説明

活性種発生装置

【課題】本発明は、室内空間の除菌や脱臭などを行う活性種発生装置において、安全性を高めるとともに、浄化作用の向上を目的とするものである。
【解決手段】本体ケース4と、前記本体ケース4内に設けられた絶縁性基板7と、前記絶縁性基板7の表面から所定間隔を存して配置された放電電極12と、前記絶縁性基板7に接する対向電極13と、前記放電電極12と前記対向電極13とに電圧を印加する電源14と、前記絶縁性基板7を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段8と、を備え、前記絶縁性基板7は、開口部20を有し、この開口部20の前記放電電極12側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面21とするとともに前記吸着手段8により覆われ、前記放電電極12の先端は、前記拡開傾斜面21を有する開口部20に対して垂直方向に対向配置するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間の除菌や脱臭などを行う活性種発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気中にラジカルなどの活性種を供給し、この活性種による清浄化作用により、この空気を清浄化する活性種発生装置が開発されている。
【0003】
従来のこの種、活性種発生装置は、本体ケースと、放電電極と、この放電電極に対向する対向電極と、これらの放電電極と対向電極とに電圧を印加する電源と、対向電極の表面に設けた吸着手段とを備えた構成であった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の活性種発生装置は、放電電極と対向電極間に電圧を印加することで、コロナ放電を行わせ、これによって吸着手段に吸着した水分を分解し、活性種を発生させるようになっていた。
【0006】
このような構成において、コロナ放電によって放電電極と対向電極間に流れる電流は、放電電極から導電体である対向電極への最短経路となる吸着手段の厚み方向に流れ易いので、放電電極の近傍の狭い範囲に集中して電子が流れやすい傾向があった。狭い範囲に電流が集中することによって、集中的に生成した高濃度の活性種が、吸着手段の劣化を起こす可能性があった。また、集中的に生成した活性種が吸着手段を剥離させて放電電極と対向電極間で火花放電を発生させる可能性があり、安全性を高めることが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、放電電極と対向電極の絶縁性を高め、安全性を高めるとともに、より広い範囲で活性種を生成させることにより、活性種の発生量を増加して、活性種による浄化作用を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、前記絶縁性基板に接する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段と、を備え、前記絶縁性基板は、開口部を有し、この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、前記絶縁性基板に接する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段と、を備え、前記絶縁性基板は、開口部を有し、この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置する構成としたものであるので、放電電極と対向電極の絶縁性を高め、安全性を高めるとともに、より広い範囲で活性種を生成させることにより、活性種の発生量を増加して、活性種による浄化作用を向上させることができる。
【0010】
すなわち、本発明においては、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、前記絶縁性基板に接する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段と、を備えたことにより、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合でも、放電電極と対向電極間を流れる電流は、放電電極から絶縁性基板の外周に位置する吸着手段を面方向に流れた後に、対向電極へと到達することになる。
【0011】
つまり、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合でも、放電電極と対向電極間の沿面距離が長くなり、電子が吸着手段を介してより長い距離にわたって流れることになるため、瞬間的な短絡による火花放電が起こりにくく、その結果として、安全性の向上が図れるものである。また、放電電極と対向電極間の沿面距離が長くなることにより、放電範囲が広がり、より広い範囲から活性種が生成するため、安全性の向上が図れるものである。
【0012】
また、さらに、本発明においては、前記絶縁性基板は、開口部を有し、この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置することにより、開口部の開口縁が傾斜しない場合と比較して、開口部の開口縁の拡開傾斜面の傾斜が、放電電極に対向する吸着手段の表面積と吸着手段の存在量を増加させるので、放電電極から放出された電子がより多く吸着手段の表面に到達することになる。
【0013】
その結果、吸着手段に吸着した水分がより多くコロナ放電により分解され、活性種の発生量を増加することにより、活性種による浄化作用の向上が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における活性種発生装置を設置する屋内の斜視図
【図2】同活性種発生装置の断面図
【図3】同活性種発生装置の断面図
【図4】同活性種発生装置における絶縁性基板および吸着手段部分の側面図
【図5】同活性種発生装置における絶縁性基板、吸着手段、放電電極、対向電極、支持部材を示す側断面図
【図6】同活性種発生装置における絶縁性基板、対向電極、支持部材を示す斜視図
【図7】絶縁性基板、対向電極、支持部材の構成を示す展開図
【図8】絶縁性基板を対向電極側から見たときの平面図
【図9】同活性種発生装置におけるプラスコロナ放電の概念を示す図
【図10】同活性種発生装置におけるマイナスコロナ放電の概念を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に示すように、部屋1の床2上には、活性種発生装置3が配置されている。
【0017】
この活性種発生装置3は、部屋1内の空気中にラジカルなどの活性種を供給することで、この活性種による清浄化作用により、空気を清浄化するものである。
【0018】
図2は、図1における活性種発生装置3の断面図を示している。図3は、図2とは部品配置が異なる活性種発生装置3の断面図を示している。この活性種発生装置3を起動させると、プラスチック製の本体ケース4側面に設けられた吸込口5から、部屋1内の空気が本体ケース4内に流入する。本体ケース4内に流入した空気は、送風機6により本体ケース4内の上部まで移動する。
【0019】
本体ケース4内の上方には、セラミック又は、フッ素などの樹脂製の板状の絶縁性基板7が設けられている。この絶縁性基板7は、空気の流れに対して、図2では平行、図3では垂直方向に支持部材18によって本体ケース4に固定されている。
【0020】
絶縁性基板7は、セラミック基板であっても、フッ素などの樹脂基板であっても良い。セラミック基板として、シリカ、アルミ、マグネシウムのうちいずれか1つを含む基板であっても、アルミナ基板であっても良い。オゾンやラジカルで腐食されにくい無機系のものあるいはフッ素樹脂であれば良いためである。
【0021】
絶縁性基板7の表面抵抗は、1010Ω/□以上であることが望ましい。
【0022】
更に、この絶縁性基板7と対向する位置に数ミリメートル〜数十ミリメートル程度の所定距離を隔てて、コロナ放電をさせるSUSやタングステンなどを用いた放電電極12が配置され、さらに、絶縁性基板7には対向電極13が設けられている。
【0023】
放電電極12は、棒状またはワイヤ状であり、その先端の形状は、先端に向かって径が小さくなった針形状、または、放電電極12の長手方向に対して略垂直な断面としたものでもよい。
【0024】
放電電極の先端と反対の端部が、電源14に接続されている。
【0025】
対向電極13は、SUSなどのステンレス、アルミ、金、銀、銅などで形成されている。なお、対向電極13の素材は、これらに限られること無く、導電性の素材であれば良い。
【0026】
対向電極13の表面抵抗は、10-1Ω/□以下であることが望ましい。
【0027】
放電電極12は、電源14により印加されると、放電電極12の先端から放電する。電流は、放電電極12から、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8の表面を経由して、対向電極13に流れる。
【0028】
図4、図5、図6、図7および図8を用いて説明する。
【0029】
図4は、絶縁性基板7および吸着手段8部分の側面図である。
【0030】
図5は、図3の部品配置における絶縁性基板7、吸着手段8、放電電極12、対向電極13、支持部材18を示す側断面図である。
【0031】
図6は、図2の部品配置における絶縁性基板7、対向電極13、支持部材18を示す斜視図である。
【0032】
図7は、図2の部品配置における絶縁性基板7、対向電極13、支持部材18の構成を示す展開図である。
【0033】
図8は、絶縁性基板7を対向電極13側から見たときの平面図である。
【0034】
図5から図8に示すように、絶縁性基板7は、放電電極12と対向する表面22と、裏面23と、表面22と裏面23の外周においてこれらの表面22と裏面23に接続された側面24を有している。絶縁性基板7は四角形であり、表面22から裏面23に貫通する開口部20を有している。なお、図6、図7では、吸着手段8は、他の構成を分かりやすくするため、図示していない。
【0035】
なお、絶縁性基板7の形状は、本実施の形態では、四角形であるが、後述する吸着手段8を設けるための面積を有していれば、円形・長方形・六角形等の他の形状でもよい。
【0036】
なお、図8に示すように、絶縁性基板7の開口部20は、円形状としてもよい。これにより、放電電極12に高電圧をかけることにより放電電極12の先端から発生するイオン風が、円形状の開口部20を効率よく通過して、送風機6により送風される空気中に放出されるので、絶縁性基板7を覆う吸着手段8の表面に生じた活性種が吸着手段8の表面から移動し、拡散しやすくなるという効果を奏する。
【0037】
図5に示すように、開口部20の放電電極12側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面21となっている。
【0038】
すなわち、表面22の開口部20の径は、裏面23の開口部20の径より大きくなるように、拡開傾斜面21が傾斜している。
【0039】
絶縁性基板7の開口部20の周囲および開口部20の拡開傾斜面21は、吸着手段8により覆われている。この吸着手段8は、図4に示すように、水を吸着する平均粒子径0.5マイクロメートルから数十マイクロメートル程度の粒子で構成されたゼオライトなどの吸着剤9を有している。更に、吸着手段8は、吸着剤9と、絶縁性基板7を接着するコロイダルシリカなどの接着剤10を有している。
【0040】
この吸着手段8を構成する吸着剤9は、表面に細孔11を有しているため、接着剤10は、ゼオライトなどの吸着剤9の平均粒子径より小さく、ゼオライトの表面に開いている細孔11よりも大きい平均粒子径であれば良い。また、細孔11を閉塞させなければ、接着剤10としてガラス粉や、シリケート化合物を用いてもよい。
【0041】
本実施の形態における吸着剤9は、細孔11に空気中の水蒸気を吸着させるものであるが、細孔11が接着剤10の粒子で埋まりにくい平均粒子径であれば、空気中の水蒸気を吸着することができる。なお、吸着剤9は接着剤10よりも平均粒子径が大きいものであっても良い。
【0042】
また、本実施の形態では、吸着剤9としてゼオライトを例に挙げたが、吸着剤9は、ナノレベルの細孔11を有し、いわゆるKelvinの毛管凝縮現象により細孔内で水蒸気が凝縮し得るような細孔を有する構造を有する多孔質構造体であれば、シリカ、ゼオライト、デシカイト、アロフィン、イモゴライトなどでも、これらのうちいずれか1つを含むものでも良い。また、粒子間の隙間を利用して水を吸着する、多孔質アルミナ、多孔質シリカ、多孔質チタニアであっても良い。
【0043】
対向電極13は、絶縁性基板7と吸着手段8に接するように配置される。
【0044】
これにより、放電電極12と対向電極13間を流れる電流は、例えば放電電極12から絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8を流れた後に、対向電極13へと到達することになり、つまり沿面距離が長いので、その結果として火花放電が起こらず、安全性の向上が図れるものである。
【0045】
なお、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8は、半導電性であり、吸着手段8の表面抵抗は、106から1010Ω/□であることが望ましい。放電電極12と対向電極13間との間に高電圧が印加されたとき、電流は一方の電極から放電されて絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8を伝って他方の電極へと流れる。この際に、本体ケース4内に設けられた絶縁性基板7と、絶縁性基板7から所定距離を隔てて配置された放電電極12と、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8に接する対向電極13と、絶縁性基板7の表面22を覆うとともに、絶縁性基板7の近傍の水分を吸着する吸着手段8を設けることにより、電子が移動する距離であるいわゆる沿面距離が伸びることとなる。これにより火花放電の発生を低減させることができ、安全性が向上するのである。
【0046】
なお、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8の膜厚は、均一であることが望ましい。
【0047】
表面22抵抗を均一にするためである。
【0048】
吸着手段8は、絶縁性基板7の表面22にスクリーン印刷によりスキージで半導電インクを塗布したものである。半導電インクは、ゼオライトなどの吸着剤およびコロイダルシリカなどの接着剤10を含み、前記成分を溶剤に混合あるいは溶解させたものである。絶縁性基板7の開口部20上をスクリーンを介してスキージが通過することにより、開口部20の拡開傾斜面21に、半導電インクが、押し出され、押し出された半導電インクは、開口部20の拡開傾斜面21の斜面の中程25にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成して拡開傾斜面21を覆う。従って、吸着手段8は、絶縁性基板7の開口部20の拡開傾斜面21の中程にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成する。
【0049】
このように、開口部20の拡開傾斜面21は、吸着手段8により覆われている。
【0050】
これにより、開口部20の開口縁が傾斜しない場合と比較して、放電電極12の先端に対向する開口縁の面積、つまり、拡開傾斜面21の面積が増加する。その結果、放電電極12の先端に対向する拡開傾斜面21を覆う吸着手段8の表面積も増加する。また、拡開傾斜面21上に接着される吸着手段の存在量が増加する。
【0051】
これにより、放電電極12の先端から放出された電子がより多く吸着手段8の表面に到達することになる。これにより、吸着手段8に吸着した水分がより多くコロナ放電により分解され、活性種の発生量を増加することにより、活性種による浄化作用の向上を図ることができるのである。
【0052】
放電電極12は、その先端を絶縁性基板7の表面22の開口部20に向けるように対向して配置され、放電電極12の先端と絶縁性基板7の表面22との間に数ミリメートル〜数十ミリメートル程度の所定距離を隔て、開口部20内側に位置するように突設されている。
【0053】
また、放電電極12は、絶縁性基板7の開口部20の略中心垂直軸上に位置するという構成にしてもよい。すなわち、放電電極12は、その長手方向の中心軸が、開口部20の投影面の略中心垂直軸状に位置するように配置するという構成にしてもよい。これにより、放電電極12に高電圧をかけることにより放電電極12の先端から発生するイオン風が、絶縁性基板7の開口部20の略中心方向に向けて流れるため、イオン風は、絶縁性基板7に遮られることなく、開口部20を通過して、送風機6により送風される空気中に放出されるので、絶縁性基板7を覆う吸着手段8の表面に生じた活性種が吸着手段8の表面から移動し、拡散しやすくなるという効果を奏する。
【0054】
対向電極13は、吸着手段8と接していれば、絶縁性基板7の裏面23又は側面24に接して設けられているものであっても良い(図示なし)。これにより、放電電極12から流れる電子が、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8の表面を伝って流れる際に、電子の移動する距離である、いわゆる沿面距離が伸びることで、火花放電を起こりにくくなる。
【0055】
なお、これに限られること無く、対向電極13を絶縁性基板7の表面22に設ける場合には、十分な沿面距離を確保した状態で配置することが必要となる。
【0056】
また、図5に示すように、対向電極13の表面には絶縁性被覆26を設けてもよい。絶縁性被覆26により、放電電極12から対向電極13へ直接到達して火花放電を起こすことが防止でき、さらに安全性の向上が図れるものである。これによって、十分な沿面距離を確保できない場合でも、安全性を確保することができる。絶縁性被覆としては、フッ素樹脂・塩ビ樹脂などの絶縁性テープを接着する方法、ガラスペースト・セラミック系接着剤を塗布して乾燥焼成する方法などを用いることができる。
【0057】
放電電極12に高電圧をかけることで、絶縁性基板7の表面22を覆う吸着手段8の表面にてラジカルやオゾンや過酸化水素などの活性種が発生する。放電電極12の先端から絶縁性基板7に向けてイオン風が発生し、このイオン風は、絶縁性基板7の開口部20を通って、送風機により送風される空気中に放出されるので、絶縁性基板7を覆う吸着手段8の表面に生じた活性種が吸着手段8の表面から移動し、拡散しやすくなる。
【0058】
すなわち、この放電電極12に、電源14により放電電圧をプラス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極12の表面に強い電界が形成される。放電電極12にプラスの高電圧が印加されているため、空気中に存在する遊離電子が流れ込む。このとき、対向電極13は、マイナス状態となっているので、その結果、電子が移動することで、対向電極13から放電電極12へ電子が流れる。この状態がコロナ放電であって、このコロナ放電の力で後述のごとく、OHラジカル(活性種の一例)が発生する。
【0059】
次に、図9のように、放電電極12にプラスの電圧を印加した場合について説明を行う。
【0060】
セラミック製の絶縁性基板7と吸着剤9は、接着剤10により接着されている。吸着剤9の表面22はナノレベルの細孔を有し、空気中の水分は、この細孔内で水蒸気が凝縮することにより、水分を吸着することが知られている(Kelvinの毛管凝縮現象)。これにより、ゼオライトなどの吸着手段8に、空気中の水分が吸着され、電子が流れやすくなる。放電電極12にプラスの高電圧を印加してプラスコロナ放電を行うと、吸着剤9中の電子は、放電電極12に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動する。電子が、吸着剤9の近くに有る酸素分子と衝突すると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板7の表面22に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルなどの活性種を発生する。吸着した水分の周辺でコロナ放電が起こることにより、水分が電子と反応しやすくなるため、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
【0061】
なお、本実施の形態において放電電極12は、プラスに印加したものであるが、この放電電極12に印加する電圧はプラスであっても、マイナスであっても良い。
【0062】
図10のように、放電電極12にマイナスの電圧を印加した場合について説明を行う。放電電極12に、電源14により放電電圧をマイナス約3〜10KVで印加を行うと、放電電極12の表面に強い電界が形成される。放電電極12にマイナスの高電圧が印加されているため、空気中に遊離電子が放出される。対向電極13に接した絶縁性基板7は、プラス側となる。その結果、電子が移動することで、対向電極13から放電電極12へ電流が流れる。
【0063】
放電電極12から空気に放出された電子は、対向電極13の強い電界に強い力で引き寄せられるため、電子が高速で移動し、空気中の分子などと衝突する。このとき高速で移動している電子が、空気中の酸素分子と衝突するすると、酸素分子に電子が一つ増えた状態の酸素分子の陰イオンが発生する。その後、酸素分子陰イオンが、絶縁性基板7の表面22に吸着された水分子と反応をすることで、OHラジカルが発生する。
【0064】
上記のようなマイナスに印加された放電電極12からの放電であるいわゆるマイナスコロナ放電を行うことにより、吸着手段8周辺の水分が電子と反応することにより、OHラジカルの発生をより行いやすくするものである。
【0065】
さらに、このように、放電電極12と対向電極13間に吸着手段8を介して面方向に電子が流れるため、沿面距離が長くなり、絶縁性基板7の表面22を電流が伝って流れるものである。
【0066】
以上、図9、図10のようにして発生したOHラジカル(活性種)は、図2または図3の送風機6からの送風により、活性種発生装置3の排気口15から室内へ排出される。このOHラジカルを含む空気を部屋1内に供給することで、空気中の菌を不活化することができる。また、空気中の臭いを分解して取り除くことで、脱臭効果を発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように本発明は、本体ケースと、前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、前記絶縁性基板に接する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段と、を備え、前記絶縁性基板は、開口部を有し、この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置する構成としたものであるので、放電電極と対向電極の絶縁性を高め、安全性を高めるとともに、より広い範囲で活性種を生成させることにより、活性種の発生量を増加して、活性種による浄化作用を向上させることができる。
【0068】
本体ケースと、前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、前記絶縁性基板に接する対向電極と、前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段と、を備えたことにより、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合でも、放電電極と対向電極間を流れる電流は、放電電極から絶縁性基板の外周に位置する吸着手段を面方向に流れた後に、対向電極へと到達することになる。
【0069】
つまり、放電電極と対向電極間に高電圧が印加された場合でも、放電電極と対向電極間の沿面距離が長くなり、電子が吸着手段を介してより長い距離にわたって流れることになるため、瞬間的な短絡による火花放電が起こりにくく、その結果として、安全性の向上が図れるものである。また、放電電極と対向電極間の沿面距離が長くなることにより、放電範囲が広がり、より広い範囲から活性種が生成するため、安全性の向上が図れるものである。
【0070】
また、さらに、本発明においては、前記絶縁性基板は、開口部を有し、この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置することにより、開口部の開口縁が傾斜しない場合と比較して、開口部の開口縁の拡開傾斜面の傾斜が、放電電極に対向する吸着手段の表面積と吸着手段の存在量を増加させるので、放電電極から放出された電子がより多く吸着手段の表面に到達することになる。
【0071】
その結果、吸着手段に吸着した水分がより多くコロナ放電により分解され、活性種の発生量を増加することにより、活性種による浄化作用の向上が図れるものである。
【0072】
したがって、空気清浄機としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0073】
1 部屋
2 床
3 活性種発生装置
4 本体ケース
5 吸込口
6 送風機
7 絶縁性基板
8 吸着手段
9 吸着剤
10 接着剤
11 細孔
12 放電電極
13 対向電極
14 電源
15 排気口
18 支持部材
20 開口部
21 拡開傾斜面
22 表面
23 裏面
24 側面
25 斜面の中程
26 絶縁性被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケース内に設けられた絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の表面から所定間隔を存して配置された放電電極と、
前記絶縁性基板に接する対向電極と、
前記放電電極と前記対向電極とに電圧を印加する電源と、
前記絶縁性基板を覆うように塗布された、近傍の水分を吸着する吸着手段とを備え、
前記絶縁性基板は、開口部を有し、
この開口部の前記放電電極側の開口縁は、外方に拡開する拡開傾斜面とするとともに前記吸着手段により覆われ、
前記放電電極の先端は、前記拡開傾斜面を有する開口部に対して垂直方向に対向配置することを特徴とする活性種発生装置。
【請求項2】
前記放電電極は、前記絶縁性基板の開口部の略中心垂直軸上に位置することを特徴とする請求項1に記載の活性種発生装置。
【請求項3】
前記絶縁性基板の開口部は、円形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性種発生装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、前記絶縁性基板の開口部の拡開斜面の中程にいくほど膜厚が厚くなるような曲面を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の活性種発生装置。
【請求項5】
前記吸着手段は、吸着剤と接着剤とを有し、前記絶縁性基板に塗布された前記吸着剤は、前記接着剤により前記絶縁性基板に接着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の活性種発生装置。
【請求項6】
前記絶縁性基板は、セラミック基板により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性種発生装置。
【請求項7】
前記セラミック基板は、シリカ、アルミ、マグネシウムのうちいずれか1つを含むことを特徴とする請求項6に記載の活性種発生装置。
【請求項8】
前記セラミック基板は、アルミナ基板であることを特徴とする請求項6または7に記載の活性種発生装置。
【請求項9】
前記絶縁性基板は樹脂基板により形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性種発生装置。
【請求項10】
前記樹脂基板はフッ素樹脂基板であることを特徴とする請求項9に記載の活性種発生装置。
【請求項11】
前記吸着剤は前記接着剤よりも平均粒子径が大きいことを特徴とする請求項5〜10のいずれか1つに記載の活性種発生装置。
【請求項12】
前記吸着剤は表面に細孔を有し、前記細孔の穴は、前記接着剤の平均粒子径より小さいことを特徴とする請求項11に記載の活性種発生装置。
【請求項13】
前記電源は、前記放電電極と前記対向電極間に、3〜10KVの正または負の電圧を印加することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の活性種発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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