説明

洞道内の冷却方法

【課題】 電力ケーブル等が配設された地中洞道内を簡便な方法で冷却することができるようにすること。
【解決手段】 電力ケーブル11等が配設された地中の洞道1内を冷却する方法であって、地面2から洞道1に達する通気孔3aを設け、一年間を冬等の第1の季節とこの第1の季節より外気の温度が高い第2の季節に区分し、前記第1の季節に外気を通気孔3aに設けた送風手段4aにより洞道1内に送り込み、洞道1内に送り込まれた外気により洞道1が形成された地中7を冷却し、前記第2の季節において、送風手段4aを停止させ、前記冷却された地中7により洞道1内を冷却すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル等が配設された地中洞道内の冷却方法に関し、特に、地中洞道内の簡便な冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブル等が地中の洞道内に敷設されている。この場合、電力ケーブル等の発熱により洞道内の温度が上昇することが問題であった。このため、洞道内の冷却方法が提案されている。例えば、地上に設けた冷凍機で冷却水を冷却し、この冷却水を送水ポンプにより洞道内に建設された冷水管に送り出し、この冷水管を循環する冷却水により洞道内を冷却し、洞道内を冷却して温度が上昇した冷却水を再度地上の冷凍機で冷却する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−139019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、冷凍機および冷水管等の設備を設ける必要があるので、洞道内の冷却のための設備が大掛かりになり、その運転には大きな電力等の動力が必要となるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、地中に形成されて電力ケーブル等が配設された洞道内を簡便な方法で冷却することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、地中に形成されて電力ケーブル等が配設された洞道内を冷却する冷却方法であって、地面から前記洞道に達する通気孔を設け、一年間を冬等の第1の季節とこの第1の季節より外気の温度が高い第2の季節に区分し、前記第1の季節に前記外気を前記通気孔に設けた送風手段により前記洞道内に送り込み、前記洞道内に送り込まれた外気により前記洞道が形成された地中を冷却し、前記第2の季節において、前記送風手段を停止させ、前記冷却された地中により前記洞道内を冷却することを特徴とする洞道内の冷却方法である。
これにより、地面から前記地中に形成されて電力ケーブル等が配設された洞道に達する通気孔を設け、一年間を冬等の第1の季節とこの第1の季節より外気の温度が高い第2の季節に区分し、前記第1の季節に前記外気を前記通気孔に設けた送風手段により前記洞道内に送り込み、前記洞道内に送り込まれた外気により前記洞道が形成された地中(地殻、土壌等を含む。)を冷却することにより、前記洞道が形成された地中に蓄冷し、一方、前記第2の季節において、前記送風手段を停止させ、前記蓄冷された大きな熱容量の地中によって前記洞道内を簡便に冷却することができる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、地中に形成されて電力ケーブル等が配設された洞道内を簡便な方法で冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る洞道内の冷却方法において外気を洞道内に送り込む状態を示し、図2は蓄冷された地中により前記洞道内を冷却する状態を示し、図3は図1の外気を洞道内に送り込む部分の詳細を拡大して示し、図4は洞道内の冷却状態の季節による推移を示す。
【0007】
図1に示すように、洞道1が地面2より下方の地中7(地殻、土壌等を含む。)内に形成されている。この洞道1は、例えば地面2から下方約30メートルの位置の地中7にて横方向に延びていて、前記延びる方向に垂直な直径4メートルの円形断面を有するものである。なお、洞道1と地中7との境界には洞道1の躯体となる壁面6が形成されている。
図3に示すように、地面2から洞道1の図示左端部まで通気孔3aが形成されている。通気孔3aの地面2における開口部3cの周囲を取り巻くようにスリット等により通気性ある側壁21が設けられ、側壁21の上端部には開口部3cの上方を覆う屋根23が設けられている。なお、側壁21には出入口22が設けられている。
【0008】
さらに、側壁21の内面には外気の温度を測定する外気温センサ31が取り付けられ、通気孔3aの途中に設けられた格子状の床3d上には動力盤32が設けられ、通気孔3aと洞道1との仕切り部3eにはファン等の送風手段4aが設けられている。そして、外気温センサ31は配線33により動力盤32(入力手段、CPUおよびメモリを有するシーケンサを備えている。)に接続され、動力盤32は配線34により送風手段4aに接続されている。これにより、外気温センサ31が測定した外気の温度は配線33により動力盤32に伝えられ、動力盤32は、外気温センサ31が測定した外気の温度を記録し、その一日当たりの平均値を算出して記録し、前記算出した平均値を前記メモリに記憶された基準値(例えば15℃)と比較し、この比較結果に基づいて動力盤32が送風手段4aを駆動する季節を決定する。
そして、洞道1内には洞道1の延びる方向に沿って電力ケーブル11が配設され、この電力ケーブル11は仕切り部3eを挿通している。また、仕切り部3eには図示しない出入口が設けられている。なお、図4における「ケーブル電流」は電力ケーブル11の電流の例を示している。
【0009】
電力ケーブル11が配設された洞道1内を冷却する方法は以下の通りである。
図4に示すように、一年間を冬等の第1の季節とこの第1の季節より外気の温度が高い第2の季節に区分する。例えば、外気温センサ31が測定した外気の温度を動力盤32のシーケンサで処理し、その一日当たりの平均値を算出し、この算出した平均値が概ね前記メモリに記憶された基準値以下となる季節を第1の季節とする。このようにして、第1の季節を例えば11月から翌年の4月までとし、第2の季節を例えば5月から10月までとすることができる。
なお、図4における「外気温(日平均)」は動力盤32のシーケンサで算出した外気の温度の一日当たりの平均値の例を示す。
そして、前記第1の季節に外気を通気孔3aに設けた送風手段4aにより洞道1内に送り込む。その際、図3に示すように、外気は矢印5で示すように通気性ある側壁21、通気孔3aの開口部3c、床3dの隙間および送風手段4aを通過して洞道1内に送り込まれる。
図1に示すように、洞道1内に送り込まれた外気は矢印5の方向に送られつつ、洞道1が形成された地中7を冷却する。その際、矢印8aで示すように地中7は洞道1の壁面6に近い部分から順に冷却され、例えば地中7の二点鎖線9で示す範囲内に蓄冷される。
なお、洞道1内に送りこまれた外気は、洞道1の図示右端部から通気孔3bを矢印5で示す方向に通って大気中に放出される。なお、通気孔3bは通気孔3aと同様の構造であり、通気孔3bに排気用の送風手段4bが設けられている。
【0010】
つぎに、図2に示すように、前記第2の季節において、送風手段4a、4bを停止させ、前記蓄冷された大きな熱容量の地中7により洞道1内を冷却する。その際、矢印8bで示すように、地中7から洞道1内を冷却する。
【0011】
なお、地中7の深部土壌温度は、外気温等によらず一年間ほぼ一定であって、約18℃であるので、この温度以下の外気を洞道1内に導入すれば、前記蓄冷の効果が得られる。また、年平均気温が例えば名古屋地方では約15℃であるので、外気の一日の平均温度が概ね15℃以下の季節を前記第1の季節とすることは一年間を2つの季節に分ける基準として適当である。このため、動力盤32のシーケンサのメモリに記憶された基準値を15℃にして、外気の一日の平均温度が概ね15℃以下の季節を前記第1の季節として、この第1の季節に送風手段4a、4bを動作させると、洞道1内を容易に冷却することができる。
この場合の洞道1の冷却状態の例は、図4の「洞道内気温(蓄冷あり)」であり、本発明を実施しない場合の洞道1内の気温に相当する図4の「洞道内気温(蓄冷なし)」よりも一年を通じて低くなっている。このように、本発明により一年を通じて洞道1内を冷却することができる。
【0012】
なお、上記の実施の形態において、洞道1の径は4メートルであるが、これに限定されず、洞道1の径は任意の値を取ることができ、例えば径を2メートルないし5メートルとすることができる。また、洞道1の地面2からの深さは約30メートルであるが、これに限定されず、例えば洞道1の地面2からの深さは実用的には50メートル程度でもよい。また、洞道1は横方向に延びているが、これに限定されず、洞道1の延びる方向が水平方向に対して傾斜していてもよい。さらに、排気用の送風手段4bはなくてもよい。
また、矢印8a、8bは冷却する方向をイメージ的に示したものであり、厳密に矢印8a、8bが示す方向に順に冷却されるのではない。また、二点鎖線9で示す蓄冷範囲も同様にイメージ的に示したものであるので、二点鎖線9で示す蓄冷範囲は厳密なものではない。
また、通気孔3a、3bには、通気孔3a、3b内を昇降するための図示しない梯子が設けられている。
また、洞道1内には電力ケーブル11が配設されているが、電力ケーブル11以外にも通信ケーブル等が配設されている場合もある。
また、動力盤32が前記第1の季節および第2の季節を決定しているが、これに限定されず、外気温センサ31が測定した外気の温度に基づいて作業者が前記第1の季節および第2の季節を決定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る洞道内の冷却方法において外気を洞道内に送り込む状態を示す断面図である。
【図2】蓄冷された地中により前記洞道内を冷却する状態を示す断面図である。
【図3】図1の外気を洞道内に送り込む部分の詳細を拡大して示す断面図である。
【図4】洞道内の冷却状態の季節による推移を示すグラフである。
【符号の説明】
【0014】
1 洞道
2 地面
3a 通気孔
4a 送風手段
5 矢印
7 地中
9 二点鎖線
11 電力ケーブル
31 外気温センサ
32 動力盤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に形成されて電力ケーブル等が配設された洞道内を冷却する冷却方法であって、
地面から前記洞道に達する通気孔を設け、
一年間を冬等の第1の季節とこの第1の季節より外気の温度が高い第2の季節に区分し、
前記第1の季節に前記外気を前記通気孔に設けた送風手段により前記洞道内に送り込み、前記洞道内に送り込まれた外気により前記洞道が形成された地中を冷却し、
前記第2の季節において、前記送風手段を停止させ、前記冷却された地中により前記洞道内を冷却することを特徴とする洞道内の冷却方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−67689(P2006−67689A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246636(P2004−246636)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】