説明

洗浄装置

【課題】本発明は上記実情に鑑み、洗浄効率の向上と共に、操作性及び洗浄性能の向上を図り得る洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄対象面72に当接させる二つのブラシ9を各別に有する二つのブラシ駆動機構3を備え、夫々のブラシ駆動機構3が、回転駆動部8と、ブラシ9と、当該ブラシ9が回転駆動部8の回転軸心の周りに自転を伴わず公転のみを行うよう、回転駆動部8の回転運動をブラシ9に伝達する駆動伝達機構とを備えると共に、二つのブラシ駆動機構3を各別に保持する二つの保持部4と、当該二つの保持部4をそれらの相対角度を変更可能に枢支し、作業用のハンドル6を取付けた装置本体2とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによってブラシを回転させてインキ転移機構であるアニロックスロールのセル表面などの洗浄作業を行う洗浄装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、アニロックスロールのセル表面などの洗浄作業を効率良く行うために、洗浄対象物上の異なる位置に当接する二つのブラシと、これら二つのブラシを一定の角度をもって固定する一つのブラシ保持部材と、前記ブラシ保持部材を駆動させる一つのモータとから構成される洗浄装置に関する技術があった。
【0003】
この装置は、ブラシ保持部材をモータの出力軸の周りに、自転を伴わずに公転させるものである。この結果、同時に二つのブラシを駆動できるという点と、対向する二つの前記ブラシで洗浄対象物を挟み込むような形で洗浄作業が行えるという点とで作業効率の向上が図られていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術では、両ブラシは所定の相対角度を保ちつつ洗浄対象物に当接しながら、夫々が同じ軌跡の公転運動を行う。よって、一方のブラシが洗浄対象物に当接する方向へ動くときは、他方のブラシは洗浄対象物から離れる方向へ動く。その逆の場合も同様である。そのため、両ブラシが洗浄対象面に当接する度に振動が発生していた。また、ブラシは洗浄対象面に対して飛び跳ねる様な動作を行う結果、洗浄効果にムラが生じることもあった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑み、洗浄効率の向上と共に、操作性及び洗浄性能の向上を図り得る洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1特徴構成)
本発明の洗浄装置の特徴は、洗浄対象面に当接させる二つのブラシを各別に有する二つのブラシ駆動機構を備え、夫々のブラシ駆動機構が、回転駆動部と、ブラシと、当該ブラシが前記回転駆動部の回転軸心の周りに自転を伴わず公転のみを行うよう、前記回転駆動部の回転運動を前記ブラシに伝達する駆動伝達機構とを備えると共に、前記二つのブラシ駆動機構を各別に保持する二つの保持部と、当該二つの保持部をそれらの相対角度を変更可能に枢支し、作業用のハンドルを取付けた装置本体とを備えたことにある。
【0007】
(作用効果)
本構成によると、二つのブラシの相対角度を変更可能に構成しつつ、各別に公転運動させるため、洗浄対象物が管等の曲面を有するものであっても、夫々の前記ブラシを曲面に対して接線状に当接させることができる。このため、各ブラシの洗浄効果が最大に発揮される。
【0008】
夫々の前記ブラシの駆動方向が洗浄対象面の広がり方向に一致するため、ブラシは前記洗浄対象面から過大な反力を受けることがなく、極めて円滑に駆動する。よって、洗浄装置全体に発生する振動が少なくなる。
【0009】
また、双方のブラシ駆動機構は独立に回転運動するが、互いの回転運動によって、双方の前記ブラシの公転運動による振動が相互に打ち消される効果も期待できる。よって、そもそも洗浄装置に発生する振動が大幅に軽減されるため、作業者の疲労度も少なくなる。
【0010】
一つのブラシを一つの回転駆動部によって回転させるため、回転駆動部の回転能力を小さく抑えられる。
【0011】
双方のブラシは自転を伴わない公転運動を行う。このため、自転運動の場合や自転を伴う公転運動の場合に比べて、ブラシが受ける洗浄対象面から位置ずれしようとする反動が小さく、洗浄作業が容易となる。また、回転方向についての制約もない。
【0012】
(第2特徴構成)
本発明の洗浄装置の特徴は、前記装置本体に対して前記保持部を揺動可能に取付ける構造が、前記装置本体と前記保持部とを揺動自在に枢支する枢支軸と、前記装置本体と前記保持部との相対角度を固定する固定具とを備えると共に、前記固定具の位置を、前記枢支軸を挟んで、前記保持部に対する前記ブラシ駆動機構の取付中心位置とは反対の側に設けてあることにある。
【0013】
(作用効果)
本構成によると、枢支軸と前記ブラシ駆動機構の取付中心位置との距離と、前記枢支軸と固定具との距離とがある程度バランスして、前記保持部の角度固定を位置ずれさせようと前記ブラシから作用する外力モーメントを緩和することができる。このため、長時間安定して洗浄装置を運転することができる。また、上記双方の距離が近似しているので、前記固定具が発生させるべき固定力も小さなもので済み、装置構成をコンパクトなものにすることができる。
【0014】
(第3特徴構成)
本発明の洗浄装置の特徴は、前記固定具が、二つの前記保持部を同時に固定できるよう構成してあることにある。
(作用効果)
本構成によると、二つの前記保持部を固定する前記固定具を共用化することで、二つの前記ブラシの角度設定を迅速に行うことができる。また、部品点数も少なくなって装置構成が簡略化され、組み立て工数、装置のコストを低減化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の洗浄装置の実施例として、アニロックスロールのセル表面を洗浄する洗浄装置を示す。上記実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[概要]
本発明の洗浄装置1は、図1に示すごとく、二つのブラシ駆動機構3と、二つの保持部4と、装置本体2とを備えており、二つのブラシ9を洗浄対象物71の洗浄対象面72に当接させて洗浄作業を行うものである。
【0017】
[装置本体]
装置本体2は、図1〜3に示すごとく、二つのブラシ駆動機構3を各別に保持する二つの保持部4を、それらの相対角度を変更可能に枢支する二枚のプレート5と、作業用のハンドル6とを備えている。
【0018】
本構成によると、図2に示すごとくブラシ9の相対角度が変更可能であるため、図1に示すごとく洗浄対象面72が曲面であっても、夫々のブラシ9を曲面に対して接線状に当接させることができる。よって、各ブラシ9の洗浄効果が最大に発揮される。また、夫々のブラシ9の駆動方向が洗浄対象面72の広がり方向に一致するため、ブラシ9は洗浄対象面72から過大な反力を受けることがなく、極めて円滑に駆動する。よって、洗浄装置1に発生する振動が少なくなる。
【0019】
図3に示すごとく、作業用のハンドル6の延長上にグリップ7を備えているため、洗浄装置1を確実に保持することができ、また、小回りの利く操作ができる。グリップ7の反対側のプレート5には、バルブ51が接続されており、バルブ51を介して装置内側へエアーを供給する構成となっている。また、グリップ7の側のプレート5にはエアーチューブ52を挿通する穴が設けられており、エアーチューブ52を大きく切り回す必要がなく邪魔にならない。
【0020】
[ブラシ駆動機構]
ブラシ駆動機構3は、一つの回転駆動部8と、一つのブラシ9と、一つの駆動伝達機構(図示しない)とから構成されていると共に、保持部4に取付けられている。その取付中心位置61を図2及び3に示す。
【0021】
回転駆動部8は、エアー式のモータにより構成されている。本装置へのエアーの流入はバルブ51の開閉によって調整し、その後エアーは二本のエアーチューブ52に分流し、夫々のモータに流入する。夫々のモータには流量調整バルブ53が備えられており、流量調整が可能となっている。エアー式のモータは公知の製品の転用が可能であるため、説明は省略する。
【0022】
駆動伝達機構は、回転駆動部8の回転運動を、自転を伴わない公転運動に変換してブラシ9に伝達するものである。これは、回転駆動部8の回転中心とブラシ9の回転中心とを偏心させるという公知の技術を利用しているものであるため、詳細な説明は省略する。
【0023】
ブラシ9は、回転駆動部8の回転運動により、自転を伴わない公転運動を行う。このため、自転運動のみの場合や自転を伴う公転運動の場合に比べてブラシ9の動きが小さく、洗浄作業時の反動が少ない。また、公転運動の回転方向についての制約もない。ブラシ9の素材は洗浄対象物の素材などを勘案して、ステンレス、真鍮、プラスチック、ナイロンなどとすることができる。
【0024】
本構成によると、双方のブラシ9は独立して回転運動を行うため、一方のブラシ9の回転運動は他方のブラシ9の回転運動の影響を受けにくく、洗浄効果にムラが生じにくい。さらに、互いの回転運動によって双方のブラシ9の公転運動による振動が相互に打ち消される効果も期待できる。そもそも洗浄装置1に発生する振動が大幅に軽減されるため、作業者の疲労度も少なくなる。
【0025】
一つの回転駆動部8は一つのブラシ9のみを回転させるため、その回転能力は小さく抑えられる。したがって、装置全体の重量はあまり大きくならない。
【0026】
[保持部]
保持部4は、二つのブラシ駆動機構3を各別に保持している部材で、ブラシ駆動機構3を保持する底部11と、底部11を挟んで対向する二つの立ち上がり面12とから構成されていると共に、底部11には回転駆動部8を固定するための基礎部(図示しない)などが設けられている。保持部4は、図2に示すごとく、装置本体2に対して枢支軸21を支点として揺動可能であって、固定具31によって装置本体2へ固定されている。
【0027】
[保持部の枢支方法]
上述したように、装置本体2は二つの保持部4の相対角度を変更可能に枢支しており、その枢支方法の一例について述べる。
【0028】
枢支軸21は、図4に示すごとく、装置本体2の両プレート5に夫々設けられた枢支孔22と、両保持部4の立ち上がり面12に夫々設けられた被枢支孔23と、双方の孔を揺動可能に連結するボルト41とから構成される。一つの被枢支孔23には一つの枢支孔22が対応している。
【0029】
一方、固定具31は、装置本体2の両プレート5に夫々設けられた固定孔32と、両保持部4の立ち上がり面12に夫々設けられた被固定孔33と、双方の孔を連結固定するボルト42とから構成される。被固定孔33は円弧状の長孔であって、その円弧の中心角が保持部4の揺動可能な範囲である。一つの被固定孔33には一つの固定孔32が対応している。
【0030】
ボルト41は被枢支孔23と枢支孔22とに、ボルト42は被固定孔33と固定孔32とに挿通される。枢支孔22、固定孔32のみに、ボルト41の軸の雄ネジに対応する雌ネジが切ってあり、ボルト41、42を締めると、保持部4は装置本体2へ固定される。ボルト41、42を緩めると、保持部4は枢支軸21を中心として揺動可能となる。なお、各部材間の固定力を大きくするために、各部材の当接表面に凹凸を付して摩擦力を高くするなどの措置を施すことが望ましい。
【0031】
続いて、枢支軸21、固定具31、及び、ブラシ駆動機構3の取付中心位置61の位置関係について説明する。洗浄装置1を操作する際、ブラシ9に作用する洗浄対象面からの反力や回転による幾分かの振動などの外力は、装置本体2に対する保持部4の相対角度を変化させるように作用する。この外力の影響を軽減させるために、固定具31は枢支軸21を挟んで取付中心位置61とは反対の側に配置してある。
【0032】
本構成によると、枢支軸21と取付中心位置61との距離と、枢支軸21と固定具31とがある程度バランスして、保持部4の角度固定を位置ずれさせようとブラシ9から作用する外力モーメントを緩和することができる。このため、装置を長時間安定して運転することができる。また、上記双方の距離が近似しているので、固定具31が発生させるべき固定力も小さなもので済み、装置構成をコンパクトなものにできる。
【0033】
保持部4と装置本体2のプレート5とに設けられた孔と、ボルトとで構成する極めて簡易な枢支方法を示したが、保持部4が装置本体2に対して揺動可能であると共に、保持部4を装置本体2に対して固定できる手段が備えられていれば、その枢支方法には拘らず、ボルトナットで構成する方法や、ピニオンラック構造によって角度調整を行う方法であっても良い。
【0034】
[別実施の形態1]
図5に示すごとく、固定具34が二つの前記保持部を同時に固定できるよう構成してある実施例について説明する。固定具34に係る箇所以外の構造は、前述の内容と同様であるため、説明は省略する。同じ構造の箇所には同じ符号を付すこととする。
【0035】
固定具34は、図6に示すごとく、装置本体2の両プレート5に夫々設けられた一つの固定孔35と、両保持部4の立ち上がり面12に夫々設けられた被固定孔36との三つの孔を揺動可能に連結固定するボルト43とから構成される。被固定孔36は円弧状の長孔であって、その円弧の中心角が保持部4の揺動可能な範囲である。両保持部4の被固定孔36が互いに重なり合うように、両保持部4の立ち上がり面12は底部11の幅を超えて延長され、延長面13を形成している。また、両保持部4がプレート5の表面に沿って安定して揺動できるよう、一方の保持部4の延長面13を他方の保持部4の延長面13の厚さ分だけ装置本体2の外側に逃がしてある。
【0036】
ボルト43は、両保持部4の夫々の被固定孔36と固定孔35とに挿通される。固定孔35のみに、ボルト43の軸の雄ネジに対応する雌ネジが切ってあり、ボルト41、43を締めると、両保持部4は装置本体2へ固定される。ボルト41、43を緩めると、保持部4は枢支軸21を中心として揺動可能となる。なお、各部材間の固定力を大きくするために、各部材の当接表面に凹凸を付して摩擦力を高くするなどの措置を施すことが望ましい。
【0037】
本構成によると、固定具34を共用化することで、二つのブラシ9の角度設定を迅速に行うことができる。また、部品点数も少なくなって装置構成が簡略化され、組み立て工数、装置のコストを低減化することができる。
【0038】
[別実施の形態2]
図7に示すごとく、固定具37が二つの前記保持部を同時に固定できるよう構成してあると共に、両保持部4が同期して揺動するよう構成してある実施例について説明する。固定具37に係る箇所以外の構造は、前述の内容と同様であるため、説明は省略する。同じ構造の箇所には同じ符号を付すこととする。
【0039】
固定具37は、図8に示すごとく、装置本体2の両プレート5に夫々設けられた一つの固定孔38と、両保持部4の立ち上がり面12に夫々設けられた第1被固定孔39と、第2被固定孔40との三つの孔を揺動可能に連結固定するボルト44とから構成される。固定孔38は円弧状の長孔であって、その円弧の中心角が保持部4の揺動可能な範囲である。一方の保持部4に設けられた第1被固定孔39はボルト44がスライドするための直線状の長孔であって、他方の保持部4に設けられた第2被固定孔40はボルト44が貫通するだけの孔である。
【0040】
ボルト44は、第1被固定孔39と第2被固定孔40と固定孔38とに挿通される。第1被固定孔39、第2被固定孔40及び固定孔38には雌ネジは切っておらず、ボルト44はナット45により締付固定する。ボルト41、44を締めると、保持部4は装置本体2へ固定される。ボルト41、44を緩めると、両保持部4は枢支軸21を中心として揺動可能となり、一方の保持部4を揺動させると、他方の保持部4も同期して揺動する。
【0041】
本構成によると、一方の保持部4の位置を決めるだけで、他方の保持部4の位置も決まる。このため、両保持部4の位置設定が容易であり、微調整の手間が省ける。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】洗浄装置を示す斜視図
【図2】洗浄装置を示す正面図
【図3】洗浄装置を示す上面図
【図4】保持部の装置本体に対する枢支方法を示す斜視図
【図5】固定具を共用化した場合の洗浄装置を示す斜視図
【図6】固定具を共用化した場合の保持部の装置本体に対する枢支方法を示す斜視図
【図7】両保持部の揺動運動を同期させた場合の洗浄装置を示す斜視図
【図8】両保持部の揺動運動を同期させた場合の保持部の装置本体に対する枢支方法を示す斜視図
【符号の説明】
【0043】
1 洗浄装置
2 装置本体
3 ブラシ駆動機構
4 保持部
6 作業用のハンドル
8 回転駆動部
9 ブラシ
21 枢支軸
31 固定具
61 取付中心位置
72 洗浄対象面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄対象面に当接させる二つのブラシを各別に有する二つのブラシ駆動機構を備え、
夫々のブラシ駆動機構が、回転駆動部と、ブラシと、当該ブラシが前記回転駆動部の回転軸心の周りに自転を伴わず公転のみを行うよう、前記回転駆動部の回転運動を前記ブラシに伝達する駆動伝達機構とを備えると共に、
前記二つのブラシ駆動機構を各別に保持する二つの保持部と、
当該二つの保持部をそれらの相対角度を変更可能に枢支し、作業用のハンドルを取付けた装置本体とを備えた洗浄装置。
【請求項2】
前記装置本体に対して前記保持部を揺動可能に取付ける構造が、前記装置本体と前記保持部とを揺動自在に枢支する枢支軸と、
前記装置本体と前記保持部との相対角度を固定する固定具とを備えると共に、
前記固定具の位置を、前記枢支軸を挟んで、前記保持部に対する前記ブラシ駆動機構の取付中心位置とは反対の側に設けてある請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記固定具が、二つの前記保持部を同時に固定できるよう構成してある請求項1又は2に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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