説明

注視点計測装置、注視点計測方法、プログラムおよび記憶媒体

【課題】アイトラッキング装置の装着者が無意識にマーカーに視線を向けてしまうことなく、適切な計測を行う。また、対象物体が変形した場合であっても、対象物体の原形画像における注視点の位置を正確に自動計測する。
【解決手段】対応点検索処理31では、実空間特徴点51aおよび原形特徴点51bを抽出し、実空間対応点42aおよび原形対応点42bの組を検索する。平面射影変換行列算出処理33では、視野映像4の座標を原形画像3の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列44を出力する。曲面メッシュ生成処理35では、原形メッシュ43に対して平面射影変換行列44に基づく平面射影変換を行うことで平面メッシュ45を生成し、実空間対応点42aに対して平面射影変換を行うことで平面対応点42cを算出し、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54に基づいて平面メッシュ45を変形することで曲面メッシュ46を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイトラッキング装置を用いて商品等に関する媒体の分析を行うときに、注視点の位置を計測する注視点計測装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品またはサービスに関するブランドを消費者に対して適切に訴求するために、商品等のパッケージデザイン、パンフレット、リーフレット、およびチラシ等、様々な場所に掲示されるポスターおよび看板等、店頭等で用いられるPOP(Point of purchase advertising)、雑誌および新聞等に掲載する広告、ならびに商品の取扱説明書およびサービスの説明文書など(以下、「訴求媒体」という。)の分析が行われている。
訴求媒体の分析では、消費者の消費行動において、商品の認知から選択、購買、使用(またはサービスの認知から選択、契約、利用)までの行動、心理などを分析し、ブランドの価値が消費者に適切に伝えられているかどうかを把握することが重要である。
【0003】
訴求媒体の分析を行うための手法の一つとして、アイトラッキングシステムを利用することが挙げられる。アイトラッキングシステムは、消費者の眼球の動きを測定、分析することで、消費者が無意識に行っている行動も含めて、消費者の行動などを解析するシステムである。
例えば、消費者が商品のパンフレットを手に取り、商品を認知するまでの行動などを分析する場合を考える。アイトラッキングシステムによって、パンフレットに対する消費者の視線の注視点、軌跡、視線停留時間などを知ることで、「消費者がパンフレットで伝えたい部分を見ているのか」、「どのような順序でパンフレットを見ているのか」、「パンフレットの中で見ている時間が最も長い部分はどこか」などを把握することができる。
【0004】
例えば、頭部装着型のアイトラッキング装置では、顔が向いている方向をカメラによって撮影し、撮影した映像に装着者の視線の注視点をマッピングすることができる。訴求媒体の分析を行うためには、装着者が対象物体のどの位置を見ているのかを示す情報(対象物体内の注視点の位置)が非常に重要であるが、頭部の動きに合わせてカメラも動くため、撮影した映像における対象物体の位置が変化する。その為、対象物体内の注視点の位置は、分析者が目視によって確認、または特定することが一般的である。しかしながら、分析における人的負荷が非常に大きく、時間と費用の面で大きな課題となっている。
【0005】
前述の人的負荷をなくすために、対象物体内の注視点の位置をコンピュータによって自動的に特定する技術がいくつか開発されている。
例えば、特許文献1に記載の技術では、対象物体の四隅にマーカーを付ける。アイカメラによって撮影された映像の1フレーム目からマーカーの座標を認識し、対象物体内の注視点座標に変換するパラメータを算出する。2フレーム目以降は、1フレーム目からのマーカーのずれに合わせて、対象物体内の注視点座標への変換をずらす。
また、例えば、特許文献2に記載の技術では、アイカメラによって撮影された映像のフレームごとにマーカーの座標を認識し、対象物体内の注視点座標に変換するパラメータをフレームごとに算出し直す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】昭62−53630号公報
【0007】
【特許文献2】平3−77533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、マーカーの平行移動によるずれにのみ対応している為、頭部や対象物体の回転に対応できない。これに対して、特許文献2に記載の技術では、頭部や対象物体の回転に対応することはできる。しかし、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、ともに、対象物体の四隅にマーカーが必要である。マーカーは、画像処理で自動的に認識する必要があるため、目立つ形状や色にする必要がある。マーカーが訴求媒体よりも目立つことから、無意識にマーカーに視線が向いてしまい、適切な計測を行うことができない。また、アイトラッキング装置によって撮影された映像(以下、「視野映像」という。)からマーカーが外れた場合に計測を行うことができない。
更に、特許文献1および特許文献2に記載の技術は、平面かつ変形しない対象物体にしか適用できない。
【0009】
前述したように、パンフレットなどの訴求媒体については、消費者が手に取って観察することが通常であり、訴求媒体の端が湾曲したり、訴求媒体の内部に凹凸が生じたりするなど平行移動や回転とは異なる変形が起こる。
一方、訴求媒体の分析を行う際は、レイアウトソフトなどによって作成された訴求媒体のレイアウト画像など、対象物体(=訴求媒体)の原形(変形していない状態)の画像(以下、「原形画像」という。)を準備し、視野映像内のアイマークの位置と対応付けて、原形画像における注視点の位置を特定する。仮に、視野映像における対象物体の変形を無視すると、対象物体の原形画像における注視点の位置は正確に特定することができない。
従って、シート、紙、フィルムなど剛性が低い素材の訴求媒体の分析においては、依然として、分析者が目視によって視野映像と原形画像を比較し、原形画像における注視点の位置の特定をしなくてはならない。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、アイトラッキング装置の装着者の視線が無意識にマーカーに向いてしまうことがなく、視野映像からマーカーが外れても適切な計測を行うことができる注視点計測装置等を提供することである。また、剛性が低い素材の訴求媒体を対象物体としたときに、対象物体が変形した場合であっても、対象物体の原形画像における注視点の位置を正確に自動計測することができる注視点計測装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために第1の発明は、アイトラッキング装置によって撮影された映像である視野映像内のアイマークの位置と対応付けて、前記視野映像に含まれる対象物体の原形画像における注視点の位置を計測する注視点計測装置であって、前記視野映像の特徴点である実空間特徴点および前記原形画像の特徴点である原形特徴点を抽出し、前記実空間特徴点の集合および前記原形特徴点の集合に基づいて、前記視野映像と前記原形画像とを対応づける対応点の組として、前記視野映像の対応点である実空間対応点および前記原形画像の対応点である原形対応点の組を検索する対応点検索手段と、前記実空間対応点および前記原形対応点の組の集合に基づいて、前記視野映像の座標を前記原形画像の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列を算出する変換行列算出手段と、を具備することを特徴とする注視点計測装置である。
第1の発明では、注視点の位置を特定するためのマーカーが不要な為、アイトラッキング装置の装着者が無意識にマーカーに視線を向けてしまうことがなく、適切な計測を行うことができる。
【0012】
第1の発明は、前記原形画像のメッシュである原形メッシュを生成する原形メッシュ生成手段と、前記原形メッシュに対して前記平面射影変換行列に基づく平面射影変換を行うことで前記視野映像の平面メッシュを生成する平面メッシュ生成手段と、前記実空間対応点に対して前記平面射影変換を行うことで平面対応点を算出し、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれに基づいて前記平面メッシュを変形することで前記視野映像の曲面メッシュを生成する曲面メッシュ生成手段と、を更に具備することが望ましい。
これによって、剛性が低い素材の訴求媒体を対象物体としたときに、対象物体が変形した場合であっても、対象物体の原形画像における注視点の位置を正確に自動計測することができる。
【0013】
また、第1の発明における前記曲面メッシュ生成手段は、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれと変形の複雑度とを含む判定式に基づいて前記平面メッシュを繰り返し変形することで、最適な前記曲面メッシュを生成することが望ましい。
これによって、滑らかな変形によって位置ずれの修正を行うことができる。
【0014】
また、第1の発明における前記曲面メッシュ生成手段は、例えば、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれが閾値よりも大きい対応点の組は、前記判定式の算出処理に採用しない。これによって、誤って対応づけられた可能性が高い対応点の組を除外して、判定式の算出処理に採用する対応点の組を選択することができる。
この場合、前記閾値は、前記平面メッシュの変形を繰り返すごとに小さくしていくことが望ましい。これによって、繰り返しの序盤、繰り返しの終盤のそれぞれの場合において、適切な対応点の組を使用して適切な変形を行うことができる。
【0015】
また、第1の発明における前記曲面メッシュ生成手段は、例えば、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれが大きい方から一定の数の対応点の組は、前記判定式の算出処理に採用しない。これによって、誤って対応づけられた可能性が高い対応点の組を除外して、判定式の算出処理に採用する対応点の組を選択することができる。
この場合、前記一定の数は、前記平面メッシュの変形を繰り返すごとに増やしていくことが望ましい。これによって、繰り返しの序盤、繰り返しの終盤のそれぞれの場合において、適切な対応点の組を使用して適切な変形を行うことができる。
【0016】
また、第1の発明は、前記視野映像内のアイマークを含む前記平面メッシュまたは前記曲面メッシュの要素と対応する前記原形メッシュの要素が、前記注視点を含むものとして前記注視点の位置を特定する注視点位置特定手段、を更に具備することが望ましい。
これによって、注視点を含む原形メッシュの要素を注視点の位置として特定することができる。注視点の位置は、メッシュの大きさを細かく設定することで、より詳細に特定することができる。
【0017】
第2の発明は、アイトラッキング装置によって撮影された映像である視野映像内のアイマークの位置と対応付けて、前記視野映像に含まれる対象物体の原形画像における注視点の位置を計測する注視点計測方法であって、前記視野映像の特徴点である実空間特徴点および前記原形画像の特徴点である原形特徴点を抽出し、前記実空間特徴点の集合および前記原形特徴点の集合に基づいて、前記視野映像と前記原形画像とを対応づける対応点の組として、前記視野映像の対応点である実空間対応点および前記原形画像の対応点である原形対応点の組を検索する対応点検索ステップと、前記実空間対応点および前記原形対応点の組の集合に基づいて、前記視野映像の座標を前記原形画像の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列を算出する変換行列算出ステップと、を含むことを特徴とする注視点計測方法である。
第2の発明では、注視点の位置を特定するためのマーカーが不要な為、アイトラッキング装置の装着者が無意識にマーカーに視線を向けてしまうことがなく、適切な計測を行うことができる。
【0018】
第2の発明は、前記原形画像のメッシュである原形メッシュを生成する原形メッシュ生成ステップと、前記原形メッシュに対して前記平面射影変換行列に基づく平面射影変換を行うことで前記視野映像の平面メッシュを生成する平面メッシュ生成ステップと、前記実空間対応点に対して前記平面射影変換を行うことで平面対応点を算出し、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれに基づいて前記平面メッシュを変形することで前記視野映像の曲面メッシュを生成する曲面メッシュ生成ステップと、を更に含むことが望ましい。
これによって、剛性が低い素材の訴求媒体を対象物体としたときに、対象物体が変形した場合であっても、対象物体の原形画像における注視点の位置を正確に自動計測することができる。
【0019】
第3の発明は、コンピュータを第1の発明の注視点計測装置として機能させるためのプログラムである。
ネットワークを介して第3の発明を配布し、汎用的なコンピュータにインストールすることで、第1の発明の注視点計測装置を提供することができる。
【0020】
第4の発明は、コンピュータを第1の発明の注視点計測装置として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体である。
汎用的なコンピュータが備える記憶媒体読取装置に第4の発明を装着し、汎用的なコンピュータに第4の発明が記憶するプログラムをインストールすることで、第1の発明の注視点計測装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、アイトラッキング装置の装着者が無意識にマーカーに視線を向けてしまうことがなく、視野映像からマーカーが外れても適切な計測を行うことができる注視点計測装置等を提供することができる。また、剛性が低い素材の訴求媒体を対象物体としたときに、対象物体が変形した場合であっても、対象物体の原形画像における注視点の位置を正確に自動計測することができる注視点計測装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る注視点計測システムの概要を示す図
【図2】原形画像3と視野映像4の模式図
【図3】注視点計測装置1のハードウエア構成図
【図4】アイトラッキング装置2のハードウエア構成図
【図5】注視点計測装置1に係るデータと処理の流れを示す図
【図6】対応点検索処理31を説明する図
【図7】原形メッシュ43の模式図
【図8】平面射影変換行列算出処理33の流れを示すフローチャート
【図9】平面射影変換行列44の一例を示す図
【図10】平面射影変換行列44の一例を示す図
【図11】平面メッシュ生成処理34、曲面メッシュ生成処理35の流れを示すフローチャート
【図12】平面メッシュ45の一例を示す図
【図13】実空間対応点42aと平面対応点42cとの位置ずれ54を説明する図
【図14】曲面メッシュ46の一例を示す図
【図15】注視点位置48の算出処理の一例を説明する図
【図16】判定式の算出処理に採用する対応点の組の選択処理の第1の例を示すフローチャート
【図17】判定式の算出処理に採用する対応点の組の選択処理の第2の例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る注視点計測システムの概要を示す図である。図2は、原形画像3と視野映像4の模式図である。
図1に示すように、本発明に係る注視点計測システムは、注視点計測装置1、アイトラッキング装置2等から構成される。
本発明に係る注視点計測システムは、図2に示す対象物体5が、剛性が低い素材の訴求媒体であるときに最適である。本発明によって訴求媒体の注視点計測を行うことで、訴求媒体の分析における人的負荷が飛躍的に軽減される。ここで、剛性が低い素材とは、人力によって容易に変形できる程度の素材を意味する。剛性が低い素材の一例としては、シート、紙、フィルムなどが挙げられるが、これらの例に限定されるわけではない。
【0024】
注視点計測装置1は、アイトラッキング装置2によって撮影された映像である視野映像4内のアイマーク6の位置と対応付けて、対象物体5の静止画像である原形画像3における注視点7の位置を計測する。
原形画像3とは、対象物体5の原形の画像、すなわち人力などによって変形されていない画像である。原形画像3は、文字、図形、記号、写真などを含む。対象物体5が訴求媒体の場合、原形画像3は、例えば、レイアウトソフトをインストールしたコンピュータによって生成されるレイアウト画像である。原形画像3は、注視点計測装置1に格納されている。
【0025】
アイトラッキング装置2は、例えば、頭部装着型であって、装着者の顔が向いている方向をカメラによって撮影し、撮影した視野映像4に装着者の視線の注視点をアイマークとしてマッピングする。撮影した視野映像4は、注視点計測装置1に送信される。
【0026】
図2に示すように、原形画像3は、2次元平面の形状を有する。図2では、原形画像3を模式的に示している。原形画像3の上部の斜線部は、同様の模様および色彩が付されていることを示している。原形画像3内部の矩形は、写真を示している。原形画像3内部の複数の横線は、文章を示している。
【0027】
また、図2に示すように、視野映像4は、対象物体5を含む。図2では、視野映像4を模式的に示している。視野映像4に含まれる対象物体5は、人力などによって不規則に変形され、端が湾曲したり、訴求媒体の内部に凹凸が生じたりしている。尚、図面を分かりやすくする為、人間の手やテーブルなど、実際には実空間に存在する物体を省略し、対象物体5を除く領域は全て空白としている。
【0028】
アイトラッキング装置2は、視野映像4内において、対象物体5と、その他の物体や背景とを区別することができない。アイトラッキング装置2は、単にアイトラッキング装置2の装着者が視野映像4内のどこを見ているかをアイマーク6としてマッピングするのみである。従って、例えば、装着者が対象物体5から目を離せば、アイマーク6が対象物体5ではない領域にマッピングされるが、アイトラッキング装置2は、装着者が対象物体5から目を離したことは認識できない。
【0029】
次に、図3、図4を参照しながら、注視点計測装置1およびアイトラッキング装置2のハードウエア構成について説明する。
図3は、注視点計測装置1のハードウエア構成図である。尚、図3のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0030】
注視点計測装置1は、制御部11、記憶部12、メディア入出力部13、通信制御部14、入力部15、表示部16、周辺機器I/F部17等が、バス18を介して接続される。
【0031】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0032】
CPUは、記憶部12、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス18を介して接続された各装置を駆動制御し、注視点計測装置1が行う後述する処理を実現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部12、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0033】
記憶部12は、HDD(ハードディスクドライブ)であり、制御部11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OS(オペレーティングシステム)に相当する制御プログラムや、後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。
これらの各プログラムコードは、制御部11により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
また、記憶部12には、原形画像3が格納されている。
【0034】
メディア入出力部13(ドライブ装置)は、データの入出力を行い、例えば、CDドライブ(−ROM、−R、−RW等)、DVDドライブ(−ROM、−R、−RW等)等のメディア入出力装置を有する。
通信制御部14は、通信制御装置、通信ポート等を有し、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、他のコンピュータ間との通信制御を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。
【0035】
入力部15は、データの入力を行い、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置を有する。
入力部15を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。
表示部16は、液晶パネル等のディスプレイ装置、ディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0036】
周辺機器I/F(インタフェース)部17は、コンピュータに周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器I/F部17を介してコンピュータは周辺機器とのデータの送受信を行う。周辺機器としては、例えば、アイトラッキング装置2等がある。周辺機器I/F部17は、USBやIEEE1394やRS−232C等で構成されており、通常複数の周辺機器I/Fを有する。周辺機器との接続形態は有線、無線を問わない。
バス18は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0037】
図4は、アイトラッキング装置2のハードウエア構成図である。尚、図4のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。
【0038】
アイトラッキング装置2は、制御部21、記憶部22、視野カメラ23、アイマーク検出部24、電源部25、スイッチ26、外部出力部27等が、バス28を介して接続される。
【0039】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0040】
CPUは、記憶部22、ROM等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス28を介して接続されたアイトラッキング装置2の各装置を駆動制御現する。
ROMは、不揮発性メモリであり、プログラム、データ等を恒久的に保持している。
RAMは、揮発性メモリであり、記憶部22、ROM等からロードしたプログラム、データ、視野カメラ23が撮影した視野映像4、アイマーク検出部24が検出したアイマーク6の位置を示す座標データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0041】
記憶部22は、制御部21が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。各プログラムコードは、制御部21により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて実行される。
【0042】
視野カメラ23は、装着者の顔が向いている方向を撮影する。
アイマーク検出部24は、装着者の眼球を撮影し、撮影された眼球画像から装着者の眼球運動、向き(視線)を解析し、視野映像4にアイマーク6を重ねて記憶するとともに、アイマーク6の位置を示す座標データを記憶する。
【0043】
電源部25は、アイトラッキング装置2の起電力を供給する。電源部25は、内蔵型のバッテリでも良いし、外部からの電力を伝送するアダプタでも良い。
スイッチ26は、アイトラッキング装置2の電源のON、OFFや、各種のキャリブレーションなどを行うための入力装置である。
外部出力部27は、視野映像4、アイマーク6の位置を示す座標データなどを外部に出力する。外部出力部27は、有線であっても良いし、無線であっても良い。
【0044】
次に、図5から図17を参照しながら、注視点計測装置1が行う処理について説明する。
図5は、注視点計測装置1に係るデータと処理の流れを示す図である。図5に示すように、注視点計測装置1の制御部11は、対応点検索処理31、原形メッシュ生成処理32、平面射影変換行列算出処理33、平面メッシュ生成処理34、曲面メッシュ生成処理35、注視点位置特定処理36、表示処理37等を実行する。
【0045】
対応点検索処理31では、制御部11は、アイトラッキング装置2から受信する視野映像4、記憶部12に格納されている原形画像3を入力し、視野映像4と原形画像3とを対応づける点である対応点42の組を出力する。
【0046】
図6は、対応点検索処理31を説明する図である。
対応点検索処理31では、制御部11は、視野映像4の特徴点である実空間特徴点51aおよび原形画像3の特徴点である原形特徴点51bを抽出し、実空間特徴点51aおよび原形特徴点51bの集合に基づいて、視野映像4と原形画像3とを対応づける対応点42の組として、視野映像4の対応点42である実空間対応点42aおよび原形画像3の対応点42である原形対応点42bの組を検索する。
図6では、実空間特徴点51aおよび原形特徴点51bを黒丸によって示している。
【0047】
対応点検索処理31を実現する手法としては、例えば、SIFT(Scale Invariant Feature Transfrom)などが知られている。SIFTでは、画像中から特徴点の抽出と特徴量の記述を行う手法である。各特徴点には、スケールと、様々な特徴量を示す128次元ベクトルが定義される。そして、128次元ベクトル間のユークリッド距離を用いて、実空間特徴点51aの集合および原形特徴点51bの集合から対応点42の組を探索する。最も小さい距離の組(実空間特徴点51aと原形特徴点51bの組)が対応点42の組の候補となるが、2番目に小さい距離を持つ組との差が一定の値以上の場合にのみ、対応点42の組と判定する。すなわち、対応点42の組と判定されない実空間特徴点51a、原形特徴点51bが存在する。これは、特徴量の近い特徴点が複数存在する場合、誤って対応づけることを防止するためである。
後述する平面射影変換行列算出処理33の入力としては、4つ以上の対応点42の組が存在すれば良い。対応点42の組が少ないことよりも、誤って対応づけた対応点42の組が存在することの方が、平面射影変換行列算出処理33の精度を低くする為、対応点検索処理31では、出来る限り、誤って対応づけた対応点42の組を出力しないようにする。
【0048】
SIFTは、対象物体5の回転、サイズ変化、照明変化の影響を受けにくいという効果がある。但し、本発明に係る対応点検索処理31は、SIFTに限定されるわけではなく、適宜公知の技術を適用することができる。
【0049】
図5の説明に戻る。
原形メッシュ生成処理32では、制御部11は、記憶部12に格納されている原形画像3を入力し、原形画像3のメッシュである原形メッシュ43を出力する。メッシュとは、任意の多角形(例えば、三角形、四角形など)を最小単位として、計算対象領域が細かく分割されたものである。メッシュサイズ(正三角形、正四角形などであれば、一辺の大きさ)は、用途に応じてユーザが適宜決定することができる。
原形メッシュ生成処理32では、公知の技術により、例えば、原形画像3を任意の多角形によって等分割する。
【0050】
図7は、原形メッシュ43の模式図である。図7に示す原形メッシュ43は、図6に示す原形画像3を三角形によってメッシュ分割したものである。制御部11は、各三角形を識別するIDとともに、各三角形の頂点の座標を記憶部12に記憶する。
【0051】
図5の説明に戻る。
平面射影変換行列算出処理33では、制御部11は、原形メッシュ生成処理32によって出力される対応点42の組を入力し、実空間対応点42aおよび原形対応点42bの組の集合に基づいて、視野映像4の座標を原形画像3の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列44を出力する。
【0052】
前述の対応点検索処理31では、誤って対応づけられた対応点42の組が出力される可能性がある。平面射影変換行列算出処理33において、誤って対応づけられた対応点42の組を採用して計算すると、正確な平面射影変換行列44を得ることはできない。本発明の平面射影変換行列算出処理33では、誤って対応づけられた対応点42の組を採用して計算しないように、例えば、RANSAC(RANdom SAmple Consensus)と呼ばれる手法を用いる。
【0053】
図8は、平面射影変換行列算出処理33の流れを示すフローチャートである。図9、図10は、平面射影変換行列44の一例を示す図である。
図8に示すフローチャートは、基本的には、RANSACによる算出処理を示している。図9、図10において、碁盤の目のように引かれた罫線は、平面の変形や各点の位置を把握し易いように付したものである。
【0054】
制御部11は、全ての対応点42の組の中から平面射影変換行列44の計算に採用する点を乱数によって決定する(S101)。
図9、図10では、視野映像4における実空間対応点42aが、番号が付された正方形によって示されている。図9、図10に示す例では、6つの実空間対応点42aが存在する。制御部11は、平面射影変換行列44の計算に採用する点として、6つの実空間対応点42aの中から、例えば、4つの実空間対応点42aを乱数によって決定する。
図9の例では、「1」、「2」、「3」、「4」の実空間対応点42aを行列計算に採用する点としている。また、図10の例では、「1」、「3」、「4」、「6」の実空間対応点42aを行列計算に採用する点としている。
【0055】
次に、制御部11は、算出した平面射影変換行列44を用いて、視野映像4の全ての対応点42の組を変換し、原形画像3における変換点52とする(S102)。
図9、図10では、原形画像3における変換点52が、番号が付された正方形によって示されている。また、図9、図10では、後述するS103にて参照される、原形画像3における原形対応点42bが、番号が付された円によって示されている。
【0056】
次に、制御部11は、原形対応点42bと位置が一致する変換点52の数を算出する(S103)。ここで、位置が一致するとは、x座標とy座標が完全一致する場合だけでなく、原形対応点42bと変換点52とのユークリッド距離が一定の値以内の場合も含むものとする。また、位置が一致するどうかの比較対象は、変換点52の変換元である実空間対応点42aと対応づけられている原形対応点42bのみとする。
図9、図10では、原形対応点42bと変換点52の位置が一致していることを円と正方形の重なりによって示している。
図9の例では、原形対応点42bと位置が一致する変換点52の数は、「2」の1つだけである。また、図10の例では、原形対応点42bと位置が一致する変換点52の数は、「1」、「3」、「6」の3つである。
【0057】
次に、制御部11は、終了条件を満たすかどうか確認する(S104)。
終了条件は、例えば、繰り返し処理の回数、すなわち、S101からS103までの処理を所定の回数実行することである。
また、終了条件は、例えば、原形対応点42bと位置が一致する変換点52の数、すなわち、S103の算出結果が所定の数を上回ることである。
終了条件を満たさない場合(S104のNo)、制御部11は、S101から繰り返す。
終了条件を満たす場合(S104のYes)、制御部11は、S105に進む。
【0058】
次に、制御部11は、原形対応点42bと位置が一致する変換点52の数が最も多い平面射影変換行列44を最適解として記憶部12またはRAMに保存する(S105)。
図9、図10の例を比較すると、図10の方が、原形対応点42bと一致する変換点52の数が多いことから、「1」、「3」、「4」、「6」の実空間対応点42aを採用して算出した平面射影変換行列44が最適解となる。
尚、図2で対象物体5が湾曲等をしていない平面であれば、平面射影変換行列44が求められると、前述した原形メッシュ生成処理32、および後述する平面メッシュ生成処理34、曲面メッシュ生成処理35を行わなくても、視野映像4内のアイマーク6の位置座標から原形画像3の注視点7を求めることができる。
【0059】
図5の説明に戻る。
平面メッシュ生成処理34では、制御部11は、平面射影変換行列算出処理33によって出力される平面射影変換行列44、対応点検索処理31によって出力される対応点42の組、原形メッシュ生成処理32によって出力される原形メッシュ43を入力し、視野映像4の平面メッシュ45を出力する。
また、曲面メッシュ生成処理35では、制御部11は、平面メッシュ生成処理3によって出力される平面メッシュ45を入力し、視野映像4の曲面メッシュ46を出力する。
【0060】
図11は、平面メッシュ生成処理34、曲面メッシュ生成処理35の流れを示すフローチャートである。図12は、平面メッシュ45の一例を示す図である。図13は、実空間対応点42aと平面対応点42cとの位置ずれ54を説明する図である。図14は、曲面メッシュ46の一例を示す図である。
【0061】
平面メッシュ生成処理34では、制御部11は、原形メッシュ43に対して平面射影変換行列44に基づく平面射影変換を行うことで視野映像4の平面メッシュ45を生成する。
また、曲面メッシュ生成処理35では、制御部11は、平面メッシュ45に対して、実空間対応点42aに対して平面射影変換を行うことで平面対応点42cを算出し、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54に基づいて平面メッシュ45を変形することで視野映像4の曲面メッシュ46を生成する。
【0062】
図11に示すように、制御部11は、図8のS105にて算出した平面射影変換行列44の最適解の逆行列を用いて、原形メッシュ43の平面射影変換を行うことで平面メッシュ45を生成する(S201)。
図12では、原形メッシュ43から平面メッシュ45への変換を示している。説明の都合上、平面メッシュ45は、視野映像4における対象物体5に重ねて示している。
図2に示すように、対象物体5の端が湾曲したり、内部に凹凸が生じたりしている場合、図12に示すように、平面メッシュ45は、不規則に変形した視野映像4の対象物体5とずれが生じる。これに対して、後述する曲面メッシュ生成処理35を行うことで、対象物体5の端が湾曲したり、内部に凹凸が生じたりすることによるずれを修正し、注視点7の位置を正確に特定することできる。
【0063】
次に、制御部11は、平面メッシュ45を対応点42の組の集合(実空間対応点42aおよび平面対応点42cの集合)に合わせて位置合わせを行う(S202)。
具体的には、制御部11は、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54と、変形の複雑度とを含む判定式に基づいて平面メッシュ45を変形する。判定式は、次に示す式(1)である。
【0064】
【数1】

【0065】
式(1)のSは、平面メッシュ45の各要素の頂点の集合であって、行列である。ε(S)が判定式である。λは、調整用パラメータである。ε(S)は、変形の複雑度である。ε(S)は、実空間対応点42aと平面対応点42cとの位置ずれ54に基づく値である。
式(2)のnは、平面メッシュ45の各要素を示す添字である。Nは、平面メッシュ45の要素数である。ε(S(n))は、式(2)に示すように、例えば、変形前後の各辺の差の二乗和の平方根である。差の二乗和の平方根に代えて、差の二乗和、分散、標準偏差などを採用しても良い。l(n)は、要素nの変形前の辺の長さである。l´(n)は、要素nの変形後の辺の長さである。要素が三角形の場合、辺が3つなので、i=1〜3である。また、要素が四角形の場合、辺が4つなので、i=1〜4となる。
式(3)のkは、対応点42の組を示す添字である。Kは、対応点42の組の数である。ε(S(k))は、式(3)に示すように、例えば、実空間対応点42aと平面対応点42cとのユークリッド距離である。x(k)、y(k)は、実空間対応点42aのx座標、y座標である。x(k)、y(k)は、平面対応点42cのx座標、y座標である。
【0066】
ε(S)は、変形が複雑であれば、値が大きくなる。また、ε(S)は、位置ずれ54が大きければ、値が大きくなる。
制御部11は、単純な変形、すなわち滑らかな変形によって、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54を小さくし、平面対応点42cの位置と実空間対応点42aの位置が合うように位置合わせする為、式(1)に示す判定式ε(S)を最小化するSを算出する。従って、制御部11は、式(1)に示す判定式ε(S)の偏微分が0となるSを算出する。
【0067】
次に、制御部11は、S202における位置合わせの結果に基づいて、平面メッシュ45を変形する(S203)。ここでは、制御部11は、S202にて算出された平面メッシュ45の各要素の頂点の集合Sに基づいて、平面メッシュ45の各要素の頂点を移動させれば良い。S203の変形では、要素の数は変わらないが、要素の面積、形状が変化する。
【0068】
次に、制御部11は、終了条件を満たすかどうか確認する(S204)。
終了条件は、例えば、繰り返し処理の回数、すなわち、S202からS203までの処理を所定の回数実行することである。
また、終了条件は、例えば、位置ずれ54の最大値、すなわち、S202において算出する平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54の最大値が一定の値以下になることである。
終了条件を満たさない場合(S204のNo)、制御部11は、S202から繰り返す。
終了条件を満たす場合(S204のYes)、制御部11は、S205に進む。
【0069】
図13では、実空間対応点42aが、番号が付された正方形によって示され、平面対応点42cが、番号が付された円によって示されている。図13の例では、対応点42の組の識別番号が「1」、「2」、「5」、「6」については、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54が大きい。一方、対応点42の識別番号が「3」、「4」については、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54が小さい。
制御部11がS202からS203の処理を繰り返すことで、図13に示す位置ずれ54は、次第に小さくなっていく。
【0070】
次に、制御部11は、現時点での変形した平面メッシュ45を曲面メッシュ46として記憶部12に保存する(S205)。制御部11は、平面メッシュ45を繰り返し変形することで、最適な曲面メッシュ46を生成する。
図14では、曲面メッシュ46の模式図を示している。図11に示す処理を行うことで、視野映像4の対象物体5が正確に表現された曲面メッシュ46が生成される。図14に示すように、曲面メッシュ46の領域は、視野映像4の対象物体5の領域と一致している。また、曲面メッシュ46の各要素は、平面メッシュ45の各要素と比較して、対象物体5の端の湾曲や内部の凹凸などの変形に応じて、位置、大きさ、形状が変形されている。
【0071】
図5の説明に戻る。
注視点位置特定処理36では、制御部11は、アイトラッキング装置2から受信するアイマーク位置47、曲面メッシュ生成処理35によって出力される曲面メッシュ46(または、平面メッシュ生成処理34によって出力される平面メッシュ45)を入力し、注視点位置48を出力する。
図14に示すように、視野映像4におけるアイマーク位置47に基づいて、曲面メッシュ46(または平面メッシュ45)のアイマークを含む要素56が判定できる。曲面メッシュ46(または平面メッシュ45)と原形メッシュ43の各要素は、それぞれ対応づけられているので、曲面メッシュ46(または平面メッシュ45)のアイマークを含む要素56と対応する原形メッシュ43の要素が、注視点を含む要素57と特定される。そして、制御部11は、アイマークを含む要素56、注視点を含む要素57、およびアイマーク位置47に基づいて、注視点位置48を算出し、出力する。
【0072】
図15は、注視点位置48の算出処理の一例を説明する図である。
図15には、アイマークを含む要素56と注視点を含む要素57が図示されている。点A、B、Cは、アイマークを含む要素56(曲面メッシュ46または平面メッシュ45の三角形)の頂点であり、点A、B、Cの座標は既知である。同様に、点A’、B’、C’は、注視点を含む要素57(原形メッシュ43の三角形)の頂点であり、点A’、B’、C’の座標は既知である。また、点Pはアイマーク位置47であり、点Pの座標は既知である。
ここで、三角形PBC、PCA、PABの面積比を(α、β、γ)とすると、点A、B、C、Pの座標が既知であることから、(α、β、γ)は算出可能である。
更に、点P’を注視点位置48とする。また、三角形P’B’C’、P’C’A’、P’A’B’の面積比を(α’、β’、γ’)とする。
制御部11は、例えば、(α’、β’、γ’)=(α、β、γ)となる点P’の座標を算出し、注視点位置48の座標として出力する。
但し、注視点位置48の算出処理は、この例に限定されるわけではなく、適宜公知の技術を適用することができる。
【0073】
前述した位置合わせ処理(図11のS202)の説明では、式(3)のε(S)は、全ての対応点42の組(k=1、・・・、K)を用いて算出したが、本発明はこの例に限定されない。
前述したように、対応点検索処理31では、誤って対応づけられた対応点42の組が出力される可能性がある。誤って対応づけられた対応点42の組は、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54が大きくなる。一方、図11のS202では、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54を小さくするように位置合わせを行う。従って、制御部11は、誤って対応づけられた対応点42の組の位置を合わせるように処理を行ってしまい、正確な曲面メッシュ46を生成することができない場合がある。
【0074】
以下では、図16、図17を参照しながら、誤って対応づけられた対応点42の組を判定式の算出から除外するために、判定式の算出処理に採用する対応点42の組の選択処理について説明する。
【0075】
図16は、判定式の算出処理に採用する対応点の組の選択処理の第1の例を示すフローチャートである。
制御部11は、対応点42の組を1つ選択し(S301)、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54を算出する(S302)。
次に、制御部11は、S302の算出結果が閾値以内かどうか確認する(S303)。
S302の算出結果が閾値以内の場合(S303のYes)、制御部11は、S301にて選択した対応点42の組を判定式の算出処理に採用し(S304)、S305に進む。
S302の算出結果が閾値よりも大きい場合(S303のNo)、制御部11は、S301にて選択した対応点42の組を判定式の算出処理に採用せずに、S305に進む。
【0076】
次に、制御部11は、全ての対応点42の組に対して処理が終了したかどうか確認する(S305)。
全ての対応点42の組に対して処理が終了していない場合(S305のNo)、制御部11は、S301から処理を繰り返す。
全ての対応点42の組に対して処理が終了している場合(S305のYes)、制御部11は、処理を終了する。
【0077】
図16の処理によって、誤って対応づけられた可能性が高い対応点42の組を除外して、判定式の算出処理に採用する対応点42の組を選択することができる。
【0078】
尚、S303の閾値は、平面メッシュ45の変形を繰り返すごとに小さくしていくことが望ましい。
閾値を適切に変更していくことで、繰り返しの序盤では、多くの対応点42の組(誤って対応づけられた対応点42の組もある程度含む。)を使用して大まかな変形を行うことができる。
また、繰り返しの終盤では、少ない対応点42の組(誤って対応づけられた対応点42の組がほとんどない。)を使用して正確に細かい変形を行うことができる。
【0079】
図17は、判定式の算出処理に採用する対応点の組の選択処理の第2の例を示すフローチャートである。
制御部11は、対応点42の組を1つ選択し(S401)、平面対応点42cと実空間対応点42aとの位置ずれ54を算出する(S402)。
次に、制御部11は、全ての対応点42の組に対して処理が終了したかどうか確認する(S403)。
全ての対応点42の組に対して処理が終了していない場合(S403のNo)、制御部11は、S401から処理を繰り返す。
全ての対応点42の組に対して処理が終了している場合(S403のYes)、制御部11は、S404に進む。
【0080】
次に、制御部11は、位置ずれ54が最も大きい対応点42の組を除く対応点42の組を判定式の算出処理に採用する(S404)。ここで、除外する対応点42の組は、位置ずれ54が最も大きい対応点42の組ではなく、位置ずれ54が大きい方から一定の数の対応点42の組としても良い。
【0081】
図17の処理によって、誤って対応づけられた可能性が高い対応点42の組を除外して、判定式の算出処理に採用する対応点42の組を選択することができる。
【0082】
尚、S404において、位置ずれ54が大きい方から一定の数の対応点42の組を除外する場合、一定の数は、平面メッシュ45の変形を繰り返すごとに増やしていくことが望ましい。
一定の数を適切に変更していくことで、第1の例と同様、繰り返しの序盤、繰り返しの終盤のそれぞれの場合において、適切な対応点42の組を使用して適切な変形を行うことができる。
【0083】
第1の例および第2の例において適切な変形を行うことができる理由は、次の通りである。誤って対応づけられた対応点42は、位置合わせの修正がばらばらになる。一方、正しく対応づけられた対応点42は、同じ方向に修正を行うため、誤って対応づけられた対応点42が含まれていても、全体としては正しい方向への修正量が大きくなる。
【0084】
以上、詳細に説明した通り、本発明に係る注視点計測装置1は、注視点の位置を特定するためのマーカーが不要な為、アイトラッキング装置2の装着者が無意識にマーカーに視線を向けてしまうことがなく、適切な計測を行うことができる。また、剛性が低い素材の訴求媒体を対象物体5としたときに、対象物体5が変形した場合であっても、対象物体5の原形画像3における注視点の位置を正確に自動計測することができる。
【0085】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る注視点計測装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0086】
1………注視点計測装置
2………アイトラッキング装置
3………原形画像
4………視野映像
5………対象物体
6………アイマーク
7………注視点
31………対応点検索処理
32………原形メッシュ生成処理
33………平面射影変換行列算出処理
34………平面メッシュ生成処理
35………曲面メッシュ生成処理
36………注視点位置特定処理
42………対応点
42a………実空間対応点
42b………原形対応点
42c………平面対応点
43………原形メッシュ
44………平面射影変換行列
45………平面メッシュ
46………曲面メッシュ
47………アイマーク位置
48………注視点位置
51a………実空間特徴点
51b………原形特徴点
52………変換点
54………位置ずれ
56………アイマークを含む要素
57………注視点を含む要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイトラッキング装置によって撮影された映像である視野映像内のアイマークの位置と対応付けて、前記視野映像に含まれる対象物体の原形画像における注視点の位置を計測する注視点計測装置であって、
前記視野映像の特徴点である実空間特徴点および前記原形画像の特徴点である原形特徴点を抽出し、前記実空間特徴点の集合および前記原形特徴点の集合に基づいて、前記視野映像と前記原形画像とを対応づける対応点の組として、前記視野映像の対応点である実空間対応点および前記原形画像の対応点である原形対応点の組を検索する対応点検索手段と、
前記実空間対応点および前記原形対応点の組の集合に基づいて、前記視野映像の座標を前記原形画像の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列を算出する変換行列算出手段と、
を具備することを特徴とする注視点計測装置。
【請求項2】
前記原形画像のメッシュである原形メッシュを生成する原形メッシュ生成手段と、
前記原形メッシュに対して前記平面射影変換行列に基づく平面射影変換を行うことで前記視野映像の平面メッシュを生成する平面メッシュ生成手段と、
前記実空間対応点に対して前記平面射影変換を行うことで平面対応点を算出し、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれに基づいて前記平面メッシュを変形することで前記視野映像の曲面メッシュを生成する曲面メッシュ生成手段と、
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の注視点計測装置。
【請求項3】
前記曲面メッシュ生成手段は、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれと変形の複雑度とを含む判定式に基づいて前記平面メッシュを繰り返し変形することで、最適な前記曲面メッシュを生成することを特徴とする請求項2に記載の注視点計測装置。
【請求項4】
前記曲面メッシュ生成手段は、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれが閾値よりも大きい対応点の組は、前記判定式の算出処理に採用しないことを特徴とする請求項3に記載の注視点計測装置。
【請求項5】
前記閾値は、前記平面メッシュの変形を繰り返すごとに小さくしていくことを特徴とする請求項4に記載の注視点計測装置。
【請求項6】
前記曲面メッシュ生成手段は、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれが大きい方から一定の数の対応点の組は、前記判定式の算出処理に採用しないことを特徴とする請求項3に記載の注視点計測装置。
【請求項7】
前記一定の数は、前記平面メッシュの変形を繰り返すごとに増やしていくことを特徴とする請求項6に記載の注視点計測装置。
【請求項8】
前記視野映像内のアイマークを含む前記平面メッシュまたは前記曲面メッシュの要素と対応する前記原形メッシュの要素が、前記注視点を含むものとして前記注視点の位置を特定する注視点位置特定手段、
を更に具備することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の注視点計測装置。
【請求項9】
アイトラッキング装置によって撮影された映像である視野映像内のアイマークの位置と対応付けて、前記視野映像に含まれる対象物体の原形画像における注視点の位置を計測する注視点計測方法であって、
前記視野映像の特徴点である実空間特徴点および前記原形画像の特徴点である原形特徴点を抽出し、前記実空間特徴点の集合および前記原形特徴点の集合に基づいて、前記視野映像と前記原形画像とを対応づける対応点の組として、前記視野映像の対応点である実空間対応点および前記原形画像の対応点である原形対応点の組を検索する対応点検索ステップと、
前記実空間対応点および前記原形対応点の組の集合に基づいて、前記視野映像の座標を前記原形画像の座標に平面射影変換するための平面射影変換行列を算出する変換行列算出ステップと、
を含むことを特徴とする注視点計測方法。
【請求項10】
前記原形画像のメッシュである原形メッシュを生成する原形メッシュ生成ステップと、
前記原形メッシュに対して前記平面射影変換行列に基づく平面射影変換を行うことで前記視野映像の平面メッシュを生成する平面メッシュ生成ステップと、
前記実空間対応点に対して前記平面射影変換を行うことで平面対応点を算出し、前記平面対応点と前記実空間対応点との位置ずれに基づいて前記平面メッシュを変形することで前記視野映像の曲面メッシュを生成する曲面メッシュ生成ステップと、
を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の注視点計測方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項8のいずれかに記載の注視点計測装置として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
コンピュータを請求項1から請求項8のいずれかに記載の注視点計測装置として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2011−194105(P2011−194105A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65732(P2010−65732)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)