(ダウエックス50Wを触媒として合成したもの)をアセトンに溶解後、約40℃の温水中に注入し、浮遊してくる高分子重合物を集め乾燥して共重合物を得た。このものの遊離酸含量は高分子重合物100g中0.008モル、0.5%クロロホルム中の固有粘度は0.48であった。
【0019】実施例3参考例6で得られたポリ乳酸の平均分子量8000(無触媒で合成したもの)を微粉末化した後これを50℃の温水中で20分かく拌し、ろ別、乾燥して高分子重合物を得た。このものの遊離酸含量は高分子重合物100gに、0.009モル、クロロホルム中の固有粘度は0.10であった。
実施例4実施例1で用いたのと同一の高分子重合物を、50℃の水:エタノール=1:1の混液中で洗浄し、実施例1と同様に処理した。得られた高分子重合物の遊離酸含量は高分子重合物100g中に0.0028モルであった。
実施例5参考例4で得られた乳酸・グリコール酸の組成比75/25平均分子量13000の乳酸・グリコール酸共重合物約3gをジクロルメタン5mlに溶解した(油相)。甲状腺ホルモン放出ホルモンの酒石酸塩(TRH−T)60mgを800mgの水に溶解した(内水相)。内水相に油相をポリトロンで撹拌しつつ加えW/Oエマルジョンをつくった。このW/Oを15℃に冷却し、別途用意した15℃に冷却したポリビニルアルコール0.5%水溶液200mlにオートホモミキサーで撹拌しつつ添加して(W/O)/Wエマルジョンをつくった。この(W/O)/Wエマルジョンを窒素気流下でプロペラミキサーで撹拌しながら約2時間かけてジクロルメタンを揮散させ、油相を固化させてマイクロカプセルをつくった。このマイクロカプセルをろ別、水洗した後乾燥して粉末とした。
【0020】
【発明の効果】水可溶の低分子化合物の含有量が、高分子重合物100gに対して0.01モル以上である生体内分解型高分子重合反応物を水または水易溶性有機溶媒との混液で処理することにより、該水可溶の低分子化合物の含有量を該高分子重合物100gに対して1塩基酸として0.01モル未満とすることができ、これにより得られた高分子重合物は、経日安定性が良好であり、これを製剤の基剤として有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、参考例3で得られたマイクロカプセル中に残存する薬物の量の経日変化を表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】有効量の薬物と基剤としての水可溶の低分子化合物の含有量が1塩基酸として高分子重合物100gに対し0.01モル未満である生体内分解型高分子重合物を含有する注射用徐放性マイクロカプセル。
【請求項2】高分子重合物の重量平均分子量が約2000〜50000の共重合物または重合物である請求項1記載の注射用徐放性マイクロカプセル。
【請求項3】高分子重合物が約50ないし100モル%の乳酸と約50ないし0モル%のグリコール酸との共重合物または重合物である請求項1記載の注射用徐放性マイクロカプセル。
【請求項4】高分子重合物の0.5重量%クロロホルム溶液の固有粘度が約0.05ないし0.5dl/gであり、重量平均分子量が約5000ないし35000である請求項2記載の注射用徐放性マイクロカプセル。

【図1】
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