説明

洗濯機

【課題】駆動手段35の回転数が高い脱水において、耳障りな高周波音が洗濯機外枠30の外部まで伝わり、洗濯機の動作音が不快なものになるという問題を有していた。
【解決手段】洗濯機外枠30に設けられた弾性体31により支持された外槽33と、外槽33内に回転可能に設けられた洗濯兼脱水槽34と、外槽33に設けたモータ(駆動手段)35の回転を洗濯兼脱水槽34に伝達する伝達手段45とを備え、伝達手段45は、モータ35に設けた第1のプーリ42と、洗濯兼脱水槽34に設けた第2のプーリ43と、第1のプーリ42と第2のプーリ43を回転自在に連結する伝達ベルト44で構成し、第1のプーリ42を所定の周波数の音を遮音する遮音手段46で覆ったものであり、これによって、耳障りな音を遮音することができ、快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機本体内に弾性的に支持した外槽内に回転自在に配設した洗濯兼脱水槽内で洗濯物の洗濯、すすぎ、脱水(更に乾燥まで行う場合もある)を行う洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機は、モータを伸縮性を有する遮音部材で覆い、遮音部材の一端をモータ近辺に固定し、更に、遮音部材にモータと洗濯機本体外部とを連通する連通路を設ける構成としたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の遮音部材の構成を示すものである。図9に示すように、遮音部材8は、ゴム、樹脂その他の材料により形成され、内部にモータ9と冷却ファン10を収容している。遮音部材8の一端は洗濯機本体1の後部に、他端はモータ9の近辺の外槽3に固定されている。遮音部材8には、凹凸部11を設けて伸縮性を持たせている。連通路12は、モータ9と洗濯機本体1の外部とを連通している。連通路12は仕切板13によって上下に分けられ、上側をモータ9を冷却する空気が流れ、下側を冷却後の空気が洗濯機本体1の外部へと流れている。モータ9の回転は、プーリ14、ベルト15を介して伝達機構部(図示せず)に伝えられる。洗濯および脱水は、モータ9の回転によって行われ、モータ9は騒音を発生するが、遮音部材8によってほぼ全方面にわたって遮音することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−265191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、遮音部材8は、モータ9が発生する騒音を遮音しているが、プーリ14とベルト15が発生するベルト駆動音は遮音されていない。従って、モータ9の回転数が高い脱水において、耳障りな高周波音が洗濯機本体1の外部まで伝わり、洗濯機の動作音が不快なものになるという問題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、プーリとベルトが駆動する時に発生する耳障りな高周波音を遮音し、快適な動作音を有する洗濯機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、モータのプーリを覆う遮音手段を設け、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を除去したものである。
【0008】
これによって、耳障りな音を遮音することができ、快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗濯機は、モータのプーリを覆う遮音手段を設け、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を除去することで耳障りな音を遮音することができ、快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の縦断面図
【図2】同洗濯機の要部背面図
【図3】同洗濯機の騒音の周波数分析を示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態2における洗濯機の要部斜視図
【図5】本発明の実施の形態3における洗濯機の要部背面図
【図6】本発明の実施の形態4における洗濯機の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態5における洗濯機の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態6における洗濯機の背面図
【図9】従来の洗濯機の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、洗濯機外枠に設けられた弾性体により支持された外槽と、前記外槽内に回転可能に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記外槽に設けた駆動手段の回転を前記洗濯兼脱水槽に伝達する伝達手段とを備え、前記伝達手段は、前記駆動手段に設けた第1のプーリと、前記洗濯兼脱水槽に設けた第2のプーリと、前記第1のプーリと前記第2のプーリを回転自在に連結する伝達ベルトで構成し、前記第1のプーリを所定の周波数の音を遮音する遮音手段で覆った洗濯機とすることにより、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を除去することができ、耳障りな音が無い快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の遮音手段は、開口部の一部を覆う遮音体を備えた洗濯機とすることにより、開口部の面積を小さくすることができ、開口部から漏れるベルト駆動音を少なくすることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1の発明の遮音手段は、外槽と一体に形成し、内壁に所定の周波数の音を吸音する吸音体を設けた洗濯機とすることにより、遮音手段を取り付ける部品を無くすことができ、安価に遮音手段を構成することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第3の発明の遮音手段は、内壁と吸音体の間に空間を設けた洗濯機とすることにより、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を効率よく除去することができ、更に快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第3の発明の遮音手段は、内壁に所定の周波数の音を消音する消音部を一体に形成した洗濯機とすることにより、吸音体を無くすことができ、更に安価に遮音手段を構成することができる。
【0016】
第6の発明は、特に、第1の発明の遮音手段は、可撓性を有する吸音体とした洗濯機とすることにより、外槽の振動が遮音手段に伝達されても遮音手段が振動を吸収するので騒音を発生しにくくなり、また、外槽が大きく振動して、遮音手段が洗濯機外枠に衝突しても遮音手段が撓むので、衝突音を小さくすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の縦断面図、図2は、同洗濯機の要部背面図、図3は同洗濯機の騒音の周波数分析を示すグラフを示すものである。
【0019】
図1〜図3において、洗濯機外枠30は、4本の弾性体31と、2本の減衰装置32に
より外槽33を弾性支持している。洗濯兼脱水槽34は、外槽33内に回転自在に配設している。モータ(駆動手段)35は、ブラシレス直流モータから成っており、インバータ制御され、回転速度が自在に変化されるようになっている。給水手段36は洗濯兼脱水槽34内に給水するものである。水位検知手段37は、外糟33内の洗濯水位を検知する。排水手段(図示せず)は、外槽33内の洗濯水を排水するものである。ウエイト38は外槽33に取り付けられており、外槽33の質量を増加させ、外槽33の振動を抑制するものである。
【0020】
制御装置39は、洗濯機外枠30の前面下部に設けられている。制御装置39は、洗濯機外枠30の前面上部に設けられた操作表示手段40により入力された設定内容に基づいて洗い、すすぎ、脱水の各工程を逐次制御するもので、パワースイッチング手段(図示せず)を介してモータ35、給水手段36、排水手段などを逐次制御する。
【0021】
減衰装置32は、オイルを作動流体とする粘性ダンパーで、脱水起動時の外槽33の共振振動振幅を低減するものであり、洗濯機外枠の底部30aと外槽33の底部33aの間に固定されている。脚41はゴムなどの弾性材料で構成され、洗濯機外枠の底部30aの四隅に配置されている。
【0022】
駆動手段35には第1のプーリ42が、洗濯兼脱水槽34には第2のプーリ43が設けられており、両者は、伝達ベルト44によって回転自在に連結され伝達手段45を構成している。第1のプーリ42と第2のプーリ43の減速比は10:1に設定している。遮音手段46は樹脂製で略箱状に形成されており、第1のプーリ42を覆うようにその開口部46aを外槽33の底部に固定している。
【0023】
以上のように構成された洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。
【0024】
まず、洗濯兼脱水槽34内に衣類と洗剤を投入後、操作表示手段40を操作して運転を開始する。これによって、給水手段36が動作し、洗濯兼脱水槽34内に洗濯水が供給されると共に洗濯兼脱水槽34も回転を開始する。規定量の洗濯水が供給されると給水手段36は給水を停止する。洗濯兼脱水槽34の回転によって、洗剤は洗濯水に溶かされ、洗濯液となって衣類に浸透する。洗濯兼脱水槽34は、30〜50r/min(駆動手段の回転数:300〜500r/min)程度の低速で回転して、衣類を持ち上げては落とすというたたき洗いを規定時間行う。この回転数では、耳障りな高周波音は発生しない。
【0025】
洗濯終了後、排水手段が作動し、汚れを溶かし込んだ洗濯水は、外槽33の外に排水される。排水終了後、洗濯兼脱水槽34の回転は徐々に速くなり脱水工程に入る。脱水起動後、洗濯兼脱水槽34の回転数が上昇して定常回転数である900r/minに達すると、駆動手段35の回転数は9000r/minになっており、第1のプーリ42と伝達ベルト44の接触音による4kHz〜8kHzの騒音レベルが高くなり、耳障りとなっている。しかしながら、遮音手段46で第1のプーリ42を覆ったことにより、その周波数帯の騒音レベルを下げることができ、耳障りな音を消すことができる。
【0026】
以上のように本実施の形態においては、第1のプーリ42を所定の周波数の音を遮音する遮音手段46で覆ったことにより、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を除去することができ、耳障りな音が無い快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。また、遮音手段46は第1のプーリ42のみを覆い、駆動手段35を覆っていないので駆動手段35の放熱を妨げることがなく駆動手段35の温度上昇の悪化はない。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2の洗濯機の要部斜視図である。図4において、第1の発
明の遮音手段46は、開口部46aの一部を覆う遮音体46bを備えたものである。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0028】
この構成により、開口部46aの面積を小さくすることができ、開口部46aから漏れるベルト駆動音を少なくすることができる。
【0029】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3の洗濯機の要部背面図である。図5において、第1の発明の遮音手段46は、外槽33と一体に形成し、内壁46cに4kHz〜8kHzの周波数帯の音を吸音する吸音体47を設けたものである。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0030】
これにより、遮音手段46を取り付ける部品を無くすことができ、安価に遮音手段46を構成することができる。
【0031】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4の洗濯機の要部背面図である。図6において、第1の発明の遮音手段46は、内壁46cと吸音体47の間に空間48を設け、空間48の幅を4kHz〜8kHzの1/4波長に近い10mm〜20mmとしたものである。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0032】
この構成により、プーリとベルトが発生するベルト駆動音の高周波成分を効率よく除去することができ、更に快適な動作音を有する洗濯機を実現することができる。
【0033】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5の洗濯機の要部断面図である。図7において、第1の発明の遮音手段46は、内壁46cに4kHz〜8kHzの周波数の音を消音する消音部49を一体に形成している。消音部49は消音室49a、消音口49bで構成されている。消音口49bの幅は0.5mmに設定している。消音室49aの寸法Rを変えることにより消音する周波数を決めている。4kHzでは、R=5mm、6kHzではR=3.5mm、8kHzでは、R=2.7mmとしている。以上のように3種類の消音室49aを設けている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0034】
この構成により、吸音体を無くすことができ、更に安価に遮音手段46を構成することができる。
【0035】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6の洗濯機の背面図である。図8において、第1の発明の遮音手段46は、可撓性を有する吸音体としたものである。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0036】
この構成によれば、外槽33の振動が遮音手段46に伝達されても、遮音手段46が振動を吸収するので騒音を発生しにくくなる。また、外槽33が大きく振動して、遮音手段46が洗濯機外枠30に衝突しても遮音手段46が撓むので、衝突音を小さくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、駆動手段のプーリ部に遮音手段を設けることで、脱水時の耳障りな音を無くすことができるので、洗濯機以外の回転機械の防音にも応用可能である。
【符号の説明】
【0038】
30 洗濯機外枠
31 弾性体
33 外槽
34 洗濯兼脱水槽
35 モータ(駆動手段)
42 第1のプーリ
43 第2のプーリ
44 伝達ベルト
45 伝達手段
46 遮音手段
46a 開口部
46b 遮音体
46c 内壁
47 吸音体
48 空間
49 消音部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機外枠に設けられた弾性体により支持された外槽と、前記外槽内に回転可能に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記外槽に設けた駆動手段の回転を前記洗濯兼脱水槽に伝達する伝達手段とを備え、前記伝達手段は、前記駆動手段に設けた第1のプーリと、前記洗濯兼脱水槽に設けた第2のプーリと、前記第1のプーリと前記第2のプーリを回転自在に連結する伝達ベルトで構成し、前記第1のプーリを所定の周波数の音を遮音する遮音手段で覆った洗濯機。
【請求項2】
遮音手段は、開口部の一部を覆う遮音体を備えた請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
遮音手段は、外槽と一体に形成し、内壁に所定の周波数の音を吸音する吸音体を設けた請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
遮音手段は、内壁と吸音体の間に空間を設けた請求項3記載の洗濯機。
【請求項5】
遮音手段は、内壁に所定の周波数の音を消音する消音部を一体に形成した請求項3記載の洗濯機。
【請求項6】
遮音手段は、可撓性を有する吸音体とした請求項1記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−104226(P2011−104226A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264520(P2009−264520)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】