説明

洗濯機

【課題】ミスト発生ユニットを有するものにおける、当該ミスト発生ユニットのケースが有する空気取り入れ口に水沫がかかっても、それが高圧電源部に届きにくくて、高圧電源部の電気絶縁性を低下させることのない洗濯機を提供する。
【解決手段】空気取り入れ口34を有すると共にミスト放出口60を有するケース28の内部に、高圧電源部29とミスト発生部30を設けて構成され、空気取り入れ口34からケース28外の空気を取り入れ、高圧電源部29からミスト発生部30に高電圧を印加してミストを発生し、そのミストをミスト放出口60から放出するミスト発生ユニット27を具備し、そのミスト発生ユニット27から放出されるミストを槽の内部に供給するようにしたものにおいて、高圧電源部29を空気取り入れ口34より高位置に設けた(間隙g1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に記載のように、除菌や脱臭等の性能を有するミストを槽内へ供給することにより、槽内に収容された洗濯物の除菌や脱臭等をする洗濯機が提案されている。ミストを発生する手段としては、例えば引用文献2に記載のような、いわゆる静電霧化装置等がある。静電霧化装置は、ミスト発生部に電極を有し、このミスト発生部にミスト発生用の水を供給した状態で高圧電源部から高電圧を印加することによりミストを発生させるものであり、発生したミストは、直接槽内へ供給されるか、又は槽内へ連通する風路等を介して槽内へ供給されるようになっている。後者の場合、多くは風路の途中に送風機が設けられており、この送風機の送風作用によって、効率良くミストを槽内へ供給できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−198860号公報
【特許文献2】特開2006−149538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記静電霧化装置におけるミスト発生部と高圧電源部は、通常、一つのケースに収容されてミスト発生ユニットを構成しており、そのケースには、ミスト発生部でミストを発生させるためにケース外から空気を取り入れる空気取り入れ口と、発生したミストをケース外に放出させるためのミスト放出口とが存在する。そのうち、空気取り入れ口からは、洗濯機使用の折りに、槽内の水中からの洗濯物の途中取出しや、槽内への洗濯物の追加投入等を行ったときに跳ねる水が、当該空気取り入れ口を通ってケース内に至り、高圧電源部にかかって、その電気絶縁性を低下させることが懸念される。
【0005】
そこで、ミスト発生ユニットを有するものにおける、当該ミスト発生ユニットのケースが有する空気取り入れ口に水沫がかかっても、それが高圧電源部に届きにくくて、高圧電源部の電気絶縁性を低下させることのない洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の洗濯機においては、洗濯物を収容して洗濯する槽と、空気取り入れ口を有すると共にミスト放出口を有するケースの内部に、高圧電源部とミスト発生部を設けて構成され、前記空気取り入れ口からケース外の空気を取り入れ、前記高圧電源部からミスト発生部に高電圧を印加してミストを発生し、そのミストを前記ミスト放出口から放出するミスト発生ユニットとを具備し、そのミスト発生ユニットから放出されるミストを前記槽の内部に供給するようにしたものにおいて、前記高圧電源部を前記空気取り入れ口より高位置に設けたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態を示すミスト発生ユニット部分の縦断側面図
【図2】ミスト発生ユニット部分の平面図
【図3】高圧電源部の背面図
【図4】ミスト発生ユニットのミスト発生部部分の拡大縦断側面図
【図5】ミスト発生ユニットのミスト発生部部分の拡大縦断正面図
【図6】洗濯機全体の斜視図
【図7】洗濯機の温風供給装置及びミスト発生ユニットの配置を示す斜視図
【図8】洗濯機の温風供給装置及びミスト発生ユニットの接続態様を示す概略図
【図9】第2の実施形態を示す図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1の実施形態につき、図1ないし図8を参照して説明する。
まず、図6には、洗濯機の主として外殻1を示しており、台板2上に外箱3を載置結合し、外箱3上にトップカバー4を載置結合して構成している。この外殻1の内部には、槽である、回転槽5と、それを収容した水槽6を配設している。これらの回転槽5と水槽6は、詳しくは図示しないが、中心軸が上下方向を指向する縦軸形であり、有底の円筒状を成していて、特に回転槽5が、通水用であり且つ通風用の孔を周側壁のほゞ全域に多数有するのに対し、水槽6はそのような孔を有せずに貯水するようになっている。
【0009】
又、図示しないが、回転槽5の内部には撹拌体を配置し、水槽6の外下部に駆動装置を配置している。この駆動装置は、モータを主体に構成していて、洗濯時に回転槽5を制止して撹拌体を例えば正逆両方向に交互に低速回転させ、脱水時に回転槽5を撹拌体と共に一方向に高速回転させるようになっている。
【0010】
トップカバー4は、矩形の枠状を成すもので、中央部一帯に洗濯物出し入れ口を有し、この洗濯物出し入れ口を開閉する外蓋7を上面に有している。外蓋7は、この場合、山なりに二つ折りされて開放されるようになっており、このように外蓋7を開放させて前記回転槽5の内部に対する洗濯物の出し入れが行われるようになっている。なお、外蓋7は、そのような開放状態から平坦に伸ばし戻されて閉鎖されるようになっており、この外蓋7の前方に位置してトップカバー4の上面の最前部には、操作パネル8を設けている。操作パネル8は、洗濯の運転に係る操作を行うための多数の操作キーや表示部を有しており、それらを洗濯機の運転を制御する制御装置(図示省略)に接続している。
【0011】
一方、外蓋7の後方に位置してトップカバー4の最後部には、後部パネル9を設けている。後部パネル9には、図で左方の片側に水道水給水口10と風呂水給水口11を設けている。そのうち、水道水給水口10は、図示しない給水ホースを介して水道の蛇口に接続される。風呂水給水口11は、図示しない風呂水ホースを介して風呂水ポンプに接続される。又、これら水道水給水口10と風呂水給水口11は、後部パネル9の下方に位置してトップカバー4の最後部上に配置した給水装置(図示省略)に連なっており、その給水装置を介して前記回転槽5内から水槽6内に水道水又は風呂水を選択供給するようになっている。
【0012】
後部パネル9の下方に位置してトップカバー4の最後部上には又、上記給水装置と並べて図7に示す温風供給装置12を配置している。この温風供給装置12は、具体的には図8に示すように、ケース13に、第1フィルタ14、第2フィルタ15、送風機16、ヒータ17、及び温度センサ18等を配設して構成している。
【0013】
詳細には、ケース13は、上流側から順に、フィルタ配置部13a、送風機配置部13b、及びヒータ配置部13cを有しており、そのうちの最上流側であるフィルタ配置部13aの更に上流側には、吸気ダクト19の一端側を接続している。吸気ダクト19の他端部は、前記水槽6の上面部に設けた出気口20に接続している。なお、水槽6の上面部は、環状の水槽カバー21と、これの中央部における開口部を開閉する内蓋(図示省略)により形成しているものであり、そのうちの水槽カバー21の後部に上記出気口20を形成している。
【0014】
一方、ケース13の最下流側であるヒータ配置部13cの更に下流側には、給気ダクト22の一端側を接続している。給気ダクト22の他端部は、上記水槽6の上面部(この場合も水槽カバー21の後部)に設けた入気口23に接続している。
【0015】
これにより、ケース13は、上流側及び下流側がともに水槽6内から回転槽5内に連通しており、水槽6内及び回転槽5内の空気は、図8に矢印Aで示すように、吸気ダクト19、ケース13、及び給気ダクト22を通って循環する。かくして、これら吸気ダクト19、ケース13、及び給気ダクト22により、水槽6内及び回転槽5内に連通する風路、この場合、循環風路24を形成している。
【0016】
フィルタ配置部13aには、内部に、前記第1フィルタ14及び第2フィルタ15を上流側から順に配置している。これらのフィルタ14,15のうち、第2フィルタ15は、第1フィルタ14よりも目の細かいものとしており、従って、糸くずなど比較的大きな異物を第1フィルタ14で捕獲し、第1フィルタ14で逃した比較的小さな異物を第2フィルタ15で捕獲するようになっている。
【0017】
送風機配置部13bには、前記送風機16を上流側に配置している。この送風機16は、例えばシロッコファンなど複数の羽根片を有する送風羽根16aと、これを回転駆動するモータ16bから成っており、送風羽根16aを送風機配置部13bの内部に配置し、モータ16bを送風機配置部13bの外部(ケース13の外部)に配置している。又、送風機配置部13bの下流側には、外部と連通する排気口25を形成すると共に、この排気口25を開閉するシャッタ26を設けている。
【0018】
ヒータ配置部13cには、内部に、前記ヒータ17及び温度センサ18を上流側から順に配置している。ヒータ17は、ヒータ配置部13c内の空気を加熱するものであり、温度センサ18は、ヒータ配置部13c内の空気の温度を検出するものである。これらにより、送風機配置部13bの内部を通る空気が洗濯物の乾燥に適した温度に加熱されるようになっている。
【0019】
トップカバー4の左右の両側部は、図7に示すように、断面ほゞ逆U字形で、二重壁構造になっており、その上側が閉塞され、下側が開放されている。このトップカバー4の左右の両側部のうち、右側部の内部にミスト発生ユニット27を配置している。
【0020】
ミスト発生ユニット27は、図1に示すように、ケース28の内部に高圧電源部29とミスト発生部30とを設けて構成している。そのうち、高圧電源部29は、詳しくは図示しないが、商用交流電源を直流に変換する整流回路や昇圧回路等で構成され、例えば−4.5〔kV〕の負の高電圧を出力するようになっている。そのほか、高圧電源部29は、コネクタ31及び回路基板32等を有しており、その回路基板32に、上記整流回路や昇圧回路及びコネクタ31等を実装し、コネクタ31を除く他の部品の実装部分をモールド樹脂33で覆って封止している。
【0021】
ケース28の高圧電源部29を配置した部分は、要するに高圧電源部配置部28aであり、この高圧電源部配置部28aの底部に図2に示す空気取り入れ口34を設けていて、図1に矢印Bで示すように、この空気取り入れ口34からケース28外の空気がケース28内に取り込まれるようになっている。高圧電源部配置部28aの底部は、ケース28全体の底部の一部でもあり、従って、空気取り入れ口34はケース28の底部に形成している。又、空気取り入れ口34は、詳細には、例えば小さめの矩形の孔を、高圧電源部29と前記ミスト発生部30とが列するケース28の長手方向に複数配列させて形成することにより構成している。
【0022】
高圧電源部29は空気取り入れ口34より高位置に存在しており、それらの間には所定の間隙g1を設けている。この間隙g1は例えば5〔mm〕程度のわずかな距離であり、従って、空気取り入れ口34は高圧電源部29の近傍に位置している。なお、図2に示すように、空気取り入れ口34は高圧電源部29の直下にはなく、図2で下方(図7では右側方)にずれて位置しているが、高圧電源部29の近傍に位置していることに変わりはない。
【0023】
又、ケース28の高圧電源部配置部28aには、高圧電源部29を囲繞する囲い壁35を形成している。この囲い壁35は、詳細には、この場合、ケース28(高圧電源部配置部28a)の外壁を兼ねる、図1で上、下、左の三方の壁35a〜35cと、同じくケース28(高圧電源部配置部28a)の外壁を兼ねる、図2で上方の壁35d、並びにケース28(高圧電源部配置部28a)の内部に一体に形成した、図2で中、右の二方の壁35e,35fから成っている。
【0024】
なお、前記高圧電源部29のモールド樹脂33は、囲い壁35の内部空間の大半部に注入して固化させたものである。又、囲い壁35中の図2で中間の壁35eは、高圧電源部29と空気取り入れ口34との間を仕切るように位置している。図2で、36,37はケース28の外部に形成したミスト発生ユニット27取り付け用の取付部を示しており、それぞれ取付部材であるねじ(図示省略)を挿通させる孔36a,37aを有している。
【0025】
前記コネクタ31は、高圧電源部29に商用交流電源を接続するためのものであり、そのための電源入力電線38の先端部を相手コネクタ38aを介して接続している。電源入力電線38の基端部(図示省略)は商用交流電源を接続される。図3は、高圧電源部29を前記回路基板32の板面と平行な方向で見て示しており、この図3及び図1で明らかなように、コネクタ31は回路基板32とともに水平以下の向き、この場合、前後又は左右方向を指向する横向き(図示例は左向き)に設けている。
【0026】
更に、ケース28の内部には、前記囲い壁35中の図1で右方の壁35fがケース28の内上面から底面までの半分程度の突出寸法であることに応じて、ケース28の底部に対壁39を一体に形成している。この対壁39は、ケース28の底面からの突出寸法が壁35fよりも大きいが、その最上部には壁35fの最下部より低くくぼむ凹欠部40を形成している。
【0027】
又、囲い壁35の壁35fには、図示しないが、通気用の開口を形成していて、前記空気取り入れ口34から取り込まれた空気は、図1に矢印Cで示すように、その開口部を通してミスト発生室46内へ取込まれる。
しかして、前記高圧電源部29の回路基板32(出力端子)には、高圧電線41の一端部を接続しており、この高圧電線41の一端部近傍の部分を上記凹欠部40(壁35fと対壁39との間)に挿通して受け支えることにより、高圧電線41と前記電源入力電線38とを間隙g2で示すように離間させている。
【0028】
以上に対して、ミスト発生部30は、内ケース43の内部にミスト発生機構44と給水機構45を配置して構成している。そのうち、内ケース43は、図4及び図5に詳細に示すように、上ケース43aを下ケース43bに被着結合して構成しており、その内部にはミスト発生室46とミスト放出室47とを形成している。この場合、ミスト放出室47は、ミスト発生室46に対して、前記ケース28の長手方向のうちの図4で右側(図7では後方)に形成していて、ミスト発生室46に連通している。又、ミスト発生室46の底面は、ミスト放出室47の底面よりも下方に位置している。
【0029】
更に、内ケース43には、ミスト発生室46の図4で左側に、上側取り込み口48と、それより下方に位置する下側取り込み口49とを形成しており、前記空気取り入れ口34から囲い壁35の壁35fの図示しない開口を通じてミスト発生室46内に取り込まれた空気は、図4に矢印D、Eで示すように、上側取り込み口48及び下側取り込み口49からミスト発生機構44側の上下部にそれぞれ取込まれる。
【0030】
ミスト発生機構44は、ミスト発生室46内の下側に設けている。具体的には、ミスト発生機構44は、保水部材50、導電部材51、及び複数のミスト放出電極52等から構成しており、この場合、ミスト発生室46の底面側から上方へ向かって、保水部材50、導電部材51、ミスト放出電極52の順に配置している。
【0031】
保水部材50は、多孔質材料、例えばポリエステル等の樹脂繊維から成るフェルト材や、微小な連続気泡を有する樹脂の発泡体等で構成され、吸水性及び保水性を有している。この保水部材50は、ほゞ矩形の薄いシート状を成していて、ミスト発生室46内の底面上に配置すると共に、その一部を、図5に示すように、ミスト発生室46内の下側部分の左右両側面に沿わせて配置している。
【0032】
導電部材51は、例えば、ポリエステル等の樹脂繊維と導電性物質としてのカーボン繊維とを混紡したものや、微小な連続気泡を有する樹脂の発泡体に導電性物質としてのカーボン粉末を添加したもの等で構成され、吸水性、保水性、及び導電性を有している。この導電部材51は、ほゞ矩形のやゝ厚いシート状を成していて、保水部材50の上側に設けている。そして更に、この導電部材51には、図示を省略するが、前記高圧電線41の他端部を接続しており、それによって、前記高圧電源部29から出力される高電圧が高圧電線41を介して導電部材51に印加されるようになっている。
【0033】
ここで又、高圧電線41は、図1に示すように、前記一端部と上記他端部との間の中間部、この場合、導電部材51寄りの部分41aが最も低く位置するようにたるませている。又、それに応じて、前記ケース28の底部中、ミスト発生室46下方の部分28bは、他の部位より低く形成している。
【0034】
ミスト放出電極52は、例えば、ポリエステル等の樹脂繊維と導電性物質としてのカーボン繊維とを撚り合せたもので構成され、吸水性、保水性、水の吸い上げ特性、及び導電性を有している。この場合、ミスト放出電極52には白金ナノコロイドを担持させても良い。ミスト放出電極52は、上方へ延びるピン状に形成され、例えば4本が図5に示すように支持部材53を上方へ貫いており、それによって、4本のミスト放出電極52を支持部材53が支持している。
【0035】
ミスト放出電極52の上側部分は、支持部材53の上面から上方へ向かって突出し、上側へ向かって先細状を成すと共に、その先端部を滑らかな曲面に形成している。又、ミスト放出電極52の下側部分は、支持部材53の下面から下方へ向かって突出し、、底面及びそれ近くの外周面が導電部材51に接触している。これにより、ミスト放出電極52は、導電部材51を介して、保水部材50に保水された水を吸い上げるようになっており、又、ミスト放出電極52には、導電部材51を介して、前記高圧電源部29から出力された負の高電圧が印加されるようになっている。
【0036】
一方、給水機構45は、ミスト発生室46内の上側に設けている。具体的には、給水機構45は、ペルチェ素子54、冷却板55、及び放熱器56等から構成しており、この場合、冷却板55をペルチェ素子54の下側に設け、放熱器56をペルチェ素子54の上側に設けている。
【0037】
ペルチェ素子54は、吸熱面54a及び発熱面54bを構成する二種の金属片を接合して板状に構成したものであり、電圧が印加されると、吸熱面54a側から発熱面54b側へ熱が移動するペルチェ効果が生じ、これにより吸熱面54aが冷却されると共に、発熱面54bが発熱するようになっている。このペルチェ素子54を、吸熱面54aを下方すなわちミスト放出電極52側へ向け、発熱面54bを上方へ向けて配置している。なお、ペルチェ素子54への通電は、商用交流電源から高圧電源部29とは別の電源回路(図示省略)を介して行うようにしている。
【0038】
冷却板55は、ペルチェ素子54の吸熱面54aに接触している。又、この冷却板55は、例えばアルミ等の熱伝導率の高い金属板等で構成しており、この冷却板55及びペルチェ素子54を保持部材57でその内部に保持している。保持部材57は、例えば絶縁性及び耐熱性に優れる樹脂等で構成している。又、この保持部材57の下側には押え部材58を設け、この押え部材58で前記支持部材53を、ひいてはミスト放出電極52を押え保持している。
【0039】
又、冷却板55及び保持部材57の下側の面には、冷却板55と同等以上の大きさの絶縁シート59を貼着している。この絶縁シート59は、例えば、50μm程度の厚さのポリエステルフィルムで構成され、電気絶縁縁性に加え、耐水性及び耐熱性にも優れている。このように、冷却板55の下側の面を絶縁シート59で覆うことにより、冷却板55とミスト放出電極52との間、ひいてはミスト発生機構44と、ペルチェ素子54との間を電気的に絶縁している。
【0040】
放熱器56は、例えばアルミ等の熱伝導率の高い材料で構成され、台座部56a及び複数の放熱部56bを一体に有している。台座部56aは、ペルチェ素子54の発熱面54bと平行な板状に形成され、この発熱面54bに近接又は接触している。放熱部56bは、板状に形成され、台座部56aに対して直角に立てて設けている。
【0041】
この構成で、ペルチェ素子54に電圧が印加されることでペルチェ素子54の発熱面54bに生じた熱は、放熱器56の台座部56aから放熱部56bへ伝わり、放熱部56bから空気中へ放熱される。このとき、前記上側取り込み口48からミスト発生室46内の上部に取込まれた空気が放熱部56bの各間を流れることによって、放熱部56bに伝わった熱が効率良く空気中へ放熱されるようになっている。
【0042】
一方、ペルチェ素子54に電圧が印加されることで冷却されたペルチェ素子54の吸熱面54aは、冷却板55及び絶縁シート59を介して絶縁シート59周辺の空気を冷却する。すると、絶縁シート59の下面には、周辺の空気中の水分が結露して水滴が生じ、この結露水がミスト発生用の水としてミスト放出電極52に供給される。このように、給水機構45は、ペルチェ素子54の駆動によって絶縁シート59に生じる結露水を、ミスト発生用の水としてミスト発生機構44のミスト放出電極52へ供給するようになっている。このとき、前記下側取り込み口49からミスト発生室46内の下部に新鮮な外気が取り込まれることによって、効率良く水滴を発生させることができる。
【0043】
ここで、絶縁シート59の下面とミスト放出電極52の先端との間の寸法は、絶縁シート59の下方にミスト放出電極52が存在しない場合において、絶縁シート59の下面に生じた水滴がその自重によって落下する直前の大きさに成長した場合の、その水滴の上下方向の寸法よりも十分に小さい寸法、例えば0.5mm程度に設定されている。これにより、絶縁シート59の下面に生じた水滴は、その自重によって落下する大きさに成長する前に、ミスト放出電極52の先端に接触して、ミスト放出電極52に吸い込まれる。
【0044】
内ケース43は、図4に示すように、上ケース43a中のミスト放出室47上の部位に、ミスト放出口60を有している。このミスト放出口60は、この場合、L字形の筒状に形成され、その一端部がミスト放出室47内に位置して下方へ突出し、他端部が内ケース43外に位置して該内ケース43の長手方向に突出している。このミスト放出口60の他端部には、接続管61の一端部を接続しており、接続管61の他端部は、図8に示すように、前記循環風路24を形成したケース13のフィルタ配置部13aにおける第1フィルタ14と第2フィルタ15との間の部分に接続している。これにより、ミスト放出口60は、接続管61を介して循環風路24中の第1フィルタ14より下流側に接続されている。
【0045】
次に、上記構成の洗濯機の作用を述べる。
図示しない制御装置は、使用者が操作パネル8を操作して運転モードが設定されると、設定された運転モードに応じて、回転槽5内に収容された洗濯物をその回転槽5内で洗濯(洗い、すすぎ)する洗濯運転、脱水する脱水運転、乾燥させる乾燥運転、及び除菌脱臭する除菌脱臭運転を実行する。そのうちの洗濯運転、脱水運転については割愛し、乾燥運転及び除菌脱臭運転について述べる。
【0046】
まず、乾燥運転について述べる。
図示しない制御装置は、乾燥運転を開始すると、送風機16及びヒータ17を駆動すると共に、シャッタ26を駆動して排気口25を開放する。水槽6内及び回転槽5内の空気は、送風機16が駆動されると、その送風作用によって、水槽6内及び回転槽5内と温風供給装置12のケース13内との間を循環する。詳しくは、水槽6内及び回転槽5内の空気は、送風機16の送風作用によって、出気口20から吸気ダクト19を経てケース13のフィルタ配置部13a内に吸い込まれ、その後、送風機配置部13b及びヒータ配置部13cを順に通り、給気ダクト22を経て入気口23から水槽6内及び回転槽5内へ戻される。
【0047】
このとき、空気中に含まれた糸くず等の異物は、フィルタ配置部13a内において第1フィルタ14及び第2フィルタ15を通る際に取り除かれる。又、送風機16によって循環される空気は、ヒータ配置部13c内を通る際に、ヒータ17によって加熱される。これにより、入気口23からは洗濯物の乾燥に適した温風が供給され、回転槽5内の洗濯物は、この温風と熱交換すると共に湿気が奪われることによって乾燥される。乾燥作用を終えて湿気を含んだ空気は、送風機16の送風作用によって、再びフィルタ配置部13a内に吸い込まれる。
【0048】
このとき、送風機16の上流側となるフィルタ配置部13a内には、送風機16の送風作用によって負圧が生じる。この負圧によって、フィルタ配置部13a内には外気が取り込まれる。詳しくは、外気は、ミスト発生ユニット27におけるケース28の空気取り入れ口34からケース28内に入り、更に、内ケース43の上側取り込み口48及び下側取り込み口49から内ケース43内に入る。そして、内ケース43内において、ミスト発生室46、ミスト放出室47、ミスト放出口60を順に通り、更に接続管61を通って温風供給装置12におけるケース13のフィルタ配置部13a内に吸い込まれる。
【0049】
一方、送風機16によってそれより下流側へ送風された空気は、その一部が、送風機配置部13b内において排気口25から図8に矢印A´で示すように外部へ排出される。これにより、乾燥作用を終えて湿気を含んだ空気の一部が外部へ排出される。このようにして、水槽6内及び回転槽5内と温風供給装置12のケース13内との間を循環する空気の一部が、新鮮な外気に入れ替えられる。
【0050】
次に、除菌脱臭運転について述べる。
図示しない制御装置は、除菌脱臭運転を開始すると、まず、送風機16を駆動すると共に、ペルチェ素子54に電圧を印加する。この場合、送風機16の送風作用によって生じる温風供給装置12におけるケース13のフィルタ配置部13a内の負圧により、ミスト発生室46内には、矢印D、Eで示したように、内ケース43の上側取り込み口48及び下側取り込み口49からミスト放出室47側へ向かう空気の流れが生じる。
【0051】
そのうち、上側取り込み口48からミスト放出室47側へ向かった空気は、給水機構45における放熱器56の放熱部56bの各間を通って放熱器56を冷却する。これにより、ペルチェ素子54の発熱面54bが冷却され、絶縁シート59の下面に周辺の空気中の水分が結露して生じた水滴がミスト発生用の水としてミスト発生機構44のミスト放出電極52に供給される。この給水機構45からミスト発生機構44への給水は、10分程度継続される。
【0052】
次いで、制御装置は、ペルチェ素子54に対する電圧の供給を停止する。これにより、ミスト発生機構44への給水が終了する。続いて、制御装置は、送風機16を駆動すると共に、ミスト放出電極52へ負の高電圧を印加する。この場合、前記温風供給装置12におけるケース13の送風機配置部13bの排気口25は、シャッタ26によって閉鎖されている。ミスト放出電極52は、内部に水を含んだ状態で負の高電圧が印加されると、静電霧化現象を発生させる。すなわち、内部に保水した状態のミスト放出電極52に対して負の高電圧を印加すると、ミスト放出電極52の先端部に電荷が集中する。ミスト放出電極52の先端部に集中した電荷は、その先端部に含まれる水に対して表面張力を超えるエネルギーを与える。すると、ミスト放出電極52の先端部では、エネルギーを与えられた水がレイリー分裂を起こして、微細な霧状の粒子に分裂する静電霧化現象が発生する。このとき、ミスト放出電極52の先端部からは、ヒドロキシラジカルを含んで負に帯電した水粒子つまりミストが放出される。このミストは、ヒドロキシラジカルの強い酸化作用によって、除菌や脱臭等の効果を発揮する。
【0053】
この場合、ミスト発生機構44は、ミスト放出電極52に対応する対極を設けていない。そのため、ミスト放出電極52からの放電は非常に穏やかなものになる。これにより、放電電極と対極との間でコロナ放電が発生することなく、オゾン等の有害ガスの発生を抑制することができる。
【0054】
そして、このとき、前述のように、ミスト発生機構44におけるケース13内のフィルタ配置部13aには、温風供給装置12の送風機16の送風作用によって、負圧が生じている。上記ミスト放出電極52で発生したミストは、この負圧によって、図1及び図4に矢印Fで示すようにミスト放出室47へ流れ、更に同図及び図8に矢印Gで示すように、ミスト放出口60及び接続管61を通って温風供給装置12におけるケース13の送風機配置部13b内に吸い込まれる。そして、送風機配置部13b内に吸い込まれたミストは、送風機16の送風作用によって、前記入気口23から水槽6内及び回転槽5内へ供給される。
【0055】
このように、ミスト発生機構44で発生したミストは、水槽6内及び回転槽5内へ連通する風路、この場合、循環風路24を通って、水槽6内及び回転槽5内へ供給されるものであり、回転槽5内の洗濯物は、このミストが触れることによって除菌及び脱臭される。
【0056】
本実施形態の洗濯機は、上述のように、ミスト発生ユニット27で発生されて放出されるミストを水槽6内及び回転槽5内の内部に供給して洗濯物の除菌及び脱臭をするものであり、そのものにおいて、ミスト発生ユニット27では、高圧電源部29をケース28の空気取り入れ口34より高位置に設けている。これにより、洗濯機使用の折りに、回転槽5内の水中からの洗濯物の途中取出しや、回転槽5内への洗濯物の追加投入等を行ったときに跳ねる水が、空気取り入れ口34にかかっても、それが高圧電源部29には届きにくくて、高圧電源部29の電気絶縁性を良好に確保することができる。
【0057】
又、本実施形態の洗濯機においては、高圧電源部29に電源入力電線38を接続するためのコネクタ31を具備していて、そのコネクタ31を水平以下の向きに設けている。これにより、上記空気取り入れ口34から取り入れられる空気に含まれる水分がコネクタ31部分で結露するようなことがあっても、それを重力でコネクタ31から滴下させ得るので、コネクタ31に浸入させることがなく、コネクタ31が結露水でトラッキングを起こすことのないようにできる。
【0058】
更に、本実施形態の洗濯機においては、高圧電源部29とミスト発生部30とを接続する高圧電線41を具備していて、その高圧電線41と電源入力電線38とを離間させてそれぞれ接続している。これにより、高圧電源部29と高圧電線41との間の絶縁距離を確保することができて、その間における結露水等によるトラッキングの防止ができる。併せて、高圧電源部29で商用交流電源を高電圧にするときのスイッチングによるノイズ、並びに高電圧のために電線被覆が容量結合して誘起される電圧によるノイズの侵入を防止することもできる。この場合、高圧電源部29の出力電圧は、前述の−4.5〔kV〕であり、空気絶縁値は1〔kV/mm〕であるから、4.5〔mm〕以上離間させることが望ましい。
【0059】
又、本実施形態においては、空気取り入れ口34を高圧電源部29の近傍に設けている。これにより、発熱しやすい高圧電源部29を空気取り入れ口34から取り入れる空気で冷却できると共に、空気取り入れ口34から取り入れた空気を高圧電源部29の熱で加温でき、その加温によって、取り入れた空気が通る経路の結露を防止できる効果がある。
【0060】
加えて、本実施形態においては、ミスト発生ユニット27のケース28が、高圧電源部29を囲繞する囲い壁35を有している。これにより、高圧電源部29への水の浸入を囲い壁35で防止でき、高圧電源部29の電気絶縁性をより良好に確保することができる。
そして更に、本実施形態においては、空気取り入れ口34がミスト発生ユニット27のケース28の底部に存在するようにしている。これにより、ミスト発生ユニット27内への水の浸入をより確実に防止でき、且つ、万一浸入した水の排出もスムーズにできるので、ミスト発生ユニット27の電気絶縁性をより良好に確保することができる。
【0061】
そのほか、本実施形態においては、高圧電線41を、その一端部を接続した高圧電源部29と、他端部を接続したミスト発生部30との間の部分において、最も低く位置するようにたるませている。これにより、高圧電線41に万一結露が生じたときに、その結露水をその最低部から滴下させ得るので、高圧電源部29又はミスト発生部30の浸水を防止できる。
【0062】
以上に対して、図9は第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
このものの場合、コネクタ31を回路基板32とともに下向きに設けている。
空気取り入れ口34から取り入れられる空気に含まれる水分による結露水をコネクタ31に浸入させることなく重力でコネクタ31から滴下させるには、コネクタ31を水平以下の向きに設ければ良いもので、このようにコネクタ31を下向きに設けても同様の効果を得ることができる。すなわち、水平以下の向きには、前述の横向きだけでなく、下向きも含まれ、更にそれらを合わせたような斜め下向きも含まれる。
【0063】
なお、洗濯機全体としては、回転槽5の回転軸及び水槽6中心軸が水平又は傾斜するドラム式洗濯機であっても良い。又、必ずしも温風供給装置12を具える必要はない。
更に、給水機構45は、ペルチェ素子54を用いるものに限らず、例えば給水ケースなど有して使用者が手動で給水するものや、水道から直接給水するものであっても良い。
加えて、除菌脱臭運転時において、回転槽5は静止させていても良いし、モータを駆動させて回転させても良い。
【0064】
そのほか、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
図面中、5は回転槽(槽)、6は水槽(槽)、27はミスト発生ユニット、28はケース、29は高圧電源部、30はミスト発生部、31はコネクタ、34は空気取り入れ口、35は囲い壁、38は電源入力電線、41は高圧電線、60はミスト放出口を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容して洗濯する槽と、
空気取り入れ口を有すると共にミスト放出口を有するケースの内部に、高圧電源部とミスト発生部を設けて構成され、前記空気取り入れ口からケース外の空気を取り入れ、前記高圧電源部からミスト発生部に高電圧を印加してミストを発生し、そのミストを前記ミスト放出口から放出するミスト発生ユニットとを具備し、
そのミスト発生ユニットから放出されるミストを前記槽の内部に供給するようにしたものにおいて、
前記高圧電源部を前記空気取り入れ口より高位置に設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
高圧電源部に電源入力電線を接続するためのコネクタを具備し、そのコネクタを水平以下の向きに設けたことを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
高圧電源部とミスト発生部とを接続する高圧電線を具備し、その高圧電線と電源入力電線とを離間させてそれぞれ接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項4】
空気取り入れ口を高圧電源部の近傍に設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項5】
ケースが、高圧電源部を囲繞する囲い壁を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の洗濯機。
【請求項6】
空気取り入れ口がケースの底部に存在することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−66593(P2013−66593A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207282(P2011−207282)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】