説明

洗濯機の洗剤投入装置

【課題】洗濯機の洗剤投入装置において、水道水からの給水が止まった際に、注水口の上部水路に残水を生じさせない。
【解決手段】洗剤投入部を有する洗剤ケースと、前記洗剤ケースを引き出し可能に収納する注水装置と、前記注水装置に設けられ、前記洗剤投入部に注水するための複数の注水口と、前記注水口に水を導く水路と、前記注水口の下部に傾斜面を有し、前記傾斜面に前記注水口よりも広い開口を複数有する残水導出部材とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の洗剤投入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機において、洗濯開始時に洗剤を洗濯槽に溶かしながら投入する洗剤投入装置が利用されている。洗剤投入装置は、引き出し式の洗剤ケースが注水装置に収納可能に構成されており、収納された洗剤ケースに上部から注水を行い、投入された洗剤を溶かしながら流し出す構成となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第3791138号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1等においては、注水装置内に設けられた複数の円形の穴からなる注水口が水平に配置されているため、水道水からの給水が止まった際に、各注水口において、水が重力により注水口から落下する力と、表面張力により上に引き戻す力とが平衡し易くなる。各注水口においてこの平衡状態が生じると注水口の上部水路に空気が入らず、また、水が落下せず、注水口の上部水路に残水を生じる。そして、後行程の脱水時の洗濯槽回転などによる振動で、この注水口の上部水路の残水が落下すると、水が洗濯槽内に落ちて衣類を濡らしてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に対応するものであり、水道水からの給水が止まった際に、水路に残水しにくい注水装置、および前記洗剤投入装置を備えた洗濯機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決するものであり、洗剤投入部を有する洗剤ケースと、前記洗剤ケースを引き出し可能に収納する注水装置と、前記注水装置に設けられ、前記洗剤投入部に注水するための複数の注水口と、前記注水口に水を導く水路と、前記注水口の下部に傾斜面を有し、前記傾斜面に前記注水口よりも広い開口を複数有する残水導出部材とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗濯機の洗剤投入装置は、洗剤投入部を有する洗剤ケースと、前記洗剤ケースを引き出し可能に収納する注水装置と、前記注水装置に設けられ、前記洗剤投入部に注水するための複数の注水口と、前記注水口に水を導く水路と、前記注水口の下部に傾斜面を有し、前記傾斜面に前記注水口よりも広い開口を複数有する残水導出部材とを備えたため、水道水からの給水が止まった際に、前記残水導出部材と前記注水口の間に保持される水と、前記水路に残った水とが注水口を介して一体となって、前記傾斜面の低い側の開口より導出される。また、これと同時に前記傾斜面の高い側の開口の上部に位置する注水口から前記水路に空気が流入する。このとき前記残水導出部材と前記注水口の間の水は高い位置から低い位置に流れるため、前記水路の一方からの水の導出と他方からの空気の流入が連続する。これにより、水路の残水が低減されるため、脱水時の洗濯槽回転などによる振動で、注水口の上部水路の残水が落下し、水が洗濯槽内に落ちて衣類を濡らしてしまうという課題が解決できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の一部断面を示した斜視図、図2は同側面断面図、図3は同正面断面図、図4は残水導出部材の斜視図、図5は残水導出部材と注水口の位置関係を示す説明図、図6は注水口と残水導出部材の正面断面から見た場合の水の導出状況を示した説明図、図7は図6における断面A−A'から見た場合の水の導出状況を示した説明図、図8は図5における断面B−B'から見た場合の水の導出状況を示した説明図である。
【0009】
洗剤投入装置1は、洗剤ケース2と注水装置3とから構成される。洗剤ケース2は底面が後方に向けて下に傾斜した洗剤投入部4と、洗剤投入部4の後方下部に洗剤流出口5を備え、注水装置3に引き出し可能な状態で収納される。注水装置3は給水管6から給水される水道水を空間の高さが5mmの水路7を介して複数の直径3mmの円状の注水口8より洗剤ケース2の洗剤投入部4に注水する。洗剤投入部4に投入された洗剤9は、注水口8からの注水により、水とともに洗剤流出口5より流し出され、出水口10より洗濯槽に投入される。
【0010】
残水導出部材11は注水口8の下部に設けられ、注水装置3の奥行き方向に対して垂直な向きに右下に傾斜した傾斜面12を有し、傾斜面12に一辺の長さが9mmの正方形からなる4個の開口13と、開口13の周囲を構成する幅4mmの枠体14を有する。傾斜面12の上面と注水口8の間の距離は左端部で1mm、右端部で3mmであり、傾斜角度は約2度である。また、枠体4の手前側には鉛直面を構成するリブ15を有する。残水導出部材11はポリプロピレンやABS、ポリエチレンなどの厚み1.5mmの樹脂材料で構成される。
【0011】
図5は残水導出部材11を注水口8下部に設置した状態を下から見た図であり、図の上側が注水装置3の手前側に対応する。残水導出部材11の注水口8の下部への水平方向の設置位置は、開口13の一つに対し、上部に1個の注水口8が重なるようにし、また、枠体14の上部には複数の注水口8が重なるように構成している。
【0012】
次に、水道水からの給水が止まった際に水路7に満たされている水の注水口8からの導出挙動について、図6から図8に照らして説明する。
水路7は給水管6から給水されているときには、内部は水で満たされている。給水が止まると同時に水の流れが止まり、開口13から連続して流れ出ていた水は開口13の下で途切れ、大部分は水滴になって落下する。給水が止まった時点では、注水口8と残水導出部材11の間には水が満たされており、この部分に保持された水と水路7の中の水は注水口8を介して連続しているため、注水口8における水の表面張力は発生しない。残水導出部材11は右側に傾斜しているため、上部に保持された水は右側に流れながら開口13より流れ出る。
また、残水導出部材11の開口13は一辺が9mmの正方形の開口であるため、水の表面張力により開口13にとどまろうとする力よりも、開口13の上部に加わる水の重量の方が大きくなり、水は滞ることなく開口13から流れ出る。ここで、水路7の水は図7に示すように開口13より流れ出る水16と連続しているため、注水口8より連続して流出する。
【0013】
一方、水の右側への流れの発生と同時に残水導出部材11の左側の開口13の周辺からは水がなくなるため、図6、図8に示すように左側の開口13上部の注水口8より空気17が流入する。そして、右側の開口13および注水口8からの水の導出と、左側からの空気の流入が継続するため、水路7に満たされた水が導出される。
【0014】
残水導出部材11の枠体14は注水口8の下に配置されているため、給水が止まった際に水を注水口8から引き離さずに残水導出部材11と間に保持し易くする効果を奏する。また、枠体14が注水口8の下に配置されることにより、給水時に水が枠体14に当たるが、リブ15によりせき止められるため、注水装置3の手前側に漏れ出すことはない。
【0015】
本実施の形態1において、開口13の形状を一辺が9mmの正方形としたが、これに限ったものでなく、一辺が8mmから12mmの略正方形の開口でも同様に水路7の水の導出効果を得ることができる。また、複数の開口13の大きさが異なっていたり、一部開口が小さい部分があるなどのばらつきがあっても、水路7の水の導出効果を得ることができる。
【0016】
また、本実施の形態1において、傾斜面12の傾斜を約2度で構成したが、これに限ったものでなく、傾斜角度は1度の場合でも水路7の水の導出効果を得ることができる。傾斜面12の傾斜角度は大きすぎると注水口8と残水導出部材11の間に水を保持する効果が低減するため、5度以内とすることが望ましい。
【0017】
また、本実施の形態1において、注水口8と残水導出部材11の間の距離を左端部で1mm、右端部で3mmに構成しているが、これに限ったものでなく、注水口8と残水導出部材11の間に水を保持可能な寸法とすればよいが、5mm以下とすることが望ましい。
【0018】
実施の形態2
図9は本実施の形態2の洗剤投入装置の残水導出部材と注水口の位置関係を示す説明図である。図において、実施の形態1と同一の部分には同一符号を付し説明を省略する。図において、上側が注水装置3の手前側に対応する。開口18は残水導出部材11の傾斜面12に複数設けられた直径12mmの円形状の開口であり、開口18の周囲の枠体19は隣り合う開口18間の距離および端部までの距離が最小部分で4mmとなるように構成している。また、残水導出部材11の注水口8の下部への水平方向の設置位置は、開口18の一つに対し、上部に1個の注水口8が重なるようにし、また、枠体19の上部には複数の注水口8が重なるように構成している。
【0019】
水道水からの給水が止まった際に水路7に満たされている水の注水口8からの導出挙動は実施の形態1と同様であるが、枠体19の水を保持する面積が部分的に広くなることにより、残水導出部材11の水の保持効果が向上するため、水の導出効果が高くなる。
【0020】
本実施の形態2において、開口18の形状を直径12mmの円形状としたが、これに限ったものでなく、直径が9mmから14mmの円形状の開口でも同様に水路7の水の導出効果を得ることができる。また、開口19の形状は真円でなかったり、異形な部分があるなどのばらつきがあっても、水路7の水の導出効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の一部断面を示した斜視図。
【図2】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の側面断面図。
【図3】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の正面断面図。
【図4】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の注水装置の注水口の開口形状を示す平面図。
【図5】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の残水導出部材と注水口の位置関係を示す説明図。
【図6】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の注水口と残水導出部材の正面断面から見た場合の水の導出状況を示した説明図。
【図7】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の図6における断面A−A'から見た場合の水の導出状況を示した説明図。
【図8】実施の形態1の洗濯機の洗剤投入装置の図7における断面B−B'から見た場合の水の導出状況を示した説明図。
【図9】実施の形態2の洗剤投入装置の残水導出部材と注水口の位置関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0022】
1 洗剤投入装置、2 洗剤ケース、3 注水装置、4 洗剤投入部、5 洗剤流出口、6 給水管、7 水路、8 注水口、9 洗剤、10 出水口、11 残水導出部材、12 傾斜面、13 開口、14 枠体、15 リブ、16 水、17 空気、18 開口、19 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗剤投入部を有する洗剤ケースと、前記洗剤ケースを引き出し可能に収納する注水装置と、前記注水装置に設けられ、前記洗剤投入部に注水するための複数の注水口と、前記注水口に水を導く水路と、前記注水口の下部に傾斜面を有し、前記傾斜面に前記注水口よりも広い開口を複数有する残水導出部材とを備えたことを特徴とする洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項2】
前記残水導出部材は、傾斜面に設けられた複数の開口のうち、最下位置にある開口の上部に少なくとも1個の注水口が位置するように配置され、前記複数の開口の周囲の枠体の上部に少なくとも1個の注水口が位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項3】
前記残水導出部材の傾斜面に設けられた開口は、1辺が8mmから12mmの略正方形であることを特徴とする請求項1と請求項2に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項4】
前記残水導出部材の傾斜面に設けられた開口は、直径が9mmから14mmの略円形であることを特徴とする請求項1と請求項2に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項5】
前記残水導出部材の傾斜面に設けられた開口の周囲の枠体の幅が3mm以上となる部分を有することを特徴とする請求項1から請求項4に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項6】
前記残水導出部材の傾斜面に設けられた開口は、1辺が9mmの略正方形で、開口の周囲の枠体の幅が4mmであることを特徴とする請求項1と請求項2に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項7】
前記残水導出部材の傾斜面の傾斜角度が1度から5度の範囲内であることを特徴とする請求項1と請求項6に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項8】
前記残水導出部材の傾斜面の傾斜角度が1度から3度の範囲内であり、前記注水口と前記残水導出部材の開口との距離が4mm以内に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項6に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項9】
前記残水導出部材の枠体に、前記洗剤ケースを引き出し方向手前側に水が漏れ出すことを防止するリブを備えたことを特徴とする請求項1から請求項8に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項10】
前記注水装置の水路の空間の高さが10mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項9に記載の洗濯機の洗剤投入装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10に記載の洗剤投入装置を搭載した洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−201596(P2009−201596A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44913(P2008−44913)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】