説明

洋式便器

【課題】便器本体を容易に掃除することが可能となる洋式便器を提供する。
【解決手段】便器本体1の外表面部2を複数の表面部材3に分割して設置状態において取り外し得るようになした洋式便器。又、洋式便器の外表面部2は、格子状に分割して縦横に複数配列した表面部材3で形成されている。更に、表面部材3の上下の端面は、外側より内側の方が高くなっていることを特徴としている。又、外表面部は、横方向にのみ複数配列した表面部材で形成されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、外表面を分離して取り外すことが可能である洋式便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洋式便器の便器本体における外表面は尿垂れ、洗浄水の飛散等により汚れやすいものであり、雑巾等で拭き取るか、ブラシ等で磨くなどして掃除していた。
【0003】
又、特開平10−72860号公報(特許文献1)に示されるように、便器本体90の外表面91がカバー部材92で覆われている洋式便器が知られている(図9)。この洋式便器は、便器本体90の外表面91に沿った形状をした一つのカバー部材92が、便器本体90の外表面91にビス93止めされ、更に、カバー部材92及び便器本体90のボルト孔94にボルトを通すことで、両者を一体にして壁に取り付けるようになっている。
【0004】
したがって、洋式便器が設置された状態では、カバー部材92を取り外すことは不可能であり、カバー部材92を掃除する際も、便器本体90に取り付けられたままの状態で掃除していた。
【特許文献1】特開平10−72860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例である一般的な洋式便器にあっては、便器本体の外表面を掃除する際には、腰を落とした状態で雑巾やブラシ等を用いて掃除する必要があるため、大きな疲労を伴う作業となる。更に、便器本体の外表面を水洗いして掃除することは非常に困難であった。
【0006】
又、カバー部材92が備えられた洋式便器においても、設置状態ではカバー部材92を取り外すことが不可能であるため、同様の課題が生じていた。仮に設置状態においてカバー部材92を取り外すことができたとしても、カバー部材92は一つの部材で便器本体90の外表面91を覆う大型なものであるため、便器本体90から取り外す作業が困難なものとなり、取り外したカバー部材92を水洗い等により掃除する作業も容易ではない。
【0007】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたものであり、その課題は、便器本体を容易に掃除することが可能となる洋式便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明では、便器本体の外表面部を複数の表面部材に分割して設置状態において取り外し得るようになしている。
【0009】
又、本願請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の洋式便器において、外表面部は、格子状に分割して縦横に複数配列した表面部材で形成されていることを特徴としている。
【0010】
又、本願請求項3記載の発明では、上記請求項1又は2記載の洋式便器において、表面部材の上下の端面は、外側より内側の方が高くなっていることを特徴としている。
【0011】
又、本願請求項4記載の発明では、上記請求項1記載の洋式便器において、外表面部は、横方向にのみ複数配列した表面部材で形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願請求項1記載の洋式便器においては、便器本体の外表面部を複数の表面部材に分割して取り外すことで、楽な体勢で外表面部を拭いたり磨いたりすることができると共に、容易に外表面部の水洗いをすることができる。又、外表面部が複数の表面部材に分割されているため、外表面部全体が一つの大型な表面部材で形成されている場合と比べて、一つ一つの表面部材の取り外しが容易となり、取り外した表面部材は水洗い等により容易に掃除することができる。更に、外表面部の汚れた部分のみを取り外して掃除することが可能であるため、効率良く掃除することができる。
【0013】
又、本願請求項2記載の洋式便器においては、外表面部は、格子状に分割して縦横に複数配列した表面部材で形成されているため、一つ一つの表面部材は比較的小さなものとなる。したがって、取り外した表面部材を容易につけおき洗いすることが可能となり、外表面部の掃除がより楽になると共に、便器本体をより清潔に保つことができる。
【0014】
又、本願請求項3記載の洋式便器においては、表面部材の上下の端面は、外側より内側の方が高くなっているため、尿垂れ、洗浄水の飛散等により外表面部に付着した水滴が、表面部材の継目から外表面部の内側へと浸透するのを防ぐことができる。
【0015】
又、本願請求項4記載の洋式便器においては、外表面部は、横方向にのみ複数配列した表面部材で形成されているため、上下に接続する表面部材がない構造となる。したがって、比較的汚れの溜まりやすい部位となる表面部材の上下の継目が存在しないため、外表面部に汚れを溜めにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜4は、本願請求項1〜3に対応した第一の実施形態である洋式便器を示している。この洋式便器は、便器本体1の外表面部2が格子状に縦横に複数配列した表面部材3に分割され、設置状態において取り外し得るようになしている。又、表面部材3の上下の端面は、外側より内側の方が高くなっている。
【0017】
以下、この実施形態の洋式便器を、より具体的詳細に説明する。図1に示すように、この洋式便器は、便器本体1に便座と、便蓋7と、局部洗浄および便座を暖める装置ケース8とからなる本体付属部品が取り付けられたものである。便器本体1の外表面部2は、格子状に縦横に分割した複数の表面部材3で形成されており、一部の表面部材3の外側面31に塗装を施すことで、外表面部2に模様を付している。
【0018】
各表面部材3は、樹脂、陶器等で形成された板状のパネル33と、パネル33の上下左右の端面を覆うパッキン34と、パネル33に埋め込まれた鉄板36とからなっており、便器本体1の内壁面5から取り外せるようになっている。
【0019】
図2(a)の垂直断面図に示すように、パッキン34は山形の形状において、外側或いは内側の一方に凸部35を形成するようにパネル33の端面に設けられている。この凸部35は、表面部材3の上端面37においては内側に、下端面38においては外側に設けられており、表面部材3の上下の端面が外側よりも内側の方が高くなるようになしている。このパッキン34の構造はパネル33の左右の端面においても同様であり、左右の隣り合うパネル33において、一方は外側に他方は内側に凸部35を形成するようにパッキン34が設けられている。なお、パッキン34の材質は、ゴム等の柔軟性のあるものであり、パッキン34の形状は図2(b)、(c)に示すような形状であってもよい。
【0020】
便器本体1の内壁面5には、図3に示すように、バネ53や磁石52等からなる一般的なプッシュプル式の接着部51が設けられており、表面部材3はパネル33に埋め込まれた鉄板36と接着部51の磁石52との磁力により内壁面5に固定されている。表面部材3を取り外す際は、図3(a)に示すように、まず、パネル33を内側に押し込むことで、接着部51と共に表面部材3が外側へ突き出す。次に、図3(b)に示すように、突き出た表面部材3を、周囲から指をかけて外側に引き出し、図3(c)に示すように、接着部51から引き剥がすことで、表面部材3を取り外す。
【0021】
取り外した表面部材3を再び内壁面5に取り付ける際には、表面部材3の内側面32を突き出した接着部51に接触させ、接着部51と共に内側に押し込んで取り付ける。なお、表面部材3の取り付け及び取り外しの際には、パッキン34の凸部35が隣接する表面部材3のパッキン34と接触することになるが、凸部35が折れ曲がることで問題なく表面部材3の取り付け及び取り外しができるようになっている。
【0022】
又、各表面部材3の全て或いは一部を同じ寸法、形状で形成するか、又は、表面部材3の内側面32と便器本体1の内壁面5とに番号を付すことで、複数の表面部材3を同時に取り外した場合であっても、迷うことなく表面部材3を取り付けることができるようになしている。
【0023】
したがって、この実施形態の洋式便器においては、便器本体1の外表面部2を取り外すことで、楽な体勢で外表面部2を拭いたり磨いたりすることができると共に、容易に外表面部2の水洗いをすることができる。
【0024】
又、外表面部2は複数の表面部材3に分割して取り外すことができるため、外表面部2全体が一つの大型な表面部材3で形成されている場合と比べて、一つ一つの表面部材3の取り外しが容易となり、取り外した表面部材3は水洗い等により容易に掃除することができる。更に、外表面部2の汚れた部分のみを取り外して掃除することが可能であるため、効率良く掃除することができる。
【0025】
又、外表面部2は、格子状に分割して縦横に複数配列した表面部材3で形成されているため、一つ一つの表面部材3は比較的小さなものとなる。したがって、取り外した表面部材3を容易につけおき洗いすることが可能となり、外表面部2の掃除がより楽になると共に、便器本体1をより清潔に保つことができる。
【0026】
又、表面部材3の上下の端面は、図2に示すように、外側より内側の方が高くなっているため、尿垂れ、洗浄水の飛散等により外表面部2に付着した水滴6が、表面部材3の継目39から外表面部2の内側へと浸透するのを防ぐことができる。
【0027】
又、表面部材3の上下左右の端面を柔軟性のあるパッキン34で形成しているため、便器本体1の内壁面5に隙間なく表面部材3を敷き詰めることができ、更に、表面部材3の取り付け及び取り外しをスムーズに行うことができる。
【0028】
又、接着部51はプッシュプル式であり、パネル33を押し込むことで表面部材3を取り外すことが可能であるため、表面部材3に取手を設ける必要がなく、外観を悪くすることなく表面部材3を備えることができる。
【0029】
又、鉄板36はパネル33に埋め込まれて設けられているため、内側面32に露出して設けられる場合と比べて、磁石52を劣化させることなく表面部材3の水洗いやつけおき洗いができる。
【0030】
又、一部の表面部材3の外側面31に塗装を施し、外表面部2に模様を付すことで、便器本体1の外観を良くすることができる。又、パネル33の端面に設けられたパッキン34は、パネル33の外側面31と同じ色になっており、外表面部2においてパッキン34の部分が目立ち外観を悪くすることのないようになしている。
【0031】
なお、便器本体1の外表面部2は、図4に示すようにパズル型の表面部材3が格子状に複数配列されている形状であってもよい。このパズル型の表面部材3においても、パッキンの構造及び内壁面への固定方法は図2、3に示したものと同様であるものとする。したがって、この場合は、便器本体1の外観は更に良くなるものである。
【0032】
図5〜7は、本願請求項1〜3に対応した第二の実施形態である洋式便器を示している。なお、ここでは、上記第一の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第一の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0033】
本実施形態における表面部材3は、図5に示すように、二枚の板を重ねたような形状になっており、下板41が上板40から上方向及び左右どちらか一方向に食み出した状態で重なっている。このような形状をした複数の表面部材3が、合決により組み合わされて、便器本体1の内壁面5に格子状に配列して備えられている。表面部材3が上下に組み合った状態を表す垂直断面図を図6(a)に示す。これは、左右に組み合った状態を表す水平断面においても同様である。なお、表面部材3の端面の形状は、図6(b)、(c)に示すような形状であってもよい。
【0034】
又、表面部材3は、表面部材3に埋め込まれた鉄板36と、便器本体1の内壁面5に設けられた磁石52との磁力により内壁面5に固定されている。なお、この表面部材3の固定の方法は、吸盤や面ファスナー等によるものであってもよい。又、表面部材3の下板41は樹脂やゴム等の柔軟性のある材料で形成されており、上板40は樹脂や陶器等で形成されている。更に、表面部材3の上端面37、下端面38及び左右の端面は、シリコンやフッ素等の配合された高分子でコーティングする、或いは、粗面化するなどして撥水加工が施されている。
【0035】
表面部材3を取り外す際には、表面部材3の外側面31に設けられた取手凹部42を手掛かりにして取り外す。手掛かりとしては、取手凹部42以外に取手凸部43を設けていてもよい。取手凸部43は図7に示すように、表面部材3の内部において外側面31と面一になるように設けられており、取り外しの際に、軸部44を軸にして回動させ、前面に突出させることで手掛かりとして用いられるものであってもよい。
【0036】
したがって、この実施形態の洋式便器においては、表面部材3の下板41が柔軟性のある樹脂やゴム等で形成されているため、表面部材3の取り付け及び取り外しをスムーズに行うことができる。又、表面部材3の端面は、撥水加工を施しているため、各表面部材3の継目39から水滴6が浸透するのを防ぐことができる。
【0037】
又、取手凸部43を表面部材3の内部に設けた場合は、取手が常に表面部材3から突出して設けられている場合と比べて、外観を悪くすることなく取手を設けることができる。
【0038】
図8は、本願請求項1、4に対応した第三の実施形態である洋式便器を示している。なお、ここでは、上記第一の実施形態と相違する事項についてのみ説明し、その他の事項(構成、作用効果等)については、上記第一の実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0039】
本実施形態において便器本体1の外表面部2は、図8に示すように、前表面部材45と両側面部材46との三つに分割されており、これらの表面部材3(前表面部材45、両側面部材46)が横方向のみに配列して形成されている。各表面部材3は、便器本体1の内壁面5に設けられたガイド54に、表面部材3に設けられたガイド溝48を納めることで位置合わせされる。
【0040】
又、表面部材3は、表面部材3の内側面32と、便器本体1の内壁面5とに設けられた面ファスナー47をくっつけることで固定されている。なお、表面部材3の固定方法は、内側面32に鉄板36を埋め込み、内壁面5に磁石52を設けることで、磁力により固定するものであってもよい。
【0041】
したがって、この実施形態の洋式便器においては、外表面部2は、横方向にのみ複数配列した表面部材3で形成され、上下に接続する表面部材がない構造となるため、比較的汚れの溜まりやすい部位となる表面部材の上下の継目が存在しないので、外表面部2に汚れを溜めにくくすることができる。
【0042】
又、尿垂れ等により比較的汚れやすい部位となる前表面部材45を、両側面部材46とは分けて取り外すことができるため、便器本体1の外表面部2を効率良く掃除することができる。
【0043】
なお、この実施形態においては、本願請求項2、3の効果は奏さない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本願発明の第一の実施形態である洋式便器を示す分解斜視図。
【図2】同洋式便器における外表面部を示す断面図。
【図3】同洋式便器における表面部材の取り外し状態を示す断面図。
【図4】パズル型の表面部材を有する洋式便器を示す斜視図。
【図5】本願発明の第二の実施形態である洋式便器を示す分解斜視図。
【図6】同洋式便器における外表面部を示す断面図。
【図7】同洋式便器における表面部材の取手構造を示す断面図。
【図8】本願発明の第三の実施形態である洋式便器を示す分解斜視図。
【図9】従来例である洋式便器を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0045】
1 便器本体
2 外表面部
3 表面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体の外表面部を複数の表面部材に分割して設置状態において取り外し得るようになした洋式便器。
【請求項2】
外表面部は、格子状に分割して縦横に複数配列した表面部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の洋式便器。
【請求項3】
表面部材の上下の端面は、外側より内側の方が高くなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の洋式便器。
【請求項4】
外表面部は、横方向にのみ複数配列した表面部材で形成されていることを特徴とする請求項1記載の洋式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−262701(P2007−262701A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87024(P2006−87024)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】