説明

洗濯乾燥機

【課題】吊り干乾燥が可能であるとともに、蓋部へ衣類を吊り下げる時などには蓋部が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部を開け易くすることが容易となる洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】蓋部から槽部内に向けて吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作を行う洗濯乾燥機であって、外筐部に設けられており、蓋部に向けて突出する可動部を有し、該可動部が蓋部を支持する保持機構を備え、可動部は、突出する方向へ弾性的に付勢されており、該付勢に抗して押されることにより、該突出の大きさが小さくなるように可動し、突出の大きさが略最大であるときに、蓋部が全開と全閉の間に位置するように、蓋部を支持する洗濯乾燥機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類などの洗濯や乾燥に用いられる洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類などの洗濯や乾燥に用いられる洗濯乾燥機が広く利用されている。多くの洗濯乾燥機は、上方に開口した開口部を有している外筐部と、外筐部の内側に設けられ、開口部を介して洗濯物が入れられる槽部(例えば脱水槽)と、外筐部にヒンジ機構によって上下に回動可能となるように取り付けられており、該回動によって開口部を開閉する蓋部と、を備えた構成となっている。
【0003】
これにより洗濯乾燥機は、蓋部を開けて洗濯物の出し入れ等が可能であるとともに、蓋部を閉じて内部を閉空間とすることが可能である。また洗濯乾燥機は、槽部内に供給された水を攪拌翼(パルセータ)を用いて撹拌することによって洗濯動作を行い、槽部内に温風を供給することによって乾燥動作を行う。
【0004】
また洗濯乾燥機としては、蓋部にハンガー等を用いて衣類を吊り下げておき、この衣類を乾燥させること(吊り干乾燥)が可能なものも提案されている。吊り干乾燥によれば、槽部の底に積まれている衣類を乾燥させるような場合に比べて、一般的に乾燥効率が良く、また、しわ等が付き難いため、好ましい状態での仕上がりが期待される。
【0005】
吊り干乾燥を行うに際し、予めユーザは蓋部を開けておき、蓋部の内側に衣類を吊り下げておく必要がある。その後ユーザは、蓋部を閉じて洗濯乾燥機に吊り干乾燥動作を実行させ、当該動作が終了したら再度蓋部を開け、吊り干乾燥済みの衣類を取り出すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−166991号公報
【特許文献2】特開2003−326092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように吊り干乾燥を行うに際して、ユーザは、蓋部の内側へ衣類を吊り下げるときに、蓋部を開けておく必要がある。このとき蓋部と水平面との角度が大き過ぎると(つまり、蓋部が立ち過ぎていると)、衣類が蓋部や他の衣類に接触し易くなり、衣類の汚れや色移りの原因となるために好ましくない。一方で、この角度が小さ過ぎると(つまり、蓋部が寝過ぎていると)、開口部分が小さくなり、衣類を吊り下げる作業が難しくなる。
【0008】
そのため、蓋部は適度な位置(通常、蓋部と水平面との角度が45°程度となる位置)に保持されることが好ましい。しかしこのようにするために、例えばユーザが片手で蓋部を支える必要がある場合には、他方の手だけで衣類を吊り下げる作業を強いられ、ユーザの負担が大きくなる。また、手などで蓋部を適度な位置に支え続けることは、ユーザにとって面倒であるとも考えられる。
【0009】
また吊り干乾燥動作が終了したら、衣類を取り出すために再度蓋部を開ける必要がある。しかしこのとき、蓋部は、衣類が吊り下げられている分だけ重くなっている。そのため蓋部は比較的開け難くなっており、蓋部を開ける作業は、ユーザにとって負担が大きいと考えられる。
【0010】
本発明は上述した問題に鑑み、吊り干乾燥が可能であるとともに、蓋部へ衣類を吊り下げる時などには蓋部が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部を開け易くすることが容易となる洗濯乾燥機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る洗濯乾燥機は、上方に開口した開口部を有している外筐部と、前記外筐部の内側に設けられ、前記開口部を介して洗濯物が入れられる槽部と、前記外筐部に、ヒンジ機構によって上下に回動可能となるように取り付けられており、該回動によって前記開口部を開閉する蓋部と、を備え、前記槽部に入れられた洗濯物を洗濯する洗濯動作、および、前記蓋部から前記槽部内に向けて吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作を行う洗濯乾燥機であって、前記外筐部および前記蓋部のうちの一方である設置側に設けられており、他方である非設置側に向けて突出する可動部を有し、該可動部が該非設置側を支持する保持機構を備え、前記可動部は、突出する方向へ弾性的に付勢されており、該付勢に抗して押されることにより、該突出の大きさが小さくなるように可動し、前記突出の大きさが略最大であるときに、前記蓋部が全開と全閉の間に位置するように、前記非設置側を支持する構成とする。
【0012】
本構成によれば、吊り干乾燥が可能であるとともに、保持機構が備えられている。そのため、蓋部へ衣類を吊り下げる時などには蓋部が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部を開け易くすることが容易となる。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、前記設置側は、前記外筐部であり、前記非設置側は、前記蓋部である構成としてもよい。
【0014】
また上記構成において、前記保持機構は、ユーザの操作に応じて、前記蓋部を全閉としても前記蓋部を支持しない位置に、前記可動部を固定する固定機構を備えた構成としてもよい。
【0015】
本構成によれば、例えば通常の洗濯時などにおいて、蓋部を閉めるときに大きな力が必要となったり、蓋部が勢い良く開いたりすることが防止される。
【0016】
また上記構成としてより具体的には、前記保持機構は、前記突出の大きさが略最大であるときに、前記蓋部を水平面からの角度が略45度となる位置に、前記蓋部を支持する構成としてもよい。
【0017】
また上記構成において、前記蓋部には、前記乾燥対象物を取り付けたハンガーが掛けられる、フックが設けられている構成としてもよい。本構成によれば、蓋部に乾燥対象物を吊り下げることが容易となる。
【0018】
また上記構成において、前記保持機構は、前記ヒンジ機構の近傍に設けられている構成としてもよい。本構成によれば、洗濯物の投入や衣類の吊り下げなどに際し、保持機構が邪魔になる事態を回避することができ、更に、可動部を比較的短くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る洗濯乾燥機によれば、吊り干乾燥が可能であるとともに、保持機構が備えられている。そのため、蓋部へ衣類を吊り下げる時などには蓋部が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部を開け易くすることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機の前方斜め上視点で示す外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機の側方視点で示す外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機の側方視点で示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機の概略化した断面図である。
【図5】フックにハンガーを掛けた状態を示す説明図である。
【図6】フックにハンガーを掛けた状態を示す別の説明図である。
【図7】保持機構によって蓋部が支持された状態についての説明図である。
【図8】保持機構によって蓋部が支持された状態についての別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳述する。図1は、本発明の実施形態に係る洗濯乾燥機1を前方斜め上視点で示す外観図であり、図2は、洗濯乾燥機1を側方視点で示す外観図である。また図3は、洗濯乾燥機1を側方視点で示す断面図である。なお図1および図2は、蓋部15が開かれた状態を表しており、図3は、蓋部15が閉じられており、かつ、一つのフック15bにハンガー2が掛けられている状態を表している。また図3の左上の部分は、破線で囲まれた領域の拡大図を表している。
【0022】
また図4は、洗濯乾燥機1の主な構造を理解容易とするため、上面板11より下側の部分について、側方視点による洗濯乾燥機1の概略化した断面図を示したものである。図2から図4の各々に示した洗濯乾燥機1は、左側が前面、右側が背面である。
【0023】
[洗濯乾燥機の全体的な構成等について]
以下、図1〜図4などを参照しながら、洗濯乾燥機の全体的な構成等について説明する。洗濯乾燥機1は全自動型であり、直方体形状の外箱10を備えている。外箱10は、略直方体に成形され、その上側は開放されている。外箱10の上側の開放部は上面板11で覆われている。
【0024】
上面板11の前部には、洗濯乾燥機の操作を受付ける操作部(操作ボタン等)が設けられている。上面板11の背面側にはバックパネル14が装着される。
【0025】
上面板11の中央部には、洗濯乾燥機1内に洗濯物を投入するための出入口(開口部)11aが開設されている。出入口11aは、バックパネル14の前端部に設けたヒンジ部15aで枢支される蓋部15によって開閉される。ヒンジ部15aは、洗濯乾燥機1の前後方向の中心より後側の位置に設けられている。
【0026】
蓋部15の周縁にはパッキン(不図示)が設けられ、蓋部15の全閉時には、出入口11aと蓋部15との間が密封される。なお蓋部15の前側には、全閉時に上面板11の前側上部に引っ掛けて蓋部15を係止(ラッチ)することが可能な、爪15cが設けられている。爪15cが上面板11に引っ掛かっている状態では、蓋部15は、上向きの力が加わっても開かないようになっている。
【0027】
図2に示すように蓋部15は、ヒンジ部15aの軸を中心にして、上下方向(前後方向と見ることも出来る)に回動可能となっている。なお以下の説明では、蓋部15の回動方向の位置を、水平面を基準(0°)とした角度(開く方向を正とし、以下では「蓋部15の角度」と称することがある)で表す。蓋部15は図2に示すように、0°よりやや小さい位置(全閉の位置)から、90°よりやや大きい位置(全開の位置)までの範囲内で、回動可能となっている。
【0028】
これによりユーザは、蓋部15を上方向へ回動させて蓋部15を開き、下方向へ回動させて蓋部15を閉じることが可能である。蓋部15が開かれている状態(換言すれば、出入口11aが開かれている状態)では、ユーザは、脱水槽30に洗濯物などを投入したり、脱水槽30から洗濯物などを取り出したりすることができる。
【0029】
また蓋部15における出入口11aに対向する面(下側の面)には、ハンガー2を掛けるためのフック15bが設けられている。これによりユーザは、図5(前方斜め上視点の図)および図6(側方視点の図)に示すように、蓋部15を開けた状態で、衣類(乾燥対象物)を取り付けたハンガー2をフック15bに掛けることが可能である。なお図5および図6では、衣類の表示については省略している。
【0030】
この状態から、ユーザによって蓋部15が閉じられる(換言すれば、出入口11aが閉じられる)ことにより、脱水槽30内において衣類を吊り下げた状態とすることが可能である。なお図3(特に左上の部分)に示すように、フック15bは左右方向を軸とする円筒形状の部分を有している。そしてハンガー2は鉤形状の部分を有しており、この鉤形状の部分がフック15bの円筒形状の部分に、前後方向へ回転自在に掛けられるようになっている。また左右方向へ回転自在に掛けられるようにしても良い。
【0031】
これによりフック15bに掛けられたハンガー2は、蓋部15の角度が変動しても、重力の作用によって常に下向き(衣類を自然に吊り下げる向き)となる。後述する通り洗濯乾燥機1は、ハンガー2を用いて吊り下げられた衣類に対し、吊り干乾燥を行うことが可能となっている。
【0032】
また上面板11における出入口11aに臨む部分であって、かつ、ヒンジ部15aの近傍である部分(洗濯乾燥機1の前後方向の中心より後側の位置)には、保持機構16が設けられている。保持機構16は、必要に応じて、棒状の可動部を蓋部15に向けて突出させることが可能であり、蓋部15に支持することにより、蓋部15を開いた状態に保持するための機構である。保持機構16の詳細な構成および利用形態については、改めて説明する。
【0033】
外箱10の内部には、洗濯槽を兼ねる脱水槽30と、脱水槽30を収容する水槽20が収容される。脱水槽30は、洗剤を溶かした水またはすすぎ用の水(以下これらを総称して「洗濯水」という)を溜める。水槽20及び脱水槽30は、ともに上方に向けて開口した有底筒状のカップの形状を呈しており、各々軸線を垂直にして水槽20を外側、脱水槽30を内側とする形で同心的に配置される。
【0034】
水槽20は、サスペンション部材21によって吊り下げられる。サスペンション部材21は、水槽20の外面下部と外箱10の内面コーナー部とを連結する形で計4箇所に配備され、水槽20を水平面内で揺動できるように支持している。
【0035】
脱水槽30は上方にテーパ状に広がる周壁を有し、この周壁にはその最上部に環状に配置した複数個の脱水孔31を除いて、液体を通すための開口部はない。即ち、脱水槽30はいわゆる「孔なし」タイプに形成される。脱水槽30の上部開口部の縁には、洗濯物の脱水のため脱水槽30を高速回転させたときに振動を抑制する働きをする、環状のバランサ32が装着される。脱水槽30の内部底面には、槽内で洗濯水の流動を生じさせるためのパルセータ33が配置される。
【0036】
水槽20の下面には、駆動ユニット40が取り付けられる。駆動ユニット40はモータ41及びクラッチ・ブレーキ機構43を有している。クラッチ・ブレーキ機構43は、モータ41にベルト42で連結され、脱水軸44及びパルセータ軸45が上方に突出する。クラッチ・ブレーキ機構43は電磁力で動作し、脱水軸44及びパルセータ軸45の一方を、択一的にモータ41に連結する。また、クラッチ・ブレーキ機構43は電磁力によって脱水軸44の回転にブレーキを掛けるとともに、ブレーキを解除する。
【0037】
脱水軸44とパルセータ軸45は二重軸構造となっており、脱水軸44が外側に配されてパルセータ軸45が内側に配される。脱水軸44は、水槽20を貫通して脱水槽30に連結され、脱水槽30を軸支する。パルセータ軸45は、水槽20及び脱水槽30を貫通してパルセータ33に連結され、パルセータ33を軸支する。脱水軸44と水槽20との間、及び脱水軸44とパルセータ軸45との間には、各々水もれを防ぐためのシール部材が配置される。
【0038】
上面板11の下側には、側面が蛇腹状である略筒形状の連結部品17が固定されている。連結部品17によって、脱水槽30の回転等による水槽20の振動が吸収されるように、上面板11と水槽20とが連結されている。
【0039】
また、上面板11及び連結部品17により、出入口11aの周囲と水槽20の上面との間を遮蔽する遮蔽部が構成される。遮蔽部によって水槽20と出入口11aとの間に密封空間が形成される。これにより、水槽20の上面を開閉する内蓋を必要とせず、蓋部15を閉じて洗濯及び乾燥を行うことができる。
【0040】
外箱10の後部の上面板11上には、乾燥ユニットが設置されている。乾燥ユニットは、送風機やヒータなどを備えており、吊り干乾燥動作の実行時に、脱水槽30の内周壁に沿って温風を吹き出す(脱水層30内に温風を供給する)機能を有している。
【0041】
また上面板11における後側の部分には、給水口が設けられている。給水口は給水弁を介して市水に接続される。このように給水口及び給水弁は、脱水槽30に給水する給水部を構成する。なお給水口は、埃などの異物が内部に入らないように配慮されている。
【0042】
水槽20の底部には、水槽20及び脱水槽30内の水を外箱10の外部に排水する、排水ホース60が取付けられている。脱水槽30には、排水孔62が同一円周上に4箇所設けられ、各排水孔62と排水ホース60との間は、排水ダクト61により連結される。排水ダクト61内には、排水弁63が設けられる。排水弁63を開くと、排水ダクト61及び排水ホース60を介して、脱水槽30内の水が排水される。また、脱水時に脱水槽30の上部から流出した水は、水槽20の周壁と脱水槽30の周壁との間を通って、排水ホース60から排水される。
【0043】
また洗濯乾燥機1は、蓋部15の開閉状態を検知する蓋開閉センサ、脱水槽30の水位を検知する水位センサ、脱水槽30の内部の温度を検知する温度センサ、および脱水槽30の内部の湿度を検知する湿度センサといった、各種のセンサが備えられている。
【0044】
また洗濯乾燥機1には、ユーザの操作や各種センサの検出情報などに応じ、洗濯乾燥機1が適切に動作するように各部を制御する、制御装置が備えられている。当該制御装置は、例えば外箱10の背面上部に配されており、モータ41や乾燥ユニットなどを制御するようになっている。
【0045】
上記構成の洗濯乾燥機1においては、出入口11aから脱水槽30に洗濯物が入れられ、蓋部15が閉じられる。ユーザによって洗濯条件が選択され、洗濯の開始が指示されると、蓋開閉センサにより蓋部15が閉じたことを検知して、洗濯工程の動作が実行される。
【0046】
洗濯工程では、排水弁63を閉じて給水弁が開かれ、給水口から脱水槽30に給水する。脱水槽30に所定量の水が溜まると、水位センサの検知によって給水弁が閉じられる。次に、クラッチ・ブレーキ機構43により、パルセータ軸45をモータ41に連結してモータ41を駆動する。これにより、パルセータ33が回転し、脱水槽30の中の水を攪拌して洗濯動作が行われる。
【0047】
洗濯工程を開始して所定時間が経過すると、排水弁63を開いて脱水槽30内の水が排水され、クラッチ・ブレーキ機構43により、脱水軸44がモータ41に連結される。これにより、モータ41の駆動によって脱水槽30が高速回転して脱水動作が行われる。脱水槽30の高速回転によって洗濯物から飛散した水は、排水ダクト61及び脱水孔31から流出する。
【0048】
脱水動作を開始して所定時間が経過すると、モータ41が停止され、排水弁63を閉じて給水弁が開かれる。脱水槽30に所定量の水が溜まると、水位センサの検知によって給水弁が閉じられる。次に、クラッチ・ブレーキ機構43により、パルセータ軸45をモータ41に連結してモータ41を駆動する。これにより、パルセータ33が回転し、脱水槽30の中の水を攪拌してすすぎ動作が行われる。
【0049】
すすぎ動作を開始して所定時間が経過すると、上記の脱水動作が再度行われる。そして、脱水動作が所定時間行われると、洗濯工程が終了する。また洗濯乾燥機1は、ユーザによる吊り干乾燥動作の実行指示がなされたときには、吊り干乾燥動作を開始する。
【0050】
吊り干乾燥動作は、温風を脱水槽30内に供給して循環させることにより、吊り下げられた衣類の乾燥(吊り干乾燥)を行う動作である。すなわち洗濯乾燥機1は、予め衣類が吊り下げられた状態にて吊り干乾燥動作を行うことにより、当該衣類の吊り干乾燥を実現させる。
【0051】
[保持機構16の構成等について]
洗濯乾燥機1に吊り干乾燥を実行させるにあたり、ユーザは予め、蓋部15を開けておき、衣類を取り付けたハンガー2をフック15bに掛ける必要がある。この際、蓋部15の角度が大き過ぎると、衣類が蓋部15や他の衣類に接触し易くなり、衣類の汚れや色移りの原因となるために好ましくない。一方で、蓋部15の角度が小さ過ぎても、開口部分が小さくなり、フック15bにハンガー2を掛けることが難しくなる。
【0052】
そのため、ハンガー2をフック15bに掛ける際の蓋部15の角度は、概ね45°であることが好ましい。但し蓋部15は、45°付近の位置にある状態では、何らかの支持がなければ、重力の作用によって閉じる方向に動いてしまう。そのため蓋部15は、何らかの手段によって、この状態に支持される必要がある。
【0053】
保持機構16はこのような事情を考慮して設けられたものである。以降に説明する通り、保持機構16によれば、ユーザの負担を軽減させつつ、蓋部15を適切に支持することが可能となっている。
【0054】
まず保持機構16の構成について、図7および図8を参照しながら以下に説明する。なお図7は、保持機構16によって蓋部15が支持された状態の洗濯乾燥機1を表す外観図であり、図8は、図7に表した洗濯乾燥機1の前方視点で示す断面図である。なお図8における右上の部分は、破線で囲まれた領域の拡大図を表している。
【0055】
保持機構16は、可動部16aおよび収納部16bを有している。可動部16aは、上下方向に伸びた中空の棒状(細い円筒状)に形成されており、上側の先端部分16a1は閉じられた状態となっている。そしてこの中空の部分には、例えばバネである弾性体16a2が、上下方向へ弾性的に伸縮する形態で設けられている。
【0056】
収納部16bは、上面板11における出入口11aに臨む部分であって、かつ、ヒンジ部15aの近傍に固定されており、可動部16aを上側から収納することが出来る形状に形成されている。また収納部16bの端面(上側の面)16b1は、ほぼ水平となっており、全閉された蓋部15よりも下側に位置している。
【0057】
可動部16aは、その外側の側面が収納部16bの内側に沿うようにして、上下方向に可動となっている。また可動部16aの可動範囲は、先端部分16a1の位置が端面16b1とほぼ同じ位置となる状態(以下、「最小突出状態」と称することがある)から、大部分が端面16b1から上方向へ突出した状態(以下、「最大突出状態」と称することがある)までの範囲となっている。可動部16aは最大突出状態のとき、例えば、可動部16aの下側に設けられている不図示のツメが収納部16bの端面16b1近傍に引っ掛かることにより、それ以上は上方向へ動かないようになっている。
【0058】
最小突出状態は、端面16b1からの可動部16aの突出の大きさが最小である状態であり、可動部16aの殆どの部分が収納部16bに収納されるように縮められた状態である。また最大突出状態は、端面16b1からの可動部16aの突出の大きさが最大である状態である。なお図7や図8に示されている可動部16aの状態は、概ね、最大突出状態となっている。
【0059】
また弾性体16a2は、一端が、可動部16aの内側の上底(先端部分16a1の裏側)に接しており、他端が、収納部16bの内側の下底に接している。更に弾性体16a2は、可動部16aが最大突出状態となっている状態においても、ある程度縮められた状態(伸びる方向に先端部分16a1を付勢する状態)となるように設定されている。
【0060】
これにより可動部16aは、下方向に押されていない状況(蓋部15を支持していない状況)等においては、弾性体16a2によって突出方向へ付勢されつつ、最大突出状態に保持される。そして可動部16aは、蓋部15等により当該付勢に抗して押されることにより、該突出の大きさが小さくなるように可動である。可動部16aは、付勢の力(弾性体16a2の弾性力)と当該付勢に抗して押される力とが釣り合う位置で、静止することになる。この釣り合う位置は、弾性体16a2のサイズや弾性定数(バネ定数)といった、弾性体16a2の仕様によって定まる。
【0061】
上述したように可動部16aは、端面16b1から上方向へ突出するため、図7や図8に示すように先端部分16a1が蓋部15の下側に当接し、重力によって下方向に動く蓋部15を支持することが可能である。また可動部16aの突出の大きさが大きい程、蓋部15の角度は大きくなる。なお可動部16aが最小突出状態のときは、蓋部15を全閉としても、先端部分16a1と蓋部15は接触しない。
【0062】
ここで可動部16aが最大突出状態のとき、蓋部15は保持機構16によって、ほぼ45°の位置で支持されるようになっている。また弾性体16a2の仕様は、弾性力が適切な状態となるように設定されている。
【0063】
より具体的には、弾性体16a2の仕様は、保持機構16が衣類を取り付けたハンガー2が掛けられた蓋部15を支持している状態においても、可動部16aをほぼ最大突出状態に保持することが出来る程度に(つまり弾性力が弱過ぎて、蓋部15が勝手に下ってくることのないように)設定されている。またこれに加えて、弾性体16a2の仕様は、衣類を取り付けたハンガー2が掛けられた蓋部15を、人が手で押さえて全閉とすることが出来る程度に(つまり弾性力が強過ぎて、人が押さえる程度では蓋部15を全閉に出来ないということがないように)設定されている。
【0064】
また保持機構16には、ユーザの操作に応じて可動部16aをほぼ最小突出状態(蓋部15を全閉としても、蓋部15を支持しない位置にある状態)に固定する固定機構が設けられている。この固定機構は、例えば、先端部分16a1の近傍に径方向へ突出した小さなツメ(突起)が設けられるとともに、このツメに対応した切り欠きが、端面16b1の近傍に設けられることで実現される。
【0065】
この機構によれば、ユーザは先端部分16a1を下向きに押さえて可動部16aを最小突出状態とし、ツメを切り欠きに嵌め込んだ状態で可動部16aを周方向に捻ることで、ツメが収納部16bの側に引っ掛かる。これにより、可動部16aは最小突出状態に固定される。また可動部16aが最小突出状態に固定された状態において、ユーザが可動部16aを反対方向へ捻ると、ツメの引っ掛かりが外れることで固定が解除され、可動部16aを再度突出させることが可能である。但し固定機構の具体的な形態はこれに限られず、様々な形態によって実現され得る。
【0066】
[保持機構16の利用形態について]
次に、保持機構16の利用形態について説明する。洗濯乾燥機1を用いて通常の洗濯などが行われる場合、固定機構によって、可動部16aは最小突出状態に固定された状態(不使用の状態)に保持される。これにより、蓋部15を閉めるときに大きな力が必要となったり、蓋部15が勢い良く開いたりすることが防止される。
【0067】
一方、洗濯乾燥機1を用いてこれから衣類の吊り干乾燥が行われる場合、ユーザは、蓋部15を開けておいて固定機構による固定を解除し、可動部16aを突出させた状態とする。この状態において、ユーザが蓋部15を先端部分16a1の上に乗せると、蓋部15は、ほぼ45°の位置に保持される。
【0068】
このように蓋部15が保持された状態で、ユーザは、乾燥対象物である衣類を取り付けたハンガー2をフック15bに掛ける。なおこのとき、蓋部15を手などで支えておかなくても、蓋部15はほぼ45°の位置に保持されるため、ユーザにとって、フック15bにハンガー2を掛ける作業は容易となっている。
【0069】
フック15bにハンガー2を掛け終えたら、ユーザは、蓋部15を上から押さえ、蓋部15を全閉の状態にし、爪15cを上面板11に引っ掛ける。なお蓋部15が押さえられることにより、可動部16aは、蓋部15によって弾性体16a2の付勢に抗して押され、突出の大きさが小さくなるように可動する。
【0070】
また爪15cが上面板11に引っ掛けられたとき、蓋部15は弾性体16a2の弾性力によって上側に付勢されているが、爪15cの作用によって全閉に保持される。ここまでの段階で洗濯乾燥機1の内部は、ほぼ密閉状態で、かつ、蓋部15から脱水槽30内に向けて衣類が吊り下げられた状態となる。
【0071】
そして次にユーザは、洗濯乾燥機1に対して吊り干乾燥動作の実行指示を行う。これにより吊り干乾燥動作が開始される。その後、吊り干乾燥動作が終了すると、ユーザは、爪15cの引っ掛かりを解除して、蓋部15を開いた状態とする。このとき蓋部15は、保持機構16の弾性力によって上側に付勢されている。そのため、この弾性力が蓋部15を開ける動作を補助する格好となり、ユーザは大きな力を要することなく、蓋部15をほぼ45°の位置に開けることが可能である。
【0072】
また蓋部15を開けると、可動部16aは再び最大突出状態となるため、保持機構16を用いて、蓋部15をほぼ45°の位置に保持することが可能である。そのためユーザにとって、フック15bからハンガー2を外して吊り干乾燥済みの衣類を取り出す作業は、容易となっている。
【0073】
以上に説明した通り保持機構16を利用すれば、例えば片手で蓋部15を支持しておき、他方の手を用いてハンガー2を掛けたり外したりするような場合に比べ、ユーザは容易に、かつ、少ない負担で、吊り干乾燥を行うことが可能となっている。
【0074】
[その他]
以上までに説明したように、本実施形態に係る洗濯乾燥機1は、上方に開口した開口部を有している外筐部(外箱10や上面板11などによって形成されている)と、外筐部の内側に設けられ、開口部を介して洗濯物が入れられる槽部(脱水槽30などによって形成されている)と、外筐部に、ヒンジ機構(ヒンジ部15a)によって上下に回動可能となるように取り付けられており、該回動によって開口部を開閉する蓋部15と、を備えている。そして洗濯乾燥機1は、槽部に入れられた洗濯物を洗濯する洗濯動作、および、蓋部15から槽部内に向けて吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作を行うようになっている。
【0075】
更に洗濯乾燥機1は、外筐部に設けられており、蓋部15に向けて突出する可動部16aを有し、この可動部16aが蓋部15を支持する保持機構16を備えている。そして可動部16aは、弾性体16a2によって突出する方向へ弾性的に付勢されており、この付勢に抗して押されることにより、該突出の大きさが小さくなるように可動となっている。また可動部16aは、突出の大きさが略最大であるとき(ほぼ最大突出状態であるとき)に、蓋部15が全開と全閉の間に位置するように、蓋部15を支持するようになっている。
【0076】
なお保持機構16は、蓋部15の側に設置されていても構わない。この場合、保持機構16は、外筐部に向けて突出する可動部16aが外筐部を支持することにより、蓋部15を全開と全閉の間の位置に保持するように構成される。また保持機構16は、洗濯乾燥機1の左右の片側だけでなく、両側にそれぞれ設けられるようにしても良い。
【0077】
このように洗濯乾燥機1は、吊り干乾燥が可能であるとともに、保持機構16が備えられている。そのため、蓋部15へ衣類を吊り下げる時などには蓋部15が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部15を開け易くすることが容易となっている。
【0078】
例えば、想定されるハンガー2を含んだ乾燥対象物の最大重量をW1とする場合、重量W1の物体が吊り下げられた蓋部15を支持しても可動部16aが最大突出状態を保つように、弾性体16a2の仕様を設定すれば良い。一例としてこのように弾性体16a2の仕様を設定しておけば、洗濯乾燥機1は、蓋部15へ衣類を吊り下げる時などには蓋部15が適度な位置に保持されるようにし、吊り下げられた衣類を取り出す時などには蓋部15を開け易くすることが可能となる。
【0079】
また更に弾性体16a2の仕様の設定においては、蓋部15を閉じるときに想定されるユーザが蓋部15を押さえる力(殆どのユーザが無理なく出すことのできる程度の力)をW2とする場合、更にW2の力で蓋部15が押さえられたときには蓋部15が全閉となるように、配慮されることが望ましい。
【0080】
また本実施形態では、可動部16aがほぼ最大突出状態であるとき、蓋部15は可動部16aによって、ほぼ45°の位置に支持されるように設定されている。但しこの45°という角度は一例であり、製品仕様などに応じて他の形態とすることも可能である。多くの場合、この角度が概ね30°〜60°の範囲内で設定されていれば、良好な利便性が期待される。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、各種形態の洗濯機に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 洗濯乾燥機
2 ハンガー(吊り具)
10 外箱(外筐部の一部)
11 上面板(外筐部の一部)
11a 出入口
14 バックパネル
15 蓋部
15a ヒンジ部
15b フック
15c 爪
16 保持機構
16a 可動部
16a1 可動部の先端部分
16a2 弾性体
16b 収納部
16b1 収納部の端面
17 連結部品
20 水槽
30 脱水槽(槽部の一部)
32 バランサ
33 パルセータ
40 駆動ユニット
41 モータ
42 ベルト
43 クラッチ・ブレーキ機構
44 脱水軸
45 パルセータ軸
60 排水ホース
61 排水ダクト
62 排水孔
63 排水弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した開口部を有している外筐部と、
前記外筐部の内側に設けられ、前記開口部を介して洗濯物が入れられる槽部と、
前記外筐部に、ヒンジ機構によって上下に回動可能となるように取り付けられており、該回動によって前記開口部を開閉する蓋部と、を備え、
前記槽部に入れられた洗濯物を洗濯する洗濯動作、および、前記蓋部から前記槽部内に向けて吊り下げられた乾燥対象物を乾燥させる吊り干乾燥動作を行う洗濯乾燥機であって、
前記外筐部および前記蓋部のうちの一方である設置側に設けられており、他方である非設置側に向けて突出する可動部を有し、該可動部が該非設置側を支持する保持機構を備え、
前記可動部は、
突出する方向へ弾性的に付勢されており、該付勢に抗して押されることにより、該突出の大きさが小さくなるように可動し、
前記突出の大きさが略最大であるときに、前記蓋部が全開と全閉の間に位置するように、前記非設置側を支持することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記設置側は、前記外筐部であり、
前記非設置側は、前記蓋部であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記保持機構は、
ユーザの操作に応じて、前記蓋部を全閉としても前記蓋部を支持しない位置に、前記可動部を固定する固定機構を備えたことを特徴とする請求項2に記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記保持機構は、
前記突出の大きさが略最大であるときに、前記蓋部を水平面からの角度が略45度となる位置に、前記蓋部を支持することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
前記蓋部には、
前記乾燥対象物を取り付けたハンガーが掛けられる、フックが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記保持機構は、
前記ヒンジ機構の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−244(P2013−244A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132607(P2011−132607)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】