説明

洗浄水吐出装置

【課題】ボウル部の洗浄が停止している時、洗浄水流路中に滞留している洗浄水に開閉弁が接触しにくく、洗浄水中に含まれる塩素イオンにより開閉弁が劣化しにくい洗浄水吐出装置を提供する。
【解決手段】洗浄水流路11と、洗浄水流路11に形成されたベンチュリ管状の絞り流路部22に合流し液体薬剤を供給する薬剤供給経路12及び薬剤供給用ポンプと、薬剤供給経路12中に配される開閉弁33とを備える。開閉弁33は、薬剤供給用ポンプの運転により開口し且つ運転停止により閉口するスリット状貫通孔40を有する弾性部材である。絞り流路部22の内壁の上面の薬剤供給経路12と合流する部分に上方に凹没し流れ方向に開口する拡径溝部240が形成され、スリット状貫通孔40が溝部240の奥面241に位置し且つ洗浄水の流れに略平行となるように配される。絞り流路部22内を大気に連通させて拡径溝部240に空気を供給する連通口340が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬剤が混入された洗浄水を吐出するための洗浄水吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
便器装置においては、ボウル部内に洗浄水を吐出するための洗浄水吐出装置が備えられている。特許文献1には、この洗浄水吐出装置の洗浄水流路中に液体薬剤が合流し、液体薬剤が混入された状態の洗浄水がボウル部内に吐出される構成のものが開示されている。液体薬剤は薬剤供給経路を通じて混入され、この薬剤供給経路中に配してあるゴムのような弾性部材からなる開閉弁によって混入が制御される構成である。しかし上記従来の洗浄水吐出装置にあっては、開閉弁として電磁弁を備えてこれの開閉動作を適宜制御する構成が必要となり、低コスト化を図ることが困難であるという問題がある。
【0003】
そこでまず本発明者は、ポンプ圧力により弾性変形を生じて開口し、ポンプが停止すれば復元力により閉口するようなスリット状貫通孔を有する開閉弁を発想した。これによれば電磁弁が必要でなく、また弁の開閉が直接制御される必要もないので低コスト化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−214757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記洗浄水吐出装置にあっては、ボウル部の洗浄が停止している時、洗浄水流路中に滞留している洗浄水に開閉弁が接触し、洗浄水中に含まれる塩素イオンにより開閉弁が劣化し、閉止性能が低下してしまう惧れがあった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて発明したものであって、ボウル部の洗浄が停止している時、洗浄水流路中に滞留している洗浄水に開閉弁が接触しにくく、洗浄水中に含まれる塩素イオンにより開閉弁が劣化しにくい洗浄水吐出装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、供給される洗浄水を吐出口から外部に吐出する洗浄水流路と、前記洗浄水流路に形成されたベンチュリ管状の絞り流路部に合流する薬剤供給経路と、前記洗浄水流路を流れる洗浄水に前記薬剤供給経路から液体薬剤を供給するための圧力を付与する薬剤供給用ポンプと、前記薬剤供給経路中に配される開閉弁とを具備し、前記開閉弁は、前記薬剤供給用ポンプの運転により開口し且つ運転停止により閉口するスリット状貫通孔を有する弾性部材であり、前記絞り流路部の内壁の上面の前記薬剤供給経路と合流する部分に上方に凹没し流れ方向に開口する拡径溝部が形成され、前記スリット状貫通孔が前記拡径溝部の奥面に位置し且つ前記洗浄水の流れに略平行となるように配し、前記絞り流路部に内部を大気に連通させて拡径溝部に空気を供給する連通口が形成されることに特徴を有する。
【0008】
また、前記拡径溝部の流れ方向に直交する幅が5mm以上であることが好ましい。
【0009】
また、前記拡径溝部の前記絞り流路部周囲の内壁からの深さが2〜5mmであることが好ましい。
【0010】
また、前記洗浄水流路の前記吐出口近傍の下端部に、下方に傾斜する傾斜面または下方に凹没する段差部が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、ボウル部の洗浄が停止している時、洗浄水流路中に滞留している洗浄水に開閉弁が接触しにくくなり、洗浄水中に含まれる塩素イオンにより開閉弁が劣化しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄水吐出装置の要部(エジェクタ管)の流れ方向に垂直な断面図である。
【図2】同上の要部(エジェクタ管)の流れ方向に沿った断面図である。
【図3】同上の洗浄水吐出装置を備えた便器装置を示す概略構成図である。
【図4】洗浄水吐出装置を示し、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図5】図4(a)のB−B断面図である。
【図6】エジェクタ管の斜視図である。
【図7】エジェクタ管の平面図である。
【図8】開閉弁の斜視図である。
【図9】同上の開閉弁を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図10】同上の開閉弁の閉弁時を示す断面図である。
【図11】同上の開閉弁の開弁時を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。図3には、本発明の実施形態における一例の洗浄水吐出装置6を備えた便器装置1を示してある。本例の便器装置1は、合成樹脂製の便器2で主体が構成されている。なお図中の符合3は便器2に回動自在に設けた便座であり、符合4は便器2に回動自在に設けた便蓋である。
【0014】
便器2のボウル部5の下部には後方に向けて排水筒部7が突設されており、該排水筒部7からトラップ筒8を介してボウル部5内の溜水が排水されるようになっている。本例のトラップ筒8はターントラップ方式のものである。モータ(図示せず)によりトラップ筒8が回動して、図3に実線で示すようにトラップ筒8が上向きU字状のトラップ構造となる状態と、破線で示すように略逆L字状となってトラップ構造が解除される状態とが、選択できるようになっている。通常はトラップ筒8が上向きU字状のトラップ構造を保持し、ボウル部5内の下部、排水筒部7、トラップ筒8内に水が溜まった状態となる。水が溜たまった状態で大便や小便を行い、大便や小便が終わると、洗浄水吐出装置6の吐出口9からボウル部5内に向けて洗浄水を流すと共に、トラップ筒8を回動してトラップ構造が解除されることで、汚物と共に汚水が排水されるようになっている。
【0015】
便器2の後部に内装される本例の洗浄水吐出装置6は図1乃至図7に示されるようなもので、吐出口9から洗浄水、又は洗浄水に液体薬剤10が混入されて得た薬剤入り洗浄水のいずれか一方を、選択的にボウル部5の内面に吐出して洗浄するものである。
【0016】
図3に概略的に示すように洗浄水吐出装置6は、洗浄水が供給される洗浄水流路11と、洗浄水流路11に合流する薬剤供給経路12を備えている。薬剤供給経路12には、該薬剤供給経路12から洗浄水流路11を流れる洗浄水に液体薬剤10を供給するための圧力を付与する薬剤供給用ポンプ13を設けている。
【0017】
洗浄水流路11は、水源(図示せず)に接続されて水道水からなる洗浄水が供給される流路である。洗浄水流路11に洗浄水を供給する手段としては、水道圧を利用する。洗浄水流路11の下流側端部には、ボウル部5の上端部後方に配設されて該ボウル部5内に臨む吐出ノズル14(図4等参照)が設けられており、該吐出ノズル14の先端開口で前述の吐出口9が構成されている。吐出口9はボウル部5の側端部に臨んでおり、該吐出口9から吐出された洗浄水又は薬剤入り洗浄水はボウル部5の内周面に沿って旋回する。洗浄水流路11において薬剤供給経路12との合流部15よりも上流側には電磁弁16が設けられており、電磁弁16が開閉することで、洗浄水流路11に供給された洗浄水が吐出口9から吐出するか否かが切替可能となっている。本実施形態では、洗浄水流路11の吐出口9近傍の下端部に、下方に傾斜する傾斜面または下方に凹没する段差部91が形成されるものである。
【0018】
洗浄水流路11において合流部15よりも上流側であり且つ電磁弁16よりも下流側である部分には、洗浄水流路11を流れる洗浄水に空気を混入して、気泡入り洗浄水を生成する空気混入部17を設けている。空気混入部17は、一端を大気に開放した空気供給路18の他端が洗浄水流路11の一部に接続されることで構成され、洗浄水流路11を流れる洗浄水のエジェクタ効果によって空気供給路18から洗浄水流路11に空気が供給され、これにより気泡入り洗浄水が得られる仕組みである。
【0019】
図2等に示すように、洗浄水流路11において空気供給路18が接続される部分は、上流側のノズル管19と下流側のエジェクタ管20とで構成されている。ノズル管19は、下流側に向かって流路断面積を徐々に小さくする先細形状に形成されており、このノズル管19の先端部が、エジェクタ管20の一端開口から該エジェクタ管20内に挿入されている。上記挿入によりノズル管19の先端部外側に位置することとなるエジェクタ管20の内周面は、ノズル管19の先端部外周面よりも大径に形成されている。これによりノズル管19の先端部近傍に、洗浄水の流れにより大きな負圧が発生する負圧発生部21が形成されている。前述の空気供給路18の一端は洗浄水流路11の負圧発生部21に接続されており、負圧発生部21で発生する負圧によって、洗浄水流路11を流れる洗浄水に確実に且つ充分な量の空気が混入されるようになっている。
【0020】
エジェクタ管20における負圧発生部21よりも下流側の部分には、ベンチュリ管状の絞り流路部22が形成されている。該絞り流路部22は、上流側及び下流側の流路断面積の大きな大径部23と、両大径部23間の小径部24とで構成されており、上流側から流れてきた気泡入り洗浄水を通過時に圧力変化させ、これにより洗浄水に含まれる気泡が剪断して細分化される。また洗浄水流路11の薬剤供給経路12との合流部15よりも下流側の箇所には、洗浄水に含まれる気泡を更に細分化する気泡細分化手段として、気泡を剪断するメッシュで構成した整流板25が設けられている。なお、エジェクタ管20の下流側端部には、前述の吐出口9を構成する吐出ノズル14の基端部が接続されている。
【0021】
図3に示すように薬剤供給経路12は、界面活性剤を含む洗剤から成る液体薬剤10が循環する循環経路26と、循環経路26から分岐した分岐経路27とで構成され、該分岐経路27の下流側端部が洗浄水流路11の絞り流路部22に接続されるものである。これについては後述する。
【0022】
循環経路26の途中には、液体薬剤10を貯留する薬剤タンク28が設けられており、該薬剤タンク28は便器2の後部の下側部分に内装されている。薬剤タンク28には薬剤供給口29が設けられており、該薬剤供給口29は着脱自在に取付けられるキャップ30により閉塞されている。便器2の外面において薬剤タンク28に対向する部分は、便器2に対して着脱自在なカバー(図示せず)により構成されており、使用者はこのカバーを取り外すことで、薬剤タンク28の薬剤供給口29から薬剤タンク28内に液体薬剤10を補充できるようになっている。また薬剤タンク28は便器2に対して着脱自在に設けられており、前述のカバーを取り外して便器2から外部に取り出した状態で液体薬剤10が補充されるようになっている。循環経路26における分岐経路27との分岐部31のすぐ上流側には、薬剤タンク28内の液体薬剤10を循環経路26中で循環させる循環ポンプ130が設けられている。この循環ポンプ130により、洗浄水流路11を流れる洗浄水に液体薬剤10を供給するための圧力を付与する薬剤供給用ポンプ13が構成されている。
【0023】
図2等に示されるように、分岐経路27の上流側部分(即ち、後述の管部37によって構成される部分)は小径の孔部で構成されており、循環ポンプ130により圧力を付与されて循環経路26内を循環する液体薬剤10のうち、少量の液体薬剤10がこの小径の分岐経路27を介して洗浄水流路11に供給されるようになっている。
【0024】
分岐経路27の下流側端部は、前述のエジェクタ管20において洗浄水の流速が速くなって大きな負圧が発生する絞り流路部22の小径部24の内壁の上面に接続されるのであるが、この部分には拡径溝部240が形成される。拡径溝部240は、絞り流路部22の内壁の上面に形成されるもので、薬剤供給経路12と合流(すなわち連通)する部分を含み、上方に凹没し流れ方向に開口する溝である。その奥面241(すなわち拡径溝部240の上面)は、洗浄水流路11の絞り流路部22の前後の部分の上面と略同じ高さとなっている。
【0025】
本実施形態では、拡径溝部240の流れ方向に直交する幅は5mm以上であるが、幅は特に限定されない。また本実施形態では、拡径溝部240の絞り流路部周囲の内壁からの深さは2〜5mmであるが特に限定されず、その奥面241が洗浄水流路11の絞り流路部22の前後の部分の上面と略同じ高さとなっていればよい。
【0026】
洗浄水流路11における薬剤供給経路12との合流部15は、絞り流路部の小径部24で構成されている。そして、分岐経路27の下流側端部には、開閉自在な開閉弁33が設けられており、該開閉弁33が開閉されることによって、薬剤供給経路12と洗浄水流路11の連通状態と非連通状態とが切替可能になっている。なお、開閉弁33については後に詳述する。
【0027】
上記便器装置1の洗浄水吐出装置6は制御部(図示せず)を備えており、適宜操作により制御部に便器洗浄指令が送信されると、制御部は以下に述べるボウル洗浄モードで運転を行い、ボウル部5を洗浄するように設定されている。なお薬剤供給用ポンプ13、電磁弁16、モータ等は制御部に接続されて制御される。
【0028】
ボウル洗浄モードは、便器洗浄指令が受信された際に開始する洗浄水吐出モードと、洗浄水吐出モードで第一の所定時間運転された後に開始する薬剤入り洗浄水吐出モードとで構成される。そして、薬剤入り洗浄水吐出モードの開始から第二の所定時間後にボウル洗浄モードは終了する。
【0029】
洗浄水吐出モードは、液体薬剤10が混入されていない洗浄水(即ち水道水)を吐出口9から吐出するモードである。該洗浄水吐出モードでは、薬剤供給用ポンプ13を停止するとともに開閉弁33を閉弁させ、薬剤供給経路12と洗浄水流路11を非連通状態にしたうえで、電磁弁16を開いて洗浄水流路11に洗浄水を供給する。これにより水源から洗浄水流路11に供給された洗浄水は、空気混入部17において空気が混入されて気泡入り洗浄水となり、この後、この洗浄水に含まれる気泡が絞り流路部22で細分化され、さらに整流板25で細分化された後、吐出口9から吐出される。またこの洗浄水吐出モードにおいては、洗浄水吐出モードを開始してから第三の所定時間経過後に、モータを駆動してトラップ筒8を略逆L字状とし、これによりボウル部5内の溜水を排水する。さらにこの第四の所定時間経過後にはモータを駆動してトラップ筒8を通常の上向きU字状とし、以後このボウル部5内に洗浄水が溜められることが可能な状態を維持する。
【0030】
ここで、洗浄水吐出モードにおいて吐出口9から吐出される洗浄水に含まれる気泡の径は比較的大径である数mm程度に設定してある。このように気泡を含む洗浄水を吐出することで、洗浄水に含まれる気泡が破裂した際に発生する高周波振動の惹起により、気泡入り洗浄水自体の高い洗浄力によってボウル部5の内面が効率良く洗浄されるようにしてある。この場合、洗浄水の節水効果が高められる。特にこの洗浄水に含まれる気泡はミリメータサイズと比較的大径であるから、気泡が破裂し易くてボウル部5の内面が効率良く洗浄される。
【0031】
上記洗浄水吐出モードが終了すると、薬剤入り洗浄水吐出モードに移行する。薬剤入り洗浄水吐出モードは、液体薬剤10を混入した洗浄水(即ち、薬剤入り洗浄水)を吐出口9から吐出するモードである。薬剤入り洗浄水吐出モードでは、薬剤供給用ポンプ13を運転して後述の如く開閉弁33を開弁させ、薬剤供給経路12と洗浄水流路11を連通させるとともに、電磁弁16を開弁させて洗浄水流路11に洗浄水を供給する。これにより水源から洗浄水流路11に供給された洗浄水は、薬剤供給経路12との合流部15よりも上流側においては空気混入部17において空気が混入されて気泡を含む洗浄水となり、下流側に流れる。これと同時に薬剤供給用ポンプ13によって循環経路26内を流れる液体薬剤10の一部が分岐経路27及び開閉弁33を介して洗浄水流路11の合流部15に流入し、この合流部15において前記洗浄水流路11を流れる気泡を含む洗浄水と合流する。これにより気泡を含む薬剤入り洗浄水となって以後は、この薬剤入り洗浄水に含まれる気泡が絞り流路部22で細分化され、さらに整流板25で細分化された後、吐出口9から外部に吐出される。
【0032】
上記洗浄水吐出モードにおいて吐出口9から吐出される薬剤入り洗浄水に含まれる気泡の径は、前述の洗浄水吐出モードにおいて吐出口9から吐出される洗浄水に含まれる気泡の径よりも小径となっている。これは、絞り流路部22及び整流板25で細分化される薬剤入り洗浄水に界面活性剤を含む液体薬剤10が混入された場合には、洗浄水の表面張力が低下し、これにより絞り流路部22及び整流板25で剪断力が加えられる際に気泡がより細分化されるためである。具体的には、洗浄水吐出モードにおいては吐出口9から吐出される薬剤入り洗浄水に含まれる気泡の径が平均60μm程度となるように設定されている。気泡径がこのように設定されることで、ボウル部5の内面において溜水の水面と接する喫水線部分に、界面活性剤を含む薬剤入り洗浄水で界面が形成された防汚効果の高いマイクロメータサイズの微小泡が付着される。また、この微小泡は破裂し難く長時間ボウル部5の内面に付着されることができ、これらによりボウル部5の内面、特に喫水線部分を清潔に保持することができる。
【0033】
そして本発明にあっては、前記の開閉弁33が、弾性変形可能な弾性部材で形成される。すなわち、薬剤入り洗浄水吐出モードにおいては該薬剤供給用ポンプ13により付与される圧力によって弾性変形して開弁し、且つ薬剤供給用ポンプ13が運転停止される洗浄水吐出モードにおいては弾性復帰して閉じるようになっている。以下、更に詳述する。
【0034】
図1、図10等に示すように、エジェクタ管20の小径部24からは上方に向けて筒部34が一体に突設され、筒部34の下底部を構成するエジェクタ管20の外周部には、筒部34内と小径部24内を連通させるスリット孔35が形成されている。このスリット孔35は、洗浄水流路11を流れる洗浄水の流れ方向と略平行になるよう設けられており、開閉弁33の後述する開閉部39が挿通される。また筒部34の下底部には、スリット孔35とは別に、筒部34内と小径部24内とを連通させる連通口340が形成される。筒部34の上部には、循環経路26の一部を構成する管路36から下方に突設された管部37が挿入されて密閉状態に接続されている。なお管部37の上端は管路36内、つまり循環経路26内に連通している。
【0035】
筒部34の下部の内側には弾性変形可能なゴムのような弾性部材で形成された開閉弁33が配設されている。図8及び図9に示すように開閉弁33は、一端(上端)の開口した円筒状をなす導入部38と、導入部38の他端(下端)底部から下方に延設された薄片状の開閉部39とで主体が構成されている。開閉弁33は、図10のように導入部38が筒部34の下部の内側に嵌め込まれ、導入部38の上端周縁に設けられているフランジ部45が管部37との間に挟み込まれることで筒部34に固定されている。
【0036】
開閉弁33の開閉部39には、その厚み方向の中央を上下方向に貫通するスリット状貫通孔40が形成されており、これにより、弾性を有する一対のシート状部材の両端同士が接合されたような構成となっている。このスリット状貫通孔40は、導入部38の内側と開閉部39の先端面(下端面)とを連通させるものであり、導入部38の軸方向(即ち、導入部38を通じて開閉弁33内に導入される液体薬剤10の流れ方向)から見て洗浄水流路11を流れる洗浄水の流れ方向と平行なスリット状に形成されている。なお図10に示すように、開閉弁33の開閉部39は外力が加わっていない状態ではスリット状貫通孔40を閉じた状態で自己の形状が保持される。
【0037】
開閉弁33の薄片状の開閉部39の先端部は、前述のエジェクタ管20の小径部24に形成されたスリット孔35内に幅方向の隙間43を介して挿入される。これにより開閉弁33のスリット状貫通孔40の開閉部39の先端開口が拡径溝部240の奥面241に位置する。つまり本例の分岐経路27は、循環経路26から順に連続して配管される上記管部37、筒部34の下部、開閉弁33で構成されている。
【0038】
また筒部34の周壁部において開閉部39に対向する位置には通気孔41が設けられており、筒部34内の開閉弁33の開閉部39外側に形成された空間42を、通気孔41を介して外部(大気)に連通させている。これにより開閉弁33がスリット状貫通孔40を閉じた図10の状態では、洗浄水流路11の薬剤供給経路12との合流部15は、開閉弁33の開閉部39の先端部とスリット孔35の内周面との間に形成された隙間43及び連通口340、空間42、通気孔41を順に介して外部に連通することとなり、これら隙間43及び連通口340、空間42、通気孔41で洗浄水流路11の薬剤供給経路12との合流部15を大気に開放させる大気開放路44が構成される。また、開閉弁33がスリット状貫通孔40を開いた図11の状態でも、大気開放路44により、絞り流路部22内の薬剤供給経路12との合流部15は、連通口340、空間42、通気孔41を順に介して大気に連通することとなる。
【0039】
上記開閉弁33は、薬剤入り洗浄水吐出モード時においては、図11に示すように薬剤供給用ポンプ13が付与する圧力により開閉部39が弾性変形してスリット状貫通孔40を広げるように設定されている。このため薬剤入り洗浄水吐出モードにおいては薬剤供給経路12の分岐経路27と洗浄水流路11とが開閉弁33のスリット状貫通孔40を介して連通し、薬剤供給用ポンプ13により送り込まれる液体薬剤10が、薬剤供給用ポンプ13の圧力及び洗浄水流路11の合流部15で発生する負圧の作用によって、洗浄水流路11を流れる洗浄液中に安定的に供給される。なおこの時、弾性変形した開閉部39の先端部の外周面がスリット孔35の内壁に当接し、スリット状貫通孔40の開口幅を一定範囲に規制するように設定されている。即ち本例にあっては上記スリット孔35の幅方向の内壁が、スリット状貫通孔40の開口幅を一定範囲に規制する規制手段となる。
【0040】
また薬剤供給用ポンプ13が停止される洗浄水吐出モード時においては、開閉弁33には薬剤供給用ポンプ13の圧力が加わらず、図10に示すように開閉弁33は開閉部39が弾性復帰してスリット状貫通孔40が閉じられるように設定されている。このため洗浄水吐出モードにおいては、薬剤供給経路12の分岐経路27と洗浄水流路11の連通状態が遮断される。即ち、薬剤供給用ポンプ13の運転のオンオフに連動して、開閉弁33の開閉部39におけるスリット状貫通孔40の開閉が自動的に切り替えられる構成となっている。
【0041】
また、スリット状貫通孔40が拡径溝部240の奥面241に位置するため、薬剤入り洗浄水吐出モード時においては、スリット状貫通孔40が拡径溝部240を流れる洗浄水の流れに臨み、このスリット状貫通孔40を介して洗浄水中に安定的に供給される。
【0042】
そして、ボウル洗浄モードの停止時においては、洗浄水流路11中の洗浄水の流れが停止し、洗浄水が洗浄水流路11中に滞留している。しかし、洗浄水の吐出口9はボウル部5内に開放状態であるため、ボウル洗浄モードが停止した後に、連通口340を介して拡径溝部240に大気が流入すると共に、洗浄水が吐出口9から若干流出する。そのため、連通口340を介して大気が流入して洗浄水流路11中に洗浄水が充満せず、洗浄水流路11中の水位は、絞り流路部22の前後の部分の上面よりも若干低くなっている。このため、洗浄水流路11の絞り流路部22の前後の部分の上面と略同じ高さに位置するスリット状貫通孔40(すなわち開閉弁33の下端)は、洗浄水流路11中に滞留している洗浄水に接触しにくくなる。
【0043】
このため、開閉弁33が洗浄水に接触して、洗浄水中に含まれる塩素イオンにより開閉弁33が劣化するのが防止され、開閉弁33の劣化による閉止性能の低下が防止される。
【0044】
また、洗浄水流路11の吐出口9近傍の下端部に、下方に傾斜する傾斜面または下方に凹没する段差部91が形成されることで、ボウル洗浄モードが停止する際に、洗浄水が吐出口9から流出しやすくなる。これにより、連通口340を介して流入する大気量が増加し、洗浄水流路11中に滞留する洗浄水の水位がより低くなり、開閉弁33が洗浄水により一層接触し難くなる。
【0045】
なお、スリット状貫通孔40の開口幅を一定範囲に規制する規制手段については、スリット孔35の内周面に限らず、筒部34の他の部分や他部材によって規制する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 便器装置
5 ボウル部
6 洗浄水吐出装置
9 吐出口
10 液体薬剤
11 洗浄水流路
12 薬剤供給経路
13 薬剤供給用ポンプ
22 絞り流路部
33 開閉弁
35 スリット孔
40 スリット状貫通孔
240 拡径溝部
241 奥面
340 連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される洗浄水を吐出口から外部に吐出する洗浄水流路と、前記洗浄水流路に形成されたベンチュリ管状の絞り流路部に合流する薬剤供給経路と、前記洗浄水流路を流れる洗浄水に前記薬剤供給経路から液体薬剤を供給するための圧力を付与する薬剤供給用ポンプと、前記薬剤供給経路中に配される開閉弁とを具備し、前記開閉弁は、前記薬剤供給用ポンプの運転により開口し且つ運転停止により閉口するスリット状貫通孔を有する弾性部材であり、前記絞り流路部の内壁の上面の前記薬剤供給経路と合流する部分に上方に凹没し流れ方向に開口する拡径溝部が形成され、前記スリット状貫通孔が前記拡径溝部の奥面に位置し且つ前記洗浄水の流れに略平行となるように配し、前記絞り流路部に内部を大気に連通させて拡径溝部に空気を供給する連通口が形成されることを特徴とする洗浄水吐出装置。
【請求項2】
前記拡径溝部の流れ方向に直交する幅が5mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水吐出装置。
【請求項3】
前記拡径溝部の前記絞り流路部周囲の内壁からの深さが2〜5mmであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水吐出装置。
【請求項4】
前記洗浄水流路の前記吐出口近傍の下端部に、下方に傾斜する傾斜面または下方に凹没する段差部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−132177(P2012−132177A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284011(P2010−284011)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】