説明

洗濯機

【課題】高硬水地域での洗濯による洗浄性能を向上するとともに、すすぎ後の仕上がりを向上する。
【解決手段】洗濯物を収容する洗濯槽4と、洗濯槽4へ給水する給水経路9と、給水経路9に設け洗濯に使用する水を軟水化処理する軟水化手段12とを備え、軟水化手段12により軟水化処理した水を洗濯槽4へ給水し、洗濯に使用した水を軟水化手段12に供給して軟水化手段12を再生し、再生時に排出する硬度成分を含んだ再生水を排水経路21を通して機外へ排水するようにしたものであるので、高硬水地域での洗濯による洗浄性能を向上するとともに、すすぎ後の仕上がりを向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯をおこなう洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯用の水を軟水化処理して洗浄性能を向上させ、再生時に放出する硬度成分をすすぎ用の水に添加してすすぎ性能を向上させる洗濯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
洗剤の洗浄力に大きな影響を及ぼすのは、硬度成分としてのカルシウム、マグネシウムという2価の陽イオンである。これらは、洗剤中の界面活性剤と反応して不溶性の金属石鹸を生成し、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させて洗浄力を低下させる。したがって、このような洗濯用水の硬度成分を除去することで、洗濯機の洗浄性能を向上することができる。
【0004】
図4は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の断面図を示したものである。図4に示すように、洗濯機本体51の内部に洗濯槽52と電気分解手段である金属イオン脱着機構53が収容されている。洗濯槽52内の底部に設けた回転翼54にモータ55が連結されている。洗濯機本体51の上方には水道水供給口56が設けられている。水道水供給口56と連結された金属イオン脱着機構53には、電極57、58と水道水が収容されており、洗い時には、電極57、58に直流電源(図示せず)から電圧を印加して水道水供給口56から供給された水道水を電気分解し、マグネシウムイオンやカルシウムイオン等の金属イオンを捕捉して、金属イオンの除去された水道水を、洗濯槽52に供給する。また、すすぎ時には、洗い時に印加した電圧と逆向きの電圧を電極57、58に印加することによって、金属イオンをすすぎ水中に放出させて泡立ちを抑え、すすぎ水の使用量を減少させて、すすぎ時間の短縮を図るようにしている。
【0005】
ここで、金属イオン脱着機構53において、洗い時に金属イオンを捕捉する場合は、電極58が陰極、電極57が陽極となるように電圧を印加して陰極58に金属イオンを捕捉させる。すすぎ時には、電極57が陰極、電極58が陽極となるように電圧を印加して陽極58から捕捉した金属イオンを放出させる。このように、洗い時とすすぎ時で印加する電圧の向きを変えて、洗い時には洗浄能力を上げ、すすぎ時には、すすぎ水に残留している界面活性剤と捕捉された金属イオンを結合させて、不必要な界面活性剤を除去することによって、泡立ちが抑えられすすぎの効率がよくなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−14986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、金属イオン脱着機構53に捕捉した金属イオンは、すすぎ時に洗濯槽52に投入してすすぎ用の水に放出され洗濯物をすすぐ。このとき、高硬度地域で洗濯を行う場合、金属イオン脱着機構53からは多量の過剰な金属イオンが洗濯槽52内に放出されるため、残留する界面活性剤と結合した金属石鹸がすすぎ水中に析出する。また、あるいは水中の炭酸ガスが抜けると炭酸カルシウムがすすぎ水中に析出する。その結果、洗濯後の洗濯物にこのような析出物が付着したり、この析出物に汚れ成分が再付着することによって、洗濯物の洗浄が不十分となる課題があった。また、高濃度
の硬度成分を含んだ水で洗濯物をすすぐと、洗濯後の洗濯物は柔軟性が低下し仕上がりが悪くなるという課題があった。
【0008】
また、金属イオン脱着機構53は、対電極から成る電気分解方式であり、電極58に金属イオンを捕捉しているが、この方式では金属イオンを捕捉するイオン交換サイトが少ないため、金属イオンを除去するために洗濯槽52への給水流量を小さくしなければならず洗濯時間が長時間化する。また、高硬度水の金属イオンを除去するためには、装置サイズが大型化するという課題もあった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高硬水地域での洗濯による洗浄性能を向上するとともに、すすぎ後の仕上がりを向上することができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の洗濯機は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽へ給水する給水経路と、前記給水経路に設け洗濯に使用する水を軟水化処理する軟水化手段とを備え、前記軟水化手段により軟水化処理した水を前記洗濯槽へ給水し、洗濯に使用した水を前記軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生し、再生時に排出する硬度成分を含んだ再生水を排水経路を通して機外へ排水するようにしたものである。
【0011】
これによって、軟水化手段の再生時に排出する高濃度の硬度成分が洗濯に使用する水中に投入されることなく、機外へ排水することができ、洗濯物への析出物の付着や、析出物への汚れ成分の再付着を防止して洗濯物の洗浄効果を高めることができるとともに、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗濯機は、洗濯物への析出物の付着や、析出物への汚れ成分の再付着を防止して洗濯物の洗浄効果を高めることができるとともに、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の断面図
【図2】同洗濯機の軟水化手段の採水時の断面図
【図3】同洗濯機の軟水化手段の再生時の断面図
【図4】従来の洗濯機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽へ給水する給水経路と、前記給水経路に設け洗濯に使用する水を軟水化処理する軟水化手段とを備え、前記軟水化手段により軟水化処理した水を前記洗濯槽へ給水し、洗濯に使用した水を前記軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生し、再生時に排出する硬度成分を含んだ再生水を排水経路を通して機外へ排水するようにしたことにより、軟水化手段の再生時に排出する高濃度の硬度成分は洗濯に使用する水中に投入されないので、すすぎ水中に過剰な硬度成分が放出されることがなく、金属石鹸や炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。これにより、洗濯物への析出物が付着や、この析出物に汚れ成分が再付着することを防止し洗濯物の十分な洗浄を行うことができる。また、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができる。また、洗濯に使用した水を利用して軟水化手段を再生することができ、新しい水道水を使用することなく節水ができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明において、洗濯のすすぎ工程で使用した水を軟水化手
段に供給して前記軟水化手段を再生するようにしたことにより、洗い工程後に比べて、すすぎ工程後は軟水化手段の再生に使用する水中に汚れ成分や洗剤成分が少なく、軟水化手段の再生を効率よく行うことができるとともに、軟水化手段の耐久性を確保することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第2の発明において、洗濯の最終すすぎ工程で使用した水を軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生するようにしたことにより、軟水化手段の再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分がさらに少なくなり、軟水化手段の再生をさらに効率よく行うことができるとともに、軟水化手段の耐久性を確保することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、給水経路にろ過フィルタを設け、洗濯に使用した水を前記ろ過フィルタでろ過処理して軟水化手段に供給し前記軟水化手段を再生するようにしたことにより、軟水化手段の再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分をろ過フィルタにより除去することができ、再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分をさらに少なくすることができるので、軟水化手段の再生をさらに効率よく行うことができるとともに、軟水化手段の耐久性を確保することができる。
【0018】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、洗濯に使用した水を軟水化手段に供給するポンプを設け、前記ポンプにより洗濯に使用した水を軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生するようにしたことにより、軟水化手段の設置位置に制限を受けることなく、洗濯に使用した水を軟水化手段に効率よく短時間で供給することができる。
【0019】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、軟水化手段は、ケーシングの内部に、少なくとも一対の電極と、前記電極間に挟まれた陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層構造から成る水分解イオン交換体と、前記水分解イオン交換体の表面に接する流路を有し、前記軟水化手段の軟水化処理時は、前記陽イオン交換層と対向する電極に電圧を印加し、再生時は、前記陰イオン交換層と対向する電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体を再生するようにしたことにより、多数のイオン交換サイトを有するイオン交換体により硬度成分を捕捉して軟水化処理するので、洗い時に高硬度水を軟水化する場合でも小型の装置サイズで大流量の給水流量で軟水化することができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の断面図、図2は、同軟水化手段の軟水化処理時の断面図、図3は、同軟水化手段の再生時の断面図である。
【0022】
図1〜図3において、洗濯機本体1は、外槽2と、外槽2内に回転自在に配設した内槽3から成る洗濯槽4を有している。内槽3は、外槽2に取り付けられたモータ5によって回転駆動するように構成されている。内槽3は有底円筒形に形成され、その周面に外槽2内に通じる多数の通水孔6が形成され、内周面の複数位置にバッフル7を設けている。内槽3の回転中心に回転軸5aを設け、内槽3の軸心方向を背面側から正面側に向けて上向きに傾斜させて配設している。この回転軸5aに外槽2の背面側に取り付けたモータ5を連結し、内槽3を正転および逆転方向に回転駆動するようにしている。
【0023】
洗濯槽4は、開閉自在な給水弁8を介して水道栓(図示せず)に連結した給水経路9が接続されており、洗濯の洗いおよびすすぎ時は給水弁8を開いて給水され、洗い時は、給水経路9に備えられた洗剤ケース10内の洗剤とともに洗濯槽4内へ投入する。
【0024】
洗濯機本体1の正面側の上向き傾斜面1aに蓋11を設け、洗濯物を投入する外槽2に設けた開口部2aを開閉自在に覆っている。蓋11の開閉により開口部2aを通して内槽3内に洗濯物を出し入れすることができる。
【0025】
軟水化手段12は、給水経路9の途中の洗剤ケース10の上流側に設けられている。軟水化手段12は、ケーシング13内に1対の板状の電極14が両端に設けられている。電極14はチタンに白金がメッキされたものであり、電極14の耐消耗性を確保している。電極14の間には、1対の水分解イオン交換体15が流路16を挟んで設けられている。
【0026】
水分解イオン交換体15は、強酸性のイオン交換基を持つ陽イオン交換層17と、強塩基性のイオン交換基を持つ陰イオン交換層18が1枚に張り合わされた2層構造となっている。そして、陽イオン交換層17と陰イオン交換層18が向き合うように設置されている。
【0027】
ここで、陽イオン交換層17は、−SOHを官能基とする強酸性イオン交換基を含み、陰イオン交換層18は、−NROHを官能基とする強塩基性イオン交換基を含む。ここで、陽イオン交換層17および陰イオン交換層18は、ポリエチレン等のバインダで粉砕されたイオン交換樹脂を接着した不均一膜、あるいは、高分子体に直接イオン交換基を持った均一膜のどちらを用いてもよい。
【0028】
洗濯槽4の底部には、洗濯水(洗いおよびすすぎに使用した水)を排水する排水路19が接続され、排水弁20を設けている。軟水化手段12の出口側には、軟水化手段12を再生する時に生成する高硬度の再生水を排水する排水経路21が給水経路9と分岐して設けられ、分岐部には第1三方弁22を設けて流路を切り換えるように構成されている。排水経路21の終端は洗濯水を排水するための排水路19に接続されており、再生水は軟水化手段12から排水経路21を通り、排水路19を経て洗濯機本体1から外部へ排出される。
【0029】
また、洗濯に使用した水を軟水化手段12の再生用に供給するための再生水供給経路23が排水路19と分岐して設けられ、その終端は軟水化手段12の上流側の給水経路9に接続されている。排水路19との分岐部には第2三方弁24、給水経路9との接続部には第3三方弁25が設けられており、洗濯に使用した水を洗濯機外へ排水、あるいは、軟水化手段12へ供給できるよう流路を切り換えるように構成されている。再生水供給経路23には、洗濯に使用した水を軟水化手段12へ送るポンプ26が設けられている。
【0030】
軟水化手段12の上流側の給水経路9にはろ過フィルタ27が備えられている。このろ過フィルタ27は孔径0.1〜5μmのフィルタであり、給水経路9から取り外しできる構造となっている。
【0031】
制御手段28は、洗濯機本体1内の上部に設けられており、設定された動作シーケンスに基き、モータ5、給水弁8、軟水化手段12、排水弁20、第1三方弁22、第2三方弁24、第3三方弁25、ポンプ26等を制御し、洗い、すすぎ、脱水の各工程を逐次制御する。
【0032】
以上のように構成された洗濯機について、以下その動作について説明する。洗濯機本体1の電源を入れて、蓋11を開けて洗濯槽4に衣類を入れ洗剤ケース10に洗剤を投入して運転を開始すると、洗濯の洗い工程が開始する。始めに、給水弁8が開き水道原水が給水経路9を通じて軟水化手段12へ導入される。
【0033】
図2に示すように、水道原水中には硬度成分のカルシウムイオン、炭酸イオン等が含まれており、ケーシング13の上部に設けた流入口13aから流入し、ケーシング13の下部に設けた流出口13bに向かって流路16を流れる。このとき、ケーシング13に設置された電極14には直流電圧が印加され、水分解イオン交換体15の陽イオン交換層17側の電極14にはプラスの電圧が印加され、陰イオン交換層18側の電極14はマイナス極となる。
【0034】
この結果、水道原水中のカルシウムイオンは陽イオン交換層17へ、炭酸イオンは陰イオン交換層18へ電気泳動して層内に入り込む。そして、カルシウムイオンは、陽イオン交換層17の強酸性イオン交換基の−SOHの水素イオンとイオン交換し、炭酸イオンは、陰イオン交換層18の強塩基性イオン交換基の−NROHの水酸化物イオンとイオン交換する。こうして、流路16中の硬度成分は除去されて軟水化される。そして、軟水化された水は、ケーシング13の下部に設けた流出口13bから処理水が流出し、給水経路9を通って洗濯槽4内へ給水される。
【0035】
洗濯槽4内へ洗剤と軟水が一定量供給された後、モータ5により洗濯槽4の内槽3が回転駆動されて洗い行程が開始される。内槽3の回転により、洗濯槽4内に収容された洗濯物は、内槽3の内周面に設けられたバッフル7によって回転方向に持ち上げられ、持ち上げられた内槽3内の上方高さ位置から落下する撹拌動作が繰り返されるので、洗濯物には叩き洗いの作用が及んで洗い工程が行われる。
【0036】
ここで、洗濯槽4内に供給される洗濯用水は、軟水化手段12によって硬度成分が除去されているので、洗剤中の界面活性剤が反応して不溶性の金属せっけんを生成することを防止することができる。したがって、洗浄に寄与する界面活性剤量を減少させて洗浄力を低下させることがないので、洗濯による洗浄性能を向上することができる。そして、所要の洗い時間の後、第2三方弁24により流路が排水路19側に設定され、洗いに使用した洗濯槽4内の水が洗濯機外へ排水される。そして、洗濯槽4の内槽3を高速回転させる脱水動作により洗濯物に含まれた洗剤液を脱水し、洗い工程が終了する。
【0037】
洗い工程が終了した後、次にすすぎ工程が開始する。すすぎ回数は洗濯機の使用者により任意に設定することができるが、本実施の形態では洗濯の標準コースであるすすぎ2回の場合について説明する。すすぎ工程では、洗い工程と同様に、給水弁8が開き洗濯槽4に洗濯物の量に応じて設定された所定量の水が供給される。洗濯物は内槽3の回転によりすすがれ洗剤を除去する。そして、第2三方弁24により流路を排水路19側に設定され、すすぎに使用した水が洗濯機外へ排水され、内槽3を高速回転させる脱水動作により洗濯物の水分を脱水して1回目のすすぎが終了する。
【0038】
次に、2回目のすすぎが始まる。2回目のすすぎも1回目と同様に給水と洗濯物のすすぎが行われる。洗濯物のすすぎが終わると、第2三方弁24により流路が再生水供給経路23側に切り換えられ、第3三方弁25が再生水供給経路23と給水経路9の洗濯槽4側が連通するように切り換えてポンプ26が作動する。そして、すすぎに使用した洗濯槽4内の水が再生水供給経路23を通じて軟水化手段12へ供給される。すすぎに使用した水が軟水化手段12へ供給されると、軟水化手段12の再生を開始する。
【0039】
図3に示すように、軟水化手段12において、電極14には軟水化時とは逆方向の電圧が印加される。陰イオン交換層18側にプラスの電圧が印加され、陽イオン交換層17側の電極はマイナス極となる。水分解イオン交換体15の両側に電圧を印加すると、陽イオン交換層17と陰イオン交換層18の界面中のイオン成分が減少して抵抗が高くなり、ある時点で水の解離が行われ、水素イオン及び水酸化物イオンが生成する。
【0040】
陽イオン交換層17では、軟水化時にイオン交換されたカルシウムイオンが、生成した水素イオンとイオン交換し再生される。そして、カルシウムイオンは流路16中に放出される。一方、陰イオン交換層18では、軟水化時にイオン交換された炭酸イオンが、生成した水酸化物イオンとイオン交換し再生される。そして、炭酸イオンは流路16中に放出される。
【0041】
一定時間、水分解イオン交換体15に電圧を印加して再生した後、第1三方弁22により流路が排水経路21側に切り換えられる。そして、軟水化手段12の流路16中の硬度成分を多量に含んだ再生水が排水経路21を通じて排水路19から洗濯機外部へ排水されて軟水化手段12の再生が終了する。ここで、軟水化手段12が再生している間、内槽3が高速回転して洗濯物を脱水して洗濯が終了する。
【0042】
以上のように、すすぎに使用した水で軟水化手段12を再生することができる。再生時に排出する高濃度の硬度成分は、洗濯に使用する水中に投入されないので、すすぎ水中に過剰な硬度成分が放出されることがなく、金属石鹸や炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。これにより、洗濯物への析出物が付着や、この析出物に汚れ成分が再付着することを防止することができ、洗濯物の洗浄効果を高めることができる。また、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができる。
【0043】
また、洗濯の最終すすぎ工程に使用した水を軟水化手段12に供給して再生するので、軟水化手段12の再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分がさらに少なくなるので、軟水化手段12の再生をさらに効率よく行うことができるとともに、軟水化手段12の耐久性を確保することができる。さらに、洗濯に使用した水を利用して軟水化手段12の再生をおこなうので、使用する水道水を少なくすることができる。
【0044】
さらに、ろ過フィルタ27備えているので、洗濯に使用した水をろ過フィルタ27でろ過処理して軟水化手段12に供給して再生することができる為、再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分がろ過フィルタ27より除去され、再生に使用する水中の汚れ成分や洗剤成分がさらに少なくなるので、軟水化手段12生をさらに効率よく行うことができると共に、軟水化手段の耐久性を確保することができる。
【0045】
また、軟水化手段12は、陽イオン交換層17と陰イオン交換層18の2層構造から成る水分解イオン交換体15により構成されているので、多数のイオン交換サイトを有するイオン交換体により硬度成分を捕捉して軟水化処理し、洗い時に高硬度水を軟水化する場合でも小型の装置サイズで大流量の給水流量で軟水化することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態においては、洗濯物を収容する洗濯槽4と、洗濯槽4への給水経路9に洗濯に使用する水を軟水化処理する軟水化手段12とを備え、軟水化手段12により軟水化処理した水で洗濯物を洗濯し、洗濯に使用した水を軟水化手段12に供給して軟水化手段12を再生し、再生時に排出する硬度成分を含んだ再生水は洗濯槽4外部へ排水することにより、再生時に排出する高濃度の硬度成分は洗濯に使用する水中に投入されないので、すすぎ水中に過剰な硬度成分が放出されることがなく、金属石鹸や炭酸カルシウムの析出を抑制することができる。
【0047】
これにより、洗濯物への析出物が付着や、この析出物に汚れ成分が再付着することを防止し、洗濯物の十分な洗浄を行うことができる。また、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる洗濯機は、洗濯物への析出物の付着や、析出物への汚れ
成分の再付着を防止して洗濯物の洗浄効果を高めることができるとともに、洗濯後の洗濯物の柔軟性を維持することができるので、洗濯機として有用である。
【符号の説明】
【0049】
4 洗濯槽
9 給水経路
12 軟水化手段
13 ケーシング
14 電極
15 水分解イオン交換体
21 排水経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽へ給水する給水経路と、前記給水経路に設け洗濯に使用する水を軟水化処理する軟水化手段とを備え、前記軟水化手段により軟水化処理した水を前記洗濯槽へ給水し、洗濯に使用した水を前記軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生し、再生時に排出する硬度成分を含んだ再生水を排水経路を通して機外へ排水するようにした洗濯機。
【請求項2】
洗濯のすすぎ工程で使用した水を軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生するようにした請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
洗濯の最終すすぎ工程で使用した水を軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生するようにした請求項2記載の洗濯機。
【請求項4】
給水経路にろ過フィルタを設け、洗濯に使用した水を前記ろ過フィルタでろ過処理して軟水化手段に供給し前記軟水化手段を再生するようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項5】
洗濯に使用した水を軟水化手段に供給するポンプを設け、前記ポンプにより洗濯に使用した水を軟水化手段に供給して前記軟水化手段を再生するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
軟水化手段は、ケーシングの内部に、少なくとも一対の電極と、前記電極間に挟まれた陽イオン交換層と陰イオン交換層の2層構造から成る水分解イオン交換体と、前記水分解イオン交換体の表面に接する流路を有し、前記軟水化手段の軟水化処理時は、前記陽イオン交換層と対向する電極に電圧を印加し、再生時は、前記陰イオン交換層と対向する電極に電圧を印加して前記水分解イオン交換体を再生するようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−175(P2012−175A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135785(P2010−135785)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】