説明

洗浄便座装置

【課題】
洗浄機構を有する洗浄便座装置において、温水タンク等の洗浄水の水道管(上水)への逆流を防止し、捨て水の量を低減する洗浄便座装置を提供すること。
【解決手段】
ノズル20へ水道管WLから水道水の給水・止水を行う給水バルブ50の後方に水道水の逆流を防止し捨て水を排水するエアギャップ機構60が配設され、エアギャップ機構60と給水バルブ50との間に水道水の流入量を制限するオリフィス70が配設される洗浄便座装置100とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水タンク等の洗浄水の上水への逆流防止および捨て水の量を低減する洗浄便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水道管(上水)から給水された水道水を加熱し貯留する温水タンクおよび温水タンク内の温水を人体局部に対して噴出するノズルを備え、温水タンクの下流の洗浄水(温水)が逆流し温水タンクへ侵入することを防止し、また、水道管からの給水により温水タンクから押し出される温水のうちノズルからの噴出量を超える温水を捨て水として排水するエアギャップが、温水タンクの下流に配設されている洗浄便座装置の給水構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−227036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の洗浄便座装置の給水構造においては、水道管(上水)の水道水が負圧状態となった場合、タンク内の洗浄水が水道管に逆流してしまう恐れがある。また、エアギャップからの捨て水の量は水道管からの給水量に依存し増加してしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、温水タンク等の洗浄水の水道管(上水)への逆流を防止し、捨て水の量を低減する洗浄便座装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために本発明にて講じられた第1の技術的手段は、洗浄機構および前記洗浄機構へ水道管から水道水の給水・止水を行う給水バルブを有する洗浄便座装置であって、前記給水バルブの後方に水道水の逆流を防止し捨て水を排水するエアギャップ機構が配設され、前記エアギャップ機構と前記給水バルブとの間に水道水の流入量を制限するオリフィスが配設される洗浄便座装置としたことである。
【0007】
第2の技術的手段は、前記オリフィスは、前記エアギャップ機構に一体的に設けられる第1の技術的手段の洗浄便座装置としたことである。
【0008】
第3の技術的手段は、前記オリフィスは、前記エアギャップ機構に交換可能に設けられる第1の技術的手段または第2の技術的手段の洗浄便座装置としたことである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、給水バルブの後方にエアギャップ機構を配設し、給水バルブとエアギャップ機構との間にオリフィスを配設するため、洗浄水の水道管への逆流が防止され、捨て水の量が低減される。
【0010】
請求項2の発明によると、オリフィスはエアギャップ機構に一体的に設けられるため、構造がコンパクトになり、組み付けが簡単になる。
【0011】
請求項3の発明によると、オリフィスはエアギャップ機構に交換可能に設けられるため、例えば、ポンプの吐水量毎にエアギャップ機構設けることなく、オリフィスのみの交換でよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例にかかる洗浄便座装置を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例の給水系統図である。
【図3】本発明の実施例にかかるエアギャップ機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図1乃至図3に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0014】
図1は、洗浄便座装置100の平面図で、図2は、給水系統図である。
【0015】
洗浄便座装置100は、便器Bの後部上方に配設され、給水された水道水(洗浄水)を図示しないヒータにより加熱し貯溜する温水タンク(タンク)10を有する。
【0016】
温水タンク10の下流には、進退自在で温水を噴出し人体の局部を洗浄するノズル(洗浄機構)20が連結されている。ノズル20は、肛門洗浄用ノズル21とビデ洗浄ノズル22を有する。
【0017】
温水タンク10の上流には、温水タンク10に給水するポンプ30が連結されている。温水タンク10内の温水は、操作部40が操作されると作動するポンプ30から圧送される水道水(洗浄水)により押し出され、温水タンク10に連結されるノズル20から噴出し、局部を洗浄する。
【0018】
ポンプ30の上流には、ポンプ30の作動開始または停止に合わせて開閉され、水道管(上水)WLの水道水をポンプ30へ送水または止水する給水バルブ50が配設されている。給水バルブ50とポンプ30との間には、ポンプ30に送水した水道水の逆流を防止し捨て水を排水するエアギャップ機構60が設けられている。
【0019】
図3は、エアギャップ機構60の断面図である。
【0020】
エアギャップ機構60は、有底略円筒状の円筒61からなり、上部に給水バルブ50に連結され水道水が給水される給水口62が形成され、下部にポンプ30に連結され吐水する吐水口63が形成されている。給水口62は、円筒61内に延出する筒状の延出部62aを有する。給水口62と吐水口63は、上下方向において離間し設けられている。円筒61の周壁の給水口62と吐水口63との間には、便器Bに向けて斜め下方に延出する筒状の延出部64aを有し、大気に開口する開口部64が形成されている。
【0021】
円筒61内の吐水口63の周囲には底部65から立設される壁部66が形成されている。壁部66を挟んで吐水口63と反対側には滞留室67が形成され、吐水口63側には給水室68が形成される。滞留室67と給水室68とにより貯水室69が形成される。壁部66の上端は、開口部64の下端より低く形成されている。壁部66は、円筒61の底部65と一体に形成され、Oリングを介して円筒61に水密的に結合されている。
【0022】
給水口62から流入した水道水は落水し貯水室69に貯留され、開口部64の下端を越える水道水は、開口部64から便器Bへ排水され、捨て水となる。
【0023】
貯水室69に貯留される水道水は、給水バルブ50による止水時等で発生する負圧(例えば水道管WL内の圧力変動に基づき発生する負圧)により水道管WL内へ吸引されようとするが、開口部64から大気が吸入され負圧が解消され、給水口62延いては水道管WLへ逆流しない。
【0024】
また、滞留室67に落水した水道水には水泡が発生する。水泡は開口部64の下端まで貯留される水道水の水面に上昇する。このとき、水面下の水泡のない水道水は、壁部66の上端を越え給水室68に流入する。これにより、水泡の無い水道水が給水室68から吐水口63を通してポンプ30に送水され、所期の量の水道水が温水タンク10に給水される。
【0025】
エアギャップ機構60と給水バルブ50との間には、オリフィス70が配設されている。オリフィス70は、給水口62に一体的に設けられている。これにより、オリフィス70とエアギャップ機構60の構造がコンパクトになると共に、組み付けが簡単になる。オリフィス70により、給水口62から流入する水道水の量が絞られ(制限され)、オリフィス70の開口面積により規定される所定流量の水道水が貯水室69へ送水される。これにより、給水口62から流入する水道水のうちポンプ30の圧送流量(または、ノズル20からの噴出量)を超え開口部64から便器Bへ排水される捨て水の量が、低減される。ただし、オリフィス70により規定される流量は、ポンプ30から圧送される流量と比べて多く設定されることが望ましい。
【0026】
オリフィス70は、給水口62と共に、例えば、嵌合構造により、エアギャップ機構60(円筒61)に着脱自在に交換可能である。これにより、オリフィス70は、洗浄便座装置100の種類或いはポンプ30の圧送量毎にエアギャップ機構60を設けることなく、オリフィス70のみの交換でよい。
【0027】
次に、本実施例の作動について説明する。
【0028】
人体の局部を洗浄するため、操作部40の操作を開始すると、ポンプ30が作動すると共に給水バルブ50が開弁される。
【0029】
ポンプ30の作動により、温水タンク10に水道水が圧送され、この送水により温水タンク10内の温水が押し出され、押し出された温水がノズル20から噴出され、局部の洗浄を行う。
【0030】
このとき、給水バルブ50の開弁により、水道管WLの水道水が水圧により給水バルブ50からエアギャップ機構60へ送水される。エアギャップ機構60には、給水口62にオリフィス70が設けられており、給水口62から流入した水道水は、オリフィス70により流量が制限される。
【0031】
オリフィス70により制限された流量の水道水は、エアギャップ機構60の貯水室69に落水し、ポンプ30により温水タンク10に圧送される。このとき、オリフィス70により制限された水道水の流量がポンプ30から圧送される流量を超えると、開口部64の下端を越え、開口部64から便器Bへ捨て水として排水される。ところで、給水口62から流入する水道水は、オリフィス70により流量が制限されるため、捨て水の量は低減される。
【0032】
また、例えば一例として、操作部40の操作が停止され、給水バルブ50が閉弁されるときに発生する負圧により、貯水室69の水道水が水道管WL内へ逆流しようとする場合、開口部64から吸入される大気により負圧が解消されるため、逆流は防止される。
【0033】
なお、本発明は、ノズル(洗浄機構)20に限らず、便器Bの洗浄または便器Bへ加圧水の送水を行う洗浄機構にも適用可能である。
【0034】
さらに、本発明は、温水タンク10を設けずに給水された水を瞬間に給湯する瞬間給湯装置等においても適用可能である。
【0035】
また、本発明は、給水された水の流量や圧力等を調整可能な調整弁が給水バルブ50とエアギャップ機構60との間に設けられている構成でも良く、調整弁が給水バルブ50に内蔵されていても良い。
【符号の説明】
【0036】
20・・・ノズル(洗浄機構)
50・・・給水バルブ
60・・・エアギャップ機構
70・・・オリフィス
100・・・洗浄便座装置
WL・・・水道管(上水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄機構および前記洗浄機構へ上水から水道水の給水・止水を行う給水バルブを有する洗浄便座装置であって、
前記給水バルブの後方に水道水の逆流を防止し捨て水を排水するエアギャップ機構が配設され、前記エアギャップ機構と前記給水バルブとの間に水道水の流入量を制限するオリフィスが配設される洗浄便座装置。
【請求項2】
前記オリフィスは、前記エアギャップ機構に一体的に設けられる請求項1記載の洗浄便座装置。
【請求項3】
前記オリフィスは、前記エアギャップ機構に交換可能に設けられる請求項1または2記載の洗浄便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−208475(P2011−208475A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79422(P2010−79422)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】