説明

洗濯機

【課題】すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくするとともに、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化する。
【解決手段】洗濯槽3に洗濯水を供給する給水手段6を設けた給水路9aと、給水路9aを介して洗濯槽3に給水する水に溶解しているイオンの吸着と脱離をおこなう水処理装置10と、洗濯槽3の水を排水する排水手段14を設けた排水路12と、モータ5等を制御し洗濯動作を制御する制御手段16とを備え、制御手段16は、最終すすぎ工程で水処理装置10によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を洗濯槽3へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから所定時間後に水処理装置10の動作を停止するようにしたもので、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくするとともに、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水に溶解しているイオンを除去する水処理装置を備えた洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のイオンを除去する水処理装置を備えた洗濯機は、図4に示すような構成であった(例えば、特許文献1参照)。以下、その構成、動作について説明する。電解槽31中に隔膜32を間に挟んで一対の電極33が対向して配置され、それぞれの電極33に電源34が接続され陽極、陰極を形成している。軟水化を行うときは、電解槽31に水を導入し、電源34により両電極33間に電圧を印加する。水中に溶解しているカルシウムやマグネシウム等の陽イオンは、隔膜32を通過して陰極室へ移動する。洗濯時は、水中に溶解していたカルシウムやマグネシウム等の陽イオンが減少した陽極室内の水を用いて行うようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−115681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、軟水化するさいに硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの電気泳動による電気透析で除去しており、軟水化レベルは水中でのイオンの移動速度に制限されるので、迅速に軟水を得るためには装置を大型化する必要があった。
【0005】
また、水に溶解しているイオンを吸着した軟水化後は、吸着したイオンを脱離することにより、イオンを吸着できる状態に再生することができる。軟水化した洗濯水は、洗濯時だけでなく、すすぎ時に使用すると洗濯後の仕上がりをよくすることができるが、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用すると、洗濯機の運転が終了するまでの時間が短く、次の洗濯時に使用する洗濯水に溶解しているイオンを吸着することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることと、吸着したイオンを脱離する再生を可能にし、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化できるようにした洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、洗濯槽に洗濯水を供給する給水手段を設けた給水路と、前記給水路を介して前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンの吸着と脱離をおこなう水処理装置と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段を設けた排水路と、モータ等を制御し洗濯動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、最終すすぎ工程で前記水処理装置によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を前記洗濯槽へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから所定時間後に前記水処理装置の動作を停止するようにしたものである。
【0008】
これによって、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることができるとともに、水処理装置の再生を十分に行うことができるので、水処理装置のイオン交
換体は水に溶解しているイオンを吸着できる状態となり、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗濯機は、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることができるとともに、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態における洗濯機の構成図
【図2】同洗濯機の水処理装置の構成図
【図3】同洗濯機の動作を示すタイムチャート
【図4】従来の水処理装置を備えた洗濯機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、洗濯物を収容する洗濯槽を回転可能に内包した外槽と、前記洗濯槽を回転駆動するモータと、前記洗濯槽に洗濯水を供給する給水手段を設けた給水路と、前記給水路を介して前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンの吸着と脱離をおこなう水処理装置と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段を設けた排水路と、前記モータ等を制御し一連の洗濯動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、最終すすぎ工程で前記水処理装置によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を前記洗濯槽へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから所定時間後に前記水処理装置の動作を停止するようにしたことにより、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることができるとともに、水処理装置の再生を十分に行うことができるので、水処理装置のイオン交換体は水に溶解しているイオンを吸着できる状態となり、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明に、水処理装置から機外へ排水する排水路を設け、前記水処理装置によりイオンを脱離した再生水を前記排水路から機外に排出するようにしたことにより、水処理装置の再生排水が洗濯槽に導かれることなく機外に排出することができるので、洗濯槽内の衣類が高濃度のイオンが含まれている再生排水に接触することがないので、柔軟で水中イオン由来の成分による汚れが付着せず、仕上がりをよくすることができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の水処理装置は、少なくとも一対の電極を設けたケースと、電極間に配置した陽イオン交換体と陰イオン交換体を表裏に設けたイオン交換膜を有し、前記ケース内に流入した水に溶解しているイオンを吸着する軟水化時は、前記陽イオン交換体と対向する前記電極に電圧を印加し、吸着したイオンを脱離する再生時は、前記陰イオン交換体と対向する前記電極に電圧を印加するようにしたことにより、衣類の洗い水に軟水を用いることで洗剤の洗浄力が向上し汚れ落ちがよくなり、さらに、すすぎ水に軟水を用いることで洗剤の溶解性が高まりすすぎ性能が向上し、かつ、衣類のゴワゴワ感やキシミが低減し仕上がりがよくなる。また、多数のイオン交換サイトを有するイオン交換膜により硬度成分を捕捉して軟水化処理することができ、洗い時に高硬度水を軟水化する場合でも小型の装置サイズで大流量の給水流量で軟水化することができる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明に、水処理装置が作動していることを表示する水処理装置運転表示手段を設け、制御手段は、少なくとも洗濯動作を終了してから前記水処理装置の動作が停止するまで表示するようにしたことにより、洗濯機の動作後に、水処理装置が再生の動作をおこなっていることを使用者に知らせることができる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の水処理装置は、イオンを吸着し軟水化するときは、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加するようにしたことにより、水に溶解しているイオンが除去された処理水は水の電気分解ガスを含むことがなく、処理水を導く流路や洗濯槽にガスが溜まる恐れがない。
【0016】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明の水処理装置は、イオンを脱離する再生時は、電極間に水解離電圧以上の電圧を印加するようにしたことにより、水を解離してHイオンとOHイオンを生成し、水中のイオンを吸着したイオン交換体を再生することができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明の水処理装置は、イオンを脱離する再生時は、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加するようにしたことにより、水に溶解しているイオンが除去された処理水は水の電気分解ガスを含むことがなく、処理水を導く流路や洗濯槽にガスが溜まる恐れがない。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の構成図、図2は、同洗濯機の水処理装置の構成図、図3は、同洗濯機の動作を示すタイムチャートである。
【0020】
図1〜図3において、洗濯機の筐体1内に外槽2が弾性支持され、この外槽2内に洗濯槽3が回転可能に配設されている。洗濯槽3は前面側に衣類等の洗濯物を投入する開口部4を設け、有底筒状に形成されている。洗濯槽3は外槽2の背面に取り付けられたモータ5によって回転駆動し、洗濯槽3の回転軸は前上がりに傾斜している。洗濯槽3に洗濯水を供給する給水弁(給水手段)6は原水ライン7と接続されており、原水ライン7は水道水から供給される。洗濯水は、水道水のほかに洗濯に使用可能な状態にして、工業用水、地下水等が使用できる。
【0021】
原水ライン7の水は、給水弁6、粗ろ過手段8を通り、給水路9aから水処理装置10に導かれる。水処理装置10により水に溶解しているイオンが除去された水は、三方弁11aにより洗濯槽3と排水路12に分岐され、洗濯槽3に導入される給水路9bに洗剤投入手段13が設けられており、洗濯時は、洗剤投入手段13に入れられた洗剤とともに洗濯槽3へ導入される。
【0022】
給水路9bから洗濯槽3に導入される洗濯水は、外槽2後部の下方に接続した給水路9cと、外槽2前部の上方に接続した給水路9dから給水可能に設けてあり、切換弁11bによって切り換えることができる。洗濯およびすすぎ時は、洗剤投入手段13を通って給水路9cから給水され、洗濯時は洗剤とともに給水される。
【0023】
洗濯およびすすぎ時に、洗濯槽3内で撹拌されている洗濯物に洗濯水をかけるときは、給水路9dから給水される。給水路9c、9dから供給される洗濯水は、いずれも水処理装置10により水に溶解しているイオンが除去されて軟水化されている。
【0024】
一方、水処理装置10のイオン交換体からイオンが脱離した再生水は、三方弁11aにより分岐され、排水路12を通って機外へ直接排出される。洗濯槽3の水は、排水弁(排水手段)14により水処理装置10の排水路12と合流して機外に排出される。
【0025】
水処理装置10の動作状態を表示する作動ランプ(水処理装置運転表示手段)15は、筐体1の前面に配置されている。マイクロコンピューターを搭載した制御手段16は、筐体1内に配設されており、制御手段16への電源の供給を遮断する遮断手段17を介して電源ケーブル18で商用電源に接続している。
【0026】
図2は、水処理装置10の構成図である。水処理装置10は、給水路9aから洗濯水が流入し、三方弁11aへ流出するケース19内に、1組の電極20a、20bを対向して配設している。1組の電極20a、20b間には、水に溶解している陽イオンを吸着する陽イオン交換体21と、水に溶解している陰イオンを吸着する陰イオン交換体22とを、表裏に極性が異なるよう張り合わせたイオン交換膜23が設けてあり、洗濯水の流れる方向に沿って板状に配設している。
【0027】
イオン交換膜23は、電極20a、20b間に複数枚積層しており、平板状の対向した電極20a、20b間に平面状にイオン交換膜23を積層している。なお、また、電極20a、20bを半径の異なる同心円柱状に対向した構成とし、電極20a、20b間に同心円状や螺旋状にイオン交換膜23を積層してもよい。
【0028】
イオン交換体は、スチレンまたはジビニルベンゼンの重合体または共重合体高分子を基本骨格とし、陽イオン交換体21は、スルホン酸基またはアクリル酸やメタクリル酸等のカルボン酸基を導入しており、陰イオン交換体22は、第4級アンモニウム基または第1〜3級アミノ基を導入している。
【0029】
イオン交換体をイオン交換膜23に成膜するさい、イオン交換体をポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に混練分散させることで、膜の成形性が向上することができる。表裏に極性が異なるようイオン交換体を張り合わせたイオン交換膜23は、バイポーラ膜と呼ばれ、電圧を印加することで陽イオン交換体21と陰イオン交換体22の界面で水の解離が促進されるので、低電圧で水の解離を行うことができる。
【0030】
以上のように構成した洗濯機について、以下その動作、作用を説明する。使用者が洗濯機の電源を入れると、制御手段16は、給水弁6、三方弁11a、切換弁11b、排水弁14、洗濯槽3を回転駆動するモータ5、および水処理装置10等を制御し、予め設定された運転プログラムから選択されたコースを実行し、例えば、図3に示すように、洗い、中間脱水、すすぎ、中間脱水、最終すすぎ、最終脱水の順に運転をおこない、一連の動作を逐次制御する。
【0031】
水処理装置10は、水に溶解しているイオンをイオン交換体で吸着する軟水化(軟水工程)と、イオン交換体に吸着したイオンを脱離する再生(再生工程)とで、動作が異なるので、まず、水処理装置10で水中のイオンをイオン交換体に吸着する軟水工程について説明する。
【0032】
水中に溶解しているイオンを吸着する軟水工程は、給水弁6を開放し、原水ライン7の水が粗ろ過手段8を通って給水路9aから水処理装置10に流入する。粗ろ過手段8は、原水ライン7の水に含まれる微細な砂や鉄さび、濁質等の異物を除去する。水処理装置10により水中に溶解しているイオンが除去された軟水は、三方弁11aを経て給水路9bに入り、洗剤投入手段13を経由して洗濯槽3に導かれる。
【0033】
洗い運転を所定時間行った後、排水弁14を開放して洗濯槽3内の洗い水を排水し、所定時間中間脱水をおこない、続いて、同様に軟水化したすすぎ水を給水し、すすぎ運転を行う。
【0034】
ここで、水処理装置10の動作について、さらに詳しく説明する。水処理装置10は、水に溶解しているCa、Mg、Na、Mn、Fe、Cu等の各陽イオンは陽イオン交換体21で水素イオンに、水中に溶解したCl、炭酸、硫酸、硝酸等の各陰イオンは陰イオン交換体22で水酸化物イオンにイオン交換することで、水中に溶解している各種イオンをイオン交換体に吸着する。
【0035】
イオン交換体がイオンを吸着するさい、イオン交換膜23の陽イオン交換体21側の電極20aを陽極、陰イオン交換体22側の電極20bを陰極となるよう電圧を印加することで、水処理装置10内のイオンがイオン交換体に電気泳動するので、イオン交換体のイオン吸着速度を増加させることができる。
【0036】
そのさい、水分子が電気分解し水素分子と酸素分子を生成する水の理論分解電圧は1.226Vであるので、水の分解電圧未満の電圧を印加することで、水素ガスおよび酸素ガスが発生することなく、水に溶解しているイオンをイオン交換体で効率的に吸着することができる。
【0037】
軟水化された処理水は、水の分解ガスを含有しておらず、洗濯槽3や排水路12に水の分解ガスが蓄積することがない。洗い運転のさいに水処理装置10で水に溶解しているイオンを吸着することで、衣類を洗浄するさい洗剤の効果を高めることができ、洗浄力の向上と洗い時間の短縮が図れ、省エネが可能となる。
【0038】
また、洗剤投入手段13や洗濯槽3に金属石鹸が生成することがないので、洗剤投入手段13や洗濯槽3を清浄に保つことができる。また、陰イオンが減少することで腐食を防止することができる。また、pHの偏った水を処理した場合は、酸性の場合はアニオン種を水酸化物イオンに、塩基性の場合はカチオン種を水素イオンに交換することで中性の水に近づけることができ、水処理装置10により処理した水は、pHによる腐食や衣類の傷みを防止することができる。
【0039】
一方、すすぎ運転のさいに水処理装置10で水に溶解しているイオンを吸着することで、衣類から洗剤をすすぎ出すさいに、水中のイオンと洗剤が結合して溶解が妨げられることがなく、すすぎ性能が向上し、すすぎ水の低減とすすぎ時間の短縮が図れ、省エネが可能となる。
【0040】
また、すすぎ時に洗剤が希釈されたさい、CaやMg等の陽イオンは洗剤にブロックされることなく水中に存在すると、衣類の組成であるセルロースやウール、化繊等を架橋し、衣類のゴワゴワ感やキシミの原因となるが、水処理装置10で水に溶解しているイオンを吸着することで、洗濯後の衣類の仕上がりが向上する。
【0041】
なお、水処理装置10で水に溶解しているイオンを吸着するさいに、電極20a、20b間に電圧を印加しなくてもよい。イオン交換体が水に溶解しているイオンを吸着する作用に変わりはなく、処理水に水の分解ガスを含有しない効果も変わらない。
【0042】
一方、水処理装置10で水に溶解しているイオンを吸着するさいに、電極20a、20b間に水の理論分解電圧以上の電圧を印加してもよい。水の分解ガスは発生するが、水処理装置10のイオン除去能力はさらに向上し、得られる効果が高まる。そのさいは、洗濯槽3で十分に水の分解ガスが希釈されるよう制御する。
【0043】
次に、水処理装置10がイオン交換体に吸着したイオンを脱離する再生工程の動作、作用を説明する。イオン交換体がイオンを脱離するさいは、原水ライン7より給水弁6に導かれた水は、水処理装置10で再生処理された後、三方弁11aで排水路12に切換えら
れ、排出手段(図示せず)により筐体1より排出される。
【0044】
水処理装置10では、イオン交換膜23の陽イオン交換体21側の電極20aを陰極、陰イオン交換体22側の電極20bを陽極となるよう電圧を印加する。水分子が水素イオンと水酸化物イオンに解離する水の理論解離電圧は0.828Vであるので、水の解離電圧以上の電圧を印加することで、イオン交換膜の陽イオン交換体21と陰イオン交換体22の界面で水が解離し、イオン交換体に吸着したイオンと交換し脱離することでイオン交換体が再生する。
【0045】
印加電圧を水の分解電圧未満にすることで、処理水は水の分解ガスを含有しないので、洗濯機から排出する間の排水路12で、水の分解ガスが成長して気泡となり溜まることを防止することができる。水の分解ガスを確実に洗濯機から排出できることから、水を解離しイオン交換体を再生するのに十分な水の分解電圧以上の電圧を印加することができ、再生効率を向上することができるので、再生時間を短縮し、再生排水を低減することができる。
【0046】
次に、図3により洗濯機の運転状態と、給水弁6、三方弁11a、および水処理装置10等の動作について説明する。
【0047】
使用者が洗濯槽3に衣類を投入し、運転を開始すると、水処理装置10は軟水を生成する状態となり、洗い、すすぎ、最終すすぎの各工程で使用する洗濯水は、給水弁6から給水路9aを経て水処理装置10に入り、軟水化されて給水路9b、9cを通って洗濯槽3に供給される。洗い運転に用いる水イを軟水化することで、洗剤の洗浄力を高めることができ、洗い時間を短縮しても十分な洗浄力を確保することができることから、省エネで洗い運転を行うことができ、また、衣類の痛みを軽減することができる。
【0048】
また、水に溶解しているCaやMg等のイオンが洗剤成分の界面活性剤と結合して水に不溶性の金属石鹸を生成することがないので、衣類に付着して汚すことがなく、仕上がりをよくすることができる。
【0049】
なお、洗い運転中に給水弁6が間欠に作動し、洗い水を洗濯槽3に追加投入するさい、水処理装置10は軟水を生成する状態とすることで、洗い運転中は常に軟水を用いることができる。
【0050】
すすぎ運転のさい、水処理装置10は洗濯槽3に投入するすすぎ水ロを軟水化することで、衣類の残った洗剤を迅速に洗い出すことができる。すすぎ運転時は洗剤が希釈されるので、水に溶解しているCaやMg等のイオンは、洗剤に配合されているゼオライトやキレート剤等のイオン補足剤が減少することで、界面活性剤と結合し金属石鹸を生成しやすくなり、衣類に残った汚れをすすぎ水に溶解させる界面活性剤が消費されることから、汚れの衣類への再付着が起こる。水処理装置10がすすぎ水に溶解しているイオンを除去することにより、汚れの再付着が防止でき、迅速に仕上がりのよい衣類を提供することができる。
【0051】
なお、すすぎ運転中に水道水を追加して投入する注水すすぎを行うさい、水処理装置10は軟水を生成する状態とすることで、すすぎ運転中は常に軟水を用いることができる。
【0052】
水処理装置10は、最終すすぎに用いる水ハを洗濯槽3に投入した後、軟水工程から再生工程に切り替わる。三方弁11aは、洗濯槽3へのすすぎ水の投入が終了すると、直ちに給水路9bから排水路12に切り替え、水処理装置10を再生にすることでイオン交換体からイオンが脱離した濃縮再生水ニ、ホを機外へ直接排出する。再生した水は再生工程
中に複数回排出することが好ましい。
【0053】
水処理装置10が再生工程の間は作動ランプ15が点灯し、使用者に水処理装置10が再生動作をしていることを表示することができる。水処理装置10の再生工程は、例えば30分行われる。最終すすぎの時間が例えば5分、最終脱水の時間が例えば5分とした場合、最終すすぎを開始してから最終脱水が終了するまでの時間は10分である。したがって、水処理装置10は、洗濯機の運転が終了した後も再生を継続しておこない、所定の再生時間T(例えば、30分)が経過した後、動作を停止する。
【0054】
つまり、最終すすぎ工程で水処理装置10によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を洗濯槽3へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから再生が終了する所定時間後に水処理装置10の動作を停止するようにしている。なお、洗濯機の運転終了後は、水処理装置10が再生の動作をおこなっていても、洗濯槽3内の洗濯物を取り出すことができる。
【0055】
以上から、洗濯動作の終了後も、再生が終了するまで動作を継続しておこなうことができるので、水処理装置10の再生を十分に行うことができ、イオン交換体を最善の状態に保つことができるので、次に洗濯を行うさいに、軟水化を行う十分な能力を常に発揮することができる。また、遮断手段17は、水処理装置10の再生工程が終了した後、水処理装置10内の濃縮再生水ニ、ホを排出した後、軟水工程に切り替え、水処理装置10に給水した水ヘを軟水化してから電源を遮断する。
【0056】
水処理装置10内の濃縮再生水を迅速に排出することで、洗濯機の不使用時は、水処理装置10内で濃縮再生水がスケールを生成することがなく、イオン交換体の状態を最善の状態に保つことができるので、次に洗濯を行うさいに軟水化を行う十分な能力を常に発揮することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態では、水処理装置10により処理された水の分岐に三方弁11aを用いているが、給水路9bと排水路12の切換えは、三方弁11aに限定されることはなく、流路の開閉を行う二方の電磁弁等を複数組み合わせて切換えるようにしてもよい。
【0058】
以上のように本発明の洗濯機は、最終すすぎ工程で、水処理装置10によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を洗濯槽3へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから所定時間後に水処理装置10の動作を停止するようにしたものであり、これによって、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることができるとともに、軟水化した水処理装置10の再生を十分に行うことができ、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができる。
【0059】
また、高硬度地域での使用や、井戸水等の洗濯に過酷な原水に対しても洗濯の用途に適応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、すすぎ時に軟水化したすすぎ水を使用して仕上がりをよくすることができるとともに、次の洗濯時に使用する洗濯水を確実に軟水化することができるので、洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0061】
2 外槽
3 洗濯槽
5 モータ
6 給水弁(給水手段)
9a 給水路
9b 給水路
10 水処理装置
12 排水路
14 排水弁(排水手段)
16 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽を回転可能に内包した外槽と、前記洗濯槽を回転駆動するモータと、前記洗濯槽に洗濯水を供給する給水手段を設けた給水路と、前記給水路を介して前記洗濯槽に給水する水に溶解しているイオンの吸着と脱離をおこなう水処理装置と、前記洗濯槽の水を排水する排水手段を設けた排水路と、前記モータ等を制御し洗濯動作を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、最終すすぎ工程で前記水処理装置によりイオンを吸着し軟水化したすすぎ水を前記洗濯槽へ給水した後、吸着したイオンを脱離する再生を開始し、洗濯動作を終了してから所定時間後に前記水処理装置の動作を停止するようにした洗濯機。
【請求項2】
水処理装置から機外へ排水する排水路を設け、前記水処理装置によりイオンを脱離した再生水を前記排水路から機外に排出するようにした請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
水処理装置は、少なくとも一対の電極を設けたケースと、電極間に配置した陽イオン交換体と陰イオン交換体を表裏に設けたイオン交換膜を有し、前記ケース内に流入した水に溶解しているイオンを吸着する軟水化時は、前記陽イオン交換体と対向する前記電極に電圧を印加し、吸着したイオンを脱離する再生時は、前記陰イオン交換体と対向する前記電極に電圧を印加するようにした請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項4】
水処理装置が作動していることを表示する水処理装置運転表示手段を設け、制御手段は、少なくとも洗濯動作を終了してから前記水処理装置の動作が停止するまで表示するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
水処理装置は、イオンを吸着し軟水化するときは、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
水処理装置は、イオンを脱離する再生時は、電極間に水解離電圧以上の電圧を印加するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項7】
水処理装置は、イオンを脱離する再生時は、電極間に水の分解電圧未満の電圧を印加するようにした請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−244978(P2011−244978A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120023(P2010−120023)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】