説明

洗濯機

【課題】水槽を支持している吊り棒等を水槽の外周面に不必要に接触させずに、水槽を任意の角度で傾斜させることが可能な洗濯機を提供すること。
【解決手段】筐体30と、洗濯脱水槽26を内装した水槽20と、筐体30内に設けられ、水槽20を吊り下げ支持する複数の吊り棒40と、水槽20から突出して設けられ、吊り棒40を通す貫通穴51が形成された複数の継ぎ手部50と、吊り棒40の下部に設けられ、貫通穴51を通った吊り棒40を継ぎ手部50に連結させる防振部34とを備え、水槽20は、吊り棒40を利用して水槽20の前側下端部を後側方向へ移動させることにより傾斜可能とされており、貫通穴51が水槽20の傾斜方向に沿う長穴となっているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内の水槽を傾斜させることが可能な洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗濯脱水槽を内包する水槽を、筐体上部から吊り棒を介して吊り下げるようにした形式の全自動洗濯乾燥機(以下、単に洗濯機と称する)が存在する。このような形式の洗濯機は、一般的に、水槽を予め一定の角度で傾斜させた状態で筐体内に常時配置されるようになっている。この種の洗濯機は、水槽を傾斜させることで、洗濯物の出し入れを容易にし、また洗濯物の洗浄効率や乾燥効率の向上を図ることを目的としている。
【0003】
そのような例として、「ケースと、前記ケースの内部に、前方上側部が前記ケースの前面部側に一定角度に傾いて取り付けられ、洗濯水を貯蔵する水槽および前記水槽の内部に設けられ、洗濯物を洗濯する内槽からなる洗濯槽と、前記内槽を回転させる駆動手段とを含んでなる、傾斜式洗濯槽を有する洗濯機において、前記ケースの後面部に設けられた開口部と、外側に膨出部が形成され、前記開口部に被せられるバックカバーとを含んでなる傾斜式洗濯槽を有する洗濯機」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−160259号公報(第4頁、第1図など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水槽を傾斜させる場合に注意しなければならないことは、吊り棒および吊り棒の下側に設けられている防振部(サスペンションやダンパー等)と、水槽の外周面とを不必要に接触させないようにすることである。吊り棒や防振部が水槽の外周面に接触してしまうと、想定していない振動や騒音が発生してしまうからである。この振動や騒音は、ユーザに不快感を与えるだけでなく、洗濯機の故障の原因にもなりかねないからである。
【0006】
上記の洗濯機は、筐体の前方突出部を取り除くことで、水槽が直立する洗濯機の筐体を共用することができるようにしたものである。しかしながら、このような構造では、通常の筐体内において水槽を傾斜させなければならず、吊り棒および防振部に水槽の外周面を接触させないようにするためには、狭い範囲の角度で水槽を傾斜させるように設計しなければならない。また、何らの対策も講じずに水槽を強制的に傾斜させるようにすると、吊り棒および防振部に水槽の外周面が接触してしまう可能性が高くなってしまう。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、水槽を支持している吊り棒等を水槽の外周面に不必要に接触させずに、水槽を傾斜させることができる洗濯機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る洗濯機は、筐体と、洗濯脱水槽を内装した水槽と、前記筐体内に設けられ、前記水槽を吊り下げ支持する複数の吊り棒と、前記水槽から突出して設けられ、前記吊り棒を通す貫通穴が形成された複数の継ぎ手部と、前記吊り棒の下部に設けられ、前記貫通穴を通った前記吊り棒を前記継ぎ手部に連結させる防振部とを備え、前記水槽は、前記吊り棒を利用して傾斜可能とされており、前記貫通穴が前記水槽の傾斜方向に沿う長穴となっているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗濯機によれば、水槽の傾斜に応じて、水槽から突出して設けられた継ぎ手部に連結して水槽を吊り下げ支持している吊り棒が、継ぎ手部に形成された貫通穴の長穴に沿って移動することができるので、吊り棒等を水槽の外周面に不必要に接触させることなく、広い範囲に渡って水槽を傾斜させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る洗濯機100を側面から見た概略構成を示す縦断面図である。この洗濯機100は、洗濯物の洗浄(洗い、すすぎを含む)工程、脱水工程、および乾燥工程等を自動で行なうことが可能なものである。なお、図1において、図の右側を洗濯機100の前側(水槽20の前側でもある)とし、図の左側を洗濯機100の後側(水槽20の後側でもある)として説明する。また、図1を含め、以下の各図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
この洗濯機100においては、洗濯脱水槽(内槽)26を内装した水槽(外槽)20が、筐体30内において、吊り棒40により傾斜可能に吊り下げ支持されている。水槽20は、各行程あるいは洗濯物の量に応じて直立または傾斜した状態で使用される。
【0012】
筐体30は、上部筐体28と下部筐体29とで構成されている。水槽20は、上部に流体バランサ27が設けられた洗濯脱水槽26を外包し、水槽20の底部には、動力伝達機構21が固着されている。この動力伝達機構21は、水槽20の底部に取り付けられたモータ22とベルトで連結されている。動力伝達機構21の内側を構成する攪拌翼軸23には、攪拌翼(パルセータ)24が連結され、動力伝達機構21の外側を構成する外側軸25には洗濯脱水槽26が連結されている。なお、動力伝達機構21はダイレクトドライブ方式としてもよい。
【0013】
吊り棒40は、筐体30の前後側に少なくとも1つずつ、好ましくは前後2つずつ設けられている。前側の吊り棒40は、その上部が前側吊り棒上部支持部10および球面軸受41により支持され、後側の吊り棒40は、その上部が筐体30の上部に取り付けられている後方可動ユニット部31により支持されている。これらの吊り棒40は、前後側でその本数を変化させてもよいし、吊り棒40の長さを前後側で異なるようにしてもよい。
【0014】
後方可動ユニット部31は、水槽20の後側の吊り棒40を上下方向に移動(引き上げ/引き下ろし)可能に支持するものである。この後方可動ユニット部31が、吊り棒40を上下方向に移動させることによって、水槽20の前側下端部が後側方向に移動させられ、水槽20を任意の角度に傾斜可能としている。つまり、後方可動ユニット部31は、洗濯機100に設けられているマイコンなどからなる制御手段(図示せず)からの指示に基づいて、吊り棒40を移動させ、水槽20を任意の角度に傾斜させるのである。
【0015】
水槽20の下部の前後側には、吊り棒40を水槽20に連結させるための継ぎ手部50が、水槽20の外周面より突出させて設けられている。継ぎ手部50には貫通穴が形成されており、この貫通穴に吊り棒40を通し、吊り棒40の下部に設けた防振部34を継ぎ手部50に係止させて、吊り棒40と水槽20とを連結して水槽20を支持している。継ぎ手部50の構造および機能については、後で詳細に説明する。防振部34は、吊り棒40が継ぎ手部50から抜けてしまうのを防止するとともに、継ぎ手部50を安定支持するための防振構造を備えている。
【0016】
図2は、水槽20が前側に傾斜している状態の洗濯機100を側面から見た概略構成を示す縦断面図である。水槽20の傾斜は、行程に応じて予め自動的に定められているものであるが、ユーザからの指示に基づいて傾斜させることもできるようにしてもよい。
【0017】
水槽20を傾斜させると、洗濯物の出し入れが容易になり、また、洗濯物の洗浄効率および乾燥効率が向上するという効果が得られる。この効果を更に向上させるためには、運転に応じて、所望の傾斜角度に水槽20を調整できるようにすることが望ましい。また、洗濯の目的に応じて、水槽20の傾斜角度を調整可能にすることが望ましい。ただし、洗濯物の脱水行程では、振動抑制の観点から、水槽20を直立状態にした方がよい。
【0018】
この例の場合、水槽20の傾斜は、後側の吊り棒40を上下方向に移動させることによって行なう。たとえば、水槽20を洗濯機100の前側に傾斜させたいときには、後部可動ユニット部31を利用して吊り棒40を上に引き上げる。後部可動ユニット部31を制御する制御手段は、水槽20を傾斜させる角度に応じて、吊り棒40の引き上げ量および引き下げ量を調整するようになっている。
【0019】
水槽20を傾斜させる場合に注意しなければならないことは、吊り棒40および防振部34がそれらの可動範囲で、水槽20の外周面や継ぎ手部50と不必要に干渉してしまうことである。吊り棒40および防振部34が水槽20の外周面や継ぎ手部50と干渉すると、想定していない振動が吊り棒40を介して筐体30に伝播してしまうことになる。そうすると、ユーザに不快感を与えるだけでなく、洗濯機100の故障の原因にもなりかねない。そのため、水槽20の傾斜範囲では、吊り棒40および防振部34が、水槽20の外周面や継ぎ手部50と不必要に干渉しないようにしなければならない。
【0020】
水槽20の傾斜角度が常時一定の場合には、その一定の傾斜角度に基づいて、吊り棒40の長さ、継ぎ手部50の大きさ、継ぎ手部50に形成する貫通穴の大きさ等を設定すればよいが、水槽20を任意の角度で傾斜させる場合にはそれでは不十分である。すなわち、継ぎ手部50の貫通穴が、吊り棒40の横断面形状よりもやや大きいだけの場合には、吊り棒40の移動の自由度が制限されてしまい、狭い範囲の角度でしか水槽20を傾斜させることができない。一方、貫通穴の径を極端に大きくすれば、吊り棒40の前後方向の自由度を大きくすることは可能になるものの、水槽20がぐらついて安定しない上に、継ぎ手部50と防振部34の間に摺動性向上のために設置された部材(球面座38など)が貫通穴にひっかかり、摺動性を低下させてしまう可能性もある。
【0021】
そこで、本発明では、吊り棒を支持している継ぎ手部50に形成する貫通穴の形状を工夫することで、水槽20の傾斜可能な角度を大きくしたまま、吊り棒40および防振部34と、水槽20の外周面および継ぎ手部50との不必要な干渉を防止できる種々の構成を提案する。
【0022】
図3は、継ぎ手部50および防振部34を拡大して示す縦断面図である。図示した継ぎ手部50は、洗濯機100の後側、すなわち水槽20の後側下部に設けられているものである。この継ぎ手部50の内部には吊り棒40が貫通している。吊り棒40の下部には、防振部34が形成されており、防振部34と継ぎ手部50との間には、継ぎ手部50と防振部34の接触面の摺動性を良くするための球面座38が設けられている。さらに、球面座38と防振部34の間には、水槽20が回転する時の吊り棒40の摺動に伴う球面座38と防振部34の摩擦による損傷等を防ぐための緩衝材39が設置されている。
【0023】
防振部34は、その中央部を吊り棒40が貫通した状態で吊り棒40に取り付けられ、継ぎ手部50の下側に位置して、吊り棒40が継ぎ手部50の貫通穴51から上方に抜けてしまうのを防止している。
防振部34は、防振バネ35と、防振バネ35の両端に配置された上側バネ押さえ36および下側バネ押さえ37とで構成されている。これにより防振部34は、継ぎ手部50を介して、水槽20を吊り棒40に連結させて支持するとともに、継ぎ手部50を介して伝播する水槽20で発生した振動を吸収する役目も果たすようになっている。なお、防振部34は、水槽20で発生した振動を吸収できるものであればよく、たとえば、ダンパーやサスペンション、コイルバネ、防振用バネ、空気バネ等で構成することができる。
【0024】
図4は、水槽20とその水槽20の下部から突出する継ぎ手部50の関係を示す説明図である。継ぎ手部50には、吊り棒40を通すための貫通穴51と、貫通穴51の内と外を連通して、吊り棒40を貫通穴51へ導入する吊り棒導入路52が形成されている。
図4に示すように、貫通穴51は、吊り棒40の傾斜方向(この例では水槽20の略前後側方向)に長い長穴であり、吊り棒導入路52は貫通穴51の穴方向と異なる向き(この例では水槽20の径方向の外側向き)に開いている。なお、吊り棒の傾斜方向は水槽20の略前後方向であるが、説明を簡略化するため、水槽の傾斜方向を単に水槽の前後側方向という場合もある。
上記長穴は、吊り棒40を引き上げる方向すなわち径方向に(前側が八の字状、後側が逆八の字状に)傾いていると尚良い。
さらに上記長穴は、吊り棒40の径に合わせて、水槽の前側と後側の継ぎ手部50で、その幅を変えても良い。通常、水槽20の後側の吊り棒40が前側の吊り棒40より太いので、それに合わせる。
【0025】
このように、貫通穴51の形状を水槽20の前後側方向に沿う長穴とすることにより、水槽20の傾斜可能範囲(角度)を大きくしたまま、吊り棒40および防振部34を、水槽20の外周面や継ぎ手部50と不必要に干渉させないようにする事が可能となる。
また、吊り棒導入路52を貫通穴51の穴方向と異なる向きに開けていることで、吊り棒40が貫通穴51から抜けにくくなっている。
また、吊り棒導入路52を水槽20の径方向外側に向けて開けることにより、吊り棒40を貫通穴51に導入するのが容易となる。
さらに、吊り棒導入路52の開口端や、吊り棒導入路52と貫通穴51との接続部を、面取り形状や曲面形状とすると、吊り棒40の導入を容易でき、また緩衝材39を貫通穴51の角に引っ掛けることも防止できる。
【0026】
図5は、水槽20の傾斜の状態とそれに対応する吊り棒の状態を示す説明図である。図5(a)は水槽20が直立の状態(傾斜角0度の状態)を示し、図5(b)は水槽20が20度傾斜した状態を示している。また、図5(c)は、水槽20の傾斜前後における水槽側面と吊り棒40との位置関係を示している。
本実施の形態では、水槽20の後側の吊り棒40を引き上げることで、水槽20を傾斜させるようにしているため、水槽20が傾斜するとき、前側の吊り棒40は水槽20の前後方向に大きく移動するのに対して、後側の吊り棒40は水槽20の前後方向にそれ程大きく移動しない。従って、図4に示すように、後側の継ぎ手部50の貫通穴51の長さL1を、前側の継ぎ手部50の貫通穴51の長さL2よりも小さくすることができる。すなわち、L1<L2の関係である。このようにすることで、洗濯脱水槽26の摺動による吊り棒40のぶれを抑えることができる。
【0027】
図5(c)に示すように、水槽20の後側における水槽側面に平行な面(細い波線で表示)と後側の吊り棒40とがなす角度を、水槽20の傾斜角0°の時はα1とし、水槽20の傾斜角20°の時はβ1とする。同様に、水槽20の前側における水槽側面に平行な面(細い波線で表示)と前側の吊り棒40とがなす角度を、水槽20の傾斜角0°の時はα2とし、水槽20の傾斜角20°の時はβ2とする。以上の設定によれば、水槽20の傾斜角0°の時、α1=α2の関係が成り立つ。
また、水槽20の傾斜角20°の時の水槽20の前側における水槽側面に平行な面と吊り棒40のなす角度は、水槽20の傾斜角0°の時より小さくなるのに対して、水槽20の後側における水槽側面に平行な面と吊り棒40のなす角度は、水槽20の傾斜角0°の時より大きくなる。
【0028】
図6、図7は後側の継ぎ手部50の形状を示したものである。継ぎ手部50に形成される貫通穴51の基本的な形状は、図6(a)に示すような平面形状および図6(b)に示すような断面形状である。しかしながら、上記図5(c)に示したように、水槽20の側面に対しては後側の吊り棒20がより大きく傾斜することを考慮して貫通穴51の形状を決定するのが好ましい。そのような形状の一例を、図7(a)の平面図および図7(b)の断面図に示す。図7の場合、水槽20の後側の継ぎ手部50における貫通穴51の前側縁部が、その上方から下方に向かうに従って前側方向に延長されている。すなわち、上方の長穴の長さをL3、下方の長穴の長さをL4とするとき、L3<L4となっている。このようにすることにより、吊り棒40の水槽20側面に対する傾斜の自由度が高まり、吊り棒40及び防振部34と、水槽20の外周面や継ぎ手部50との不必要な接触を防止できるとともに、水槽20の摺動による吊り棒40のぶれも抑えることができる。
なお、水槽20の前側の継ぎ手部50もこれに準じた態様とすることにより、ほぼ同様の効果が得られる。
【0029】
次に、継ぎ手部50の貫通穴51に吊り棒40を導入するための吊り棒導入路52について説明する。吊り棒40は、通常、継ぎ手部50の貫通穴51の内と外を連通している吊り棒導入路52を通して、貫通穴51に導入される。既に図4において、吊り棒導入路52が、貫通穴51の長手方向と異なる向き、例えば、水槽20の径方向の外側に向けて形成されているものを示した。ここでは、図8〜図10に示した水槽20の前側の継ぎ手部50の形状図をもとに、別の吊り棒導入路52を例示する。
【0030】
図8は、吊り棒導入路52が途中で折れ曲がった形状を有する例であり、図9、図10は、吊り棒導入路52に、貫通穴51の外側から内側への押し込み圧力によって弾性変形する、吊り棒40の径より狭い狭路部53,54が設けられている。これらによれば、運搬時、水槽20の傾斜時、洗濯脱水槽の摺動時などの場合にも、吊り棒40が吊り棒導入路52から抜けることが防止され、洗濯機の信頼性が向上する。
なお、図8〜図10に示した吊り棒導入路52の形状は、水槽20の後側の継ぎ手部50にも適用できる。
また、吊り棒導入路52の開口端部は、面取りまたは曲面に形成して、吊り棒40の導入を容易にしておくのが好ましい。
【0031】
図11は水槽20と水槽20から突出する継ぎ手部50の関係を示す説明図である。本実施の形態の洗濯機のように、水槽20の後側の吊り棒40を引き上げて、水槽20を傾斜させる洗濯機にあっては、水槽20の前側の吊り棒40の方が、後側の吊り棒40より前後方向に大きく移動する。このことを考慮すると、図11に示すように、水槽20の外周面から継ぎ手部50の貫通穴51の中心部までの距離は、水槽20の後側の継ぎ手部50の方を、水槽20の前側の継ぎ手部50より短くできる。すなわち、後側の当該部分の長さをL6、前側の当該部分の長さをL7とすると、L6<L7とすることができる。これにより、水槽20の後側において筐体30と水槽20との間にスペースが確保でき、筐体30をコンパクトにしたり、筐体30と水槽20との間を有効活用することが可能となる。
【0032】
図12は、継ぎ手部50および貫通孔51の位置と筐体30の吊り棒上部支持部の位置との関係を示す説明図である。図12に示すように、筐体30の吊り棒支持部(水槽20の後側では後方可動ユニット31の有る部分、水槽20の前側では前側吊り棒上部支持部10の有る部分)を、吊り棒40の下部を支持している継ぎ手部50の対応する貫通穴51の中心位置より、水槽20の外周面に対して外側方向へずれた位置に設けるのが好ましい。なお、筐体30のこれら吊り棒支持部は、継ぎ手部50より、水槽20の外周面に対して外側方向へずれた位置、例えば水槽20の径方向の外側位置に設置してもよい。このようにすることで、水槽20を吊るした状態で横力の影響を小さくすることができ、水槽20を安定した状態で保つことができる。
【0033】
また、図12に示したように、吊り棒40を水槽20の前側と後側にそれぞれ2本づつ配置し、吊り棒20の上部を筐体(後方可動ユニット31も含む)に支持したものにおいて、水槽20の前側に対応する筐体30の2つの吊り棒支持部の間隔Yを、水槽20の後側に対応する筐体30の2つの吊り棒支持部の間隔Xより広くするのが好ましい。すなわち、本実施の形態の洗濯機のように、水槽20後側の吊り棒40を引き上げて水槽20を傾斜させる洗濯機にあっては、水槽20の上部が大きく前方へ傾斜し、水槽20の前側部では水槽20と吊り棒40の距離が狭まる傾向にある。そこで、予め水槽20の前側に対応する筐体30の2つの吊り棒支持部の間隔を広くすることにより、水槽20前側の2つの吊り棒40の間隔を広く取ることができ、たとえ水槽20の上部が前方に傾斜した場合であっても、水槽20と吊り棒40の距離を十分に確保することができる。その結果、水槽20が吊り棒40に接触して、吊り棒40が曲がる等の事態の発生を未然に防止することができる。
また上記の観点から、水槽20の前側の2つの継ぎ手部50における各貫通穴51の間隔W2を、水槽20の後側の2つの継ぎ手部50における各貫通穴51の間隔W1より広くしておくのが好ましい。この場合においても、水槽20前側の2つの吊り棒40の間隔を広く取ることができ、たとえ水槽20の上部が前方に傾斜した場合であっても、水槽20と吊り棒40の距離を十分に確保することができる。その結果、水槽20が吊り棒40に接触して、吊り棒40が曲がる等の事態の発生を未然に防止することができる。
【0034】
図13は水槽20の下部と吊り棒40の防振部34を示す構成図である。ここでは、水槽20の継ぎ手部50より下側部分20Aを、その最下端に向かって狭まるテーパ形状としている。これにより、防振部34が水槽20の外周面に接触しないで傾斜できる範囲が広がるため、水槽20をスムーズにより大きく傾斜させることができる。
【0035】
図14、図15は継ぎ手部50と吊り棒40の防振部34を示す構成図である。
図14は、継ぎ手部50の貫通穴51に連通する吊り棒導入路52の形状を、下部が広く上部が狭いテーパ形状として、吊り棒40を貫通穴51に導入する際の作業性の向上を図ったものである。
【0036】
図15は、継ぎ手部50に、複数のリブ50A,50Bを設け、継ぎ手部50の強度を補強するようにしたものである。なお、これらのリブは、かならずしも左右対称または上下対称に配置する必要はない。すなわち、防振部34の傾斜態様を考慮して、リブは防振部34の傾斜の障害とならないように配置するのが前提であり、したがって、左右非対称または上下非対称の配置となってもよい。たとえば、継ぎ手部50を構成するリブのうち、前側のリブより後側のリブを上下に長くすると、水槽20と防振部34との接触を回避しやすくなり、強度も高めることができる。
また、防振部34の外周に弾性部材42を配置すると、防振部34が傾斜してその側面が継ぎ手部50に接触した場合に、接触による衝撃の緩和が図れる。弾性部材42は、水槽20と吊り棒40が揺動して、水槽20と防振部34とが接触する場合に、その揺動に起因してそれらが最初に接触する部分に少なくとも配置する。これにより、部品の損傷を防止できるとともに、振動や騒音も抑制できる。
【0037】
図16は継ぎ手部50の貫通孔51と防振部34の継ぎ手部50との対向部とを示す模式図である。既に説明してきたように、継ぎ手部50の貫通孔51は、洗濯機の略前後方向に長い長穴なっている。そして、水槽20が直立状態の時は、吊り棒40が貫通孔51のほぼ中央部に位置するようになっており、そのときの防振部34の継ぎ手部50との対向部は、図16の実線と波線からなる外側の円形状の位置にある。このため、防振部34の継ぎ手部50との対向部は、貫通穴51の周縁部と重なりあい、吊り棒40と継ぎ手部50とが適切な連結状態を保つことができる。
【0038】
これに対して、水槽20の傾斜角度によっては、吊り棒40が貫通孔51の一端に来る場合がある。その場合、防振部34の継ぎ手部50との対向部は、例えば、図16の黒点で表した領域に来ることが予想される。しかしながら、そのような場合にあっても、貫通穴51の他端側で、防振部34の継ぎ手部50との対向部が、該貫通穴51の周縁部と重なりあう大きさとなるようにするのが好ましい。これは、防振部34の継ぎ手部50との対向部が、貫通穴51に嵌って引っ掛かってしまうのを回避するためである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】水槽が垂直状態にある洗濯機を側面から見た概略構成を示す縦断面図。
【図2】水槽が傾斜状態にある洗濯機を側面から見た概略構成を示す縦断面図。
【図3】継ぎ手部および防振部の拡大説明図。
【図4】水槽と水槽から突出する継ぎ手部の関係を示す説明図。
【図5】水槽の傾斜の状態とそれに対応する吊り棒の状態を示す説明図。
【図6】水槽の後側の継ぎ手部の形状図。
【図7】水槽の後側の継ぎ手部の形状図。
【図8】水槽の前側の継ぎ手部の形状図。
【図9】水槽の前側の継ぎ手部の形状図。
【図10】水槽の前側の継ぎ手部の形状図。
【図11】水槽と水槽から突出する継ぎ手部の関係を示す説明図。
【図12】継ぎ手部、継ぎ手部に形成された貫通孔、及び筐体の吊り棒上部支持部の位置関係を示す説明図。
【図13】水槽の下部と吊り棒の防振部を示す構成図。
【図14】継ぎ手部と吊り棒の防振部を示す構成図。
【図15】継ぎ手部と吊り棒の防振部を示す構成図。
【図16】継ぎ手部の貫通孔と防振部の継ぎ手部との対向部とを示す模式図。
【符号の説明】
【0040】
10 前側吊り棒上部支持部、20 水槽(外槽)、21 動力伝達機構、22 モータ、23 内側軸(攪拌翼軸)、24 攪拌翼、25 外側軸(脱水槽軸)、26 洗濯脱水槽(内槽)、27 流体バランサ、28 上部筐体、29 下部筐体、30 筐体、31 後方可動ユニット部、34 防振部、35 防振バネ、36 上側バネ押さえ、37 下側バネ押さえ、38 球面座、39 緩衝材、40 吊り棒、41 球面軸受、50 継ぎ手部、50A,50B リブ、51 貫通穴、52 吊り棒導入路、100 洗濯機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
洗濯脱水槽を内装した水槽と、
前記筐体内に設けられ、前記水槽を吊り下げ支持する複数の吊り棒と、
前記水槽から突出して設けられ、前記吊り棒を通す貫通穴が形成された複数の継ぎ手部と、
前記吊り棒の下部に設けられ、前記貫通穴を通った前記吊り棒を前記継ぎ手部に連結させる防振部とを備え、
前記水槽は、前記吊り棒を利用して傾斜可能とされており、
前記貫通穴が前記水槽の傾斜方向に沿う長穴となっていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記貫通穴は、前記洗濯機の略前後側方向に沿う長穴であることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記継ぎ手部は、前記水槽の前側および後側にそれぞれ設けられ、
前記水槽の後側の継ぎ手部における前記貫通穴の長さを、前記水槽の前側の継ぎ手部における前記貫通穴の長さより短くしていることを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記継ぎ手部は、前記水槽の前側および後側に間隔を開けて2つづつ設けられ、前記水槽の前側の2つの継ぎ手部における各貫通穴の間隔を、前記水槽の後側の継ぎ手部における2つの継ぎ手部における各貫通穴の間隔より広くしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記水槽の後側の継ぎ手部における前記貫通穴の前側縁部は、その上方から下方に向かうに従って前記洗濯機の前側方向に延長されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項6】
前記継ぎ手部に、前記貫通穴の内と外を連通して前記吊り棒を前記貫通穴へ導入する吊り棒導入路が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項7】
前記吊り棒導入路が、前記貫通穴の長手方向と異なる向きに形成されていることを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記吊り棒導入路は、前記貫通穴から前記水槽の径方向の外側に向けて開いていることを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記吊り棒導入路は、途中で折れ曲がった形状を有することを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記吊り棒導入路に、前記貫通穴の外側から内側への押し込み圧力によって弾性変形する、前記吊り棒の径より狭い狭路部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【請求項11】
前記吊り棒導入路は、下部が広く上部が狭いテーパ形状となっていることを特徴とする請求項6に記載の洗濯機。
【請求項12】
前記吊り棒導入路の開口端が、面取りされているかまたは曲面に形状されていることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項13】
前記吊り棒導入路と前記貫通穴の接続部が、面取りされているかまたは曲面に形状されていることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項14】
前記水槽の外周面から前記継ぎ手部の前記貫通穴の中心部までの距離は、前記水槽の後側の継ぎ手部の方を前記水槽の前側の継ぎ手部より短くしていることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項15】
前記吊り棒の上部を前記筐体に支持したものにおいて、
前記筐体の吊り棒支持部は、前記吊り棒の下部を支持している前記継ぎ手部の対応する貫通穴の中心位置より、前記水槽の外周面に対して外側方向へずれた位置にあることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項16】
前記吊り棒を前記水槽の前側と後側にそれぞれ2本づつ配置し、前記吊り棒の上部を前記筐体に支持したものにおいて、
前記水槽の前側に対応する前記筐体の2つの吊り棒支持部の間隔が、前記水槽の後側に対応する前記筐体の2つの吊り棒支持部の間隔より広いことを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項17】
前記水槽の前記継ぎ手部より下側部分は、その最下端に向かって狭まるテーパ形状となっていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項18】
前記継ぎ手部には、該継ぎ手部の強度を補強する複数のリブが設けられていることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項19】
前記リブは、前側継ぎ手部の前側よりも後側が上下に長く形成されていることを特徴とする請求項18に記載の洗濯機。
【請求項20】
前記防振部の外周に弾性部材が配置されていることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項21】
前記弾性部材は、前記水槽と前記防振部が揺動し接触する場合に、少なくともそれらが最初に接触する位置に配置されていることを特徴とする請求項20に記載の洗濯機。
【請求項22】
前記水槽が傾斜して前記吊り棒が前記貫通穴の一端に来たときにも、前記貫通穴の他端側で、前記防振部の前記継ぎ手部との対向部が、該貫通穴の周縁部と重なりあう大きさとなっていることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−178653(P2008−178653A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114198(P2007−114198)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】