説明

洋風便器装置

【課題】上方から一瞥しただけでスカート部の側壁面を視認でき、かつ清掃もしやすい洋風便器装置およびそのスカートを提供する。
【解決手段】便鉢4の周囲にスカート部2を設けた洋風便器装置10であって、スカート部2が便器を正面視したときに、左、右の側壁2b、2bが末広がり状に傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便鉢の周囲にスカート部を設けた洋風便器装置とそのスカートの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陶器を素材とした従来の洋風便器装置では、便座より下方が便鉢の形状に沿って内側に抉れ、くびれており、全体として基端側がすぼまった形状となっているため、便座に腰掛けたときや男子小用の際の足位置スペースは確保されている。
【0003】
また、便鉢の下方を隠蔽するためにスカート部を取り付けたものもあるが、このスカート部は、座位のときあるいは男子小用のときの足位置スペースが確保されるように、基端に向けて全体的に内側に傾斜した形状となっている。
【0004】
特許文献1には、樹脂材料で成形されたスカート部を構成部材として含んだ洋風便器装置が記載されている。図4(a)は文献1に示した便器の断面図、(b)はこの便器の構成を示した概念図である。
【0005】
この洋風便器装置100は、便鉢101の周囲にスカート部102を、上方に便座103を設けた構成である。図示するようにスカート部102は、その前面壁102aと左、右側壁102b、102bとが内側に傾斜し、全体として基端側がすぼまった形状となっている。
【特許文献1】特開平10−37279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、洋風便器装置100のスカート部102は、その前面壁102aを足位置が確保できる形状とする必要はあるが、側壁102bを内側に傾斜させる必要はほとんどない。むしろ、側壁102bを内側に傾斜させたものや垂直にしたものでは、上方より側壁102b面を視認しにくいため、しゃがみこまなければ側壁102b面に付着した汚れを確認することはできない。
【0007】
特に、スカート部を取り付けていない陶器便器では、便鉢やその下方部が複雑にくびれた形状であるため、清掃がきわめてしにくい。
【0008】
また、側壁が内側に傾斜したものでは、便鉢の上端周縁部からスカート部の側壁に伝ってきた尿や水は、そのまま床面に垂れ落ちてしまうため、床面は汚れやすく、床面を水洗いできないトイレではきわめて非衛生的である。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、上方から一瞥しただけでスカート部の側壁面を視認でき、かつ清掃もしやすい洋風便器装置およびそのスカートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の洋風便器装置は、便鉢の周囲にスカート部を設けた洋風便器装置であって、スカート部が便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜していることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の洋風便器装置は、スカート部が左、右側壁の基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成していることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の洋風便器装置は、スカート部が便鉢に対して着脱自在に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の洋風便器装置は、スカート部が樹脂材料からなることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の洋風便器用スカートは、洋風便器の便鉢の周囲に着脱自在に配設するスカートであって、便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜していることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の洋風便器用スカートは、左、右側壁の基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば次の効果を奏する。
【0017】
請求項1〜4に記載の洋風便器装置は、スカート部が便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜しているため、上方から一瞥しただけでスカート部の側壁面を視認でき、かつ清掃もしやすい。また、側壁が傾斜しているため、側壁に尿や水が飛散しても床面には垂れ落ちにくい。
【0018】
特に請求項2に記載の洋風便器装置によれば、スカート部が左、右側壁の基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成しているため、側壁面に付いた尿や水が床面に垂れ落ちることはない。
【0019】
請求項3に記載の洋風便器装置によれば、スカート部が便鉢に対して着脱自在であるため、スカート部を取り外して洗浄することができる。また、スカート部が経年劣化した場合にも取り替えが可能である。
【0020】
請求項4に記載の洋風便器装置によれば、スカート部が樹脂材料よりなるため、安価で製造でき、軽量であるため着脱時の取り扱いも便利である。
【0021】
請求項5、6に記載の洋風便器用スカートは、便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜しているため、便鉢の上方から視認しやすく、清掃もしやすい。また着脱自在であるため、丸洗い、取り替えが可能である。特に請求項6では、左、右側壁の基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成しているため、側壁面に付いた尿や水が床面に垂れ落ちにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面とともに説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の洋風便器装置10の一例を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は分解斜視図である。また、図2(a)は図1で示した洋風便器装置10の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【0024】
この洋風便器装置10は、便座と、便鉢4を含む便器本体1と、便鉢4の周囲に設けたスカート部2とを備えている。なお、便座は図示を省略する。
【0025】
便器本体1は、便鉢4と、便鉢支持部5と、後方カバー部3とを備えて構成される。便鉢支持部5は、便鉢4に連設され、固定金具7によって床Fに固定される。この固定金具7は、側面コ字形に形成されており、便鉢支持部5、床F、スカート部2のそれぞれと螺合して、洋風便器装置10全体を床Fに固定できるようになっている。また、後方カバー部3は、便鉢4より連通した排水管6などを隠蔽するように配設されている。
【0026】
なお、本実施例では洋風便器装置10の個々の部材が樹脂材料で製されたものを示しているが、便鉢4については経年劣化を考慮して陶器よりなるものであってもよい。
【0027】
スカート部2は、樹脂材料よりなり、図1(b)に示すように、便鉢4の前方、左、右側方を囲むように湾曲して形成されており、上述するように便器本体1に対して着脱自在に形成されている。なお、着脱をより簡易にするために、スカート部2を床Fに固定せず、スカート部2の上端のみを便鉢4の上端周縁部4aに嵌合などによって固定し、吊設されるようにしてもよい。
【0028】
そのスカート部2の前面壁2aは、便座に腰掛けたときの足位置スペースを確保するために内側(後方)に傾斜しており、スカート部2を側面視したときに基端2c側がすぼまった形状となっている(図2(c)参照)。
【0029】
一方、スカート部2の左、右の側壁2b、2bは、便器装置10を正面視したときに末広がり状(ハの字状)に傾斜している(図2(b)参照)。なお図示した実施例では、内側傾斜した前面壁2aと外側傾斜した側壁2bとの境界部分に、アーチ状の模様2eが施されている。
【0030】
このように、スカート部2の左、右の側壁2b、2bが末広がりに形成され、内方に抉れたり、くびれたりした箇所がないため、上方から側壁2b、2bの全体面を見渡すことができ(図2(a)参照)、尿や水で汚れた側壁面を一瞥しただけで視認することができ、かつ手入れもしやすい。また、男子小用時に尿が便鉢4の外に飛散しても、末広がりのスカート部2の側壁2bで受け止めることができる。また、便鉢4の上端周縁部4aに飛散した尿や水が側壁2bに伝ってきたときでも、末広がりになっているため床Fには垂れ落ちにくい。なお、側壁2bに付着した尿や水の垂れ落ちをより遅くするために、複数の横溝を設けてもよい。
【0031】
また、汚れたスカート部2は取り外せば丸洗いができるため、床Fに設置した状態で水洗い清掃する必要性もない。特に、床Fに排水口を設けず床面を水洗いできないトイレには有効である。
【0032】
さらに、後方カバー部3の左、右側壁3b、3bも、図示するようにスカート部2の側壁2bと同様の勾配でもって末広がり状に形成されていれば、便器装置全体の側壁が統一感のある末広がり形状に形成される。
【実施例2】
【0033】
図3は本発明の洋風便器装置10Aの他例を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)はAで示した部分の縦断面図である。なお、便座は図示を省略する。
【0034】
この洋風便器装置10Aのスカート部2は、正面視したときに末広がり状に形成されている点は実施例1と同様であるが、さらに基端2cより外方に向けアール状に湾曲しながら延出した縁部2dを形成している。
【0035】
この洋風便器装置10Aによれば、スカート部2がこのような縁部2dを形成しているため、側壁2b面に付いた尿や水は床面と水平に形成された縁部2dで受け止められ、そのため床Fを汚すことがほとんどない。さらに、尿や水が縁部2dから床Fへ垂れ落ちるのを防止するため、側壁2bや縁部2dに複数の横溝を設けてもよい。
【0036】
また、縁部2dが床Fと面接触しているため、付着したゴミや水分もスカート部2の内側に入り込みにくく、床Fも傷つきにくい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の洋風便器装置の一例を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図2】(a)は図1で示した洋風便器装置の平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。
【図3】本発明の洋風便器装置の他例を示す図で、(a)は全体斜視図、(b)はAで示した部分の縦断面図である。
【図4】(a)は従来の洋風便器装置を示した断面図、(b)はその洋風便器装置の構成を示した概念図である。
【符号の説明】
【0038】
10、10A 洋風便器装置
2 スカート部
2a 前面壁
2b 側壁
2c 基端
2d 縁部
3 後方カバー部
4 便鉢
5 便鉢支持部
6 排水管
7 固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢の周囲にスカート部を設けた洋風便器装置であって、
上記スカート部は、便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜していることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記スカート部は、上記左、右側壁の基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成していることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記スカート部は、便鉢に対して着脱自在に形成されていることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記スカート部は、樹脂材料からなることを特徴とする洋風便器装置。
【請求項5】
洋風便器の便鉢の周囲に着脱自在に配設するスカートであって、
便器を正面視したときに、左、右の側壁が末広がり状に傾斜していることを特徴とする洋風便器用スカート。
【請求項6】
請求項5において、
上記左、右側壁は、基端より外方に向け延出湾曲した縁部を形成していることを特徴とする洋風便器用スカート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−255120(P2007−255120A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82800(P2006−82800)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】