説明

注射用組成物

【課題】患部への取り込みがよく、界面活性剤、合成高分子、および合成化学架橋剤を使用することなく、安全性の高いナノ粒子を用いた注射用組成物を提供すること。
【解決手段】活性成分を含有する平均粒径10nm以上300nm以下のタンパク質ナノ粒子を含む、注射用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分を内包したタンパク質ナノ粒子を含む注射用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子材料は、バイオテクノロジーにおいて幅広い利用が期待されている。特に近年、ナノテクノロジーの進展によって生み出されたナノ微粒子材料をバイオテクノロジーや医療に応用することが活発に検討され、研究成果も数多く報告されている。
【0003】
薬剤送達システム(DDS)の分野では早くからナノ粒子への期待が強く、薬剤や遺伝子のキャリアーとしてナノ粒子が極めて有望である。中でも、高分子ミセルを用いた研究は盛んに行われているが、ほとんどの場合、AB型かABA型のブロックコポリマーがその構造の単純さから用いられている。高分子ミセルの特徴として、大きな薬物容量、高い水溶性、高い構造安定性、非蓄積性、小さな粒経(100nm以下)、機能分離性がある。このことから、標的部位へのターゲティングや、疎水性薬物の可溶化を目的とした研究が行われている。
【0004】
固形ガン局所の血管内皮の透過性は異常に亢進していると同時に、リンパ系による排出が抑制されているために、高分子は本質的にガン部位に選択的に蓄積しやすい性質がある。この性質はEPR効果(Enhanced Permeability and Retention effect)と呼ばれる(例えば、非特許文献1)。このEPR効果を示すためには、その大きさは5〜200nmが最適であり、その表面は親水的で荷電は中性か弱く負に帯電していることが求められる。高分子ミセルの大きさはこの範囲内であり、疎水的な薬物を封入した疎水性内核を親水性の外殻が取り囲んでいるので、表面物性は親水的であり、上記の条件を満たしているため、EPR効果の実現に適したキャリアーシステムである。
【0005】
近年開発される活性の高い薬剤にはタキソールのように水に不溶なものがある。経口吸収が困難な抗ガン剤では血液中に投与することが望ましい。よって、有機溶媒や界面活性剤を用いて非水溶性の薬剤を水に可溶化するのであるが、用いる有機溶剤や界面活性剤の毒性は相当なレベルに及ぶ。また、この毒性によるショック様症状を抑えるために、ステロイドの前投与や、カテーテルによって心臓内に導いて投与することが求められるなど、入院が必要な治療形態となる。有機溶剤や低分子の界面活性剤に比べれば毒性が低いと考えられる両親媒性高分子を用いてそのミセル構造に薬物を封入して血液中に投与する研究が行われており、臨床試験も行われている(例えば、非特許文献2)。
【0006】
特許文献1には、球状タンパク質粒子が記載されているが、薬物を含有する組成物としての粒子サイズは1μm以上であり、沈殿剤による粒子形成のみで、共有結合によるタンパク質同士のネットワークがなく、保存安定性や生体内における粒子の安定性の点で問題がある。
【0007】
特許文献2では、高分子材料(合成高分子または天然高分子)から作られるナノ粒子の薬剤標的化システムを提案しているが、粒子作製方法として、1つ以上のモノマーおよび/またはオリゴマー前駆体を重合する工程を含んでいるため、高分子材料として天然高分子を用いたとしても、安全性に問題がある。
【0008】
非特許文献3では、ゼラチン水溶液に有機溶媒を添加して不溶化した粒子を、グルタルアルデヒドを用いて架橋しているが、グルタルアルデヒドは毒性の強い物質であり、残存した場合には安全性に問題がある。上記の通り、これまで知られている高分子ナノ粒子は、合成高分子は言うに及ばず、天然高分子であっても、粒子形成過程で、界面活性剤や重合性モノマー、化学架橋剤などを使用しており、安全性に懸念がある。
【0009】
ところで、タンパク質の架橋は化学架橋が一般的であり、上述のグルタルアルデヒドのような架橋剤を添加する方法や、光反応性基を有するモノマー用いUV照射する方法、パルス照射により局所的にラジカルを発生させ架橋する方法などが知られている。
【0010】
一方、生体高分子の特質を生かした方法として、トランスグルタミナーゼを利用して、グルタミン残基のアシル転位反応を触媒し分子間および分子内に架橋結合を形成する方法がある(例えば、特許文献4)。しかし、通常この方法はバルクもしくは含水した生体高分子中で行われるものであり、タンパクナノ粒子内での架橋結合の形成は知られていない。
また、還元剤により、タンパク質分子内のジスルフィド結合を切断し、酸化剤により、分子間でジスルフィド結合を再結合する方法が知られている。通常この方法は、パーマネントウェーブなどのバルクもしくは含水した生体高分子中で行われるものであり(例えば、特許文献5)、タンパクナノ粒子内での架橋結合の形成は知られていない。更に、有機溶媒中に分散したナノ粒子での架橋反応は知られていない。
【0011】
一方、微粒子材料の中でも、磁性微粒子材料は、バイオ領域において幅広く利用されてきている。例えば、抗体などが固定化されている磁性微粒子は免疫診断に利用されてきている。また、磁性微粒子表面にDNAを固定化して、mRNAや一本鎖DNAの分離、DNA結合タンパク質の分離等、遺伝子工学の広範な領域にも活用されている。さらに、磁性ナノ粒子は、プロテオーム解析においても、その重要な柱の一つであるタンパク質相互作用解析において極めて有効である。
【0012】
医療診断分野においても、MRI診断などの造影剤として、さらには癌の温熱治療法(ハイパーサーミア)などその有効性が示される。癌細胞は42.5℃以上に加温すると殺傷される(例えば、非特許文献5)。
【0013】
現行の温熱療法では、正常組織も腫瘍組織も区別なく加温するので、患者の負担を考慮して正常組織への影響があまりない温度である42.5℃付近までしか加温しない。しかし、加温する温度が高いほど癌細胞は死にやすいことは、自明である。したがって、もし、正常組織が加温されずに、腫瘍組織だけを特異的に加温することができれば、どのような種類の癌細胞であっても死滅させることが理論上可能となる。磁性ナノ粒子であるマグネタイト(Fe3O4)を発熱体とする誘導加温型の温熱療法が開発され、現在までに様々な動物種(マウス、ラット、ハムスター、ウサギ)や癌種(脳腫瘍、皮膚癌、舌癌、乳癌、肝細胞癌、骨肉腫)で腫瘍の退縮に成功している(例えば、非特許文献6及び非特許文献7)。
【0014】
磁性ナノ粒子は、その粒径がナノサイズと小さいため、従来使用されているミクロンサイズの磁性粒子やラテッテクスビーズに比べて、水溶液中での分散性および分子認識性が格段に向上する。その結果、従来法で使用されている磁性微粒子やラテックス担体などを置き換えるだけで、大幅な感度アップと測定時間の短縮が期待される。
【0015】
加藤らはマイトマイシンCとフェライト磁粉を封入した経約250μmのエチルセルロースマイクロカプセル(以下、FM-MMC-mc)を開発した。家兎下腿に移植したVX腫瘍に対する治療実験では、通常剤形のMMC投与と比較してFM-MMC-mcの磁気誘導群では著明な抗腫瘍効果がみられた。これは磁気で腫瘍部の微小動脈に集積したカプセルから、長時間にわたってMMCが周囲の腫瘍組織内に放出された結果であり、従来の方法では得られない強力なターゲティング療法が可能なことを強く示唆している(例えば、非特許文献8)。
【0016】
上記、FM-MMC-mcは、サイズが250μmと大きく、毛細血管などの微細な部位には到達できない。また、合成高分子であるエチルセルロースは安全性上問題がある。
【0017】
【非特許文献1】Y.Matsumura and H. Maeda, Cancer Res., 46, 6387(1986)
【非特許文献2】Y.Mizumura et al., Jap.J.Cancer Res., 93, 1237(2002)
【非特許文献3】西田 光広、フレグランスジャーナル、11月、17(2005)
【非特許文献4】C.Coester et al., J. Microencapsulation, 17, 189(2000)
【非特許文献5】Dewey,W.C.,Radiology.,123,463-474(1977)
【非特許文献6】Kobayashi.,T Jpn.J.Cancer Res.,89,463-469(1998)
【非特許文献7】Kobayashi.,T.,Melanoma Res.,13,129-135(2003)
【非特許文献8】加藤哲郎:マイクロカプセルの磁場誘導による抗癌剤の効果増強、癌と化学療法、8(5)、698-706、1981
【特許文献1】特表2005−500304号公報
【特許文献2】特表2001−502721号公報
【特許文献3】特開2004−244420公報
【特許文献4】特開昭64−27471号公報
【特許文献5】特開平5−117134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、患部への取り込みがよく、界面活性剤、合成高分子、および合成化学架橋剤を使用することなく、安全性の高いナノ粒子を用いた注射用組成物を提供することを解決すべき課題とした。また、本発明は、毛細血管などの微細な部位にも容易に到達することができ、造影と温熱療法とDDSを一度に行うことができる注射用組成物を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ナノ粒子の形成中および/又は形成後に、合成化学架橋剤を使用することなく架橋処理することにより得られる、医学的活性成分を封入したタンパク質ナノ粒子を用いることにより、患部への取り込みがよく、安全性の高い注射用組成物を作製できることを見出した。また、磁気応答性粒子と医学的活性物質を含むタンパク質ナノ粒子を用いることにより、患部への誘導、造影、治療が可能な注射用組成物を作製することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0020】
即ち、本発明によれば、活性成分を含有する平均粒径10nm以上300nm以下のタンパク質ナノ粒子を含む、注射用組成物が提供される。
【0021】
好ましくは、本発明の注射用組成物は、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の活性成分を含有する。
好ましくは、活性成分は、医薬品成分である。
好ましくは、活性成分は、イオン性物質または脂溶性物質である。
【0022】
好ましくは、タンパク質はコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である。
好ましくは、ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている。
【0023】
好ましくは、酵素を用いて架橋処理を行う。
好ましくは、有機溶媒中において酵素架橋処理されている。
好ましくは、タンパク質分子内のジスルフィド結合を用いて架橋処理を行う。
好ましくは、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理を行う。
【0024】
好ましくは、本発明の注射用組成物は、磁気応答性粒子を含む。
好ましくは、磁気応答性粒子は酸化鉄ナノ粒子である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、患部への取り込みがよく、界面活性剤、合成高分子、および合成化学架橋剤を使用することなく、安全性の高いナノ粒子を用いた注射用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、毛細血管などの微細な部位にも容易に到達することができ、造影と温熱療法とDDSを一度に行うことができる注射用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明で用いるタンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。遺伝子組み換えゼラチンとしては、例えばEP1014176A2、米国特許第6,992,172号に記載のものを用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明で用いるタンパク質ナノ粒子は、タンパク質ナノ粒子の形成中および/又は形成後に架橋処理することにより得られるものが好ましい。好ましくは、酵素又はジスルフィドを用いて架橋処理を行う。
【0028】
本発明に用いられる酵素は、タンパクの架橋作用が知られているものであれば特に制限されず、その中で好ましいものはトランスグルタミナーゼである。
トランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。具体的には、味の素(株)製アクティバシリーズ、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、例えば、オリエンタル酵母工業(株)製、Upstate USA Inc.製、Biodesign International製などのモルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどが挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる酵素の量は、タンパク質の種類に応じて適宜設定することが出来るが、標準的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%程度を添加することができ、好ましくは、1〜50重量%程度を添加することができる。
【0030】
酵素による架橋反応の時間は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、1時間から72時間反応することができ、好ましくは、2時間から24時間反応することができる。
【0031】
酵素による架橋反応の温度は、タンパク質の種類、ナノ粒子サイズに応じて適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃で反応することができ、好ましくは、25℃から60℃で反応することができる。
【0032】
本発明に用いられる酵素を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ジスルフィド架橋は、タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理することによって、タンパク質分子間のジスルフィド結合、および部分的に分子内のジスルフィド結合が再形成されることにより、タンパク質ナノ粒子が架橋され、水に不溶化するものと考えられる。
【0034】
本発明で用いる酵素架橋するタンパク質の種類は特に限定されないが、リジン残基およびグルタミン残基を有するタンパクが好ましく、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。その中で好ましいものは、酸処理ゼラチン、コラーゲン、アルブミンであり、最も好ましいものは酸処理ゼラチンである。
【0035】
本発明で用いるジスルフィド架橋するタンパク質の種類はジスルフィド結合を有するタンパクであれば特に制限されないが、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。その中で好ましいものは、アルブミン、グロブリン、トランスフェリンである。
【0036】
本発明に用いられるタンパク質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
本発明のナノ粒子の平均粒径は、10nm以上300nm以下であり、好ましくは30nm以上300nm以下であり、特に好ましくは40nm以上300nm以下であり、特に好ましくは50nm以上200nm以下である。上記したようなナノオーダーのサイズを有することにより、本発明のナノ粒子は、毛細血管などの微細な部位にも到達することが可能になる。
【0038】
本発明のタンパク質ナノ粒子は、好ましくは、少なくとも1種以上の活性成分を含むことができる。活性成分の量は特に限定されないが、一般的には、タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の活性成分を含有させることができる。
【0039】
本発明において、活性成分はタンパク質ナノ粒子形成時に添加してもよいし、タンパク質ナノ粒子作成後に添加してもよい。
【0040】
本発明に用いられる活性成分は、特に限定されないが、医薬品成分が好ましい。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ステロイド、抗生物質、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、抗菌剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、鎮咳去痰剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、β遮断薬、α遮断薬、αβ遮断薬、縮瞳薬、散瞳薬、プロスタグランジン、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ワクチン、生理活性を有するペプチドおよびタンパク質、抗体、ワクチン、抗原などを挙げることができる。上記した活性成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
本発明に用いられる抗生物質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、アンピシリン、ヘタシリン、シクラシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、スルベニシリン等のペニシリン系抗生物質。セファロリジン、セファロチン、セファゾリン、セファログリシン、セファレキシン等のセファロスポリン系抗生物質。ストレプトマイシン、カナマイシン、ジベカシン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン等のアミノグルコシド系抗生物質。オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ジメチルクロルテトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン等のテトラサイクリン系抗生物質。エリスロマイシン、ロイコマイシン、ジョサマイシン等のマクロライド系抗生物質。リンコマイシン、クリンダマイシン等のリンコマイシン系抗生物質。クロラムフェニコール、ミカマイシン、グラミシジン、グラミシジンS、カプレオマイシン、サイクロセリン、エンビオマイシン、リファンピシン、ナイスタチン、トリコマイシン、アムホテリシンB、グリセオフルビン、バリオチン、ピロールニトリン、シッカニン、ニトロフラントイン、5−ヨード−2−デオキシウリジン、セファメジン、フォスフォノマイシン、N−ホルムイミドイルチェナマイシン1水和物などが挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる制癌剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬(5-フルオロウラシル(5FU)やテガフール、ドキシフルリジン、カペシタビンなど);抗生物質(マイトマイシン(MMC)やアドリアシン(DXR)など);プリン代謝拮抗薬(メソトレキサートなどの葉酸代謝拮抗薬、メルカプトプリンなど);ビタミンAの活性代謝物(ヒドロキシカルバミドなどの代謝拮抗薬、トレチノインやタミバロテンなど);分子標的薬(ハーセプチンやメシル酸イマチニブなど);白金製剤(ブリプラチンやランダ(CDDP)、パラプラチン(CBDC)、エルプラット(Oxa)、アクプラなど);植物アルカロイド薬(トポテシンやカンプト(CPT)、タキソール(PTX)、タキソテール(DTX)、エトポシドなど);アルキル化剤(ブスルファンやシクロホスファミド、イホマイドなど);抗男性ホルモン薬(ビカルタミドやフルタミドなど);女性ホルモン薬(ホスフェストロールや酢酸クロルマジノン、リン酸エストラムスチンなど);LH-RH薬(リュープリンやゾラデックスなど);抗エストロゲン薬(クエン酸タモキシフェンやクエン酸トレミフェンなど);アロマターゼ阻害薬(塩酸ファドロゾールやアナストロゾール、エキセメスタンなど);黄体ホルモン薬(酢酸メドロキシプロゲステロンなど);BCGなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
本発明に用いられる抗炎症剤としては、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤であってもよく、具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、フルドロキシコルチド、メチルプレドニゾロン、酢酸ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸ベタメサゾン、吉草酸ジフルコルトロン、プロピオン酸クロベタゾール、フルオシノニド、アズレン、グアイアズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン及びケトプロフェンから選ばれる化合物並びにそれらの誘導体並びにそれらの塩、オウゴンエキス、カワラヨモギエキス、キキョウエキス、キョウニンエキス、クチナシエキス、クマザサ抽出液、ゲンチアナエキス、コンフリーエキス、シラカバエキス、ゼニアオイエキス、トウニンエキス、桃葉エキス並びにビワ葉エキスから選ばれる植物抽出物などが挙げられる。
【0044】
本発明に用いられる抗アレルギー剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クロモグリク酸ナトリウムやトラニラストなどのメディエーター遊離抑制薬、フマル酸ケトチフェンや塩酸アゼラスチンなどのヒスタミンH1-措抗薬、塩酸オザグレルなどのトロンボキサン阻害薬、プランルカストなどのロイコトリエン拮抗薬、トシル酸スプラタストなどが挙げられる。
【0045】
本発明に用いられる抗菌剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。オフロキサシン、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、スルベニシリンナトリウム、硫酸ゲンタマイシン、硫酸ミクロノマイシン、ピロクトンオラミン、イソプロピルメチルエーテル、ヒノキチオール、ジンクピリチオン、クリンバゾール、塩化ベンザルコニウム、感光色素101、感光色素201、クロルヘキシジン、サリチル酸、フェノール、ケトコナゾール及びミコナゾールなどが挙げられる。
【0046】
本発明に用いられるホルモン剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストロン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロンなどが挙げられる。
【0047】
本発明に用いられる抗血栓剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。アスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、ワルファリンカリウムなどが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる免疫抑制剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ラパマイシン、タクロリムス、シクロスポリン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、ミゾリビンなどが挙げられる。
【0049】
本発明に用いられる核酸医薬として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。アンチセンス、リボザイム、siRNA、アプタマー、デコイ核酸などが挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる麻酔剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ベンゾカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカインなどが例示される。
【0051】
本発明に用いられる鎮咳去痰剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。塩酸プロカテロール、硫酸テルブタリン、臭化水素酸フェノテロール、塩酸ツロブテロール、塩酸アンブロキソール、塩酸ピルブテロール、塩酸マブテロール、塩酸クレンブテロール、塩酸トリメトキノール、フマル酸フォルモテロールなどが挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる血管拡張剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。エフロキサート、エタフェノン、オキシフェドリン、カルボクロメン、ジラゼプ、ジルチアゼム、トリメタジジン、四硝酸ペンタエリスリトール、ジピリダモール、硝酸イソソルビド、トラピジル、ニトログリセリン、ニフェジピン、プレニラミン、モルシドミン、リン酸トロールニトラート、イノシトールヘキサニコチネート、イソクスプリン、ナイリドリン、クエン酸ニカメタート、シクランデレート、シンナリジン、ニコチニックアルコール、ヘプロニカートなどが挙げられる。
【0053】
本発明に用いられる血圧降下剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。レセルピン、レシナミンなどのラウロルフィアアルカロイド類。クロニジン、プラゾシン、ナシル酸ジヒドロエルゴトキシン、メチクラン、メチルドーパ、グアネチジン、ベタニジン等が挙げられる。
【0054】
本発明に用いられる生理活性を有するペプチドおよびタンパク質、抗体、ワクチン、抗原として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カルシトニン、インシュリン、プロインシュリン、バソプレッシン、デスモプレシン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ソマトスタチン、プロラクチン、グルカゴン、ガストリン、セクレチン、カリクレイン、ウロキナーゼ、ニューロテンシン、エンケファリン、キョートルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、アンギオテンシン、トランスフェリン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、上皮細胞増殖因子、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、白血病細胞阻止因子、血液幹細胞増殖因子、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、トロンボポエチン、スーパーオキサイドディスムターゼ、ティシュープラスミノーゲンアクチベーター、アンチトロンビン、血液凝固因子、抗IgE抗体、抗IgA抗体、抗腫瘍抗体、腫瘍壊死因子抗体、抗インターロイキン抗体、HIV中和抗体、抗血小板抗体、抗肝炎ウィルス抗体、肝炎ワクチン、インフルエンザワクチン(インフルエンザ抗原)、百日咳ワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、杉花粉あるいはぶたくさ花粉などの、抗原として作用しうるペプチドあるいはタンパク質およびそれらのハプテン結合物、さらにはそれらとアジュバントとの混合物などが挙げられる。
【0055】
本発明のタンパク質ナノ粒子は、特許文献特開平6−79168号公報、又はC.Coester著、ジャーナル・ミクロカプスレーション、2000年、17巻、p.187−193に記載の方法に準じて作製することができるが、架橋方法としてグルタルアルデヒドの代わりに酵素を用いる。
【0056】
また、本発明においては、架橋処理を有機溶媒中で行うことが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましい。
【0057】
また、本発明の注射用組成物は、活性成分を含有する平均粒径40nm以上300nm以下のタンパク質ナノ粒子に加えて、リン脂質、アニオン性多糖、カチオン性多糖、アニオン性タンパク質、及び/又はカチオン性タンパク質を含んでいてもよい。
【0058】
本発明に用いることができるリン脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。
【0059】
本発明に用いることができるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0060】
本発明に用いることができるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0061】
本発明に用いることができるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられるカチオンタンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0063】
本発明のタンパク質ナノ粒子は、粒子中に磁気応答性粒子を含んでもよい。
【0064】
本発明で用いる磁気応答性粒子としては、電磁波を吸収して発熱し、人体に無害なものであれば、任意のものを使用することができるが、特に人体に吸収されにくい周波数の電磁波を吸収して発熱するものを使用することが好ましい。好ましい磁気応答性粒子は、鉄白金、酸化鉄、又はフェライト(Fe,M)34であり、特に好ましくは、酸化鉄ナノ粒子である。ここで酸化鉄には、とりわけFe34(マグネタイト)、γ−Fe23(マグヘマイト)、またはこれらの中間体、混合物が含まれる。また、表面と内部の組成が異なるコアシェル型構造であってもよい。前記式中Mは、該鉄イオンと共に用いて磁性金属酸化物を形成することのできる金属イオンであり、典型的には遷移金属の中から選択され、最も好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+などであり、M/Feのモル比は選択されるフェライトの化学量論的な組成に従って決定される。
【0065】
本発明で用いる磁気応答性粒子のサイズは、好ましくは1nm〜500nmであり、より好ましくは1nm〜300nmであり、特に好ましくは、5nm〜100nmである。
【0066】
本発明のナノ粒子には、好ましくは、タンパク質の重量に対して0.1〜100重量%の磁気応答性粒子を含めることができる。
【0067】
上記した本発明のナノ粒子は、磁気応答性粒子を含むため、磁力により所定の部位に誘導することができる。即ち、本発明のナノ粒子は体内に投与し、磁力により疾患部位に誘導することができる、また上記のようにして疾患部位に誘導されたナノ粒子は、MRI造影により確認することができる。即ち、本発明の注射用組成物は、MRI用造影剤として有用である。
【0068】
さらに本発明の注射用組成物は、上記の方法に従って疾患部位に誘導した後、高周波をあてて加熱し、ナノ粒子に内包した薬学的活性成分を放出させることができる。
【0069】
本発明において好ましくは、ナノ粒子に、癌細胞に選択的な親和性を有する物質を添加することができる。特に好ましくは、抗体、又は葉酸を添加することができる。癌細胞に選択的な親和性を有する抗体としては、例えば、癌抗原を認識する抗体を使用することができ、好ましくは、遊離抗原を認識する抗体を使用することができる。癌抗原の具体例としては、上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor;EGFR)、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)などが挙げられる。
【0070】
上記した癌細胞に選択的な親和性を有する抗体は、当業者であれば容易に入手可能であり、例えば、市販品を使用してもよいし、又は上記抗原又はその部分ペプチドを免疫原として公知の抗体作製法により適宜作製して使用することもできる。また、使用する抗体はモノクローナル抗体でもよいし、ポリクローナル抗体でもよい。
【0071】
上記したような抗体は、本発明のナノ粒子に含まれるタンパク質のアミノ基やカルボキシル基などを反応基とし、アミド化反応によるペプチド結合の形成などにより、本発明のナノ粒子に結合させることができる。
【0072】
アミド化反応は、カルボキシル基またはその誘導基(エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物など)とアミノ基の縮合により行なわれる。酸無水物や酸ハロゲン化物を用いる場合には塩基を共存させることが望ましい。カルボン酸のメチルエステルやエチルエステルなどのエステルを用いる場合には、生成するアルコールを除去するために加熱や減圧を行なうことが望ましい。カルボキシル基を直接アミド化する場合には、DCC、Morpho−CDI、WSCなどのアミド化試薬、HBTなどの縮合添加剤、N−ヒドロキシフタルイミド、p−ニトロフェニルトリフルオロアセテート、2,4,5−トリクロロフェノールなどの活性エステル剤などのアミド化反応を促進する物質を共存させたり、予め反応させておいてもよい。また、アミド化反応時、アミド化により結合させる親和性分子のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかを常法にしたがって適当な保護基で保護し、反応後脱保護することが望ましい。
【0073】
アミド化反応により癌細胞に選択的な親和性を有する抗体を結合したナノ粒子は、ゲルろ過などの常法により洗浄、精製後、水及び/又は親水性溶媒(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、2−エトキシエタノールなど)に分散させて使用することができる。
【0074】
本発明の注射方法として好ましいものは、血管・体腔内・リンパへの注射が挙げられる。より好ましくは皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射が挙げられるが、静脈注射が特に好ましい。
【0075】
本発明においては、注射用組成物には添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、無痛化剤、防腐剤、酸化防止剤、又はpH調整剤などが挙げられる。
【0076】
本発明で用いることができる無痛化剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ベンジルアルコール、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、 クロロブタノールなどが挙げられる。
【0077】
本発明で用いることができる防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、過酸化水素、ギ酸、ギ酸エチル、ジ亜塩素酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、ペクチン分解物、ポリリジン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、フェノキシエタノール、レゾルシン、チモール、チラム、ティートリー油が挙げられる。
【0078】
本発明で用いることができる酸化防止剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンCおよびその誘導体、ビタミンE、カイネチン、ポリフェノール、SOD、フィチン酸、BHT、BHA、没食子酸プロピル、フラーレン、クエン酸などが挙げられる。
【0079】
本発明で用いることができるpH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸、コハク酸が挙げられる。
【0080】
本発明のタンパク質ナノ粒子の投与量は、活性成分の種類及び使用量、患者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、10μg〜100mg/kg程度を投与することができ、好ましくは、20μg〜50mg/kg程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0081】
実施例1
酸処理ゼラチンを20mg、ダイキトサンを2mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を10mg、下記構造を有する活性物質モデルを0.4mg、イオン交換水を1.79mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋された酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、85nmであった。
【0082】
【化1】

【0083】
実施例2
アルブミンを20mg、コンドロイチン硫酸−Cを2mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を10mg、アドリアマイシンを0.4mg、イオン交換水を1.79mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、30nmであった。
【0084】
実施例3
酸処理ゼラチンを20mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を10mg、アルブチン0.4mg、イオン交換水を1.79mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、レシチン2mgを溶かしたエタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋された酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、90nmであった。
【0085】
実施例4
アクアコラーゲンRを20mg、デキストラン硫酸2mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を10mg、アドリアマイシンを0.4mg、イオン交換水を1.79mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋されたアクアコラーゲンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、110nmであった。
【0086】
実施例5
5%のゼラチン水溶液25mLに、アセトン25mLをゆっくり加え、沈殿させる。上澄みを捨て、沈殿を再度水に溶かし、ポリリジン2mg、活性物質モデル0.4mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)10mgを加えた後、pHを2.5にして不溶化する。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋された酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。
【0087】
実施例6
酸処理ゼラチン100mgをイオン交換水10mLに加温しながら溶かし、塩酸を加えてpHを2.5に調整した後、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を50mg、アルブチン0.4mgを加える。攪拌下、この溶液にアセトン16mLを滴下し、エタノール230mLで希釈したところ、酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、90nmであった。pH7のリン酸バッファーを10mL滴下した後、外設55℃で5時間架橋処理を行った。
【0088】
実施例7
酸処理ゼラチンを10mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を5mg、イオン交換水を1mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋された酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子のSEM写真を撮影した(図1)。
【0089】
実施例8
酸処理ゼラチンを10mg、コンドロイチン硫酸−Cを1mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を5mg、アドリアマイシン(和光純薬工業(株)製ドキソルビシン塩酸塩)を0.4mg、イオン交換水を1mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋されたゼラチンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、70nmであった。
【0090】
このナノ粒子分散液を遠心分離し、上澄のエタノールを捨て、生理食塩水を加えてアドリアマイシン濃度が200μg/mLになるように再分散させた。アドリアマイシン量は吸収スペクトル(Abs.480nm)から算出した。再分散後の平均粒径を、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、174nmであった。水溶媒中でも前記光散乱光度計による粒子サイズ測定が可能であることから、粒子中での酵素架橋反応が進行し、架橋により水不溶化したゼラチンナノ粒子を作製できたことが裏付けられる。
【0091】
実施例9
アルブミン20mgを5mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール20mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液に、ポリリジン2mg、下記構造を有する活性物質モデルを0.4mgを混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、200nmであった。
【0092】
(架橋度の評価方法)
ゲルろ過性精製後、タンパク質呈色試薬Protein Assay Dye Reagent Concentrate(Bio Rad製)を用いて、アルブミン濃度を検量し、SHの理論量を計算した。SH基呈色試薬DTNB(同仁化学研究所製)を用いて、グルタチオンを標品として検量線を引き、エタノール分散直後のアルブミンナノ粒子中のSH基を定量したところ、上記アルブミン量から算出した理論量とほぼ一致し、ジスルフィド結合が定量的に還元されたことがわかった。空気中、3時間攪拌した後、再びアルブミンナノ粒子中のSH基を定量し、攪拌前後のSH基の量を比較したところ、空気酸化によって72%のジスルフィド架橋が生成したことが確認された。
【0093】
【化2】

【0094】
実施例10
アルブミン20mgを5mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール20mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液に、コンドロイチン硫酸−Cを2mg、アドリアマイシンを0.4mgを混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、200nmであった。また、実施例1と同様にして、架橋度を評価した結果、70%以上の架橋が確認された。
【0095】
実施例11
トランスフェリン20mgを5mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール20mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたトランスフェリン溶液に、アルブチンを0.4mgを混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋されたトランスフェリンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、150nmであった。また、実施例1と同様にして、架橋度を評価した結果、70%以上の架橋が確認された。
【0096】
実施例12
グロブリン20gmを5mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール20mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液に、ダイキトサン2mg、実施例1で使用したものと同じ活性物質モデルを0.4mgを混合する。前記溶液1mLとダイキトサン1mgを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いてエタノール10mL中に注入した。得られた分散液を空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋したグロブリンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、200nmであった。また、実施例1と同様にして、架橋度を評価した結果、70%以上の架橋が確認された。
【0097】
実施例13
アルブミン20mgを5mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール20mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液2.5mLに塩酸を加え、pH2.5に調整し、アドリアマイシンを0.4mg添加する。この溶液を攪拌子ながらアセトン4mLを滴下した後、空気中で40℃、3時間攪拌することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)を用い測定したところ、100nmであった。また、実施例1と同様にして、架橋度を評価した結果、70%以上の架橋が確認された。
【0098】
実施例14
塩化鉄(III)6水和物10.8gおよび塩化鉄(II)4水和物6.4gをそれぞれ1mol/l(1N)−塩酸水溶液80mlに溶解し混合した。得られた溶液を攪拌しながらその中にアンモニア水(28質量%)96mlを2ml/分の速度で添加した。その後、80℃で30分加熱したのち室温に冷却した。得られた凝集物をデカンテーションにより水で精製した。結晶子サイズ約12nmの酸化鉄の生成をX線回折法により確認した。溶媒をエタノールで置換後、水酸化テトラメチルアンモニウム(25質量%)8mlおよびゼラチン水溶液3mlを添加して60℃で4時間攪拌した。沈殿をろ過した後、水に再分散することにより表面をゼラチンで被覆した酸化鉄ナノ粒子を合成した。
【0099】
上記、酸化鉄ナノ粒子分散液(4.7g/L)を0.21mL、酸処理ゼラチンを20mg、トランスグルタミナーゼ製剤(味の素(株)製アクティバTG-S)を10mg、アドリアマイシンを0.3mg、イオン交換水を1.79mL混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、エタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋された酸処理ゼラチンナノ粒子が得られた。
【0100】
上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、160nmであった。上記粒子のSEM写真を撮影した(図3)。
【0101】
実施例15
酸化鉄ナノ粒子の合成方法は実施例14と同様に行った。
アルブミンを3mLの7Mグアニジン塩酸塩および10mM EDTAを含む0.5Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、ジチオトレイトール10mgを加えて混合、室温で2時間還元する。ゲルろ過精製し、得られたアルブミン溶液に、上記、酸化鉄分散液(4.7g/L)を0.21mL、アドリアマイシンを0.3mg混合する。前記溶液1mLを、外設40℃、800rpmの攪拌条件で、マイクロシリンジを用いて、塩化カルシウム5mgを溶解させたエタノール10mL中に注入した。得られた分散液を外設55℃で5時間静置することで、架橋されたアルブミンナノ粒子が得られた。上記粒子の平均粒経は、光散乱光度計、大塚電子(株)製DLS−7000を用い測定したところ、290nmであった。
【0102】
試験例1
HepG2細胞を20×103 cells/wellの濃度で100μLづつ播種したマイクロプレートに、2μg/mL、5μg/mLの濃度に調整したアドリアマイシン水溶液および実施例8で作製したアドリアマイシンを内包したゼラチンナノ粒子を添加する。72h培養後、2回培地を洗う。セルカウンティングキット-8((株)同仁化学研究所製)を10μLずつ添加し、2.5時間呈色反応を行い、吸光度を測定した(図2)。ナノ粒子に封入することによりアドリアマイシンの毒性が軽減された。
【0103】
試験例2:
実施例8に記載のナノ粒子分散液を室温にて1ヶ月保存後、光散乱光度計(大塚電子(株)製DLS−7000)およびニッキソー(株)製マイクロトラックを用い平均粒経を測定した。
比較例1として、合成ポリマー(PLGA)のナノ粒子分散液であるナノインパクト(ホソカワミクロン製)。
試験例1の測定結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
上記の実施例より、本発明の注射用組成物は粒子の安定性が高いことが分かる。
【0106】
試験例3
実施例14で作製したナノ粒子分散液に磁石を近づけ、磁気応答性を確認した。(図4)
【0107】
試験例4
ウシ血管内皮細胞を20×103 cells/wellの濃度で100μLづつ播種したマイクロプレートに、実施例14で作製したアドリアマイシンを内包したゼラチンナノ粒子を添加した。72h培養後、2回培地を洗浄した。培養前後の細胞の写真を図5に示す。細胞に取り込まれたナノ粒子が集積し、可視化して、黒い点が細胞内に見られる。このことから、患部への取り込みが良いことが予想できる。
【0108】
また、天然高分子を用い、かつ合成化学架橋剤を使用することなく架橋処理しており、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明のゼラチンナノ粒子を撮影した結果を示す。
【図2】図2は、アドリアマイシン水溶液およびアドリアマイシン内包ゼラチンナノ粒子の細胞毒性試験の結果を示す。
【図3】図3は、本発明の酸化鉄ナノ粒子を撮影した結果を示す。図3の下図において、中心の黒い点は酸化鉄を示し、周りの灰色はゼラチンナノ粒子(約150nm)を示す。
【図4】図4は、本発明の酸化鉄ナノ粒子が磁石に引き寄せられた結果を示す。
【図5】図5は、細胞への酸化鉄ナノ粒子が取り込まれた結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分を含有する平均粒径10nm以上300nm以下のタンパク質ナノ粒子を含む、注射用組成物。
【請求項2】
タンパク質の重量に対して、0.1〜100重量%の活性成分を含有する、請求項1に記載の注射用組成物。
【請求項3】
活性成分が、医薬品成分である、請求項1又は2に記載の注射用組成物。
【請求項4】
活性成分が、イオン性物質または脂溶性物質である、請求項1から3の何れかに記載の注射用組成物。
【請求項5】
タンパク質がコラーゲン、ゼラチン、酸処理ゼラチン、アルブミン、オバルブミン、オバルブミン、カゼイン、トランスフェリン、グロブリン、フィブロイン、フィブリン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1から4の何れかに記載の注射用組成物。
【請求項6】
ナノ粒子の形成中および/又は形成後にタンパク質が架橋処理されている、請求項1から5の何れかに記載の注射用組成物。
【請求項7】
酵素を用いて架橋処理を行う、請求項6に記載の注射用組成物。
【請求項8】
有機溶媒中において酵素架橋処理されている、請求項6又は7に記載の注射用組成物。
【請求項9】
タンパク質分子内のジスルフィド結合を用いて架橋処理を行う、請求項6に記載の注射用組成物。
【請求項10】
タンパク質を還元剤で処理してタンパク質分子内のジスルフィド結合を切断した後、該タンパク質のナノ粒子を形成し、さらに該タンパク質を酸化剤で処理を行う、請求項6に記載の注射用組成物。
【請求項11】
磁気応答性粒子を含む、請求項1から10の何れかに記載の注射用組成物。
【請求項12】
磁気応答性粒子が酸化鉄ナノ粒子である、請求項11に記載の注射用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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