説明

洗濯脱水機による脱水方法

【課題】回転ドラム3の中に、これと同心のスクリューコンベア4を備えた洗濯脱水機における遠心式脱水方法を改良して、洗濯物6の偏在に因る異常振動の発生を未然に防止する。
【解決手段】(A)のようにして洗濯した後、洗濯液5を排水し、(B)のようにスクリューコンベア4を回転させて洗濯物6を矢印e方向に送り、洗濯物6を排出側の端板3cに押し付ける。これにより、回転ドラム3内の洗濯物6が均一に均されるので、洗濯物6の偏在に因る異常振動が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー式洗濯脱水機を用いて洗濯物を洗濯した後、該洗濯物を遠心脱水する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3はスクリュー式洗濯脱水機の公知例を示す断面図である。
ケース2の中に回転ドラム3が収納されており、その中にスクリューコンベア4が同心に配置されている。
X−Xは回転ドラムとスクリューコンベアとの共通の中心線であって、通常は水平に設定されている。
前記の回転ドラム3には管状軸3dが取り付けられていて、ドラムプーリ3eを介して回転駆動される。
前記スクリューコンベア4のコンベア軸4aのはコンベアプーリ4bが取り付けられていて、正,逆自在に回転駆動される。
【0003】
図外の洗濯物は矢印aのように図の左方から投入され、洗濯,脱水を終えると矢印bのように図の右方へ排出される。
説明の便宜上、図の左側を投入側と呼び、図の右側を排出側と呼ぶ。
スクリューコンベア4が正,逆転すると、洗濯物(図示省略)は図の左,右方向へ送られる。図示した矢印eのように右方へ送ることを排出方向送りと名付け、矢印fのように左方へ送ることを戻し方向送りと名付ける。何れの方向へ送られるかは、スクリューコンベア4の回転方向によって決まる。
【0004】
図4は、前掲の図3の従来例に係る洗濯脱水機によって洗濯している状態を模式的に描いた斜視図である。
図3について説明したようにして回転ドラム3の中へ洗濯物6を投入するとともに、該洗濯物を浸す程度に洗濯液5を入れる(ただし、回転ドラム3は多孔の側板3aで構成されているので、洗濯液5を蓄えることができない。図3に示したケース2の中へ洗濯液5を入れて、図4に示した液面を保つ)。
スクリューコンベア4を往復矢印c−dのように、往復回動(約270度)させると、洗濯液5と洗濯物6とが交互に排出方向(矢印e)と戻し方向(矢印f)とに揺すられて洗われる。
予洗も、本洗も、すすぎ洗いも、このようにして行われる。
【0005】
洗い終わると洗濯液5を排水する(洗濯液を排出するのであるから「排液」と言うべきかとも思われるが、排水という語句が一般化しているので、排液も含めて排水と言うことにする)。
回転ドラム3の中に洗濯済みの洗濯物が入っている状態で、該回転ドラム3をX軸の周りに回転させて遠心脱水が行われる。
遠心脱水を終えた洗濯物は排出用の開口3fから矢印bのように排出される。
【特許文献1】特開2002−263397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5は、従来例の洗濯脱水機における遠心脱水操作を説明するための工程図である。
図5(A)は洗濯を終えた状態を表している。この状態から洗濯液5を排水すると図5(B)のようになり、洗濯物6は回転ドラム3の底部に残される。
スクリューコンベア4を正,逆転させて、洗濯物6を排出方向送り(矢印e)したり、戻し方向送り(矢印f)したりして良く均し、回転ドラム3及びスクリューコンベア4を回転させると、図5(C)のように洗濯物6が回転ドラム3の内周面に張り付けられた形に押し付けられて脱水される。
【0007】
ところが、スクリューコンベア4が回転ドラム3の中に配置されており、その上、ケース2で覆われているので、図5(A)〜(C)の状態が目視できない。
手探りもできない密室の中で進行している脱水動作は不安である。
図5(C)の工程まで進んで、回転ドラム3及びスクリューコンベア4を高速回転させたとき異常振動が発生すると、回転ドラム3の中の洗濯物が偏在してバランスを崩していることに気づく。
すなわち、図5(B)の工程で洗濯物6が良く均されていなくても気がつかず、図5(C)の工程まで進んでから異常振動が発生すると初めて洗濯物の均し不良に気づくというのが実情である。
【0008】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、スクリュー式の洗濯脱水機を適用の対象とし、洗濯物の偏在に因る異常振動を発生する虞れの無い脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1及び図2を参照して説明すると次の通りである。この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面のとおりに限定するものではない。
図1(A)のように洗濯を終えて洗濯液5を脱水した後、図1(B)のように洗濯物6をスクリューコンベア4で排出方向送り(矢印e)し、該洗濯物を回転ドラム3の排出側の端板3cに押し付ける。
上述のようにして回転ドラム3内の洗濯物6が図の右端に集められてから、図2(C)のように回転ドラム3及びスクリューコンベア4を高速回転(矢印ω)する。
回転ドラム3内の洗濯物6はX軸方向に関しては右端に偏在しているが、X軸周りにはバランスしていて異常振動を生じない。
【0010】
以上に説明した原理に基づく具体的な構成として、請求項1に係る発明方法は、
(図3参照) 円筒形の多孔の側板(3a)と一対の端板(3b,3c)とを有する回転ドラム(3)の中に、スクリューコンベア4を同心に配置した洗濯脱水機によって、洗濯を終えた洗濯物を遠心脱水する方法において、
(図1参照)
a.洗濯を終えた後、洗濯液(5)を排水し、
b.スクリューコンベア(4)を一定方向に回転させて、洗濯物(6)を何れか片方の端板に押し付け、
(図2参照)
c.回転ドラム(3)及びスクリューコンベア(4)を回転させて、洗濯物(6)を遠心脱水することを特徴とする。
(注)前記の「スクリューコンベアを一定方向に回転させる」とは、前掲の図4におけるスクリューコンベアのように往復回動するのでなく、一定の方向に回転させることを意味している。
【0011】
請求項2の発明に係る脱水方法は、前記請求項1の発明に係る脱水方法の構成要件に加えて、
(図1(A)参照) 前記のスクリューコンベア(4)を、「洗濯物(6)を送り方向(矢印e)へ送る方向」に回転させて、該洗濯物(6)を排出側の端板(3c)に押し付けることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明に係る脱水方法の構成は、前記請求項2の発明に係る脱水方法の構成要件に加えて、
(図2(D)参照) 洗濯物(6)を遠心脱水した後、スクリューコンベア(4)を送り方向に回転させて、脱水済み洗濯物を回転ドラム(3)から排出(矢印b)することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る脱水方法を適用すると、
洗濯を終えて洗濯液を排水した後スクリューコンベアを一定方向に回転させて、洗濯物を何れか片方の端板に押し付けるので、回転ドラム内の洗濯物は、該回転ドラムの軸心方向(X−X)に関して一か所に集められる。
(注)この作動が、ケースで覆われて目視できない所で行われることに価値が有る。
洗濯物が一か所に集められるので、これを高速で回転させて遠心脱水操作を行なう際、洗濯物の偏心に因る異常振動を生じない。
【0014】
請求項2に係る発明方法を前記請求項1の発明方法に併せて適用すると、
スクリューコンベアを送り方向に回転させることにより、回転ドラム内の洗濯物を排出側の端板に押し付けるので、
遠心脱水した後、脱水済みの洗濯物を「排出側の端板に設けられている排出用の開口」から排出する工程へ迅速かつ円滑に移行することができる。
(注)脱水済み洗濯物を投入側の端板に押し付けても、洗濯物の偏心を防止できるが、
排出側の端板に押し付けた方が、次の工程(排出)に移行し易い。
【0015】
請求項3に係る発明方法を前記請求項2の発明方法に併せて適用すると、洗濯・脱水・排出の各工程が円滑に、連続的に遂行され、作業能率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本願発明方法の1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は洗濯工程(A)と圧縮工程(B)とを描いてあり、図2は遠心脱水工程(C)と排出工程(D)とを描いてある。
図1(A)に描かれている洗濯工程は、前掲の図4に示した従来例の洗濯と同様であって、スクリューコンベア4を往復回動させ、洗濯物6を矢印e、矢印f方向に揺すって、予洗・本洗・すすぎ洗いが行われる。
洗い終わって、ケース2に注入されていた洗濯液を排出すると、ケースの底部に洗濯物6が残る。
【0017】
スクリューコンベア4を回転させてドラム内の洗濯物6を排出方向(矢印e)に送り、図1(B)に示したように排出側の端板3cに押し付ける。
排出側の端板3cに押し付けられている洗濯物6は、回転軸(X−X)方向に関して、ほぼ一か所に集められている。
ほぼ一か所に集められた洗濯物6は、スクリューコンベア4の回転によって、回転軸周りに均一に均される。
【0018】
図1(B)の工程ではスクリューコンベア4を回動させていたが、洗濯物6を排出側の端板3cへ均一に押し付けながら、図2(C)のようにスクリューコンベア4と回転ドラム3とを一緒に高速回転(矢印ω)させて遠心脱水する。
このとき回転ドラム3内の洗濯物6が均一に分布しているので、偏心に因る異常振動を発生する虞れが無い。
【0019】
遠心脱水を終わると回転ドラム3の回転を停止させ、スクリューコンベア4だけを回転させて、図2(D)のように洗濯物6を排出用の開口3fからドラム外へ排出(矢印b)する。
このようにして、ケース2に覆われて目視できない回転ドラム3の中で、異常振動を発生させることなく、一連の工程(洗濯→脱水→排出)が遂行される。
ブラックボックスの中の作業が自動的に制御されるので省力効果が大きく、かつ、自動的に制御されるので労働災害を生じる虞れが無い。
【0020】
以上に説明した作用効果から理解されるように、前記と異なる実施形態として、
図1(B)の圧縮工程において、スクリューコンベア4を前記と反対方向に回転させて洗濯物6を戻し方向(矢印f)に送り、投入側の端板3bに押し付けても、該洗濯物6が均一に均すことは可能である。
作業条件に応じて洗濯物6を投入側の端板3bに押し付けても本発明の技術的範囲に属する。
しかし、図1及び図2に示した実施形態のように、洗濯物6を排出側の端板3cへ押し付ける方が、全体の流れが合理的でスムースである。
(注)図2(C)の脱水工程を終えたとき、洗濯物6が排出側の端板3c付近に集積されていると、次工程において図2(D)のように、洗濯物6を排出用の開口3fから速やかに排出(矢印b)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法の1実施形態を示し、(A)はその洗濯工程を描いた模式的な断面図、(B)は圧縮工程を描いた模式的な断面図である。
【図2】(C)は前記実施形態における遠心脱水工程を描いた模式的な断面図、(D)は排出工程を描いた模式的な断面図である。
【図3】スクリューコンベアを備えた洗濯液脱水機の公知例を示し、模式的に描いた断面図である。
【図4】前記公知例に係る洗濯脱水機における洗濯作業を模式的に描いた部分破断斜視図である。
【図5】前記公知例に係る洗濯脱水機における作業工程を示し、(A)はその洗濯工程を描いた模式的な断面図、(B)は均し工程を描いた模式的な断面図、(C)遠心脱水工程を描いた模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0022】
2…ケース
3…回転ドラム
3a…多孔の側板
3b…投入側の端板
3c…排出側の端板
3d…管状軸
3e…ドラムプーリ
3f…排出用の開口
4…スクリューコンベア
4a…コンベア軸
4b…コンベアプーリ
5…洗濯液
6…洗濯物
a…洗濯物の投入を表す矢印
b…洗濯物の排出を表す矢印
c−d…スクリューコンベアの揺動を表す矢印
e…洗濯物の排出方向送りを表す矢印
f…洗濯物の戻し方向送りを表す矢印
X…回転ドラム及びスクリューコンベアの回転中心線を表す座標軸
ω…スクリューコンベアの回転方向を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の多孔の側板と一対の端板とを有する回転ドラムの中に、スクリューコンベア4を同心に配置した洗濯脱水機によって、洗濯を終えた洗濯物を遠心脱水する方法において、
a.洗濯を終えた後、洗濯液を排水し、
b.スクリューコンベアを一定方向に回転させて、洗濯物を何れか片方の端板に押し付け、
c.回転ドラム及びスクリューコンベアを回転させて、洗濯物を遠心脱水する、
ことを特徴とする、洗濯脱水機による脱水方法。
【請求項2】
前記のスクリューコンベアを送り方向に回転させて、洗濯物を排出側の端板(3c)に押し付けることを特徴とする、請求項1に記載した洗濯脱水機による脱水方法。
【請求項3】
洗濯物を遠心脱水した後、スクリューコンベアを送り方向に回転させて、脱水済み洗濯物を回転ドラムから排出することを特徴とする、請求項2に記載した洗濯脱水機による脱水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−35742(P2010−35742A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200668(P2008−200668)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)
【Fターム(参考)】