説明

活性成分の徐放システムおよび調製方法

本発明は、酸化合物を生成する少なくとも(a)1種の分解性ポリマーマトリックスと、(b)少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および活性成分と錯形成する反対の電荷の錯形成高分子電解質パートナーの少なくとも1種の酸感応性錯塩とを含む、活性成分の徐放システムに関する。本発明は、さらに、このようなシステムの調製方法に関する。活性成分(7P)の放出は、2成分システム(7P/PLAGA)および(PMLA/7P)と比べて、18日を超えて引き延ばしがなされる(3成分システムPMLA/7P/PLAGA)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解性ポリマーマトリックスと、活性成分および酸感応性高分子電解質パートナーの固体錯塩とを含み、上記のパートナーが、マトリックスを形成する(1種または複数の)ポリマーの分解生成物の影響下において同様に分解性である、上記の活性成分の徐放システムに関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分、特に、多数の静電荷を含む活性成分、すなわちペプチド、タンパク質およびポリヌクレオチド等の高分子電解質の徐放の分野において、相分配、マトリックスもしくはその中に含有される欠陥の内部でのその拡散能力、および/またはその分解速度に応じて、その溶解度により決定される特性に従って活性成分分子を放出する上記のマトリックス、一般的にはポリマーの中に、活性成分を一時的に捕捉することが提案されている。非特許文献3参照。
【0003】
しかし、ペプチドおよびタンパク質、ならびにオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの型の高分子等の水溶性が高い高分子化合物の組み入れは、それが親水性であるために、しばしば困難で効果がない。同時に同じ理由で、ヒドロゲル型ポリマーマトリックスの場合のように、周囲の生体液中におけるその高い溶解度、またはマトリックスの非常に著しい膨潤のために、放出がしばしば速すぎる。
【0004】
さらに、高親水性活性成分、特に静電荷をもつ活性成分(アニオンまたはカチオン)を捕捉するのは、これらの活性成分を固体疎水性マトリックス中に組み入れるのが困難であり、活性成分-マトリックス系の性質次第ではその放出が速すぎもしくは遅すぎるために実行困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/099514
【特許文献2】WO92/11844
【特許文献3】US4265247
【特許文献4】EP332530
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Release of the polyanion from polyelectrolyte complexes by selective degradation of the polycation T. Etrych, M. Boustta, L. Leclercq et M. Vert - J. Bioact. Comp. Polym., Vol. 21, pp. 89-105 (2006).
【非特許文献2】Degradable polymers as tools for polyelectrolyte complex analysis, L. Leclercq, M. Boustta et M. Vert - ACS Symposium Series 939 "Degradable polymers and materials" - Editeurs K.C. Khemani and C. Scholz, Chapter 17, pp. 267-281 (2006).
【非特許文献3】Influence of the poly(lactide-co-glycolide) type on the leuprolide release from in situ forming microparticle systems X. Luan et R. Bodmeier - J. Controlled Rel., Vol. 110, pp. 266-272 (2006).
【非特許文献4】Synthetic poly(β-hydroxyalkanoates) with carboxylic acid or primary amine pendent groups and their complexes, Rossignol, H., Boustta, M. & Vert, M., International Journal of Biological Macromolecules 25, 255-264 (1999).
【非特許文献5】Synthesis, properties and in vitro degradation of carboxyl-bearing PCL, Gimenez, S., Ponsart, S., Coudane, J. & Vert, M., Journal of Bioactive and Compatible Polymers 16, 32-46 (2001).
【非特許文献6】Hydrolytic Degradation of benzylated poly(beta-malic acid), Mauduit, J.; Boustta, M. et Vert, M., Journal Biomaterials Science, Polymer Edition 7, 207-220 (1995).
【非特許文献7】Polylactic and polyglycolic acids as drug delivery carrier L. Brannon-Pepas & M. Vert (2000) Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, Editeurs : D.L. Wise, A. Kilbanov, R. Langer, A. Mikos, L. Brannon-Pepas, N.A. Peppas, D.J. Trantalo, G.E. Wnek & M.J. Yaszemski, Marcel Dekker, New-York, pp 99-130.
【非特許文献8】Biopolymers and artificial biopolymers in biomedical applications, an overview. Vert, M., in Biorelated Polymers : Sustainable Polymer Science and Technology. Editeurs : Chiellini et al., Kluwer Academic/Plenum Publishers, (2001).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最終的に、放出特性は、今日まで一般に満足なものではなく、より適切な放出特性をもつ徐放システムが求められている。出願人は、酸化合物の形成を伴う加水分解により分解できるポリマーマトリックスを用い、少なくとも1価の静電荷を運ぶ活性成分について、この要求を満足させ、この目的を達成した。活性成分をマトリックス中に直接組み入れる一般的なシナリオと異なり、本発明によれば、活性成分は、まず、反対の電荷の高分子電解質パートナーとともに固体高分子電解質錯塩中に挿入される。マトリックスは、錯形成高分子電解質の分解を触媒する酸を形成する水または生理液と接触して分解され、活性成分が放出される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
WO2006/099514には、活性成分と生理活性高分子電解質錯塩(PEC)とを、それぞれに独立してポリマー溶液に加える徐放システムが記載されている。それらは、溶解または分散によりポリマーマトリックス中に溶解して組み入れられる。この文献には、マトリックスの酸の分解生成物と相互作用する酸感応性錯形成剤の具体的な使用は記載または示唆されていない。WO2006/099514において、ポリマーマトリックス中に組み入れられたPECは、PECから離れた活性成分の放出を調整している。これらのPECは、安定な固体であり、したがって生理活性であるとみなされ得る。さらに、それら自体は、いかなる種類のポリマーマトリックスの外にも拡散することはできない。これを可能にするためには、PECを不安定化しなくてはならず、このことは非常に困難であることが知られている。本発明によれば、錯塩のパートナーの1つが、この目的のために分解可能であるように選択される。
【0009】
錯形成により、特に、過剰な親水性が紛らわされ、マトリックス中への活性成分の組み入れが促進され得る。マトリックス中に錯塩を組み入れることにより、錯形成された活性成分を一時的に保護し、その送達を妨げまたは引き延ばし、突然の初期的な放出を防ぐことが可能になる。
【0010】
本発明によれば、加水分解工程により分解可能な錯形成高分子電解質型ポリマーパートナーにより、活性成分がポリマーマトリックス内に固体の形で一時的に固定される。水または生理的媒体に接触して、マトリックスの酸の分解生成物の影響下における酸感応性高分子電解質錯形成剤の分解により、活性成分が次第に放出される。
【0011】
このように、反対の実効電荷の酸感応性高分子電解質と錯形成することにより、イオン性生理活性成分すなわち高分子電解質生理活性物質を保護する条件が満たされる。この保護は、新たな物質を作り出す化学結合を利用することなくもたらされるが、このような物質は取締機関による認可を必要とする。
【0012】
このように、固体錯塩粒子の形に分類される活性成分すなわち生理活性化合物は、水性媒体に不溶となり、このことにより突然の初期的な放出が最小化される。このように、好ましくは、錯塩は、生理的媒体のpH、温度および塩分の条件下で、微粒子で、固体で、安定である。本発明によれば、錯塩を、好ましくは沈殿させる、または例えば凍結乾燥またはオーブン乾燥により固体の状態で得る。
【0013】
さらに、本発明によれば、錯塩をマトリックス中に組み入れることにより、錯塩が一時的に捕捉される。活性成分のこの第2の保護により、生理活性化合物にいかなる化学修飾をすることもなく、高分子電解質の分解速度と、加水分解性マトリックスの分解速度とにより本質的に決定される、遅延された放出が可能になる。
【0014】
本発明によれば、関係する現象は、非常に限定された範囲の物理化学的特性(pH、イオン化可能性またはイオン化の関数である(1つまたは複数の)pK、温度、イオン力、存在する対イオンまたは共イオンの種類、イオン成分の電荷密度、およびしばしば試薬を加える順序)で錯形成が行われるという点において、協同的な様式である。したがって、高分子電解質錯塩は、一般に、重量の点ではなく、反対の電荷の点において化学量論的である。
【0015】
逆に、ほとんど必ず先行技術において用いられるような、重量の点からの混合物により、反対の符号の成分の1つが過剰になり、この場合における過剰分が、非錯形成化合物と同じ法則に従い、拡散(またはマトリックスの分解)の法則に従って放出される。
【0016】
さらに、錯塩の不安定化は、質量の概念ではなく、外的条件の比較的突然な変化(pHおよび/またはイオン力の変化)に従う。
【0017】
このように、24時間後において、引き延ばされた放出がないと、時間とともにEPO濃度が水平に変化していることにより伝わることが、WO92/11844の文献に開示されている曲線に基づいて観測される。観測された放出は、「突発」型にすぎず、その放出は、組成物に応じて30%または70%で停止する。また、「突発」型の放出の違いは別として、BSA-スクロース(中性)およびBSA-プロタミン(多塩基)の放出特性は類似しており、混合物は電荷でなく重量で生成され、錯形成を制御する静電荷は考慮の内に入らないと結論付けることができる。
【0018】
さらに、WO92/11844の文献において、記載されている錯塩は沈殿ではなく溶液であり、この溶液をクロマトグラフィーカラムに浸透させている。
【0019】
このように、本発明は、酸化合物を形成する少なくとも(a)1種の分解性ポリマーマトリックスと、(b)少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の活性成分と錯形成する反対の電荷の高分子電解質パートナーの少なくとも1種の錯塩とを含み、錯形成剤が酸感応性である、活性成分の徐放システムを提案する。
【0020】
本発明は、酸化合物を形成する少なくとも1種の分解性ポリマーマトリックスと、少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の上記の活性成分と錯形成する高分子電解質パートナーとの間の少なくとも1種の錯塩とを含む、活性成分の徐放システムにおける、錯形成剤としての酸感応性高分子電解質の使用にも関する。
【0021】
そのうえ、本発明は、少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の錯形成高分子電解質パートナーの間の錯塩を形成し、この錯塩が好ましくは固体の形であり、上記の錯形成剤が酸感応性であり、次いで、この錯塩を、酸の分解生成物を形成する生体吸収性ポリマーマトリックス中に組み入れることからなるステップを少なくとも含む、徐放システムの調製方法を提案する。
【0022】
このように、例えば、単離し、マトリックス中に組み入れることができる沈殿物の形で、中性の生理的媒体のpH、塩分および温度の条件下において安定な分解性錯塩を形成することが、イオン対形成により可能である。このようなイオン対形成には、質量の化学量論と対立する、電荷の化学量論が必要である。
【0023】
本発明に係る徐放システムにより、生理活性化合物、すなわち活性成分にいかなる化学修飾をすることもなく、活性成分の放出特性を調整することが可能になる。この調整は、活性成分の電荷と反対の電荷の高分子電解質パートナーの安定性と、酸と接触しての分解に対する錯塩の感応性と、マトリックスの種類とに依存し、有効成分の遅延された放出は、分解性高分子電解質の分解速度と、ポリマーマトリックスの種類とにより本質的に決定される。
【0024】
これらの徐放システムにより、特に、荷電したオリゴマーまたはポリマーの型の活性成分を徐放することが可能になり得る。
【0025】
錯塩の形成は、本発明に係る放出システムの調製の決定的な要素である。錯塩は、好ましくは、錯塩を単離し、マトリックス中に組み入れることを可能にするために適用される条件下で、十分に安定である。より具体的には、本発明によれば、錯塩は、好ましくは、放出システムに接する生理液の一般的なpH、塩分および温度の条件下で安定である。錯塩は、特に、pH7.4および約37°で、血液またはリンパ液に適用可能である。このように、錯塩が安定である生理的媒体の用語は、徐放システムを適用しようとする生理的媒体を指す。
【0026】
好ましくは、粉末の形で得られる固体錯塩を、例えば本発明に係る沈殿により形成する。本発明によれば、したがって、錯塩は水性調製媒体に不溶性である。錯塩を、当業者にとって型通りの方法で、酸化合物を形成する分解性ポリマーマトリックス中に組み入れる。粒径は、例えばマトリックス材料でコーティングすることにより、次の組み入れに適合していなくてはならない。
【0027】
いくつかの場合において、固体錯塩を、沈殿により得ていないときには、例えば凍結乾燥生成物の形で得ることができる。固体の形の錯塩は、錯形成剤-活性成分の組み合わせに依存し、当業者は、マトリックス中にそれを組み入れるために錯塩形成技術をいかに選択し適用するかを認識している。
【0028】
分解性ポリマーマトリックスとして、その加水分解に伴い酸化合物を形成するのに適した任意の生分解性ポリマーを用いることができる。
【0029】
原則として、ポリ(α-ヒドロキシ酸)またはポリ酸無水物の型のマトリックスが適切であり、いくつかのポリオルトエステル等の、生理学的に許容でき、その分解に伴い酸化合物を形成するのに適した他の類似のポリマーを想定することもできる。このようなポリマーは、例えば、人工生体高分子として、M.Vertにより記述されている。非特許文献8参照。
【0030】
例えば、ポリ(乳酸-グリコール)酸共重合体(PLAGA)マトリックスを挙げることができる。この共重合体により、分解中に、乳酸およびグリコール酸が供給される。「PLA」の用語は、ポリ(乳酸)を指し、PLA50の用語は、一般に、L-乳酸単位50%およびD-乳酸単位50%を指し、PLA(37.5)GA(25)は、乳酸単位についてL-乳酸単位37.5%およびD-乳酸単位37.5%、ならびにグリコール酸単位25%を指す。乳酸含有率が高まるほど、マトリックスの疎水性が顕著になり、加水分解が遅くなる。例えば、PBS媒体中における分解は、一般に、PLA(37.5)GA(25)による18日から、ホモ重合体PLA50による90日の範囲である。非特許文献7参照。
【0031】
マトリックスの初期のモル質量を、徐放の分野における型通りの基準に従って、所望のインプラントまたは粒子またはヒドロゲルを形成することが可能になるように選択する。
【0032】
ポリ(カプロラクトン)(PCL)マトリックス、特に、Gimenez他により記述されているもののように、酸に感応性があるように修飾されたPCLを挙げることもできる。非特許文献5参照。PCLポリマーは、分解中にカプロン酸が供給する。PCLはPLAより疎水性であるので、このポリマーの分解はPLAの分解より遅い。
【0033】
Manduit他、非特許文献6により挙げられているもののような、適切に部分的にエステル化された、ポリ(β-リンゴ酸)の共重合体誘導体を挙げることもできる。
【0034】
親水性成分と結合することにより、上記ポリマー、特にPLAおよびPLAGAから得られるヒドロゲルを挙げることもできる。
【0035】
上述のように、生理学的に許容できる酸の分解生成物を供給することができる任意の他のマトリックスを想定することができる。
【0036】
分解性ポリマーマトリックスを、インプラント、フィルム、微小粒子、ヒドロゲル、ならびに特に、ポリ(ビニルピロリドン)、デキストランまたはポリ(エチレンオキシド)等の親水性成分、およびポリ酸無水物またはポリ(α-ヒドロキシ酸)等の酸化合物形成ポリマー成分を含む共重合体をベースとした親水性マトリックス等の、任意の標準的な形で用いることができ、選択した形により、酸感応性錯塩の組み入れが可能になる。
【0037】
本発明により放出することが可能である、活性成分すなわちイオン性生理活性化合物の用語は、任意の活性成分、またはより広く、少なくとも1価の静電荷を有する任意のイオン性生理活性化合物、もしくは高分子電解質の特性をもつ、すなわち少なくとも1価の静電荷を有する任意の物質を指す。
【0038】
本発明に係る方法は、タンパク質、遺伝子およびDNAフラグメント、例えば小さなペプチドを含むオリゴヌクレオチドの徐放を可能にするために特に有利である。
【0039】
イオン性生理活性化合物は、反対の電荷を有する、イオン性生理活性化合物と錯形成する高分子電解質パートナーと関連している。好ましくは、イオン性生理活性化合物は、高分子電解質でもある。固体のイオン性または多価イオン性の錯塩の型の組み合わせを形成することが可能な、任意のイオン性酸成分または荷電オリゴマーを用いることができる。
【0040】
高分子電解質パートナーは、適用条件下で固体で安定である多価塩型錯塩または高分子電解質型錯塩を形成することができるように、酸感応性であり反対の電荷を有していなければならない。
【0041】
本発明によれば、高分子電解質パートナーの用語は、活性成分と錯形成することができる、任意の生理学的に許容できる酸感応性ポリマーを指す。
【0042】
本発明によれば、錯形成剤は、それがpH7.4において安定で、pH7未満において分解される場合に、酸感応性であるとみなされる。したがって、酸の媒体中で分解性の錯形成剤は、本発明によれば酸感応性であるとみなされる。
【0043】
分解は、周囲の媒体が酸性である場合に、いっそう迅速である。
【0044】
例えば、錯形成剤PMLA、PLCAおよびPSAは、6未満のpHと接する場合に、著しく分解される。例えば、このようなpHは、細胞内のリソソーム液胞中に見出される。
【0045】
好ましくは、分解性で生体吸収性である、すなわち、肺および/または腎臓の経路による排出に適している高分子電解質が用いられる。このように、錯形成酸感応性高分子電解質は、「人工生体高分子」と呼ばれるポリマーの群に属するものが有利である。非特許文献8参照。このような、分解性で、生体吸収性で、生体適合性である、ポリマーまたは共重合体は、通常、生化学的な回路中に存在し、加水分解に伴い再生されるモノマー由来の反復単位からなり、上記の単位は、その式中に他の促進的な官能基が存在することにより酸感応性になっている場合には、エステル、特に脂肪族エステルの官能基、酸無水物官能基、オルトエステル官能基、またはアミドもしくはオキシドの官能基等の、水性媒体中で安定とみなされる官能基等の、本質的に酸感応性の化学官能基により結合されている。
【0046】
このようなポリエステル型人工生体高分子の原型は、鎖中の結合[-COO-]nと、カルボン酸(例:PMLA)または塩基性官能基(例:PSA)等の少なくとも1種のイオン性官能基を含む残りの反復単位とを含有するポリマーである。別の官能基の存在により酸感応性となっているポリマーの原型はPLCAであり、COOH官能基は、ポリマーを水溶性にし、鎖中の[COHN-]nアミド官能基を、酸に対し、したがって酸の媒体に対し感応性にする一方で、上記の官能基は、通常、脂肪族または芳香族のポリアミド型のポリマー中でも、酵素の関与を要するタンパク質中でも耐性がある。
【0047】
例えば、PMLA型およびPLCA型のポリマーを、正の実効電荷を有する任意の活性成分、すなわち生理活性な物質またはオリゴマーを錯形成するために用いることができる。PSA型ポリマーを、負の実効電荷を有する任意の活性成分、すなわち生理活性な物質またはオリゴマーを錯形成するために用いることができる。PMLA、PLCA、PLCAIおよびPSAのポリマーは、反対の電荷を有するオリゴマーまたはポリマーとだけでなく、ペプチドまたはDNAフラグメント等の目的の酸型または塩基型の化合物とも錯形成することが可能な酸感応性高分子電解質である。より具体的には、PSA、PMLAおよびPLCAのポリマーを、以下の単位(1)から(4)により定義し、PLCA単位は、以下の表Iに表されるイミドPLCAI(3)の単位の加水分解により得られる。PLCA単位(4)は、リシン単位とクエン酸単位との組み合わせである。PMLAおよびPLCAは、特に、US4265247およびEP332530から知られており、PSAは、Rossignol, H.他により記述されている。非特許文献4、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献8も参照されたい。
【0048】
好ましくは、以下の表Iに表されるPMLA、PLCA、PLCAIおよびPSAのポリマーは、本発明に従って用いられる。他の異なるNa+およびBr-の対イオンを用いることができる。同様に、多価酸のための-COOHの形、および多価塩基のための-NH2の形を想定することができる。
【0049】
錯形成剤について、およびポリマーマトリックスについて、約5000から500000g/mol、好ましくは約10000から100000g/molの質量Mwが想定され得る。
【0050】
本発明に係るイオン性生理活性化合物の例には、ペプチドまたはタンパク質、すなわちブルシン、ロイプロリド、トリプトレリン、他のLH-RH類似体、タンパク質フラグメント、タンパク質キナーゼ阻害剤等が挙げられる。塩基性活性成分には、ペプチドまたはタンパク質の他の多価アミン型の塩基性化合物も挙げられる。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明に係る放出システムの調製方法に関しては、原則として、錯塩は、高分子電解質の溶液を、保護され、次第に放出されるべき活性成分化合物と混合することにより形成される。好ましくは、錯形成により、粉砕し、次いで篩ってマトリックス中への組み入れを促進することができる粉末状の化学量論的な沈殿物が生成される。
【0053】
乾燥した形を得るために、錯塩を凍結乾燥することができ、錯塩のオーブン乾燥も想定することができる。
【0054】
3成分のマトリックス-錯形成剤-活性成分システムを生成する、錯塩のマトリックス中への組み入れは、錯塩およびマトリックスの種類に適合する任意の手段により行われる。柔軟な形のマトリックスを用い、フィルムを折り曲げるためにTgを超える温度で機能することが可能である。
【0055】
一般に、ときに「シート」と呼ばれるフィルムの形のマトリックスを用い、その上に粉末の錯塩を堆積させ、そのフィルムをそれ自体の上に折り曲げ、そのフィルムを短時間圧縮して、活性成分が分散された新しい「シート」を得る。この目的のために、可変の温度で作動し、厚さ数百ミクロンのフィルムを製造することができる標準的なプレス機を用いることができる。
【0056】
高分子電解質をマトリックス中に組み入れた後に、酸形成マトリックス中の分解性錯形成高分子電解質の分解を、水または生理液の存在により決定付ける。
【0057】
本発明には、生理的条件下で安定な、反対の電荷を有する化合物の錯塩と、活性成分の高分子電解質錯形成剤を分解することができる酸を形成するマトリックス中への捕捉との組み合わせが含まれる。
【0058】
質量作用の法則により、安定な錯塩を解離することはできないが、(マトリックスの分解により得られる)局所的なpHの変更により、または(ポリマーマトリックス内での使用には適さない)イオン力の増大によってのみ解離することができるので、本発明によれば、突発的放出が弱められ、または除去されさえする。
【0059】
最終的に、本発明によれば、目的の化合物の放出は、もともとの特性に従って、酸感応性高分子電解質との錯形成により実際に引き延ばされ、放出相の濃度は、長期間(場合によって数十日)にわたって徐々に変化する。
【0060】
重量比に関しては、錯塩を、3成分システムの全重量の0.1から60重量%の範囲である、3成分システム中の広い範囲の錯塩重量比の値で組み入れることができる。薬物動態学的な結果に適合する、より限定された範囲を用いるのが好ましく、このような好ましい範囲は、3成分の錯塩-ポリマーマトリックスシステムの全重量に関して、錯塩1から40重量%である。
【0061】
徐放システムの利点の1つは、その保存中におけるその安定性である。実際に、ポリマー、例えば、酸形成マトリックス中の分解性錯形成多価アニオンの分解は、水の存在に影響されやすいので、このシステムは乾燥した保存中においては安定なままである。
【0062】
あるいは、フィルムの形ではなく粒子の形の、3成分のマトリックス/高分子電解質錯塩-活性成分のシステムを用いることを想定することができる。活性成分の放出速度をさらに調整するために、PLAGA型またはPLA型のポリマーにより、これらの粒子を従来のようにコーティングすることもできる。マトリックスの形(マイクロスフェア、微小粒子、シート、インプラント、フィルム等)は、上記のマトリックスの分解速度、したがって活性成分の放出速度に影響する。徐放システムの形および大きさにより、マトリックスの分解速度、したがって高分子電解質パートナーを分解する酸生成物の形成を適合させることが可能になる。
【0063】
本発明は、添付の図面、および以下の実施例を踏まえると、より明瞭に理解される。
【0064】
図1に、マトリックス(PLAGA)中の本発明に係る錯塩(PMLA錯形成剤)中に組み入れた活性成分(7P)(●)の放出特性を、錯塩単独(▲)、または同じマトリックス中に組み入れた活性成分単独(■)と比較して表す。図1においては、分解を日数でX軸上に記録し、放出速度をY軸上に記録する。図2および3は、それぞれ、さらなる錯形成剤(PLCA)、および高分子電解質の活性成分テンプレート(PLL)による同様な実施例に関する。
【0065】
実施例において参照され得るように、出願人は、マトリックスの分解による、したがって酸残留物出現の速度論による制御に従って、同じマトリックス-錯形成剤の組み合わせについて、異なる活性成分により同様の結果を得られることを示した。
【0066】
比較の目的のために、図4および5により、酸感応性錯形成剤を、安定なマトリックス中に組み入れた場合と、非酸感応性錯形成剤を、分解性マトリックス中に組み入れた場合とにおける放出特性(0から50日の日数における、X軸上の時間の関数としての、Y軸上の放出パーセンテージ)を示す。
【0067】
酸感応性錯形成剤と関係する安定なマトリックスについての比較例、および非酸感応性錯形成剤と関係する分解性マトリックスの比較例において得られる結果は、それぞれ、酸の分解生成物を形成する加水分解性マトリックスの選択の重要性と、マトリックス分解の影響下で分解されて、活性成分の放出を引き延ばすことを可能にする酸感応性錯形成剤の選択の重要性とを示している。
【0068】
(実施例)
(実施例1から5)
Arg-Lys-Arg-Ser-Arg-Lys-Glu(7P)およびポリリシン(PLL)の徐放システムの調製
1)使用試薬:
錯形成剤:
- PMLA,Na(Mw=30000g/mol)
- PLCA,Na(Mw=40000g/mol、Mn=20000g/mol)
マトリックス:
- 実施例1から4について、PLA(37.5)GA(25)(Mw=30000g/mol、Mn=9000g/mol)
- 実施例5について、PLA50(Mw=50000g/mol)
活性成分、すなわち高分子電解質のテンプレート:
- 上記のヘプタペプチド(7P)、タンパク質キナーゼ阻害剤は、959g/molの分子量を有し、全部で5価の正電荷を含有する。
- ポリリシン(PLL)は、12000g/molの分子量Mwを有し、1構造単位あたり1価の正電荷を含有する。
【0069】
7PおよびPLLは、特にSigma-Aldrich、BachemおよびAmerican Peptide Companyの供給元から入手できる。
【0070】
2)4種の錯塩の調製
例1:一般に、PLL,HBr25mgを含有する水溶液500μlを、PMLA,Na16.7mgを含有する水溶液1mlに加えた。この混合物を遠心分離し、沈殿物を乾燥させた後に、PMLA-PLL固体錯塩26mg(収率=88%)を回収した。
【0071】
例2:同様に、PLCA,Na20.7mgおよびPLL,HBr25mgから、PLCA-PLL28mg(収率=84%)を得た。
【0072】
例3:同様に、PLCA,Na19.1mgおよび7P25mgから、PLCA-7P固体錯塩22.3mg(収率=63%)を得た。
【0073】
例4:同様に、PMCA,Na15.3mgおよび7P25mgから、PLMA-7P固体錯塩23.7mg(収率=75%)を得た。
【0074】
次いで、この固体錯塩を乳鉢で粉砕し、粉末を得た。
【0075】
3)マトリックス中への錯塩の組み入れ
一般に、実施例1から4におけるシステムについて、PLA(37.5)GA(25)1gを、50℃でプレス機(CARVER4120CE)により圧縮し、厚さ数百ミクロンのフィルムを得た。
【0076】
錯塩粉末をフィルムの中央付近に堆積させ、フィルムを同じ条件下で短時間圧縮する前に折り曲げた。折り曲げと圧縮とのステップを3回繰り返す。このように、錯塩全部を、マトリックス中に均一に分布させた。
【0077】
活性成分をマトリックス中に単独で組み入れる比較例については、錯塩のものと同じ条件下で組み入れを行う。
【0078】
実施例1から4におけるシステムについて、マトリックス中への錯塩の重量組み入れ率4重量%で組み入れを行い、最終的なマトリックスの厚さは0.5mmである。
【0079】
さらに、同じ方法により、1gのPLA50で、1gのPLAGAを置き換えた場合、100℃で圧縮を行い、厚さ数百ミクロンのフィルムを得た(実施例5)。
【0080】
(実施例6から8)
イオン性活性成分の放出
実施例1から4におけるそれぞれの錯塩について、以下の3つのシステムを検討した。すなわち、2成分の固体高分子電解質/活性成分の錯塩のシステム(曲線上の▲)、2成分のマトリックス/活性成分のシステム(曲線上の■)、および3成分のマトリックス/固体高分子電解質-活性成分錯塩のシステム(曲線上の●)である。
【0081】
3つのシステムのそれぞれを、PBS5mlを含有するピルボックス(テンプレート生理条件)に導入し、37℃での攪拌下に置いた。
【0082】
定期的に、溶液20μlを分析のために採取し、同じ容積のPBSにより置き換える。採取した溶液20μlを、ホウ酸塩緩衝剤1.2mlを含有する溶液(0.1M濃度、pH=9.3)に加える。次いで、TNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸、濃度0.03M)20μlを、残った混合物に加えて、2時間放置した。放出されたアミン基(および、したがって有効成分)の量を、校正曲線により、420nmでの紫外可視分光法により測定する。
【0083】
放出特性-結果
マトリックスの分解により、高分子電解質パートナーを選択的に分解することにより高分子電解質-活性成分の錯塩の分解を触媒する酸生成物が供給される。マトリックスの分解速度により、生理活性イオン性物質の放出速度が直接決定される。
【0084】
図1において、7P/PLAGA(■)およびPMLA/7P(▲)のシステムについて、ペプチド7Pは、2日未満、または2成分のPMLA/7Pシステム(▲)については数時間でも放出される。
【0085】
図3におけるPMLA/PLL/PLA(37.5)GA(25)(●)、図2におけるPLCA/PLL/PLA(37.5)GA(25)(●)、およびPLCA/PLL/PLA(37.5)GA(25) (不記載)のシステムと同様に、図1における3成分のPMLA/7P/PLA(37.5)GA(25)システム(●)により、2成分のマトリックス/活性成分または高分子電解質-活性成分の錯塩のシステムを比べて、PLLおよび7Pの放出の引き延ばしを、18日を超えて増加させることが可能になることがわかった。
【0086】
さらに、2成分のPLCA-PLLシステムによっては、使用したテンプレート生理条件下でのPLLの放出は可能にならないと思われるが、3成分システムは、PLLを生物が取り入れ可能とする利点を有する。
【0087】
実施例5に係るPLLの組み入れに、分解性マトリックスとして、PLAGAの代わりにPLA50を用いると、活性成分の放出が、かなり遅延され3ヶ月後に行われる。
【0088】
(実施例9)
実施例5におけるものと同じ条件下で調製された、3成分のPLA50/PMLA/7Pシステムも検討した。3ヶ月後の放出も示されている。
【0089】
(実施例10から12)
同様の放出特性が、実施例1、3および4におけるシステムと同様のものにより得られ、重量比率は、マトリックス中に4%から8%の比率に増加した。最終的に得られたマトリックスは、1.3mmの厚さを有する。
【0090】
(実施例13〜14)
安定な沈殿物の錯塩を、実施例1および2における方法と同様な方法で調製し、PLL相中のロイプロリドを、PMLAと、およびPLCAと錯形成した。
【0091】
(実施例15〜16)
実施例1から4におけるように沈殿ではなく、凍結乾燥し、PMLA-ブルシンおよびPLCA-ブルシンの錯塩も調製し、凍結乾燥された生成物を、PLAGAのシート中に組み入れた。
【0092】
(実施例17(比較))
実施例2において上記のように、PLCA,Na錯形成剤およびPLL活性成分(高分子電解質テンプレート)により、PLCA-PLL錯塩を調製し、ポリ(ε-カプロラクトン)マトリックス(PCL)をマトリックス中に組み入れた。マトリックス中への錯塩の組み入れ重量比4重量%で組み入れを行い、70℃で圧縮後の最終的なマトリックスの厚さは0.5mmであった。
【0093】
図4において参照され得るように、表面の洗浄に起因するわずかな突発が現れている。それは、PLLの全量の10%に相当する。50日後でさえ、放出されるのは全PLLの15%未満である。
【0094】
(実施例18(比較))
非酸感応性錯形成剤ポリ(メタクリル酸)(PMA,Na)および活性成分(高分子電解質テンプレート)PLLで、PMA-PLL錯塩を、PLL,HBr25mgを含有する水溶液500μlをPMA,Na12.9mgを含有する水溶液1mlに加えることにより調製した。混合物を遠心分離し、沈殿物を乾燥した後に、固体PMA-PLL錯塩18mg(収率=71%)を回収した。実施例1から4において上記のように、PMA-PLL錯塩を、マトリックスPLA(37.5)GA(25)中に組み入れた。マトリックス中への錯塩の組み入れ重量比率5重量%で組み入れを行い、60℃で圧縮後の最終的なマトリックスの厚さは0.15mmであった。
【0095】
図5において参照され得るように、50日後でさえ、放出されるのは全PLLの3%未満である。
【0096】
(実施例19)
ポリ(α-アミノセリネート)(PSA)および活性成分(高分子電解質テンプレート)ポリアクリル酸(PAA,Na)で、PPA-PSa錯塩を、PSA,HBr10.5mgを含有する水溶液500μlをPPA,Na5.5mgを含有する水溶液1mlに加えることにより調製した。混合物を遠心分離し、沈殿物を乾燥させた後に、固体PAA-PSA錯塩6.8mg(収率=68%)を回収した。実施例1から4と同じ方法で、PAA-PSA錯塩を、PLA(37.5)GA(25)マトリックス中に組み入れた。マトリックス中への錯塩の組み入れ重量比率4.5重量%で組み入れを行い、60℃で圧縮後の最終的なマトリックスの厚さは0.22mmであった。
【0097】
3週間後に、PAA(分解性マトリックス+酸感応性多価アニオン性錯形成剤)の放出特性が、実施例6から8における、酸感応性多価アニオン錯形成剤、および活性成分すなわち多価カチオン型高分子電解質テンプレートの放出特性を同等であることが観測された。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化合物を形成する少なくとも(a)1種の分解性ポリマーマトリックスと、(b)少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の前記活性成分と錯形成する高分子電解質パートナーの少なくとも1種の錯塩とを含み、前記錯形成剤が酸感応性である、活性成分の徐放システム。
【請求項2】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(α-ヒドロキシ酸)またはポリ酸無水物またはポリカプロラクトンの型であることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)共重合体型であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記錯形成剤が、ポリ(リンゴ酸)(PMLA)、ポリ(リシンシトルアミド)(PLCAまたはPLCAI)およびポリ(アミノセリネート)(PSA)の型の高分子電解質錯形成剤から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記錯塩が、塩基性活性成分と、ポリ(リンゴ酸)またはポリ(リシンシトルアミド)の型の多価アニオン錯形成剤との間のイオン対形成により形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記塩基性活性成分が、多価アミン型であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記酸感応性錯塩が、酸性活性成分と、酸感応性ポリ(アミノセリネート)(PSA)型ポリカチオン錯形成剤との間のイオン対形成により形成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記錯塩が、水性媒体に不溶性であることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記活性成分が、高分子電解質であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記システム中の錯塩の比率が、0.1から60重量%、好ましくは1から40重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の酸感応性錯形成高分子電解質パートナーの間の錯塩を形成し、前記錯塩が、生理的媒体のpH、塩分および温度の条件下で安定であり、次いで、前記錯塩を、酸の加水分解生成物を形成する生体吸収性ポリマーマトリックス中に組み入れることからなるステップを少なくとも含む、請求項1から10のいずれかに記載の徐放システムの調製方法。
【請求項12】
酸化合物を形成する少なくとも1種の分解性ポリマーマトリックスと、少なくとも1価の静電荷を有する活性成分、および反対の電荷の前記活性成分と錯形成する高分子電解質パートナーの間の少なくとも1種の錯塩とを含む、活性成分の徐放システムにおける、錯形成剤としての酸感応性高分子電解質の使用。
【請求項13】
前記ポリマーマトリックスが、ポリ(α-ヒドロキシ酸)またはポリ酸無水物またはポリカプロラクトンの型、好ましくは、PLAまたはPLAGAであることを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記錯形成剤が、PMLA、PLCA、PLCAIまたはPSAから選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の使用。

【公表番号】特表2010−533687(P2010−533687A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516541(P2010−516541)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001066
【国際公開番号】WO2009/037401
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【出願人】(508346778)ユニバーシテ・ドゥ・モンペリエ・1 (3)
【Fターム(参考)】