説明

洗濯機

【課題】水槽を任意の角度で傾斜させることができるようにしつつ、水槽で発生した振動を本体に伝播させないようにした洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機100は、本体10と、本体10内に吊り下げ収容され、所定の角度で傾斜可能な水槽20と、水槽20を吊り下げる複数の吊り棒30と、水槽20の外周に設けられ、吊り棒30と水槽20とを連動可能に連結する接続部51と、吊り棒30に取り付けられ、接続部51を介して水槽20を弾性支持する防振部52とを備え、水槽20の下部に、下方に向かって所定の角度θ1 で縮径するようなテーパー部60を形成し、角度θ1を、運転中における水槽20の最大傾斜角度θ0以上としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽を任意の角度で傾斜させることができるとともに、本体に伝播する振動を低減可能にした洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水槽を本体上部から吊り棒を介して吊り下げるようにした形式の全自動洗濯乾燥機(以下、単に洗濯機と称する)が存在する。このような形式の洗濯機は、一般的に、水槽を予め一定の角度で傾斜させた状態で本体内に常時配置されるようになっている。このように水槽を傾斜させる利点としては、洗濯物の出し入れを容易に行なえることや、洗濯物の洗浄効率及び乾燥効率の向上を図れることが挙げられる。
【0003】
そのようなものとして、「外形を形成するハウジング内に、洗濯物を収容して洗濯を行なうための洗濯槽が備えられた洗濯機において、上記洗濯槽は、上端部に開口を有する有底の筒状であり、上端部が底部に対して正面側に位置するように、筒の中心軸線が鉛直線に対して正面側へ所定の傾斜角度傾いており、ハウジングの前面は、下方に比べて上方が正面側へ膨出している洗濯槽」が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、「ケースと、前記ケースの内部に、前方上側部が前記ケースの前面部側に一定角度に傾いて取り付けられ、洗濯水を貯蔵する外槽及び前記外槽の内部に設けられ、洗濯物を洗濯する内槽からなる洗濯槽と、前記内槽を回転させる駆動手段とを含んでなる、傾斜式洗濯槽を有する洗濯機において、前記ケースの後面部に設けられた開口部と、外側に膨出部が形成され、前記開口部に被せられるバックカバーとを含んでなる傾斜式洗濯槽を有する洗濯機」が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−45594号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−160259号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水槽を傾斜させる場合に注意しなければならないことは、吊り棒と水槽とを連結する接続支持部を本体の側壁に接触させないようにすることである。この接続支持部は、一般的に水槽の外周に固定され、この水槽よりも外側に突出している。このために、接続支持部が本体の側壁に接触すると水槽で発生した振動が接続支持部を介して本体に伝播してしまうことになる。また、振動の発生に伴って振動音(騒音)も発生してしまう。この振動や騒音が本体の外部に漏洩してしまうとユーザに不快感を与えるだけでなく、洗濯機の故障の原因にもなりかねない。
【0007】
特許文献1に記載の洗濯機は、洗濯槽(水槽)を傾斜配置させて洗濯物を取り出し易くしたものである。確かに、洗濯槽を傾斜させれば上記のような利点がある。この洗濯機は、洗濯槽を傾斜させることで上記の利点を得ることを目的としているが、洗濯機の運転中(特に、脱水工程中)において洗濯槽の回転によって発生する大きな振動に対する対策がなされていない。このような洗濯機では、洗濯槽と吊り棒とを連結する接続支持部(鍔部)が本体(ハウジング)に接触してしまう可能性がある。したがって、振動や振動音が外部に漏洩してしまうという課題があった。
【0008】
特許文献2に記載の洗濯機は、本体の前方突出部を取り除くことで水槽が直立する洗濯機の本体を共用することができるようにしたものである。しかしながら、このような構造では、通常の本体内において水槽を傾斜させなければならず、水槽を本体に接触させないようにするためには予め一定の角度で水槽を傾斜させるように設計しなければならないことになる。つまり、水槽の傾斜角度に自由度がないのである。また、何らの対策も講じずに水槽を強制的に傾斜させるようにすると、この水槽が本体に接触してしまう可能性が高くなってしまう。
【0009】
さらに、いずれの特許文献に記載の洗濯機でも、洗濯槽の下部がテーパー状に形成されている。このように洗濯槽の下部をテーパー状に形成すると、洗濯槽の側面の強度が向上する。そして、洗濯槽を内部に設ける水槽(外槽)もこの洗濯槽の形状に合わせた形状となっていることが多い。
【0010】
このように洗濯槽及び水槽の下部をテーパー状に形成すれば、洗濯槽の側面の強度を向上させることができる。しかしながら、洗濯槽の回転によって発生する振動に対しての対策にはならない。この振動を外部に漏洩させないためには、水槽をいずれの角度で傾斜させた場合でも、水槽(特に、接続支持部)と本体の側壁とを接触させないようにしなければならない。つまり、水槽を傾斜させることによる利点を最大限活用しつつ、外部に漏洩してしまう振動及び振動音を防止することが要求されるのである。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、水槽を任意の角度で傾斜させることができるようにしつつ、水槽で発生した振動を本体に伝播させないようにした洗濯機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る洗濯機は、本体と、本体内に吊り下げ収容され、所定の角度で傾斜可能な水槽と、水槽を吊り下げる複数の吊り棒と、水槽の外周に設けられ、吊り棒と水槽とを連動可能に連結する接続部と、吊り棒に取り付けられ、接続部を介して水槽を弾性支持する防振部とを備えた洗濯機であって、水槽の下部に、下方に向かって所定の角度θ1で縮径するようなテーパー部を形成し、角度θ1を、運転中における水槽の最大傾斜角度θ0 以上としたことを特徴とする洗濯機。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る洗濯機は、本体と、本体内に吊り下げ収容され、所定の角度で傾斜可能な水槽と、水槽を吊り下げる複数の吊り棒と、水槽の外周に設けられ、吊り棒と水槽とを連動可能に連結する接続部と、吊り棒に取り付けられ、接続部を介して水槽を弾性支持する防振部とを備えた洗濯機であって、水槽の下部に、下方に向かって所定の角度θ1で縮径するようなテーパー部を形成し、角度θ1を、運転中における水槽の最大傾斜角度θ0 以上としたので、いずれかの角度で水槽を傾斜させたとしてもテーパー部が本体の側壁に接触することがない。つまり、本体の外部に漏洩してしまう振動及び振動音の発生を防止することが可能になるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る洗濯機100の概略構成を示す縦断面図である。ここでは、この洗濯機100が、洗濯物の洗浄工程や脱水工程、乾燥工程等を自動で行なうことが可能な全自動洗濯乾燥機である場合を例に説明するものとする。図1に基づいて、実施の形態に係る洗濯機100の構成について説明する。また、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図の左側を洗濯機前方とし、右側を洗濯機後方として説明する。
【0015】
図1に示すように、洗濯機100は、本体10内に水槽20を吊り棒30で吊り下げ、傾斜配置させた構成となっている。水槽20内部には、衣類等の洗濯物を収容し、その洗濯物の洗浄や脱水、乾燥等を行なう洗濯兼脱水槽21が回転自在に配置されている。この水槽20は、脱水時に洗濯兼脱水槽21から飛散する水を受ける役目を果たすようになっている。この水は、水槽20の前方下部に設けられている排水口23から外部に排水されるようになっている。
【0016】
水槽20の上部には、開口部25が形成されており、洗濯兼脱水槽21に洗濯物を出し入れ可能になっている。この開口部25の外径は、水槽20の外径よりも小さくなるように設定されている。また、この開口部25は、水槽20の上端よりも上方に突出するようになっている。つまり、開口部25の外径を水槽20の外径よりも小さく設定し、開口部25を水槽20の上端よりも上方に突出させることで、水槽20を傾斜させた時に水槽20の前方上部が本体10の壁面に接触させないようになっている。
【0017】
水槽20の前上方には、溢水口27が形成されている。この溢水口27は、本体10の外部に洗濯兼脱水槽21内の水が溢れ出てしまうのを防止する役目を果たすようになっている。この溢水口27から出た水は、水槽20と洗濯兼脱水槽21との間に設けられている排水ダクト24を通って排水口23から排水されるようになっている。また、水槽20の下部はテーパー部60に形成されている。このテーパー部60については、図3〜図5で詳細に説明する。
【0018】
洗濯兼脱水槽21の内側底部には、攪拌翼22が回転自在に配設されている。そして、水槽20の外側下部には、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22を回転駆動するための駆動部40が設けられている。駆動部40は、図示省略のDCモータやギア、クラッチ等で構成されている。この駆動部40は、駆動軸41に設けられているフランジを介して水槽20に連結されるようになっている。この駆動軸41は、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22の回転軸に締結され、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22を回転自在に支持するようになっている。また、水槽20の底面部26は、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22に安定した駆動力が伝わるように複数のリブが形成されている(図2参照)。
【0019】
なお、本体10内には、駆動部40内のモータの回転数を制御するための図示省略の制御手段が設けられている。この制御手段は、ユーザからの指示に基づいて洗濯機100全体の動作(洗浄工程や脱水工程、乾燥工程)を統括制御するようになっており、たとえばマイクロコンピュータ等で構成される。また、本体10の上部には、洗濯物を出し入れする衣類取出口11が形成されており、この衣類取出口11を蓋12によって開閉可能になっている。つまり、この衣類取出口11に水槽20の開口部25が対向するように本体10内に水槽20が配置されているのである。
【0020】
水槽20を吊り下げる吊り棒30は、本体10の前後方向に少なくとも1つずつ設けられていればよい。なお、この吊り棒30は、前後方向に少なくとも1つずつ備えられていればよく、特に本数を限定するものではないが、本体10の四隅に1つずつ設けるようにするのが望ましい。また、前後方向で吊り棒30の本数を変化させてもよいし、吊り棒30の長さを前後方向で異なるようにしてもよい。
【0021】
各吊り棒30の上部には、吊り棒30を上下方向に移動可能な水槽上下駆動機構31が配置されている。つまり、吊り棒30の本数に応じた水槽上下駆動機構31が、吊り棒30の上部に配置されるのである。この水槽上下駆動機構31は、本体10内に固定されており、吊り棒30を貫通支持するようになっている。この水槽上下駆動機構31が吊り棒30を上下方向に移動することによって、水槽20を任意の角度で傾斜可能になっている。
【0022】
つまり、水槽上下駆動機構31は、制御手段からの指示に基づいて吊り棒30を移動させて水槽20を任意の角度に傾斜させるようになっているのである。たとえば、制御手段が洗濯機100の運転工程に応じて水槽上下駆動機構31を制御することで、水槽20の傾斜角度を調整可能にするとよい。なお、水槽上下駆動機構31は、吊り棒30を支持でき、上下方向に駆動できるものであればよく、特に種類や機構を限定するものではない。また、ここでは、水槽20が任意の角度で傾斜可能になっている場合を例に説明するが、これに限定するものではなく、予め所定の角度で水槽20を傾斜させてある形式であってもよい。
【0023】
水槽20の外周には、吊り棒30と水槽20とを連結し、水槽20を弾性支持するための接続支持部50が設けられている。この接続支持部50は、接続部51と防振部52で構成されている。接続部51及び防振部52は、吊り棒30の本数及び吊り棒30の配置場所に応じて設けられている。接続部51は、吊り棒30を貫通させて水槽20と吊り棒30とを連結する役目を果たすようになっている。つまり、この接続部51は、吊り棒30を受け入れて吊り棒30と水槽20とを連動可能に連結しているのである。
【0024】
そして、接続部51の下側には、吊り棒30が抜けてしまうのを防止するとともに、接続部51を下側から支持するための防振部52が設けられている。この防振部52は、吊り棒30に取り付けられており、図示省略の防振バネ等で構成されている。防振部52は、接続部51を介して水槽20を下側から弾性支持するとともに、接続部51を介して伝播する振動を吸収する役目を果たすようになっている。
【0025】
このように、吊り棒30は、上側が水槽上下駆動機構31で支持され、下側が防振部52で支持されており、接続部51を貫通することで水槽20と連結するようになっているのである。なお、防振部52は、水槽20で発生した振動を吸収できるものであればよく、種類を特に限定するものではない。たとえば、ダンパーやサスペンション、コイルバネ、防振用バネ、空気バネ等で構成するとよい。なお、ここでは、防振部52が接続部51の下側に設けられている場合を例に示しているが、接続部51の上側に防振部52を設けてもよい。
【0026】
また、水槽20の後方内部には乾燥循環風路70が形成されている。この乾燥循環風路70は、一方が洗濯兼脱水槽21の開口部25近傍に設けた給気口71に開口し、他方が洗濯兼脱水槽21の側面に設けた排気口72に開口している。この乾燥循環風路70内には、洗濯物を乾燥する温風を作り出す温風送風手段73が本体10内部の後方上部に配置されている。溢水口27及び排水ダクト24を水槽20の前方側に設け、除湿機76及び乾燥循環風路70を水槽20の後方側に設けるようにすれば、水槽20全体のバランスを良くすることが可能になる。
【0027】
この温風送風手段73は、ファン74、ヒータ75及び除湿機76で構成されており、ファン74及びヒータ75は本体10側に固定され、除湿機76は水槽2側に固定されるようになっている。この除湿機76は、上端がジャバラ状の弾性体77で温風送風手段73と、下端は排気口72とそれぞれ接続されており、乾燥工程で使用された湿った空気を除湿して温風送風手段73に供給するようになっている。なお、温風送風手段73は、制御手段により制御されるようになっている。
【0028】
図2は、洗濯機100を底側から見た状態を示す平面図である。水槽20の底面部26は、上述したように洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22に駆動力が安定して伝わるように複数のリブが形成されている。底面部26にリブを形成することで底面部26の剛性を高くしているのである。つまり、底面部26の剛性を高くすることで、水槽20の下方に配置される駆動部40の重量や洗濯兼脱水槽21の衣類や洗濯水からなる不釣合い荷重の影響を受けにくくして駆動部40の駆動力を正確かつ確実に洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22に伝えるようにしているのである。
【0029】
この水槽20を形成する材質を特に限定するものではないが、ポリ塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、尿素樹脂等の合成樹脂を材質として水槽20を形成するとよい。このような素材は、金属板と比較すると軽く取り扱い易いが、剛性が低い。そこで、リブを形成して、その素材の剛性を高めるようにしているのである。また、リブを形成せずに板厚を増加させるということも考えられるが、製造に要するコストが高価になってしまうとともに、水槽20の重量が増加してしまうことになる。そこで、コストを低減しつつ水槽20の重量を抑えるためにもリブを形成することが好ましいのである。
【0030】
この水槽20の底面部26を構成する板材の厚さは、4mm(ミリメートル)以上とすることが望ましい。底面部26の板厚を4mmよりも薄くした場合、剛性が非常に小さいものとなり、安定的かつ正確に駆動力が伝達されないことになってしまう可能性があるからである。また、リブの個数や高さ、形状を特に限定するものではない。さらに、リブは、プレス加工や押し出し加工、研削加工、エッチング加工等して形成してもよく、底面部26を構成する板材にリブを張り付けて形成してもよい。
【0031】
図3は、テーパー部60を説明するための説明図である。図3(a)は洗濯兼脱水槽21の傾斜角度θ0とテーパー部60の縮径角度θ1との関係を表し、図3(b)は洗濯兼脱水槽21の全長L0とテーパー部60の高さL1との関係を表している。図3に基づいて、水槽20のテーパー部60について詳細に説明する。なお、洗濯兼脱水槽21の最大傾斜角度θ0 は、洗濯機100の運転動作中における最大傾斜角度を表しているものとする。
【0032】
まず、図3(a)から説明する。図3(a)に示すように、テーパー部60は、下方に向かって角度θ1で縮径するようになっている。この角度θ1は、洗濯機100の運転動作中における水槽20の最大傾斜角度θ0以上となるように設定されている。つまり、θ0≦θ1となっている。それは、角度θ1を最大傾斜角度θ0 よりも小さく設定してしまうと、水槽20を傾斜させたときに水槽20の下部(テーパー60)がより後方に突出してしまい、本体10の側壁と接触してしまう可能性が高くなるからである。
【0033】
水槽20の下部と本体10の側壁とが接触すると、水槽20で発生する振動が直接本体10に伝播し、本体10の外部に振動及び振動音(騒音)が漏洩することになる。通常、水槽20と本体10の側壁との間には20mm以上の隙間を設けるようになっている。振動及び振動音を外部に漏洩させないようにするには、つまり水槽20と本体10とを接触させないようにするには、水槽20を傾斜させたときにも水槽20の下部(テーパー部60)と本体10の側壁との間に20mm以上の隙間を最低限確保することが要求される(図5参照)。
【0034】
この隙間を大きくすればするほど、水槽20と本体10の側壁とを接触させなくて済むことになるが、それでは省スペース化及びコンパクト化の要請に反してしまう。したがって、この洗濯機100では、角度θ1を最大傾斜角度θ0以上となるように設定することによって、水槽20を最大に傾斜させた場合でもテーパー部60と本体10の側壁との間に最小隙間(20mm以上)を確保可能になっており、省スペース化及びコンパクト化の要請にも対応している。
【0035】
なお、水槽20を最大に傾斜させた場合に、テーパー部60と本体10の側壁とが平行となるように角度θ1 を設定することが望ましいが、厳密に平行とならなくてもよい。つまり、角度θ1を最大傾斜角度θ0以上とすることで、いずれの角度で水槽20を傾斜させたとしても、テーパー部60と本体10の側壁との間に所定の最小隙間を確保できるようになっているのである。また、洗濯機100が運転していないときは、水槽20で振動が発生しないので、テーパー部60と本体10の側壁とを接触させてもよく、θ0 よりも大きな角度で水槽20傾斜させてもよい。
【0036】
次に、図3(b)について説明する。上述してきたように、水槽20の下部には、テーパー部60が形成されている。このテーパー部60の高さL1は、水槽20の全長L0の6分の1以上に設定してある。つまり、L0≧1/6L1となっている。それは、テーパー部60の高さL1 をあまりに短く設定してしまうと、水槽20の傾斜可能範囲を狭めることになってしまうからである。また、水槽20の下部を単純にテーパー部60にするだけでは、洗濯兼脱水槽21の回転によって発生する振動に対しての対策にならないことに注意が必要である。
【0037】
水槽20を大きく傾斜させるためには、水槽20の大きさと本体10の大きさとに相対的に大きな差を設けなければならない。これでは、省スペース化及びコンパクト化の要請に反することになってしまう。そこで、洗濯機100は、水槽20の傾斜可能範囲を広くするために、テーパー部60の高さL1 を長く設定するようにしている。すなわち、この洗濯機100では、テーパー部60の高さL1を水槽20の全長L0の6分の1以上に設定することによって水槽20の傾斜可能範囲を広くしているのである。
【0038】
以上より、角度θ1及び高さL1をθ0≧θ1かつL1≧1/6L0の範囲で設定し、テーパー部60を形成するようになっている。この範囲でテーパー部60を形成すれば、水槽20の傾斜可能範囲を広くすることができ、いずれの角度で水槽20を傾斜させた場合であってもテーパー部60と本体10の側壁とを接触させることなく、本体10の外部に漏洩してしまう振動及び振動音の発生を防止することができる。なお、水槽20を予め所定の角度で傾斜させておいてもよく、運転工程に応じて傾斜角度を変更可能にしてもおいてもよい。
【0039】
図4は、水槽20を上から見た状態を示す平面図である。図4に基づいて、接続部51の設置位置について説明する。この図4には、水槽20を上から見た時に、水槽20の中心で直角に交わる横軸及び縦軸と、本体10を上から見たときの形状における2本の対角線と、水槽20の最後端を示す直線をと併せて図示してある。一般的に、水槽20と吊り棒30とを連結するための接続部51は、吊り棒30及び水槽上下駆動機構31の配置場所に応じて設けられている。そして、この吊り棒30及び水槽上下駆動機構31は、本体10内部の四隅に設けられることが多い。
【0040】
水槽20は水平方向の断面形状がリング状になっているために、水槽20を本体10内に設置しても四隅に空間ができることになる。この空間を利用して吊り棒30及び水槽上下駆動機構31を設けるようになっている。そして、接続部51も吊り棒30及び水槽上下駆動機構31の設置場所に対応する位置、つまり本体10を上から見たときの形状における対角線上に設けられるようになっている。たとえば、本体10を上から見たときの形状が正方形であれば、2本の45°の角度を有する対角線上に接続部51が設けられることになる。
【0041】
洗濯機100には、省スペース化、コンパクト化及びデザイン化が要求されており、近年その傾向が顕著になってきている。このような要求を実現するためには、吊り棒30や水槽上下駆動機構31、接続部51の設置場所にも自由度が求められる。特に、洗濯機100のように水槽20が傾斜可能なものでは、水槽20を傾斜させた状態のことも考慮して吊り棒30や水槽上下駆動機構31、接続部51の設置場所を決定することが要求される。
【0042】
たとえば、図4に示すように、水槽20の後部側に設けられる2つの接続部51が水槽20の最後端よりも後方に突出するように配置されている場合において、水槽20を傾斜させると、この接続部51は傾斜していない場合に比べてより後方に突出することになる。つまり、水槽20の後部側の2つの接続部51を水槽20の最後端よりも後方に突出するように配置すると、水槽20を傾斜させたときにそれらの接続部51が本体10の側壁と接触してしまう可能性が高くなってしまうのである。接続部51と本体10の側壁とが接触すると、振動及び振動音が外部に漏洩してしまうことになる。この振動を外部に漏洩させないためには、水槽20をいずれの角度で傾斜させた場合でも、接続部51と本体10の側壁とを接触させないことが要求される。
【0043】
そこで、この実施の形態に係る洗濯機100では、水槽20の後部側に設けられる2つの接続部51が水槽20の最後端よりも後方に突出するように配置されていたとしても、これらの接続部51をテーパー部60よりも上方に設けることで、接続部51と本体10の側壁とを接触させないようにしている。別の言い方をすれば、水槽20の後部側に設けられる2つの接続部51を横軸(水槽20の中心を通る前後方向に水平な直線)と対角線との間にそれぞれ1つずつ設けることで、接続部51と本体10の側壁とを接触させないようにしている。
【0044】
このように、接続部51をテーパー部60の上方に設けるようにすれば、この接続部51が水槽20の外周のいずれに配置されていたとしても、接続部51と本体10の側壁とを接触させないようにすることができるとともに、接続部51の設置場所の自由度を増加させることが可能になるのである。なお、水槽20の前方側の2つの接続部51も同様に横軸と対角線との間に設けるようにしてもよい。
【0045】
したがって、この実施の形態に係る洗濯機100は、テーパー部60を図3で示した範囲内で形成し、かつ、このテーパー部60の上方に接続部51を設ければ、接続部51が水槽20の最後端よりも後方に突出していたとしても、この接続部51と本体10の側壁とが接触することがない。なお、接続部51をテーパー部60の上方であれば、この接続部51は水槽20の外周のいずれに設けるようにしてもよい。
【0046】
図5は、水槽20の傾斜可能範囲を説明するための説明図である。図5(a)は水槽20の直立状態時を、図5(b)は水槽20の最大傾斜時をそれぞれ表している。図5に基づいて、水槽20の傾斜可能範囲について説明する。なお、図5には、接続部51と比較するための接続部51’を図示している。また、本体10の側壁からの距離2mmを波線によって図示している。
【0047】
実施の形態に係る洗濯機100は、図5(a)に示すように、水槽20を本体10内部で吊り下げ支持する形式になっており、吊り棒30と水槽20とを連結する接続部51が水槽20外周よりも外側に突出するようになっている。つまり、この接続部51が本体10の側壁に接触することによって、水槽20で発生する振動が本体10に伝播してしまうのである。したがって、洗濯機100の運転動作中に水槽20を傾斜させた時でも接続部51が本体10の側壁に接触しないようにしなければならないのである。
【0048】
接続部51’のようにテーパー部60に設けられていると、図5(b)に示すように水槽20を傾斜させた時に、この接続部51’が波線を後方側に超えてしまうことになる。つまり、水槽20を傾斜させたときに接続部51’が本体10の側壁に接触してしまう可能性が高くなるのである。したがって、接続部51’を水槽20の側壁に接触させないように水槽20を傾斜させるには、水槽20の傾斜可能範囲を狭まる必要がある。
【0049】
しかしながら、接続部51は、テーパー部60よりも上方に設けられるようになっている。こうすれば、図4(b)に示すように水槽20を傾斜させた時でも、この接続部51が波線を後方側に越えることがないのである。つまり、水槽20を傾斜させたときに接続部51が本体10の側壁に接触しないのである。したがって、図4で説明した範囲でテーパー部60を形成するとともに、接続部51をテーパー部60よりも上方に設けることによって水槽20の傾斜可能範囲を広くしているのである。
【0050】
以上のように、この実施の形態に係る洗濯機100は、省スペース化、コンパクト化、デザイン化、水槽20の強度アップ、水槽20と洗濯兼脱水槽21との間の無駄水減少及び倉庫での積み重ね保管の要請に応じつつ、さらに外部に漏洩してしまう振動及び振動音の発生を防止することが可能になる。また、実施の形態に洗濯機100は、実施の形態で説明した内容に限定されることなく、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内において適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態に係る洗濯機の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】洗濯機を底側から見た状態を示す平面図である。
【図3】テーパー部を説明するための説明図である。
【図4】水槽を上から見た状態を示す平面図である。
【図5】水槽の傾斜可能範囲を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0052】
10 本体、11 衣類取出口、12 蓋、20 水槽、21 洗濯兼脱水槽、22 撹拌翼、23 排水口、24 排水ダクト、25 開口部、26 底面部、27 溢水口、30 吊り棒、31 水槽上下駆動機構、40 駆動部、41 駆動軸、50 接続支持部、51 接続部、52 防振部、60 テーパー部、70 乾燥循環風路、71 給気口、72 排気口、73 温風送風手段、74 ファン、75 ヒータ、76 除湿機、77 弾性体、100 洗濯機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に吊り下げ収容され、所定の角度で傾斜可能な水槽と、
前記水槽を吊り下げる複数の吊り棒と、
前記水槽の外周に設けられ、前記吊り棒と前記水槽とを連動可能に連結する接続部と、 前記吊り棒に取り付けられ、前記接続部を介して前記水槽を弾性支持する防振部とを備えた洗濯機であって、
前記水槽の下部に、下方に向かって所定の角度θ1 で縮径するようなテーパー部を形成し、
前記角度θ1を、運転中における前記水槽の最大傾斜角度θ0以上とした
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記テーパー部の高さL1を、前記水槽の全長L0の1/6以上の長さとした
ことを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記接続部のうち少なくとも前記水槽の後部側に設けられる接続部を前記テーパー部よりも上方に設けた
ことを特徴とする請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記テーパー部と前記本体の側壁との間の最小隙間を20mm以上とした
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項5】
前記テーパー部の底面部の板厚を4mm以上とした
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項6】
前記本体の外部に水を溢れ出させないようにする溢水口と、
前記溢水口から流れ出た水を排水口へと導く排水ダクトとを前記水槽の前方側に設けた ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項7】
衣類の乾燥工程時に湿った空気を除湿するための除湿機と、
前記水槽内の空気を前記除湿機へと導く乾燥循環風路とを前記水槽の後方側に設けた
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項8】
前記溢水口及び前記排水ダクトと、
前記除湿機及び前記乾燥循環風路とを対向位置に設けた
ことを特徴とする請求項6または7に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記水槽の上端部に該水槽の外径よりも小さくて、かつ、該水槽の上端から上方に突出した洗濯物を出し入れするための開口部を設けた
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−36309(P2008−36309A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217750(P2006−217750)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】